説明

浄水器

【課題】濾材全体を満遍なく使用して濾材の有効利用を図る。
【解決手段】注水口75から導水管77を経由して第1濾過層20の上面に原水を導く。導水管を経由することで第1濾過層の上面全体に亘って水道水が流下する。第1濾過層内を透水した水道水は、中空層60を経て第2濾過層30に至る。中空層によって第1濾過層を透水した水道水が不規則に第2濾過層の表面に流下するため、いわゆる水の通り道を遮断し、不規則な水の流れを作る。したがって第2濾過層内を満遍なく通過する。水道水の濾過を、より効果的に行うためさらに第3濾過層40を設け、第3濾過層を通過した流水を最終的な浄水として使用する。濾過層内を満遍なく透水するので、濾材の寿命が長くなり、濾材を有効利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は家庭などで使用して好適な浄水器に関する。詳しくは、2つの濾過層で原水を濾過することで浄水を得ると共に、2つの濾過層の間に中空層を設けて水の流れを不規則な流れとすることで、濾過層内を満遍なく透水するようにして、濾過層の汚れの偏りをなくした浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水に含まれる塩素成分や、不純物などを除去する目的で使用される浄水器としては、種々提案されている。そのうち特に濾過用のフィルタを2段に亘って使用して、水道水を濾過する浄水器が知られている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1は、環筒状体として構成された第1のフィルタ部の外周面から内周面に向かって水道水を透水させて濾過し、濾過した水道水をさらに、第1のフィルタ部の内部に配された柱状体構成の第2のフィルタ部の頂部から底部に向かって透水することで、濾過されそして浄化された浄水を得るようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2は、濾材として吸着剤成型体と中空糸膜を使用し、吸着剤成型体の周面から水道水を透水させて濾過し、その後中空糸膜を通すことで濾過され、浄化された浄水を得るようにしている。
【0005】
【特許文献1】特許第3377778号
【特許文献2】特開2004−50083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された技術は、水道水の含有塩素量を確保するために2つのフィルタ部を使用しているが、水道水は第1のフィルタ部本体の下側(底部側面側)から給水されるため、環状をなすこの第1のフィルタ部の上部まで満遍なく水道水(原水)が行き渡った状態で、環状をなす第1のフィルタ部の外周面側からその内周面側に透水させるのが困難である。そのため、第1のフィルタ部はその下部周辺より透水が行われる頻度が高くなり、第1のフィルタ部はその上部側より下部側の方が、汚れ易くなる傾向にある。つまり水道水を濾過したときの第1のフィルタ部の汚れ具合が偏ってしまう。その結果、第1のフィルタ部の交換時期が早まり、その寿命が短くなってしまう。
【0007】
特許文献2にあっては、特許文献1の第1フィルタ部のような汚れの偏りは発生しないと考えられる。しかし、中空糸膜を通過する場合、水道水はその中心部に集中し易い傾向にあるから、この場合にも汚れの偏りが発生する。したがって特許文献1と同様な問題を惹起する。
【0008】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、特に水道水が満遍なく濾材内を透水するようにすることで、汚れ具合の偏りをなくして、使用寿命の改善を図った浄水器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載したこの発明に係る浄水器は、流入する原水を濾過する濾過層を備えた浄水器であって、
上記濾過層は、
上記原水が導かれる第1濾過層と、
上記第1濾過層よりも下流側に配設された第2濾過層と、
上記第1濾過層と上記第2濾過層とを接続する中空層とからなることを特徴とする。
【0010】
この発明に係る浄水器を家庭内で使用するときは、集中浄水器(セントラル浄水器)として使用できる。この浄水器は第1濾過層と、第2濾過層と、これら濾過層の間に設けられた中空層とで構成される。導水路を経由して第1濾過層の上面に原水(浄水する前の水道水)を導く。導水路を経由することで第1濾過層の上面全体に亘って水道水が流下する。第1濾過層内を透水することで濾過されながら水道水が流下する。
【0011】
第1濾過層内を透水した水道水は、中空層を経て第2濾過層に至る。中空層は第1濾過層を透水した水道水を不規則に第2濾過層の表面に流下するようにするためである。
【0012】
中空層は、濾過層を通る定常的な水の流れである、いわゆる水の通り道を遮断し、不規則な水の流れを作るためのものであるので、単純には中空であればよい。より効果的には不規則な水の流れを作り、第2濾過層内を満遍なく通過させるために、中空層として水道水の流れを乱す機構を備えればよい。その機構としては、中空層内に多数の透孔が穿設された透孔円盤を流水方向制御部として使用したり、その透孔の穿設方向がランダムとなるように複数の透孔が設けられた円盤を流水方向制御部として使用することが考えられる。
【0013】
水道水の濾過を、より効果的に行うためには、第1濾過層および第2濾過層の他に、さらに第3濾過層を設け、第3濾過層を通過した流水を最終的な浄水として使用する。第3濾過層に対しても水の通り道が固定されて定常化されないようにするため、その濾材として粒状濾材を使用すると共に、第2濾過層を通過した流水が第3濾過層内部をその下方側から上方側に向かって透水するようにする。粒状濾材内を透水することで、水道水が活水化される。これと同時に、通過する水圧で粒状濾材が不規則に攪拌されるため、水の通り道が固定されなくなって、第3濾過層内を満遍なく透水するようになる。濾材を満遍なく使用することで、汚れ具合の偏りがなくなり、濾材の寿命が長くなる。
【発明の効果】
【0014】
この発明では、第1濾過層と第2濾過層の間に中空層を設け、第1濾過層を通過した流水が中空層を介して第2濾過層に至るようにしたものである。
【0015】
第1濾過層には原水が給水されるので、第1濾過層内を満遍なく水道水が透水する。中空層を通過することで、流水の流下時にその流下方向が乱されることから、第1濾過層を通過した流水は、第2濾過層の表面に満遍なく流下するようになる。これにより流水は第2濾過層の濾材内を満遍なく、遍く流れ下ることになって、偏った流れを阻止できる。流れが偏ると、その部分での濾材が目詰まりなどを起こして、その個所での濾過作用が他と比べて低下してしまう。濾材の目詰まりは、濾材交換時期を早める結果となってしまう。偏った透水をなくすことで濾材の寿命を長くできるなどの特徴を有する。
【0016】
また、偏った透水をなくすことで、偏った透水によって第2濾過層の内部に定常的な通水路が設けられてしまうことを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
続いて、この発明に係る浄水器の好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。この発明に係る浄水器は、家庭用浄水器として使用して好適である。家庭で使用する場合には集中浄水器(セントラル浄水器)として使用することができる。セントラル浄水器の場合には、水道メータを通過した後の水道水に対して浄水処理が施される。したがって、浄水器は水道メータを通過した直後の水道水に対して浄水処理を施すように設置することもできれば、家屋内であって、水道管が各所に分岐する前の水道本管内の水道水に対して浄水処理を施すように設置することでもよい。以下説明するのは図示はしないが前者の例である。後者の場合には特に集合住宅などでの設置例となる。
【実施例1】
【0018】
図1はこの発明に係る浄水器の一例を示す。この例は3つの濾過層を使用して水道水を浄化し、そして活水化した例であり、第1濾過層と第2濾過層は主に水道水(原水)を浄水化し、残りの濾過層である第3濾過層は浄水された水道水を主に活水化する例である。
【0019】
図1に示す浄水器10は、中空層60が介在された第1濾過層20と第2濾過層30および環状をなす第3濾過層40で構成され、これら濾過層20,30,40が、中空収納エリアを備えた環筒状体の収容容器50内に収納された状態で使用される。第1濾過層20および第2濾過層30の構成から説明する。
【0020】
図2はこれら濾過層20,30およびこれら濾過層20,30に水道水を導くための導水体70の構成例を示す。第1濾過層20は所定の長さとなされた筒状のハウジング21を有し、この筒状ハウジング21のほぼ中央部に段部22が設けられ、この段部22に挟持されるように、所定の濾過面積を有する筒状の濾材23が取り付け固定される。
【0021】
筒状ハウジング21の上面側には多少径小であって、その外側にネジ部24aが形成された上螺合部24が設けられる。同じように筒状ハウジング21の下面側には上螺合部24よりも長目に選定され、その内部にネジ部25aが形成された下螺合部25が設けられる。この長目に選定された下螺合部25の内部空間25bが後述する中空層60の一部として機能する。下螺合部25の先端部には、連結時の漏水をなくすためにOリング26が取り付けられる。
【0022】
筒状ハウジング21はその成型の容易性、強度、軽さなどの諸点から樹脂によるモールド成形体が使用される。
【0023】
第2濾過層30も、第1濾過層20と全く同じように構成されている。したがってモールド成型された筒状ハウジング31を有し、内部に設けられた段部32内に所定の濾過面積となされた筒状濾材33が取り付け固定される。そして、筒状ハウジング31の上端側がその外部にネジ部34aが形成された上螺合部34となされ、下端部がその内部にネジ部35aが形成された下螺合部35となされる。上螺合部34の内部空間34bが中空層60の一部として機能する。
【0024】
このように構成された第1濾過層20と第2濾過層30は、第2濾過層30が下流側となるように連結される。第1濾過層20と第2濾過層30とを上下に配して使用する場合には、第2濾過層30が下側となるように連結され、そして上側に位置する第1濾過層20に水道水が給水される。
【0025】
そのため、上述した下螺合部25のネジ部25aと、上螺合部34のネジ部34aは互いに螺合(螺着)できるような内径と外径に選定されている。図5のように両者を連結することによって、第1濾過層20と第2濾過層30を合体させて一体化できる。この一体化によって第1濾過層20と第2濾過層30との間に形成された空間25bが中空層60として機能することになる。厳密には、上螺合部34によって形成される空間も中空層60の一部として機能する。
【0026】
図2に示すように第1濾過層20の上面側には、収容容器50の一部を構成する導水体70が螺着されると共に、この導水体70を介して第1濾過層20に水道水が導かれる。
【0027】
導水体70は中空で扁平な円盤状をなす蓋体71であって、その底面板72b側には比較的大きな開口部73が設けられており、その中心には上面板72aに連結された中空の軸筒74が設けられている。この軸筒74は蓋体71の底面板72bより所定長だけ突出している。
【0028】
軸筒74の先端部にはその内部にネジ部78aが形成された螺合部78となされ、この螺合部78は上述した第1濾過層20の上螺合部24と螺合できるような内径に選定される。両者の螺合状態を図5に示す。螺合部78には漏水防止用のOリング79が取り付けられている。
【0029】
蓋体71の外周面の一部には水道水の注水口75が設けられ、図2に示すようにこの注水口75は導水管77によって軸筒74の一部に連結されている。したがって導水管77と対峙する軸筒74は空孔74aとなされる。導水管77の上面は蓋体71の上面板72aの一部であり、その下面は底面板72bの一部となる。
【0030】
その結果、注水口75に注水された水道水はこの導水管75を介して軸筒74に導かれる。軸筒74に導かれた水道水の全ては導水体である蓋体71に連結された第1濾過層20に注がれる。
【0031】
蓋体71の外周面の一部であって、この例では注水口75と対向する位置には、濾過層によって濾過された浄水を取り出すための浄水口76が設けられている。また、図2および図4に示すように、蓋体71の底面板72bであって、軸筒74よりも外側には、開口部73と連なると共に底面板72bと一体となるように連結筒80が設けられている。
【0032】
連結筒80は開口部73に連なって形成されるものであるから、図4に示すように導水管77の部分のみ底面(底面板)72bが存在し、それ以外が全て開口部73となる。したがって、蓋体71の同じ外周面に注水口75と浄水口76を設け、軸筒74に濾過層20等を介在させ、開口部73側にも濾過層(後述する第3濾過層40)を介在させることで、注水口75と浄水口76との間に濾過層20,30,40を介在させた浄化用導水路を構築できる。
【0033】
連結筒80にはその外周面にネジ部80aが切られており、図5に示すような外筒81が連結される。なお、図4では軸筒74および連結筒80にそれぞれ形成されたネジ部は、共に省略されている。
【0034】
外筒81は図1に示すように、収容容器50の本体外筒部となるものであって、図5にその詳細を示すように、その上部内面と下部内面とにはそれぞれネジ部82,83が形成されると共に、それぞれの先端部には漏水防止用のOリング84,85が取り付けられている。上ネジ部82を連結筒80に螺合させることで、外筒81と導水体70とが一体化される。下ネジ部83は図6に示す収容容器50の本体を構成する台座90に連結するためのものである。詳細は後述する。
【0035】
図6は第3濾過層40と台座90との関係を示す。台座90は扁平な円盤状をなす基板部である。台座90には筒状隔壁90aによって中心部側の空孔91aと外周部側の空孔91bとに分割され、内側空孔91aと環状をなす外側空孔91bとは放射状に延びる複数、この例では等間隔に配列された6つの連通孔92によって連通している。
【0036】
筒状隔壁90aの上面側には所定長の内筒93が一体成形されている。内筒93の内径は上述した筒状ハウジング21,31の外径よりも僅かに大きい。その長さは筒状ハウジング21と31を連結したときの長さとほぼ同じ長さに選定されている。
【0037】
内筒93の底部には比較的大きな内孔94が穿設されており、この内孔94は内側空孔91aと連通している。この例では、内孔94と内側空孔91aとは同径である。内筒93の外側であって、外側空孔91bの上面部95には環状をなす外孔96が穿設されている。この環状外孔96の外周面にはネジ部96aが設けられ、後述する第3濾過層40を取り付け固定できるようになされている。
【0038】
内筒93および環状外孔96の外側に面した上面部95aにはさらに、その外側にネジ部97aを有する環状嵌合部97が形成されている。環状嵌合部97のネジ部97aは上述した外筒81のネジ部83と螺合できるような外径に選定されている。
【0039】
台座90をこのように構成することで、内孔94から環状外孔96に至るまでの導水路を形成することができる。
【0040】
一方、上述した内筒93の外側には、図6に示すような第3濾過層40が着脱自在に挿着される。第3濾過層40は環状で中空状をなす筒状体として構成され、そのため、この第3濾過層40を収容するハウジング41もまた環状で、中空状なす筒状体である。この環筒状ハウジング41内に第3濾過層用の濾材42が収容される。
【0041】
環筒状ハウジング41の頂部43は、図7に示すように中央に大きな開口43aが設けられると共に、環状をなす頂部フランジ44には複数の透孔44aが等間隔で穿設され、浄水を取り出せるようにしている。なお、開口43aは、内筒93が挿入可能な大きさとなっている。
【0042】
一方、環筒状ハウジング41の底面側には、第3濾過層40を台座90に形成された環状外孔96のネジ部96aに挿着固定するための部材が設けられている。この部材は環筒状螺合部45として構成されており、環筒状螺合部45の外周面にネジ部45aが切られ、環筒状螺合部45を環状外孔96に螺合することで、第3濾過層40を台座90に挿着固定することができる。環筒状螺合部45の底部には漏水防止用のOリング46が挿着されている。
【0043】
環筒状ハウジング41が正しく内筒93の外側に挿着されて固定できるように、環筒状ハウジング41の内径および外径φa〜φcと、台座90における各内径および外径φd〜φfとの関係は、図6に示すように、
φa>φd
φb<φe
φc=φf
を満足するように選定されている。このような寸法関係に選定することで、図8に示すように濾材42を収納した環筒状ハウジング41は内筒93の外側に正しく挿着固定できる。
【0044】
ここで、第1濾過層20の濾材23としては繊維状や粒状に成形された活性炭や、中空糸膜などの浄化用の濾材を使用することができ、第2濾過層30の濾材33としては上述した活性炭など浄化用の濾材を使用することができる。これらの濾材23,33によって原水(水道水)が濾過されて浄化される。
【0045】
また、第3濾過層40として使用される濾材42としては麦飯石、セラミック材、自然石素材などをそれぞれ粒状化した活水化濾材を使用することができる。環筒状ハウジング41内に収納される濾材42は上述のように粒状濾材であって、内部空間を自由に運動できるように、環筒状ハウジング41の内部全体に濾材42を敷く(収容する)のではなく、一部空間41aができるように収容する。
【0046】
さて、環筒状ハウジング41を台座90に挿着固定し、一方第1濾過層20および第2濾過層30を連結した導水体70に外筒81の上端を螺合させた状態で、外筒81の下端を台座90に設けられた環状螺合部97に螺合させることで図1の浄水器10が完成する。
【0047】
収容容器50を組み立てた状態のときには、図1に示すように第3濾過層40の頂面側と連結筒80との間には、水道水が通過する空間100ができるように、外筒81と第3濾過層40との長さ関係が調整されているものとする。そして、このような収容容器50を使用することで、注水口75から浄水口76に至る導水路(浄水路)が得られる。つまり、
「注水口75→導水管77→軸筒74→第1濾過層20(濾材23)→中空層60→第2濾過層30(濾材33)→内孔94→内側空孔91a→複数の連通孔92→外側空孔91b→環状外孔96→環筒状螺合部45→第3濾過層40(濾材42)→透孔44a→開口部73→浄水口76」
に至る導水路が形成されたことになる。
【0048】
したがって、注水口75より水道水を流せば、第1濾過層20と第2濾過層30とは上から下へと下流側に向かって水道水が流下する。水道水は導水管77を経て第1濾過層20の端面側(頂面側)に注ぎ込まれるので、その端面のほぼ全面に亘って水道水が注ぎ込まれる。その結果として水道水は濾材23内を満遍なく透水して中空層60に至る。したがって水道水の通り道が定常的に固定されるおそれはない。
【0049】
中空層60内では濾材23を通過した水道水が不規則に流れ下って第2濾過層30の端面側(頂面側)の全面に満遍なく到達する。そのため、第1濾過層20と同じく、第2濾過層30の端面のほぼ全面に水道水が注ぎ込まれるため、濾材33内を満遍なく透水して台座90の中空部に至る。この場合においても水道水の通り道が定常的に固定されることはない。
【0050】
水道水の水圧で水道水は連通孔92を介して第3濾過層40の内部に浸透しながらその下部から上部へと至る。このとき濾材42には水圧がかかるため、内部の濾材42が攪拌され、不規則な運動を繰り返す。この不規則な運動によって水道水は濾材42との接触時間が一層長くなり、これによって活水効果が高まる。これと同時に濾材42が活発に運動するため、濾材42内を満遍なく水道水が透水する。結果として水道水の通り道が固定されないので、水道水は濾材42内をランダムに流れ、濾材42の汚れ具合も一様になる。浄水口76には浄水され、活水化された浄活水が得られる。
【実施例2】
【0051】
図1に示した実施例は、第1濾過層20および第2濾過層30のそれぞれは、これらを構成する濾材の長手方向の一方から水道水を取り入れて濾過処理を行い、長手方向の他方から濾過された水道水を取り出すようにした例である。
【0052】
この他に、濾材の内外表面を利用して水道水を濾過することが考えられる。そのときの濾材としては環筒状の濾材が使用される。このような濾材を使用する場合には濾材の外表面側から内表面側に向かって水道水を透水させるか、その内表面側から外表面側に向かって水道水を透水させることで濾過処理を行うことになる。実施例2は、第1濾過層20と第2濾過層30のそれぞれに対して水道水をその外表面側から水道水を透水させるときの具体例である。
【0053】
図9〜図12はその一例を示す浄水器10の構成例である。図1とは第1濾過層と第2濾過層の構成のみ相違するので、図9以下を参照してこれら濾過層220,230ついて説明する。
【0054】
この実施例2では、第1濾過層220、第2濾過層230とも、図9以下に示すように環状で筒状をなす濾材223,233が使用される。この環筒状をなす濾材223,233、例えば濾材223は、図10に示すようにその上下に配された嵌合体224,225によって固定される。
【0055】
嵌合体のうち上側の嵌合体224は皿状体であるのに対し、下側の嵌合体225はその中央下部に透孔を有する筒状体226が一体成形されたもので、筒状体226の外側にはネジ部226aが切られている。嵌合体225の下面であって筒状体の外側には漏水防止用としてのOリング227が取り付け固定されている。
【0056】
一方この環筒状濾材223を収納する筒状ハウジング221は、図10に示すようにその上端面の外側にネジ部221aが設けられ、下端面の内側にもネジ部221bが設けられている。これらのネジ部221a、221bによって、図9に示すように、同一に構成された複数の筒状ハウジング221,231相互を連結できるようになっている。
【0057】
また、この筒状ハウジング221は環筒状濾材223よりも一回り大きく、しかも筒状ハウジング221の底面側に設けられた底面板228のほぼ中央部に、取り付け固定用の透孔229が設けられている。透孔229の内面には上述した筒状体226を螺合できるようなネジ部229aが切られている。
【0058】
その結果、環筒状濾材223の嵌合体225を筒状ハウジング221に螺合することで、図11に示すように筒状ハウジング221の内部に環筒状濾材223を収容した状態で固定できる。筒状ハウジング221は環筒状濾材223よりも一回り大きく、しかも環筒状濾材223よりも長目に選定された筒状体であるため、図11に示すように筒状ハウジング221の内壁と環筒状濾材223との外面との間およびその上面側にはそれぞれ所定の空間240が生まれる。この内部空間240が後述するように水道水の溜まり部となる。
【0059】
さて、図11のようにその内部に環筒状濾材223(233)が収納された一対の筒状ハウジング221,231は、図9に示すように連結されて一体化されてから導水体70に連結されることで、図12に示すような浄水器10が得られる。
【0060】
ここで、一対の筒状ハウジング221,231を一体化すると、図9に示すように上部筒状ハウジング221の筒状体226側と、下部筒状ハウジング231の頂部側(ネジ部224側)との間に連結空間260が生まれる。この連結空間260が中空層として機能する。
【0061】
連結された状態の一対の濾過層220,230に対し、図1の場合と同様に、注水口75、導水管77,軸筒74を経て、上部筒状ハウジング221の頂部より水道水を給水すると、図9に示すように水道水は上部筒状ハウジング221の内部空間240を満たし、内部空間240を満たした水道水は、水道水に加わった水圧によってやがて環筒状濾材223内を透水して、環筒状濾材223の外周面側からその内周面側へと水道水が浸透する(破線図示)。
【0062】
このとき内部空間240を水道水が満たした段階から浸透が始まるので、水道水は環筒状濾材223の全外周面から満遍なく、均等に、内周面側に浸透する。したがって環筒状濾材223の外周面の一部のみから水道水が浸透するようなおそれがないので、水道水が偏って環筒状濾材223内を流れるようなことがなくなる。その結果、環筒状濾材223の全体(全面)を使用して水道水を濾過処理することができる。
【0063】
環筒状濾材223の内周面に流れ込んだ水道水は中空層である連結空間260を経て下部筒状ハウジング233の内部空間250へと導かれる。連結空間260では、第1の濾過層で濾過された水道水は下部筒状ハウジング231の頂面側の面内に一様にムラなく流下する。したがって筒状ハウジング231の内部空間250内を満遍なく流下して、環筒状濾材233の外周面を満たす。
【0064】
環筒状濾材233の場合でも水道水の水圧によって、環筒状濾材233の外周面側から内周面側へと浸透するから、環筒状濾材233の全面を使用して濾過処理が行われる。これによって水道水がさらに浄化される。浄化された水道水は第3濾過層40を経由して活水化されながら浄水口76に導かれる。
【0065】
このように環筒状濾材223,233の外面側から水道水を透水して浄化する場合でも、水道水を満遍なく環筒状濾材223,233内を通過させることができるから、環筒状濾材223,233の一部だけ水道水が流れ、その一部だけが利用されるような偏った浄化処理を一掃できる。
【実施例3】
【0066】
図1に示す筒状ハウジングは何れもその頂面や底面が単一の大開口部として設けられているが、これら頂面と底面の何れか一方あるいは双方に、多数の透孔が穿設された仕切板を設けることもできる。この仕切板は中空層内を通過する水道水の流れを乱す機構として機能するものである。
【0067】
図13は筒状ハウジング21,31の各頂面と底面の何れにも流下方向制御部として機能する仕切板270、280を設けた例で、図14にその平面構成例を示す。この例では放射状に多数の透孔(1〜3mm程度の径)271を形成した例である。透孔271は盤面(透孔盤面)に対して垂直に形成することもできれば、さらに効果を上げるために、例えば図15に示すように盤面に対する向きを不規則に形成することもできる。
【0068】
このような仕切板270,280を設けると、水道水の流下方向が乱されるため、流れが不規則になる。特に図15に示すように透孔271の形成方向をその盤面に対して不規則とすることで、濾過層20あるいは30の頂面全面に亘って水道水を満遍なく流下させることができ、濾過層20,30への偏った水道水の流れを回避して、濾過層20,30の汚れのムラをなくすことができる。つまり、濾過層20,30を有効活用できる。
【実施例4】
【0069】
上述した各実施例では、何れも浄水器を使用することによって、水道水に含まれる不純物などが濾材に詰まって、目詰まりが発生する。目詰まりが発生すると、浄化能力(活水化能力)が低下したり、水の流れが悪くなったりする。
【0070】
このような場合、逆洗処理を行うことで浄活水能力が回復し、水の流れも改善される。浄水器10にはこのような逆洗処理機能を付加することも可能である。
【0071】
図16よび図17に逆洗処理機能の付いた浄水器の一例を示す。図16から説明する。
【0072】
図16において、使用者宅に引き込まれた水道本管300に水道メータ301が敷設され、この水道メータ301の下流側であって使用者宅内に引き込まれた水道管302の所定位置に、上述した浄水器(浄水器本体)10が敷設される。
【0073】
浄水器10の下流側に敷設された宅内水道管303には複数の分岐管が敷設されており、その1つには台所用の蛇口310が取り付けられ、以下同様にその他の分岐管には洗面所用の蛇口311,トイレ用の蛇口312および浴室用の蛇口313がそれぞれ取り付けられている。
【0074】
水道メータ301と浄水器10との間の水道管および浄水器10と宅内水道管303との間の水道管には、3方向に切り替えることができる一対の切替弁、この例では第1および第2の逆洗用電磁弁320,321がそれぞれ敷設されると共に、これら逆洗用電磁弁320と321との間を直接連結する分岐管322が敷設される。さらに第1の電磁弁320と浄水器10との間の水道管には排水弁この例では排水用の電磁弁330が敷設されると共に、電磁弁330には排水管331が連結される。これら複数の電磁弁320,321および330は何れもコントローラ340からの制御信号(弁開閉信号)によって、流量方向を伴った開閉制御がなされる。コントローラ340は浄水器10と一体化することもできれば、台所などに浄水器10とは別体に設置することもできる。
【0075】
逆洗機構をこのように構成した場合、通常の水道使用状態(浄水モード)では逆洗用の電磁弁320,321はノーマル状態に制御され、水道水が浄水器10を経て宅内に導かれる(実線矢印)。これに対して逆洗モードのときは第1の逆洗用電磁弁320は分岐管322側に切り替えられ、第2の逆洗用電磁弁321は分岐管322側から浄水器10側に向かうように切り替えられ、そして排水用電磁弁330は排水管331側に切り替えられる。
【0076】
このような逆洗モードに切り替えられると、水道水は破線矢印の方向に流れるので、浄水器10に対しても水道水が逆流する。浄水器10内を水道水が逆流することで、濾過層内も水道水が逆流し、図1の例では、浄水口76に導かれた水道水は、
「第3濾過層40→第2濾過層30→第1濾過層20」
を経由して注水口75に至る。注水口75には排水用電磁弁330を介して排水管331が接続されているので、濾過層40,30,20内に付着した各種の不純物が排水管331側に排出されて濾過層40,30,20の洗浄処理が行われる。
【0077】
このような逆洗処理は定期的に行うことができる。そのため、コントローラ340では逆洗モードに対する時間管理がなされ、例えば所定月数を経過したとき自動的に逆洗モードに遷移する処理が行われる。逆洗処理を手動で行うこともできる。手動の場合には、随時処理が可能になる。
【0078】
図17は逆洗機構の他の例である。この例では水道メータ301と浄水器10との間の水道管には排水用の電磁弁330のみが敷設される。これに対して浄水器10の下流側に連結された分岐管303の末端側にポンプ(圧力ポンプ)350が連結される。ポンプ350はコントローラ340によって制御される。
【0079】
浄水モードでは水道水が実線矢印のように流れ、浄水器10によって浄活水された水道水(浄水)が宅内に送り込まれる。これに対して逆洗モードが選択されると排水用電磁弁330が作動して排水管331側に切り替えられると共に、ポンプ350が作動する。分岐管303にはポンプ350に至る長さに相当する水道水が滞留しているので、この滞留水がポンプ350の作用で浄水器10側にその浄水口側から送り込まれる。これによって滞留水は浄水器10内を逆流してその注水口側に至るので、この逆流によって複数の濾過層内に付着した不純物が取り除かれて、排出される。
逆洗機構をこのように構成しても、浄水器10に設けられた濾過層の洗浄処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
この発明は、水道水を浄活水化する浄水器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明に係る浄水器の一例を示す要部の断面図である。
【図2】第1濾過層と第2濾過層および導水体の分解断面図である。
【図3】導水体のAA線上断面図である。
【図4】導水体のBB線上断面図である。
【図5】導水体に第1および第2濾過層を連結した状態の断面図である。
【図6】第3濾過層と収容容器との関係を示す分解した状態の断面図である。
【図7】環筒状ハウジングの頂部平面図である。
【図8】第3濾過層を収容容器に取り付けたときの断面図である。
【図9】第1濾過層および第2濾過層の他の例を示す断面図である。
【図10】図9に示した第1濾過層の分解断面図である。
【図11】図9に示した第1濾過層の組み立てた状態の断面図である。
【図12】この発明に係る浄水器の他の例を示す断面図である。
【図13】第1濾過層と第2濾過層の他の例を示す断面図である。
【図14】それに設けられた仕切板の平面図である。
【図15】仕切版を示す他の例の断面図である。
【図16】逆洗処理機能の付いた浄水器の配管例を示す図である。
【図17】図16の他の例を示す配管例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
10・・・浄水器
20、220・・・第1濾過層
30、230・・・第2濾過層
40・・・第3濾過層
50・・・収容容器
60・・・中空層
70・・・導水体
75・・・注水口
76・・・浄水口
74・・・軸筒
73・・・開口部
93・・・内筒
81・・・外筒
90・・・台座
270,280・・・仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入する原水を濾過する濾過層を備えた浄水器であって、
上記濾過層は、
上記原水が導かれる第1濾過層と、
上記第1濾過層よりも下流側に配設された第2濾過層と、
上記第1濾過層と上記第2濾過層とを接続する中空層と、
からなることを特徴とする浄水器。
【請求項2】
請求項1に記載の浄水器において、
上記中空層には、上記第1濾過層から上記第2濾過層へ向かう水の流れを乱す機構が備えられている
ことを特徴とする浄水器。
【請求項3】
請求項1に記載の浄水器において、
上記第1濾過層および第2濾過層として中空で柱状をなす濾材が使用されるとき、上記第1濾過層と第2濾過層は、
上記濾材の外周部から内周部に向って水が透水するか、上記濾材の内周部から外周部に向って水が透水するような濾材収容容器が使用される
ことを特徴とする浄水器。
【請求項4】
請求項1に記載の浄水器において、
上記第2濾過層の下流側には、上記第2濾過層を経た流水が透水する第3濾過層が設けられ、
該第3濾過層は粒状濾材からなる活水濾材で構成されると共に、
上記第2濾過層を経た流水が、上記第3濾過層内部をその下方側から上方側へ向かって透水するように、上記第3濾過層が設けられた
ことを特徴とする浄水器。
【請求項5】
請求項4に記載の浄水器において、
一端側に上記第1濾過層を収容するとともに他端側に上記第2濾過層を収容する筒状ハウジング部材と、
上記第3濾過層が充填された環筒状ハウジング部材と、
上記環筒状ハウジング部材を固定すると共に、上記環筒状ハウジング部材のほぼ中央の空間部内に上記筒状ハウジング部材を収容できる筒状部を有する収容容器と、
を有することを特徴とする浄水器。
【請求項6】
請求項2に記載の浄水器において、
上記中空層には、多数の透孔が穿設された円盤状をなす流水方向制御部が設けられ、
該流水方向制御部を水の流れを乱す上記機構として使用した
ことを特徴とする浄水器。
【請求項7】
請求項1に記載の浄水器であって、
上記浄水器の上流側に備えられて、上記浄水器への上水の流入を制御する切替弁機構と、
上記切替弁機構と上記浄水器との接続管路中に配設されて、該接続管路中の通水を排水可能な排水機構と、
上記浄水器の下流側から上流側へ向かう逆流水を上記浄水器に供給する逆流水供給手段と、
上記切替弁機構と上記排水機構と上記逆流水供給手段とを制御する制御装置とを備え、
上記制御装置によって、上記切替弁機構、排水機構および逆流水供給手段をそれぞれ作動させることで、上記浄水器の下流側から上記逆流水を供給して排水するようにした
ことを特徴とする浄水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−98360(P2007−98360A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295621(P2005−295621)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】