浴室用暖房パネル
【課題】 暖房効率が良く、耐久性に優れ、安全な浴室用暖房パネルを提供することである。
【解決手段】 下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板1と、この断熱板1上に敷設した温水パイプ5と、その表面に設け、発泡ポリプロピレンと接着可能な第1接着層12と、この第1接着層12上に設けた第2接着層13と、この第2接着層13上に設けた表面材2とからなり、上記第2接着層13が、上記表面材2および第1接着層13に接着可能な弾性接着材で構成される。
【解決手段】 下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板1と、この断熱板1上に敷設した温水パイプ5と、その表面に設け、発泡ポリプロピレンと接着可能な第1接着層12と、この第1接着層12上に設けた第2接着層13と、この第2接着層13上に設けた表面材2とからなり、上記第2接着層13が、上記表面材2および第1接着層13に接着可能な弾性接着材で構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴室を暖房するために用いる浴室用暖房パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、室内を暖房するために、温水を利用する暖房パネルがある。
この暖房パネルは、温水源から供給される温水を通過させる温水パイプを、パネル状に配置して床や壁の表面材の下に設け、上記温水パイプを通過する温水が床面や壁面を暖めたり、空気と熱交換して室内を暖めたりするというものである。
【0003】
ただし、床や壁の下地材に直接、上記温水パイプを敷設したのでは、下地材側に熱が逃げてしまって、暖房効率が悪くなるため、温水パイプと下地材との間に、断熱板を介在させることが好ましい。そこで、断熱板に温水パイプを敷設してパネル状にした暖房パネルが考えられ、上記断熱板として、軽くて加工が簡単な発泡ウレタンや、発泡スチロールを用いることが考えられていた(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2001-124353号公報
【特許文献2】特開2002-115989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような暖房パネルを浴室暖房に用いる場合、浴室の床や壁の下地材は、防水性のある材質で形成されなければならず、例えば、モルタルなどで形成されている。このような下地材の上に、直接温水パイプを敷設した場合には、特に熱が逃げ易いので、浴室用の暖房パネルには、特に、断熱板が必要となる。
しかし、一般的に断熱板として用いられている発泡ウレタンは、加水分解して強度が低下するため、水分の多い浴室での使用には適していない。
また、発泡スチロールは、復元性が乏しいので、荷重のかかる床に用いるとへこんでしまう。特に、浴室では、畳などとは違って、床の表面材としてタイルなどの硬質の部材を用いるため、断熱板のへこみは、床面の変形として現れてしまう可能性がある。
【0005】
さらに、発泡ウレタンや発泡スチロールは、耐薬品性も劣るので、シャンプーなどの洗浄剤に犯されてしまう危険性がある。また、発泡ウレタンや、発泡スチロールは、一般に、揮発性有機化合物を発泡剤として用いているので、ホルムアルデヒドなどの有機化合物の蒸気(以下VOC(Volatile Organic Compound)という)が発生することがある。特に、温度が高くなる浴室では、VOCが発生しやすい上、浴室は密閉性もあるため、VOCが人の健康を害する心配もある。つまり、発泡樹脂を断熱板として用いた現行の暖房用パネルを、そのまま浴室用に用いることはできない。
【0006】
これに対し、発泡ポリプロピレンには、上記発泡ウレタンや発泡スチロールのような欠点がない。そこで、発泡ポリプロピレン製の断熱板を用いて浴室用暖房パネルを形成することが考えられる。ところが、ポリプロピレンは、通常の接着材ではほとんど接着できないため、その表面にタイルなどの表面材を接着することができない。また、接着材を用いて、下地材に断熱板を固定することもできない。
【0007】
つまり、暖房パネルの断熱板として、発泡ポリプロピレンを用いることは難しいと考えられていた。そのため、暖房効率が良く、耐久性に優れ、安全な浴室用暖房パネルは作られていなかった。
この発明の目的は、暖房効率が良く、耐久性に優れ、安全な浴室用暖房パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、その表面に設け、発泡ポリプロピレンと接着可能な第1接着層と、この第1接着層上に設けた第2接着層と、この第2接着層上に設けた表面材とからなり、上記第2接着層が、上記表面材および第1接着層に接着可能な弾性接着材で構成される点に特徴を有する。
なお、上記表面材には、陶磁器製のタイルだけでなく、樹脂など、様々な材質のものを含む。
【0009】
第2の発明は、第1の発明を前提とし、上記第1接着層は、ケトン、エステルなどの、脂環式炭化水素を主溶剤とする耐熱ゴム系接着材で構成されるとともに、上記第2接着層が、変性シリコーンおよびエポキシ樹脂を主成分とする弾性接着材で構成される点に特徴を有する。
第3の発明は、上記第1または第2の発明を前提とし、発泡ポリプロピレン製の断熱板表面に形成されるスキン層を予め除去した後に、上記第1接着層を設ける点に特徴を有する。
【0010】
第4の発明は、下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、この温水パイプを上記断熱板上に整列させるためのリテーナと、このリテーナに対応して断熱材に設けた貫通孔と、上記断熱板を挟んでリテーナとは反対面であって、上記貫通孔に対応させて設置するとともに、固定部材を備えてなり、これらリテーナと固定部材とを上記貫通孔を介して連結した点に特徴を有する。
【0011】
第5の発明は、下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、断熱板の厚み方向に貫通する複数の貫通孔を設け、この貫通孔に下地材に接着する接着材を充填して、この接着材を下地材に接着する点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
第1〜第5の発明によれば、暖房効率がよく、耐久性があって、VOCの発生のない安全な浴室用暖房パネルを実現できる。
特に第1〜第3の発明によれば、断熱材に表面材を簡単かつ確実に接着することができる。
また、第4、第5の発明によれば、浴室用暖房パネルを下地材に簡単、かつ、確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図5にこの発明の第1実施形態を示す。
この浴室用暖房パネルP1は、発泡ポリプロピレン製の断熱板1上にパイプユニットuを設け、さらにその上にこの発明の表面材としてのタイル2を設けている。
パイプユニットuは、供給側メインパイプ3と、戻り側メインパイプ4と、これらメインパイプ3、4に連通する複数の温水パイプ5とを備えている。
そして、供給側メインパイプ3は、その一端に流体供給口6を設け、この流体供給口6を、供給流路を介して図示しない温水発生器の吐出口に接続している。また、流体供給口6とは反対側の供給側メインパイプ3の他端を温水が漏れないように塞いでいる。
【0014】
それに対して、戻り側メインパイプ4では、その一端を漏れがないように塞ぎ、他端に流体排出口7を設けている。つまり、パイプユニットu全体でみれば、流体供給口6と流体排出口7とを対角線上に設けている。そして、この流体排出口7を、図示しない戻り流路を介して温水発生器の回収口に接続している。
供給側メインパイプ3から供給された温水は、温水パイプ5で熱交換し、戻り側メインパイプ4を介して温水発生器へ戻る。
上記のように供給側メインパイプ3から温水パイプ5を通って、流体排出口7から流出する流路過程で、温水パイプ5を設けた部分が、タイル2を暖めて、暖房範囲として機能する。
【0015】
このような暖房パネルにおいて熱交換率を良くするためには、所定の流量に対して、温水パイプ5の表面積を大きくした方が有利である。そのため、温水パイプ5の直径を細くして、その分本数を多くするようにしているが、このように細い温水パイプ5を所定の間隔で整列させて、表面の温度分布を小さくするために、リテーナ8,8を用いている。
なお、図示していないが、上記温水パイプ5に替えて、1本の温水パイプを直線部とUターン部とを交互に繰り返し、蛇行させて配置したものでもよい。
【0016】
このリテーナ8は、図2の正面図、図3の断面図に示すように構成されている。
図2のように、リテーナ8は第1、第2の桟9,10を平行にして、その間隔を複数の連結部材11で保っている。各桟9,10の、それぞれには、複数のピッチ保持溝AとBとをそれぞれ等間隔で形成している。そこで、上記各ピッチ保持溝AとBとは、それぞれ互いに対向することになる。
そして、これらのピッチ保持溝A,Bの断面形状は、図3に示すように、温水パイプ5の外径dに一致する円弧で形成されているが、開口幅sを直径dより小さくしている。そのため、温水パイプ5をこのピッチ保持溝A,Bに押し込むと、温水パイプ5を固定することができる。
【0017】
上記のように、リテーナ8,8を用いて、温水パイプ5を整列させたパイプユニットuを、断熱板1上に敷設しているが、図4、図5に示すように、この断熱板1には、上記供給側メインパイプ3および戻り側メインパイプ4をはめ込むための溝1a,1bと、各温水パイプ5をはめ込むための溝1cと、リテーナ8をはめ込むための溝1dとを形成している。そして、各溝1a,1b,1c,1dに、それぞれ、対応する部材をはめ込むことによって、上記パイプユニットuを断熱板1上に設置する。
【0018】
なお、この第1実施形態では、断熱板1に、温水パイプ5を、1本ずつはめ込むための溝1cを形成しているので、この溝1cによって温水パイプ5の間隔を保つことができる。このように上記溝1cによって温水パイプ5を整列させることができるので、上記リテーナ8がなくてもかまわない。ただし、上記のようなリテーナ8を用いて予め温水パイプ5を整列させたパイプユニットuを形成しておけば、断熱板1へのパイプの敷設がより容易になる。また、リテーナ8を用いれば、断熱板1には、個々の温水パイプ5がぴったりはまる溝1cを形成しなくてもよい。例えば、温水パイプ5を2,3本まとめて収納できる溝を設けてもかまわない。
【0019】
上記のように断熱板1上にパイプユニットuを設置したら、その表面に、断熱板1に接着可能な接着材を塗布して第1接着層12を形成し、さらに、その上に第2接着層13を形成する。
そして、第2接着層13に表面材としてのタイル2を接着して暖房パネルP1を完成する(図5参照)。この暖房パネルP1を浴室内の床や壁の下地材に固定して、浴室用暖房パネルとして用いる。
【0020】
なお、上記第1接着層12は、断熱板1に接着可能な接着材、すなわち発泡ポリプロピレンに接着可能な材料である。上記従来技術の欄でも説明したように、ポリプロピレンに接着可能な接着材の種類は少ないが、ケトン、エステルなどの、脂環式炭化水素を主溶剤とする耐熱ゴム系接着材を、第1接着層として用いることができる。
また、第1接着層12上に設ける第2接着層13は、第1接着層12と接着可能であるとともに、最表面に設けるタイル2と接着可能な弾性接着材を塗布して構成する。上記第2接着層13を構成する接着材として、例えば、変性シリコーンおよびエポキシ樹脂を主成分とする弾性接着材を用いることができる。
【0021】
上記第1接着層12は、ポリプロピレンの表面を僅かに溶かして、断熱板1の表面に接着可能な材料であるが、タイル2を接着することはほとんど不可能である。なお、第1接着層12の厚みは、第2接着層と比べて非常に薄い層である。
一方、第2接着層13を構成する接着材は、表面材であるタイル2に接着する接着材であるが、発泡ポリプロピレンには接着しない。ただし、第2接着層13は、第1接着層12に接着可能である。そこで、上記第1接着層12に接着可能であって、タイル2にも接着可能な弾性接着材からなる第2接着層13を、第1接着層12上に設け、第1、第2接着層12,13を介して、タイル2を発泡ポリプロピレン上に固定するようにしている。
【0022】
なお、第2接着層12が弾性接着材からなるので、樹脂製のパイプユニットuおよび断熱板1と、陶製などのタイル2との材質の違いによって、熱膨張率が異なったとしても、両者のずれを弾性接着材が吸収できるため、タイル2が剥がれてしまうようなことがない。
また、断熱板1を形成する発泡ポリプロピレンの板部材にスキン層が形成されていた場合には、表面をカットしたり、ヤスリ掛けしたりして、スキン層を取り除いた面を断熱板1の表面とすることが好ましい。スキン層がなければ、断熱板1の表面に凹凸ができ、その凹凸に第1接着層12が食い込んで、より強固に接着できるのである。
【0023】
上記のようにした第1実施形態の浴室用暖房パネルP1は、発泡ポリプロピレンを断熱板として使用しているので、断熱効果はもちろん、耐久性、耐薬品性も優れている。また、VOCの発生もなく、安全な浴室用暖房パネルである。
【0024】
図6〜図9に示す第2実施形態は、上記第1実施形態のリテーナ8に替えて、図6,7に示すリテーナ20を用いるとともに、図8、図9に示す固定部材16を用いた暖房パネルP2である。なお、第1実施形態と同様の構成要素には、同じ符号を用い、個々の要素についての説明は省略する。
この第2実施形態で用いるリテーナ20は、図6、図7に示すように、適当なピッチ保持溝AとA、BとBの間で、第1の桟9から第2の桟10へ掛け渡すように、固定部用連結部材14を設けている。この固定部用連結部材14は、図7に示すように連結部材11より厚みを厚くした部材で、中央に止め孔15を形成している。ここでは、固定部用連結部材14を隣り合う連結部材11と一体に形成しているが、それらを別々にしてもかまわない。そして、この固定部用連結部材14は、ピッチ保持溝間であれば、どこのピッチ保持溝間に設けてもよい。
なお、このリテーナ20は、上記固定部用連結部材14以外の構成は、図2,図3に示す第1実施形態のリテーナ8と同じである。
【0025】
また、上記固定部材16は、図9に示すように、円盤状の部材であり、中央に棒状の連結部材17を一体化している。そして、この固定部材16を、塩化ビニルなどの樹脂や、ステンレスなどの金属で形成している。
さらに、この第2実施形態では、断熱板1に、上記リテーナ20に設けた止め孔15に対応する位置に、貫通孔1eを形成している。
【0026】
そして、この第2実施形態においても、断熱板1上にパイプユニットuを設置し、表面に第1、第2接着層12,13を設けてから、表面材としてのタイル2を接着する点は、上記第1実施形態と同じである。ただし、この実施形態では、断熱板1の裏面側であって、上記貫通孔1eに対応する箇所に、上記固定部材16を配置している。そして、固定部材16に接続されている連結部材17を貫通孔1eに貫通させ、その先端をリテーナ20の止め孔15に挿入して固定している。連結部材17と、リテーナ20との固定方法は、どのようなものでもかまわないが、例えば、連結部材17の先端外径を止め孔15の内径より僅かに大きくして、圧入することによって、両者を固定するようにしても良いし、接着材などで固定するようにしてもよい。リテーナ20と連結部材17の材質を、接着し易いものにすれば、両者を、一般的な接着材で接着することもできる。また、リテーナ20の止め孔15から連結部材17の先端にビスをねじ込んで結合することもできる。
【0027】
上記連結部材17をリテーナ20に固定すると、リテーナ20と固定部材16とによって断熱板1が挟まれることになる。固定部材16として、オレフィン系樹脂以外の樹脂や金属を用いれば、これに接着可能な樹脂系の下地用接着材19を用いて下地材18に接着することができる。例えば、浴室の樹脂製の防水パン上に、上記暖房パネルP2を固定することも可能である。また、樹脂で一体的に形成された浴室の床面などに接着することも可能である。
つまり、下地材に、接着材で固定することが難しい発泡ポリプロピレン製の断熱板1を、上記固定部材16を介して下地材に接着することができるようになる。
【0028】
従って、第2実施形態の暖房パネルP2は、第1実施形態と同様に、熱エネルギーのロスが少なく、耐久性に優れ、安全であるとともに、下地材への固定が簡単かつ確実にできる。
なお、この第2実施形態では、固定部材16とリテーナ20とを、連結部材17を介して連結しているが、連結部材17を用いないで、例えば、断熱板1の貫通孔1eに、接着材を充填して、充填した接着材によってリテーナ20と固定部材16とを連結することもできる。
【0029】
図10、図11に示す第3実施形態の暖房パネルP3は、断熱板1を下地材へ固定する方法が、第2実施形態とは異なり、上記固定部材16を用いない。そのため、図6、図7に示すリテーナ20の固定部用連結部材14が不要である。そこで、第1実施形態と同じリテーナ8を用いている。そして、その他の構成は、第2実施形態と同様なので、第2実施例と同様の構成要素には、同じ符号を用い、個々の要素についての説明は省略し、上記他の実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0030】
図10では、部分的に、タイル2およびパイプユニットuを取り除いて表しているが、この図10に示すように、この第3実施形態では、断熱板1に、その厚み方向に貫通する複数の貫通孔1fを形成している。なお、断熱板1の表面には、上記第1、第2実施形態と同様に、各パイプ3,4,5や、リテーナ8をはめるための溝1a,1b,1c,1dを形成している。
なお、上記貫通孔1fの配置や大きさは、図10に示すものに限らず、適宜選択する設計事項である。
【0031】
そして、この第3実施形態においても、断熱板1上にパイプユニットuを設置し、表面に第1、第2接着層12,13を設けてから、表面材としてのタイル2を接着する点は、上記第1実施形態と同じである。ただし、この第3実施形態では、断熱板1の表面にパイプユニットuを設置する前に、次のようにして断熱板1を下地材18に固定するようにしている。
まず、断熱板1の貫通孔1fのそれぞれに、下地材18に接着可能な下地用接着材19を充填する(図11参照)。例えば、下地材がコンクリートの場合には、接着材としてモルタルを流しこみ、下地材が樹脂の場合には、その樹脂に接着する樹脂系の接着材を、下地材18の表面に接触するように流し込む。そして、上記下地用接着材19を、貫通孔1f内で固化させる。
それから、断熱板1上に上記パイプユニットuを設け、タイル2を接着して、暖房パネルP3を完成させる。
【0032】
図11に示すように、貫通孔1fに充填された下地用接着材19が下地材18の表面に接着して固化することによって、この暖房パネルP3が下地材18に固定される。すなわち、下地用接着材19が、下地材18に接着するとともに貫通孔内で固化すれば、下地材18面には下地用接着材19に一体化した円柱が形成される。この円柱が、断熱板1の貫通孔1fに挿入された状態となるので、暖房パネルP3は、下地材18の表面に沿って移動することがない。その結果、暖房パネルP3が下地材18に固定される。
この第3実施形態の暖房パネルP3は、熱エネルギーのロスが少なく、耐久性、耐薬品性に優れ、安全であるとともに、下地材に簡単に固定できる。
【0033】
なお、断熱板1は発泡ポリプロピレン製なので、これに接着する接着材は限られるが、下地用接着材19は、下地材18に接着すればよく、断熱板1に接着する必要はない。ただし、この下地用接着材19は、固化したときの体積変化が少ないものが好ましい。なぜなら、貫通孔1fに充填して、固化する際に体積の収縮があると、貫通孔1fと下地用接着材19との間に隙間ができてしまって、暖房パネルP3ががたついてしまうこともあるからである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態の暖房パネルの一部を切り欠いた平面図である。
【図2】第1実施形態のリテーナの平面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】図1のIV-IV線断面図である。
【図5】図1のV-V線断面図である。
【図6】第2実施形態のリテーナの平面図である。
【図7】図6のVII-VII線断面図である。
【図8】第2実施形態の暖房パネルの断面図である。
【図9】第2実施形態の固定部材の斜視図である。
【図10】第3実施形態の暖房パネルの一部を切り欠いた平面図である。
【図11】図10のXI-XI線断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 断熱板
2 タイル
5 温水パイプ
8 リテーナ
1e 貫通孔
16 固定部材
17 連結部材
18 下地材
19 下地用接着材
20 リテーナ
1f 貫通孔
14 固定部用連結部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴室を暖房するために用いる浴室用暖房パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、室内を暖房するために、温水を利用する暖房パネルがある。
この暖房パネルは、温水源から供給される温水を通過させる温水パイプを、パネル状に配置して床や壁の表面材の下に設け、上記温水パイプを通過する温水が床面や壁面を暖めたり、空気と熱交換して室内を暖めたりするというものである。
【0003】
ただし、床や壁の下地材に直接、上記温水パイプを敷設したのでは、下地材側に熱が逃げてしまって、暖房効率が悪くなるため、温水パイプと下地材との間に、断熱板を介在させることが好ましい。そこで、断熱板に温水パイプを敷設してパネル状にした暖房パネルが考えられ、上記断熱板として、軽くて加工が簡単な発泡ウレタンや、発泡スチロールを用いることが考えられていた(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2001-124353号公報
【特許文献2】特開2002-115989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような暖房パネルを浴室暖房に用いる場合、浴室の床や壁の下地材は、防水性のある材質で形成されなければならず、例えば、モルタルなどで形成されている。このような下地材の上に、直接温水パイプを敷設した場合には、特に熱が逃げ易いので、浴室用の暖房パネルには、特に、断熱板が必要となる。
しかし、一般的に断熱板として用いられている発泡ウレタンは、加水分解して強度が低下するため、水分の多い浴室での使用には適していない。
また、発泡スチロールは、復元性が乏しいので、荷重のかかる床に用いるとへこんでしまう。特に、浴室では、畳などとは違って、床の表面材としてタイルなどの硬質の部材を用いるため、断熱板のへこみは、床面の変形として現れてしまう可能性がある。
【0005】
さらに、発泡ウレタンや発泡スチロールは、耐薬品性も劣るので、シャンプーなどの洗浄剤に犯されてしまう危険性がある。また、発泡ウレタンや、発泡スチロールは、一般に、揮発性有機化合物を発泡剤として用いているので、ホルムアルデヒドなどの有機化合物の蒸気(以下VOC(Volatile Organic Compound)という)が発生することがある。特に、温度が高くなる浴室では、VOCが発生しやすい上、浴室は密閉性もあるため、VOCが人の健康を害する心配もある。つまり、発泡樹脂を断熱板として用いた現行の暖房用パネルを、そのまま浴室用に用いることはできない。
【0006】
これに対し、発泡ポリプロピレンには、上記発泡ウレタンや発泡スチロールのような欠点がない。そこで、発泡ポリプロピレン製の断熱板を用いて浴室用暖房パネルを形成することが考えられる。ところが、ポリプロピレンは、通常の接着材ではほとんど接着できないため、その表面にタイルなどの表面材を接着することができない。また、接着材を用いて、下地材に断熱板を固定することもできない。
【0007】
つまり、暖房パネルの断熱板として、発泡ポリプロピレンを用いることは難しいと考えられていた。そのため、暖房効率が良く、耐久性に優れ、安全な浴室用暖房パネルは作られていなかった。
この発明の目的は、暖房効率が良く、耐久性に優れ、安全な浴室用暖房パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、その表面に設け、発泡ポリプロピレンと接着可能な第1接着層と、この第1接着層上に設けた第2接着層と、この第2接着層上に設けた表面材とからなり、上記第2接着層が、上記表面材および第1接着層に接着可能な弾性接着材で構成される点に特徴を有する。
なお、上記表面材には、陶磁器製のタイルだけでなく、樹脂など、様々な材質のものを含む。
【0009】
第2の発明は、第1の発明を前提とし、上記第1接着層は、ケトン、エステルなどの、脂環式炭化水素を主溶剤とする耐熱ゴム系接着材で構成されるとともに、上記第2接着層が、変性シリコーンおよびエポキシ樹脂を主成分とする弾性接着材で構成される点に特徴を有する。
第3の発明は、上記第1または第2の発明を前提とし、発泡ポリプロピレン製の断熱板表面に形成されるスキン層を予め除去した後に、上記第1接着層を設ける点に特徴を有する。
【0010】
第4の発明は、下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、この温水パイプを上記断熱板上に整列させるためのリテーナと、このリテーナに対応して断熱材に設けた貫通孔と、上記断熱板を挟んでリテーナとは反対面であって、上記貫通孔に対応させて設置するとともに、固定部材を備えてなり、これらリテーナと固定部材とを上記貫通孔を介して連結した点に特徴を有する。
【0011】
第5の発明は、下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、断熱板の厚み方向に貫通する複数の貫通孔を設け、この貫通孔に下地材に接着する接着材を充填して、この接着材を下地材に接着する点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
第1〜第5の発明によれば、暖房効率がよく、耐久性があって、VOCの発生のない安全な浴室用暖房パネルを実現できる。
特に第1〜第3の発明によれば、断熱材に表面材を簡単かつ確実に接着することができる。
また、第4、第5の発明によれば、浴室用暖房パネルを下地材に簡単、かつ、確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図5にこの発明の第1実施形態を示す。
この浴室用暖房パネルP1は、発泡ポリプロピレン製の断熱板1上にパイプユニットuを設け、さらにその上にこの発明の表面材としてのタイル2を設けている。
パイプユニットuは、供給側メインパイプ3と、戻り側メインパイプ4と、これらメインパイプ3、4に連通する複数の温水パイプ5とを備えている。
そして、供給側メインパイプ3は、その一端に流体供給口6を設け、この流体供給口6を、供給流路を介して図示しない温水発生器の吐出口に接続している。また、流体供給口6とは反対側の供給側メインパイプ3の他端を温水が漏れないように塞いでいる。
【0014】
それに対して、戻り側メインパイプ4では、その一端を漏れがないように塞ぎ、他端に流体排出口7を設けている。つまり、パイプユニットu全体でみれば、流体供給口6と流体排出口7とを対角線上に設けている。そして、この流体排出口7を、図示しない戻り流路を介して温水発生器の回収口に接続している。
供給側メインパイプ3から供給された温水は、温水パイプ5で熱交換し、戻り側メインパイプ4を介して温水発生器へ戻る。
上記のように供給側メインパイプ3から温水パイプ5を通って、流体排出口7から流出する流路過程で、温水パイプ5を設けた部分が、タイル2を暖めて、暖房範囲として機能する。
【0015】
このような暖房パネルにおいて熱交換率を良くするためには、所定の流量に対して、温水パイプ5の表面積を大きくした方が有利である。そのため、温水パイプ5の直径を細くして、その分本数を多くするようにしているが、このように細い温水パイプ5を所定の間隔で整列させて、表面の温度分布を小さくするために、リテーナ8,8を用いている。
なお、図示していないが、上記温水パイプ5に替えて、1本の温水パイプを直線部とUターン部とを交互に繰り返し、蛇行させて配置したものでもよい。
【0016】
このリテーナ8は、図2の正面図、図3の断面図に示すように構成されている。
図2のように、リテーナ8は第1、第2の桟9,10を平行にして、その間隔を複数の連結部材11で保っている。各桟9,10の、それぞれには、複数のピッチ保持溝AとBとをそれぞれ等間隔で形成している。そこで、上記各ピッチ保持溝AとBとは、それぞれ互いに対向することになる。
そして、これらのピッチ保持溝A,Bの断面形状は、図3に示すように、温水パイプ5の外径dに一致する円弧で形成されているが、開口幅sを直径dより小さくしている。そのため、温水パイプ5をこのピッチ保持溝A,Bに押し込むと、温水パイプ5を固定することができる。
【0017】
上記のように、リテーナ8,8を用いて、温水パイプ5を整列させたパイプユニットuを、断熱板1上に敷設しているが、図4、図5に示すように、この断熱板1には、上記供給側メインパイプ3および戻り側メインパイプ4をはめ込むための溝1a,1bと、各温水パイプ5をはめ込むための溝1cと、リテーナ8をはめ込むための溝1dとを形成している。そして、各溝1a,1b,1c,1dに、それぞれ、対応する部材をはめ込むことによって、上記パイプユニットuを断熱板1上に設置する。
【0018】
なお、この第1実施形態では、断熱板1に、温水パイプ5を、1本ずつはめ込むための溝1cを形成しているので、この溝1cによって温水パイプ5の間隔を保つことができる。このように上記溝1cによって温水パイプ5を整列させることができるので、上記リテーナ8がなくてもかまわない。ただし、上記のようなリテーナ8を用いて予め温水パイプ5を整列させたパイプユニットuを形成しておけば、断熱板1へのパイプの敷設がより容易になる。また、リテーナ8を用いれば、断熱板1には、個々の温水パイプ5がぴったりはまる溝1cを形成しなくてもよい。例えば、温水パイプ5を2,3本まとめて収納できる溝を設けてもかまわない。
【0019】
上記のように断熱板1上にパイプユニットuを設置したら、その表面に、断熱板1に接着可能な接着材を塗布して第1接着層12を形成し、さらに、その上に第2接着層13を形成する。
そして、第2接着層13に表面材としてのタイル2を接着して暖房パネルP1を完成する(図5参照)。この暖房パネルP1を浴室内の床や壁の下地材に固定して、浴室用暖房パネルとして用いる。
【0020】
なお、上記第1接着層12は、断熱板1に接着可能な接着材、すなわち発泡ポリプロピレンに接着可能な材料である。上記従来技術の欄でも説明したように、ポリプロピレンに接着可能な接着材の種類は少ないが、ケトン、エステルなどの、脂環式炭化水素を主溶剤とする耐熱ゴム系接着材を、第1接着層として用いることができる。
また、第1接着層12上に設ける第2接着層13は、第1接着層12と接着可能であるとともに、最表面に設けるタイル2と接着可能な弾性接着材を塗布して構成する。上記第2接着層13を構成する接着材として、例えば、変性シリコーンおよびエポキシ樹脂を主成分とする弾性接着材を用いることができる。
【0021】
上記第1接着層12は、ポリプロピレンの表面を僅かに溶かして、断熱板1の表面に接着可能な材料であるが、タイル2を接着することはほとんど不可能である。なお、第1接着層12の厚みは、第2接着層と比べて非常に薄い層である。
一方、第2接着層13を構成する接着材は、表面材であるタイル2に接着する接着材であるが、発泡ポリプロピレンには接着しない。ただし、第2接着層13は、第1接着層12に接着可能である。そこで、上記第1接着層12に接着可能であって、タイル2にも接着可能な弾性接着材からなる第2接着層13を、第1接着層12上に設け、第1、第2接着層12,13を介して、タイル2を発泡ポリプロピレン上に固定するようにしている。
【0022】
なお、第2接着層12が弾性接着材からなるので、樹脂製のパイプユニットuおよび断熱板1と、陶製などのタイル2との材質の違いによって、熱膨張率が異なったとしても、両者のずれを弾性接着材が吸収できるため、タイル2が剥がれてしまうようなことがない。
また、断熱板1を形成する発泡ポリプロピレンの板部材にスキン層が形成されていた場合には、表面をカットしたり、ヤスリ掛けしたりして、スキン層を取り除いた面を断熱板1の表面とすることが好ましい。スキン層がなければ、断熱板1の表面に凹凸ができ、その凹凸に第1接着層12が食い込んで、より強固に接着できるのである。
【0023】
上記のようにした第1実施形態の浴室用暖房パネルP1は、発泡ポリプロピレンを断熱板として使用しているので、断熱効果はもちろん、耐久性、耐薬品性も優れている。また、VOCの発生もなく、安全な浴室用暖房パネルである。
【0024】
図6〜図9に示す第2実施形態は、上記第1実施形態のリテーナ8に替えて、図6,7に示すリテーナ20を用いるとともに、図8、図9に示す固定部材16を用いた暖房パネルP2である。なお、第1実施形態と同様の構成要素には、同じ符号を用い、個々の要素についての説明は省略する。
この第2実施形態で用いるリテーナ20は、図6、図7に示すように、適当なピッチ保持溝AとA、BとBの間で、第1の桟9から第2の桟10へ掛け渡すように、固定部用連結部材14を設けている。この固定部用連結部材14は、図7に示すように連結部材11より厚みを厚くした部材で、中央に止め孔15を形成している。ここでは、固定部用連結部材14を隣り合う連結部材11と一体に形成しているが、それらを別々にしてもかまわない。そして、この固定部用連結部材14は、ピッチ保持溝間であれば、どこのピッチ保持溝間に設けてもよい。
なお、このリテーナ20は、上記固定部用連結部材14以外の構成は、図2,図3に示す第1実施形態のリテーナ8と同じである。
【0025】
また、上記固定部材16は、図9に示すように、円盤状の部材であり、中央に棒状の連結部材17を一体化している。そして、この固定部材16を、塩化ビニルなどの樹脂や、ステンレスなどの金属で形成している。
さらに、この第2実施形態では、断熱板1に、上記リテーナ20に設けた止め孔15に対応する位置に、貫通孔1eを形成している。
【0026】
そして、この第2実施形態においても、断熱板1上にパイプユニットuを設置し、表面に第1、第2接着層12,13を設けてから、表面材としてのタイル2を接着する点は、上記第1実施形態と同じである。ただし、この実施形態では、断熱板1の裏面側であって、上記貫通孔1eに対応する箇所に、上記固定部材16を配置している。そして、固定部材16に接続されている連結部材17を貫通孔1eに貫通させ、その先端をリテーナ20の止め孔15に挿入して固定している。連結部材17と、リテーナ20との固定方法は、どのようなものでもかまわないが、例えば、連結部材17の先端外径を止め孔15の内径より僅かに大きくして、圧入することによって、両者を固定するようにしても良いし、接着材などで固定するようにしてもよい。リテーナ20と連結部材17の材質を、接着し易いものにすれば、両者を、一般的な接着材で接着することもできる。また、リテーナ20の止め孔15から連結部材17の先端にビスをねじ込んで結合することもできる。
【0027】
上記連結部材17をリテーナ20に固定すると、リテーナ20と固定部材16とによって断熱板1が挟まれることになる。固定部材16として、オレフィン系樹脂以外の樹脂や金属を用いれば、これに接着可能な樹脂系の下地用接着材19を用いて下地材18に接着することができる。例えば、浴室の樹脂製の防水パン上に、上記暖房パネルP2を固定することも可能である。また、樹脂で一体的に形成された浴室の床面などに接着することも可能である。
つまり、下地材に、接着材で固定することが難しい発泡ポリプロピレン製の断熱板1を、上記固定部材16を介して下地材に接着することができるようになる。
【0028】
従って、第2実施形態の暖房パネルP2は、第1実施形態と同様に、熱エネルギーのロスが少なく、耐久性に優れ、安全であるとともに、下地材への固定が簡単かつ確実にできる。
なお、この第2実施形態では、固定部材16とリテーナ20とを、連結部材17を介して連結しているが、連結部材17を用いないで、例えば、断熱板1の貫通孔1eに、接着材を充填して、充填した接着材によってリテーナ20と固定部材16とを連結することもできる。
【0029】
図10、図11に示す第3実施形態の暖房パネルP3は、断熱板1を下地材へ固定する方法が、第2実施形態とは異なり、上記固定部材16を用いない。そのため、図6、図7に示すリテーナ20の固定部用連結部材14が不要である。そこで、第1実施形態と同じリテーナ8を用いている。そして、その他の構成は、第2実施形態と同様なので、第2実施例と同様の構成要素には、同じ符号を用い、個々の要素についての説明は省略し、上記他の実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0030】
図10では、部分的に、タイル2およびパイプユニットuを取り除いて表しているが、この図10に示すように、この第3実施形態では、断熱板1に、その厚み方向に貫通する複数の貫通孔1fを形成している。なお、断熱板1の表面には、上記第1、第2実施形態と同様に、各パイプ3,4,5や、リテーナ8をはめるための溝1a,1b,1c,1dを形成している。
なお、上記貫通孔1fの配置や大きさは、図10に示すものに限らず、適宜選択する設計事項である。
【0031】
そして、この第3実施形態においても、断熱板1上にパイプユニットuを設置し、表面に第1、第2接着層12,13を設けてから、表面材としてのタイル2を接着する点は、上記第1実施形態と同じである。ただし、この第3実施形態では、断熱板1の表面にパイプユニットuを設置する前に、次のようにして断熱板1を下地材18に固定するようにしている。
まず、断熱板1の貫通孔1fのそれぞれに、下地材18に接着可能な下地用接着材19を充填する(図11参照)。例えば、下地材がコンクリートの場合には、接着材としてモルタルを流しこみ、下地材が樹脂の場合には、その樹脂に接着する樹脂系の接着材を、下地材18の表面に接触するように流し込む。そして、上記下地用接着材19を、貫通孔1f内で固化させる。
それから、断熱板1上に上記パイプユニットuを設け、タイル2を接着して、暖房パネルP3を完成させる。
【0032】
図11に示すように、貫通孔1fに充填された下地用接着材19が下地材18の表面に接着して固化することによって、この暖房パネルP3が下地材18に固定される。すなわち、下地用接着材19が、下地材18に接着するとともに貫通孔内で固化すれば、下地材18面には下地用接着材19に一体化した円柱が形成される。この円柱が、断熱板1の貫通孔1fに挿入された状態となるので、暖房パネルP3は、下地材18の表面に沿って移動することがない。その結果、暖房パネルP3が下地材18に固定される。
この第3実施形態の暖房パネルP3は、熱エネルギーのロスが少なく、耐久性、耐薬品性に優れ、安全であるとともに、下地材に簡単に固定できる。
【0033】
なお、断熱板1は発泡ポリプロピレン製なので、これに接着する接着材は限られるが、下地用接着材19は、下地材18に接着すればよく、断熱板1に接着する必要はない。ただし、この下地用接着材19は、固化したときの体積変化が少ないものが好ましい。なぜなら、貫通孔1fに充填して、固化する際に体積の収縮があると、貫通孔1fと下地用接着材19との間に隙間ができてしまって、暖房パネルP3ががたついてしまうこともあるからである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態の暖房パネルの一部を切り欠いた平面図である。
【図2】第1実施形態のリテーナの平面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】図1のIV-IV線断面図である。
【図5】図1のV-V線断面図である。
【図6】第2実施形態のリテーナの平面図である。
【図7】図6のVII-VII線断面図である。
【図8】第2実施形態の暖房パネルの断面図である。
【図9】第2実施形態の固定部材の斜視図である。
【図10】第3実施形態の暖房パネルの一部を切り欠いた平面図である。
【図11】図10のXI-XI線断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 断熱板
2 タイル
5 温水パイプ
8 リテーナ
1e 貫通孔
16 固定部材
17 連結部材
18 下地材
19 下地用接着材
20 リテーナ
1f 貫通孔
14 固定部用連結部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、その表面に設け、発泡ポリプロピレンと接着可能な第1接着層と、この第1接着層上に設けた第2接着層と、この第2接着層上に設けた表面材とからなり、上記第2接着層が、上記表面材および第1接着層に接着可能な弾性接着材で構成される浴室用暖房パネル。
【請求項2】
上記第1接着層は、ケトン、エステルなどの、脂環式炭化水素を主溶剤とする耐熱ゴム系接着材で構成されるとともに、上記第2接着層が、変性シリコーンおよびエポキシ樹脂を主成分とする弾性接着材で構成される請求項1に記載の浴室用暖房パネル。
【請求項3】
発泡ポリプロピレン製の断熱板表面に形成されるスキン層を予め除去した後に、上記第1接着層を設ける請求項1または2に記載の浴室用暖房パネル。
【請求項4】
下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、この温水パイプを上記断熱板上に整列させるためのリテーナと、このリテーナに対応して断熱材に設けた貫通孔と、上記断熱板を挟んでリテーナとは反対面であって、上記貫通孔に対応させて設置するとともに、固定部材を備えてなり、これらリテーナと固定部材とを上記貫通孔を介して連結した浴室用暖房パネル。
【請求項5】
下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、断熱板の厚み方向に貫通する複数の貫通孔を設け、この貫通孔に下地材に接着する接着材を充填して、この接着材を下地材に接着する浴室用暖房パネル。
【請求項1】
下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、その表面に設け、発泡ポリプロピレンと接着可能な第1接着層と、この第1接着層上に設けた第2接着層と、この第2接着層上に設けた表面材とからなり、上記第2接着層が、上記表面材および第1接着層に接着可能な弾性接着材で構成される浴室用暖房パネル。
【請求項2】
上記第1接着層は、ケトン、エステルなどの、脂環式炭化水素を主溶剤とする耐熱ゴム系接着材で構成されるとともに、上記第2接着層が、変性シリコーンおよびエポキシ樹脂を主成分とする弾性接着材で構成される請求項1に記載の浴室用暖房パネル。
【請求項3】
発泡ポリプロピレン製の断熱板表面に形成されるスキン層を予め除去した後に、上記第1接着層を設ける請求項1または2に記載の浴室用暖房パネル。
【請求項4】
下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、この温水パイプを上記断熱板上に整列させるためのリテーナと、このリテーナに対応して断熱材に設けた貫通孔と、上記断熱板を挟んでリテーナとは反対面であって、上記貫通孔に対応させて設置するとともに、固定部材を備えてなり、これらリテーナと固定部材とを上記貫通孔を介して連結した浴室用暖房パネル。
【請求項5】
下地材に固定する発泡ポリプロピレン製の断熱板と、この断熱板上に敷設した温水パイプと、断熱板の厚み方向に貫通する複数の貫通孔を設け、この貫通孔に下地材に接着する接着材を充填して、この接着材を下地材に接着する浴室用暖房パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−163068(P2007−163068A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361686(P2005−361686)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]