説明

流動接触分解触媒及びその製造方法並びに低硫黄接触分解ガソリンの製造方法

【課題】脱硫率が高く、再生塔における一酸化炭素(CO)の発生を抑制できる流動接触分解触媒及びその製造方法並びに低硫黄接触分解ガソリンの製造方法を提供すること。
【解決手段】ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物とからなる粉粒体にバナジウムを担持した触媒であって、触媒上にバナジウムとともに硫酸根が存在し、バナジウムの担持量がバナジウム金属換算で500〜20,000質量ppmであり、酸量が20〜450μmol/g、及びマクロ細孔表面積が30〜150m2/gであることを特徴とする流動接触分解触媒及びその製造方法並びに該触媒を用いた低硫黄ガソリンの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動接触分解触媒及びその製造方法並びに低硫黄接触分解ガソリンの製造方法に関し、詳しくは、流動接触分解装置で低硫黄の接触分解ガソリンを製造するための触媒及びその製造方法並びに低硫黄接触分解ガソリンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の環境問題の高まりに伴い、全世界的にガソリン中の硫黄分が規制されるようになった。日本においても2005年にはガソリン中の硫黄含有量を10質量ppmに自主規制している。ガソリン中の硫黄含有量を10質量ppm以下とするためには、ガソリン基材として用いられる接触分解ガソリン(以下「FCCガソリン」ということがある。)中の硫黄含有量を今まで以上に低減する必要がある。
FCCガソリン中の硫黄含有量を低減する方法として、例えば、流動接触分解装置の前段にある直接脱硫装置、又は間接脱硫装置によって、原料油(重質油)中の硫黄分を従来以上に低減する方法や、流動接触分解装置の後段に後処理装置としてFCCガソリンの水素化脱硫装置を設置し、低硫黄化を図る方法が考えられる。
しかしながら、これらの装置による低硫黄化に際しては、装置に対する負荷が増大するため、二酸化炭素の発生量の増大を免れないという問題がある。また、脱硫率を上げるためには、通常よりも水素の使用量が増えるため運転コストも増大する。さらに、前述の流動接触分解装置後段の後処理装置に関しては、新設する場合が多く莫大な建設コストがかかる。
【0003】
ところで、FCCガソリンは流動接触分解装置によって重質油等を分解することで得られる。流動接触分解装置で用いる流動接触分解触媒は、例えば、ゼオライト、シリカ・アルミナ等からなり、反応塔で分解反応を行い、再生塔で再生を繰り返すサイクルの中で使用される。このサイクルの中で、原料油中のバナジウム及びニッケルが流動接触分解触媒に蓄積されていき、これらの金属がある程度蓄積された状態(平衡触媒)で繰り返し反応に供される。流動接触分解装置内で、原料油中の硫黄分は、原料油の分解と並行して脱離し、脱硫活性を有するこれら蓄積されたバナジウム及びニッケル金属上で水素化脱硫され、硫化水素として系外に排出除去される。または、硫黄分はバナジウム及びニッケル金属に吸着され、あるいは発生する堆積コーク中に取り込まれ、再生塔にて焼成・酸化されてSOxとなって系外に排出除去される。このように、バナジウム等は脱硫活性を有するので、この性質を利用して、流動接触分解で用いられる触媒を改良し、脱硫率を上げてFCCガソリン中の硫黄含有量を低減する試みがなされている。例えば、バナジウム、亜鉛、ニッケル、鉄又はコバルトを担持した触媒(特許文献1、特許請求の範囲参照)、バナジウム金属をモレキュラーシーブの小孔内にカチオン種として導入したゼオライトを含有する触媒(特許文献2、特許請求の範囲参照)、さらには、バナジウム金属とともにランタン、セリウム等の希土類元素をモレキュラーシーブの小孔内に導入したゼオライトを含有する触媒(特許文献3、特許請求の範囲参照)などが提案されている。
しかしながら、バナジウムは脱硫活性を有する一方で、ゼオライトの小細孔に入り込んでゼオライトの活性点を被毒し、またゼオライト骨格への攻撃による構造の崩壊をもたらす。さらには、細孔閉塞によって原料油あるいは分解生成油の拡散を阻害するなどの弊害を引き起こす。従って、上記提案される触媒では、ある程度の脱硫活性は認められるものの、近年のさらなる低硫黄化に対しては、性能が不十分であり、さらなる改良が求められていた。
【0004】
また、流動接触分解装置を構成する反応塔と再生塔では、反応と再生が繰り返りかえされ、還元・酸化が行われている。この再生塔においては、バナジウムは酸化されて5価となり、同じく再生塔で発生した二酸化炭素(CO2)から酸素を引き抜きいて一酸化炭素(CO)を生成する。ところが、再生塔で生成するCO量が多くなると、COボイラーに入るCO量が増加し、ボイラーの異常加熱により、装置の破壊等の危険性がある。従って、再生塔におけるCOの発生を抑制し、このような危険性を回避できる流動接触分解触媒が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−27065号公報
【特許文献2】特許第3545652号公報
【特許文献3】特許第3550065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下でなされたもので、脱硫率が高く、再生塔における一酸化炭素(CO)の発生を抑制できる流動接触分解触媒及びその製造方法並びに低硫黄接触分解ガソリンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の担体にバナジウムを担持した触媒であって、触媒上にバナジウムとともに硫酸根が存在し、かつ特定の酸量及びマクロ細孔表面積を有する流動接触分解触媒が、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、
【0008】
(1)ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物とからなる粉粒体にバナジウムを担持した触媒であって、触媒上にバナジウムとともに硫酸根が存在し、バナジウムの担持量がバナジウム金属換算で500〜20,000質量ppmであり、酸量が20〜450μmol/g、及びマクロ細孔表面積が30〜150m2/gであることを特徴とする流動接触分解触媒、
(2)ゼオライトが、Y型ゼオライト、希土類交換Y型ゼオライト、USY型ゼオライト、希土類交換USY型ゼオライト、β型ゼオライト、ZSM−5、及びL型ゼオライトから選ばれる少なくとも一種である前記(1)に記載の流動接触分解触媒、
(3)多孔性無機酸化物が、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、チタニア、シリカ・チタニア及びアルミナ・チタニアから選ばれる少なくとも一種である前記(1)又は(2)に記載の流動接触分解触媒、
(4)粘土鉱物がカオリン、ハロサイト又はベントナイトである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の流動接触分解触媒、
(5)さらに希土類元素を担持してなる前記(1)〜(4)に記載の流動接触分解触媒、
(6)ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物とからなる粉粒体にバナジウムを担持した触媒であって、触媒上にバナジウムとともに硫酸根が存在し、バナジウムの担持量がバナジウム金属換算で1,000〜20,000質量ppm、酸量が20〜450μmol/g、及びマクロ細孔表面積が30〜150m2/gであり、バナジウムの担持がバナジウムと硫酸根を含有する担持溶液を用いて担持してなる流動接触分解触媒、
(7)バナジウムの少なくとも一部が担持溶液中で硫酸根を含有する多核錯塩を形成している前記(6)に記載の流動接触分解触媒、
(8)担持溶液が、オキソ硫酸バナジウム、オキソ硫酸バナジウムと硫酸、又はこれらのいずれかと他の金属塩を含有する溶液である前記(6)又は(7)のいずれかに記載の流動接触分解触媒、
(9)担持溶液がpH4以下の溶液である前記(6)〜(8)のいずれかに記載の流動接触分解触媒、
(10)他の金属塩がマンガン、マグネシウム、カルシウム、コバルト、亜鉛、銅、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロムから選ばれる少なくとも一種の無機金属塩である前記(8)又(9)に記載の流動接触分解触媒、
(11)さらに、バナジウム及び/又はニッケルの蓄積量が50〜20,000質量ppmである流動接触分解平衡触媒を、触媒全量を基準として0〜95質量%混合した前記(1)〜(10)のいずれかに記載の流動接触分解触媒、
(12)ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物とからなる粉粒体にバナジウムを担持した触媒の製造方法であって、バナジウムと硫酸根を含有する水溶液を調整し、これを粉粒体に担持することを特徴とする流動接触分解触媒の製造方法、
(13)バナジウムと硫酸根を含有する水溶液が、オキソ硫酸バナジウム、オキソ硫酸バナジウムと硫酸、又はこれらのいずれかと他の金属塩を含有する水溶液である前記(12)に記載の流動接触分解触媒の製造方法、
(14)バナジウムと硫酸根を含有する水溶液がpH4以下である前記(12)又は(13)に記載の流動接触分解触媒の製造方法、
(15)他の金属塩がマンガン、マグネシウム、カルシウム、コバルト、亜鉛、銅、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロムから選ばれる少なくとも一種の無機金属塩である前記(13)又は(14)に記載の流動接触分解触媒の製造方法、
(16)前記(12)〜(15)のいずれかに記載の流動接触分解触媒の製造方法において、ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物とからなる担体に、さらに希土類元素を担持する流動接触分解触媒の製造方法であって、該希土類元素の担持を、イオン交換法又は含浸法を用いて行い、その後に行う乾燥を下記の(a)及び(b)を満たす条件で行うことを特徴とする流動接触分解触媒の製造方法、
(a)乾燥温度:60〜300℃の範囲(但し、200℃以上の温度に曝される時間を10分以内にする)
(b)乾燥時間:30〜120分の範囲
(17)前記(1)〜(11)に記載の流動接触分解触媒及び前記(12)〜(16)に記載の流動接触分解触媒の製造方法で得られた流動接触分解触媒のいずれかを用いて重質油を接触分解する低硫黄接触分解ガソリンの製造方法、
(18)重質油中の硫黄含有量が0.05〜0.7質量%であり、得られる接触分解ガソリン中の硫黄含有量が50質量ppm以下である前記(17)に記載の低硫黄接触分解ガソリンの製造方法、
(19)得られる低硫黄接触分解ガソリン中のC5〜210℃沸点範囲における硫黄含有量が30質量ppm以下である前記(18)に記載の低硫黄接触分解ガソリンの製造方法、
(20)得られる低硫黄接触分解ガソリン中のC5〜210℃沸点範囲における硫黄含有量が15質量ppm以下である前記(18)に記載の低硫黄接触分解ガソリンの製造方法、及び、
(21)前記(17)〜(20)に記載の低硫黄接触分解ガソリンの製造方法が、流動接触分解触媒の触媒再生工程において再生ガス中のCOの発生を抑制する低硫黄接触分解ガソリンの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流動接触分解触媒によれば、流動接触分解装置を用いて分解処理及び脱硫処理をすることで、残油留分からは硫黄含有量50質量ppm以下のガソリン留分を、また重質軽油留分からは硫黄含有量30質量ppm以下のガソリン留分を効率よく製造することができる。また、接触分解ガソリンに加えて、分解軽油留分(ライトサイクルオイル、以下「LCO」という。)を効率的に製造することができ、過分解を抑制してコーク収率を低減することができる。さらに、本発明の流動接触分解触媒によれば、流動接触分解装置の再生塔における一酸化炭素(CO)の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の流動接触分解触媒は、ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物とからなる粉粒体を担体とすることを特徴とする。ゼオライトの種類としては特に限定されず、Y型ゼオライト、希土類交換Y型ゼオライト、USY型ゼオライト、希土類交換USY型ゼオライト、β−ゼオライト、ZSM−5、L型ゼオライトなどが挙げられ、これらのうち特にY型ゼオライトが好ましい。該粉粒体中のゼオライトの含有量は、3〜70質量%が好ましい。3質量%以上であると十分な分解活性が得られ、70質量%以下であると、目的とするFCCガソリンが高い選択性で得られる。以上の点から、ゼオライトのさらに好ましい含有量は、粉粒体全量基準で5〜50質量%の範囲である。
【0011】
ゼオライト以外の多孔性無機酸化物としては、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、チタニア、シリカ・チタニア、アルミナ・チタニアなどが挙げられ、FCCガソリン、LCOの収率の点から、アルミナ又はシリカ・アルミナが好ましい。該粉粒体中の多孔性無機酸化物の含有量は、3〜40質量%が好ましい。3質量%以上であると、分解活性及び脱硫活性が向上し、40質量%以下であると、十分な耐摩耗性が得られる。以上の点から、多孔性無機酸化物のさらに好ましい含有量は、粉粒体全量基準で10〜35質量%の範囲である。
また、粘土鉱物としては、カオリン、ハロサイト、ベントナイトなどが挙げられ、該粉粒体中の含有量としては、10〜50質量%が好ましい。
【0012】
上記の担体成分から調製される市販の流動接触分解触媒や残油流動接触分解触媒も本発明の粉粒体に包含される。流動接触分解触媒及び残油流動接触分解触媒は、具体的にはY型ゼオライト、アルミナ、シリカ・アルミナ及びカオリンを用いてスプレードライ法などの常法により製造されるものである。
本発明における粉粒体は、上記担体成分を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができるが、特に、脱硫活性を十分に得るとの点、及び重質油の分解活性に優れる点から、ゼオライトとしてY型ゼオライトを用い、多孔性無機酸化物として、アルミナ又はシリカ・アルミナを用い、さらに粘土鉱物を用いることが好ましい。
【0013】
本発明の流動接触分解触媒は、前記粉粒体にバナジウムを担持した触媒であり、バナジウムの担持量はバナジウム金属換算で1,000〜20,000質量ppmである。1,000質量ppm未満であると、バナジウムを担持した十分な効果、すなわち十分な脱硫活性を得ることができず、一方、20,000質量ppmを超えると、分解反応が進みすぎ、コークやガスなどの目的外生成物の収率が高くなり、経済性が低下する。
【0014】
また、本発明の流動接触分解触媒は、触媒上にバナジウムとともに硫酸根が存在することを特徴とする。このような触媒は、通常バナジウムの少なくとも一部が多核錯塩を形成している。
ここで、多核錯塩はバナジウム単独の錯塩であってもよいし、又はバナジウムと他の異なる金属との2〜4核錯塩であってもよい。
バナジウムは、従来技術においては、メタバナジン酸アンモニウム、シュウ酸バナジル、ナフテン酸バナジウムなどの溶液を用いて担持されるが、これらの溶液を用いた場合には、バナジウムが単独イオンとして溶液中に存在し、担持の過程でゼオライトの小細孔内(細孔径7A程度)に入る。又は、流動接触分解装置の触媒再生塔においては、V25、VO2などのバナジウム酸化物となる。小細孔内に導入されたバナジウムは、ゼオライト、特に超安定Y型ゼオライト(USY)の結晶構造を崩壊させ、分解活性を減少させる。
一方、本発明におけるバナジウムは、触媒の製造過程における担持溶液中で、通常硫酸根を含有する多核錯体塩を形成するため、ゼオライトの小細孔内へのバナジウムの導入を抑制することができる。従って、本発明の流動接触分解触媒は、ゼオライトの結晶構造の崩壊が抑制され、バナジウムの持つ脱硫活性が最大限生かされ、硫黄含有量の少ないFCCガソリンが得られるとともに、FCCガソリン及びLCOの収率を増加させることができる。
ここで、上記多核錯塩は、安定性、バナジウムの水素化脱硫特性の点から、バナジウム単独の又はバナジウムと他の異なる金属との2〜4核錯塩、硫酸根が含まれるバナジウムのイソポリ酸又はヘテロポリ酸が好ましい。
【0015】
バナジウムの多核錯塩、イソポリ酸又はヘテロポリ酸を形成するためには、バナジウム担持においてバナジウム塩としてオキソ硫酸バナジウムが好適である。また、オキソ硫酸バナジウム含有溶液に硫酸及び他の金属塩から選ばれる少なくとも一種を混合した担持溶液にて担持することが好ましい。
バナジウムの多核錯塩を形成するための無機酸としては、硫酸及びピロリン酸が好適に挙げられる。硫酸の添加量としてオキソ硫酸はバナジウム塩−無機酸塩溶液がpH4以下となるように添加することが好ましく、さらにはpHが2〜3となるように添加することが好ましい。
【0016】
次に、バナジウムの多核錯塩を形成するための他の金属塩としては、種々のものが挙げられ、マンガン、マグネシウム、カルシウム、コバルト、亜鉛、銅、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロム、ランタン、イットリウム、スカンジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの無機金属塩及び有機金属塩が好適に挙げられる。これら他の金属の含有量としては、触媒体を基準として、500〜30,000質量ppmが好ましく、さらに1,000〜20,000質量ppmが好ましい。バナジウムとこれら他の金属による多核錯塩は、触媒調製の際に用いられるバナジウム塩溶液と、該金属の金属塩溶液を混合することで容易に得られる。
【0017】
マンガン塩としては、硫酸マンガン(II)、硫酸アンモニウムマンガン(II)など、マグネシウム塩としては、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウムマグネシウムなど、カルシウム塩としては、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムなどを用いることができる。
また、コバルト塩としては硫酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルトなど、亜鉛塩としては硫酸亜鉛など、銅塩としては硫酸銅などを用いることができる。
さらにチタン塩としては、硫酸チタンなど、アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウムなど、ニッケル塩としては、硫酸ニッケル、硫酸アンモニウムニッケルなど、鉄塩としては、硫酸アンモニウム鉄、硫酸鉄(II)、硫酸
鉄(III)など、クロム塩としては、硫酸アンモニウムクロム、硫酸クロム、硫酸クロム
アンモニウムなどを用いることができる。
【0018】
さらに続いて、モリブデン塩としては、塩化モリブデン、酸化モリブデン、三酸化モリブデン、七モリブデン酸六アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、二硫化モリブデンなど、タングステン塩としては、塩化タングステン、ケイタングステン酸、タングステン酸アンモニウム、酸化タングステン、三塩化タングステン、リンタングステン酸アンモニウム、タングステン酸、リンタングステン酸、六塩化タングステンなどを用いることができる。
【0019】
本発明の流動接触分解触媒には、触媒の安定性、特に水熱安定性を付与するため、及び分解活性を向上させるために、所望により、ランタン、セリウム等の希土類元素を担持することができる。この希土類元素の担持量は、触媒全量基準で5,000〜25,000質量ppmの範囲が好ましい。
【0020】
次に、本発明の流動接触分解触媒は、酸量が20〜450μmol/gであることを特徴とする。上記酸量が20μmol/g未満では硫黄化合物の分解、脱硫が不十分となり、一方、450μmol/gを超えると分解反応が進みすぎ、ガスやコークなどの目的外生成物の収率が高くなり、経済性が低下する。好ましい酸量は100〜400μmol/gの範囲、さらには200〜350μmol/gの範囲である。
なお、酸量は下記の方法で測定した値である。
<酸量>
触媒上の酸点に塩基性ガス(アンモニア、ピリジン)が強く吸着することを利用して、触媒の酸性質をアンモニア微分吸着熱測定法により測定する。吸着熱の大小で酸点の強度が評価でき、同時に吸着量から、酸量を求めることができる。吸着熱量は熱量計で直接測定し、吸着量は圧力変化から測定する。
【0021】
また、本発明の流動接触分解触媒は、メソ細孔及びマクロ細孔を有するものであり、細孔径の範囲が20〜1,000Aであり、細孔径ピーク位置を20〜500Aの間に単一ピークとして有することが好ましい。特に、細孔径ピーク位置が90〜300Aの間に存在することが好ましい。また、細孔径40〜400Aの細孔容積が0.05〜0.5mL/gの範囲であることが好ましい。この範囲内であるとバナジウム等の金属を十分に担持させることができ、かつ、触媒の十分な機械的強度を得ることができる。
【0022】
本発明の流動接触分解触媒は、マクロ細孔表面積が30〜150m2/gであることを特徴とする。上記マクロ細孔表面積が30m2/g未満では原料油の分解が十分ではないため、接触分解ガソリンの収率が低く、かつ脱硫も不十分となり、一方150m2/gを超えると大きな細孔が多くなりすぎ、分解活性が低下すると共に、脱硫も不十分となる。好ましいマクロ細孔表面積は、40〜120m2/gの範囲である。なお、ここでマクロ細孔とは、ゼオライトのミクロ細孔よりも大きい細孔をいう。
【0023】
次に、本発明の流動接触分解触媒の製造方法について以下に説明する。
まず、担体である粉粒体は、ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物を混合することで調製する。混合した後、80〜300℃程度で乾燥してもよい。
この粉粒体に、バナジウムと硫酸根を含有する水溶液を用いて含浸担持する。担持方法としては、常圧含浸法、真空含浸法、及び浸漬法が好適に用いられる。担持する際の溶液の温度は常温でも加温してもよいが、常温で行うことが好ましい。
【0024】
上記バナジウムと硫酸根を含有する水溶液としては、これを粉粒体に担持するオキシ硫酸バナジウム水溶液が好ましい。上記、オキシ硫酸バナジウム水溶液の担持の際に硫酸及び/又は他の金属塩を溶液状態で混合させることもでき、バナジウムの多核錯塩を得ることができる。オキソ硫酸バナジウム塩と硫酸を用いる系においては、これを粉粒体に担持することにより、本発明の流動接触分解触媒を得ることができる。
【0025】
次に、バナジウムと他の金属を用いる系においては、本発明の流動接触分解触媒を調製するに際して用いる担持溶液は、オキソ硫酸バナジウム塩と他の金属の無機塩を用いて調製したバナジウムと他の金属の混合溶液であることが好ましい。ここで他の金属としては、前述したのと同様であり、具体的には、マンガン、マグネシウム、カルシウム、コバルト、亜鉛、銅、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロムなどが挙げられる。
【0026】
バナジウムを担持させた後は、70〜200℃で乾燥することが好ましい。乾燥温度が70℃以上であると十分な乾燥が可能であり、一方、200℃以下であるとバナジウム金属が凝集することを抑制できる。以上の観点から、乾燥温度は100〜150℃の範囲がより好ましい。
また、乾燥を行った後、所望に応じて、500〜900℃の温度で酸素及び水蒸気の存在下スチーミング処理を行ったり、焼成処理することもできる。
【0027】
本発明の流動接触分解触媒の製造方法において、さらに、希土類元素を担持する場合の希土類元素の担持方法としては、公知の方法、例えば、イオン交換法や含浸法を用いて行うことができる。この場合、希土類元素を担持した後に行う乾燥は、下記の(a)と(b)を満たす条件で行うのが好ましい。
(a)乾燥温度:60〜300℃、より好ましくは60〜250℃の範囲である。但し、200℃以上の温度に曝される時間が10分以内である。
(b)乾燥時間:30〜120分、より好ましくは30〜80分の範囲である。
また、乾燥温度が200℃以上に到達する場合には、200℃に達するまでの時間が5分以上であることが好ましく、特には10〜60分程度であることが好ましい。
このような条件であれば、取り扱いが困難にならず、また乾燥が過度になることによるバナジウムを含浸した際に、バナジウムがゼオライト細孔内に入り、触媒の性能が低下することもない。
また、通常さらに焼成などの熱処理を行うことができるが、本発明においては、乾燥のみで焼成などの熱処理を行わないことがより好ましい。
【0028】
本発明の流動接触分解触媒としては、上記の触媒を単独で使用する場合に加え、市販の流動接触分解触媒を触媒全量基準で0〜95質量%混合したものも含む。ここで、市販の流動接触分解触媒としては、平衡触媒であることが好ましく、特にバナジウム及び/又はニッケルの蓄積量が50〜20,000質量ppmであるものが好ましい。該平衡触媒の混合量は、原料油の性状、通油量、目的とする製品の量、目的とする製品の性状等によって、適宜決定されるものであるが、触媒全量基準で20〜90質量%の範囲であることがより好ましい。
【0029】
本発明の流動接触分解触媒は、原料油である直接脱硫装置から供給される脱硫残油又は重質留分に富んだ原料油から、ガソリン留分(FCCガソリン)及びLCOを製造する残油流動接触分解装置(RFCC)に好適に使用される。また、重質軽油、減圧軽油、脱暦経由等を間接脱硫装置で脱硫処理して得られる脱硫重質軽油、脱硫減圧軽油、及び脱硫脱瀝軽油を原料として、FCCガソリン及びLCOを製造する流動接触分解装置(FCC)に好適に使用される。残油流動接触分解装置の原料油は硫黄含有量が高いため、製造されるFCCガソリン中の硫黄含有量は相対的に高くなるが、本発明の流動接触分解触媒を用いることで、硫黄含有量5〜200質量ppmのFCCガソリンを製造することができる。また、流動接触分解装置の場合には、本発明の流動接触分解触媒を用いることで、硫黄含有量5〜50質量ppmのFCCガソリンを製造することができる。
分解生成油(FCCガソリン)中の硫黄含有量は、用いる原料油の硫黄含有量及び流動接触分解装置の運転条件によって決定されるが、原料油である重質油の硫黄含有量が0.05〜0.7質量%である場合には、得られるFCCガソリン中の硫黄含有量は50質量ppm以下とすることができる。また、得られるFCCガソリン中の、炭素数5の炭化水素の沸点に相当する温度(C5と記載する)〜210℃の沸点範囲を有する留分における硫黄含有量は30質量ppm以下とすることができる。さらには運転条件によっては15質量ppm以下にすることもできる。
本発明における流動接触分解の処理条件としては、通常、流動接触分解装置で用いられる条件であればよく、例えば、温度480〜650℃、好ましくは480〜550℃、反応圧力0.02〜5MPa、好ましくは0.2〜2MPaである。処理条件が上記範囲内であると、触媒の分解活性、及びFCCガソリンの脱硫率が高く好ましい。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
〈物性測定方法及び触媒評価方法〉
(1)酸量;前述のアンモニア微分吸着熱測定法にて測定した。
(2)マクロ細孔表面積;細孔分布測定装置(カンタクローム社製「オートソーブ6」)を用いて、窒素吸着法にて測定し、T−プロット法により吸着等温線を解析して求めた。
(3)脱硫率;各実施例及び比較例で得られた触媒を連続式流動床ベンチプラントに充填し、硫黄含有量0.19質量%の水素化処理脱硫重質軽油を、反応温度535℃、反応圧力0.18MPa・G、触媒再生温度683℃、触媒/原料油比(質量比)7.0、原料油供給量950g/hrの条件で、分解・脱硫反応させた。
生成油は15段蒸留装置にて、沸点C5〜210℃の留分を接触分解ガソリンとして分
取し、その硫黄含有量、窒素含有量を測定した。なお、硫黄の定量は、電量滴定法により、窒素の定量は化学発光法により行った。
(4)分解率;通常のMAT評価装置を用いて測定した。反応温度535℃、触媒/原料油比(質量比)4.0の条件で行った。ガソリン収率(質量%)、LCO収率(質量%)、コーク収率(質量%)、及び原料油転化率(質量%)にて評価した。
また、水素化脱硫重質油を処理する場合の反応温度は535℃とした。
生成するCO量は熱伝導度測定機により測定した。
【0031】
実施例1
(1)流動接触分解触媒の製造
乾燥後の基準で、USY型ゼオライト20質量%及びアルミナ20質量%、粘土鉱物カオリンが40質量%及びシリカゾルが20質量%になるように、それぞれの成分をイオン交換水に加え、固形分15質量%のスラリーとした。ついで、上記スラリーを、スプレードライ法により噴霧乾燥処理して、微小球粒子を得た。該微小球粒子に対して、ランタン(希土類元素)を1.7質量%担持し、120℃で3時間乾燥を行ない担体(A)を得た。(いずれも流動接触分解触媒全量基準)
製造した担体(A)に、バナジウム換算で4000質量ppmのバナジウムが担持されるようにオキシ硫酸バナジウム(VOSO4・nH2O(n=3〜4))を8.9gとり、190mLの水に溶解してオキシ硫酸バナジウム水溶液を調製した。なお、水の量は担体(A)の常温時の吸水率を測定して決定した。
オキシ硫酸バナジウム水溶液のpHは2.3であり、透明の群青色を示した。この水溶液を500gの担体(A)に常圧含浸した後、120℃で3時間乾燥し、バナジウム担持量4000質量ppmの触媒体(B−1)を得た。
次に、該触媒体(B−1)を擬似平衡化条件として、600℃で1時間空気中にて焼成した後、スチーム濃度98容量%、空気濃度2容量%の条件で、温度760℃、6時間スチーミング処理を行い、スチーミング処理触媒(C−1)を得た。該スチーミング処理触媒(C−1)240gと、バナジウム870質量ppm及びニッケル500質量ppmが蓄積された平衡触媒(D)1360gとを均一に混合し、本発明の流動接触分解触媒(E−1)を得た。
(2)流動接触分解触媒の性能評価
この流動接触分解触媒(E−1)を用いて上述の連続式流動床ベンチプラントにて評価を実施した。評価結果を第1表に示す。
また、MAT評価装置での試験においては、前記スチーミング処理触媒(C−1)0.75gと平衡触媒(D)4.25gとを混合して本発明の流動接触分解触媒(F−1)を得、反応に供した。評価結果を第1表に示す。
【0032】
実施例2
実施例1における水の配合量を185mLとし、pHを1.5程度に調整するために濃硫酸(濃度95%)を添加し、その後イオン交換水を加えて担体(A)の常温時の吸水率に見合う190mLのオキシ硫酸バナジウム水溶液を調製した。この水溶液を実施例1と同様に500gの担体(A)に常圧含浸し、120℃、3時間乾燥し、触媒体(B−2)とした。触媒体(B−2)中のバナジウム含有量はバナジウム金属換算で4000質量ppmであった。なお、バナジウム溶液のpHは1.5であり、透明の群青色を示した。
触媒体(B−2)を実施例1と同様に擬似平衡化処理を行ない、スチーミング処理触媒(C−2)を得た。スチーミング処理触媒(C−2)240gと、実施例1で用いたのと同様の平衡触媒(D)1360gとを均一に混合して、本発明の流動接触分解触媒(E−2)を得た。この流動接触分解触媒(E−2)を用いて実施例1と同様に連続式流動床ベンチプラントにて評価を実施した。評価結果を第1表に示す。
また、MAT評価装置での試験においては、実施例1と同様に、スチーミング処理触媒(C−2)0.75gと平衡触媒(D)4.25gとを混合して本発明の流動接触分解触媒(F−2)を得、反応に供した。評価結果を第1表に示す。
【0033】
実施例3
バナジウムとして4000質量ppmが担持されるように硫酸バナジルVOSO4・nH2O(n=3〜4)を、マンガンとして4000質量ppm担持されるように硫酸マンガンMnSO4・5H2Oを8.8gとり、105mLのイオン交換水に溶解し、担持溶液を得た。この水溶液を実施例1と同様に500gの担体(A)に常圧含浸し、120℃、3時間乾燥し、触媒体(B−3)とした。なお、バナジウム溶液のpHは3.2であり、透明の群青色を示した。
触媒体(B−3)を実施例1と同様に擬似平衡化処理を行ない、スチーミング処理触媒(C−3)を得た。スチーミング処理触媒(C−3)240gと、実施例1で用いたのと同様の平衡触媒(D)1360gとを均一に混合して、本発明の流動接触分解触媒(E−3)を得た。この流動接触分解触媒(E−3)を用いて実施例1と同様に連続式流動床ベンチプラントにて評価を実施した。評価結果を第1表に示す。
また、MAT評価装置での試験においては、実施例1と同様に、スチーミング処理触媒(C−3)0.75gと平衡触媒(D)4.25gとを混合して本発明の流動接触分解触媒(F−3)を得、反応に供した。評価結果を第1表に示す。
【0034】
比較例1
メタバナジン酸アンモニウムをバナジウム金属換算で4,000質量ppmとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして触媒体(B−4)を調製した。溶解のためアンモニア水にて調整し、バナジウム溶液のpHは8.5であった。次いで、触媒体(B−4)を、実施例1と同様に擬似平衡化してスチーミング処理触媒(C−4)を得、平衡触媒(D)と混合して、流動接触分解触媒(E−4)を得た。この流動接触分解触媒(E−4)を用いて実施例1と同様に連続式流動床ベンチプラントにて評価を実施した。評価結果を第1表に示す。
また、MAT評価装置での試験においては、実施例1と同様に、スチーミング処理触媒(C−4)0.75gと平衡触媒(D)4.25gとを混合して本発明の流動接触分解触媒(F−4)を得、反応に供した。評価結果を第1表に示す。
【0035】
比較例2
平衡触媒(D)のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして評価した。評価結果を第1表に示す。なお、全触媒充填量が実施例1と同様になるようにした。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

[注]*1 HGO;第2表に記載する性状を有する水素化処理重質軽油
【0039】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の流動接触分解触媒によれば、流動接触分解装置を用いて分解処理及び脱硫処理をすることで、低硫黄含有量のガソリン留分を高収率で得ることができる。また、同時にLCO(ライトサイクルオイル)を効率的に製造することができ、過分解を抑制してコーク収率を低減することができる。さらに、本発明の流動接触分解触媒によれば、流動接触分解装置の再生塔における一酸化炭素(CO)の発生を抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物とからなる粉粒体にバナジウムを担持した触媒であって、触媒上にバナジウムとともに硫酸根が存在し、バナジウムの担持量がバナジウム金属換算で500〜20,000質量ppmであり、酸量が20〜450μmol/g、及びマクロ細孔表面積が30〜150m2/gであることを特徴とする流動接触分解触媒。
【請求項2】
ゼオライトが、Y型ゼオライト、希土類交換Y型ゼオライト、USY型ゼオライト、希土類交換USY型ゼオライト、β型ゼオライト、ZSM−5、及びL型ゼオライトから選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の流動接触分解触媒。
【請求項3】
多孔性無機酸化物が、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、チタニア、シリカ・チタニア及びアルミナ・チタニアから選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の流動接触分解触媒。
【請求項4】
粘土鉱物がカオリン、ハロサイト又はベントナイトである請求項1〜3のいずれかに記載の流動接触分解触媒。
【請求項5】
さらに希土類元素を担持してなる請求項1〜4に記載の流動接触分解触媒。
【請求項6】
ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物とからなる粉粒体にバナジウムを担持した触媒であって、触媒上にバナジウムとともに硫酸根が存在し、バナジウムの担持量がバナジウム金属換算で1,000〜20,000質量ppm、酸量が20〜450μmol/g、及びマクロ細孔表面積が30〜150m2/gであり、バナジウムの担持がバナジウムと硫酸根を含有する担持溶液を用いて担持してなる流動接触分解触媒。
【請求項7】
バナジウムの少なくとも一部が担持溶液中で硫酸根を含有する多核錯塩を形成している請求項6に記載の流動接触分解触媒。
【請求項8】
担持溶液が、オキソ硫酸バナジウム、オキソ硫酸バナジウムと硫酸、又はこれらのいずれかと他の金属塩を含有する溶液である請求項6又は7のいずれかに記載の流動接触分解触媒。
【請求項9】
担持溶液がpH4以下の溶液である請求項6〜8のいずれかに記載の流動接触分解触媒。
【請求項10】
他の金属塩がマンガン、マグネシウム、カルシウム、コバルト、亜鉛、銅、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロムから選ばれる少なくとも一種の無機金属塩である請求項8又9に記載の流動接触分解触媒。
【請求項11】
さらに、バナジウム及び/又はニッケルの蓄積量が50〜20,000質量ppmである流動接触分解平衡触媒を、触媒全量を基準として0〜95質量%混合した請求項1〜10のいずれかに記載の流動接触分解触媒。
【請求項12】
ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物とからなる粉粒体にバナジウムを担持した触媒の製造方法であって、バナジウムと硫酸根を含有する水溶液を調整し、これを粉粒体に担持することを特徴とする流動接触分解触媒の製造方法。
【請求項13】
バナジウムと硫酸根を含有する水溶液が、オキソ硫酸バナジウム、オキソ硫酸バナジウムと硫酸、又はこれらのいずれかと他の金属塩を含有する水溶液である請求項12に記載の流動接触分解触媒の製造方法。
【請求項14】
バナジウムと硫酸根を含有する水溶液がpH4以下である請求項12又は13に記載の流動接触分解触媒の製造方法。
【請求項15】
他の金属塩がマンガン、マグネシウム、カルシウム、コバルト、亜鉛、銅、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロムから選ばれる少なくとも一種の無機金属塩である請求項13又は14に記載の流動接触分解触媒の製造方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれかに記載の流動接触分解触媒の製造方法において、ゼオライトとゼオライト以外の多孔性無機酸化物及び/又は粘土鉱物とからなる担体に、さらに希土類元素を担持する流動接触分解触媒の製造方法であって、該希土類元素の担持を、イオン交換法又は含浸法を用いて行い、その後に行う乾燥を下記の(a)及び(b)を満たす条件で行うことを特徴とする流動接触分解触媒の製造方法。
(a)乾燥温度:60〜300℃の範囲(但し、200℃以上の温度に曝される時間を10分以内にする)
(b)乾燥時間:30〜120分の範囲
【請求項17】
請求項1〜11に記載の流動接触分解触媒及び請求項12〜16に記載の流動接触分解触媒の製造方法で得られた流動接触分解触媒のいずれかを用いて重質油を接触分解する低硫黄接触分解ガソリンの製造方法。
【請求項18】
重質油中の硫黄含有量が0.05〜0.7質量%であり、得られる接触分解ガソリン中の硫黄含有量が50質量ppm以下である請求項17に記載の低硫黄接触分解ガソリンの製造方法。
【請求項19】
得られる低硫黄接触分解ガソリン中のC5〜210℃沸点範囲における硫黄含有量が30質量ppm以下である請求項18に記載の低硫黄接触分解ガソリンの製造方法。
【請求項20】
得られる低硫黄接触分解ガソリン中のC5〜210℃沸点範囲における硫黄含有量が15質量ppm以下である請求項18に記載の低硫黄接触分解ガソリンの製造方法。
【請求項21】
請求項17〜20に記載の低硫黄接触分解ガソリンの製造方法が、流動接触分解触媒の触媒再生工程において再生ガス中のCOの発生を抑制する低硫黄接触分解ガソリンの製造方法。

【公開番号】特開2008−207076(P2008−207076A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44395(P2007−44395)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】