説明

流量計測装置および流体供給システム

【課題】器具判別技術の提供に際し、必要メモリ量などを減らしつつ、演算速度、器具判別精度の向上を図る。
【解決手段】ガスメータ200において、超音波流量計204は、流路202に流れるガスの流量を一定時間間隔で計測し、演算部208が計測された流量の一定時間毎の差分値を演算する。同時に起動流量検出部209が器具動作時の起動流量を検出する。そして、起動流量値と差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表210aに基づき、差分値変換部212は演算された差分値をコードに変換する。さらにコード列生成部214は、一定時間毎のコードの集合に基づき計測コード列を生成し、器具判別部216は、計測コード列と、ガス器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、ガスを使用するガス器具を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量の変化を捕らえることにより、流体を使用している器具を正しく判別するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスメータ装置を有する流体配管系において使用器具を特定するガスメータ装置として、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
本文献のガスメータ装置100は、図6に示すように家庭用ガス供給管19に接続された流路102中に配置され、流量計測部104と、計測流量情報記憶部106と、演算部108と、流量区分表保持部110と、差分値変換部112と、コード列生成部114と、器具判別部116と、器具固有コード列情報保持部118と、器具別流量算出部120と、流路遮断弁122とを有する構成である。
【0004】
上記ガスメータ装置100においては、流量計測部104は、流路102に流れる流体としてのガスに対し、一定時間間隔でその流量を計測する。計測流量情報記憶部106は、流量計測部104で計測された計測流量値と、当該計測流量値を計測した計測時間が対応付けられて記述された対象データを記憶する。
【0005】
演算部108は、流量計測部104によって計測されたガスの流量の、一定時間毎の差分値を演算するものである。
【0006】
流量区分表保持部110は、図7に示すような、差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表110aを保持するものである。流量区分表110aは、計測された差分値を所定の区分に区分けし、当該区分を表す所定のコードに変換する変換テーブルの役割を果たす。
【0007】
差分値変換部112は、演算部108によって演算された差分値を、流量区分表110aに基づき、一定時間毎の差分値が分類される区分を表すコードに変換する。コード列生成部114は、差分値変換部112によって得られた一定時間毎のコードの集合に基づき、実際の計測により得られたコードの列である計測コード列を生成する。この計測コード列は、流体の流量変化を擬似的に表現するものである。コード生成部114は、生成された計測コード列を必要に応じて図示せぬメモリに記録する。
【0008】
器具判別部116は、コード列生成部114によって生成された計測コード列に基づき、流体としてのガスを使用している種々のガス器具13、14、15を判別する。ここで器具判別部116は、計測コード列と、予めガス器具ごとに器具固有コード列情報保持部118に記憶されたガス器具固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、その類似関係等からガスを使用するガス器具を判別する。
【0009】
器具別流量算出部120は、器具判別部116により判別されたガス器具毎の流量を算出する。
【特許文献1】特開2006−309498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の構成においては、流量区分表の区分の基準値は絶対値によって定められているた
め、起動流量値の異なる器具を正確に判別するには、起動流量値に見合った複数の流量区分表を使用する必要があり、流量区分表の数だけ必要メモリ量が増加してしまう。
【0011】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたもので、その目的は、起動流量値の異なる器具を判別する場合でも、演算に必要メモリ量の増加を抑え、演算速度、器具判別精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の流量計測装置は、流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測する流量計測部と、前記流量計測部によって計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算する演算部と、前記流量計測部によって計測された流量により、器具動作時の起動流量値を検出する起動流量値検出部と、起動流量値及び差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表と、前記起動流量値検出部によって検出された起動流量値及び前記演算部によって演算された差分値を、前記流量区分表に基づき前記コードに変換する差分値変換部と、前記差分値変換部によって得られた前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するコード列生成部と、前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別する器具判別部とを備える。
【0013】
本発明によれば、流体の使用器具の判別に際しては、前記流量区分表の区分の基準値を起動流量に見合った可変の値とすることで、起動流量値の異なる器具に対しても前記流量区分表を複数使用する必要はなく、同一のものに基づいて流量の差分値をコード化(変換)して得られる符合値が使用される。従って、器具判別の実行に際し、演算に必要メモリ量の増加を抑え、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能となる。
【0014】
本発明の流量計測装置において、前記流量区分表の区分の基準値を、例えば、起動流量値との比率で定めるものとすることで、簡単な計算で基準値を求めることができるため、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明の流量計測装置において、前記流量区分表の区分の基準値を、例えば、起動流量値の影響が大きい部分を起動流量値との比率で、起動流量値の影響が小さい部分を絶対値でというような組み合わせで定めるものとすることで、必要な部分のみ簡単な計算で基準値を求めることができるため、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能となる。
【0016】
また、本発明の流量計測装置において、前記器具判別部を、コード列のみの比較に加えて、起動流量値の比較を組み合わせるものとすることで、コード列の比較のみでは判別が困難な場合であっても起動流量値の比較を組み合わせることでより正確な判別が可能となる。
【0017】
さらに本発明によれば、上記流量計測装置によって実行される流量計測方法、及び流量計測装置を制御するコンピュータ用のプログラムが提供される。さらに、これらの装置、方法、プログラムを使用した流体供給システムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、起動流量値の異なる器具の判別に際し、必要メモリ量の増加を抑え、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1の発明は、流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測する流量計測部と、前記
流量計測部によって計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算する演算部と、前記流量計測部によって計測された流量により、器具動作時の起動流量値を検出する起動流量値検出部と、起動流量値及び差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表と、前記起動流量値検出部によって検出された起動流量値及び前記演算部によって演算された差分値を、前記流量区分表に基づき前記コードに変換する差分値変換部と、前記差分値変換部によって得られた前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するコード列生成部と、前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別する器具判別部とを備えるものである。
【0020】
これによれば、流体の使用器具の判別に際しては、前記流量区分表の区分の基準値を起動流量に見合った可変の値とすることで、起動流量値の異なる器具に対しても前記流量区分表を複数使用する必要はなく、同一のものに基づいて流量の差分値をコード化(変換)して得られる符合値が使用される。従って、器具判別の実行に際し、演算に必要メモリ量の増加を抑え、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能となる。
【0021】
第2の発明は、特に、第1の発明において、流量区分表の区分の基準値は起動流量値との比率で定めることを特徴とするものである。
【0022】
これによれば、簡単な計算で基準値を求めることができるため、演算速度、器具判別精度の向上を図ることができる。
【0023】
第3の発明は、特に、第1の発明において、流量区分表の区分の基準値は起動流量値との比率と絶対値の組み合わせで定めることを特徴とするものである。
【0024】
これによれば、必要な部分のみ簡単な計算で基準値を求めることができるため、演算速度、器具判別精度の向上を図ることができる。
【0025】
第4の発明は、特に、第1から第3のいずれか1つの発明において、器具判別部は前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較することに加え、前記起動流量値検出部によって検出された起動流量値と、器具ごとの固有の起動流量値を比較し、流体を使用する器具を判別することを特徴とするものである。
【0026】
これによれば、コード列の比較のみでは判別が困難な場合であっても起動流量値の比較を組み合わせることでより正確な判別ができる。
【0027】
第5の発明は、特に、第1から第4のいずれか1つの発明において、流量計測部は超音波計測方式からなるものである。
【0028】
これによれば、瞬時計測が行えるため、時間経過による流量変化の詳細を計測することが可能で、より精度の高い器具の判別を行うことができる。
【0029】
第6の発明は、流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測するステップと、計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算するステップと、計測された流量により、器具動作時の起動流量値を検出するステップと、起動流量値及び差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表に基づき、検出された起動流量値及び演算された差分値を、前記コードに変換するステップと、前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するステップと、前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別するステップとからなる流量計測方法に関するものである。
【0030】
これによれば、流体の使用器具の判別に際しては、前記流量区分表の区分の基準値を起動流量に見合った可変の値とすることで、起動流量値の異なる器具に対しても前記流量区分表を複数使用する必要はなく、同一のものに基づいて流量の差分値をコード化(変換)して得られる符合値が使用される。従って、器具判別の実行に際し、演算に必要メモリ量の増加を抑え、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能な流量計測方法を提供できる。
【0031】
第7の発明は、流量計測装置を制御するコンピュータに、以下のステップを実行させるプログラムであって、流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測するステップと、計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算するステップと、計測された流量により、器具動作時の起動流量値を検出するステップと、起動流量値及び差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表に基づき、検出された起動流量値及び演算された差分値を、前記コードに変換するステップと、前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するステップと、前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別するステップとをコンピュータに実行させるものである。
【0032】
これによれば、流体の使用器具の判別に際しては、前記流量区分表の区分の基準値を起動流量に見合った可変の値とすることで、起動流量値の異なる器具に対しても前記流量区分表を複数使用する必要はなく、同一のものに基づいて流量の差分値をコード化(変換)して得られる符合値が使用される。従って、器具判別の実行に際し、演算に必要メモリ量の増加を抑え、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能なプログラムを提供できる。
【0033】
第8の発明は、特に、第1から第7のいずれか1つの流量計測装置または流量計測方法またはコンピュータに実行させるプログラムを用いた流体供給システムに関するものである。
【0034】
これによれば、流体の使用器具の判別に際しては、前記流量区分表の区分の基準値を起動流量に見合った可変の値とすることで、起動流量値の異なる器具に対しても前記流量区分表を複数使用する必要はなく、同一のものに基づいて流量の差分値をコード化(変換)して得られる符合値が使用される。従って、器具判別の実行に際し、演算に必要メモリ量の増加を抑え、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能な流体供給システムを提供できる。
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0036】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施形態における流量計測装置としてのガスメータのブロック図を示すものである。
【0037】
図1においてガスメータ200は、流路202と、流量計測部としての超音波流量計204と、計測流量情報記憶部206と、演算部208と、起動流量値検出部209と、流量区分表保持部210と、差分値変換部212と、コード列生成部214と、器具判別部216と、器具固有コード列情報保持部218とを備えたものである。さらにガスメータ200は、流路202に配置され、緊急時などにガスを遮断する流路遮断弁222を含む。
【0038】
超音波流量計204は、流路202に流れる流体としてのガスに対し、一定時間間隔(例えば2秒など)で超音波を発射してその流量を計測するものであり、一般的なものを使用することができる。計測流量情報記憶部206は、超音波流量計204で計測された計測流量値と、当該計測流量値を計測した計測時間が対応付けられて記述された対象データを記憶する。
【0039】
演算部208は、超音波流量計204によって計測されたガスの流量の、前述した超音波発射間隔に相当する一定時間毎の差分値を演算するものである。例えば後述する図3において、所定タイミングの流量(絶対流量)が60L/h(リットル毎時)であり、次のタイミングでの流量が120L/hである場合、このときの差分値は120−60=60(L/h)として演算される。ここで差分値の演算は、次の次のタイミング(120L/hの流量の次の流量)の流量で行ってもよい。
【0040】
起動流量値検出部209は、超音波流量計204によって計測されたガスの流量により、器具動作時の起動流量値を検出するものである。例えば後述する図3において、所定タイミングの流量(絶対流量)と差分値の比率が1%以下となった時点の絶対流量を起動流量値とすると、このときの起動流量値は166L/hとなる。
【0041】
流量区分表保持部210は、図2に示すような、起動流量値及び差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表210aを保持するものである。流量区分表210aは、計測された差分値を所定の区分に区分けし、当該区分を表す所定のコードに変換する変換テーブルの役割を果たす。流量区分表210aの区分の数は特に限定されないが、図2では、16(コードN1)と4(コードN2)の2種類が用意されている。すなわち、ガスメータ200は、区分の数が16である流量区分表と、区分の数が4である流量区分表を適宜切換えて使用することができる。
【0042】
図2に示すように流量区分表において、それぞれコードN1、コードN2で表される2種類の区分が用意されている。コードN1では、流量区分表の区分が、流量がゼロと判断する領域、流量が安定していると判断する領域(安定領域)、流量が増加していると判断する領域(増加領域)、流量が減少していると判断する領域(減少領域)の4事象で区分けされている。表に示すように、これら四つの領域は、0,1,2,3の4つの数字に対応付けられており、それぞれ2ビッドのコードで表現することができる。すなわち、0は”00”,1は”01”、2は”10”、3は”11”で表現することができる。このように、区分を従来の差分値ではなく、コードを用いて表すことにより、マイコンプログラムとのより良い親和性が確保され、少ないメモリサイズと演算量で判断指標を提供することができる。
【0043】
尚、本例では、流量がゼロと判断される領域を挙げたが、実際の装置では実際に計測される流量が、多少のばらつきを有するため完全にゼロとなることはあまりない。したがって、流量がゼロとなるのはほぼゼロ、実質的にゼロとなったときをも含む。
【0044】
コードN2はさらに上記各領域を細分化して生成されるものであり、安定領域を流量安定度合いに応じて七つ、増加領域を増加度合いに応じて4つ、流量減少度合いに応じて4つに各々細分化して生成される。流量がゼロと判断する領域は細分化されていない。したがって、コードN2は、4ビットのコード(0〜9、A〜F)で表現することができる。
【0045】
また、コードN1においては、各領域が異なる流量間隔を有して細分化されている。例えば増加領域においては、差分流量の小さい方が間隔が小さくなっている。例えば、コード”6”の領域では、起動流量値をQstとすると、差分流量の幅が0.75×Qst−0.5×Qst=0.25×QstL/hであるが、コード”4”の領域では、0.25
×Qst−0.05×Qst=0.2×QstL/h、コード3の領域では0.05×Qst−0.005×Qst=0.045×QstL/hとなっている。このような構成は、差分流量の小さい領域では器具の種類が多いため、判別精度を上げるために間隔を小さくしておく必要から採用されている。
【0046】
差分値変換部212は、起動流量値検出部209によって検出された起動流量値及び演算部208によって演算された差分値を、流量区分表210aに基づき、(超音波発射の)一定時間毎の差分値が分類される区分を表すコードに変換する。コード列生成部214は、差分値変換部212によって得られた一定時間毎のコードの集合に基づき、実際の計測により得られたコードの列である計測コード列を生成する。この計測コード列は、流体の流量変化を擬似的に表現するものである。コード生成部214は、生成された計測コード列を必要に応じて図示せぬメモリに記録する。
【0047】
器具判別部216は、コード列生成部214によって生成された計測コード列に基づき、流体としてのガスを使用しているガス器具を判別する。ここで器具判別部216は、計測コード列と、予めガス器具ごとに器具固有コード列情報保持部218に記憶されたガス器具固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、その類似関係等からガスを使用するガス器具を判別する。
【0048】
器具別流量算出部220は、器具判別部216により判別されたガス器具毎の流量を算出することもできる。また、ガスメータ200は上流側においてガス管路19に接続されるとともに、下流側にてガステーブル、ファンヒータ、床暖房等、種々のガス器具13,14,15に接続されている。
【0049】
以下、本実施形態のガスメータ200を用いた流量変化履歴記録方法について説明する。まず、超音波流量計204によって一定時間間隔(例えば2秒など)をおいて計測される流量(絶対流量)Q(n)と前回計測された流量Q(n−1)は、計測流量情報記憶部106に一旦記憶される。その後、Q(n)と前回計測された流量Q(n−1)との差である差分値ΔQ(n)=Q(n)−Q(n−1)を演算部208は演算する。ここで一定間隔は4秒や6秒であってもよい。
【0050】
起動流量値検出部209は、計測流量情報記憶部106に記憶された流量(絶対流量)Q(n)と、演算部208において演算された差分値ΔQ(n)の比率を計算し、所定の比率(例えば1%)以下となった時点の絶対流量を起動流量値Qstとして検出する。ここで起動流量値を決定する所定の比率は、2%や3%等の他の値であってもよい。またここで条件に該当する絶対流量値が存在しない場合は、例えば器具の起動時のピーク値や、器具が起動してから所定の時間を経過した時の値を起動流量値の代用とすることとしてもよい。
【0051】
差分値変換部212は、演算部208によって演算された差分値ΔQ(n)を、図2の流量区分表210aを参照し、一定時間毎の差分値が分類される区分を表すコードである区分コード(N1またはN2の2ビットコードまたは4ビットコード)に変換する。ここで、区分コードN1またはN2のいずれを用いるかは自由に選択が可能である。ここで、210aの区分の基準値については、単純な起動流量値との比率計算で求めているが、基準値を起動流量値を含む他の数式の計算で求めてもよく、起動流量値を含む数式においては、条件によって複数の数式を切換えるものであってもよい。
【0052】
図3はこのような流量区分表を用いた変換の一例を示している。図1のガス器具13,14,15のいずれかに相当するガス器具A(例えばファンヒータ)が起動を開始し、ガス流量が発生すると、計測される流量は、図3(a)の「流量値」、図3(b)のグラフ
で示されるように、流量Q(n)=0から流量Q(n)≠0となり、ガス使用量に応じて流量が変化する。超音波流量計204による流量の計測と同時に、演算部208が差分値を演算、起動流量値検出部209が起動流量値を検出し、区分コードN1、または区分コードN2への変換が差分値変換部212によって行われる。
【0053】
変換の結果得られたコードから、コード列生成部214は、図3(a)の「区分コードN1」、「区分コードN2」の2ビットコードまたは4ビットコードに相当する計測コード列を生成する。このような一定時間毎のコードの集合である実際の計測により得られた計測コード列は、ガスの流量変化を擬似的に表現するものであり、コード列生成部214は、得られた計測コード列を必要に応じて図示せぬメモリに記録する。
【0054】
すなわち、図3(a)の「区分コードN1」、「区分コードN2」は、図3(a)の「流量値」、図3(b)のグラフのように、流量そのものを表現するものではない。しかしながら、このようなコード列はガス流量の変化を概ね、すなわち流量がゼロと判断する領域、流量が安定していると判断する領域、流量が増加していると判断する領域、流量が減少していると判断する領域、の4事象を擬似的に表しており、おおよその流量の挙動変化を、コード列を用いて把握することが可能となる。
【0055】
図4は、ガス器具Aとは異なるガス器具B(例えば給湯器)の流量区分表を用いた変換の一例を示している。ガス器具Bにおいても、ガス器具Aと全く同様の手順で区分コードN1」、「区分コードN2」求めることができるため、おおよその流量の挙動変化を、同様にコード列を用いて把握することが可能となる。
【0056】
このようにガス器具Aとガス器具Bのような起動流量値の異なる器具に対しても同じ流量区分表210aを使用することで、それぞれの起動流量値に見合った区分の基準値に基づいたコード列を求めることができるため、演算に必要メモリ量の増加を抑えることが可能となる。
【0057】
また、このような計測コード列がガス器具毎に固有のものである場合、ガスを使用しているガス器具を判別することが可能となる。
【0058】
ガスの使用開始から所定時間、例えば、3つ目のサンプリング(6秒経過)までの流量変化に注目する。図3のガス器具Aの例では、区分コードN1(計測コード列)は「0553」となっている。一方、同じようにして得られた、図4に示すガス器具B(例えば給湯器)の起動後のガス流量により、3つ目のサンプリングまでのガス流量の区分コードN1(計測コード列)は「0654」となる。
【0059】
ここでガス器具Aとガス器具BのコードN1を比較すると、ガス器具Aは「0553」の固有のコード列、ガス器具Bは「0654」の固有のコード列に沿って立上っている。このようなガス器具毎の個別の立ち上り特性である固有のコード列を予め記憶しておき、計測、変換により得られた計測コード列である区分コードN1が「0553」であれば使用されたガス器具がガス器具Aであると判別することができる。また得られた計測コード列である区分コードN1が「0654」であれば、使用されたガス器具がガス器具Bであると判別することができる。
【0060】
器具判別部216は、コード列生成部214によって生成された計測コード列に基づき、上述の方法で、ガスを使用しているガス器具を判別する。ここで器具判別部216は、計測コード列と、予めガス器具ごとに器具固有コード列情報保持部218に記憶されたガス器具固有の固有のコード列を比較し、その類似関係等からガスを使用するガス器具を判別する。図3、図4のN1,N2と同様なガス器具固有のコード列が、器具固有コード列
情報保持部218に予め記憶されている。ガス器具固有のコード列は、図2に示した流量区分表210aの各差分流量帯と対応したコードN1,N2を考慮して作成されている。
【0061】
上述の例では、計測コード列および器具固有コード列は、上述したガス器具A、ガス器具B、・・・の立上り特性、すなわち、ガス器具によるガスの使用開始直後の流量の立上り特性を示すものである。しかしながら、ガス器具を特定することができるものであれば、特に限定はされず、計測コード列および器具固有コード列として、ガス器具の作動中における制御特性(流量の制御特性)を示すもの全般が用いられる。器具の作動中の流量特性には、例えば、器具による流体の使用開始直後の流量の立上り特性、流体の使用終了時の流量の立下り特性、または流体の安定使用時における流量の制御特性等が含まれる。ここで器具固有コード列情報保持部218に記憶されたガス器具固有のコード列は、予め設定するのではなく、実際の流量計測によって学習し補正してもよい。
【0062】
また、流量の立ち上り(起動時)から所定時間(例えば7つ目)までのコードN2に注目すると、ガス器具AのコードN2は「01131133」で、ガス器具BのコードN2は「01113333」となっている。ここで、コードN2は、0:流量がゼロの領域、1:増加領域、2:減少領域、3:安定領域と定義されており、ガス器具Aは一旦立上って増加し、一時安定し、再度増加する特徴があることがガス器具AのコードN2から理解される。一方、ガス器具Bは一旦立上り、増加し続けて、その後安定する特徴があることがガス器具BのコードN2から理解される。従って、コードN2が「01131133」であれば、使用ガス器具がガス器具Aである可能性が判断できる。また、コードN2「01113333」であれば、使用ガス器具がガス器具Bである可能性が判断できる。そして、コードN1とコードN2とを組み合わせることにより、ガス器具Aの特徴とガス器具Bの特徴を容易に判断することができる。
【0063】
上述したように、本発明の計測コード列は、従来の差分値からなる履歴に比べ、同じ計測時間分のデータであってもメモリサイズは小さいものとなるため、より長い計測時間のデータを扱うことが容易であり、起動流量値の異なる器具に対しても同じ流量区分表210aを使用するため、演算に必要メモリ量の増加を抑えることが可能となる。したがって、器具判別に際しても、長い計測時間に相当する流量変化履歴を扱いやすくなる。長時間の流量変化履歴を用いることにより、器具判別の精度を向上させることができる。
【0064】
図5は、流量区分表210aの他の例を示す。図5の流量区分表の区分の基準値は、起動流量値との比率と絶対値との組み合わせとなっている。例えば、使用する器具の流量帯がある一定の範囲に収まっている等の条件がある場合は、差分値の小さい部分は起動流量値の影響が小さいと考え、基準値を絶対値で定めることとし、差分値の大きい部分は起動流量値の影響が大きいため、起動流量値との比率で基準値を定めることすれば、必要な部分のみ簡単な計算で基準値を求めることができるため、更に演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能となる。ここで、流量区分表210aの区分の基準値については、単純な起動流量値との比率計算で求めているが、基準値を起動流量値を含む他の数式の計算で求めてもよく、起動流量値を含む数式においては、条件によって絶対値で定める部分も含めて複数の数式を切換えるものであってもよい。
【0065】
また、本発明の器具判別部216を、計測コード列と、予めガス器具ごとに器具固有コード列情報保持部218に記憶されたガス器具固有の固有のコード列を比較することに加え、起動流量値検出部209によって検出された起動流量値と、器具ごとの固有の起動流量値を比較し、その類似関係等からガスを使用するガス器具を判別するものとすることにより、コード列の比較のみでは判別が困難な場合であっても起動流量値の比較を組み合わせることでより正確な判別が可能となる。ここで、器具ごとの固有の起動流量値については、器具固有コード列情報保持部218に追加で記憶させてもよく、図示しない他の情報
保持部に別途記憶させてもよい。またここで、器具ごとの固有の起動流量値においては、起動流量値の絶対値及びその許容範囲を付加した値、起動流量値をコード化した値のいずれであってもよい。
【0066】
以上のような流量計測方法を実施するため、ガスメータ200の器具判別部216や図示せぬコンピュータ(演算装置)には、流量計測方法の各ステップを実行させるプログラムが記憶されている。また、本発明の流量計測装置、流量計測方法、コンピュータに実行させるプログラムを用いた流体(ガス)の供給源も含む流体供給システムも本発明に含まれる。
【0067】
なお、以上の説明は超音波流量計を用いた場合について説明したが、サンプリング信号を用いる他の瞬間式の流量計測装置でも、同様の効果が得られることは明白である。器具判別後の処理は説明を省略したが、ガスメータでは、登録器具ごとあるいは分類分けされたグループごとの積算流量の計測による器具別料金や、登録器具ごとあるいは分類分けされたグループごとに安全管理(保安機能)処理の器具別保安機能を設定することも可能であることは明白である。また、ガスメータとガス器具に無線機のような送受信手段を装備させることができれば、より器具判別の精度が向上することは明白である。さらに、ガスメータおよびガス器具で説明したが、工業用流量計や水道メータにおいても同様に、流量計測装置の下流側に接続された使用器具の特定や、そのグルーピングに使用することができる。
【0068】
また、上述の実施形態では器具の使用開始直後の流量の立上り特性をコード化の対象とした。しかしながら、本発明のコード化の対象は器具の使用開始直後の流量の立上り特性に限らず、器具の使用終了時の流量の立下り特性、器具の使用時の流量の制御特性など、広く流量変化の特性全般と把握することができる。
【0069】
また、上述の実施形態では流体であるガスの流量の差分値をコード化の対象とした。しかしながら、本発明のコード化の対象は流量の差分値に限らず、流量の絶対値、流体の温度、圧力、質量など、広く流体の物理量と把握することができる。
【0070】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明によれば差分値を、より扱いやすいコードに変換するため、流体の使用器具の判別技術を提供するに際し、装置に必要なメモリ量などを減らしつつ、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態におけるガスメータのブロック図
【図2】本発明の流量区分表の一例を示す図
【図3】(a)ガス器具Aの使用による起動流量値と流量の差分値を流量区分表に従って区分する概念を示す図(b)ガス器具Aの使用による起動流量値の時間推移を示す図
【図4】(a)ガス器具Bの使用による起動流量値と流量の差分値を流量区分表に従って区分する概念を示す図(b)ガス器具Bの使用による起動流量値の時間推移を示す図
【図5】本発明の流量区分表の他の例を示す図
【図6】従来のガスメータのブロック図
【図7】従来の流量区分表の一例を示す図
【符号の説明】
【0073】
13、14、15 ガス器具
19 ガス管路
200 ガスメータ(流量計測装置)
202 流路
204 超音波流量計
206 計測流量情報記憶部
208 演算部
209 起動流量値検出部
210 流量区分表保持部
212 差分値変換部
214 コード列生成部
216 器具判別部
218 器具固有コード列情報保持部
220 器具別流量算出部
222 流路遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測する流量計測部と、
前記流量計測部によって計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算する演算部と、
前記流量計測部によって計測された流量により、器具動作時の起動流量値を検出する起動流量値検出部と、
起動流量値及び差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表と、前記起動流量値検出部によって検出された起動流量値及び前記演算部によって演算された差分値を、前記流量区分表に基づき前記コードに変換する差分値変換部と、
前記差分値変換部によって得られた前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するコード列生成部と、
前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別する器具判別部と、
を備える流量計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の流量計測装置であって、
前記流量区分表の区分の基準値は起動流量値との比率で定めることを特徴とする流量計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の流量計測装置であって、
前記流量区分表の区分の基準値は起動流量値との比率と絶対値の組み合わせで定めることを特徴とする流量計測装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の流量計測装置であって、
前記器具判別部は前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較することに加え、前記起動流量値検出部によって検出された起動流量値と、器具ごとの固有の起動流量値を比較し、流体を使用する器具を判別することを特徴とする流量計測装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の流量計測装置であって、
前記流量計測部は超音波計測方式からなる流量計測装置。
【請求項6】
流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測するステップと、
計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算するステップと、
計測された流量により、器具動作時の起動流量値を検出するステップと、
起動流量値及び差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表に基づき、検出された起動流量値及び演算された差分値を、前記コードに変換するステップと、
前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するステップと、
前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別するステップと、
からなる流量計測方法。
【請求項7】
流量計測装置を制御するコンピュータに、以下のステップを実行させるプログラムであって、
流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測するステップと、
計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算するステップと、
計測された流量により、器具動作時の起動流量値を検出するステップと、
起動流量値及び差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表に基づき、検出された起動流量値及び演算された差分値を、前記コードに変換するステップと、
前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するステップと、
前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の流量計測装置または流量計測方法またはコンピュータに実行させるプログラムを用いた流体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−203873(P2010−203873A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48789(P2009−48789)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】