説明

流合雑音検出システム

【課題】電話サービスを提供しているCATVシステムにおいて、電話サービスに影響を与えることなく流合雑音の調査を行うこと。
【解決手段】STM制御装置21からの制御信号によって、各ゲートスイッチ18は、順に一定時間オフにされる。そして、オフにしたタイミングに同期してスペクトラムアナライザ22によってセンター装置10に入力される信号の周波数スペクトルを測定することで、流合雑音の検出および発生箇所の特定を行うことができる。ここで、ゲートスイッチ18をオフにする時間を20msとすることで、電話サービスに影響を与えないようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CATVシステムにおいて発生する流合雑音の検出を行う流合雑音検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ツリー状のネットワーク構造を有したCATVシステムでは、上り通信時に流合雑音が発生することが問題となる。流合雑音は、加入者宅の家電製品や短波放送などからノイズが飛び込み、上流(加入者側からセンター装置側)へ向かうにつれてこのノイズが集まり重畳されることである。流合雑音が大きくなると上り通信の品質が劣化し、一定レベル以上になると上り通信が不可能となってしまう。
【0003】
従来は、双方向幹線分岐増幅器や双方向幹線増幅器などに設けられたゲートスイッチを、センター装置に設けられたSTM(ステータスモニタ)制御装置からの指令により順にオフにしていき、上り信号の周波数スペクトルをスペクトラムアナライザによって目視などで確認することで、流合雑音の発生箇所を調査していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−5702
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CATVシステムにおいて、ケーブルモデムを用いた電話サービスを提供している場合がある。電話サービスの上り通信はプロトコル上再送信を行わない。そのため、流合雑音の検出のためゲートスイッチをオフにすると、オフにしている間に送信された音声データは欠落して再生不能になってしまい、通信品質を著しく損なってしまう。その結果、従来電話サービスを運用しているCATVシステムでは、流合雑音の調査をすることは不可能であった。
【0006】
そこで本発明の目的は、CATVシステムにおいて電話サービスを提供中であっても、通話に影響を与えずに流合雑音を検出することができる流合雑音検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、CATVシステムにおける上り通信で発生する流合雑音を検出する流合雑音検出システムであって、CATVシステムは、センター装置と、センター装置から加入者側に向かって延伸させて配置された伝送路網とを有し、センター装置と加入者との間で双方向の音声データ通信である電話サービスを行い、流合雑音検出システムは、伝送路網の所定箇所に挿入され、上り通信の導通・切断を制御する複数のゲートスイッチと、センター装置内に設けられ、伝送路網を介してゲートスイッチを制御する制御装置と、センター装置に入力される上り信号の周波数スペクトルを取得するスペクトラムアナライザと、を有し、制御装置によって各ゲートスイッチを順に、人間の耳で判別できる音の長さ以下の間オフにし、スペクトラムアナライザをこのオフの期間に同期して、上り信号の周波数スペクトルを測定することにより、流合雑音発生箇所の調査を行う、ことを特徴とする流合雑音検出システムである。
【0008】
伝送路網は、同軸ケーブル伝送路のみによって構成した伝送路網や、幹線を光ファイバー伝送路、支線を同軸ケーブル伝送路によって構成した伝送路網などである。
【0009】
ゲートスイッチをオフにする時間は、人間の耳で判別できる音の長さ以下の間であれば任意であるが、60ms以下であることが望ましく、20ms以下であることがさらに望ましい。電話サービスへの影響をより低減することができるためである。オフにする時間は短ければ短いほどよいが、1msよりも短くすると、ゲートスイッチやスペクトラムアナライザとして高い応答性を有したものが必要となるため、コストが嵩み、望ましくない。また、あるゲートスイッチをオフにしてから次のゲートスイッチをオフにするまでの時間は任意であるが、パケット損失率が0.05%以下となる範囲が望ましい。高品質な電話サービスを維持するためである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、ゲートスイッチは、60ms以下の間オフにする、ことを特徴とする流合雑音検出システムである。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、ゲートスイッチは、20ms以下の間オフにする、ことを特徴とする流合雑音検出システムである。
【0012】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明において、ゲートスイッチは、1ms以上の間オフにする、ことを特徴とする流合雑音検出システムである。
【0013】
第5の発明は、第1の発明から第4の発明において、あるゲートスイッチのオフから次のゲートスイッチのオフまでの時間は、パケット損失率が0.05%以下となる時間である、ことを特徴とする流合雑音検出システムである。
【0014】
第6の発明は、第1の発明から第5の発明において、各ゲートスイッチは、センター装置に近い側から順にオフにして行く、ことを特徴とする流合雑音検出システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、電話サービスに大きな影響を及ぼさずに、ゲートスイッチを順にオンオフして行くことができ、流合雑音の発生箇所の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1のCATVシステムの構成について示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1のCATVシステムの構成を示した図である。CATVシステムは、センター装置10と、センター装置に接続する光ファイバー伝送路11と、光ファイバー伝送路11を介してセンター装置10に接続する光ノード12と、光ノード12と複数の加入者宅14とを接続するツリー状に分岐された同軸ケーブル伝送路13と、によって構成されている。同軸ケーブル伝送路13は、双方向幹線分岐増幅器15や、タップオフ16によってツリー状に分岐されている。また、同軸ケーブル伝送路13には双方向幹線増幅器17が挿入されている。
【0019】
センター装置10は、CMTS(ケーブルモデムターミネーションシステム)20と、STM(ステータスモニタ)制御装置21と、スペクトラムアナライザ22と、光送受信機23と、分配器24と、を有している。光送受信機23の電気信号入出力側は、分配器24を介してCMTS20、STM制御装置21、スペクトラムアナライザ22にそれぞれ接続されている。また、光送受信機23の光信号入出力側は光ファイバー伝送路11に接続されている。また、CMTS20は、IP電話網40に接続されていて、スペクトラムアナライザ22はPC(図示しない)に接続されている。
【0020】
双方向幹線分岐増幅器15、双方向幹線増幅器17、光ノード12には、ゲートスイッチ18が内蔵ないし外付けされている。ゲートスイッチ18は、STM制御装置21からの制御により、伝送路を伝送する上り信号を導通・遮断する。
【0021】
加入者宅14の宅内には、タップオフ16から分岐した同軸ケーブル伝送路13が引き込まれ、CM(ケーブルモデム)30に接続されている。さらにCM32は電話機31に接続されている。
【0022】
このCATVシステムでは、電話機31とCM30との間で音声と音声データが相互に変換され、CMTS20とCM30との間でリアルタイムで双方向の音声データ通信が行われ、センター装置10のCMTS20がIP電話網40に接続されていることにより、電話サービスが運用される。なお、音声データ信号は、音声データにDOCSISヘッダ、Etherヘッダ、IPヘッダ、UDPヘッダ、RTPヘッダが付加された232Byte長のパケットであり、20msの間隔で送信されている。これらは規格によって定められたものである。
【0023】
次に、実施例1のCATVシステムにおいて、流合雑音を検出する動作について説明する。
【0024】
STM制御装置21から光ファイバー伝送路11、同軸ケーブル伝送路13を介して伝送される制御信号によって、各ゲートスイッチ18は、順に一定時間オフにされる。そして、オフにしたタイミングに同期してスペクトラムアナライザ22によってセンター装置10に入力される信号の周波数スペクトルを測定することで、流合雑音の検出および発生箇所の特定を行うことができる。
【0025】
このとき、上流側(センター装置10側)に近い順にゲートスイッチ18をオフにしていくとよい。効率的に流合雑音の発生箇所の特定を行うことができるためである。
【0026】
ゲートスイッチ18をオフにする時間は20msである。CM30から出力される上り音声データ信号が、20ms間隔のパケットとして送信されているため、20msのオフであれば多くても1つのパケットを喪失するだけで済む。1つのパケットの喪失で20msの音声の中断が発生するが、これは人間の耳では判別できない。したがって、ゲートスイッチ18のオフ時間を20msとすることで通話に影響を与えることなく、流合雑音を検出して発生箇所の特定を行うことができる。
【0027】
また、あるゲートスイッチ18のオフから次のゲートスイッチ18のオフまでの時間は、パケット損失率が0.05%以下となるような範囲とするのがよい。たとえば40sである。これにより通話品質を高く維持することができる。
【0028】
また、スペクトラムアナライザによる信号の周波数スペクトル測定では、PCモニタ等に波形を出力して目視で流合雑音を確認、および発生箇所の特定をしてもよいが、雑音レベルにしきい値を設定してソフトウェアにより自動的に流合雑音の検出、発生箇所の特定を行うようにしてもよい。
【0029】
以上のように、実施例1の流合雑音検出システムによれば、電話サービスに影響を与えることなく、ゲートスイッチを順にオフにして流合雑音の検出、発生箇所の特定を行うことができる。
【0030】
なお、実施例1では、ゲートスイッチ18のオフ時間を20msとしたが、これに限るものではなく、人間の耳で判別できる音の長さ以下の間であればよい。たとえば60ms以下の間オフにしてもよい。特に20ms以下であれば、上り音声データ通信の音声データパケットは20msごとの送信であることから、失う音声データのパケットは多くても1つであり、通話品質を高く維持することができる。また、ゲートスイッチ18のオフ時間は1ms以上であることが望ましい。1msよりも短くすると、ゲートスイッチやスペクトラムアナライザとして高い応答性を有したものが必要となるため、コストが嵩み、望ましくない。
【0031】
また、実施例1のCATVシステムでは、伝送路網として幹線を光ファイバー、支線を同軸ケーブルとするHFC方式を用いているが、同軸ケーブルのみで構成された伝送路網であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の流合雑音検出システムは、CATVシステムにおいて電話サービスを提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0033】
10:センター装置
11:光ファイバー伝送路
12:光ノード
13:同軸ケーブル伝送路
15:双方向幹線分岐増幅器
16:タップオフ
17:双方向幹線増幅器
18:ゲートスイッチ
20:CMTS
21:STM制御装置
22:スペクトラムアナライザ
23:光送受信機
30:CM
31:電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CATVシステムにおける上り通信で発生する流合雑音を検出する流合雑音検出システムであって、
前記CATVシステムは、センター装置と、前記センター装置から加入者側に向かって延伸させて配置された伝送路網とを有し、前記センター装置と前記加入者との間で双方向の音声データ通信である電話サービスを行い、
前記流合雑音検出システムは、
前記伝送路網の所定箇所に挿入され、上り通信の導通・切断を制御する複数のゲートスイッチと、
前記センター装置内に設けられ、前記伝送路網を介して前記ゲートスイッチを制御する制御装置と、
前記センター装置に入力される上り信号の周波数スペクトルを取得するスペクトラムアナライザと、
を有し、
前記制御装置によって各前記ゲートスイッチを順に、人間の耳で判別できる音の長さ以下の間オフにし、前記スペクトラムアナライザをこのオフの期間に同期して、上り信号の周波数スペクトルを測定することにより、流合雑音発生箇所の調査を行う、
ことを特徴とする流合雑音検出システム。
【請求項2】
前記ゲートスイッチは、60ms以下の間オフにする、ことを特徴とする請求項1に記載の流合雑音検出システム。
【請求項3】
前記ゲートスイッチは、20ms以下の間オフにする、ことを特徴とする請求項2に記載の流合雑音検出システム。
【請求項4】
前記ゲートスイッチは、1ms以上の間オフにする、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の流合雑音検出システム。
【請求項5】
あるゲートスイッチのオフから次のゲートスイッチのオフまでの時間は、パケット損失率が0.05%以下となる時間である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の流合雑音検出システム。
【請求項6】
各前記ゲートスイッチは、前記センター装置に近い側から順にオフにして行く、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の流合雑音検出システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−244299(P2012−244299A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110605(P2011−110605)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000116677)シンクレイヤ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】