説明

流路切換弁

【課題】 シールの漏れ易い方向が切り替わっても作動流体が漏れ出ることなく、しかも、簡単に組み立てることができること。
【解決手段】 ピストン部材の一部を構成する補強板50Rとガイド部材44Rとの間に挟持されるシール部材48Rおよび板ばね46Rが、小ネジBoにより連結板52に締結されるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールユニットを有し往復動可能なピストン部材を備える流路切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機器等における冷媒循環回路においては、一般に、流路を開閉制御するパイロットバルブおよび流路切換弁が実用に供されている。流路切換弁(可逆弁)は、例えば、特許文献1および2にも示されるように、熱交換器および圧縮機等が配される冷媒循環回路における圧縮機における高圧側または低圧側の流路に配置されている。
【0003】
流路切換弁は、所定圧力の作動流体が選択的に供給される第1の部屋、第3の部屋、および、上述のような流路の開口端に接続される第2の部屋を内部に備えている。第1の部屋、第2の部屋、および、第3の部屋は、それぞれ、その流路を横切る方向に往復動可能に支持されるピストン部材により区切られている。第1の部屋と第3の部屋との中間にピストン部材により形成される第2の部屋は、上述の流路の開口端に接続され連通している。そのピストン部材の中央部には、流路の開口端を開閉する弁体が設けられている。また、そのピストン部材の両端部には、それぞれ、第1の部屋と第2の部屋とを隔絶するシールユニットと、第3の部屋と第2の部屋とを隔絶するシールユニットとが設けられている。
【0004】
このような構成により、ピストン部材が、第1の部屋に供給される作動流体の圧力と第3の部屋に供給される作動流体の圧力との差に応じて往復動され、その弁体が流路の開口端を閉状態とするとき、例えば、冷媒の供給が阻止され、一方、その弁体が流路の開口端を開状態とするとき、冷媒の供給が可能となる。
【0005】
特許文献1に示されるように、作動流体の漏れに対して改善されたシールユニットは、例えば、内向きまたは外向きシール部材が背中合わせとなるように板状部材の相対向する面にそれぞれリベット等により固定されている。また、その板状部材は、ピストン部材の端部に連結部材を介して連結されている。
【0006】
【特許文献1】特許第3256270号公報
【特許文献2】実開平2−102083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような作動流体の漏れについて改善されたシールユニットは、ピストン部材の各端部にそれぞれ二枚のシール部材が必要とされるのでそのピストン部材の全体を構成する部品点数が比較的多くなり、その結果、その組み立てが煩雑となるという問題を伴う。
【0008】
以上の問題点を考慮し、本発明は、シールユニットを有し往復動可能なピストン部材を備える流路切換弁であって、シールの漏れ易い方向が切り替わっても作動流体が漏れることなく、しかも、簡単に組み立てることができる流路切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明に係る流路切換弁は、弁本体を有し、該弁本体の流路の切換を制御するパイロットバルブに接続される流路切換弁において、前記弁本体内に前記パイロットバルブを介して作動流体が供給される第1の部屋及び第3の部屋と、第1の部屋及び第3の部屋の少なくとも一方に隣接して配され該弁本体内の流路の開口端の開閉が行なわれる第2の部屋と、前記各部屋の境界部分に対応して少なくとも一箇所にシールユニットを有すると共に、前記開口端を開閉する弁体を有するピストン部材と、を備え、前記シールユニットは、略V字状断面の一部をなすシール面を外周縁部に有するシール部材を含んでなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る流路切換弁は、作動流体が供給される供給路における該作動流体の圧力差のある部位にそれぞれ接続され、該作動流体の圧力差に応じて拡大または縮小する第1の部屋および第3の部屋と、前記第1の部屋および前記第3の部屋に隣接して配され前記供給路の開口端に接続される第2の部屋を形成し、該第1の部屋および該第3の部屋との境界部分にシールユニットを有するとともに、該供給路の開口端を開閉する弁体を有するピストン部材と、を備え、前記シールユニットは、略V字状断面の一部をなすシール面を外周縁部に有するシール部材を含んでなることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記シールユニットは、前記シール部材の外周縁部を前記第2の部屋を形成する壁面に対し付勢する付勢部材をさらに含んでもよい。前記シールユニットにおけるシール面は、外周縁部が波形に連なって形成されてもよい。
【0012】
本発明に係る流路切換弁は、弁本体を有し、該弁本体の流路の切換を制御するパイロットバルブに接続される流路切換弁において、前記弁本体内に前記パイロットバルブを介して作動流体が供給される第1の部屋及び第3の部屋と、第1の部屋及び第3の部屋の少なくとも一方に隣接して配され該弁本体内の流路の開口端の開閉が行なわれる第2の部屋と、前記各部屋の境界部分に対応して少なくとも一箇所にシールユニットを有すると共に、前記開口端を開閉する弁体を有するピストン部材と、を備え、前記シールユニットは、略S字状断面または略N字状断面形状のシール面を外周縁部に有するシール部材を含んでなることを特徴とする。
【0013】
シールユニットにおけるシール部材および付勢部材は、補強板とガイド部材との間に挟持された状態で支持されるものでもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る流路切換弁によれば、シールユニットが、略V字状断面の一部をなすシール面を外周縁部に有するシール部材を含んでなる簡単な構成なのでシールの漏れ易い方向が切り替わっても作動流体が漏れることなく、しかも、簡単に組み立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図2は、本発明に係る流路切換弁の第1実施例の構成を、パイロットバルブとともに概略的に示す。
【0016】
図2において、流路切換弁40は、例えば、図示が省略される圧縮機、熱交換器(蒸発器、凝縮器)、膨張弁等を含んでなる冷凍装置に配されている。冷凍装置の冷媒供給回路における冷媒の循環を選択的に停止するためのパイロットバルブ10および流路切換弁40は、例えば、圧縮機の高圧側に配置されている。なお、流路切換弁40は、圧縮機の低圧側に配置されてもよい。
【0017】
パイロットバルブ10のポート22p1は、例えば、接続パイプ26を介して圧縮機における高圧側(吐出側)に接続されている。即ち、ポート22p1に接続される接続パイプ26の他端は、図示が省略される圧縮機における高圧側の配管に接続されている。
【0018】
パイロットバルブ10は、例えば、電磁駆動とされ、形成される流路を切り換えるスライド弁33と、ロッド24と、プランジャ16で構成される弁アッシーと、その弁アッシーが内部に移動可能に配される弁本体22と、弁アッシーの一端に連結され後述されるソレノイドコイル14により励磁される磁性体のプランジャ16と、その弁アッシーを一方向に付勢するコイルスプリング20と、プランジャ16を包囲するように配されるソレノイドコイル14と、を主な要素として含んで構成されている。
【0019】
プランジャ16は、ソレノイドコイル14の内側に移動可能に配され、吸引子18とプランジャ16との間に配されるコイルスプリング20により、吸引子18から離隔する方向に付勢されている。
【0020】
図示が省略される制御回路からの駆動電流に基づいてソレノイドコイル14が励磁されるとき、図3に示されるように、プランジャ16がコイルスプリング20の付勢力に抗して吸引子18に近接する方向に引き寄せられ、一方、ソレノイドコイル14が励磁されないとき、プランジャ16が図2に示されるように、コイルスプリング20の付勢力により、吸引子18から離隔する方向に付勢されることとなる。
【0021】
弁本体22の一端は、ソレノイドコイル14を収容するケーシング12に接続されている。弁本体22には、上述した接続パイプ26の一端が接続されるポート22p1が形成されている。ポート22p1に連通する内部には、上述の弁アッシーが移動可能に配されている。弁本体22におけるポート22p1に対向する部分には、接続パイプ28、31、および32の一端がそれぞれ接続されるポート22p2、22p3、および22p4が並列に設けられている。接続パイプ28および32の他端は、それぞれ、後述する流路切換弁40の第1の部屋40Aおよび第3の部屋40Cの内部に連通している。接続パイプ31の他端は、上述の圧縮機の低圧側(吸入側)に接続されている。
【0022】
弁アッシーの一端におけるポート22p2、22p3、および22p4に対向する部分には、上述の3個のポートのうちの2個のポートを選択的に互いに連通させる凹部が設けられたスライド弁33を有している。即ち、ソレノイドコイル14が励磁されていない図2に示される位置においては、弁アッシーのスライド弁33の凹部により、ポート22p2とポート22p3とが連通する。これにより、ポート22p1とポート22p4とが連通することとなる。一方、ソレノイドコイル14が励磁されている図3に示される位置においては、弁アッシーのスライド弁33の凹部により、ポート22p3とポート22p4とが連通することとなる。これにより、ポート22p1とポート22p2とが連通することとなる。
【0023】
従って、ソレノイドコイル14が選択的に励磁されることにより、ポート22p1からポート22p4に至る流路が、ポート22p1からポート22p2に至る流路に切り換わることとなる。
【0024】
流路切換弁40は、後述するピストン部材により区画される第1の部屋40A、第2の部屋40B、および、第3の部屋40Cをそのケーシング42の内部に備えている。第1の部屋40Aおよび第3の部屋40Cの容積は、差圧に基づくそのピストン部材の移動に応じて拡大または縮小される。図2に示されるように、第1の部屋40Aは、ケーシング42の内周部とピストン部材の左側の端面とにより形成されている。第3の部屋40Cは、ケーシング42の内周部とピストン部材の右側の端面とにより形成されている。
【0025】
第1の部屋40Aには、接続パイプ28の他端が接続されており、また、第3の部屋40Cには、接続パイプ32の他端が接続されている。
【0026】
第1の部屋40Aと第3の部屋40Cとの間に隣接して形成される第2の部屋40Bには、上述の冷媒供給回路における流路30の開口端と、流路34の開口端とが相対向して接続されている。
【0027】
第2の部屋40Bは、流路30および34の延在する方向に対して略直交するようにピストン部材の両端面とケーシング42の内周部により囲まれて形成されている。ピストン部材は、ケーシング42の内周部に対して往復動可能に配されている。
【0028】
ピストン部材は、弁体56を有する連結板52と、連結板52の両端にそれぞれ連結される後述するシールユニットとを含んで構成されている。
【0029】
流路30の延在方向に対し略直交するように配される連結板52は、その中央部に弁体56を有している。弁体56は、図2に示されるように、上述の流路30の開口端、および流路34の開口端がそれぞれ配される弁座54Aと弁座54Bとの間に摺動可能に配されている。これにより、弁体56が図2に示されるように、流路30の開口端と流路34の開口端との間に配されるとき、流路30と流路34との間が遮断されることとなる。一方、弁体56が図3に示されるように、流路30の開口端と流路34の開口端との間から離隔した位置にあるとき、流路30の開口端と流路34の開口端とは、連結板52における弁体56に隣接して形成される孔52aを介して連通することとなる。
【0030】
一対のシールユニットは、連結板52の両端部にそれぞれ対称的に連結されており、互いに同一の構造を有するので右側についてのみ説明し、左側のシールユニットについての説明は省略する。
【0031】
シールユニットは、図1に拡大されて示されるように、連結板52の一方の端部に小ネジBoで締結される補強板50R、シール部材48R,付勢部材としての板ばね46R、およびガイド部材44Rを含んで構成されている。なお、左側のシールユニットも連結板52の他方の端部に複数の小ネジBoで締結される補強板50L、シール部材48L,付勢部材としての板ばね46L、およびガイド部材44Lを含んで構成されている。
【0032】
ステンレス鋼板で円錐台断面形状に作られる補強板50Rの平坦な中央部は、連結板52の一方の端面に当接し、シール部材48R,板ばね46R、およびガイド部材44Rを介して小ネジBoで締結されている。補強板50Rの外周縁部は、弁体56に向かって所定の傾斜角度で折り曲げられている。補強板50Rの最外周の端面とケーシング42の内周面との間には、所定の隙間が形成されている。
【0033】
フッ素樹脂で円盤状に作られたシール部材48Rの中央部には、図4(A)、(B)に示されるように、平坦面48fが形成され、また、外周縁部には、補強板50Rの外周縁部に対応した斜面部が形成されている。これにより、シール部材48Rの左側には、凹部48rが形成されることとなる。
【0034】
また、シール部材48Rの斜面部と補強板50Rの外周縁部との間には、図1に示されるように、所定の隙間が形成されている。
【0035】
さらに、シール部材48Rにおける斜面部に連なる外周面には、ケーシング42の内周面に摺接しつつ各部屋相互間を隔絶するシール面48sが形成されている。シール面48sにより、第2の部屋40Bと第3の部屋40Cとの間でシールの漏れ易い方向が切り替わっても作動流体が漏れだすことがないので第2の部屋40Bと第3の部屋40Cとの間が隔絶されることとなる。
【0036】
これにより、平坦面48fの周縁に、折り返された略V字状断面形状の部分が形成されることとなる。また、平坦面48fの周縁における右側部分に板ばね46Rの外周縁が挿入される凹部48pが形成されることとなる。
【0037】
ステンレス鋼板で作られる板ばね46Rは、菊座金のように作られ、シール部材48Rにおけるシール面48sをケーシング42の内周面に向けて所定の圧力で付勢する折曲部を環状に有している。板ばね46Rおよびシール部材48Rは、上述の補強板50Rとガイド部材44Rとの間に挟持されており、上述の小ネジBoが図示が省略される共通直線上の孔を貫通し、連結板52の端部に締結されることにより、支持される。ガイド部材44Rの外周面とケーシング42の内周面との間には、所定の隙間が形成されている。
【0038】
従って、補強板50Rとガイド部材44Rとの間に板ばね46Rおよびシール部材48Rを介在させた状態で共通の小ネジBoにより、連結板52の両端部にそれぞれシールユニットを簡単に組み付け締結することができる。
【0039】
斯かる構成において、パイロットバルブ10におけるソレノイドコイル14が励磁される場合、図3に示されるように、スライド弁33の凹部により、ポート22p3とポート22p4とが連通することとなる。これにより、ポート22p1とポート22p2とが連通するので流路切換弁40における第1の部屋40Aの圧力が、第3の部屋40Cの圧力よりも大となる。従って、第1の部屋40Aの容積が増大し、第3の部屋40Cの容積が縮小することによって、図3に示されるように、ピストン部材が図2に示される状態から図3に示される状態に移動せしめられる。その結果、流路30および34の開口端が開放されるように弁体56が流路30および34の開口端から離隔され、流路30および34が互いに連通することとなる。
【0040】
一方、パイロットバルブ10におけるソレノイドコイル14が励磁されない場合、スライド弁33の凹部により、ポート22p2とポート22p3とが連通するのでポート22p1とポート22p4とが連通することとなる。これにより、第3の部屋40Cの圧力が第1の部屋40Aの圧力に比べて大となるのでピストン部材が図3に示される状態から図2に示される状態に移動せしめられる。その結果、流路30および34の開口端が弁体56により閉塞されるように弁体56が流路30および34の開口端に向かって近接され、流路30および34が遮断されることとなる。
【0041】
図5は、本発明に係る流路切換弁の第2実施例に用いられるシールユニットの構成の要部を示す。
【0042】
本発明に係る流路切換弁の第2実施例においても、シールユニットの構成を除き、上述の第1実施例において備えられているパイロットバルブ10および流路切換弁40と同様なパイロットバルブおよび流路切換弁を備えるものとされる。なお、図5においては、図1および2に示される例において同一とされる構成要素については同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0043】
本発明に係る流路切換弁の第2実施例においても、流路切換弁のケーシング内に移動可能に配されるピストン部材の両端に互いに同一のシールユニットが配されている。図5においては、ピストン部材の右側の端部側のシールユニットを示す。
【0044】
図5に拡大されて示されるように、シールユニットは、連結板52の端部に小ネジBoで締結される補強板60、シール部材62,板ばね64、インナーシール66、およびガイド部材44Rを主な要素として含んで構成されている。
【0045】
ステンレス鋼板で作られる補強板60の平坦な中央部は、連結板52の一方の端面に当接し、インナーシール66,板ばね64、およびガイド部材44Rを介して小ネジBoで一方の端面に締結されている。補強板60の外周縁部は、弁体に向かって屈曲し突出している。これにより、補強板60の外周縁部とガイド部材44Rにおける対向する部分との間には、ケーシング42の内周部で囲まれる環状の空間が形成され、その環状の空間内には、シール部材62が配されている。即ち、シール部材62は、補強板60の屈曲部とガイド部材44Rにおける対向する部分との間であってケーシング42の内周部で囲まれる環状の空間内に配されることとなる。また、補強板60の最外周の端面とケーシング42の内周面との間には、所定の隙間が形成されている。
【0046】
環状のシール部材62は、例えば、フッ素樹脂で作られ、図6(A)、(B)に示されるように中央部には、孔62aが形成され、また、シール部材62の環状部は、補強板60の外周縁部の屈曲部の高さに対応した寸法で形成されている。シール部材62の環状部は、略S字(あるいは、N字)状の断面形状を有している。これにより、シール部材62の右側には、後述する板ばね64の外周縁が挿入される凹部62pが形成されている。一方、シール部材62の左側には、凹部62rが形成されている。また、シール部材62の内周面部は、第2の部屋を密閉するように補強板60の屈曲部に当接している。
【0047】
さらに、シール部材62における外周面には、ケーシング42の内周面に摺接しつつ各部屋相互間を隔絶するシール面62sが形成されている。
【0048】
シール部材62の孔62aには、例えばフッ素系樹脂で円板状に作られるインナーシール66が配されている。
【0049】
ステンレス鋼板で作られる板ばね64は、菊座金のように作られ、シール部材62におけるシール面62sをケーシング42の内周面に向けて所定の圧力で付勢する折曲部を環状に有している。板ばね64およびインナーシール66は、上述の補強板60とガイド部材44Rとの間に挟持されており、上述の小ネジBoが図示が省略される共通直線上の孔を貫通し、連結板52の端部に締結されることにより、支持される。ガイド部材44Rの外周面とケーシング42の内周面との間には、所定の隙間が形成されている。
【0050】
従って、補強板60とガイド部材44Rとの間に、シール部材62、板ばね64およびインナーシール66を介在させた状態で連結板52の共通の小ネジBoにより、両端部にそれぞれシールユニットを簡単に締結することができる。
【0051】
なお、上述の例においては、インナーシール66が用いられているが、その代わりに、ねじ止め用等のシール剤が利用されてもよい。
【0052】
図7は、本発明に係る流路切換弁の第3実施例に用いられるシールユニットの構成の要部を示す。
【0053】
本発明に係る流路切換弁の第3実施例においても、シールユニットの構成を除き、上述の第1実施例において備えられているパイロットバルブ10および流路切換弁40と同様なパイロットバルブおよび流路切換弁を備えるものとされる。なお、図7においては、図1および2に示される例において同一とされる構成要素については同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0054】
本発明に係る流路切換弁の第3実施例においても、流路切換弁のケーシング内に移動可能に配されるピストン部材の両端に互いに同一のシールユニットが配されている。図7においては、ピストン部材の右側の端部側のシールユニットを示す。
【0055】
図7に拡大されて示されるように、シールユニットは、連結板52の端部に小ネジBoで締結される補強板70、シール部材72,板ばね74、およびガイド部材44Rを含んで構成されている。
【0056】
ステンレス鋼板で円錐台断面形状に作られる補強板70の平坦な中央部は、連結板52の一方の端面に当接し、シール部材72,板ばね74、およびガイド部材44Rを介して小ネジBoで一方の端面に締結されている。補強板70の外周縁部は、弁体に向かって所定の傾斜角度で折り曲げられている。補強板70の最外周の端面とケーシング42の内周面との間には、所定の隙間が形成されている。
【0057】
フッ素樹脂で円盤状に作られたシール部材72の中央部には、図8(A)、(B)に示されるように、平坦面72fが形成され、また、外周縁部には、補強板70の外周縁部に対応した斜面部が形成されている。これにより、シール部材72の左側には、凹部72rが形成されることとなる。また、シール部材72の斜面部が補強板70の折曲部に対して所定の僅かな隙間をもって配されている。この構成により、この隙間に作動流体の圧力が作用することによって、シール部材72の斜面部が内壁面に向かって外側に広がり自己シールすることとなる。
【0058】
さらに、シール部材72における斜面部に連なる外周面には、ケーシング42の内周面に摺接しつつ各部屋相互間を隔絶するシール面72S1および72S2が略波形に連なって形成されている。即ち、平坦面72fの周縁に、略V字状断面形状の部分が形成されることとなる。これにより、平坦面72fの周縁における右側部分に板ばね74の外周縁が挿入される凹部72pが形成されることとなる。
【0059】
ステンレス鋼板で作られる板ばね74は、菊座金のように作られ、シール部材72におけるシール面72S1および72S2をケーシング42の内周面に向けて所定の圧力で付勢する折曲部を環状に有している。板ばね74およびシール部材72は、上述の補強板70とガイド部材44Rとの間に挟持されており、上述の小ネジBoが図示が省略される共通直線上の孔を貫通し、連結板52の端部に締結されることにより、支持される。ガイド部材44Rの外周面とケーシング42の内周面との間には、所定の隙間が形成されている。
【0060】
従って、補強板70とガイド部材44Rとの間に板ばね74およびシール部材72を介在させた状態で共通の小ネジBoにより、シールユニットを連結板52の両端部にそれぞれ簡単に締結することができる。
【0061】
なお、本発明に係る流路切換弁の各実施例が、冷凍機内の冷媒供給回路に適用されているが、斯かる例に限られることなく、他の形式の空調装置等に適用されてもよいことは勿論である。また、上述の各実施例におけるシールユニットは、ピストン部材を備える2方の流路切換弁に適用されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、上述のようなピストン部材を備える3方、または4方の流路切換弁に適用されてもよい。
【0062】
さらに、上述の第2実施例においては、略S字状のシール部材が補強板およびガイド部材により挟持される状態で小ネジで連結板に締結される構造とされているが、斯かる例に限られることなく、例えば、連結板にシールハウジングが接着される場合にあっては、シール部材がそのシールハウジングの環状の溝部内に配置されるものでもよい。
【0063】
上述の例におけるシール部材およびインナーシールの材質は、フッ素系樹脂に限られることなく、例えば、適用されるシステムの仕様に適切に対応する材質が適宜選択されてもよい。また、上述の例における板ばねは、ステンレス鋼板製に限られることなく、弾性を有する他の金属材料であってもよい。
【0064】
図9および図10は、本発明に係る流路切換弁の第4実施例の構成を概略的に示す。
【0065】
図2に示される例では、流路切換弁40は、一対のシールユニットを備えるピストン部材の両側に形成される複数の部屋の相互間における差圧に応じて流路を開閉する2方弁である。一方、図9に示される例においては、流路切換弁80が、上述したようなシールユニットを1個だけ一端に備えるピストン部材の一端側に形成される複数の部屋の相互間における差圧に応じて流路を切り換える3方弁である。図9に示される例においても、流路切換弁80は、上述の例と同様にパイロットバルブ10に接続されている。
【0066】
なお、図9および図10においては、図1および2に示される例において同一とされる構成要素については同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0067】
図9において、流路切換弁80は、後述するピストン部材および隔壁86により区画される第1の部屋80A、第2の部屋80B、および、第3の部屋80Cをそのケーシング82の内部に備えている。第1の部屋80Aおよび第3の部屋80Cの容積は、差圧に基づくそのピストン部材の移動に応じて拡大または縮小される。図9に示されるように、第1の部屋80Aは、ケーシング82の内周部とピストン部材の左端に設けられるガイド部材44Lの端面とにより形成されている。第3の部屋80Cは、ピストン部材の補強板50Lおよびケーシング82の内周部の隔壁86の壁面とケーシング82の内周部とにより囲まれて形成されている。
【0068】
隔壁86は、第3の部屋80Cと第2の部屋80Bとの間を仕切るようにケーシング82の内周部の略中央部に設けられている。隔壁86は、ピストン部材のピストンロッド84が貫通される孔を有している。その孔の周縁には、ピストンロッド84が貫通するシール部材88が設けられている。このシール部材88により、第3の部屋80Cと第2の部屋80Bとの間が互いに連通することなく、隔絶されることとなる。
【0069】
第1の部屋80Aには、接続パイプ28の他端が接続されており、また、第3の部屋80Cには、接続パイプ32の他端が接続されている。
【0070】
第3の部屋80Cに隣接して隔壁86を介して形成される第2の部屋80Bには、上述の冷媒供給回路における流路30の開口端と、流路34の開口端とが相対向して接続されている。また、流路34の開口端に隣接して他の流路35の開口端が並設されている。
【0071】
第2の部屋80Bは、流路30、34および35の延在する方向に対して略直交するように隔壁86の壁面とケーシング82の内周部により囲まれて形成されている。
【0072】
第1の部屋80Aと第3の部屋80Cとの間を仕切るピストン部材は、ケーシング82の内周部に対して往復動可能に配されている。
【0073】
ピストン部材は、弁体90を一端に有するピストンロッド84と、ピストンロッド84の他端に連結される上述のシールユニットとを含んで構成されている。
【0074】
ピストンロッド84は、第3の部屋80Cと第2の部屋80Bとの間に隔壁86を介して跨って配されている。
【0075】
流路30の延在方向に対し略直交するように配されるピストンロッド84の弁体90は、流路30の開口端と上述の流路34等の開口端との間であって、上述の流路34の開口端、および、流路35の開口端がそれぞれ配される弁座の表面に摺動可能に配されている。これにより、弁体90が、図9に示されるように、流路30の開口端と流路34の開口端との間に配されるとき、流路30と流路34との間が遮断されるとともに、流路30と流路35とが連通することとなる。一方、弁体90が、図10に示されるように、流路30の開口端と流路35の開口端との間にあるとき、流路30の開口端と流路35の開口端との間は、遮断されるとともに、流路30と流路34とが連通することとなる。
【0076】
斯かる構成において、パイロットバルブ10におけるソレノイドコイル14が励磁される場合、図10に示されるように、スライド弁33の凹部により、ポート22p3とポート22p4とが連通することとなる。これにより、ポート22p1とポート22p2とが連通するので流路切換弁80における第1の部屋80Aの圧力が、第3の部屋80Cの圧力よりも大となる。従って、第1の部屋80Aの容積が増大し、第3の部屋80Cの容積が縮小することによって、図10に示されるように、ピストン部材が図9に示される状態から図10に示される状態に移動せしめられる。その結果、流路30および34の開口端が開放されるように弁体90が摺動され、流路30および34が互いに連通するとともに、流路30と流路35との間が遮断されることとなる。
【0077】
一方、パイロットバルブ10におけるソレノイドコイル14が励磁されない場合、スライド弁33の凹部により、ポート22p2とポート22p3とが連通するのでポート22p1とポート22p4とが連通することとなる。これにより、第3の部屋80Cの圧力が第1の部屋80Aの圧力に比べて大となるのでピストン部材が図10に示される状態から図9に示される状態に移動せしめられる。その結果、流路30および35の開口端が解放され、流路34の開口端が閉塞されるように弁体90が摺動される。これにより、流路30および34が遮断されるとともに、流路30と流路35とが連通するように流路が切り換わることとなる。
【0078】
上述の第4実施例においては、シールユニットは補強板50L、シール部材48L,付勢部材としての板ばね46L、およびガイド部材44Lを含んで構成されるが、斯かる例に限られることなく、それに代えて、例えば、上述の図5、図7にそれぞれ示されるシールユニットを備えるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る流路切換弁の第1実施例における要部を示す部分断面図である。
【図2】本発明に係る流路切換弁の第1実施例の構成を、パイロットバルブとともに示す構成図である。
【図3】図2に示される例における動作説明に供される図である。
【図4】(A)は、図2に示される例に用いられるシール部材を示す平面図であり、(B)は、(A)に示される例の側面図である。
【図5】本発明に係る流路切換弁の第2実施例における要部を示す部分断面図である。
【図6】(A)は、図5に示される例に用いられるシール部材を示す平面図であり、(B)は、(A)に示される例の側面図である。
【図7】本発明に係る流路切換弁の第3実施例における要部を示す部分断面図である。
【図8】(A)は、図7に示される例に用いられるシール部材を示す平面図であり、(B)は、(A)に示される例の側面図である。
【図9】本発明に係る流路切換弁の第4実施例の構成を、パイロットバルブとともに示す構成図である。
【図10】図9に示される例における動作説明に供される図である。
【符号の説明】
【0080】
40、80 流路切換弁
42 ケーシング
44R ガイド部材
46R、64、74 板ばね
48R、62、72 シール部材
50R、60、70 補強板
52 連結板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体を有し、該弁本体の流路の切換を制御するパイロットバルブに接続される流路切換弁において、
前記弁本体内に前記パイロットバルブを介して作動流体が供給される第1の部屋及び第3の部屋と、第1の部屋及び第3の部屋の少なくとも一方に隣接して配され該弁本体内の流路の開口端の開閉が行なわれる第2の部屋と、
前記各部屋の境界部分に対応して少なくとも一箇所にシールユニットを有すると共に、前記開口端を開閉する弁体を有するピストン部材と、を備え、
前記シールユニットは、略V字状断面の一部をなすシール面を外周縁部に有するシール部材を含んでなることを特徴とする流路切換弁。
【請求項2】
作動流体が供給される供給路における該作動流体の圧力差のある部位にそれぞれ接続され、該作動流体の圧力差に応じて拡大または縮小する第1の部屋および第3の部屋と、
前記第1の部屋および前記第3の部屋に隣接して配され前記供給路の開口端に接続される第2の部屋を形成し、該第1の部屋および該第3の部屋との境界部分にシールユニットを有するとともに、該供給路の開口端を開閉する弁体を有するピストン部材と、を備え、
前記シールユニットは、略V字状断面の一部をなすシール面を外周縁部に有するシール部材を含んでなることを特徴とする流路切換弁。
【請求項3】
前記シールユニットは、前記シール部材の外周縁部を前記第2の部屋を形成する壁面に対し付勢する付勢部材をさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の流路切換弁。
【請求項4】
前記シールユニットにおけるシール面は、外周縁部が波形に連なって形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3うちのいずれかに記載の流路切換弁。
【請求項5】
弁本体を有し、該弁本体の流路の切換を制御するパイロットバルブに接続される流路切換弁において、
前記弁本体内に前記パイロットバルブを介して作動流体が供給される第1の部屋及び第3の部屋と、第1の部屋及び第3の部屋の少なくとも一方に隣接して配され該弁本体内の流路の開口端の開閉が行なわれる第2の部屋と、
前記各部屋の境界部分に対応して少なくとも一箇所にシールユニットを有すると共に、前記開口端を開閉する弁体を有するピストン部材と、を備え、
前記シールユニットは、略S字状断面または略N字状断面形状のシール面を外周縁部に有するシール部材を含んでなることを特徴とする流路切換弁。
【請求項6】
前記シールユニットは、前記シール部材の外周縁部を前記第2の部屋を形成する壁面に対し付勢する付勢部材をさらに含むことを特徴とする請求項5記載の流路切換弁。
【請求項7】
前記シールユニットにおけるシール部材および付勢部材は、補強板とガイド部材との間に挟持された状態で支持されることを特徴とする請求項3または請求項6記載の流路切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−78119(P2007−78119A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268762(P2005−268762)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】