説明

浄化槽用エアーバルブ

【課題】空気流量の微調整も実施することが可能であり、メンテナンスを頻繁に実施する必要もなく、且つ容易に製造することが可能な浄化槽用エアーバルブを提供すること。
【解決手段】ハンドル部16を回転操作して、第1開口部18を第1流路10に開口することによって、第1流路10と第2流路11とを連通状態に接続し得ると共に、ハンドル部16を回転操作して、第1開口部18を塞ぐことによって、第1流路10と第2流路11とを連通不能状態に遮断し得る浄化槽用エアーバルブ1であって、第1開口部18と、第2開口部19とが、連続した切り欠きによってつながっている状態に形成されている浄化槽用エアーバルブ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1流路と第2流路とが連通状態で交差している交差部が、弁箱内に設けられており、前記弁箱内に前記第2流路の軸心周りに回転自在に弁体が装着され得る取付孔が設けられており、前記弁体を回転操作するハンドル部が設けられており、前記取付孔に装着された弁体は、前記弁体の回転に伴って前記第2流路の軸心周りに回転し得る筒部を有しており、前記筒部は前記交差部に配置され、前記筒部の端部には、前記第2流路に常時開口する第2開口部が設けられており、前記筒部の横側面には、前記筒部の回転に伴って前記第1流路に開口し得る第1開口部が設けられており、前記ハンドル部を回転操作して、前記第1開口部を前記第1流路に開口することによって、前記第1流路と前記第2流路とを連通状態に接続し得、又は前記ハンドル部を回転操作して、前記第1開口部を塞ぐことによって、前記第1流路と前記第2流路とを連通不能状態に遮断し得る浄化槽用エアーバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
し尿や生活雑排水等からなる汚水を浄化する一般的な浄化槽としては、嫌気性微生物により汚水中の有機物を分解する嫌気濾床槽、下方に設けられた散気管から空気を供給して汚水を対流させつつ好気性微生物によって汚水中の有機物を分解する接触曝気槽、並びに、接触曝気槽で繁殖した微生物や汚泥を沈殿させ、上澄みを消毒槽に送る沈殿槽を備えるものが知られている。
上記浄化槽用エアーバルブを回転操作することによって、接触曝気槽の散気管や、沈殿槽に沈殿した汚泥の移送に利用されるエアリフトポンプ等に供給される空気の流量調節を行うことができる。このような浄化槽用エアーバルブとしては、その筒部に、空気が通過可能な小穴を複数設けて第1開口部を構成しているものが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開平7−80486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載される浄化槽用エアーバルブは、空気流量を、その筒部に設けられている小穴の数によって調節するものであるため、流量調節は断続的であり、微調整にはあまり適したものではなかった。
さらに、前記小穴は、その中に埃等が一旦詰まってしまうと取れ難く、散気管やエアリフトポンプ等に空気が供給されなくなる虞があるため、頻繁にメンテナンスを実施する必要があり面倒であった。
またさらに、前記浄化槽用エアーバルブの弁体は、その筒部が、その横側面に前記小穴を有する形状であるがために、射出成型法等を用いて一度に成型することが難しく(別途、前記小穴を開口する作業を実施する必要がある)、浄化槽用エアーバルブ製造における問題の一つとなっていた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、空気流量の微調整も実施することが可能であり、メンテナンスを頻繁に実施する必要もなく、且つ容易に製造することが可能な浄化槽用エアーバルブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、第1流路と第2流路とが連通状態で交差している交差部が、弁箱内に設けられており、前記弁箱内に前記第2流路の軸心周りに回転自在に弁体が装着され得る取付孔が設けられており、前記弁体を回転操作するハンドル部が設けられており、前記取付孔に装着された弁体は、前記弁体の回転に伴って前記第2流路の軸心周りに回転し得る筒部を有しており、前記筒部は前記交差部に配置され、前記筒部の端部には、前記第2流路に常時開口する第2開口部が設けられており、前記筒部の横側面には、前記筒部の回転に伴って前記第1流路に開口し得る第1開口部が設けられており、前記ハンドル部を回転操作して、前記第1開口部を前記第1流路に開口することによって、前記第1流路と前記第2流路とを連通状態に接続し得ると共に、前記ハンドル部を回転操作して、前記第1開口部を塞ぐことによって、前記第1流路と前記第2流路とを連通不能状態に遮断し得る浄化槽用エアーバルブであって、前記第1開口部と、前記第2開口部とが、連続した切り欠きによってつながっている状態に形成されている浄化槽用エアーバルブである点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
本発明の浄化槽用エアーバルブは、第1開口部と、第2開口部とが、連続した切り欠きによってつながっている状態に形成されているため、ハンドル部により弁体を回転操作して筒部を回転させることによって、第1開口部の開度を連続的に調節することが可能である。その結果、空気流量を連続的に変化させることができるので、流量を微調整することができる。
さらに、第1開口部の開度が小さい状態で、埃などが詰まってしまった状態でも、ハンドル部により弁体を回転操作して筒部を回転させることによって、第1開口部の開度を大きくすれば、容易にその詰まった埃等を取り除くことも可能であり、メンテナンスを頻繁に実施する必要がない。
またさらに、筒部の横側面に設けられている第1開口部が、筒部の端部に設けられている第2開口部と連続した切り欠きによってつながっているため、別途、筒部に第1開口部を設ける作業を実施する必要がなく、射出成型法等を用いて弁体を一度に成型することが可能であり、その結果、本発明の浄化槽用エアーバルブを容易に製造することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記ハンドル部、及び前記弁体が、樹脂で一体成型されている点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
ハンドル部、及び弁体が、樹脂で一体成型されているので、組み立てる際の部品数が少なく、より簡単に本発明の浄化槽用エアーバルブを製造することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記取付孔の内周壁面と、前記筒部の外周面とが、互いに嵌合摺接自在なテーパー面に形成してある点にある。
【0011】
〔作用及び効果〕
取付孔の内周壁面と、筒部の外周面とが、互いに嵌合摺接自在なテーパー面に形成してあるため、弁体を取付孔に装着した際のシール性が向上し、空気の漏れを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の浄化槽用エアーバルブ1(第1実施形態)を使用した浄化槽24の縦断側面概略図である。
浄化槽24には、夾雑物除去槽2、嫌気濾床槽3、接触曝気槽4、沈殿槽5、消毒槽6、並びに、沈殿槽5に沈殿した汚泥の移送に利用されるエアリフトポンプ7が備えられている。
本発明の浄化槽用エアーバルブ1は、浄化槽24の外部に設けられているエアーポンプ(図示せず)とエアリフトポンプ7とを連通する配管に設けられており、浄化槽用エアーバルブ1に設けられたハンドル部16を回転操作することによって、エアリフトポンプ7に供給される空気の流量調節を行うことができる。
【0013】
図2及び図3は、本発明の浄化槽用エアーバルブ1を組み立てる様子を示している。尚、図3は、図2の断面図である。
図2に示されるように、浄化槽用エアーバルブ1は、弁体8を弁箱9に装着することによって組み立てることが可能であり、弁箱9を介して、第1配管10(第1流路10)と、第2配管11(第2流路11)とが連通可能に接続される。
第1配管10と第2配管11は、それぞれエアーポンプとエアリフトポンプ7に接続されており、空気は、浄化槽エアーバルブ1を介して第1配管10(第1流路10)から第2配管11(第2流路11)に流れるように構成されている。
尚、弁体8には、弁箱9のフランジ部22に係止可能な抜け止め部21が設けられており、抜け止め部21がフランジ部22に沿って摺接可能に係止することによって、弁体8が第2流路11の軸心G周りに回転自在に弁箱9に装着され得る。
より詳細には、図3に示されるように、弁箱9内には、第1流路10と第2流路11とが連通状態で交差し得る交差部12と、弁体8が第2流路11の軸心G周りに回転自在に装着され得る取付孔13が設けられている。また、取付孔13の縁には、Oリング15を装着可能な溝部14が設けられており、取付孔13と弁体8との間に生じ得る隙間がOリング15によって密封され得る構成となっている。
【0014】
弁体8には、弁体8を回転操作するためのハンドル部16が設けられており、ハンドル部16を回転操作することによって、第2流路11の軸心G周りに弁体8を回転させることができる。
さらに、弁体8は、その回転に伴って第2流路11の軸心G周りに回転し得る筒部17を有しており、弁体8が弁箱9に装着されると、筒部17は交差部12に配置される。尚、図3に示されるように、取付孔13の内周壁面13aと、筒部17の外周面17aとは、互いに嵌合摺接自在なテーパー面に形成してある。
また、筒部17の横側面には、筒部17の回転に伴って第1流路10に開口し得る第1開口部18が設けられており、筒部17の端部には、第2流路11に常時開口する第2開口部19が設けられている。
即ち、浄化槽用エアーバルブ1は、ハンドル部16を回転操作して、筒部17に設けられている第1開口部18を第1流路10に開口することによって、第1流路10と第2流路11とを連通状態に接続することが可能である共に、ハンドル部16を上記回転とは逆方向に回転操作して、第1開口部18を塞ぐことによって、第1流路10と第2流路11とを連通不能状態に遮断し得るように構成されている。
【0015】
尚、本発明の浄化槽用エアーバルブ1においては、第1開口部18と、第2開口部19とが、連続した切り欠きによってつながっている状態に形成されており、図4及び図5に示されるように、ハンドル部16を回転操作して筒部17を回転させることによって、第1流路10に対する第1開口部18の開度を連続的に調節することが可能である。
図4は、筒部17の展開図であり、図5は、図3(b)の矢視線V-Vにおける断面図である。図4及び図5は、筒部17の回転に伴う第1流路10と第1開口部18との位置関係を示しており、図4の(イ)〜(ホ)は、それぞれ図5の(イ)〜(ホ)に対応する。
第1流路10と第1開口部18との位置関係が、図4及び図5の(イ)の状態にあるとき、第1流路10と第2流路11とが最大空気流量の連通状態で接続されており(第1流路10に対する第1開口部18の開度100%)、逆に、第1流路10と第1開口部18との位置関係が、図4及び図5の(ホ)の状態にあるとき、第1流路10と第2流路11とが連通不能状態に遮断されている(第1流路10に対する第1開口部18の開度0%)。
【0016】
図6は、浄化槽用エアーバルブ1の平面図である。弁箱9には、ハンドル部16の回転が180度を超えないように抑止し得るストッパー20(点線部分)が設けられており、ハンドル部16の裏側には、ストッパー20(点線部分)に係止し得る係止め片23a、23b(点線部分)が、ハンドル部16の周方向の相対する位置に2箇所設けられている。
図6(a)に示されるように、ハンドル部16を回転操作して、係止め片23bがストッパー20に係止した状態においては、第1流路10に対する第1開口部18の開度は0%であり(図4及び図5の(ホ)の状態)、逆に、図6(b)に示されるように、係止め片23aがストッパー20に係止した状態においては、第1流路10に対する第1開口部18の開度が100%である(図4及び図5の(イ)の状態)。
【0017】
〔第2実施形態〕
図7〜9は、本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態は、第1実施形態と以下の点で異なり、それ以外の点については、同様に構成されているものであり、同じ符号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、図7に示されるように、弁箱9は三方バルブで構成されており、弁箱9を介して、第1配管10(第1流路10)、第2配管11(第2流路11)、及び第3配管25(第3流路25)が連通可能に接続される。尚、第2実施形態の交差部12においては、第1流路10、第2流路11、及び第3流路25が連通状態で交差し得るように構成されている。
図8は筒部17の展開図であり、図9は図7(b)の矢視線IX-IXにおける断面図である。図8及び図9は、筒部17の回転に伴う第1流路10、第3流路25、及び第1開口部18の位置関係を示しており、図8の(イ)〜(ホ)は、それぞれ図9の(イ)〜(ホ)に対応する。
第1流路10、第3流路25、及び第1開口部18の位置関係が、図8及び図9の(イ)の状態にあるとき、第1流路10と第2流路11とが最大空気流量の連通状態で接続されており(第1流路10に対する第1開口部18の開度100%)、第2流路11と第3流路25とが連通不能状態に遮断されている(第3流路25に対する第1開口部18の開度0%)。
また、第1流路10、第3流路25、及び第1開口部18の位置関係が、例えば、図8及び図9の(ハ)のような状態にあるとき、第1流路10、第2流路11、及び第3流路25が連通状態で接続され、第1流路10からの空気が、第2流路11と第3流路25の両方に流通し得る。
そして、第1流路10、第3流路25、及び第1開口部18の位置関係が、図8及び図9の(ホ)の状態にあるとき、第1流路10と第2流路11とが連通不能状態に遮断され(第1流路10に対する第1開口部18の開度0%)、第3流路25と第2流路11とが連通状態で接続される(第3流路25に対する第1開口部18の開度100%)。
【0018】
〔その他の実施形態〕
1.上述の実施形態におけるハンドル部と弁体とは、それぞれ別体であっても良いし、あるいは、樹脂等でハンドル部と弁体とを一体に成型したものであっても良い。
2.本発明の浄化層エアーバルブは、散気菅に連通する配管に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の浄化槽用エアーバルブ(第1実施形態)を使用した浄化槽の縦断側面概略図
【図2】本発明の浄化槽用エアーバルブ(第1実施形態)を組み立てる様子を示す側面図
【図3】本発明の浄化槽用エアーバルブ(第1実施形態)を組み立てる様子を示す断面図
【図4】本発明の浄化槽用エアーバルブ(第1実施形態)を構成する弁体(筒部)の回転に伴う第1流路と第1開口部との位置関係を示す筒部の展開図
【図5】本発明の浄化槽用エアーバルブ(第1実施形態)を構成する弁体(筒部)の回転に伴う第1流路と第1開口部との位置関係を示す図3の矢視線V−Vにおける断面図
【図6】本発明の浄化槽用エアーバルブ(第1実施形態)の平面図
【図7】本発明の浄化槽用エアーバルブ(第2実施形態)を組み立てる様子を示す断面図
【図8】本発明の浄化槽用エアーバルブ(第2実施形態)を構成する弁体(筒部)の回転に伴う第1流路、第3流路、及び第1開口部の位置関係を示す筒部の展開図
【図9】本発明の浄化槽用エアーバルブ(第2実施形態)を構成する弁体(筒部)の回転に伴う第1流路、第3流路、及び第1開口部の位置関係を示す図7の矢視線IX−IXにおける断面図
【符号の説明】
【0020】
1 浄化槽用エアーバルブ
2 夾雑物除去槽
3 嫌気濾床槽
4 接触曝気槽
5 沈殿槽
6 消毒槽
7 エアリフトポンプ
8 弁体
9 弁箱
10 第1流路
11 第2流路
12 交差部
13 取付孔
13a 内周壁面
14 溝部
15 Oリング
16 ハンドル部
17 筒部
17a 外周面
18 第1開口部
19 第2開口部
20 ストッパー
21 抜け止め部
22 フランジ部
23 係止め片
24 浄化槽
25 第3流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路と第2流路とが連通状態で交差している交差部が、弁箱内に設けられており、前記弁箱内に前記第2流路の軸心周りに回転自在に弁体が装着され得る取付孔が設けられており、前記弁体を回転操作するハンドル部が設けられており、前記取付孔に装着された弁体は、前記弁体の回転に伴って前記第2流路の軸心周りに回転し得る筒部を有しており、前記筒部は前記交差部に配置され、前記筒部の端部には、前記第2流路に常時開口する第2開口部が設けられており、前記筒部の横側面には、前記筒部の回転に伴って前記第1流路に開口し得る第1開口部が設けられており、前記ハンドル部を回転操作して、前記第1開口部を前記第1流路に開口することによって、前記第1流路と前記第2流路とを連通状態に接続し得ると共に、前記ハンドル部を回転操作して、前記第1開口部を塞ぐことによって、前記第1流路と前記第2流路とを連通不能状態に遮断し得る浄化槽用エアーバルブであって、
前記第1開口部と、前記第2開口部とが、連続した切り欠きによってつながっている状態に形成されている浄化槽用エアーバルブ。
【請求項2】
前記ハンドル部、及び前記弁体が、樹脂で一体成型されている請求項1に記載の浄化槽用エアーバルブ。
【請求項3】
前記取付孔の内周壁面と、前記筒部の外周面とが、互いに嵌合摺接自在なテーパー面に形成してある請求項1又は2のいずれか1項に記載の浄化槽用エアーバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−292132(P2007−292132A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118191(P2006−118191)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】