説明

流量計測装置とこの装置のプログラム、流量計測方法および流体供給システム

【課題】流体を使用する器具を、流量値の変化幅の観点から正確に判定する技術を提供する。
【解決手段】ガスメータ16の流路6に流れるガスの流量値を超音波流量計7は計測し、計測流量情報記憶部8は計測流量値を記憶する。そして、計測流量値が変化した量に対応する計測流量値変化幅を、計測流量値変化幅算出部9は、所定期間内において算出する。器具判別部11は、計測流量値変化幅が所定の閾値以下であるか否かを判定することにより、流体を使用する器具もしくは漏れを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量の変化を利用することにより、流体を使用している器具もしくは漏れを判別するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流量計測装置は、図8に示すように、ガス流路に流れるガス流量を計測するガス流量測定手段1と、この計測結果より流量の増加を検出する流量増加検出手段2と、この流量増加に伴うガス流量の瞬時増減変化を検出する流量増減検出手段3と、前記瞬時増減変化検出時に新たなガス燃焼器具の使用開始を判定する器具判定手段4と、前記流量増加検出手段で検出されたガス流量の増加分を、前記新たなガス燃焼器具の使用開始に伴うガス流量の増加分として登録する流量登録手段5とを備えていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記構成によって、新たにガス燃焼器具の使用を開始した場合にガス流量は瞬時に増減変化して安定したガス流量になる事に着目し、増減変化を判定時に新たなガス燃焼器具の使用開始を判定することで、簡易な方法で新たなガス燃焼器具の使用開始を判定し、新たなガス燃焼器具の使用によるガス増加分を登録することができるものである。
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、流量の増加が同じ器具の使用によるものなのか、新たなガス燃焼器具の使用によるものなのか分からないという課題があった。
【0005】
この点を解決するため、図9に示す流量計測装置は、流路6に流れる流量を計測する流量計測部としての超音波流量計7と、前記超音波流量計7の流量値と時間情報を記憶する計測流量情報記憶部8と、一定時間の間に計測された計測流量情報を器具流量情報として登録する学習器具登録手段21と、前記計測流量情報を登録記憶する器具流量情報記憶部22とを備え、前記計測流量情報記憶部8の計測流量情報と器具流量情報記憶部22の器具流量情報とを比較して器具を判別する器具判別部11とを備えたものである。ここで、12は台数判別手段、13から15はガス器具、16は流量計測装置としてのガスメータ、17は流路遮断弁、18は操作部、19はガス管路、20は器具別流量算出手段である
(特許文献2参照)。
【0006】
上記流量計測装置によれば、計測された計測流量情報を記憶登録し、複数の器具の使用状況を判別することができるとともに、あらかじめどんな種類の器具(給湯器やガステーブルなど)であるかを登録しておけば、使用される器具も特定することができる。その際、立上り流量の変化や絶対流量値などが判断基準として利用されていた。
【特許文献1】特開2002−174542号公報
【特許文献2】特開2007−024750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の構成においては、ガス器具が流体たるガスを使用開始した際の流量の立ち上がりの波形や、流量値そのものを用いて器具判別が行われている。従って、同一形状の立ち上がり波形や、同一の流量値の波形が得られた場合、器具の判別が困難になるという問題がある。また、器具の運転状態や、まして、器具使用とガス漏れの判別を行うことができるものではなかった。
【0008】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたもので、その目的は、流体の流量の変化を利用することにより、流体を使用している器具もしくは漏れを高精度に判別する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の流量計測装置は、流路に流れる流体の流量を計測する流量計測部と、前記流量計測部で計測された計測流量値を記憶する流量情報記憶部と、前記計測流量値が変化した量に対応する計測流量値変化幅を、所定期間内において算出する計測流量値変化幅算出部と、前記計測流量値変化幅が所定の閾値以下であるか否かを判定することにより、流体を使用する器具もしくは漏れを判別する器具判別部とを備える。
【0010】
本発明によれば、流体を使用する器具を、計測流量値の変化幅の観点から判別することが可能となり、器具判別等の新規な方法が提供される。また、本発明を既存の方法と組み合わせることにより、より精度の高い器具判別方法等が提供される。
【0011】
さらに本発明の流量計測装置において、前記計測流量値変化幅が、前記流量計測部による計測毎に計測流量値が変化した量に対応する計測毎計測流量値変化幅とすることができ、前記器具判別部は、前記計測毎計測流量値変化幅が前記閾値以下である頻度に基づき、流体を使用する器具もしくは漏れを判別する。
【0012】
上記構成によれば、計測毎に計測流量値が変化した量を用いるため、器具判別等の新規な方法が提供されるとともに、より精度の高い器具判別方法等が提供される。
【0013】
さらに本発明の流量計測装置において、前記計測流量値変化幅が、前記流量計測部による計測毎に計測流量値が変化した量に対応する計測毎計測流量値変化幅とすることができ、前記器具判別部は、前記閾値以下である前記計測毎計測流量値変化幅が連続して算出された回数に基づき、流体を使用する器具もしくは漏れを判別する。
【0014】
上記構成によっても、計測毎に計測流量値が変化した量を用いるため、器具判別等の新規な方法が提供されるとともに、より精度の高い器具判別方法等が提供される。
【0015】
さらに本発明の流量計測装置において、前記計測流量値変化幅が、前記所定期間の全期間に渡って、前記計測流量値が変化した量に対応する全期間計測流量値変化幅とすることができ、前記器具判別部は、前記全期間計測流量値変化幅が前記閾値以下であるか否かに基づき、流体を使用する器具もしくは漏れを判別する。
【0016】
上記構成によれば、所定期間に渡って計測流量値が変化した量を用いるため、器具判別等の新規な方法が提供されるとともに、より精度の高い器具判別方法等が提供される。
【0017】
さらに本発明の流量計測装置において、前記所定期間は、前記器具の動作開始から動作停止までの期間、または前記器具の動作開始から動作停止までの一部の期間に設定することができる。この一部の期間としては、前記器具の安定動作中の時間としてもよい。
【0018】
上記構成によれば、器具の種類に応じて最適な流量計測の時間、タイミングを選択することができる。
【0019】
さらに本発明の流量計測装置は、流路に流れる流体の流量を計測する流量計測部と、前記流量計測部で計測された計測流量値を記憶する流量情報記憶部と、前記計測流量値が変化した量に対応する計測流量値変化幅を、所定期間内において算出する計測流量値変化幅算出部と、前記計測流量値変化幅が所定の閾値以下であるか否かを判定することにより、流体を使用する器具の運転状態を判別する器具運転状態判別部とを備える。
【0020】
本発明によれば、計測流量値の変化幅の観点から、流体を使用する器具のみならず、当該器具の運転状態を判別することが可能となり、保安性の向上など、さらに他の技術に応用することも可能である。
【0021】
さらに本発明は、上記流量計測装置によって実行される流量計測方法、及び流量計測装置を制御するコンピュータが提供される。さらにこれらの装置、方法、プログラムを使用した流体供給システムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、器具判別および器具運転状態判別および器具使用とガス漏れとの判別の新規な方法が提供されるとともに、より精度の高い器具判別方法、器具運転状態判別方法、器具使用とガス漏れとの判別方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態における流量計測装置としてのガスメータ16のブロック図を示すものである。
【0025】
図1においてガスメータ16は、流路6と、超音波流量計7と、計測流量情報記憶部8と、計測流量値変化幅算出部9と、器具判別部11とを備えたものである。さらにガスメータ16は、流路6に配置され、緊急時などにガスを遮断する流路遮断弁17、器具別流量算出部20を含む。
【0026】
超音波流量計7は、流路6に流れる流体としてのガスに対し、超音波を発射してその流量を計測するものであり、一般的なものを使用することができる。計測流量情報記憶部8は、超音波流量計7で計測された計測流量値と、当該計測流量値を計測した計測時間が対応付けられて記述された対象データを記憶する。
【0027】
計測流量値変化幅算出部9は、後述するように、計測流量情報記憶部8に記憶された対象データの計測流量値の変化に対応する変化幅(計測流量値変化幅)を算出する。後述するように、変化幅としては、1)超音波流量計7による計測毎に計測流量値が変化した量に対応する計測毎計測流量値変化幅や、2)所定期間の全期間に渡って、計測流量値が変化した量(絶対値変化量)に対応する全期間計測流量値変化幅等がある。
【0028】
器具判別部11は、後述するように、上述の変化幅が所定の閾値以下であるか否かに基づいて、流体を使用するガス器具もしくは漏れを判別する。器具別流量算出部20は、器具判別部11により判別されたガス器具毎の流量を算出する。また、ガスメータ16は上流側においてガス管路19に接続されるとともに、下流側にてガステーブル、ファンヒータ、床暖房等、種々のガス器具13,14,15に接続されている。
【0029】
以上のように構成された流量計測装置について、以下その動作、作用を、特に計測流量値変化幅算出部9、器具判別部11の動作、作用を中心として説明する。
【0030】
図2は、ガス器具の使用による、超音波流量計7によって計測されたガスメータ16を流れるガスの流量の変化を概念的に示すグラフであり、 流量は計測時間と対応付けられた対象データの形式で(すなわちこのグラフの形式で)、計測流量情報記憶部8に記憶される。例えば、超音波流量計7で計測した流量が、ゼロ流量から、所定流量の変化があった時、器具が1台動作したと判別する。そして、計測流量情報記憶部8は、この時の計測流量の時間変化を計測流量値として記憶を開始する。すなわち、計測流量情報記憶部8は、所定の計測時間間隔(例えば2秒間など)で計測された流量値を変化があった時を起点とする計測時間と対応付け、対象データとして記憶する。
【0031】
図2に示される流量の波形は一般的にガス器具ごとに異なるものである。そこでこのような波形を基にガス器具を判別する方法が知られている。判別方法には種々のものがあるが、例えばAの部分で示された流量の立ち上がりの波形や、Bで示されたガス器具の安定動作(立ち上がり動作後流量値がほぼ一定となる時期での動作)中の流量値そのものを用いてガス器具を判別する方法が知られている。しかしながら、ガス器具によっては、ほぼ同一形状の立ち上がり波形や、ほぼ同一の流量値の波形が得られる場合があり、このような場合、ガス器具の判別は困難となる。また、器具とほぼ同一流量のガス漏れがある場合、器具使用とガス漏れとの判別は困難となる。
【0032】
本発明は、波形形状や流量値とは異なる点に注目している。すなわち、本発明のガスメータにおいては、ガスの流量値が変化した量である流量値の変化幅(計測流量値変化幅)に基づき、使用されているガス器具もしくは漏れを判別することとしている。以下、本実施形態では、図2のCの部分、すなわち、ガス器具の安定動作中における変化幅(流量値の変化)を観察し、ガス器具もしくは漏れを判別する例を紹介する。
【0033】
図3、図4は、超音波流量計7による計測毎に計測流量値が変化した量に対応する計測毎計測流量値変化幅を用いてガス器具を判別する例を示す。図3は、このような計測毎計測流量値変化幅が、(所定の閾値より)小さい例を示し、図4は、このような計測毎計測流量値変化幅が、(所定の閾値より)大きい例を示している。
【0034】
図3(a)は、超音波流量計7による計測毎の計測時間と得られた計測流量値のグラフを示している。このような計測時間と計測流量値の組み合わせのデータ(対象データ)は、所定のメモリである計測流量情報記憶部8に記憶される。
【0035】
計測流量値変化幅算出部9は、計測流量値が変化した量に対応する計測流量値変化幅を、所定期間内において算出する。特に本例では、計測流量値変化幅算出部9は、計測流量値変化幅として、超音波流量計7による計測毎に計測流量値が変化した量(計測毎計測流量値変化幅)を、Cで示された所定期間内において算出する。図3(a)において、計測毎計測流量値変化幅はΔq1,Δq2,・・・,Δqiである。
【0036】
そして、器具判別部11は、計測流量値変化幅が所定の閾値Δqm以下であるか否かを判定することにより、ガスを使用するガス器具を判別する。本例では、器具判別部11は、上記した計測毎計測流量値変化幅(Δq1,Δq2,・・・,Δqi)が、所定の閾値Δqm以下として、連続して計測流量値変化幅算出部9により算出された回数に基づき、ガス器具を判別する。閾値Δqmはガス器具毎に固有の変化幅として与えられるものであり、図示せぬメモリ(閾値記憶部)に記憶されている。
【0037】
図3(b)は、器具判別部11が得る、所定の閾値Δqmより小である計測毎計測流量値変化幅が算出された連続回数を積算度数として示すグラフである。図3(b)では、所定期間Cにおいて、5回連続して、計測毎計測流量値変化幅が閾値Δqm以下であったことが示されている(|Δqi|<Δqm)。そして、器具判別部11は、このように5回連続した閾値以下の計測毎計測流量値変化幅が得られた場合、使用しているガス器具を特定のガス器具(例えばファンヒータ)として判別する。
【0038】
図4は図3と同様の図であるが、図4(a)に示すように、計測流量値変化幅算出部9によって算出された計測毎計測流量値変化幅Δq1’,Δq2’,・・・,Δqi’が、図3(a)のΔq1,Δq2,・・・,Δqiより大きい例、すなわちガス流量値の変動が大きい例を示す。計測毎計測流量値変化幅Δq1’,Δq2’,・・・,Δqi’は総て閾値Δqmより大きいため(|Δqi’|≧Δqm)、図4(b)に示すように、積算度数は0のままである。そして、器具判別部11は、このように5回連続した閾値以上の計測毎計測流量値変化幅が得られた場合、使用しているガス器具を特定のガス器具(例えば給湯器)として判別する。
【0039】
図3、図4の例では、計測毎に流量の増減が繰り返される例を示したが、必ずこのような流量の挙動が生ずるとは限らない。図3、図4の例とは異なる場合であっても、計測毎のデータを使用することはできるが、流量の増加が連続する場合は、次に減少に転じるまでのデータ、または、流量の減少が連続する場合は、次に増加に転じるまでのデータを計測の単位として考えても良い。例えば図5の例では、計測毎に流量の増減が繰り返されておらず、2回の計測毎に増減が繰り返されている。このような場合、器具判別部11は、2回の計測下で連続して増加した流量の増加の通算量、または2回の計測下で連続して減少した流量の減少の通算量を計測毎計測流量値変化幅Δq1”,Δq2”,・・・,Δqi”として捉え、閾値Δqmと比較することにより、図4(b)に示すような、積算度数を得ることができる。すなわち、「計測毎計測流量値変化幅」の「計測毎」の用語は、超音波流量計7における実際の1回の計測の意味のみならず、変化幅を捉えるための所定の単位時間としても考えることができる。
【0040】
なお、図面では2回計測毎のデータを例示したが、実際の増減は3回になったり、1回のみであったり、さまざまな状況が発生する。すなわち、これまでの説明は、変化幅を捉えるタイミングを一定周期として説明したが、そのような態様に本発明は限定されるものではない。例えば、流量が増加している間または減少している間の、流量の最大値と最小値の差を閾値と比較してもよい。流量が増加し続ける時間または減少し続ける時間は一般的に一定ではない。このような場合、計測流量値変化幅を演算するために流量を捉える所定期間、すなわち探知時間は一定値に定まることは少なく、刻々変化するものとなる。
【0041】
また、図3、図4の例では、器具判別部11は、閾値以下の計測毎計測流量値変化幅が得られた連続回数に基づき、使用ガス器具を判別することとしている。上記においては連続回数は5としたが、連続回数自体は任意である。
【0042】
尚、実際の器具の運転時間、すなわち所定時間は長く、図3と図4のケースが混在する場合もある。このような場合において、計測流量値変化幅が閾値以上になった時、器具判別部11は一旦積算度数のカウンタをリセットし、再度閾値より小さくなった時点で、積算度数のカウントを再開するようにすることができる。例えば図6の例では、(a)に示すように、幅Δq4,Δq5は所定の閾値Δqmを超えている。従って、(b)に示すように、時間t4、t5の時点で積算度数のカウンタがリセットされ、時間t6から積算度数のカウントが再開されている。また、判別基準としては、連続度数が所定値を超えた場合と超えない場合との割合で判断しても良い。
【0043】
また、連続回数のみならず、他の指標を適用することも可能である。例えば器具判別部11は、所定の閾値以下である計測毎計測流量値変化幅が出現する頻度に基づき、ガス器具を判別するようにしてもよい。例えば10個の変化幅のうち6個が閾値以下ならばファンヒータ、2個だけが閾値以下の場合は給湯器、などのごとき指標を用いてもよい。
【0044】
図7は、図3、図4の例とは異なり、ガス器具の安定動作中における計測流量値の、所定期間の全期間における変化した量(絶対値変化量)に対応する全期間計測流量値変化幅を用いる例である。すなわち、本例では所定期間Bの全部における計測流量値が計測流量情報記憶部8に記憶された後、総ての計測流量値の変化幅である全期間計測流量値変化幅Δqが、計測流量値変化幅算出部9によって算出される。
【0045】
図7(a)のように、全期間計測流量値変化幅Δqが所定の閾値Δqmより小さい場合、例えば器具判別部11は、使用しているガス器具を特定のガス器具(例えばファンヒータ)として判別する。一方、図7(b)のように、全期間計測流量値変化幅Δqが所定の閾値Δqmより大きい場合、例えば器具判別部11は、使用しているガス器具を特定のガス器具(例えば給湯器)として判別する。尚、実際の器具の運転時間、すなわち所定時間は長く、図7(a),(b)のケースが混在する場合もあるので、その場合は両者の割合で判断しても良い。
【0046】
図3から図7の例では、変化幅を求める基礎となる計測流量値を取得する所定期間は、ガス器具の安定動作中の時間であるCとした。しかしながら所定期間としては、ガス器具の動作開始から動作停止までの他の一部の期間であってもよい。さらに所定期間としては、ガス器具の動作開始から動作停止までの期間としてもよい。
【0047】
また、上述の実施形態では、計測流量値変化幅を用いて使用ガス器具を判別することとしている。しかしながら、本発明を応用することにより、ガス器具の判別のみならず、特定のガス器具の運転状態を判別することも可能である。例えば、ガステーブルが動作を開始した後、正常に燃焼している場合としていない場合(不完全燃焼や立ち消えの場合)とで、ガステーブルという同じ器具であって図3と図4のように変化幅が変わることがある。また、図7の(a)と(b)のように変化幅が変わることがある。このような変化幅の変動を捕捉することにより、ガス器具が正常に運転しているかどうか、またはどのような運転をしているか判別することが可能となる。このような判別は、例えばガス器具の保安検査に応用することができる。この場合、器具判別部11がガス器具の運転状態を判別する器具運転状態判別部として機能する。
【0048】
なお、上述の実施形態では、計測流量値変化幅を用いて使用ガス器具を判別することとしている。しかしながら、本発明を応用することにより、ガス器具の判別のみならず、特定のガス器具の運転状態を判別することも可能である。例えば、給湯器が動作を開始した後、大流量で燃焼している場合と小流量で燃焼している場合とで、給湯器という同じ器具であっても変化幅が変わることがある。このような変化幅の変動を捕捉することにより、ガス器具が大流量で燃焼しているか小流量で燃焼しているか判別することが可能となる。このような判別は、例えばガス器具の保安検査に応用することができる。この場合、器具判別部11がガス器具の運転状態を判別する器具運転状態判別部として機能する。
【0049】
また、上述の実施形態では、計測流量値変化幅を用いて使用ガス器具を判別することとしている。しかしながら、本発明を応用することにより、ガス器具の判別のみならず、ガス器具の使用とガス漏れを判別することも可能である。例えば、ガス器具が正常に燃焼している場合と、その器具とほぼ同じ流量のガス漏れが生じている場合とで、図3と図4のように変化幅が変わることがある。また、図7の(a)と(b)のように変化幅が変わることがある。このような変化幅の変動を捕捉することにより、ガス器具が使用されているのか、ガス漏れかを判別することが可能となる。一般的には変化幅の小さい場合が漏れに相当する。この場合、器具判別部11が器具使用とガス漏れとの判別を行う。このような判別は、例えばガス漏れの保安検査に応用することができる。
【0050】
なお、上述の実施形態では、器具判別部11が得る、所定の閾値Δqmより小である計測毎計測流量値変化幅が算出された連続回数を積算度数としたが、所定の閾値Δqm以上である計測毎計測流量値変化幅が算出された連続回数を積算度数としてもよい。
【0051】
また、一般的にガスの漏れは、燃焼等の流量変動要因を伴わないため比較的流量変動幅が小さいと想定され、ガス器具との判別が可能となる。とりわけ、瞬時にガス流量制御を行っている給湯器については、流量変動幅が大きく、漏れとの判別をより明確に行うことができるものである。
【0052】
なお、本願で示した閾値を利用した判別については、閾値で状態を2つに区分することが要点であるため、閾値の値に一致する場合が分けられた2区分のどちらに属するかは、目的に応じて、適宜定めればよい。
【0053】
以上のような流量計測方法を実施するため、ガスメータ16の器具判別部11や図示せぬコンピュータ(演算装置)には、流量計測方法の各ステップを実行させるプログラムが記憶されている。また、本発明の流量計測装置、流量計測方法、コンピュータに実行させるプログラムを用いた流体(ガス)の供給源も含む流体供給システムも本発明に含まれる。
【0054】
なお、以上の説明は超音波流量計を用いた場合について説明したが、他の瞬間式の流量計測装置でも、同様の効果が得られることは明白である。器具もしくは漏れ判別後の処理は説明を省略したが、ガスメータでは、登録器具ごとあるいは分類分けされたグループごとの積算流量の計測による器具別料金や、登録器具ごとあるいは分類分けされたグループごとに安全管理(保安機能)処理の器具別保安機能を設定すること、また、ガス漏れの場合は、通報、ガス遮断もしくはこれらの組合せ等の保安処理も可能であることは明白である。また、ガスメータとガス器具に無線機のような送受信手段を装備させることができれば、より器具もしくは漏れ判別の精度が向上することは明白である。さらに、ガスメータおよびガス器具で説明したが、工業用流量計や水道メータにおいても同様に、流量計測装置の下流側に接続された使用器具のグルーピングに使用することができる。
【0055】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明によれば流体を使用する器具を、流量値の変化幅の観点から判別することが可能となり、器具判別等の新たな方法を提供するとともに、より精度の高い器具判別方法等の基礎となる技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態における流量計測装置のブロック図
【図2】ガス器具の流量の変化を概念的に示すグラフ
【図3】ガス器具の安定動作中において、計測毎に得られる計測流量値の変化幅が、所定の閾値以下であるか否かを判別する概念図であり、流量値の変化幅が小さい場合の図
【図4】ガス器具の安定動作中において、計測毎に得られる計測流量値の変化幅が、所定の閾値以下であるか否かを判別する概念図であり、流量値の変化幅が大きい場合の図
【図5】ガス器具の安定動作中において、2回計測を単位とする計測流量値の変化幅が、所定の閾値以下であるか否かを判別する概念図
【図6】計測流量値の変化幅が、閾値を超える場合と超えない場合が混在する運転における流量の変化を示す図
【図7】ガス器具の安定動作中における計測流量値の所定期間の全期間における変化幅が、所定の閾値以下であるか否かを判別する概念図
【図8】従来の流量計測装置のブロック図
【図9】従来の他の流量計測装置のブロック図
【符号の説明】
【0058】
7 超音波流量計(流量計測部)
8 計測流量情報記憶部
9 計測流量値変化幅算出部
11 器具判別部
13、14、15 ガス器具
16 ガスメータ(流量計測装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に流れる流体の流量を計測する流量計測部と、
前記流量計測部で計測された計測流量値を記憶する流量情報記憶部と、
前記計測流量値が変化した量に対応する計測流量値変化幅を、所定期間内において算出する計測流量値変化幅算出部と、
前記計測流量値変化幅が所定の閾値以下であるか否かを判定することにより、流体を使用する器具もしくは漏れを判別する器具判別部と、
を備える流量計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の流量計測装置であって、
前記計測流量値変化幅が、前記流量計測部による計測毎に計測流量値が変化した量に対応する計測毎計測流量値変化幅であり、
前記器具判別部は、前記計測毎計測流量値変化幅が前記閾値以下である頻度に基づき、流体を使用する器具もしくは漏れを判別する流量計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の流量計測装置であって、
前記計測流量値変化幅が、前記流量計測部による計測毎に計測流量値が変化した量に対応する計測毎計測流量値変化幅であり、
前記器具判別部は、前記閾値以下である前記計測毎計測流量値変化幅が連続して算出された回数に基づき、流体を使用する器具もしくは漏れを判別する流量計測装置。
【請求項4】
請求項1記載の流量計測装置であって、
前記計測流量値変化幅が、前記所定期間の全期間に渡って、前記計測流量値が変化した量に対応する全期間計測流量値変化幅であり、
前記器具判別部は、前記全期間計測流量値変化幅が前記閾値以下であるか否かに基づき、流体を使用する器具もしくは漏れを判別する流量計測装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の流量計測装置であって、
前記所定期間が、前記器具の動作開始から動作停止までの期間である流量計測装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項記載の流量計測装置であって、
前記所定期間が、前記器具の動作開始から動作停止までの一部の期間である流量計測装置。
【請求項7】
請求項6記載の流量計測装置であって、
前記一部の期間が、前記器具の安定動作中の時間である流量計測装置。
【請求項8】
流路に流れる流体の流量を計測するステップと、
計測された計測流量値を記憶するステップと、
前記計測流量値が変化した量に対応する計測流量値変化幅を、所定期間内において算出するステップと、
前記計測流量値変化幅が所定の閾値以下であるか否かを判定することにより、流体を使用する器具もしくは漏れを判別するステップと、
を備える流量計測方法。
【請求項9】
流量計測装置を制御するコンピュータに、以下のステップを実行させるプログラムであって、
流路に流れる流体の流量を計測するステップと、
計測された計測流量値を記憶するステップと、
前記計測流量値が変化した量に対応する計測流量値変化幅を、所定期間内において算出するステップと、
前記計測流量値変化幅が所定の閾値以下であるか否かを判定することにより、流体を使用する器具もしくは漏れを判別するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項記載の流量計測装置または流量計測方法またはコンピュータに実行させるプログラムを用いた流体供給システム。
【請求項11】
流路に流れる流体の流量を計測する流量計測部と、
前記流量計測部で計測された計測流量値を記憶する流量情報記憶部と、
前記計測流量値が変化した量に対応する計測流量値変化幅を、所定期間内において算出する計測流量値変化幅算出部と、
前記計測流量値変化幅が所定の閾値以下であるか否かを判定することにより、流体を使用する器具の運転状態を判別する器具運転状態判別部と、
を備える流量計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−47678(P2009−47678A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58135(P2008−58135)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】