説明

流量制御弁

【課題】弁体の作動安定性を向上するとともに、弁体の軸回りの回転に関係なく、計量部における計量孔の内周面の全周に亘って異物の堆積を防止する。
【解決手段】PCVバルブ40は、ガス通路55を設けたケース42と、ガス通路55内に進退可能に設けられたバルブ体60と、バルブ体60を後退方向へ付勢するスプリング72とを備える。ガス通路55に形成された計量孔55cと、バルブ体60に形成された計量面61とにより計量部70が構成される。バルブ体60の計量面61上に、計量孔55cの内周面56に対する摺動接触によりバルブ体60を軸方向にガイドしかつ流路溝68を形成するガイド部64が形成される。ガイド部64は、バルブ体60の軸方向の移動ストローク内における移動によって計量孔55cの内周面56に対する接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量を制御する流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両における内燃機関(エンジン)のブローバイガス還元装置には、ブローバイガスの流量を制御する流量制御弁としてPCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブが用いられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
PCVバルブの従来例について説明する。図9はPCVバルブを示す断面図である。
図9に示すように、PCVバルブ1は、ケース2とバルブ体3とスプリング4とを備えている。ケース2には軸方向(図9において左右方向)に延びるガス通路5が設けられている。ガス通路5にはブローバイガスが流通する。また、バルブ体3は、ガス通路5内に軸方向に進退可能に設けられている。また、スプリング4は、ケース2とバルブ体3との間に介装されており、バルブ体3を後退方向(図9において右方)へ付勢している。ガス通路5の途中に計量孔6aが形成されている。また、バルブ体3には計量面6bが形成されている。計量孔6aと計量面6bとにより計量部6が構成されている。
【0004】
PCVバルブ1は、バルブ体3の進退すなわち軸方向の移動によって計量部6の通路断面積を調整することによりブローバイガスの流量を制御すなわち計量する。また、バルブ体3の計量面6b上には、計量孔6aの内周面に対する摺動接触によりバルブ体3を軸方向にガイドするガイド突起8が突出されている。ガイド突起8は、バルブ体3の軸方向に一直線状に延びるリブ状でかつ放射状に複数本(例えば3本)形成されている。したがって、バルブ体3の軸方向の移動に際し、計量孔6aの内周面に各ガイド突起8(詳しくは径方向の外端)が摺動接触することによって、バルブ体3が軸方向にガイドされる。これにより、バルブ体3の径方向の振動が抑制され、バルブ体3の作動安定性が向上される。なお、バルブ体3の周方向に隣り合うガイド突起8の相互間にブローバイガスが流れる流路溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−182939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記PCVバルブ1によると、各ガイド突起8がバルブ体3の軸方向に一直線状に延びるように形成されていた。したがって、バルブ体3が軸回り方向に回転しない限り、各ガイド突起8は、バルブ体3の軸方向の移動によって計量孔6aの内周面に対する接触位置が周方向に変化しない。このため、計量孔6aの内周面に対して各ガイド突起8が摺動しない非摺動領域に対して、内燃機関(エンジン)のクランクケース内で発生したスラッジ(カーボン状の異物)が付着し、そのスラッジを擦り落とすことができない。すると、経時変化によってスラッジが堆積するという問題があった。ひいては、ブローバイガスの計量された流量(以下「計量流量」という)が減少し、換気効率が低下する。このため、エンジンオイルに含まれるスラッジの増加によりエンジンオイルの劣化、及び、クランクケースの内圧の上昇等を招くことになる。
【0007】
ところで、前記特許文献1のものでは、ブローバイガスの流れを利用してバルブ体3に軸回り方向の回転力を付与するリブ状、溝状等の回転力付与部が設けられている。したがって、ブローバイガスの流れを利用してバルブ体3が軸回り方向に回転されることにより、計量孔6aの内周面に対する各ガイド突起8の接触位置が周方向に変化する。しかしながら、バルブ体3に回転不足が生じると、各ガイド突起8が計量孔6aの内周面の全周に亘って摺動することができず、前記非摺動領域が少なからず発生するといった問題が残った。なお、特許文献1(図16参照)には、各ガイド突起8をバルブ体3の軸方向に傾斜状に形成したものも開示されている。しかしながら、バルブ体3の軸方向の移動ストローク内における移動によって計量孔6aの内周面に対する接触位置が全周に亘って変化するように構成されていないため、依然としてバルブ体3の回転不足による問題が残る。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、弁体の作動安定性を向上するとともに、弁体の軸回りの回転に関係なく、計量部における計量孔の内周面の全周に亘って異物の堆積を防止することのできる流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする流量制御弁により解決することができる。
請求項1に記載された流量制御弁によると、流体通路を設けたケースと、流体通路内に軸方向に進退可能に設けられた弁体と、弁体を後退方向へ付勢するスプリングとを備え、流体通路の途中に形成された計量孔と、弁体に形成された計量面とにより計量部が構成され、弁体の軸方向の移動によって計量部の通路断面積を調整することにより流体の流量を制御する流量制御弁であって、弁体の計量面上には、計量孔の内周面に対する摺動接触により該弁体を軸方向にガイドしかつ流体が流れる流路溝を形成するガイド部が形成され、ガイド部は、弁体の軸方向の移動ストローク内における移動によって計量孔の内周面に対する接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化するように構成されている。この構成によると、弁体の軸方向の移動に際し、計量部における計量孔の内周面に対してガイド部が摺動接触することにより、弁体が軸方向(進退方向)にガイドされる。これにより、弁体の径方向の振動を抑制し、弁体の作動安定性を向上することができる。また、弁体の軸方向の移動ストローク内における移動によって計量孔の内周面に対するガイド部の接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化することができる。これによって、計量孔の内周面に対するガイド部の非摺動領域をなくし、計量孔の内周面に付着した異物をガイド部によって全面的に擦り落とすことができる。したがって、弁体の軸回りの回転に関係なく、計量部における計量孔の内周面の全周に亘って異物の堆積を防止することができる。ひいては、計量孔の内周面に対する異物の堆積に起因する流体の計量流量の減少を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載された流量制御弁によると、ガイド部が、弁体の軸方向に傾斜状に突出するリブ状のガイド突起により構成されている。この構成によると、ガイド部において、周方向に隣り合うガイド突起の相互間をブローバイガスが流れる流路溝とすることができる。
【0011】
請求項3に記載された流量制御弁によると、ガイド部が、弁体の軸方向に傾斜しかつその傾斜方向を異にする複数本の流路溝を形成している。この構成によると、ガイド部において、傾斜方向を異にする複数本の流路溝に流体を流すことができる。
【0012】
請求項4に記載された流量制御弁によると、内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブである。この構成によると、PCVバルブにおける弁体の作動安定性を向上するとともに、弁体の軸回りの回転に関係なく、計量部における計量孔の内周面の全周に亘って異物(スラッジ)の堆積を防止することができる。ひいては、計量孔の内周面に対する異物の堆積に起因するブローバイガスの計量流量の減少を防止することができる。さらには、換気効率の低下を防止し、エンジンオイルの劣化、及び、クランクケースの内圧の上昇等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1にかかるPCVバルブを示す断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】バルブ体を示す側面図である。
【図4】バルブ体を示す正面図である。
【図5】バルブ体のガイド部を示す展開図である。
【図6】ブローバイガス還元装置を示す構成図である。
【図7】実施形態2にかかるバルブ体のガイド部を示す展開図である。
【図8】実施形態3にかかるバルブ体のガイド部を示す展開図である。
【図9】従来例にかかるPCVバルブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0015】
[実施形態1]
実施形態1について説明する。実施形態1では、流量制御弁として、内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブを例示する。説明の都合上、ブローバイガス還元装置の一例を説明した後でPCVバルブについて説明する。なお、図6はブローバイガス還元装置を示す構成図である。
図6に示すように、ブローバイガス還元装置10は、内燃機関であるエンジン12のエンジン本体13の燃焼室からシリンダブロック14のクランクケース15内に洩れたブローバイガスをインテークマニホールド20内に導入することにより、燃焼室で再び燃焼させるシステムである。
【0016】
前記エンジン本体13は、前記シリンダブロック14と、前記クランクケース15の下面側に締結されたオイルパン16と、シリンダブロック14の上面側に締結されたシリンダヘッド17と、シリンダヘッド17の上面側に締結されたシリンダヘッドカバー18とを備えている。エンジン本体13は、吸気、圧縮、爆発、排気といった行程を経ることにより駆動力を得る。また、エンジン本体13の燃焼室(図示しない。)内での燃焼にともない、エンジン本体13内すなわちクランクケース15内や、そのクランクケース15内に連通するシリンダヘッドカバー18内にはブローバイガスが発生する。また、ブローバイガスが流入するシリンダヘッドカバー18内及びクランクケース15内等は、本明細書でいう「エンジン本体内」に相当する。
【0017】
前記シリンダヘッドカバー18には、新気導入口18a及びブローバイガス取出口18bが設けられている。新気導入口18aに、新気導入通路30の一端(下流端)が連通されている。また、ブローバイガス取出口18bに、ブローバイガス通路36の一端(上流端)が連通されている。なお、新気導入口18a及び/又はブローバイガス取出口18bは、シリンダヘッドカバー18に代えてクランクケース15に設けることもできる。
【0018】
前記シリンダヘッド17には、サージタンク21を備えるインテークマニホールド20の一端(下流端)が連通されている。インテークマニホールド20の他端(上流端)には、スロットルボデー24及び吸気管路23を介して、エアクリーナ25が連通されている。スロットルボデー24は、スロットル弁24aを備えている。スロットル弁24aは、例えばアクセルペダル(図示しない)に連繋されており、そのペダルの踏込み量(操作量)に応じて開閉される。また、エアクリーナ25は、空気いわゆる新気を導入するもので、その新気をろ過するフィルタエレメント26を内蔵している。エアクリーナ25、吸気管路23、スロットルボデー24及びインテークマニホールド20により、新気すなわち吸入空気をエンジン本体13の燃焼室に導入するための一連の吸気通路27が形成されている。吸気通路27において、スロットル弁24aよりも上流側の通路部分を上流側の吸気通路部27aといい、スロットル弁24aよりも下流側の通路部分を下流側の吸気通路部27bという。
【0019】
前記吸気管路23には新気取入口29が形成されている。新気取入口29には、前記新気導入通路30の他端(上流端)が連通されている。新気導入通路30には逆流防止弁32が設けられている。逆流防止弁32は、前記上流側の吸気通路部27aからクランクケース15内への空気いわゆる新気の流れ(図6中、矢印Y1参照)を許容し、かつ、その逆方向への流れすなわち逆流(図6中、矢印Y3参照)を阻止する。また、前記サージタンク21にはブローバイガス導入口34が形成されている。ブローバイガス導入口34には、前記ブローバイガス通路36の他端(下流端)が連通されている。なお、逆流防止弁32は、必要に応じて設けられるものであり、省略することもできる。
【0020】
次に、前記ブローバイガス還元装置10の作動について説明する。エンジン12の軽、中負荷時においては、スロットル弁24aがほぼ全閉に近い状態にある。このため、吸気通路27の下流側の吸気通路部27bに上流側の吸気通路部27aより大きな負圧(真空側に大きくなる負圧)が発生する。したがって、エンジン本体13内のブローバイガスが、ブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入される(図6中、矢印Y2参照)。このとき、ブローバイガス通路36を流れるブローバイガスの流量がPCVバルブ40(後述する)によって制御される。
【0021】
また、ブローバイガスがエンジン本体13内からブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入されるにともない逆流防止弁32が開弁する。これにより、吸気通路27の上流側の吸気通路部27aの新気が、新気導入通路30を通じてエンジン本体13内に導入される(図6中、矢印Y1参照)。そして、エンジン本体13内に導入された新気は、ブローバイガスとともにブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入される(図6中、矢印Y2参照)。上記のようにして、エンジン本体13内が掃気される。
【0022】
また、エンジン12の高負荷においては、スロットル弁24aの開度が大きくなる。したがって、吸気通路27の下流側の吸気通路部27bの圧力が大気圧に近づく。したがって、エンジン本体13内のブローバイガスが下流側の吸気通路部27b内に導入されにくくなり、エンジン本体13内の圧力も大気圧に近づく。このため、上流側の吸気通路部27aから新気導入通路30を通ってエンジン本体13内に導入される新気の流量も減少する。また、逆流防止弁32の閉弁によって、エンジン本体13内から新気導入通路30へのブローバイガスの逆流(図6中、矢印Y3参照)が阻止される。
【0023】
前記ブローバイガス通路36には、ブローバイガスの流量を制御するための流量制御弁としてのPCVバルブ40が設けられている。PCVバルブ40は、ブローバイガスの上流側圧力と下流側圧力との差圧に応じてブローバイガスの流量を制御すなわち計量することによって、エンジンで発生するブローバイガス量に見合ったブローバイガス流量を流すことができる。
【0024】
次に、PCVバルブ40について説明する。図1はPCVバルブを示す断面図、図2は図1のII−II線矢視断面図、図3はバルブ体を示す側面図、図4は同じく正面図、図5はバルブ体のガイド部を示す展開図である。なお、図5においてガイド部のガイド突起を示す部分に斜線が付されている。また、説明の都合上、図1の左側を前側とし、その右側を後側として説明を行う。
図1に示すように、PCVバルブ40のケース42は、例えば樹脂製で中空円筒状をなしている。ケース42の軸方向の中央部内には、円環板状のバルブシート43が同心状に配置されている。なお、ケース42は、例えば、前後に二分割された一対のケース半体を相互に接合することによって構成されており、両ケース半体の間にバルブシート43が挟着されている。
【0025】
前記ケース42の中空部は、軸方向に延びるガス通路55となっている。ケース42の後端部には、径方向内方へ張り出す円環状の後端壁42aが形成されている。後端壁42aの中空孔部は、ガス通路55の入口55aになっている。また、ケース42の前端開口部は、ガス通路55の出口55eとなっている。また、バルブシート43は、ガス通路55を入口55a側すなわち上流側の通路部55bと、出口55e側すなわち下流側の通路部55dとに区画している。バルブシート43の中空孔は、上流側の通路部55bと下流側の通路部55dとを連通する計量孔55cとなっている。計量孔55cは、両通路部55b、55dの通路径よりも小さい孔径の丸孔状に形成されている。なお、ケース42の後端部は、前記ブローバイガス通路36(図6参照)の上流側の通路部に接続される。また、ケース42の前端部は、ブローバイガス通路36の下流側の通路部に接続される。また、ケース42の後端部は、前記シリンダヘッドカバー18のブローバイガス取出口18b(図6参照)に接続される場合もある。したがって、ガス通路55には流体であるブローバイガスが流れる。なお、ガス通路55は本明細書でいう「流体通路」に相当する。
【0026】
前記ガス通路55には、バルブ体60が軸方向(図1において左右方向)に進退可能に配置されている。バルブ体60は、例えば金属製で、ほぼ円柱状に形成されている。バルブ体60の外周面には、先細りのテーパ状をなす計量面61が形成されている。また、バルブ体60の先端部(前端部)には、先細りをなすテーパ部60aが同心状に形成されている。バルブ体60は、ガス通路55における上流側の通路部55bから計量孔55c内に挿通されている。バルブシート43の内周面は、計量孔55cの内周面(符号、56を付す)となっている(図2参照)。計量孔55cの内周面56とバルブ体60の計量面61とにより計量部70が構成されている。したがって、バルブ体60が後退(図1において右方へ移動)するにともなって計量部70の有効開口面積すなわち通路断面積が増大される。また逆に、バルブ体60が前進(図1において左方へ移動)するにともなって計量部70の通路断面積が減少される。なお、バルブ体60は本明細書でいう「弁体」に相当する。
【0027】
図1に示すように、前記バルブ体60の後端部には、径方向外方へ張り出す円環板状のガイドフランジ62が形成されている。ガイドフランジ62の外周面は、前記ケース42の上流側の通路部55bの通路壁面に対して摺動接触可能となっている。したがって、バルブ体60の軸方向の移動に際し、ケース42に対してバルブ体60の後端部が同心状に支持された状態で軸方向にガイドされる。これによって、バルブ体60の径方向の振動、とくに後端部における径方向の振動が抑制される。また、ガイドフランジ62の外周部には、ブローバイガスの通過を許容する適数個(図4では3個を示す)の切欠き62aが形成されている。なお、ガイドフランジ62は本明細書でいう「後側のガイド部」に相当する。
【0028】
前記ケース42と前記バルブ体60との間には、圧縮コイルスプリングからなるスプリング72が介装されている(図1参照)。スプリング72はバルブ体60に嵌合されている。スプリング72の後端部は、バルブ体60のガイドフランジ62に係止されている。また、スプリング72の前端部は、前記バルブシート43に係止されている。スプリング72は、常にバルブ体60を後退方向(図1において右方)すなわち計量部70の通路断面積が増大する方向へ付勢している。なお、バルブ体60の最後退位置においてガイドフランジ62がケース42の後端壁42aに当接する。
【0029】
前記バルブ体60のテーパ部60aの外周面を含む計量面61上には、前記計量孔55cの内周面56に対する摺動接触によりバルブ体60を軸方向にガイドするガイド部64が形成されている。ガイド部64は、バルブ体60の軸方向に傾斜状に突出するリブ状の複数本(本実施形態では4本を示す)のガイド突起66により構成されている(図3及び図4参照)。各ガイド突起66は、バルブ体60の周方向に90°間隔で放射状に配置されている。また、各ガイド突起66は、相互に平行状をなしており、バルブ体60の周方向に隣り合うガイド突起66の相互間にブローバイガスが流れる流路溝68が形成されている。また、各ガイド突起66(詳しくは径方向の外端部)は、前記計量孔55cの内周面56に対して摺動接触可能となっている(図1及び図2参照)。したがって、バルブ体60の軸方向の移動に際し、ケース42側の部材すなわちバルブシート43の内周面(計量孔55cの内周面56)に対してバルブ体60の前部が同心状に支持された状態で軸方向にガイドされる。これによって、バルブ体60の径方向の振動、とくに前端部における径方向の振動が抑制される。なお、ガイド部64は本明細書でいう「前側のガイド部」に相当する。
【0030】
前記ガイド部64の各ガイド突起66(詳しくは径方向の外端部)は、前記バルブ体60の軸方向の移動ストローク内における移動によって計量孔55cの内周面56に対する接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化するように構成されている。すなわち、図5に示すように、バルブ体60の最後退位置と最前進位置との間の軸方向の移動ストロークS内において、各ガイド突起66の径方向の外端部を含む円周面上の周方向の任意の位置で、バルブ体60の軸線に平行する直線Lが、少なくとも1本のガイド突起66(詳しくは径方向の外端部)と交差するように設定されている。このため、バルブ体60の軸回りの回転に関係なく、すなわちバルブ体60が軸回りに回転してもしなくても、バルブ体60の移動ストロークS内における移動によって計量孔55cの内周面56に対する各ガイド突起66の接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化することができる。
【0031】
次に、前記したPCVバルブ40の作動について説明する。ケース42内のガス通路55の上流側の通路部55bよりも下流側の通路部55dが低圧(負圧)になると、ブローバイガスが、入口55aから上流側の通路部55b内に流入した後、計量孔55c内の流路溝68、下流側の通路部55dを通って出口55eから流出する。このとき、上流側の通路部55bの上流側圧力と下流側の通路部55dの下流側圧力(スプリング72の付勢力を含む)との差圧に応じて、バルブ体60が進退(軸方向に移動)する。これにより、ガス通路55を流れるブローバイガスの流量が制御すなわち計量される。詳しくは、上流側圧力が下流側圧力より大きくかつ上流側圧力と下流側圧力との差圧が大きいときには、バルブ体60がスプリング72の付勢力に抗して前進されることにより、計量部70の通路断面積が減少されるため、ブローバイガスの流量が少なくなる。また、上流側圧力と下流側圧力との差圧が小さくなると、バルブ体60がスプリング72の付勢力により後退されることにより、計量部70の通路断面積が増大されるため、ブローバイガスの流量が多くなる。このように、計量部70の通路断面積が増減されることにより、ガス通路55を流れるブローバイガスの流量が制御される。
【0032】
前記したPCVバルブ40によると、バルブ体60の軸方向の移動に際し、計量部70における計量孔55cの内周面56に対してガイド部64の各ガイド突起66が摺動接触することにより、バルブ体60が軸方向(進退方向)にガイドされる。これにより、バルブ体60の径方向の振動を抑制し、バルブ体60の作動安定性を向上することができる。
【0033】
また、バルブ体60の移動ストロークS(図5参照)内における移動によって計量孔55cの内周面56に対するガイド部64の各ガイド突起66の接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化することができる。これによって、計量孔55cの内周面56に対するガイド部64の各ガイド突起66の非摺動領域をなくし、計量孔55cの内周面56に付着した異物(スラッジ)をガイド部64の各ガイド突起66によって全面的に擦り落とすことができる。したがって、バルブ体60の軸回りの回転に関係なく、計量部70における計量孔55cの内周面56の全周に亘って異物の堆積を防止することができる。ひいては、計量孔55cの内周面56に対する異物の堆積に起因するブローバイガスの計量流量の減少を防止することができる。さらには、換気効率の低下を防止し、エンジンオイルの劣化、及び、クランクケースの内圧の上昇等を抑制することができる。
【0034】
また、ガイド部64が、バルブ体60の軸方向に傾斜状に突出する複数本(本実施形態では4本)のリブ状のガイド突起66により構成されている。したがって、ガイド部64において、周方向に隣り合うガイド突起66の相互間をブローバイガスが流れる流路溝68とすることができる。
【0035】
また、各流路溝68を流れるブローバイガスの流れを各ガイド突起66が受けることによって、バルブ体60に軸回り方向の回転力が付与される。このため、バルブ体60が軸回りに回転(図5において上から下方への回転が相当する)した場合でも、前に述べたように、バルブ体60の移動ストロークS内における移動によって計量孔55cの内周面56に対するガイド部64の各ガイド突起66の接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化することによって、計量部70における計量孔55cの内周面56の全周に亘って異物の堆積を防止することができる。
【0036】
[実施形態2]
実施形態2について説明する。本実施形態は、前記実施形態1の一部を変更したものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明を省略する。図7はバルブ体のガイド部を図5に準じて示す展開図である。
図7に示すように、本実施形態は、ガイド部(符号、74を付す)を、2本のガイド突起(符号、76を付す)により構成したものである。各ガイド突起76は、バルブ体60の周方向に180°間隔で放射状に配置されている。また、各ガイド突起76は、相互に平行状をなしており、ガイド突起76の相互間にブローバイガスが流れる流路溝(符号、78を付す)が形成されている。
【0037】
前記ガイド部74の各ガイド突起76(詳しくは径方向の外端部)は、バルブ体60の移動ストロークS内において、各ガイド突起76の径方向の外端部を含む円周面上の周方向の任意の位置で、バルブ体60の軸線に平行する直線Lが、少なくとも1本のガイド突起76(詳しくは径方向の外端部)と交差するように設定されている。このため、バルブ体60の軸回りの回転に関係なく、すなわちバルブ体60が軸回りに回転してもしなくても、バルブ体60の移動ストロークS内における移動によって計量孔55cの内周面56に対する各ガイド突起76の接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化することができる。
【0038】
[実施形態3]
実施形態3について説明する。本実施形態は、前記実施形態1の一部を変更したものである。図8はバルブ体のガイド部を図5に準じて示す展開図である。
図8に示すように、本実施形態におけるガイド部(符号、84を付す)は、バルブ体60の軸方向に傾斜しかつその傾斜方向を異にする2本1組をなす2組の計4本の流路溝88a,88bを形成している。すなわち、バルブ体60の軸方向の一端側(図8において右端側)から他端側へ向かって先細り状をなす山形状の2つのガイド突起86aと、バルブ体60の軸方向の他端側(図8において左端側)から他端側へ向かって先細り状をなす山形状の2つのガイド突起86bとの協働によって、2組の流路溝88a,88bが形成されている。なお、各組の流路溝88a,88bは、その下流端(図8において左端部)において他方の組の傾斜方向の異なる流路溝88b,88aと連通されている。
【0039】
前記ガイド部84の各ガイド突起86a,86b(詳しくは径方向の外端部)は、バルブ体60の移動ストロークS内において、各ガイド突起86a,86bの径方向の外端部を含む円周面上の周方向の任意の位置で、バルブ体60の軸線に平行する直線Lが、少なくともいずれかのガイド突起86a,86b(詳しくは径方向の外端部)と交差するように設定されている。このため、バルブ体60の軸回りの回転に関係なく、すなわちバルブ体60が軸回りに回転してもしなくても、バルブ体60の移動ストロークS内における移動によって計量孔55cの内周面56に対する各ガイド突起86a,86bの接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化することができる。
【0040】
本実施形態によると、ガイド部84が、バルブ体60の軸方向に傾斜しかつその傾斜方向を異にする複数本(2組の計4本)の流路溝88a,88bを形成している。したがって、ガイド部84において、傾斜方向を異にする流路溝88a,88bにブローバイガス(流体)を流すことができる。
【0041】
また、各流路溝88a,88bを流れるブローバイガスの流れを各ガイド突起86bの各流路溝88a,88b側の山形状の傾斜面が受けることによって、バルブ体60に対する軸回り方向の回転力を相殺することができる。このため、バルブ体60の軸回りに回転を抑制することができる。
【0042】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、PCVバルブ40に限らず、ブローバイガス以外のブローバイガスの流量を制御する流量制御弁としても適用することもできる。また、ガイド突起は、バルブ体60に一体形成しても良いし、別体で形成したものを取付けてもよい。また、ガイド突起の形状、個数等は適宜変更することができる。また、ガイド部は、少なくとも1本のリブ状のガイド突起で構成することが可能である。また、ガイド部84の流路溝88a,88bは、少なくとも2本1組で構成することが可能である。また、リブ状のガイド突起は、バルブ体60の軸方向に対して傾斜していれば、直状に限らず、曲線状に形成することができる。また、リブ状の各ガイド突起は、バルブ体60の軸方向に関して分断された複数個の断片によって構成することもできる。この場合、弁体の軸方向の移動ストローク内における移動によって計量孔の内周面に対する各ガイド突起の断片の接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化するように構成されている限り、各断片の配置は適宜の変更することができる。例えば、各ガイド突起毎の断片を周方向に位相をずらして配置してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…ブローバイガス還元装置
12…エンジン(内燃機関)
40…PCVバルブ(流量制御弁)
42…ケース
55…ガス通路(流体通路)
55c…計量孔
56…内周面
60…バルブ体(弁体)
61…計量面
64…ガイド部
66…ガイド突起
68…流路溝
70…計量部
72…スプリング
74…ガイド部
76…ガイド突起
78…流路溝
84…ガイド部
86a,86b…ガイド突起
88a,88b…流路溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を設けたケースと、
前記流体通路内に軸方向に進退可能に設けられた弁体と、
前記弁体を後退方向へ付勢するスプリングと
を備え、
前記流体通路の途中に形成された計量孔と、前記弁体に形成された計量面とにより計量部が構成され、
前記弁体の軸方向の移動によって前記計量部の通路断面積を調整することにより流体の流量を制御する流量制御弁であって、
前記弁体の計量面上には、前記計量孔の内周面に対する摺動接触により該弁体を軸方向にガイドしかつ流体が流れる流路溝を形成するガイド部が形成され、
前記ガイド部は、前記弁体の軸方向の移動ストローク内における移動によって前記計量孔の内周面に対する接触位置が周方向にかつ全周に亘って変化するように構成されている
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御弁であって、
前記ガイド部が、前記弁体の軸方向に傾斜状に突出するリブ状のガイド突起により構成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
請求項1に記載の流量制御弁であって、
前記ガイド部が、前記弁体の軸方向に傾斜しかつその傾斜方向を異にする複数本の流路溝を形成していることを特徴とする流量制御弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の流量制御弁であって、
内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブであることを特徴とする流量制御弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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