説明

流量調整装置、圧力設定装置及びこれらを組み合わせた高圧レギュレータ

【課題】非常に耐久性に優れるとともに、圧力の設定を簡易、かつ、細かく行うことができ、省エネルギーに資する流量調整装置、圧力設定装置及びこれらを組み合わせた高圧レギュレータを提供する。
【解決手段】本体2aと、本体2aに形成され、流体供給源から供給される流体Fを導入する導入口2dと、導入口2dと連通し流体が導出する導出口2eとを備える流路2fと、流路2fの途中にあって本体2aの上方から下方に向けて流体Fの圧力が掛かるとともに、上下動可能に取り付けられる調整ピストン2gと、調整ピストン2gの軸心と同軸上に連結されるステム2hと、本体2aに収納され、本体2aの下方から上方に向けて付勢部材2uによって付勢されるとともに、ステム2hの先端部に接し、流路2fの途中においてステム2hの動きに合わせて開放位置と閉止位置との間を移動可能とされるジスク2lとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の減圧を行う流量調整装置、圧力設定装置及びこれらを組み合わせた高圧レギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より使用されている高圧から低圧へと流体の減圧を行う高圧レギュレータの例として、以下の非特許文献1に記載されているような高圧レギュレータを挙げることができる。図8は非特許文献1に示されている高圧レギュレータを模式的に示したものである。この高圧レギュレータ100は、本体101に流体の導入口102と導出口103とが設けられ、この導入口102と導出口103との間に流体の流路が形成される。高圧レギュレータ100においては、図8において左側から右側に向けて矢印に示す方向に流体が流路内を流れることになる。
【0003】
本体101内には、この流路の途中において流体の流れを開放或いは閉止する弁104が設けられている。この弁104は、高圧レギュレータ100の下から上に向けて付勢部材105によって付勢されており、バルブシートユニット106と弁104のテーパ部分が密着することによって、流体の流れを閉止する。
【0004】
また、弁104の上部はバルブ107に連結されており、このバルブ107はダイアフラム108を挟むピストン109と連結されている。ピストン109の上部はドーム状に空間Dが設けられており、この空間D内の圧力によってピストン109は下向きの力を受けている。
【0005】
高圧レギュレータ100は、まず導入口102から設定圧力を備える空気を導入し、図示しないニードルバルブを開放して空間D内に導く。空間D内に空気が導入されるとこのニードルバルブを閉止し、空間Dに空気を封入する。この際に導出口103から導出される流体の圧力を設定する。空間D内に導入され設定された空気の圧力によってピストン109は下向きの圧力を受け、ダイアフラム108も押し下げられる。すなわち、ダイアフラム108下向きに凸状となる。
【0006】
この圧力によって、バルブ107も下向きに押し下げられ、弁104がバルブシートユニット106から離れて弁104が開放状態となる。弁104の開放状態は、ピストン109に印加される圧力によって変化する。そして弁104が開放状態となることで導入口102から導出口103に向けて流路内を設定圧にまで減圧された流体が通過する。
【非特許文献1】「グローブ ポリークター ドーム レギュレータ ベーシックモデル 200&300 G&Hデザイン 動作とメンテナンスの取扱説明書 (GROVE POWREACTOR DOME REGULATORS BASIC MODELS 200 & 300, G & H DESIGNS OPERATING AND MAINTENANCE INSTRUCTIONS)」、グローブ バルブ & レギュレーター カンパニー(GROVE VALVE & REGULATOR COMPANY)、1980年12月30日改訂、p.13−15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の非特許文献1に開示されている高圧レギュレータでは、いくつかの問題点が散見される。
【0008】
まず、ニードルバルブの先端にはシートが設けられておりニードルバルブを閉止し、その先端がシートに密着することによって空間D内に導入された空気が気密に封止される。但し、圧力調節のためにニードルバルブの開閉を繰り返していると徐々にシート面がつぶれてしまい、その結果空間D内を気密に封止することができなくなってしまう。
【0009】
すなわち、空間D内の空気が徐々に漏れる(リーク)することになり、設定した圧力が低下して最終的に圧力のコントロールが不可能となってしまう。このシートは本体101に取り付けられているため、シートを交換するためには本体101、つまり、高圧レギュレータ100自体を交換する必要が出てくる。その上、シートの寿命も短いため高圧レギュレータ100の耐久性は低くなる。
【0010】
さらに、この高圧レギュレータ100はその機構上、導入口102から導入される流体と導出口103から導出される流体の圧力差がおよそ10%以上必要とされている。従って、微妙な圧力差をもって減圧することができず、使い勝手が悪い。また、換言すれば導出口から導出される流体の圧力と大きな圧力差を有する流体を導入口に導入しなければならず、圧縮機等の流体供給源において設定される吐出圧はより大きなものになる。このことは電力消費量が多くなることにつながるため省エネの観点からは看過しえない。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、非常に耐久性に優れるとともに、圧力の設定を簡易、かつ、細かく行うことができ、省エネルギーに資する流量調整装置、圧力設定装置及びこれらを組み合わせた高圧レギュレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、流量調整装置において、本体と、本体に形成され、流体供給源から供給される流体を導入する導入口と、導入口と連通し流体が導出する導出口とを備える流路と、流路の途中にあって本体の上方から下方に向けて流体の圧力が掛かるとともに、上下動可能に取り付けられる調整ピストンと、調整ピストンの軸心と同軸上に連結されるステムと、本体に収納され、本体の下方から上方に向けて付勢部材によって付勢されるとともに、ステムの先端部に接し、流路の途中においてステムの動きに合わせて開放位置と閉止位置との間を移動可能とされるジスクとを備える。
【0013】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、圧力設定装置において、本体と、本体に形成され、流体供給源から供給される流体を導入する導入口と、導入口と連通し流体が導出する導出口とを備える流路と、流路の途中にあって本体の上方から下方に向けて付勢部材によって付勢されるとともに、上下動可能に取り付けられる圧力設定ピストンと、圧力設定ピストンの下部に嵌め込まれるジスクと、本体に収納され、本体の下方から上方に向けて付勢部材によって付勢されるとともに、圧力設定ピストンの軸心と同軸上であってジスクにその先端部が接し、流路の途中において流体の圧力に応じて開放位置と閉止位置との間を移動可能となるように本体に収納されるニードルバルブとを備える。
【0014】
本発明の実施の形態に係る第3の特徴は、高圧レギュレータにおいて、請求項1に記載の流量調整装置と、流量調整装置に連結される請求項2に記載の圧力調整装置と、からなり、流量調整装置と圧力設定装置とは、流量調整装置の導入口から供給された流体を圧力設定装置の導入口に導入する第1の連通管と、圧力設定装置において減圧され圧力設定装置の導出口から導出された流体を流量調整装置の調整ピストン上に供給する第2の連通管とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非常に耐久性に優れるとともに、圧力の設定を簡易、かつ、細かく行うことができ、省エネルギーに資する流量調整装置、圧力設定装置及びこれらを組み合わせた高圧レギュレータを提供することができる。また、流体供給源(元圧)の1次側空気圧力と供給圧2次側圧力との差圧が0.05から0.1Mpa程度あれば2次側へ安定した空気供給が可能となり、省エネとなる。従来に比較して約5%の電力削減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態における高圧レギュレータ1の全体構成を示す平面図である。高圧レギュレータ1は、流量調整装置2と圧力設定装置3とが管Pを介して連結されることで構成される。流体は図1の実線で示す矢印が表わしているように、左方から右方に向けて流れる。図1では高圧レギュレータ1の接続状態を理解する際の一助とするために、流量調整装置2だけではなくその導入口にインポート管Iが、また、導出口にアウトポート管Oが接続された状態を示している。
【0018】
図2は、高圧レギュレータ1の右側面図である。すなわち、アウトポート管O側から高圧レギュレータ1を見た状態を示している。図1及び図2からは、流量調整装置2の正面と圧力設定装置3の背面とが管P1によって接続され、圧力設定装置3の正面と流量調整装置2の上面とが管P2によって接続されている状態とされていることがわかる。
【0019】
図3は図1に示す流量調整装置2をX−X線で切断して示す流量調整装置2の断面図である。流量調整装置2は、内部に設けられた弁(ジスク)の開閉によって流体の流量を調整する装置である。流量調整装置2は、本体2aと、本体2aの上面を塞ぐトップカバー2bと、本体2aの底面を塞ぐボトムカバー2cと、大きく3つの部分から構成される。トップカバー2bとボトムカバー2cとは本体2aにボルトBによって止められている。ボルトBとしては、例えばキャップスクリュー等が好適に使用される。なお、以下の説明では便宜上、図3に示す矢印において示されている+Y方向を上、−Y方向を下と表わす。
【0020】
本体2aには、流体供給源から供給される流体Fを導入する導入口2dと、導入口2dと連通し流体Fが導出する導出口2eとを備える流路2fが形成される。流路2fは、図3の実線の矢印に示されているように、−X方向から+X方向へと、流体Fが流れるように形成されている。流体Fは導入口2dから導入され、後述する流体Fの流入量を調整する弁であるジスク2lの空間及び後述するステム2hの空間を流通し導出口2eから導出される。
【0021】
流路2fの途中には、トップカバー2b内において本体2aの上方から下方に向けて前記流体の圧力が掛かるとともに、上下動可能に取り付けられる調整ピストン2gと、この調整ピストン2gの軸心と同軸上に連結されるステム2hとが設けられている。調整ピストン2gの上部には、トップカバー2bを貫通して設けられる貫通孔2iが設けられている。この貫通孔2iには、図1或いは図2に示すように、圧力設定装置3からの管P2が接続され圧力設定装置3において設定された圧力を備える流体Fが導入される。また、調整ピストン2gは、図3に示すようにその上部が凹状に窪んでおり、連結されるステム2hを固定する固定具2jを収容するとともに、トップカバー2bとの間において空間Sを構成する。
【0022】
貫通孔2iを介して圧力設定装置3から設定された圧力を備える流体Fが導入されると、その圧力によって調整ピストン2gが下向きに移動する。調整ピストン2gにはステム2hが連結されており、ステムガイドホルダ2kによってガイドされ調整ピストン2gの移動に伴って上下動を行う。また、ステム2hの上下動に伴ってジスク2lも上下動を行う。但し、ジスク2lはステム2hとは固定されていない。
【0023】
ステム2hの先端部にはジスク2lが接している。ジスク2lは、上からジスク本体2mと、ジスクエンドキャップ2nと、ジスクシールハウジング2oと、ジスクボトム2pとから構成されている。ジスク本体2mの上部においては、2段にわたって窪みが形成されており、1段目の窪みにはシートリング2qが嵌め込まれている。このシートリング2qが本体2aのボディシート2a1と接することによって、流路2f内における流体Fの流れを遮断する。2段目の窪みには、ステム2hとジスク本体2mとを固定するとともに、シートリング2qをジスク本体2mに固定するシートリング押さえ2rが嵌め込まれている。ステム2hの先端部は直接的にはこのシートリング押さえ2rに接している。
【0024】
ジスク本体2mとジスクエンドキャップ2nとシートリング押さえ2rとは、貫通孔ボルト2sによって連結されている。このときジスク本体2mとジスクエンドキャップ2nとの間にはジスクシールハウジング2oが挟まれている。ジスクエンドキャップ2nの下方にはジスクボトム2pが連結されている。さらにジスク2lは、バルブジスクシリンダ2tの貫通孔に挿入され、ステム2hが上下に移動する際にはこのバルブジスクシリンダ2tの貫通孔内をジスク2lが開放位置と閉止位置との間を上下に移動する。
【0025】
ジスク2lとバルブジスクシリンダ2tとの間には付勢部材2uが設けられており、この付勢部材2uによってジスク2lは上方に向けて力がかかった状態、すなわち、シートリング2qがボディシート2a1に押しつけられた状態となっている。この位置がジスク2lの閉止位置である。ジスク2lがこの位置にあると、流路2fが遮断された状態になり、流路2f内を流体Fが通ることはない。
【0026】
上述したように、ステム2hが下方に移動するのに合わせてジスク2lも下方へと移動する。従って、ボトムカバー2cにはこの移動に伴ってジスクボトム2pが移動する移動分の座グリ穴が設けられている。またジスクボトム2pにはジスク2lがステム2hに連動して上方に移動した際に、バルブジスクシリンダ2tに接触してジスク2lが規定された位置よりも上方に移動することを防止する突起部が設けられている。
【0027】
なお、導入口2dから導入された高圧の流体Fは、流量調整装置2に導入された直後に設けられた供給口2vから圧力設定装置3へも供給される。
【0028】
図4は図1に示す圧力設定装置3をY−Y線で切断して示す圧力設定装置3の断面図である。圧力設定装置3は、内部に設けられた弁(ジスク)の開閉、開度によって流体の圧力を設定した圧力にまで下げる役割を果たす装置である。圧力設定装置3は、本体3aと、本体3aの上面を塞ぐスプリングカバー3bと、本体3aの底面を塞ぐボトムカバー3cと、大きく3つの部分から構成される。スプリングカバー3bとボトムカバー3cとは本体3aにボルトBによって止められている。ボルトBとしては、例えばキャップスクリュー等が好適に使用される。なお、以下の説明では便宜上、図4に示す矢印において示されている+Y方向を上、−Y方向を下と表わす。
【0029】
本体3aには、流体供給源から供給される流体Fを導入する導入口3dと、導入口3dと連通し流体Fが導出する導出口3eとを備える流路3fが形成される。流路3fは、図4の実線の矢印に示されているように、+X方向から−X方向へと、流体Fが流れるように形成されている。流体Fは導入口3dから導入され、後述する流体Fの圧力を減圧させる弁であるニードルバルブ3pが設けられている空間及び後述する圧力設定ピストン3l及びジスク3oの下面の空間を流通し導出口3eから導出される。
【0030】
流路3fの途中であって、スプリングカバー3b内には、付勢部材3gがその上部に付勢部材受け3hを載せた状態で収納されている。また、付勢部材受け3hは、スプリングカバー3b上部及びロックナット3iを貫通してクランピングボルト3jと接している。クランピングボルト3jを回転させて下方に向けて押し込むことで付勢部材受け3hを介して付勢部材3gが押し込まれる。クランピングボルト3jは、ロックナット3iを挟んで押し込んでいるので、クランピングボルト3jは押し込んだその位置に止まり、付勢部材3gの上方に向けての圧力が開放されることはない。
【0031】
付勢部材3gによる下方への圧力は、付勢部材3gが接するピストンホルダー3k及び、このピストンホルダー3kと一体で移動可能に保持される圧力設定ピストン3lに掛かる。通常ピストンホルダー3kは、図4に示すように、付勢部材3gからの圧力もあって本体3aに当接し、その位置で止まっている。但し、この位置においてピストンホルダー3kの上面とこのスプリングカバー3bとの間には、移動可能な空間Aが設けられているのでピストンホルダー3k及び圧力設定ピストン3lは、上方に向けて移動することができるようにされている。
【0032】
圧力設定ピストン3lは、その中心軸上に貫通孔3mが形成されている。後述するように、圧力設定装置3に規定圧力以上の圧力が掛かった場合には、この貫通孔3m及びスプリングカバー3bに設けられた貫通孔3nを介してその圧力が開放される。圧力設定ピストン3lの下部には、圧力設定ピストン3lの下面と面一となるようにジスク3oが接合されている。従って、ジスク3oもピストンホルダー3k及び圧力設定ピストン3lと一体に上下動を行う。
【0033】
また、圧力設定ピストン3lと同軸であり、ジスク3oにその先端領域が接するようにニードルバルブ3pが位置している。ニードルバルブ3pは、図4に示すように、やじりのような形状をしており、第1のテーパ面3qはニードルバルブ3pの先端に形成されジスク3oに接する。また、第2のテーパ面3rはニードルバルブ3pの中間部に形成され本体3aのボディシート3a1に接する。第2のテーパ面3rがボディシート3a1に接する位置がニードルバルブ3pの閉止位置である。ニードルバルブ3pがこの位置にあると、第2のテーパ面3rがボディシート3a1に接することによって流体Fの流れは遮断される。
【0034】
ニードルバルブ3pは、その中間部以下が中空となり終端部(ニードルバルブ3pにおいてジスク3oと接する先端部とは反対の端部)が開口される形状に形成されている。この中空部内に付勢部材3sが収納され、付勢部材3sの一端部はニードルバルブ3pの下部であってボトムカバー3c上に載置されたガイドベース3tと接する。この付勢部材3sによって、ニードルバルブ3pは上向きに付勢される。また、ニードルバルブ3pは、ブッシュ3uを挟みバルブガイド3vに形成された貫通孔内に収納されているので、バルブガイド3vに沿って開放位置と閉止位置との間を上下方向に移動可能とされている。
【0035】
ニードルバルブ3pには、その中間部であってバルブガイド3vよりも高い位置において中空部と導入口3dをつなぐ貫通孔3wが形成されている。この貫通孔3wが設けられていることによって、貫通孔3wが設けられていない場合に導入された流体Fの圧力によってニードルバルブ3pに下向きに圧力が掛かり、ジスク3oに接する第1のテーパ面3q及びボディシート3a1に接する第2のテーパ面3rが離れ、常に開放状態となることを防止している。
【0036】
本発明の第1の実施の形態における高圧レギュレータ1は、上述した構成を採用する流量調整装置2と圧力設定装置3とから構成される。次に、高圧レギュレータ1の作用について説明する。
【0037】
まず、インポート管Iから高圧の流体Fが供給され、流量調整装置2の導入口2dから流量調整装置2内に導入される。この状態では、ジスク2lは付勢部材2uによって上方に向けて付勢されているので、シートリング2qとボディシート2a1とは密着しており導入口2dから供給された流体Fは流路2f内を通過して導出口2eからアウトポート管Oへと流れることはない。
【0038】
但し、流量調整装置2の供給口2vは開放されているので、この供給口2vから管P1を通って圧力設定装置3へと流体Fが供給される。圧力設定装置3の導入口3dから導入された流体Fは、流路3fを流れる。ここで圧力設定装置3は事前に流量調整装置2から導出される流体Fの圧力に合わせて圧力が設定されている。圧力設定装置3における圧力の設定は、クランピングボルト3jを回転させつつ下向きに押し込み、圧力設定ピストン3lを下向きに付勢する。圧力の設定は、圧力設定ピストン3lに対する付勢の力、すなわち、実際にはクランピングボルト3jをどの程度押し込むかによって決定することができ、圧力を細かく設定することが可能である。
【0039】
圧力設定ピストン3lが下向きに付勢されることによって、付勢部材3sによって上向きに付勢されているニードルバルブ3pは、第1のテーパ面3qと接するジスク3oとの間で密着する。この状態にある限り、導入された流体Fが圧力設定ピストン3lの貫通孔3mを通ってスプリングカバー3bの貫通孔3nから外部へと漏れることはない。
【0040】
圧力設定ピストン3lが押し下げられることによって第1のテーパ面3qがジスク3oと接するニードルバルブ3pは、下向きに押し込まれることになる。ニードルバルブ3pが下向きに押し込まれると、第2のテーパ面3rとボディシート3a1との距離が離れる。圧力設定装置3へ供給された流体Fは、ニードルバルブ3pと本体3aとの間の開口部を通過し、さらに、圧力設定ピストン3lの下面と本体3aとの間に形成される空間を通過して、導出口3eから導出される。図4には、実線の矢印で流路3f内を流れる流体Fの流れを示している。
【0041】
圧力設定装置3の導出口3eは、図1或いは図2に示されているように、管P2を介して流量調整装置2の貫通孔2iと接続されている。従って、流体Fは、導出口3eを導出し、管P2を通過して貫通孔2iから流量調整装置2の空間Sに供給される。上述したように、この空間Sは、トップカバー2bと調整ピストン2gの上面との間に形成されることから、供給された流体Fの圧力が調整ピストン2gに掛かる。調整ピストン2gは、流体Fの圧力によって下向きに移動する。調整ピストン2gには固定具2jによってステム2hが連結されているため、ステム2hも下向きに移動する。
【0042】
ステム2hが下向きに移動すると、ステム2hの先端部に接するジスク2lが下向きに押し下げられ、シートリング2qとボディシート2a1とが離れる。シートリング2qとボディシート2a1とが離れることによって、インポート管Iから供給された流体Fは流路2f内を通過して導出口2eからアウトポート管Oへと導出される。アウトポート管Oへと導出される流体Fの圧力は、圧力設定装置3において設定された圧力まで減圧されている。
【0043】
図5は、インポート管Iに所定の圧力よりも高い圧力を持つ流体F(以下、このような流体Fを「流体Fh」と表わす。)が流れた場合の圧力設定装置3の内部の状態を示す断面図である。
【0044】
通常圧力設定装置3においては供給される流体Fの持つ圧力の上限が定められている。そのため、規定値以上の圧力を持つ流体Fhが供給されると、圧力設定装置3の損壊を防止するため、規定値以上の圧力を開放する。詳しくは図5に示すように、ニードルバルブ3pの位置はそのままに圧力設定ピストン3lとジスク3oが上方に持ち上がる。すなわち、第1のテーパ面3qによって接しているニードルバルブ3pとジスク3oとの間が開くことによって流体Fhが流れる流路が形成され、圧力設定ピストン3l内の貫通孔3m及びスプリングカバー3bの貫通孔3nを通って大気に開放される。圧力設定ピストン3lがこのように動くことによって、この貫通孔3nから高い圧力を持った流体Fhの圧力が逃がされ、導出口3e側の圧力が設定圧力以上にならないように圧力を下げることができる。すなわち貫通孔3nが形成されることによって、流体供給源から供給される流体Fの圧力をコントロールし、流体供給源における圧力変動を緩和させることが可能となる。 このように従来の高圧レギュレータのようにダイアフラムを使用するのではなく、ピストンを利用して流体の導入、導出を行う機構を採用することによって、非常に耐久性に優れるとともに、圧力の設定を簡易、かつ、細かく行うことができ、省エネルギーに資する流量調整装置、圧力設定装置及びこれらを組み合わせた高圧レギュレータを提供することができる。
【0045】
特に、導入側の圧力と導出側の圧力との圧力差が小さくて済むため(例えば、0.05Mpaないし、0.1Mpa程度)、高圧レギュレータに流体を導入するコンプレッサ等の流体供給源にかかる負荷を小さくし、かかる電力の消費量を削減することが可能となる(発明者の試算では従来の電力量よりも約5%の削減が可能となる)。このことは、高圧レギュレータを備えるシステム全体の省エネルギーに資するとともに、その耐久性をも向上させることにつながる。
【0046】
併せて、圧力設定ピストンとニードルバルブとが導入される流体の圧力に同調して連動するので、導入される流体の圧力にきめ細かく対応し、常に設定された圧力の流体を導出させることが可能となる。
【0047】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0048】
第2の実施の形態において第1の実施の形態と相違する点は、第1の実施の形態において示したように流量調整装置2と圧力設定装置3とを管P1及びP2を介して連結するのではなく、流量調整装置に圧力設定装置を直接連結し、両者が一体となった高圧レギュレータを提供する点である。
【0049】
但し、第2の実施の形態で示す流量調整装置20と圧力設定装置30の多くの構成及び作用は第1の実施の形態において説明した流量調整装置2及び圧力設定装置3と同一である。従って、流量調整装置20と圧力設定装置30が一体となって構成される高圧レギュレータ10の作用、効果は第1の実施の形態における高圧レギュレータ1と同一である。流量調整装置20と圧力設定装置30、流量調整装置2と圧力設定装置3との相違点は両者を一体としたことに伴うものである。
【0050】
図6は、第2の実施の形態における高圧レギュレータ10の底面図である。図6に示すように、流量調整装置20に圧力設定装置30が一体となるように接続されている。また、図7は、図6におけるZ−Z線で切断して示す断面図である。
【0051】
図7において図示されないインポート管Iから流量調整装置20に導入された流体Fは、同じく図示されない導入口20dを介してその一部が排気管20wから圧力設定装置30へと排気(供給)される。流体Fはこの排気管20wに接続する(一体となす)圧力設定装置30の導入口30dへと流れ(以下、排気管20Wと導入口30dまでの流体の通路を「第1の連通管C」と表わす。)、ニードルバルブ30pの第2のテーパ面30rとボディーシート30a1の間を抜けて圧力設定ピストン30lの下面と本体30aとによって構成される空間に導入される。
【0052】
第2の実施の形態における圧力設定装置30では、流体Fの導出口30eが形成される向きは導入口30dと同一面、すなわち、流量調整装置20と接続される側に設けられている。導出口30eがこのような向きに設けられているため、圧力設定装置30へと導入された流体Fは、再度導出口30eに接続する(一体となす)吸気管20xに導入される(以下、吸気管20xと導出口30eまでの流体の通路を「第2の連通管E」と表わす)。図7に示す流量調整装置20に明らかなように、圧力設定装置30から供給された流体Fは、流量調整装置2の調整ピストン20g及びトップカバー20bとで形成される空間Dに供給される。
【0053】
空間Dに供給された流体Fの圧力によって調整ピストン20gが下向きに押し込まれ合わせてステム20hが下向きに移動することによって、ジスク20lが下向きに移動しインポート管Iから導入された流体Fが導出口20eを介してアウトポート管Oへと導出される。
【0054】
このように従来の高圧レギュレータのようにダイアフラムを使用するのではなく、ピストンを利用して流体の導入、導出を行う構成を採用することによって、非常に耐久性に優れるとともに、圧力の設定を簡易、かつ、細かく行うことができ、省エネルギーに資する流量調整装置、圧力設定装置及びこれらを組み合わせた高圧レギュレータを提供することができる。
【0055】
併せて、第2の実施の形態における高圧レギュレータ10のように流量調整装置20と圧力設定装置30とを一体に形成し、第1の連通管C、第2の連通管Eとを介して流体を流通させることにより、スペース効率に優れた高圧レギュレータを提供することができる。
【0056】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、本発明の実施の形態を説明するにあたっては、1つの流量調整装置を1つの圧力設定装置で制御する構成をもつ高圧レギュレータを例に挙げたが、1つの圧力設定装置を利用して複数の流量調整装置を制御する構成を採用することも可能である。
【0057】
また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る高圧レギュレータの全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る高圧レギュレータの全体構成を示す右側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る流量調整装置を図1に示すX−X線で切断して示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る圧力設定装置を図1に示すY−Y線で切断して示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る圧力設定装置において、高い圧力の流体が流れた場合の内部の状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る高圧レギュレータの底面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る高圧レギュレータを図6に示すZ−Z線で切断して示す断面図である。
【図8】従来の高圧レギュレータの内部構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 高圧レギュレータ
2 流量調整装置
2a 本体
2a1 ボディシート
2b トップカバー
2c ボトムカバー
2d 導入口
2e 導出口
2f 流路
2g 調整ピストン
2h ステム
2i 貫通孔
2j 固定具
2k ステムガイドホルダ
2l ジスク
2m ジスク本体
2n ジスクエンドキャップ
2o ジスクシールハウジング
2p ジスクボトム
2q シートリング
2r シートリング押さえ
2s 貫通孔ボルト
2t バルブジスクシリンダ
2u 付勢部材
2v 供給口
3 圧力設定装置
3a 本体
3a1 ボディシート
3b スプリングカバー
3c ボトムカバー
3d 導入口
3e 導出口
3f 流路
3g 付勢部材
3h 付勢部材受け
3i ロックナット
3j クランピングボルト
3k ピストンホルダ
3l 圧力設定ピストン
3m 貫通孔
3n 貫通孔
3o ジスク
3p ニードルバルブ
3q 第1のテーパ面
3r 第2のテーパ面
3s 付勢部材
3t ガイドベース
3u ブッシュ
3v バルブガイド
3w 貫通孔
10 高圧レギュレータ
20 流量調整装置
30 圧力設定装置
A 移動可能距離
B ボルト
D 空間
F 流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に形成され、流体供給源から供給される流体を導入する導入口と、前記導入口と連通し前記流体が導出する導出口とを備える流路と、
前記流路の途中にあって前記本体の上方から下方に向けて前記流体の圧力が掛かるとともに、上下動可能に取り付けられる調整ピストンと、
前記調整ピストンの軸心と同軸上に連結されるステムと、
前記本体に収納され、前記本体の下方から上方に向けて付勢部材によって付勢されるとともに、前記ステムの先端部に接し、前記流路の途中において前記ステムの動きに合わせて開放位置と閉止位置との間を移動可能とされるジスクと、
を備えることを特徴とする流量調整装置。
【請求項2】
本体と、
前記本体に形成され、流体供給源から供給される流体を導入する導入口と、前記導入口と連通し前記流体が導出する導出口とを備える流路と、
前記流路の途中にあって前記本体の上方から下方に向けて付勢部材によって付勢されるとともに、上下動可能に取り付けられる圧力設定ピストンと、
前記圧力設定ピストンの下部に嵌め込まれるジスクと、
前記本体に収納され、前記本体の下方から上方に向けて付勢部材によって付勢されるとともに、前記圧力設定ピストンの軸心と同軸上であって前記ジスクにその先端部が接し、前記流路の途中において前記流体の圧力に応じて開放位置と閉止位置との間を移動可能となるように前記本体に収納されるニードルバルブと、
を備えることを特徴とする圧力設定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の流量調整装置と、
前記流量調整装置に連結される請求項2に記載の圧力調整装置と、からなり、
前記流量調整装置と前記圧力設定装置とは、前記流量調整装置の導入口から供給された流体を前記圧力設定装置の導入口に導入する第1の連通管と、
前記圧力設定装置において減圧され前記圧力設定装置の導出口から導出された流体を前記流量調整装置の調整ピストン上に供給する第2の連通管と、
を備えることを特徴とする高圧レギュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−134691(P2010−134691A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309885(P2008−309885)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509283443)
【Fターム(参考)】