説明

流量制御装置、その検定方法及び流量制御方法

【課題】 半導体製造装置等の稼働中において、流路を流れるプロセスガスの流量制御の検定処理を行なうことができる流量制御装置及びその検定方法を提供する。
【解決手段】 流路4の流量を流量設定値になるように流量を制御しているときに、プロセスガスの流量検出値と、圧力検出値と、流量制御弁機構7に出力したバルブ駆動制御情報とから構成される検定サンプリング情報の所定数を収集してこの流量設定値と関連付けて記憶する。そして、検定サンプリング情報として記憶された所定数の流量検出値とバルブ駆動制御情報について、その関連を示す関連係数(A)を順次求め、この関連係数(A)の値が予め設定した閾値の範囲を超えていると、新たに入力した流量検出値に基づいて求めてバルブ駆動制御情報と、予め検定処理用に登録したバルブ特性情報テーブルK1を参照して求めた基準となるバルブ駆動制御情報との差異量を求め、この差異量を検定情報としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路などの流路を流れる比較的小流量の流体の流量を制御する流量制御装置、この流量制御装置が流路の流量を制御しているときにその流量制御の精度を検定する方法、及び流量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の半導体製品や電子部品を製造するときには、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置のチャンバーにウエハを載置し、このチャンバー内に成膜に必要な原料や化学反応物質を含むプロセスガスを供給してウエハの表面に半導体集積回路が形成される。この原料ガスとしては、SiH、WF、NH、等が使用され、さらに成膜後のエッチング処理においてはこのエッチング用ガスとして、CH、Cl2、等が使用されている。
【0003】
近年、半導体製品や電子部品の小型化、高機能化の要求によりウエハに形成する半導体集積回路は一層微細化している。このため、CVD装置等の半導体製造装置に供給するプロセスガスは、その流量を精密、かつ高速な流量制御を実施しないと、半導体集積回路の品質が低下することになる。また、CVD装置等の製造装置を備えた半導体製造ラインは、多額の設備投資を必要とするため、これら半導体製造装置の稼働率を向上させることも強く要求されている。
【0004】
このような半導体製造装置にプロセスガスを高い流量精度で供給するために、従来からプロセスガスを流す管路(流路)に質量流量制御装置(マスフローコントローラ)を設けて、プロセスガスの流量を目標値になるように制御することが実施されている。
【0005】
従来から実施されている質量流量制御装置(以下、流量制御装置という)は、流路の流量を測定する流量センサと流路の流量を調整するための流量制御弁機構を備えるとともに、流量が外部システム等から指示された目標流量値(以下、流量設定値という)になるようにこの流量制御弁機構の弁開度を制御するための制御装置を備えた構成となっている。そして、この制御装置は、流量センサから入力した流量検出値と流量設定値との差異量(ズレ量)を算出し、このズレ量に基づいて、流路を流れる流量を指示された流量設定値にするためにPID演算処理により求めた制御量(制御信号)を、流量制御弁機構に出力してその弁開度を調節することにより、流量を流量設定値になるように制御している。
【0006】
このような構成の流量制御装置においては、例えば、半導体製造ラインの稼働を統括して制御と監視を行なう上位制御システム(外部システム)から流量設定信号により指示された流量設定値に対して、流路を流れる流量をこの流量設定値に高精度で一致するように流量制御を実施することが必要になる。しかし、半導体製造ラインを構成する半導体製造装置を含む各種の装置及び流量制御装置は、この製造ラインの稼働開始時から稼働日数の経過とともにこれら装置を構成する各部材に、異物の付着、又はこれら装置を構成する部材自体の性能や特性が微小に変化する現象、すなわち、経年変化による性能変化(以下、装置の経年変化という)が発生する。
【0007】
この装置の経年変化の例としては、プロセスガスを供給する管路内への生成物の付着、流量センサを構成するセンサ管やバイパス管への生成物の付着、あるいは流量制御弁機構に設けられているアクチュエータの性能低下、等を挙げることができる。このような装置の経年変化が発生すると、半導体製造装置の導入初期と同じバルブ駆動制御情報(例えば、バルブ駆動電圧)を、流量制御装置の流量制御弁機構が備えているアクチュエータに印加(出力)しても、その弁開度は導入初期と比較して微小な差異が発生する。その結果、流量制御装置が流路の流量を流量設定値になるように制御しても、制御した実際の流量にはこの流量設定値に対してズレが発生することになる。
【0008】
従来から、このような装置の経年変化に対する課題を解決するために、流路に設置した流量制御装置が設計仕様通りに流量を制御することができているか否か、すなわち、流量制御の精度を検定する操作が、定期的、あるいは不定期に、該当する半導体製造装置の稼働を停止させて実施されている。
【0009】
この流量検定の操作は、例えば、次のようにして実施されている。
流量制御装置の上流側であってプロセスガスを供給する流路(管路)に容量が既知の検定用タンクを接続する。続いて、所定の流量のプロセスガスを安定的にこの流路に流して検定用タンクにこのガスを充填した後、ガスの供給を停止する。次に、この検定用タンク内に蓄積されたガスが流路の下流側に流れ出るときのガス圧を所定の時間間隔で測定して得たガス圧の時間変化に係る情報(H1)を求める。続いて、この流量制御装置を製造ラインに導入した初期に上記と同じ操作で測定して得たガス圧の時間変化に係る情報(H0)と、上記操作で取得した時間変化に係る情報(H1)とを比較してそのズレ量等を求める。そして、このズレ量を解析して、流量を制御する流量制御弁機構のアクチュエータに出力する基準となる電圧値(バルブ駆動制御情報)等の流量制御に係るデータを補正する操作を行なっていた。
【0010】
このような流量の検定処理の機能を備えた流量制御装置としては、例えば、本出願人が先に出願した下記特許文献1に記載の発明が提案されている。
【0011】
【特許文献1】特開2006−38832号公報
【0012】
特許文献1には、流路を開閉する検定用バルブと、所定の容量を有する検定用タンクと、流路を流れる流体の圧力を検出して圧力検出信号を出力する圧力検出手段を設け、これら検定用バルブと検定用タンクと圧力検出手段とを用いて流量検定動作を行なうように制御する検定制御手段を備えた流量制御装置が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載の流量制御装置は、流量制御装置の流量の検定操作を行なうときには、半導体製造装置に連結された管路からこの流量制御装置を取り外すことなく、流路を流れる現在の流量の制御について、この流量制御装置をラインに設置した初期時点と比較したズレ量を検定することが可能である。そして、この検定結果に基づいて、流量を制御するための基準となる制御データを補正することを可能にしている。しかし、この検定処理の操作を行なう際には、半導体製造装置の稼働を必ず停止する必要があった。別の表現をすれば、半導体製造装置、例えば、CVD装置によりウエハ上に成膜を行なっているときにはこの検定操作を行なうことができなかった。さらに、流量の検定操作を行なうときには、半導体製造装置の稼働を停止すると共に、プロセスガスを供給する流路の他に、検定操作用にプロセスガスを流路の外部に排出するための捨てガスラインを別途設ける必要があった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、半導体製造装置にプロセスガスを供給するガス管等の流路に設置されている流量制御装置をこのガス管から取り外すことなく、かつ、半導体製造装置の稼働中においても、装置の経年変化を考慮した流量制御の精度に関する検定処理を行なうことができる検定処理機能を備えた流量制御装置、その検定方法及び流路の流量の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、流路を流れる流体の流量を検出する流量検出手段と、前記流路に設けられ、バルブ駆動制御情報により弁開度を変えることにより前記流量を制御する流量制御弁機構と、外部システムから少なくとも1種の流量設定値を受信し、前記流路の流量を前記受信した流量設定値になるように前記流量制御弁機構に前記バルブ駆動制御情報を出力して前記弁開度を制御する制御手段と、を備えた流量制御装置であって、
予め、前記流路に前記流体を流して前記流量制御弁機構に基準となる前記バルブ駆動制御情報を出力したときに、前記基準となるバルブ駆動制御情報と前記流量検出手段が検出した基準となる流量検出値との関係を示す情報を、前記流体の圧力検出値と関連付けして前記制御手段の記憶手段に記憶したバルブ特性情報を備え、
前記制御手段が前記外部システムから新たな流量設定値(R0)を受信して、所定の時間間隔で前記流量検出手段から入力した流量検出値に基づいて求めた前記バルブ駆動制御情報を前記流量制御弁機構に出力して、前記流量を前記流量設定値(R0)になるように制御しているときに、前記制御手段は、
前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに、前記流量検出手段から入力した前記流量検出値(R1)と、該流量検出値(R1)を入力したときの前記流体の圧力検出値(P1)と、該流量検出値(R1)に基づいて求めて前記流量制御弁機構に出力したバルブ駆動制御情報(V1)とから構成される検定サンプリング情報を、前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶する検定情報サンプリング手段と、
前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶した前記検定サンプリング情報の所定数について、該検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)との関連を示す関連係数(A)を、前記記憶の時系列順に対応する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)とから順次求めるバルブ制御情報傾き算出手段と、
前記バルブ制御情報傾き算出手段の実行後に、新たに入力した前記流量検出値(R1)に基づいて求めて出力した新たなバルブ駆動制御情報(V1)と、前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって前記新たに入力した流量検出値(R1)と新たに入力した圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報と、の差異となるバルブ制御差異量を流量制御の検定情報として求める流量検定手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0016】
さらに、本発明の流量制御装置において、前記バルブ制御情報傾き算出手段は、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標を結ぶ直線の傾きとして求める第1の傾き算出手段を備えていることを特徴としている。
【0017】
さらに、本発明の流量制御装置において、前記バルブ制御情報傾き算出手段は、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか1種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標と原点座標とを結ぶ直線の傾きとして求める第2の傾き算出手段を備えていることを特徴としている。
【0018】
さらに、本発明の流量制御装置において、前記検定情報サンプリング手段は、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに一つの前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶する手段を備えていることを特徴としている。
【0019】
さらに、本発明の流量制御装置において、前記検定情報サンプリング手段は、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに複数の前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶する手段を備えていることを特徴としている。
【0020】
さらに、本発明の流量制御装置において、前記流量検定手段は、前記新たなバルブ駆動制御情報(V1)を出力したときに、
前記新たな流量検出値(R1)と、前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって前記新たなバルブ駆動制御情報(V1)と該流量検出値(R1)を入力したときの新たな圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となる流量検出値と、の差異となる流量差異量を流量制御の検定情報として求める第2の流量検定手段を備えていることを特徴としている。
【0021】
さらに、本発明の流量制御装置において、前記制御手段は、前記バルブ制御情報傾き算出手段が順次算出した前記関連係数(A)の値が、予め設定した閾値の範囲を超えているか否かを判定する手段を有し、
前記関連係数(A)の値が前記閾値の範囲を超えていると判定されたときに、前記流量検定手段を実行させるように制御することを特徴としている。
【0022】
さらに、本発明の流量制御装置において、前記制御手段は、前記流量検定手段が実行されて前記新たに入力した流量検出値(R1)に基づいて求めた前記新たなバルブ駆動制御情報(V1)を出力した後に、
前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって該新たに入力した流量検出値(R1)と新たに入力した前記圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報を求める流量補正手段を備え、
前記流量補正手段が求めた前記基準となるバルブ駆動制御情報を、前記流量制御弁機構に出力することを特徴としている。
【0023】
さらに、本発明の流量制御装置において、前記制御手段は、前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する所定数の前記バルブ駆動制御情報(V1)と前記圧力検出値(P1)について、前記記憶の時系列順に隣り合う前記バルブ駆動制御情報(V1)の差分値(Sv)の正負と、同じく前記圧力検出値(P1)の差分値(Pv)の正負を判定する検定サンプリング情報増減傾向判定手段を備え、
前記差分値(Sv)と前記差分値(Pv)の双方の全てが「正」又は「負」と判定されたときに、前記バルブ制御情報傾き算出手段を実行させることを特徴としている。
【0024】
さらに、本発明の流量制御装置において、前記制御手段は、前記流量検定手段の実行後に、
前記流路の流量の補正可否の問合せに係る問合せ制御コマンドを前記外部システムに送信する手段と、前記問合せ制御コマンドに対する応答を受信する手段を備えた流量補正問合せ手段を備え、
前記問合せ制御コマンドの応答として流量補正可に係る制御コマンドを受信した後に、前記流量補正手段を実行させることを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、流路を流れる流体の流量を検出する流量検出手段と、前記流路に設けられ、バルブ駆動制御情報により弁開度を変えることにより前記流量を制御する流量制御弁機構と、外部システムから少なくとも1種の流量設定値を受信し、前記流路の流量を前記受信した流量設定値になるように前記流量制御弁機構に前記バルブ駆動制御情報を出力して前記弁開度を制御する制御手段と、を備えた流量制御装置の検定方法であって、
予め、前記流路に前記流体を流して前記流量制御弁機構に基準となる前記バルブ駆動制御情報を出力したときに、前記基準となるバルブ駆動制御情報と前記流量検出手段が検出した基準となる流量検出値との関係を示す情報を、前記流体の圧力検出値と関連付けして前記制御手段の記憶手段にバルブ特性情報として記憶するステップと、
前記制御手段が前記外部システムから新たな流量設定値(R0)を受信して、所定の時間間隔で前記流量検出手段から入力した流量検出値に基づいて求めた前記バルブ駆動制御情報を前記流量制御弁機構に出力して、前記流量を前記流量設定値(R0)になるように制御しているときに、
前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに、前記流量検出手段から入力した前記流量検出値(R1)と、該流量検出値(R1)を入力したときの前記流体の圧力検出値(P1)と、該流量検出値(R1)に基づいて求めて前記流量制御弁機構に出力したバルブ駆動制御情報(V1)とから構成される検定サンプリング情報を、前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶する検定情報サンプリングステップと、
前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶した前記検定サンプリング情報の所定数について、該検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)との関連を示す関連係数(A)を、前記記憶の時系列順に対応する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)とから順次求めるバルブ制御情報傾き算出ステップと、
前記バルブ制御情報傾き算出ステップの実行後に、新たに入力した前記流量検出値(R1)に基づいて求めて出力した新たなバルブ駆動制御情報(V1)と、前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって前記新たに入力した流量検出値(R1)と新たに入力した圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報と、の差異となるバルブ制御差異量を流量制御の検定情報として求める流量検定ステップと、
を備えていることを特徴としている。
【0026】
さらに、本発明の流量制御装置の検定方法において、前記バルブ制御情報傾き算出ステップは、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標を結ぶ直線の傾きとして求める第1の傾き算出ステップを備えていることを特徴とする請求項12記載の流量制御装置の検定方法。
【0027】
さらに、本発明の流量制御装置の検定方法において、前記バルブ制御情報傾き算出ステップは、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか1種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標と原点座標とを結ぶ直線の傾きとして求める第2の傾き算出ステップを備えていることを特徴としている。
【0028】
さらに、本発明の流量制御装置の検定方法において、前記検定情報サンプリングステップは、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに一つの前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するステップを備えていることを特徴としている。
【0029】
さらに、本発明の流量制御装置の検定方法において、前記検定情報サンプリングステップは、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに複数の前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するステップを備えていることを特徴としている。
【0030】
さらに、本発明の流量制御装置の検定方法において、前記流量検定ステップは、前記新たなバルブ駆動制御情報(V1)を出力したときに、
前記新たな流量検出値(R1)と、前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって前記新たなバルブ駆動制御情報(V1)と該流量検出値(R1)を入力したときの新たな圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となる流量検出値と、の差異となる流量差異量を流量制御の検定情報として求める第2の流量検定ステップを備えていることを特徴としている。
【0031】
さらに、本発明の流量制御装置の検定方法は、前記バルブ制御情報傾き算出ステップが順次算出した前記関連係数(A)の値が、予め設定した閾値の範囲を超えているか否かを判定するステップを有し、
前記関連係数(A)の値が前記閾値の範囲を超えていると判定されたときに、前記流量検定ステップが実行されることを特徴としている。
【0032】
さらに、本発明の流量制御装置の検定方法は、前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する所定数の前記バルブ駆動制御情報(V1)と前記圧力検出値(P1)について、前記記憶の時系列順に隣り合う前記バルブ駆動制御情報(V1)の差分値(Sv)の正負と、同じく前記圧力検出値(P1)の差分値(Pv)の正負を判定する検定サンプリング情報増減傾向判定ステップを備え、
前記差分値(Sv)と前記差分値(Pv)の双方の全てが「正」又は「負」と判定されたときに、前記バルブ制御情報傾き算出ステップが実行されることを特徴としている。
【0033】
また、本発明は、流路を流れる流体の流量を検出する流量検出手段と、前記流路に設けられ、バルブ駆動制御情報により弁開度を変えることにより前記流量を制御する流量制御弁機構と、外部システムから少なくとも1種の流量設定値を受信し、前記流路の流量を前記受信した流量設定値になるように前記流量制御弁機構に前記バルブ駆動制御情報を出力して前記弁開度を制御する制御手段と、を備えた流量制御装置が前記流路の流量を制御する方法であって、
予め、前記流路に前記流体を流して前記流量制御弁機構に基準となる前記バルブ駆動制御情報を出力したときに、前記基準となるバルブ駆動制御情報と前記流量検出手段が検出した基準となる流量検出値との関係を示す情報を、前記流体の圧力検出値と関連付けして前記制御手段の記憶手段にバルブ特性情報として記憶するステップと、
前記制御手段が前記外部システムから新たな流量設定値(R0)を受信して、所定の時間間隔で前記流量検出手段から入力した流量検出値に基づいて求めた前記バルブ駆動制御情報を前記流量制御弁機構に出力して、前記流量を前記流量設定値(R0)になるように制御しているときに、
前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに、前記流量検出手段から入力した前記流量検出値(R1)と、該流量検出値(R1)を入力したときの前記流体の圧力検出値(P1)と、該流量検出値(R1)に基づいて求めて前記流量制御弁機構に出力したバルブ駆動制御情報(V1)とから構成される検定サンプリング情報を、前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶する検定情報サンプリングステップと、
前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶した前記検定サンプリング情報の所定数について、該検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)との関連を示す関連係数(A)を、前記記憶の時系列順に対応する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)とから順次求めるバルブ制御情報傾き算出ステップと、
前記バルブ制御情報傾き算出ステップの実行後に、新たに入力した前記流量検出値(R1)に基づいて求めて出力した新たなバルブ駆動制御情報(V1)と、前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって前記新たに入力した流量検出値(R1)と新たに入力した圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報と、の差異となるバルブ制御差異量を流量制御の検定情報として求める流量検定ステップと、
前記流量検定ステップが実行されて新たに入力した前記流量検出値(R1)に基づいて求めた新たな前記バルブ駆動制御情報(V1)を出力した後に、
前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって該新たに入力した流量検出値(R1)と新たに入力した前記圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報を求める流量補正ステップを備え、
前記流量補正ステップにより求めた前記基準となるバルブ駆動制御情報を、前記流量制御弁機構に出力するステップを備えていることを特徴としている。
【0034】
さらに、本発明の流量制御方法において、前記バルブ制御情報傾き算出ステップは、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標を結ぶ直線の傾きとして求める第1の傾き算出ステップを備えていることを特徴としている。
【0035】
さらに、本発明の流量制御方法において、前記バルブ制御情報傾き算出ステップは、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか1種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標と原点座標とを結ぶ直線の傾きとして求める第2の傾き算出ステップを備えていることを特徴としている。
【0036】
さらに、本発明の流量制御方法において、前記検定情報サンプリングステップは、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに一つの前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するステップを備えていることを特徴としている。。
【0037】
さらに、本発明の流量制御方法において、前記検定情報サンプリングステップは、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに複数の前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するステップを備えていることを特徴としている。
【0038】
さらに、本発明の流量制御方法において、前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する所定数の前記バルブ駆動制御情報(V1)と前記圧力検出値(P1)について、前記記憶の時系列順に隣り合う前記バルブ駆動制御情報(V1)の差分値(Sv)の正負と、同じく前記圧力検出値(P1)の差分値(Pv)の正負を判定する検定サンプリング情報増減傾向判定ステップを備え、
前記差分値(Sv)と前記差分値(Pv)の双方全てが「正」又は「負」と判定されたときに、前記バルブ制御情報傾き算出ステップが実行されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、下記の効果を有している。
(1)流量設定値(R0)ごとに、制御手段8が流量制御弁機構7に出力したバルブ駆動制御情報(V1)と、このバルブ駆動制御情報(V1)を出力したときの流量検出値(R1)と、圧力検出値(P1)との3種の情報から構成される検定サンプリング情報の所定数を時系列的に収集し、これら収集した3種の情報を解析して、本発明の流量制御装置を含む製造ラインの経時変化により、この流量制御装置の流量設定値(R0)に対する流量制御に無視できないズレが発生しているか否かを判定するようにしている。
【0040】
この判定の結果、無視できないズレが発生していると判定されると、流量検定手段を実行して、制御手段8が新たに流量制御弁機構7に出力したバルブ駆動制御情報(V1)と、検定用の基準情報として予め記憶手段に登録させたバルブ特性情報を参照して求めた基準となるバルブ駆動制御情報と、の差異となるバルブ制御差異量を流量制御の検定情報として求めるようにしている。また、流量検定手段は、この新たなバルブ駆動制御情報(V1)を出力したときに、新たな流量検出値(R1)と、検定用の基準情報となるバルブ特性情報を参照して求めた基準となる流量検出値と、の差異となる流量差異量を流量制御の検定情報として求めるようにしている。
【0041】
これにより、本発明は、数日間又は数週間の期間にわたって収集した流量制御の実績データに基づいて、流量制御に無視できないズレが発生しているか否かを判定しているので、装置の経時変化による流量制御の精度低下を確実に把握して、この精度低下に対して適切な対策を行なうことが可能になる流量制御装置を提供することが可能になる。
【0042】
(2)本発明において、流量制御に無視できないズレが発生しているか否かを判定するバルブ制御情報傾き算出手段は、流量設定値のいずれか2種に関連付けされた検定サンプリング情報を構成する流量検出値(R1)とバルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標を結ぶ直線の傾き(関連係数(A))を順次求め、この関連係数(A)の値に基づいて流量制御に無視できないズレが発生しているか否かを判定するようにしている。すなわち、外部システム9から指示されるいずれか2種の流量設定値(R0)に基づいて算出した上記直線の傾きにより流量制御に無視できないズレが発生しているか否かを判定するので、装置の経時変化による流量制御の精度低下をより確実に把握する可能になる流量制御装置を提供することができるようになる。
【0043】
(3)本発明は、流量検定手段を実行した後に、流路4の流量を自動的に、又は外部システム9への流量補正許可の問合せ処理の結果に基づいて、流量を補正するためのバルブ駆動制御情報を流量制御弁機構7に出力するようにしている。これにより、流量設定値(R0)に対して無視できないズレが発生したときには、直ちに流路4の流量を流量設定値(R0)になるように補正することができる流量制御装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の流量制御装置に係る実施形態の一例を示す構成図、図2は図1に示す制御手段のハードウエアの構成例を示す図である。なお、以下に説明する本発明の実施形態は、CVD装置等の半導体製造装置に供給するプロセスガス等の流体の流量を制御する場合を例にして説明する。
【0045】
[流量制御装置の構成]
図1において、本発明の一実施形態を示す流量制御装置1は、例えば、半導体製造装置2のチャンバー(図示せず)にプロセスガス等のガス流体(以下、単に流体という)を矢印F方向に流す流路4、例えば材質がステンレススチール製のガス管3内に形成されている流路4の途中に設置される。図1に示すように、流量制御装置1は本体ブロック部1aを備え、本体ブロック部1a内には流路4に通じる流路が形成されている。また、本体ブロック部1aの一方の端部は上流側のガス管3に接続され、他方の端部は半導体製造装置2に通じる下流側のガス管3に接続される。
【0046】
流量制御装置1は半導体製造装置2のチャンバー(図示せず)に供給する流体の流量を制御するために使用される。半導体製造装置2が成膜処理等を行なう稼働中においては、チャンバーは真空引きされて所定の減圧雰囲気の状態に設定され、この減圧雰囲気中のチャンバーに流体が供給される。なお、図1には示していないが、流路4の上流には半導体製造装置2に供給する流体を収容したタンク等のガス供給源が接続されている。さらに、このガス供給源と流量制御装置1とを連結するガス管3の適所にこのガス供給源から供給される流体の圧力を適度な値に調整するための圧力制御装置が設置されている。
【0047】
本体ブロック部1aを有する流量制御装置1は、流路4を流れる流体の流量を検出してその流量検出値を入力するための流量検出手段5と、流路4を流れる流体の圧力を検出しその圧力検出値を入力するための圧力検出手段6と、流路4の流体の流量を制御する流量制御弁機構7と、流量制御装置1の動作を制御する制御手段(制御装置)8、等を備えている。なお、圧力検出手段6は必ずしも流量制御装置1と一体に設ける必要はない。例えば、ガス管3が形成する流路4の適所に圧力検出手段6を設置し、制御手段8はその圧力検出値を入力するための圧力検出値入力手段を備えるようにしてもよい。
【0048】
一般に、半導体製造ラインにおいては、ラインに設置されているCVD装置などの半導体製造装置2の稼働の制御と稼働監視を行なうホストコンピュータ等の外部制御装置(以下、外部システムという)9を備えている。そして、半導体製造(CVD)装置2が成膜処理等を行なうときには、外部システム9は半導体製造装置2に供給すべき流体の流量を示す流量設定値(目標流量値)を流量設定信号S0として流量制御装置1の制御手段8に送信する。そして、制御手段8はこの流量設定信号S0を受信すると、予め備えている流量制御用ソフトウエア(以下、単に制御プログラムという)を作動させて、流路4を流れる流量が流量設定信号S0で指示された流量設定値に一致するように、PID演算処理等によりバルブ駆動制御情報(バルブ駆動制御電圧)を所定の時間間隔ごとに、例えば10ミリ秒(mSec)ごとに求め、この求めたバルブ駆動制御情報を流量制御弁機構7に出力する。
【0049】
また、制御手段8は、流量検出手段5や圧力検出手段6等が検出した検出値及び演算処理して求めた流量検定に係る各種の情報を、出力信号SOUTとして外部システム9に送信する処理を行なう。なお、上記した外部システム9は、必ずしも、製造ライン全体の稼働を制御するホストコンピュータ等の上位制御装置でなくてもよく、例えば、流量制御装置1に接続されてこの流量制御装置1に流量設定値の入力を行なうための入力装置であってもよい。
【0050】
外部システム9から制御手段8に流量設定信号S0として送信される流量設定値の情報は、アナログ信号、又はデジタル信号として送信される。また流量設定信号S0として送信される流量設定値の種別は、電圧値(V)、又は流量値(cc/min)として送信される。流量設定値として電圧値(V)が送信される場合には、例えば「0V〜5V」の範囲の所定値、また流量値が送信される場合には例えば「0cc/min〜100cc/min」の範囲の所定値が、アナログ信号又はデジタル信号として送信される。
【0051】
例えば、外部システム9から制御手段8に上記した流量設定値が電圧値(V)として送信される場合、「0V」は流路4を流れる流体の流量を「0」に制御することを示し、「5V」は流量制御装置1が流路4に流すことができる最大の流量(フルスケール流量)、例えば、100cc/minに制御することを示す。
【0052】
図1には、流路4の上流側4a方向から下流側4b方向に、圧力検出手段6、流量検出手段5、流量制御弁機構7をこの順序で配置した例を示しているが、流量検出手段5と圧力検出手段6は流量制御弁機構7の下流側4bに配置してもよい。
【0053】
流量検出手段5は、流路4の上流側4aから下流側4b方向に設けられた複数のバイパス管を束ねて構成された所定の長さを有するバイパス管群10と、このバイパス管群10の両端の開口部側にバイパス管群10を迂回するように配置したセンサ管11aを備えている。これにより、流路4を流れる流体のうちセンサ管11aに流れる流量を、バイパス管群10を流れる流量と比較して少量、かつ一定の比率で流すことができるようになる。すなわち、このセンサ管11aには流路4を流れる流量に対して、常に一定比率の流量を流すことが可能になる。
【0054】
また、センサ管11aが流路4の外側に位置する部分には、直列に接続された一対の電気抵抗線R1、R4が巻回されている。また、図示していない2つの基準電気抵抗線R2、R3と電気抵抗線R1、R4とは、いわゆるブリッジ回路を形成している。電気抵抗線R1、R4は、温度によってその電気抵抗値が変化する材質から構成されている。そして、このブリッジ回路に一定の電流を流したときの電位差をセンサ回路11bにより求め、この電位差を流量検出信号S1として、例えば、0V〜5Vの電圧値として制御手段8に出力するようになっている。なお、センサ回路11bで求めた電圧値は、増幅回路28(図2参照)で増幅処理を行なってA/D変換回路24a(図2参照)を介して制御手段8に入力する。
【0055】
制御手段8は、流量検出手段5から流量検出信号S1で表される流量検出値、すなわち、流路4に流れている現時点の流体の流量値に係る情報(電圧値)を所定の時間間隔(例えば、10mSec)で入力する処理を行ない、この入力した情報に基づいて現在流路4に流れている流体の流量検出値(R1)を、例えば、「0cc/min〜100cc/min」の範囲の流量に換算した値を求める処理を行なう。そして、制御手段8は、この流量検出値(R1)と外部システム9から受信した流量設定信号S0で表される流量設定値(例えば、60cc/min)との偏差量に基づいて、流路4を流れる流量がこの流量設定値に一致するように、流量制御弁機構7が備えている流量制御弁の弁開度を制御するためのバルブ駆動制御情報(バルブ駆動電圧)を、例えばPID演算処理により求め、この求めたバルブ駆動制御情報を流量制御弁機構7に出力する。
【0056】
圧力検出手段6は、例えば、圧力トランデューサから構成されている。そして、圧力検出手段6は、制御手段8の制御により、流路4を流れる流体の圧力を検出した圧力検出値に係る情報を圧力検出信号S2として、A/D変換回路を介して制御手段8に出力するようになっている。
【0057】
流量制御弁機構7は、上記したバイパス管群10の下流側4bに設けた流量制御弁12を有している。この流量制御弁12は、流路4を流れる流体の流量を直接的に制御するための弁体としての機能を発揮するために、例えば、Ni−Co合金からなる金属薄板であって屈曲可能なダイヤフラム13を備えている。また、流量制御装置1の本体ブロック部1aの内部に形成されている流路には、機械加工等により弁口14を形成している。そして、ダイヤフラム13を弁口14に向けて適宜屈曲変形させる(前進と後退)ことによって、弁口14の弁開度を任意に制御し得るようにしている。ダイヤフラム13を屈曲変形させることにより流量制御弁12が形成する弁開度を任意に制御する手段として、ダイヤフラム13の上面にアクチュエータ15を接続している。
【0058】
アクチュエータ15としては、例えば、積層型圧電素子(ピエゾ素子)、あるいは電磁式推力発生手段、等を使用することができる。以下の説明においては、アクチュエータとして積層型圧電素子を使用したことを例として説明するとともに、以下の説明においてはこのアクチュエータを積層型圧電素子15と記述する。
【0059】
積層型圧電素子15の下端部には、例えば金属製の押し台16が取り付けられており、さらに、ダイヤフラム13の上面にもこの押し台16に対向させて、例えば金属製のベース台17が取り付けられている。そして、これら押し台16とベース台17とが対向するそれぞれの面部の中央部には断面がV型形状をなす凹部を形成し、このV型凹部内に、例えば、剛球18を介在させて全体を剛的に、かつ連続的に接続した構成にしている。アクチュエータとなる積層型圧電素子15をこのような構成にして、積層型圧電素子15に適度な電圧を印加することにより、推力発生手段となる積層型圧電素子15で発生する直線方向の微小な変位(伸縮)による推力を、直接的に、かつ均一にダイヤフラム13に伝えることができる。
【0060】
積層型圧電素子15は、多数のPZTセラミック板に電極を形成して積層した構成からなっている。そして、この積層型圧電素子15に直流電圧を印加するとその電圧値に応じて長手方向に微小な伸縮が生じて、この伸縮により推力が積層した積層型圧電素子15の積層方向に発生する。なお、流量制御弁機構7を構成する積層型圧電素子15、押し台16、ベース台17、剛球18、ダイヤフラム13等は、ケース19内に収納されている。
【0061】
上記したように制御手段8は、予め備えている制御プログラムの演算処理により、流量制御弁機構7の流量制御弁12の弁開度を制御するための制御情報(バルブ駆動制御情報)を求める処理を実行する。そして、制御手段8は、この弁開度の制御を実施するために求めたこのバルブ駆動制御情報を、バルブ駆動信号S3としてバルブ駆動回路20に出力する。このバルブ駆動信号S3は、積層型圧電素子15に所定の電圧を印加するためのアナログ又はデジタルの制御情報となる。
【0062】
なお、積層型圧電素子15は、一般に0V〜150V程度の直流電圧を印加することによりこの印加した電圧値に応じて微小な変位(伸縮)を発生させることができる。従って、制御手段8は、この「0V〜150V」の値を、例えば、一旦「0V〜5V」に換算したアナログ信号(又はデジタル信号)を、バルブ駆動信号S3としバルブ駆動回路20に出力する処理を行なうようにする。
【0063】
一方、バルブ駆動回路20は、このバルブ駆動信号S3である「0V〜5V」の範囲の電圧値を、積層型圧電素子15に微小な変位(推力)を発生させるためのバルブ駆動電圧に変換するための回路から構成する。そして、バルブ駆動回路20により変換されたバルブ駆動電圧(バルブ駆動制御情報)が積層型圧電素子15にバルブ駆動電圧信号S4として印加(出力)される。バルブ駆動電圧信号S4に係るバルブ駆動制御情報が積層型圧電素子15に供給されると、積層型圧電素子15は、印加されたこのバルブ駆動制御情報(電圧値)に応じて積層型圧電素子15には微小な変位(図1に示す「下」方向又は「上」方向の伸縮)が発生する。これにより、流量制御弁機構7の流量制御弁12の弁開度が変化し、流路4を流れる流体の流量が制御されることになる。
【0064】
[制御手段の構成]
制御手段8は、CPUを備えたマイクロコンピュータからなる制御装置(制御基板)から構成されている。図2は、この制御手段8のハードウエアの構成例を示している。
【0065】
図2に示すように、制御手段8は、主としてCPU21、ROM22、RAM23、A/D変換回路24a、24b、24c、24d、D/A変換回路25、通信用インターフェース(I/F)回路26a及び26b等を搭載した回路(制御)基板から構成されている。また、CPU21、ROM22、RAM23、A/D変換回路24a、24b、24c、24d、D/A変換回路25、通信用I/F回路26a及び26bは、バス線27に接続されている。なお、A/D変換回路24a〜24d、D/A変換回路25等は、入出力用I/F回路を介してバス線27に接続されるが、図2にはこれら入出力用I/F回路は示していない。
【0066】
CPU21は、ROM22に記憶されている制御プログラムを解析して流量制御装置1の動作を制御するための中央演算装置であって、32ビット等からなる高速のCPUを使用することが望ましい。ROM22には流量制御装置1の動作を制御するための制御プログラムや基準となる各種のデータが記憶されている。なお、制御プログラムを記憶するROM22としては、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、あるいはフラッシュメモリを使用する。
【0067】
RAM23は、上記制御プログラムが計算領域(ワークエリア)、及びROM22に記憶されているプログラムが流量制御装置1の動作を制御するための基準データ(後記するバルブ特性情報など)を予め記憶させておくための記憶手段(メモリ)であって、制御手段8の電源がOFFになってもその記憶内容が保持されるメモリを使用する。なお、上記したバルブ特性情報はフラッシュメモリに記憶させてもよい。また、RAM23はCPU21に内蔵されているCPU内蔵RAMを使用して、プログラムの高速処理が実行されるようにしてもよい。
【0068】
上記したA/D変換回路24a、24b、24c、24dには、図2に示すように、それぞれ流量検出手段5、圧力検出手段6、温度検出手段30等が接続されている。なお、流量検出手段5は、増幅回路28を介してA/D変換回路24aに接続するようにしてもよい。また、D/A変換回路25にはバルブ駆動回路20が接続され、バルブ駆動回路20により調整されたバルブ駆動制御情報(バルブ駆動電圧)がバルブ駆動電圧信号S4として積層型圧電素子15に印加される。
【0069】
通信用I/F回路26a及び26bは、外部の装置とのデータ通信を行なうためのI/F回路であって、通信用I/F回路26aには、例えば外部システム9となる上位のホストコンピュータが接続されている。また、I/F回路26bには、パーソナルコンピュータ等から構成されるモニタ装置29が接続されている。このモニタ装置29は、例えば、本発明の流量制御装置1を半導体製造ラインに導入した初期において、前記したバルブ特性情報をRAM23に記憶(登録)する処理を行なうとき、あるいは半導体製造装置2が稼働しているときに、流量検出手段5や圧力検出手段6が検出した検出信号に係る情報、あるいは後記する検定情報をモニタリング(表示)するとき等、必要に応じて接続して使用する装置である。また、モニタ装置29は、前記したように流量設定値を入力するための入力装置として使用してもよい。
【0070】
[バルブ特性情報のデータ構成]
続いて、制御手段8のRAM23に記憶しているバルブ特性情報(バルブ特性情報テーブルK1)のデータ構成例について説明する。このバルブ特性情報は、流量制御装置1が流路4を流れる流体の流量を制御しているときに、その流量制御の精度を検定するための基準となる情報を登録したデータテーブルである。また、このバルブ特性情報は、この検定処理の結果に基づいて流路4の流量を補正する制御を実行するときに参照する情報となり、予め、RAM23にデータテーブルとして記憶(登録)されている。
【0071】
流路4内を流量制御弁機構7の方向に流れる流体の圧力を所定の圧力値にして、この流量制御弁機構7を作動させる積層型圧電素子15にバルブ駆動電圧信号S4に係るバルブバルブ駆動制御情報(Vs)(バルブ駆動電圧)を印加したときに、流路4を流れる流体の流量を測定して、このバルブ駆動制御情報(Vs)と流体の流量(Rs)との関係を求めると、図3に示すようになることが知られている。
【0072】
図3に示す線図は、流路4を流れる流体の圧力値を、それぞれ基準となる圧力値として、例えば、0.05MPa、0.1MPa、0.2MPa、0.3MPaに設定したときに、この流体の圧力値ごとに流量検出手段5が検出した基準となる流量検出値(Rs)(cc/min)と、積層型圧電素子15に印加した基準となるバルブ駆動制御情報(Vs)との関係を示している。なお、図3において、曲線L1は流体の圧力を0.05MPaに、曲線L2は流体の圧力を0.1MPaに、曲線L3は流体の圧力を0.2MPaに、曲線L4は流体の圧力を0.3MPaに設定したときの基準となるバルブ駆動制御情報(Vs)と基準となる流量(Rs)との関係を示す。
【0073】
図3に示すように、バルブ駆動制御情報(Vs)が増加すると、流量制御弁12の弁開度が大きくなるので流路4を流れる流量は曲線的に増加する傾向になる。また、バルブ駆動制御情報(Vs)を一定にしたときのバルブ駆動制御情報(Vs)と流量(Rs)との関係は、流体の圧力を0.05MPaから0.3MPaへと高くするほど流体の圧力差が大きくなるので、流路4の流量は多くなる
【0074】
本発明においては、流量制御装置1を製造して出荷前に、あるいは流量制御装置1を半導体製造ラインのCVD装置などにプロセスガス(流体)を供給するガス管3に設置した初期の時点に実稼働テストを行なって、流体の上記した基準となる複数の圧力値ごとに、積層型圧電素子15に基準となるバルブ駆動電圧信号S4に係るバルブ駆動制御情報を種々変化させて印加したときの流量検出手段5が検出した流量検出値(cc/min、又は電圧値)を収集する作業を行なう。そして、これら収集したデータ(情報)から上記した図3に示すように、流量検出値(Rs)とバルブ駆動制御情報(Vs)との関係を示すデータ(情報)を流体の基準となる圧力値ごとに求めて、これらの情報をデータテーブル(以下、バルブ特性情報テーブルK1という)としてRAM23の所定の記憶領域に予め登録する操作を行なう。
【0075】
このバルブ特性情報テーブルK1は、前記したように、主として、CVD装置等が稼働して本発明の流量制御装置1がプロセスガスの流量を制御しているときに、制御手段8に搭載されている制御プログラムが、流量制御装置1の流量制御の精度を自動的に検定する処理を行なうための基準情報として参照するためのデータテーブルとなる。
【0076】
図4は、RAM23に記憶しているバルブ特性情報テーブルK1について、そのデータ構成の一例を示している。バルブ特性情報テーブルK1は、積層型圧電素子15に印加した基準となるバルブ駆動制御情報(Vs)と、このバルブ駆動制御情報(Vs)を印加したときに流量検出手段5が流路4を流れる流体の流量を検出した基準となる流量検出値(Rs)(cc/min)との関係を、この検出したときの流体の基準となる圧力値(Ps)である0.05MPa、0.1MPa、0.2MPa、及び0.3MPaごとに関連付けしてデータテーブルとして登録したものでる。
【0077】
図4に示すバルブ特性情報テーブルK1のデータ構成例では、基準となる流量検出値Rsは5cc/min刻みで、基準となる圧力値Psは0.05MPa、0.1MPa、0.2MPa、0.3MPaについて実稼働テストで収集した結果を示しているが、さらに、詳細な仕様の実稼働テストを行なって細かい刻みのバルブ駆動制御情報(Vs)と流量検出値(Rs)で構成されるデータテーブルK1を作成してもよい。
【0078】
[制御プログラムの構成]
続いて、流量制御装置1の動作を制御するために制御手段8のROM22に記憶されている制御プログラムの構成を、図5に基づいて説明する。
【0079】
ROM22に記憶されている制御プログラムは、メイン制御プログラムPm、通信制御プログラムP1、流量検出信号入力プログラムP2、圧力検出信号入力プログラムP3、温度検出信号入力プログラムP4、バルブ駆動制御情報入力プログラムP5、流量制御(PID制御)プログラムP6、検定情報サンプリングプログラムP7、バルブ特性情報参照プログラムP8、検定サンプリング情報増減傾向判定プログラムP9、バルブ制御情報傾き算出プログラムP10、流量検定プログラムP11、流量補正プログラムP12、バルブ特性情報登録プログラムP13、モニタリング処理プログラムP14、ソフトウエアタイマーP15、等から構成されている。
【0080】
メイン制御プログラムPmは、上記した各プログラムP1〜P15の作動を統括して制御するためのメインプログラムであって、流量制御装置1はメイン制御プログラムPmの制御に基づいて動作する。なお、流量制御装置1の電源をONすると、メイン制御プログラムPmが立ち上がるように設定されている。
【0081】
通信制御プログラムP1は、外部システム9及びモニタ装置29との通信を行なうためのプログラムであって、サブプログラムとして外部システム9との通信処理を行なう通信プログラムP1a、モニタ装置29との通信処理を行なう通信プログラムP1b、外部システム9と流量補正について問合せ処理を行なう流量補正許可問合せプログラムP1cを備えている。
【0082】
流量検出信号入力プログラムP2は、流量検出手段5が検出した流量検出値(R1)に係る検出信号S1を入力してRAM23に一旦記憶する処理を行なうためのプログラムである。圧力検出信号入力プログラムP3は、圧力検出手段6が検出した圧力検出値(P1)に係る検出信号S2を入力してRAM23に一旦記憶する処理を行なうためのプログラムである。温度検出信号入力プログラムP4は、温度検出手段30が検出した流体の温度に係る検出信号S5を入力してRAM23に一旦記憶する処理を行なうためのプログラムである。
【0083】
なお、流路4を流れる流量は流体の温度により微小に変化するので、制御手段8により流路4を流れる流量を制御するときに、必要に応じて温度検出手段30が検出した温度検出値も参照して流量制御の検定や制御の補正処理を行なうようにする。
【0084】
また、バルブ駆動制御情報入力プログラムP5は、バルブ駆動回路20が積層型圧電素子15に印加したバルブ駆動電圧信号S4に係るバルブ駆動制御情報(V1)を、バルブ駆動電圧信号S6として制御手段8に入力してRAM23に一旦記憶する処理を行なうためのプログラムである。
【0085】
なお、バルブ駆動回路20は、前記したように制御手段8が演算して求めたバルブ駆動回路20に出力したバルブ駆動信号S3に係る電圧値を、バルブ駆動電圧信号S4に係る電圧値に変換する処理を行なう。従って、バルブ駆動制御情報入力プログラムP5は、制御手段8がバルブ駆動回路20に出力したバルブ駆動信号S3に係る電圧値に基づいて、バルブ駆動電圧信号S4、すなわち、バルブ駆動電圧信号S6(S4)を求める処理を行なうようにしてもよい。
【0086】
流量制御(PID制御)プログラムP6は、外部システム9から流量設定信号S0により受信した流量設定値(R0)と流量検出手段5が検出した流量検出値(R1)との偏差に基づいて、流路4を流れる流体の流量をこの流量設定値(R0)に一致させるために、例えば、PID演算処理によりバルブ駆動制御情報(V0)を求め、この求めたバルブ駆動制御情報(V0)を前記したバルブ駆動信号S3としてバルブ駆動回路20に出力する処理を行なうプログラムである。そして、前記したようにバルブ駆動回路20は、このバルブ駆動信号S3をバルブ駆動信号S4となるバルブ駆動制御情報(V1)に変換して、このバルブ駆動制御情報(V1)が積層型圧電素子15に印加される。
【0087】
検定情報サンプリングプログラムP7は、制御手段8が外部システム9から新たな流量設定値(R0)を受信して、上記した流量制御プログラムP6により流路4の流量を制御しているときに、この流量制御装置1が流路4の流量を制御した精度を検定するための各種の情報を収集(サンプリング)して記憶手段であるRAM23に記憶する処理を行うためのプログラムである。
【0088】
通常、外部システム9から流量制御装置1に送信される流量設定値(R0)は、予め設定された複数種の流量設定値から半導体製造装置2の成膜処理等の作業計画に従って、そのいずれか1種の流量設定値(R0)が、半導体製造装置2が稼働する前にその1バッチ分の成膜処理に対して送信される。図6は外部システム9から流量制御装置1に送信される流量設定値の状況を時系列順に表した図であって、横軸は経過時間を示す時間軸としている。
【0089】
図6において、外部システム9から流量制御装置1に送信される流量設定値(R0)は、例えば、時系列順に次のような順序になっていることを示している。
【0090】
(1)最初に、流量設定値(R0)として「0」を流量制御装置1に送信する。そして、T1時間が経過後、外部システム9は新たな流量設定値(R0)として図6に識別番号(バッチ番号)「R60−1」として図示している「60cc/min」を流量制御装置1に送信する。これにより、流量制御装置1は、流路4の流量をT2時間にわたってこの流量設定値「60cc/min」になるように制御する。
【0091】
(2)T2時間経過後に、外部システム9は流量を「0」にするための流量設定値(R0)を送信する。この流量設定値に基づいて、流量制御装置1はT3時間にわたって流路の流量を「0」に制御する。
【0092】
(3)T3時間経過後に、外部システム9は新たな流量設定値(R0)(図6に識別番号「R60−2」と図示)として再び「60cc/min」を流量制御装置1に送信する。この流量設定値(R0)に基づいて、流量制御装置1は流路4の流量をT4時間にわたって流量設定値「60cc/min」になるように制御する。
【0093】
(4)そして、T4時間経過後に、外部システム9は流量を「0」にするための流量設定値(R0)を送信する。流量制御装置1はT5時間にわたって流路の流量を「0」に制御する。
【0094】
(5)T5時間経過後に、外部システム9は新たな流量設定値(R0)(図6に識別番号「R20−1」と図示)として「20cc/min」を流量制御装置1に送信する。これにより、流量制御装置1は流路4の流量をT6時間にわたって流量設定値(R0)である「20cc/min」になるように制御する。
【0095】
(6)そして、T6時間経過後に、外部システム9は流量を「0」にするための流量設定値(R0)を送信する。流量制御装置1はT7時間にわたって流路4の流量を「0」に制御する。以降は、図6に示すように、外部システム9は新たに流量設定値「60cc/min」(図6に識別番号「R60−3」と図示)、流量設定値「20cc/min」(図6に識別番号「R20−2」と図示)、等を流量制御装置1に送信する。
【0096】
図6に示すように、通常、外部システム9は流量制御装置1に、流量設定値として流量を「0」にする情報を除いて、日々の半導体製造装置2の作業計画に追従させて複数種の流量設定値(R0)、図6に示す例では「60cc/min」と「20cc/min」の2種を流量制御装置1に送信する。また、外部システム9は、これら複数種の流量設定値のいずれか1種の流量設定値を流量制御装置1に送信して所定の時間が経過すると、流路4の流量を「0」にする流量設定値(R0)を流量制御装置1に送信する。なお、図6には、外部システム9は2種の流量設定値(R0)を流量制御装置1に送信する例を示しているが、3種又は3種以上の流量設定値(R0)のいずれか1種を作業計画に基づいて流量制御装置1に送信する場合もある。また、1種の流量設定値(R0)のみを送信する場合も有り得る。
【0097】
上記した検定情報サンプリングプログラムP7は、図6に示すように、外部システム9から送信された新たな1バッチ分の成膜処理等に対応するそれぞれの流量設定値「60cc/min」、「60cc/min」、「20cc/min」、・・・に応じて流路4の流量を制御しているときに、これら各1バッチの流量設定値(R0)ごとに、流量検出手段5及び圧力検出手段6から入力した流量検出値(R1)と圧力検出値(P1)と、この流量検出値(R1)に基づいて求めて積層型圧電素子15に出力したバルブ駆動制御情報(V1)との3種から構成される情報を、検定サンプリング情報として流量設定値(R0)と関連付けしてRAM23に設定した検定情報サンプリングテーブルに時系列順に所定数ほど記憶(蓄積)する処理を行なうプログラムである。
【0098】
従って、検定情報サンプリングテーブルには、検定サンプリング情報を構成するバルブ駆動制御情報(V1)、流量検出値(R1)、圧力検出値(P1)がサンプリングして記憶処理を行なった記憶の時系列順に配列されることになる。
【0099】
なお、流量制御装置1が外部システム9から新たな流量設定値(R0)を受信したときには、流路4を流れる流量はこの流量設定値(R0)に、または(R0)に近似した値に達しているとは限らない。従って、検定情報サンプリングプログラムP7が1バッチの流量設定値(R0)ごとに、検定サンプリング情報を構成するバルブ駆動制御情報(V1)、流量検出値(R1)及び圧力検出値(P1)をサンプリング(入力)して検定情報サンプリングテーブルに記憶するタイミングは、次の(1)又は(2)に記載のいずれかの方法を採用するようにする。
【0100】
(1)流量制御装置1が外部システム9から流量設定値(R0)を受信した後、所定の時間t1(図6に示すt1)、例えば3分が経過したときに、制御手段8が新たに入力した流量検出値(R1)と圧力検出値(P1)、及びこの新たに入力した流量検出値(R1)に基づいて求めて積層型圧電素子15に出力したバルブ駆動制御情報(V1)とから構成される検定サンプリング情報の一つを流量設定値(R0)と関連付けしてRAM23に記憶する処理を行なう。図6は、1バッチ分の新たな流量設定値(R0)を受信してt1時間経過した後に、一つの検定サンプリング情報を検定情報サンプリングテーブルに記憶する例を示している。図6において黒色の丸印で示しているポイントが、検定サンプリング情報を構成する3種のデータを入力して検定情報サンプリングテーブルに記憶するタイミングを示している。
【0101】
この(1)に記載のサンプリング方法においては、外部システム9から受信した1バッチ分の流量設定値(R0)ごとに、一つの検定サンプリング情報、すなわち、それぞれ一つのバルブ駆動制御情報(V1)と流量検出値(R1)と圧力検出値(P1)が、RAM23に設定した検定情報サンプリングテーブルにこの受信した流量設定値(R0)と関連付けして記憶されることになる。そして、検定情報サンプリングプログラムP7は、流量設定値(R0)ごとに予め設定した記憶数N(記憶数の上限値)の検定サンプリング情報を検定情報サンプリングテーブルに記憶する処理を行なうようにすることにより、同一の流量設定値(R0)に関連付けされた検定情報サンプリングテーブルには、流量設定値(R0)は同じでも異なった作業指示に対応するバッチの検定サンプリング情報が時系列順に順次、上限値Nまで記憶されることになる。
【0102】
(2)流量制御装置1が外部システム9から1バッチ分に相当する新たな流量設定値(R0)を受信した後、所定の時間が経過するごとに、例えば、新たな流量設定値(R0)を受信して3分が経過するごとに、上記(1)と同様に、バルブ駆動制御情報(V1)と、流量検出値(R1)と、圧力検出値(P1)とから構成される検定サンプリング情報を、この受信した流量設定値(R0)と関連付けして順次検定情報サンプリングテーブルに時系列的に記憶する処理を行なう。
【0103】
この(2)に記載のサンプリング方法においも、検定情報サンプリングプログラムP7は、流量設定値(R0)ごとに予め設定した記憶数N(記憶数の上限値)の検定サンプリング情報を検定情報サンプリングテーブルに記憶する処理を行なうようにする。上記した(2)の方法を採用すると、新たに受信した流量設定値(R0)ごと、すなわち、1バッチの作業指示ごとに、複数の検定サンプリング情報を検定情報サンプリングテーブルに記憶することができる。なお、上記(1)、(2)のいずれの方法を採用するかは、適宜設定すればよい。また、モニタ装置29からこれら2方法のいずれかを任意に選択可能にしてもよい。
【0104】
続いて、RAM23の記憶領域に設定した検定情報サンプリングテーブルのデータ構成例を、図7、図8に基づいて説明する。
【0105】
図7に示す検定情報サンプリングテーブルK2は、外部システム9から受信した流量設定値(R0)が「60cc/min」について、受信したこの1バッチ分の流量設定値(R0)ごとに一つの検定サンプリング情報を構成する各一つのバルブ駆動情報(V1)、流量検出値(R1)、圧力検出値(P1)をサンプリングして記憶する処理を行なうようにしたときのデータ構成例を示している。検定情報サンプリングプログラムP7は、例えば、外部システム9から受信した1バッチ分の流量設定値(R0)ごとに、流量設定値(R0)を識別するための識別情報(流量設定値識別情報)a1として、「R60−1」、「R60−2」、・・・を付与して、この識別情報a1に関連付けして一つの検定サンプリング情報を構成するバルブ駆動情報(V1)、流量検出値(R1)、圧力検出値(P1)を記憶する処理を行なうようにする。なお、識別情報a1は、複数種の流量設定値(R0)を識別する情報として、例えば、図7に示すように「R60」を含む所定桁数の情報から構成する。これにより、検定情報サンプリングテーブルK2に記憶した検定サンプリング情報を構成する各データと流量設定値(R0)との関連付けが可能になる。
【0106】
図8に示す検定情報サンプリングテーブルK3は、同じく流量設定値(R0)が「20cc/min」について、受信したこの1バッチ分の流量設定値(R0)ごとに一つの検定サンプリング情報を構成する各一つのバルブ駆動情報(V1)、流量検出値(R1)、圧力検出値(P1)をサンプリングして記憶したときのデータ構成例を示している。
【0107】
なお、検定情報サンプリングプログラムP7は、前記したように、検定情報サンプリングテーブルK2及びK3に検定サンプリング情報を構成する各データを、サンプリングした時系列順に記憶する処理を行なう。また、識別情報a1は、上記したように複数種の流量設定値(R0)を識別する情報の他に、例えば、サンプリングした時系列順を表す情報である追番号、又はサンプリングしたときに年月日時分等を付加した情報から構成するようにするとよい。この年月日時分に関する情報は、外部システム9が流量制御装置1に流量設定値(R0)とともに送信するようにするか、あるいはモニタ装置29から入力するようにしてもよい。
【0108】
また、受信したこの1バッチ分の流量設定値(R0)ごとに複数の検定サンプリング情報をサンプリングする場合には、識別情報a1に、さらに当該バッチでサンプリングした順序を示す追番号を付加するようにする。なお、受信した1バッチ分の流量設定値(R0)ごとに検定サンプリング情報をサンプリングする数は、前記したように、流量設定値(R0)を受信してから所定の時間が経過したときに一つ、あるいは所定の時間が経過するごとに一つ、すなわち複数をサンプリングするかは、予め統一しておいた方がよい。
【0109】
バルブ特性情報参照プログラムP8は、例えば、流量検出手段5が検出した流量検出値(R1)と圧力検出手段6が検出した圧力検出値(P1)とに関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報を、バルブ特性情報テーブルK1を参照して求める処理を行なうプログラムである。
【0110】
検定サンプリング情報増減傾向判定プログラムP9は、流量設定値(R0)に関連付けして検定情報サンプリングテーブルK2、K3、・・・に記憶されている検定サンプリング情報、すなわち、バルブ駆動制御情報(V1)と流量検出値(R1)について、その記憶の時系列順の増加又は減少の傾向を判定する処理を行なうプログラムである。なお、この増加又は減少の傾向を判定するための処理手順については後述する。
【0111】
バルブ制御情報傾き算出プログラムP10は、複数種の流量設定値(R0)に関連付けして検定サンプリング情報を記憶した検定情報サンプリングテーブルK2、K3、・・・について、その一つ又はいずれか2種の検定情報サンプリングテーブルに記憶されている流量検出値(R1)とバルブ駆動制御情報(V1)との関連を示す関連係数(A)を求める処理を行なう。この関連係数(A)は、いずれか2種の検定情報サンプリングテーブルを選択した場合には、この2種の検定情報サンプリングテーブルに記憶されている流量検出値(R1)とバルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標を結ぶ直線の傾きとして求める処理を行なう。
【0112】
一つの検定情報サンプリングテーブルから関連係数(A)を求める場合には、いずれか一つの流量設定値(R0)に関連付けされた一つの検定情報サンプリングテーブルに記憶されている流量検出値(R1)とバルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標と原点座標(0、0)を結ぶ直線の傾きとして求める処理を行なう。なお、外部システム9から2種以上の流量設定値(R0)が送信される場合には、いずれか2種の検定情報サンプリングテーブルから関連係数(A)を求める処理を行なうことが望ましい。
【0113】
バルブ制御情報傾き算出プログラムP10により2つの検定情報サンプリングテーブルから関連係数(A)を求める処理は、例えば、次のような処理により求めることができる。
2つの検定情報サンプリングテーブルに記憶されている流量検出値(R1)についてその記憶の時系列順どうしの差異値Rrと、同じくバルブ駆動制御情報(V1)についてその記録の時系列順どうしの差異値Vrとを順次算出し、さらに、これら算出した差異値Rrと差異値Vrから関連係数(A)を(A)=(差異値Rr)/(差異値Vr)として求める処理を行なう。この関連係数(A)は、検定情報サンプリングテーブルに記憶されている流量検出値(R1)(又はバルブ駆動制御情報(V1))の記憶数ほど求められることになる。
【0114】
なお、バルブ制御情報傾き算出プログラムP10により上記した関連係数(A)を、流量設定値(R0)に関連付けされた一つの検定情報サンプリングテーブルから求める処理を行なうか、あるいはいずれか2種の流量設定値(R0)に関連付けされた検定情報サンプリングテーブルを選択して求める処理を行なうか否かは、次の(1)〜(3)のいずれかに基づいてその処理機能を決定するとよい。
【0115】
(1)本発明の流量制御装置1を設置した半導体製造ラインが1種の流量設定値(R0)に基づいて流量制御を行なう仕様になされている場合には、関連係数(A)を一つの検定情報サンプリングテーブルから求める処理を行なう。
【0116】
(2)本発明の流量制御装置1を設置した半導体製造ラインが2種以上の流量設定値(R0)に基づいて流量制御を行なう仕様になされている場合には、関連係数(A)をいずれか2種の検定情報サンプリングテーブルから求める処理を行なう。
【0117】
(3)本発明の流量制御装置1を設置した半導体製造ラインが2種以上の流量設定値(R0)に基づいて流量制御を行なう仕様になされている場合にも、例えば、外部システム9からの制御信号、あるいはモニタ装置29からの入力信号に基づいて、指定された一つの流量設定値(R0)に関連付けされた検定情報サンプリングテーブルから関連係数(A)を求める処理を行なう。
【0118】
上記した検定サンプリング情報増減傾向判定プログラムP9とバルブ制御情報傾き算出プログラムP10は、流量制御装置1の検定処理を行なうための前処理を行なうために必要となるプログラムである。
【0119】
流量検定手段となる流量検定プログラムP11は、流量制御装置1が流路4の流量を制御している精度に係る情報(検定情報)を求める処理を行なうプログラムである。流量検定プログラムP11は、サブプログラムとしてバルブ制御差異量算出プログラムP11aと流量差異量算出プログラムP11bを備えている。流量検定プログラムP11の処理内容については後述する。
【0120】
流量補正プログラムP12は、制御手段8の流量制御プログラムP6が新たなバルブ駆動制御情報(V1)を流量制御弁機構7(積層型圧電素子15)に出力したときに、流路4の流量を補正するための流量補正用のバルブ駆動制御情報を求め、この求めたバルブ駆動制御情報を流量制御弁機構7に出力する処理を行なうプログラムである。
【0121】
バルブ特性情報登録プログラムP13は、例えば、流量制御装置1を半導体製造装置2に設置した初期の段階において、前記したように実稼働テストを行なって収集したデータから、図4に示すデータ構成のバルブ特性情報テーブルK1をRAM23に登録する処理を行なうためのプログラムである。また、流量制御装置1を半導体製造装置2に設置した後において、バルブ特性情報テーブルK1をRAM23に再登録する場合においてもバルブ特性情報登録プログラムP13を使用する。
【0122】
モニタリング処理プログラムP14は、半導体製造装置2が稼働しているときに流量制御装置1が収集した流量検出値(R1)、圧力検出値(P1)、温度検出値、及び演算して求めた検定情報等の各種の情報をモニタ装置29にリアルタイムに送信する処理を行なうプログラムである。モニタ装置29はこれらの情報を受信すると、受信した情報を表示装置に時系列的にグラフィック表示する処理を行なう。なお、モニタ装置29は、前記したように必要に応じて設置して稼働させてもよい。
【0123】
ソフトウエアタイマーP15は、経過時間をプログラム処理によりカウントする処理を行なうプログラムである。ソフトウエアタイマーP15は、メイン制御プログラムPmによりその経過時間のカウント処理の実行が制御される。なお、ソフトウエアタイマーP15の代わりに、ハードウエアから構成されるタイマーを制御手段(基板基板)8に搭載してもよい。
【0124】
[流量制御および検定処理の手順]
続いて、流量制御装置1の制御手段8が上記した制御プログラムにより、流路4を流れる流体の流量を制御しながら、流量制御の精度についてその検定処理を行なうための手順について、その第1の実施形態を図9〜図11に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0125】
図9は、制御手段8のメイン制御プログラムPmが外部システム9から流量設定信号S0により流量設定値(R0)を通信割込み処理で受信し、この受信した流量設定値(R0)の種別を判定する処理を示すフローチャートである。また、図10及び図11は、メイン制御プログラムPmが外部システム9から受信した流量設定値(R0)に基づいて流路4の流量を制御しながら、この流量制御の精度を検定する処理を行なう手順を示すフローチャートである。
【0126】
以下の説明において、外部システム9が流量設定信号S0として流量制御装置1に送信する流量設定値(R0)は、「0〜100cc/min」の範囲に設定された複数の流量設定値のいずれか1種のデジタル値が送信される場合を例にして説明する。なお、この流量設定値(R0)が「0」であることは流路4を流れる流体の流量を「0」にすることを示し、「100」であることは流量制御装置1が流路4に流すことができる最大の流量(フルスケール流量)、例えば、100cc/minに制御することを示す。
【0127】
また、外部システム9から流量制御装置1に流量設定信号S0として送信される流量設定値(R0)は、図6に示すように、CVD装置等の半導体製造装置2の稼働(成膜処理など)に追従させて、例えば、「0cc/min」を送信して所定の時間(T1)が経過した後に、1バッチ分の成膜処理を行なうための流量設定値(R0)として「60cc/min」が送信される。これに基づいて、制御手段8の流量制御プログラムP6は、CVD装置のチャンバーに通じる流路4を流れる流体の流量が「60cc/min」になるようにT2時間にわたって制御する。そして、T2時間が経過すると、外部システム9は流量設定信号S0として「0cc/min」を送信する。さらに、T3時間が経過した後に、外部システム9は新たな1バッチ分の成膜処理を行なうための流量設定値(R0)として、例えば、「60cc/min」を流量制御装置1に送信する。
【0128】
図9は、流量制御装置1が外部システム9から流量設定値(R0)を受信したときに、流量制御装置1のメイン制御プログラムPmが実行する受信処理の手順を示すフローチャートである。この受信処理の内容をステップごとに説明すると次のようになる。
【0129】
(ステップS1)
メイン制御プログラムPmは、外部システム9から流量設定信号S0として受信した流量設定値(R0)が「0」(0cc/min)であるか否かを判定する。この判定の結果、「0」より大であるとステップS2に進み、「0」であるとステップS5に進む制御を行なう。
【0130】
(ステップS2)
受信した流量設定値(R0)が、予め設定された上限値、例えば「100cc/min」を超えているか否かを判定する。この判定の結果、上限値以下と判定されるとステップS3に進む。一方、上限値を超えているとステップS6に進む。
【0131】
(ステップS3)
ソフトウエアタイマーP15を作動(スタート)させて、経過時間のカウント処理、例えば、秒単位のカウント処理を行なう。
【0132】
(ステップS4)
受信した流量設定値(R0)をRAM23に記憶する。ステップS4の処理が終了すると、メイン制御プログラムPmは、図10に示しているソフトウエア割込み処理(10msecのタイマー割込み処理)Siに、制御を移行する処理を行なう。
【0133】
(ステップS5)
制御手段8の流量制御プログラムP6は、流路4に流れる流量を「0」にする(流量制御弁機構7を「閉」にする)制御を行なう。この流量を「0」に制御する処理は、積層型圧電素子15にバルブ駆動電圧値(バルブ駆動制御情報を示す)として「150V(もしくは0V)」を印加することにより流量制御弁12を下降させて流路4の流量を「0」にすることを示す。ステップS5の処理が終了すると、流量設定値(R0)の受信に対する処理を終了する。
【0134】
なお、流路4の流量を「0」にするための制御は、積層型圧電素子15から構成される流量制御弁のタイプ、すなわち、ノーマリーオープン型か、あるいはノーマリークローズ型かに応じたバルブ駆動制御情報(V1)を積層型圧電素子15に印加する必要がある。例えば、ノーマリーオープン型の場合には積層型圧電素子15に「150V」を印加して流量制御弁機構7が「閉」になるように制御し、他方ノーマリークローズ型の場合には積層型圧電素子15に「0V」を印加して流量制御弁機構7が「閉」になるように制御する必要がある。
【0135】
なお、流量制御弁の開閉制御の型式に関係なく、流量制御弁機構7の開閉をプログラム制御により実行するためには、例えば、流量制御弁機構7を「閉」にするためには制御手段8はバルブ駆動回路20に「0V」を出力し、一方、流量制御弁機構7を「全開」にするためには制御手段8はバルブ駆動回路20に「5V」を出力する制御を行なうようにするとよい。そして、バルブ駆動回路20には、この流量制御弁の開閉制御の型式に対応させるための駆動電圧変換回路を設けるようにする。駆動電圧変換回路は、ノーマリーオープン型の流量制御弁を備えた流量制御弁機構7を「閉」にするためには積層型圧電素子15に「150V」を印加する回路を設け、一方、流量制御弁がノーマリークローズ型の場合には、同じく流量制御弁機構7を「閉」にするために「0V」を印加する回路を設けるようにする。
【0136】
(ステップS6)
外部システム9から、予め設定された値を超えた流量設定値(R0)が送信されたので、エラー処理を行なって流量設定値(R0)の受信処理を終了する。
【0137】
続いて、図10〜図11に示している10msec(10ミリ秒)のタイマー割込み処理Si(以下、タイマー割込み処理という)により実行する流量制御と検定処理の手順について説明する。
タイマー割込み処理Siは、外部システム9から次の新たな流量設定値(R0)が送信されるまで、メイン制御プログラムPmの制御に基づいて、所定の時間間隔ごとに、例えば、10msecごとに起動される。以下、図10〜図11に示すステップ順にタイマー割込み処理Siの処理手順について説明する。
【0138】
(ステップS11)
流量検出信号入力プログラムP2を作動させて、現時点において流量検出手段5が検出した流路4の流量検出値(R1)に係る情報を流量検出信号S1として制御手段8に入力し、入力したこの流量検出値(R1)をRAM23に記憶する処理を行なう。制御手段8に入力される流量検出値(R1)は、例えば0〜5Vのいずれかの電圧値として入力されるが、流量検出信号入力プログラムP2はこの入力した電圧値を現在の流量値、例えば、「cc/min」で表される流量検出値(R1)に変換する処理を行なってRAM23に記憶する。なお、制御手段8に流量検出値(R1)として入力される0〜5Vの電圧値を、そのまま以下の処理で使用するようにしてもよい。
【0139】
(ステップS12)
圧力検出値入力手段となる圧力検出信号入力プログラムP3により、圧力検出手段6が検出した圧力検出値(P1)を圧力検出信号S2として入力する処理を行なって、入力したこの圧力検出値P1をRAM23に記憶する処理を行なう。なお、制御手段8に入力される圧力検出値(P1)は、例えば0〜5Vで表されるいずれかの電圧値であるが、圧力検出信号入力プログラムP3は、この電圧値を例えば「0.2MPa」で表される圧力検出値(P1)に変換してRAM23に記憶する処理を行なう。
【0140】
(ステップS13)
流量制御プログラムP6は、流路4の流量を外部システム9から受信した流量設定値(R0)にするためのバルブ駆動制御情報(V0)を求める演算処理を行なう。続いて、この求めたバルブ駆動制御情報(V0)をバルブ駆動信号S3としてバルブ駆動回路20に出力する。バルブ駆動回路20は、制御手段8からバルブ駆動制御情報(V0)が入力されると、前記したようにこのバルブ駆動制御情報(V0)を積層型圧電素子15にバルブ駆動電圧信号S4として印加するバルブ駆動制御情報(V1)(バルブ駆動電圧値)に変換する。そして、この変換されたバルブ駆動制御情報(V1)が積層型圧電素子15に印加(出力)される。
【0141】
また、ステップS13においては、バルブ駆動制御情報入力プログラムP5により、バルブ駆動回路20が積層型圧電素子15に印加したバルブ駆動電圧値であるバルブ駆動制御情報(V1)を、バルブ駆動電圧信号S6として制御手段8に入力し、この入力したバルブ駆動制御情報(V1)をRAM23に一旦記憶する処理を行なう。なお、この積層型圧電素子15に印加したバルブ駆動制御情報(V1)をRAM23に記憶する処理は、流量制御プログラムP6が演算して求めたバルブ駆動制御情報(V0)からバルブ駆動制御情報(V1)を求め、このバルブ駆動制御情報(V1)をRAM23に記憶する処理を行なうようにしてもよい。
【0142】
なお、ステップS13において、流量制御プログラムP6により、バルブ駆動制御情報V1に対応するバルブ駆動制御情報であってバルブ駆動回路20に出力するバルブ駆動制御情報(V0)を求める処理は、例えば、PID演算処理により求める。
【0143】
このPID演算処理によりバルブ駆動制御情報(V0)を求める処理は、次のようにして行なうことができる。すなわち、外部システム9から受信した流量設定値(R0)とステップS11の処理で入力した流量検出値(R1)との差異値を求め、この差異値からRAM23に予め登録したPID演算処理を行なうための基準制御情報を参照して、バルブ駆動制御情報(V0)を求める処理を行なう。なお、この処理においては、PID演算処理により積層型圧電素子15に印加するためのバルブ駆動制御情報(V1)を求め、この求めたバルブ駆動制御情報(V1)に基づいてバルブ駆動回路20に出力するバルブ駆動制御情報(V0)を求める処理を行なうようにしてもよい。
【0144】
(ステップS14)
上記ステップS1により、外部システム9から流量設定信号S0により指示された流量設定値(R0)(例えば、60cc/min)と、上記ステップS11で入力した流量検出値R1との差異量D1(D1=|R0−R1|)を算出し、この差異値D1が「0」か、あるいは予め設定した値α、例えば、「0.1cc/min」以下であるか否かを判定する処理を行なう。この判定処理により、差異量D1がα以下と判定された場合にはステップS15に進む。一方、D1>αと判定された場合には、タイマー割込み処理Siに戻る処理を行なう。
【0145】
このステップS14の処理は、現時点において流路4を流れている流量の流量検出値(R1)が外部システム9から指示された流量設定値(R0)に一致、又はこの流量設定値(R0)に対して、例えば「0.1cc/min」以下の安定した状態に達していると判定して良いか否かを判定するための処理である。そして、上記差異量D1が値αを超えていると判定されるとタイマー割込み処理Siに戻って、10msecごとに作動する次のタイマー割込み処理Siにおいて流量が安定した状態と見なして良いか否かを再度判定することになる。
【0146】
なお、ステップS14の処理を行なう理由は、次の通りである。例えば、流路4を流れる流体の流量を「0」(「0cc/min」)の状態から流量設定値(R0)である、例えば「60cc/min」になるようにプロセスガス供給源と流量制御装置1との間のガス管3に設置されている圧力制御装置を制御しても、流路4を流れる流量が直ちに「60cc/min」又は「60cc/min」に近似した安定した流量に達することはなく、通常、安定した流量に達するまでに1秒〜数秒程度の時間を要する。従って、流量制御装置1が流量制御を実施している精度を検定する処理は、流路4を流れる流体の流量が流量設定値(R0)に近似した値に達したと判定された後に実行しないと検定を行なう意味がないからである。
【0147】
なお、ステップS14の処理において、流路4の流量が安定していると判定されたときに、前記したステップS3の処理、すなわち、ソフトウエアタイマーP15を作動(スタート)させて、経過時間のカウント処理を行なうようにしてもよい。
【0148】
(ステップS15)
RAM23に設定した検定処理フラグに「1」が記憶されているか否かを判定する。この判定結果、「1」が記憶されているとステップS16に進み、「0」が記憶されているとステップS17に進む。この検定処理フラグとは、前記した装置の経時変化により、流量制御装置1による現在の流路4の流量制御の状態は、外部システム9から受信した流量設定値(R0)に対して無視できないズレ量が発生しているか否かを示す情報である。なお、この検定処理フラグには、後述するステップS24〜S25の処理に基づいて検定処理を実行する必要があると判定されると「1」が記憶される。
【0149】
(ステップS16)
流量検定プログラムP11により、流量制御装置1による流量制御の精度を検定するための検定情報を算出する処理を行なう。さらに、ステップS16においては、算出した検定情報を外部システム9に送信する処理を行なう。
【0150】
流量検定プログラムP11が算出する検定情報としては、下記のバルブ制御差異量と流量差異量を算出する。
【0151】
検定情報となるバルブ制御差異量は、流量検定手段となるバルブ制御差異量算出プログラムP11aにより求める検定情報である。バルブ制御差異量は、制御手段8が積層型圧電素子15に出力したバルブ駆動制御情報(V1)と、流量制御プログラムP6がこのバルブ駆動制御情報(V1)を求める処理を行なった時点における流量検出値(R1)と圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる情報であってバルブ特性情報テーブルK1を参照して求めた基準となるバルブ駆動制御情報(Vsi)との差異量を示す。なお、この基準となるバルブ駆動制御情報(Vsi)は、バルブ特性情報参照プログラムP8により求める。
【0152】
従って、バルブ制御差異量は、現時点において積層型圧電素子15に出力したバルブ駆動制御情報(V1)と、このバルブ駆動制御情報(V1)を出力したときの流量検出値(R1)と圧力検出値(P1)とから求められる検定用の基準データとして求めたバルブ駆動制御情報(Vsi)とのズレ量を示し、このズレ量は装置の経年変化により発生したと推測することができる。
【0153】
バルブ制御差異量を算出する手順は、バルブ制御差異量算出プログラムP11aにより次のようにして求めることができる。
流路4の流量を外部システム9から受信した流量設定値(R0)になるように制御するために、ステップS13の処理で積層型圧電素子15に出力したバルブ駆動制御情報(V1)と、このバルブ駆動制御情報(V1)を演算処理により求める情報としてステップS11の処理で入力した流量検出値(R1)とステップS12の処理で入力した圧力検出値(P1)とに関連付けられる基準となるバルブ駆動制御情報(Vsi)との差異量となる((V1)−(Vsi))を示す。なお、基準となるバルブ駆動制御情報(Vsi)は、上記したように図4に示すバルブ特性情報テーブルK1を参照して求めることができる。
【0154】
なお、バルブ特性情報参照プログラムP8により、上記した流量検出値(R1)と圧力検出値(P1)とに関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報(Vsi)を、バルブ特性情報テーブルK1を参照して求める手順を、図4に示すバルブ特性情報テーブルK1に記載のデータ例に基づいて説明すると次のようになる。
【0155】
例えば、ステップS11の処理で入力した流量検出値(R1)が「60cc/min」、同じくステップS12の処理で入力した圧力検出値(P1)が「0.2MPa」であると、バルブ特性情報参照プログラムP8は、これら流量検出値(R1)(60cc/min)と圧力検出値(P1)(0.2MPa)の双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動電圧(Vsi)を、図4に示すバルブ特性情報テーブルK1を参照して求める処理を行なう。この例では、基準となるバルブ駆動電圧(Vsi)としては図4の領域bに示す「53.609V」が求められることになる。
【0156】
なお、上記した流量検出値(R1)が「57cc/min」、圧力検出値(P1)が「0.25MPa」である場合には、この流量検出値(R1)と圧力値(P1)との双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動電圧(Vsi)をバルブ特性情報テーブルK1に登録されているデータから直接求めることができないので、直線近似補間等の演算処理を行なうプログラム(直線近似補間演算プログラム)により基準となるバルブ駆動電圧(Vsi)を求める処理を行なう。
【0157】
上記した流量検出値(R1)が「57cc/min」、圧力検出値(P1)が「0.25MPa」のときに、バルブ特性情報テーブルK1を参照して直線近似補間演算プログラムにより基準となるバルブ駆動電圧(Vsi)を求める処理は、例えば、次の(1)〜(3)に記載の手順をプログラム化することにより求めることができる。
【0158】
(1)上記流量検出値(R1)「57cc/min」が含まれるバルブ特性情報テーブルK1の基準となる流量検出値(Rs)が「55cc/min」と「60cc/min」について、それぞれ流体の基準となる圧力値(Ps)が「0.2MPa」と「0.3MPa」に対応する4つの基準となるバルブ駆動電圧(Vs1)〜(Vs4)をバルブ特性情報テーブルK1から求めてRAM23に記憶する。
【0159】
(2)(57−55)/(60−55)の比例配分で、上記流量検出値(R1)が「57cc/min」であるときに、圧力検出値(P1)が「0.2MPa」に対応するバルブ駆動電圧(Vs5)と、「0.3MPa」に対応するバルブ駆動電圧(Vs6)とを、バルブ特性情報テーブルK1を参照して求めてRAM23に記憶する。
【0160】
(3)上記(2)で求めた(Vs5)と(Vs6)から((Vs6)−(Vs5))の値を算出し、この値を(0.25−0.2)/((0.3)−(0.2))で比例配分することにより、圧力検出値(P1)が「0.25MPa」のときの基準となるバルブ駆動電圧(Vsi)を求める処理を行なう。
【0161】
一方、検定情報となる流量差異量は、現時点における流量検出値(R1)と、この流量検出値(R1)に基づいて演算処理して積層型圧電素子15に出力したバルブ駆動制御情報(V1)に基づいてバルブ特性情報テーブルK1から求められる基準となる流量(Rsi)との差異量、すなわち、流量制御装置1が流路4の流量を流量設定値(R0)になるように制御しているときに、実際に測定した流量検出値(R1)と、このときに出力したバルブ駆動制御情報(V1)から求められる検定用の流量とのズレ量を示す。
【0162】
上記した流量差異量は、第2の流量検定手段となる流量差異量算出プログラムP11bにより次の手順により算出することができる。
まず、バルブ特性情報参照プログラムP8により、ステップS12の処理で入力した圧力検出値(P1)とステップS13の処理で積層型圧電素子15に出力したバルブ駆動制御情報(V1)とに関連付けされる基準となる流量(Rsi)を、バルブ特性情報テーブルK1を参照して求める処理を行なう。続いて、ステップS11の処理で入力した流量検出値(R1)と基準となる検定用の流量(Rsi)との差異値を求め、この求めた差異値を流量差異量(流量のズレ量)とする。この流量のズレ量は、装置の経年変化により発生したと推測することができる。なお、バルブ特性情報参照プログラムP8によりこの基準となる流量(Rsi)を求める処理は、必要に応じて前記した直線近似補間演算プログラムを作動させる。
【0163】
さらに、ステップS16において、流量検定プログラムP11は、上記処理により求めたバルブ制御差異量と流量差異量を外部システム9へ送信する処理を行なう。また、これらの情報をモニタ装置29に送信してもよい。
【0164】
外部システム9は、上記ステップS13とステップS16により、流量制御装置1から流量検出値(R1)、圧力検出値(P1)、バルブ駆動制御情報(V1)、及びバルブ制御差異量と流量差異量を含む各種情報を受信すると、外部システム9が備えている監視システムのモニタ装置にこれら受信した情報を、例えば、時系列的に表示するようにする。監視システムの監視者は、この表示を見て、流量設定値(R0)に対して流量制御のズレ量の発生状況等をリアルタイムに認識することができる。
【0165】
(ステップS17)
メイン制御プログラムPmは、ソフトウエアタイマーP15がカウントした時間値が、予め設定した所定の時間値に達しているか否かを判定する。この判定の結果、所定の時間値に達している場合にはステップS18に進み、まだ、所定の時間値に達していない場合にはタイマー割込み処理Siに戻る処理を行なう。なお、この所定の時間値とは、前記した検定情報サンプリングプログラムP7を作動させて検定サンプリング情報を収集して、RAM23に設定した検定情報サンプリングテーブルに受信した流量設定値(R0)と関連付けして記憶する処理を実行するための時間値を示す。
【0166】
(ステップS18)
検定情報サンプリングプログラムP7により、ステップS11の処理において流量検出手段5から入力した流量検出値(R1)と、ステップS12の処理において圧力検出手段6から入力した圧力検出値(P1)と、ステップS13の処理において積層型圧電素子15に出力したバルブ駆動制御情報(V1)から構成される3種の情報から構成される検定サンプリング情報を、外部システム9から受信した流量設定値(R0)と関連付けしてRAM23に設定した検定情報サンプリングテーブルK2、K3等のいずれかに記憶する処理を行なう。そして、検定サンプリング情報を流量設定値(R0)と関連付けされた検定情報サンプリングテーブルK2、K3、等のいずれかに記憶するごとに、各検定情報サンプリングテーブルK2、K3、等に記憶した検定サンプリング情報の記憶数(サンプリング数)をカウントし、そのカウント値をRAM23に記憶する。なお、この検定情報サンプリングテーブルK2、K3、等に記憶する情報のデータ構成例は、前記したように図7又は図8に示すようになる。
【0167】
また、ステップS18においては、ステップS11で入力した流量検出値(R1)、ステップS12で入力した圧力検出値(P1)、及びステップS13で積層型圧電素子15に印加したバルブ駆動制御情報(V1)を外部システム9に送信する処理を行なうようにする。
【0168】
(ステップS19)
予め設定された複数の流量設定値(R0)ごとに関連付けされた各検定情報サンプリングテーブルK2、K3、等に記憶した検定サンプリング情報の記憶数が、予め設定した上限値に達しているか、例えば、それぞれ「100」に達したか否かを判定する。この判定の結果、所定の数に達したと判定されるとステップS20に進み、所定の数に達していないと判定されるとタイマー処理Siに戻る。なお、この記憶数の上限値は、半導体製造装置2の稼働状態にもよるが、例えば、1週間〜数週間ごとに複数の流量設定値(R0)に対応する全ての検定サンプリング情報の記憶数が上限値に達するような値を設定するとよい。
【0169】
なお、ステップS18の処理において、1バッチの流量設定値(R0)に対して複数の検定サンプリング情報をサンプリングして検定情報サンプリングテーブルK2、K3、等に記憶する処理を行なう場合には、例えば、検定情報サンプリングプログラムP7により次の処理を行なうようにするとよい。
【0170】
すなわち、前記したステップS17の処理でソフトウエアタイマーP15のカウント値が予め設定した所定の時間値に達してステップS18の処理が完了した時点で、ソフトウエアタイマーP15のカウント値を「0」に初期化した後、ソフトウエアタイマーP15を作動させて経過時間をカウントする処理を実行してステップS19に進む。これにより、タイマー処理Siを繰り返して実行しているうちに、再び経過時間が所定の時間値に達してステップS18の処理が実行されるので、複数の検定サンプリング情報が流量設定値(R0)に関連付けされた検定情報サンプリングテーブルK2、K3、等のいずれかに時系列的に記憶されることになる。
【0171】
(ステップS20)
ステップS20〜ステップS24の処理は、検定情報サンプリングテーブルK2、K3、等に記憶した検定サンプリング情報を構成するデータを解析して、装置の経時変化により流量制御に無視できないズレ量が発生しているかを判定するための処理であって、本流量制御装置1の特徴となる手段(方法)となる。
【0172】
ステップS20においては、検定サンプリング情報増減傾向判定プログラムP9により、流量設定値(R0)に関連付けして各検定情報サンプリングテーブルK2、K3、・・・に記憶したバルブ駆動制御情報(V1)と圧力検出値(P1)について、その記憶の時系列順に対する増加又は減少の傾向、すなわち、流量制御について前記した経時変化の影響が生じているか否かを判定する。
【0173】
検定サンプリング情報増減傾向判定プログラムP9により、上記した増加又は減少の傾向を判定する処理手順の例を、図7に示す流量設定値(R0)が「60cc/min」に関連付けされた検定情報サンプリングテーブルK2を参照して説明すると、次の(1)〜(5)に記載の通りになる。
【0174】
(1)検定情報サンプリングテーブルK2に記憶されているバルブ駆動制御情報(V1)は、前記したようにRAM23に記憶した記憶順(記憶の時系列順)に配列されている。まず、記憶の時系列順に互いに隣り合うバルブ駆動制御情報(V1)どうし、図7に示す例では、流量設定値識別情報「R60−2」に対応するバルブ駆動制御情報(V1)から、同じく流量設定値識別情報「R60−1」に対応するバルブ駆動制御情報(V1)を減算する処理を行って、その差分(差異)値(Sv)をRAM23に記憶する。
【0175】
(2)同様にして、流量設定値識別情報「R60−3」に対応するバルブ駆動制御情報(V1)から、同じく流量設定値識別情報「R60−2」に対応するバルブ駆動制御情報(V1)を減算する処理を行って、その差分(差異)値(Sv)をRAM23に記憶する。
【0176】
(3)以下、同様にして、識別情報「R60−n」まで時系列的に隣り合う2つのバルブ駆動制御情報(V1)どうしを減算してその差分値(Sv)をRAM23に記憶する。
【0177】
(4)上記(1)〜(3)の処理で求めた差分値(Sv)の値の全てが、「正(プラス)」であるか、あるいは「負(マイナス)」であるかを判定し、その結果を流量設定(R0)と関連付けしてRAM23に記憶する。
【0178】
上記(1)〜(4)に記載の手順を実行して得られた差分値(Sv)が全て「正」であると、経時変化によりバルブ駆動制御情報(V1)は、このバルブ駆動制御情報(V1)をサンプリングした期間について増加している傾向(増加傾向)にあると判定することができる。一方、全て「負」であると、バルブ駆動制御情報(V1)は同じく減少している傾向(減少傾向)にあると判定することができる。
続いて、検定サンプリング情報増減傾向判定プログラムP9により、次の(5)に記載の処理を行なう。
【0179】
(5)検定情報サンプリングテーブルK2に記憶されている圧力検出値(P1)について、上記した(1)〜(4)に記載の手順と同様な処理により、その記憶順の隣り合うどうしの差分値(Sp)を求め、この差分値(Sp)が増加傾向にあるか、又は減少傾向にあるかを判定する処理を行なう。そして、この(5)に記載の処理を実行して得られた差分値(Sp)が全て「正」であると、経時変化により圧力検出値(P1)は、この圧力検出値(P1)をサンプリングした期間について増加している傾向(増加傾向)にあると判定することができる。一方、全て「負」であると、圧力検出値(P1)は同じく減少している傾向(減少傾向)にあると判定することができる。
【0180】
ステップS20においては、上記(1)〜(5)に記載の手順に基づいて、流量設定値(R0)と関連付けされた全ての検定情報サンプリングテーブルK2、K3、・・・に記憶されているバルブ駆動制御情報(V1)と圧力検出値(P1)とについて、その増加傾向又は減少傾向を判定する処理を行なう。
【0181】
(ステップS21)
ステップS20の処理で判定した全ての流量設定値(R0)に関連付けされた検定情報サンプリングテーブルK2、K3、等に記憶されているバルブ駆動制御情報(V1)と圧力検出値(P1)の双方について、その増減傾向が同一、すなわち、全てが「増加傾向」又は「減少傾向」にあるか否かを判定する。この判定の結果、増減傾向が同一であると判定されるとステップS22に進み、同一でないと判定されるとタイマー割込み処理Siに戻る。
【0182】
このステップS21において、検定情報サンプリングテーブルK2、K3、等に記憶されているバルブ駆動制御情報(V1)と圧力検出値(P1)の双方が増加傾向又は減少傾向にあると判定されることは、外部システム9から受信した流量設定値(R0)に対して、積層型圧電素子15に出力したバルブ駆動制御情報(V1)と流路4の流体の圧力検出値(P1)が時系列的に増加傾向又は減少傾向にあることを示す。このことは、前記した装置の経年変化に基づく管路内への生成物の付着、流量センサを構成するセンサ管やバイパス管への生成物の付着、あるいは流量制御弁機構7に設けられているアクチュエータとなる積層型圧電素子15の性能低下等により、流量制御装置1が流路4の流量を制御する流量設定値(R0)に対して、実際の流量制御にはズレ量が発生していると推測することができることを示す。
また、検定情報サンプリングテーブルK2、K3、等に記憶されているバルブ駆動制御情報(V1)と圧力検出値(P1)の双方について、その判定が増加傾向と減少傾向とが混在していると、装置の経年変化が発生していないと判定することができるので、ステップS21からタイマー割込み処理Siに戻る処理を行なう。
【0183】
(ステップS22)
バルブ制御情報傾き算出プログラムP10により、RAM23に記憶している2種の検定情報サンプリングテーブルを選択して、下記(処理1)と(処理2)に記載の処理を行なう。なお、RAM23に3種以上の流量設定値(R0)に関連付けされた検定情報サンプリングテーブルK2、K3、K4、・・・が記憶されている場合には、いずれか2種の流量設定値(R0)に対応する検定情報サンプリングテーブルを選択する処理を行なう。このいずれか2種の流量設定値(R0)の選択は、流量設定値(R0)の値が最も高い流量設定値と最も低い流量設定値の2種を選択する処理を行なうようにする。
【0184】
(処理1)
選択した2種の流量設定値(R0)に関連付けられた検定情報サンプリングテーブル、例えば図7と図8に示す検定情報サンプリングテーブルK2とK3について、2種の流量設定値(R0)に対応して時系列順に記憶されているバルブ駆動制御情報(V1)どうしの差異量Vrを算出する。この算出例を図7と図8に示す検定情報サンプリングテーブルK2とK3に基づいて説明すると次のようになる。
【0185】
まず、図7に示すサンプリングして記憶した時系列順となる流量設定値識別情報「R60−1」と、図8に示す同じく時系列順となる「R20−1」に対応するバルブ駆動制御情報(V1)どうしの差異量Vrとなる差異量(Vr−1)を求める。続いて、同様にして流量設定値識別情報「R60−2」と「R20−2」に対応するバルブ駆動制御情報(V1)どうしの差異量(Vr−2)を求める。以下、同様にして流量設定値識別情報「R60−n」と「R20−n」に対応するバルブ駆動制御情報(V1)どうしの差異量(Vr−n)を順次算出してRAM23に時系列順に記憶する。
【0186】
(処理2)
上記(処理1)と同様な手順で、2つの検定情報サンプリングテーブルK2とK3について、流量検出値(R1)が記憶されている時系列順どうしの差異量Rrとなる差異量(Rr−1)、差異量(Rr−2)、・・・、差異量(Rr−n)を順次算出してRAM23に時系列順に記憶する。
【0187】
(ステップS23)
上記したステップS22の(処理1)と(処理2)に記載の手順で順次算出して時系列順に記憶した差異量Rrとなる差異量(Rr−1)、差異量(Rr−2)、・・・、差異量(Rr−n)と、同じく差異量Vrとなる差異量(Vr−1)、差異量(Vr−2)、・・・、差異量(Vr−n)について、バルブ制御情報傾き算出プログラムP10により、時系列順に対応する差異量Rrと差異量Vrとの関連を示す関連係数(A)となる、(値差異量(Rr−1)/差異量(Vr−1))、(値差異量(Rr−2)/差異量(Vr−2))、・・・、(差異量(Rr−n)/差異量(Vr−n))を順次算出して、その値をRAM23に記憶する。
【0188】
バルブ制御情報傾き算出プログラムP10により、順次算出した関連係数(A)の値は、図16に示すように、2種の流量設定値(R0)に係るバルブ駆動制御情報(V1)をX軸、流量検出値(R1)をY軸とした2次元座標系において、時系列順に対応する2つの流量設定値(R0)に対応するバルブ駆動制御情報(V1)の値と流量設定値(R1)の値とがなす2つの交点P1とP2を結ぶ直線L1、・・・、Lnの傾きを表すことになる。
【0189】
(ステップS24)
ステップS23の処理で算出した関連係数(A)の値が、予め設定した閾値の範囲Sを超えているか否かを判定する。閾値の範囲Sとしては、例えば、S=(0.30〜0.35)として設定する。この判定の結果、この所定の閾値の範囲Sを超えている場合にはステップS25に進み、閾値の範囲S以下(越えていない)と判定された場合にはステップS26に進む。なお、この閾値の範囲Sは、2種の流量設定値(R0)ごとに、図4に示すバルブ特性情報テーブルK1に記憶されている基準となるバルブ駆動制御情報(Vs)と基準となる流量(Rs)に基づいて適切な値を設定する。
【0190】
上記した関連係数(A)の値が予め設定した閾値の範囲Sを超えているか否かの判定は、例えば、次の方法を採用することができる。
上記した手順で算出した複数の関連係数(A)の値のうち予め設定した所定数、例えば、一つ又は2個が閾値の範囲Sを超えていると、関連係数(A)は閾値の範囲Sを超えていると判定する。あるいは、複数の関連係数(A)の最大値と最小値との差異を算出し、この差異値が予め設定した値を超えていると、関連係数(A)は所定の閾値の範囲Sを超えていると判定する処理を行ってもよい。
【0191】
なお、ステップS24において、関連係数(A)の値が閾値の範囲Sを超えているか否かを判定する理由は次の通りである。算出した複数の関連係数(A)の値は、装置の経時変化が発生すると、制御手段8が流路4の流量を流量設定値(R0)になるように制御しても、このときのバルブ駆動制御情報(V1)と流量設定値(R1)は微小な変化が生じて、関連係数(A)の値も時間の経過に従って変化する。
【0192】
一方、装置の経時変化が発生していないか、発生していても僅かな場合には、関連係数(A)のバラツキは極めて小さくなる。この理由は、前記したように、閾値の範囲Sをいずれか2種の流量設定値(R0)ごとに、図4に示すバルブ特性情報テーブルK1に記憶されている基準となるバルブ駆動制御情報(Vs)と基準となる流量(Rs)に基づいて適切な値を設定することにより、装置の経時変化が発生していないか、あるいは発生していても僅かな場合には、関連係数(A)の値は、閾値の範囲S内に含まれるようになるからである。
【0193】
従って、前記したステップS21の判定処理と、ステップS24による関連係数(A)の値が予め設定した閾値の範囲Sを超えているか否かを判定する判定処理とを実行することにより、装置の経時変化により流量制御には無視できないズレが発生していることをより信頼性高く判定することが可能になる。
【0194】
また、上記したように、関連係数(A)を、流量設定値(R0)のいずれか2種に関連付けされた検定サンプリング情報を構成する流量検出値(R1)とバルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標を結ぶ直線の傾きとして求めると、装置の経時変化による流量制御の低下をより正確に把握することが可能になる。この理由は、装置の経時変化が発生すると、流量検出値(R1)とバルブ駆動制御情報(V1)は時系列的に同じ傾向で増加又は減少すると推測される。従って、いずれか2種に関連付けされた検定サンプリング情報を構成する流量検出値(R1)とバルブ駆動制御情報(V1)について、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標を結ぶ直線の傾きの変化により、装置の経時変化が発生したか否かを判定した方がより正確に経時変化の発生を把握することができるからである。
【0195】
なお、半導体製造装置2の稼働計画に基づいて、時系列的に外部システムから3種以上の流量設定値(R0)が流量制御装置1の送信される場合、上記したいずれか2種に関連付けされた検定サンプリング情報の選択は、例えば、これら流量設定値(R0)の値が最も高い流量設定値と、最も低い流量設定値を選択するようにするとよい。この理由は、関連係数(A)の時系列的な変化の傾向をより正確に把握することができるからである。
【0196】
(ステップS25)
装置の経時変化により、流量設定値(R0)に対する流量制御には無視できないズレが発生していると判定されるので、RAM23に設定した流量検定フラグに「1」を記憶する処理を行なう。流量検定フラグに「1」を記憶すると、次のタイマー割込み処理Siが起動したときに前記したステップS16(図10参照)の処理が実行されて検定情報の算出処理が実行されることになる。
【0197】
上記したステップS24において、関連係数(A)の値が予め設定した閾値の範囲Sを超えていないと判定されたことは、次の二つのことを示している。
一つ目は、上記したように、装置の経時変化が発生していないか、あるいは発生していても極めて少なくて、外部システム9から受信した流量設定値(R0)に一致、あるいは極めて近似した精度の高い流量制御が行われていることを示している。この理由は上記した通りである。
【0198】
二つ目は、装置の経時変化により、前記した2次元座標軸系において時系列順に対応するバルブ駆動制御情報(V1)と流量検出値(R1)とがなす2つの交点を結ぶ複数の直線L1、L2、・・・Lnが、図17に示すように時系列的に平行移動していることを示す。この平行移動が発生する理由は、例えば、流量制御プログラムP6がバルブ駆動制御情報(V1)を求める処理を行なうためにROM22に記憶している基準制御データ自体が装置の経時変化に伴って陳腐化したために、直線L1、L2、・・・等が所定の方向、例えば、X軸(バルブ駆動制御情報(V1))方向に平行移動したと判定することができる。
【0199】
(ステップS26)
上記したステップS23において、バルブ制御情報傾き算出プログラムP10が算出した関連係数(A)に関する情報等を外部システム9に送信する処理を行なう。これによりタイマー割込み処理Siは終了し、所定時間経過すると再びタイマー割込みSiの処理がステップS11から実行されることになる。
【0200】
以上に説明した本発明の第1の実施形態においては、上記したステップS1〜S26に示す処理手順により、流路4の流量を外部システム9から送信された流量設定値(R0)になるように制御しながら、流量制御装置1の流量制御の精度を検定するための検定サンプリング情報を流量設定値(R0)と関連付けてサンプリングして、RAM23に設定した検定情報サンプリングテーブルに記録する。そして、この流量設定値(R0)と関連付けて検定情報サンプリングテーブルに記憶した検定サンプリング情報の記憶数が予め設定した上限値に達すると、このサンプリングした検定サンプリング情報を構成するデータを解析して、装置の経時変化により外部システム9から指示された流量設定値(R0)に対してその流量制御に変動が発生しているか否かを判定し、無視できない変動、すなわち、流量制御にズレが発生していると判定されると、流量制御装置1が新たに流量を制御したときにその精度を検定する処理を行なうようにしている。そして、この検定処理により得た検定情報を外部システム9に送信するようにしている。
【0201】
このように、本発明の第1の実施の形態においては、流路4の流量を流量設定値(R0)になるように制御しながら、1日単位、あるいは数日間又は1週間〜数週間単位で流量制御の精度に関する検定処理を自動的に行なうようにしている。また、この検定結果に係る情報を上位の監視システム(外部システム9)に提供しているので、装置の経時変化に基づく流量の制御量に無視できないズレが発生しても、迅速な対策を行なうことが可能になる。
【0202】
続いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。この第2の実施形態は、前記した第1の実施形態が備えている流量の検定処理の結果に基づいて、流路4の流量を補正する手段を設けたことに特徴がある。すなわち、流量検定プログラムP11が算出した流量の検定情報に基づいて、積層型圧電素子15に出力するバルブ駆動制御情報(V1)を補正する手段を設けた流量制御装置1である。
【0203】
図12は、この第2の実施形態について流量を制御するための処理手順を示している。前記した図10及び図11に示す第1の実施形態の処理手順と第2の実施形態の処理手順とが相違するステップは、図10に示す第1の実施形態のステップS16(第2の実施形態ではステップS16a)にある。なお、図11に示す第1の実施形態に係る各ステップの処理内容は、第1及び第2の実施形態とも同じ処理内容になる。また、図10と図12において、同一の処理内容を実行するステップは同一のステップ番号を付与している。
図12に示す第2の実施形態の処理手順のうち、第1の実施形態と相違するステップS16a(図12)の処理内容について説明すると次のようになる。
【0204】
(ステップS16a)
流量制御装置1が流路4の流量を外部システム9から受信した流量設定値(R0)になるように制御した流量には、前記したステップS24の処理により無視できないズレが発生していると判定されたので、流量補正プログラムP12により流量が流量設定値(R0)になるように補正する制御を行なう。この流量を補正する制御は、例えば、次の(1)、(2)に記載の手順により行なうことができる。第2の実施形態においては、この流量を補正する制御手段を設けたことに特徴がある。
【0205】
(1)まず、バルブ特性情報参照プログラムP8により、ステップS11とステップS12で入力した現時点における流量検出値(R1)と圧力検出値(P1)の双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報(バルブ駆動電圧)(Vsi)を、バルブ特性情報テーブルK1を参照して求める。
【0206】
(2)上記(1)の処理で求めたバルブ駆動制御情報(バルブ駆動電圧)(Vsi)を、補正したバルブ駆動制御情報として積層型圧電素子15に出力する制御を行なう。すなわち、流量補正プログラムP12は、上記(1)で求めたバルブ駆動制御情報(Vsi)を積層型圧電素子15に印加するために、バルブ駆動回路20に出力するバルブ駆動信号S3となる駆動電圧値(バルブ駆動制御情報(V0))を求め、この求めたバルブ駆動制御情報(V0)をバルブ駆動回路20に出力する処理を行なう。
【0207】
上記した(1)と(2)に記載の流量を補正するための制御方法は、図16に示す直線L1、・・・、等の一方の交点、例えばP2にはバラツキが発生していなくて、他方の交点P1にバラツキが発生したために、関連係数(A)が所定の範囲を超えたと判定された場合に適用できると考えられる。
【0208】
なお、図17に示すように直線L1、・・・、等が平行移動しているか否かを解析する平行移動判定プログラムを設けて、その解析結果に基づいて流量の補正制御を行なう方法を採用することもできる。この方法は、例えば、直線L1、・・・、等の傾き(関連係数(A))
の変化率を求め、ステップS13で出力した補正前のバルブ駆動制御情報(V1)にこの変化率を乗算して求めたバルブ駆動制御情報を、バルブ駆動回路20に出力する処理を行なうようにするとよい。
【0209】
なお、積層型圧電素子15にはステップS13の処理でバルブ駆動制御情報(V1)が出力されるが、ステップS13の処理を実行してから極めて短時間のうちにこのステップS16aの処理が実行されて補正したバルブ駆動制御情報(Vsi)が積層型圧電素子15に印加されることになるので、流路4を流れる流量は流量設定値(R0)になるよう制御されることになる。
【0210】
上記した第2の実施形態においては、流路4の流量を流量設定値(R0)になるように制御しながら、1日単位、あるいは数日間又は1週間〜数週間単位でサンプリングした検定サンプリング情報に基づいて、流量制御の精度に関する検定処理を自動的に行ない、さらに、この検定処理の結果、目標となる流量設定値(R0)に対する流量制御に無視できないズレが発生していると判定されると、流路4の流量を補正するためにバルブ駆動制御情報(Vsi)を求め、このバルブ駆動制御情報(Vsi)を直ちに積層型圧電素子15に印加するようにしている。
【0211】
従って、上記した第2の実施形態の処理機能を備えた流量制御装置1を半導体製造ラインに設置すると、半導体製造ラインに供給するプロセスガスの流量を制御しながら、その流量制御の精度の自動検定処理と、この検定処理の結果に基づいて流量の補正制御も実行するので、半導体製造ラインの稼働率を向上させることが可能になる。
【0212】
続いて、本発明の第3の実施の形態について説明する。この第3の実施形態は、前記した第2の実施の形態において、流量制御の精度に関する検定処理を実行して目標となる流量設定値(R0)に対する流量制御に無視できないズレが発生していると判定されたときに、流量制御装置1の制御手段8は外部システム8に対して流量補正について許可を得るための制御コマンドを送信する。そして、この制御コマンドの応答として流量補正の許可に係る制御コマンドを受信すると、第2の実施の形態と同様に、制御手段8は流路4の流量を補正するためのバルブ駆動制御情報(Vsi)を積層型圧電素子15に出力するようにしたものである。
【0213】
第3の実施の形態を実施するためには、図9に示す外部システム9との通信処理の手順の変更、及び図10(又は図12)と図11に示す処理内容の一部を変更する必要がある。以下、この変更した処理内容について説明する。
【0214】
図13は、この第3の実施の形態を実施するために流量制御装置1が外部システム9から制御コマンド等を受信したときにその受信処理の一例を示している。図13において、図9に示す処理と同一の処理は同一のステップ番号を付与しており、新規に追加したステップはステップ番号としてステップS1a〜ステップ1fを付与している。以下、第3の実施の形態を実施するために、新規に追加したステップS1a〜ステップ1fの処理内容について説明する。
【0215】
(ステップS1a)
外部システムから制御コマンドを受信すると、その制御コマンドの種別を判定する。そして、この制御コマンドが流量設定信号と判定されると、前記したステップS1の処理に進む。一方、流量設定信号ではないと判定されるとステップS1bに進む。
【0216】
(ステップS1b)
受信した制御コマンドが流量補正許可に係る信号であるか否かを判定し、流量補正許可に係る信号であると判定されるとステップS1cに進む。一方、流量補正許可に係る信号ではないと判定されると、未登録の制御コマンドが送信されたとしてステップ1fでエラー処理を行って、外部システム9からの受信処理を終了させる。
【0217】
(ステップ1c)、(ステップ1d)、(ステップ1e)
受信した流量補正許可に係る信号が、「許可」の信号である否かを判定する。そして、「許可」信号であると判定されると、ステップS1dの処理においてRAM23に設定した流量補正許可フラグに、例えば「1」を記憶する処理を行なう。一方、受信した流量補正許可に係る信号が、「不許可」の信号であると判定されると、ステップS1eの処理において流量補正許可フラグに、例えば「9」を記憶する処理を行なう。
【0218】
図14と図15は、第3の実施形態を実行するためタイマー割込み処理Siの処理手順を示している。以下、図14と図15に示す処理内容が第2の実施形態の処理手順を示す図12と図11と相違しているステップS15aとステップS25aについて説明する。
【0219】
(ステップS15a)
図14に示すステップS15aは、RAM23に設定した流量補正許可フラグに「1」が記憶されているか否かを判定する。この流量補正許可フラグに「1」が記憶されていると、流路4の流量の補正を許可することを示す情報であって、前記したステップS1dにより「1」が記憶される。そして、流量補正許可フラグに「1」が記憶されていると判定されると、前記したステップS16aに進んで積層型圧電素子15に補正したバルブ駆動制御情報(Vsi)を出力することになる。一方、流量補正許可フラグに「9」が記憶されているとステップS17に進む。
【0220】
(ステップS25a)
図15に示すステップS25aは、前の処理であるステップS24により、流量制御の精度に関する検定処理を実行して流量設定値(R0)に対する流量制御に無視できないズレが発生していると判定されたので、外部システム9に対して流路4の流量を補正する許可を得るための制御コマンドを送信する処理を行なう。
【0221】
外部システム9は、ステップS25aの処理により、流量制御装置1から流量補正許可に係る制御コマンドを受信すると、この情報を、外部システム9が備えている監視システムのモニタ装置に表示する処理を行なう。また、この監視システムは、モニタ装置に流量制御装置1から送信される流量検出値(R1)、圧力検出値(P1)、バルブ駆動制御情報(V1)、検定情報、等をリアルタイムに表示する処理を行なう。そして、監視システムの監視者はこのモニタ装置の表示を見て、例えば、「流量補正許可」又は「流量補正不許可」に係る情報をキーボード等の入力手段から入力する。この入力信号が流量制御装置1に通信割込み信号として送信されるので、流量制御装置1のメイン制御プログラムPmは、図14に示す処理を行なうことになる。
【0222】
上記した本発明の第3の実施の形態においては、流量制御の精度に関する検定処理を実行して流量設定値(R0)に対する流量制御に無視できないズレが発生していると判定されると、外部システム9に流量補正の許可について問合せの制御コマンドを送信する。そして、外部システム9から監視者等の判断により入力された補正許可に係るコマンドを受信した後に流量補正の処理を実行するので、より適切なタイミングで流量補正を実施することが可能になる。
【0223】
上記した本発明の実施形態において、外部システム9から受信した流量設定値(R0)ごと、すなわち、1バッチの成膜処理等に対して、複数の検定サンプリング情報をサンプリングして検定情報サンプリングテーブルK2、K3等に記憶する場合には、これら複数の検定サンプリング情報を構成する複数のバルブ駆動制御情報(V1)と、流量検出値(R1)と、圧力検出値(P1)とについて、平均値算出プログラムP7aによりその平均値を算出して、算出した平均値のそれぞれを、当該受信した1バッチに相当する流量設定値(R0)に関連付けされるバルブ駆動制御情報(V1)、流量検出値(R1)、及び圧力検出値(P1)とする処理を行なうようにしてもよい。
また、上記の平均値を算出するときに、それぞれの複数のバルブ駆動制御情報(V1)、流量検出値(R1)、及び圧力検出値(P1)の各データについて、その最大値と最小値を除いたデータについて平均値を算出する処理を行なうようにしてもよい。このような処理を行なうと、バルブ駆動制御情報(V1)等の異常値の影響を避けることができる。
【0224】
上記した本発明の実施形態において、流量制御弁機構7のアクチュエータを作動させる推力発生手段は積層型圧電素子15を応用した例について説明したが、この推力発生手段としては、電磁力を応用した電磁式の推力発生手段、例えば、電磁バルブから構成されるアクチュエータを採用することも可能である。この電磁式アクチュエータを採用した場合には、制御手段8はバルブ駆動回路20に適切な範囲の電流値(バルブ駆動制御情報(V0))を出力してその推力を制御する処理を行なうことになる。
【0225】
また、上記した本発明の流量制御装置に実施形態においては、プロセスガスを半導体製造装置に供給する例について説明したが、流路を流れる液体の流量制御についても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】本発明の流量制御装置の一実施形態について、その構成を説明するための構成図である。
【図2】図1に示す流量制御装置が備えている制御手段について、そのハードウエア構成の一例を説明するためのハードウエア構成図である。
【図3】図1に示す流量制御弁機構のアクチュエータとなる積層型圧電素子に印加したバルブ駆動電圧(Vs)と流路を流れる流体の流量(Rs)との関係を、この流体の圧力値に対応させて表示した線図である。
【図4】図3に示すバルブ駆動電圧(Vs)と流量(Rs)との関係を示す情報を、流体の圧力値に対応させたバルブ特性情報テーブルとして、制御手段の記憶手段に記憶したときのデータ構成の一例を説明するための図である。
【図5】図1に示す制御手段が、流量の制御と流量制御の検定処理を行なうために備えているプログラムについて、その構成例を説明するための図である。
【図6】図1に示す外部システムが流量制御装置に送信する流量設定値に係る情報について、その送信の状況を時系列的に説明するための図である。
【図7】検定情報サンプリングテーブルについて、そのデータ構成の一例を説明するための図である。
【図8】同じく、他の検定情報サンプリングテーブルについて、そのデータ構成の一例を説明するための図である。
【図9】図1に示す外部システムから流量設定値に係る信号を受信したときに、制御手段が実行する受信処理の手順について、その一例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の流量制御装置が、流量の制御と流量制御の検定処理を実行する手順について、その第1の実施の形態を示すフローチャートである。
【図11】同じく、本発明の流量制御装置が、流量の制御と流量制御の検定処理を実行する手順について、その第1の実施の形態を示すフローチャートである。
【図12】同じく、本発明の流量制御装置が、流量の制御と流量制御の検定処理を実行する手順について、その第2の実施の形態を示すフローチャートである。
【図13】図1に示す外部システムから制御コマンド信号が本発明の流量制御装置に送信されたときに、制御手段が実行する受信処理の手順について、その一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の流量制御装置が、流量の制御と流量制御の検定処理を実行する手順について、その第3の実施の形態を示すフローチャートである。
【図15】同じく、本発明の流量制御装置が、流量の制御と流量制御の検定処理を実行する手順について、その第3の実施の形態を示すフローチャートである。
【図16】図5に示すバルブ制御情報傾き算出プログラムP10が求める関連係数(A)に係る直線の傾きついて、その傾きの一例を説明するための図である。
【図17】同じく、図5に示すバルブ制御情報傾き算出プログラムP10が求める関連係数(A)に係る直線の傾きついて、その傾きの他の例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0227】
1 :流量制御装置
2 :半導体製造装置
4 :流路
5 :流量検出手段
6 :圧力検出手段
7 :流量制御弁機構
8 :制御手段
9 :外部システム(ホストコンピュータ、等)
12 :流量制御弁
13 :ダイヤフラム
14 :弁口
15 :積層型圧電素子
20 :バルブ駆動回路
K1 :バルブ特性情報データテーブル
K2、K3:検定情報サンプリングテーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる流体の流量を検出する流量検出手段と、前記流路に設けられ、バルブ駆動制御情報により弁開度を変えることにより前記流量を制御する流量制御弁機構と、外部システムから少なくとも1種の流量設定値を受信し、前記流路の流量を前記受信した流量設定値になるように前記流量制御弁機構に前記バルブ駆動制御情報を出力して前記弁開度を制御する制御手段と、を備えた流量制御装置であって、
予め、前記流路に前記流体を流して前記流量制御弁機構に基準となる前記バルブ駆動制御情報を出力したときに、前記基準となるバルブ駆動制御情報と前記流量検出手段が検出した基準となる流量検出値との関係を示す情報を、前記流体の圧力検出値と関連付けして前記制御手段の記憶手段に記憶したバルブ特性情報を備え、
前記制御手段が前記外部システムから新たな流量設定値(R0)を受信して、所定の時間間隔で前記流量検出手段から入力した流量検出値に基づいて求めた前記バルブ駆動制御情報を前記流量制御弁機構に出力して、前記流量を前記流量設定値(R0)になるように制御しているときに、前記制御手段は、
前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに、前記流量検出手段から入力した前記流量検出値(R1)と、該流量検出値(R1)を入力したときの前記流体の圧力検出値(P1)と、該流量検出値(R1)に基づいて求めて前記流量制御弁機構に出力したバルブ駆動制御情報(V1)とから構成される検定サンプリング情報を、前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶する検定情報サンプリング手段と、
前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶した前記検定サンプリング情報の所定数について、該検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)との関連を示す関連係数(A)を、前記記憶の時系列順に対応する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)とから順次求めるバルブ制御情報傾き算出手段と、
前記バルブ制御情報傾き算出手段の実行後に、新たに入力した前記流量検出値(R1)に基づいて求めて出力した新たなバルブ駆動制御情報(V1)と、前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって前記新たに入力した流量検出値(R1)と新たに入力した圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報と、の差異となるバルブ制御差異量を流量制御の検定情報として求める流量検定手段と、
を備えていることを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
前記バルブ制御情報傾き算出手段は、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標を結ぶ直線の傾きとして求める第1の傾き算出手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記バルブ制御情報傾き算出手段は、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか1種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標と原点座標とを結ぶ直線の傾きとして求める第2の傾き算出手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記検定情報サンプリング手段は、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに一つの前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶する手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記検定情報サンプリング手段は、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに複数の前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶する手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記流量検定手段は、前記新たなバルブ駆動制御情報(V1)を出力したときに、
前記新たな流量検出値(R1)と、前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって前記新たなバルブ駆動制御情報(V1)と該流量検出値(R1)を入力したときの新たな圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となる流量検出値と、の差異となる流量差異量を流量制御の検定情報として求める第2の流量検定手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記バルブ制御情報傾き算出手段が順次算出した前記関連係数(A)の値が、予め設定した閾値の範囲を超えているか否かを判定する手段を有し、
前記関連係数(A)の値が前記閾値の範囲を超えていると判定されたときに、前記流量検定手段を実行させるように制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、新たに入力した流量検出値(R1)に基づいて求めた前記新たなバルブ駆動制御情報(V1)を出力した後に、
前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって該新たに入力した流量検出値(R1)と新たに入力した前記圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報を求める流量補正手段を備え、
前記流量補正手段が求めた前記基準となるバルブ駆動制御情報を、前記流量制御弁機構に出力することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する所定数の前記バルブ駆動制御情報(V1)と前記圧力検出値(P1)について、前記記憶の時系列順に隣り合う前記バルブ駆動制御情報(V1)の差分値(Sv)の正負と、同じく前記圧力検出値(P1)の差分値(Pv)の正負を判定する検定サンプリング情報増減傾向判定手段を備え、
前記差分値(Sv)と前記差分値(Pv)の双方の全てが「正」又は「負」と判定されたときに、前記バルブ制御情報傾き算出手段を実行させることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記流量検定手段の実行後に、
前記流路の流量の補正可否の問合せに係る問合せ制御コマンドを前記外部システムに送信する手段と、前記問合せ制御コマンドに対する応答を受信する手段を備えた流量補正問合せ手段を備え、
前記問合せ制御コマンドの応答として流量補正可に係る制御コマンドを受信した後に、前記流量補正手段を実行させることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項11】
流路を流れる流体の流量を検出する流量検出手段と、前記流路に設けられ、バルブ駆動制御情報により弁開度を変えることにより前記流量を制御する流量制御弁機構と、外部システムから少なくとも1種の流量設定値を受信し、前記流路の流量を前記受信した流量設定値になるように前記流量制御弁機構に前記バルブ駆動制御情報を出力して前記弁開度を制御する制御手段と、を備えた流量制御装置の検定方法であって、
予め、前記流路に前記流体を流して前記流量制御弁機構に基準となる前記バルブ駆動制御情報を出力したときに、前記基準となるバルブ駆動制御情報と前記流量検出手段が検出した基準となる流量検出値との関係を示す情報を、前記流体の圧力検出値と関連付けして前記制御手段の記憶手段にバルブ特性情報として記憶するステップと、
前記制御手段が前記外部システムから新たな流量設定値(R0)を受信して、所定の時間間隔で前記流量検出手段から入力した流量検出値に基づいて求めた前記バルブ駆動制御情報を前記流量制御弁機構に出力して、前記流量を前記流量設定値(R0)になるように制御しているときに、
前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに、前記流量検出手段から入力した前記流量検出値(R1)と、該流量検出値(R1)を入力したときの前記流体の圧力検出値(P1)と、該流量検出値(R1)に基づいて求めて前記流量制御弁機構に出力したバルブ駆動制御情報(V1)とから構成される検定サンプリング情報を、前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶する検定情報サンプリングステップと、
前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶した前記検定サンプリング情報の所定数について、該検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)との関連を示す関連係数(A)を、前記記憶の時系列順に対応する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)とから順次求めるバルブ制御情報傾き算出ステップと、
前記バルブ制御情報傾き算出ステップの実行後に、新たに入力した前記流量検出値(R1)に基づいて求めて出力した新たなバルブ駆動制御情報(V1)と、前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって前記新たに入力した流量検出値(R1)と新たに入力した圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報と、の差異となるバルブ制御差異量を流量制御の検定情報として求める流量検定ステップと、
を備えていることを特徴とする流量制御装置の検定方法。
【請求項12】
前記バルブ制御情報傾き算出ステップは、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標を結ぶ直線の傾きとして求める第1の傾き算出ステップを備えていることを特徴とする請求項11記載の流量制御装置の検定方法。
【請求項13】
前記バルブ制御情報傾き算出ステップは、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか1種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標と原点座標とを結ぶ直線の傾きとして求める第2の傾き算出ステップを備えていることを特徴とする請求項11に記載の流量制御装置の検定方法。
【請求項14】
前記検定情報サンプリングステップは、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに一つの前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するステップを備えていることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれかに記載の流量制御装置の検定方法。
【請求項15】
前記検定情報サンプリングステップは、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに複数の前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するステップを備えていることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれかに記載の流量制御装置の検定方法。
【請求項16】
前記流量検定ステップは、前記新たなバルブ駆動制御情報(V1)を出力したときに、
前記新たな流量検出値(R1)と、前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって前記新たなバルブ駆動制御情報(V1)と該流量検出値(R1)を入力したときの新たな圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となる流量検出値と、の差異となる流量差異量を流量制御の検定情報として求める第2の流量検定ステップを備えていることを特徴とする請求項11から請求項15のいずれかに記載の流量制御装置の検定方法。
【請求項17】
前記バルブ制御情報傾き算出ステップが順次算出した前記関連係数(A)の値が、予め設定した閾値の範囲を超えているか否かを判定するステップを有し、
前記関連係数(A)の値が前記閾値の範囲を超えていると判定されたときに、前記流量検定ステップが実行されることを特徴とする請求項11から請求項16のいずれかに記載の流量制御装置の検定方法。
【請求項18】
前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する所定数の前記バルブ駆動制御情報(V1)と前記圧力検出値(P1)について、前記記憶の時系列順に隣り合う前記バルブ駆動制御情報(V1)の差分値(Sv)の正負と、同じく前記圧力検出値(P1)の差分値(Pv)の正負を判定する検定サンプリング情報増減傾向判定ステップを備え、
前記差分値(Sv)と前記差分値(Pv)の双方の全てが「正」又は「負」と判定されたときに、前記バルブ制御情報傾き算出ステップが実行されることを特徴とする請求項11から請求項17のいずれかに記載の流量制御装置の検定方法。
【請求項19】
流路を流れる流体の流量を検出する流量検出手段と、前記流路に設けられ、バルブ駆動制御情報により弁開度を変えることにより前記流量を制御する流量制御弁機構と、外部システムから少なくとも1種の流量設定値を受信し、前記流路の流量を前記受信した流量設定値になるように前記流量制御弁機構に前記バルブ駆動制御情報を出力して前記弁開度を制御する制御手段と、を備えた流量制御装置が前記流路の流量を制御する方法であって、
予め、前記流路に前記流体を流して前記流量制御弁機構に基準となる前記バルブ駆動制御情報を出力したときに、前記基準となるバルブ駆動制御情報と前記流量検出手段が検出した基準となる流量検出値との関係を示す情報を、前記流体の圧力検出値と関連付けして前記制御手段の記憶手段にバルブ特性情報として記憶するステップと、
前記制御手段が前記外部システムから新たな流量設定値(R0)を受信して、所定の時間間隔で前記流量検出手段から入力した流量検出値に基づいて求めた前記バルブ駆動制御情報を前記流量制御弁機構に出力して、前記流量を前記流量設定値(R0)になるように制御しているときに、
前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに、前記流量検出手段から入力した前記流量検出値(R1)と、該流量検出値(R1)を入力したときの前記流体の圧力検出値(P1)と、該流量検出値(R1)に基づいて求めて前記流量制御弁機構に出力したバルブ駆動制御情報(V1)とから構成される検定サンプリング情報を、前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶する検定情報サンプリングステップと、
前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶した前記検定サンプリング情報の所定数について、該検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)との関連を示す関連係数(A)を、前記記憶の時系列順に対応する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)とから順次求めるバルブ制御情報傾き算出ステップと、
前記バルブ制御情報傾き算出ステップが順次算出した前記関連係数(A)の値が予め設定した閾値の範囲を超えていると判定されて、新たに入力した前記流量検出値(R1)に基づいて求めた新たなバルブ駆動制御情報(V1)を出力した後に、
前記バルブ特性情報を参照して求めた情報であって該新たに入力した流量検出値(R1)と新たに入力した前記圧力検出値(P1)との双方に関連付けされる基準となるバルブ駆動制御情報を求める流量補正ステップと、
前記流量補正ステップにより求めた前記基準となるバルブ駆動制御情報を、前記流量制御弁機構に出力するステップと、を備えていることを特徴とする流量制御装置の流量制御方法。
【請求項20】
前記バルブ制御情報傾き算出ステップは、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標を結ぶ直線の傾きとして求める第1の傾き算出ステップを備えていることを特徴とする請求項19に記載の流量制御装置の流量制御方法。
【請求項21】
前記バルブ制御情報傾き算出ステップは、前記関連係数(A)を、前記流量設定値のいずれか1種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する前記流量検出値(R1)と前記バルブ駆動制御情報(V1)のそれぞれを、その記憶の時系列順に2次元座標軸上に対応させたときの交点座標と原点座標とを結ぶ直線の傾きとして求める第2の傾き算出ステップを備えていることを特徴とする請求項19に記載の流量制御装置の流量制御方法。
【請求項22】
前記検定情報サンプリングステップは、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに一つの前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するステップを備えていることを特徴とする請求項19から請求項21のいずれかに記載の流量制御装置の流量制御方法。
【請求項23】
前記検定情報サンプリングステップは、前記新たに受信した流量設定値(R0)ごとに複数の前記検定サンプリング情報を該流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するとともに、予め設定された記憶数の上限値に達するまで前記検定サンプリング情報を前記流量設定値(R0)と関連付けして前記記憶手段に記憶するステップを備えていることを特徴とする請求項19から請求項21のいずれかに記載の流量制御装置の流量制御方法。
【請求項24】
前記流量設定値のいずれか2種に関連付けされた前記検定サンプリング情報を構成する所定数の前記バルブ駆動制御情報(V1)と前記圧力検出値(P1)について、前記記憶の時系列順に隣り合う前記バルブ駆動制御情報(V1)の差分値(Sv)の正負と、同じく前記圧力検出値(P1)の差分値(Pv)の正負を判定する検定サンプリング情報増減傾向判定ステップを備え、
前記差分値(Sv)と前記差分値(Pv)の双方全てが「正」又は「負」と判定されたときに、前記バルブ制御情報傾き算出ステップが実行されることを特徴とする請求項19から請求項23のいずれかに記載の流量制御装置の流量制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−245132(P2009−245132A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90430(P2008−90430)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】