説明

浴槽用汚れ物質除去材および浴槽の汚れ物質除去方法

【課題】浄化装置を設けることなく浴槽内の湯面に浮かぶ湯垢等の汚れ物質を容易に除去することを課題とする。
【解決手段】浴槽12内の湯14の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも有し、浴槽12内の湯14に入れると湯面15に浮かんで湯14の熱により融解して湯面15の汚れ物質16を付着させ、湯14の温度が低下すると固化して付着した汚れ物質16とともに湯面15から除去可能とされた浴槽用汚れ物質除去材20を用い、当該汚れ物質除去材20を浴槽12内の湯14に入れて湯面15に浮かべて湯14の熱により融解させて湯面15の汚れ物質16を汚れ物質除去材20に付着させ、湯14の温度が低下して汚れ物質除去材20が固化したときに付着した汚れ物質16とともに汚れ物質除去材20を湯面15から除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内の湯面に浮かぶ汚れ物質を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、湯面に浮遊する湯垢等を浴湯の一部とともに湯面に沿って中心部に吸引する水平刳貫部を有する発泡性フロート体と、前記刳貫部の端部と直角に連通してフロート体内部に吸引される浴湯混合の湯垢等を浴槽底部近傍に誘導するフレキシブルチューブ部と、該チューブ部末端部に連結してチューブ部内の浴湯混合の湯垢等を吸引する比較的口径小なる吸引口を有するとともに底部近傍の浴湯を吸引する比較的口径大なる吸引口を有するT型ソケット部と、該ソケット部の端部の排出口に連結されて浴湯混合の湯垢等を浴槽外部に排出する吸引ホース部とを設けた公衆浴槽の浴湯浄化装置が記載されている。
【特許文献1】登録実用新案第3021845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、湯面に浮遊する湯垢等を除去するために浄化装置が必要である。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、浄化装置を設けることなく浴槽内の湯面に浮かぶ湯垢等の汚れ物質を容易に除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の浴槽用汚れ物質除去材は、浴槽内の湯の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも有し、浴槽内の湯に入れると湯面に浮かんで前記湯の熱により融解して湯面の汚れ物質を付着させ、前記湯の温度が低下すると固化して付着した汚れ物質とともに湯面から除去可能とされたことを特徴とする。
また、本発明の浴槽の汚れ物質除去方法は、浴槽内の湯の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも有して湯面に浮かぶ素材を用い、当該素材を浴槽内の湯に入れて湯面に浮かべて前記湯の熱により融解させて湯面の汚れ物質を前記素材に付着させ、前記湯の温度が低下して前記素材が固化したときに付着した汚れ物質とともに前記素材を湯面から除去することを特徴とする。
【0006】
すなわち、本汚れ物質除去材は、浴槽内の湯に入れられると、湯面に浮かんで湯の熱により融解して湯面の汚れ物質を付着させる。そして、湯の温度が低下すると、本汚れ物質除去材は固化し、付着した汚れ物質とともに湯面から除去することが可能である。
【0007】
以上により、汚れ物質除去用の浄化装置を設ける必要がなくなるので、浴槽内の湯面に浮かぶ湯垢等の汚れ物質を容易に除去することが可能になる。また、汚れ物質除去材が固化するときに凝固熱を放出して浴槽内の湯に伝えるので、浴槽内の湯をある程度保温する効果も得られる。
【0008】
本汚れ物質除去材は、湯の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を含むフィルム状ないしシート状の素材、湯の熱により融解して湯面に拡がる固形材、等が考えられる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、汚れ物質除去用の浄化装置を設けることなく、浴槽内の湯面に浮かぶ汚れ物質を容易に除去することが可能になる。
請求項2、請求項3に係る発明では、汚れ物質除去材を浴槽内の湯面上へ容易に拡げることができるので、より確実に湯面の汚れ物質を除去することが可能になる。
請求項4に係る発明では、汚れ物質除去材を浴槽内の湯面上へ拡げる必要が無いので、より簡単な操作で汚れ物質を除去することが可能になる。
請求項5に係る発明では、さらに確実に汚れ物質が除去されたり、湯面での細菌の増殖が抑えられたり、湯からカルキが除去されたりするので、有用性を向上させることができる。
【0010】
請求項6に係る発明では、汚れ物質除去用の浄化装置を設けることなく、浴槽内の湯面に浮かぶ汚れ物質を容易に除去することが可能な汚れ物質除去方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)浴槽用汚れ物質除去材を用いた汚れ物質除去方法の説明:
(2)浴槽用汚れ物質除去材および汚れ物質除去方法の作用、効果:
(3)具体例:
(4)まとめ:
【0012】
(1)浴槽用汚れ物質除去材を用いた汚れ物質除去方法の説明:
図1は、本発明の一実施形態に係る浴槽用汚れ物質除去材を用いた汚れ物質除去方法を模式的に示している。本方法では、以下の工程1〜3に従って浴槽内の湯面から湯垢等の汚れ物質を除去する。
(工程1)浴槽12内の湯14の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも有して湯面15に浮かぶ素材(汚れ物質除去材20)を用い、当該素材20を浴槽12内の湯14に入れて湯面15に浮かべる。
(工程2)汚れ物質除去材20を湯14の熱により融解させて湯面15の汚れ物質16を汚れ物質除去材20に付着させる。
(工程3)湯14の温度が低下して汚れ物質除去材20が固化したとき、付着した汚れ物質16とともに汚れ物質除去材20を湯面15から除去する。
【0013】
汚れ物質除去材20は、浴槽内の湯の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも有し、このような有機化合物のみから構成されてもよいし、このような有機化合物以外の素材を含む素材から構成されてもよい。浴槽内の湯の温度は、浴槽外の温度から給湯温度または追い炊き温度まで変化可能であり、0〜80℃程度まであり得るが、人が湯船に入る観点からは35〜45℃が好ましく、37〜44℃がより好ましく、39〜43℃がさらに好ましい。従って、有機化合物を融解させるときの湯温T1℃、当該有機化合物を固化させるときの湯温T2℃(T2<T1)は、0℃≦T2<T1≦80℃とされ、35℃≦T2<T1≦45℃が好ましく、37℃≦T2<T1≦44℃がより好ましく、39℃≦T2<T1≦43℃がさらに好ましい。
上記有機化合物には、T2℃より高くT1℃より低い融点の化合物を用いることができる。上記有機化合物以外の素材を上記有機化合物に配合する場合には、前記有機化合物以外の素材を配合した有機化合物がT2℃より高くT1℃より低い融点となるようにすればよい。これにより、前記有機化合物または前記有機化合物を含む素材(以下、単に前記有機化合物を有する素材とも記載)は、T1℃で融解し、T2℃で固化するため、湯の熱で融解可能であり、かつ、固化可能である素材といえる。なお、湯温の自然低下により有機化合物を一旦融解させて固化させる観点からはT1−T2≦10℃が好ましく、T1−T2≦7℃がより好ましく、T1−T2≦4℃がさらに好ましい。人が湯船に入らない温度条件でも本発明を適用可能であるため、10℃<T2−T1≦80℃とすることも可能である。
前記有機化合物を有する素材の融点Mpは、浴槽内の湯が変化しうる温度の範囲内とされるが、T1℃で速やかに融解しT2℃で速やかに固化する観点からはT2+1℃以上T1−1℃以下が好ましく、T2+2℃以上T1−2℃以下がさらに好ましい。
【0014】
また、汚れ物質除去材20は、湯面に浮かぶようにされている。湯面に浮かぶ素材には、T2〜T1℃における湯(水)の比重よりも小さい比重の素材や、表面張力により湯面(水面)に浮かぶ素材を用いることができる。従って、前記有機化合物に、T2〜T1℃における湯(水)の比重よりも小さい比重の化合物や、表面張力により湯面(水面)に浮かぶ化合物を用いると、好適である。
【0015】
上記有機化合物は、ポリオレフィンやパラフィン等が考えられ、熱可塑性樹脂が好ましい。当該熱可塑性樹脂には、上述した条件を満たす範囲で、例えば、オレフィン炭化水素(ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリブテン、等),パラフィン,ポリスチレン,ポリメチルメタアクリレート,塩化ビニル,ポリアミド(ナイロン),ポリカーボネート,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレングリコール(PEG),ポリビニルアルコール(PVA),オレフィン系熱可塑性エラストマー,スチレン系熱可塑性エラストマー、これらの樹脂の原料に不飽和酸等の不飽和単量体(アクリル酸,メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、メチル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート等の不飽和カルボン酸のアルキルエステル誘導体、マレイン酸,無水マレイン酸,フマル酸等の不飽和ジカルボン酸または酸無水物、アクリルアミド,マレイン酸のモノまたはジエチルエステル等の不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸の誘導体、等)を添加して合成して得られる樹脂、これらの混合物、等を用いることができる。特に、オレフィン炭化水素(ポリオレフィン)は、融点が浴槽中の湯の温度範囲内となりやすく、比重が湯よりも小さい点で好ましい。
【0016】
なお、熱可塑性樹脂の原料に酸(特に有機酸)を添加して合成して得られる酸変性樹脂も、通常、熱可塑性であり、熱可塑性であれば熱可塑性樹脂となる。添加する酸としては、熱可塑性樹脂に親水基を付与するマレイン酸等のカルボキシル基を有する有機酸がよく用いられる。熱可塑性樹脂をマレイン酸で変性した酸変性樹脂を製造するには、付加重合前の熱可塑性樹脂の原料にマレイン酸を添加して付加重合を行えばよい。すると、付加重合後の高分子には親水基が付加される。熱可塑性樹脂の少なくとも一部に酸変性樹脂を用いることにより、汚れ物質除去材に親水性の担体を用いる場合に当該担体と熱可塑性樹脂とのなじみが良くなる。
【0017】
湯垢等は、通常、疎水性であるため、汚れ物質除去材20に疎水性の素材を用いると好適である。特に、ポリオレフィンは、疎水性である点で好ましい。
【0018】
熱可塑性樹脂の分子量については、湯温に近い融点にさせる観点からは200〜1000000が好ましく、250〜20000がさらに好ましい。熱可塑性樹脂に前記範囲内の分子量のポリオレフィンプラスチックを用いると、融点が浴槽中の湯の温度範囲内となりやすい点で好ましい。前記ポリオレフィンプラスチックは、オレフィンまたはオレフィン類を本質的に唯一の単量体または単量体類として製造される重合体を主成分とし、オレフィン炭化水素のみから構成されても、オレフィン炭化水素と等重量未満の副成分が含まれていてもよい。
【0019】
n−パラフィンの場合、例えば、イコサン(C2042、融点36.8℃、分子量282、通称エイコサン)、ヘンイコサン(C2144、融点40.5℃、分子量296、通称ヘンエイコサン)、ドコサン(C2246、融点44.4℃、分子量310)、等を用いることができる。ここで、いずれの炭化水素の融点も直鎖状のパラフィン炭化水素の融点を記載している。また、これらの炭化水素が主成分となるように精製したパラフィンを用いてもよい。
オレフィン炭化水素の場合も、側鎖の数が多くなったり分子量が大きくなったりすると融点が高くなるため、このような傾向を考慮して所望の融点となる分子構造のオレフィン炭化水素を選択して用いることができる。このような炭化水素には、オレフィンワックスが用いられる。
PEGの場合も、分子量が大きくなったりすると融点が高くなるため、このような傾向を考慮して所望の融点となる分子構造のPEGを選択して用いることができる。
【0020】
汚れ物質除去材に上述した溶融可能かつ固化可能な有機化合物以外の素材を用いる場合、当該素材は、固体でも液体でもよく、充填材、相溶化剤、滑剤、繊維状素材、核剤、顔料、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、これらの組み合わせ、等が考えられる。前記有機化合物以外の素材と前記有機化合物との配合割合は、前記有機化合物以外の素材の性質を発現させながら前記有機化合物の性質を十分に残す観点から、前記有機化合物50〜99.9重量%に対して前記有機化合物以外の素材を0.1〜50重量%配合するのが好ましく、前記有機化合物70〜99.5重量%に対して前記有機化合物以外の素材を0.5〜70重量%配合するのがさらに好ましい。
【0021】
本汚れ物質除去材の形状には、図1〜図3に示すようなフィルム状ないしシート状、図4に示すような固形状、等が考えられる。ここで、フィルムは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さな薄い平らな製品で、通常0.25mm以下の厚みとされ、厚みの下限は特に無く例えば0.01mm以上とされ、通常ロールの形で供給される。また、シートは、薄くて一般にその厚さが長さと幅の割には小さい平らな製品で、フィルムの概念を含み、厚みの範囲は特に無く、例えば0.01〜10mm、0.25〜5mmとされる。従って、フィルム状ないしシート状とは、薄くて厚さが長さと幅の割には小さい形状を指し、平らに引き出されることを前提としたロール状等の形状を含むものとする。シート状ないしフィルム状も、同じである。
図1に示す汚れ物質除去材20は、上述した融解可能かつ固化可能な有機化合物のみ、または、当該有機化合物と他の素材と、からなる素材がシート状(あるいはフィルム状)に形成されている。前記素材をシート状ないしフィルム状に形成するには、前記素材を加熱して軟化させて押出成形、プレス成形、射出成形、注型成形、等により成形して固化させたり、前記素材を加熱して溶融させて刷毛等で薄く拡げて固化させたりすればよく、適宜、所定の長さでカットしたり、ロール状に巻いたりすればよい。汚れ物質除去材をシート状ないしフィルム状にすることにより、汚れ物質除去材を浴槽内の湯面上へ容易に拡げることができる。その結果、汚れ物質除去材を湯面の汚れ物質に接触させやすくなるので、より確実に湯面の汚れ物質を付着させて除去することが可能になる。また、汚れ物質除去材をシート状ないしフィルム状にすることにより、外気から浴槽内の湯が断熱されるので、浴槽内の湯をある程度保温させ、エネルギー消費を低減させる効果も得られる。
【0022】
図2の上段に示す汚れ物質除去材21は、上述した融解固化可能な有機化合物を少なくとも含む吸着層21bと、浴槽内の湯の熱で融解しない非融解層21aと、が少なくとも積層されてフィルム状ないしシート状に形成されている。非融解層21aは、汚れ物質除去材に強度を付与する素材であり、T1℃よりも高い融点を有する熱可塑性樹脂、硬化した熱硬化性樹脂、金属、等を用いることができる。前記熱可塑性樹脂には、T1℃よりも高い融点を有する範囲で上述した各種の熱可塑性樹脂を用いることができる。前記熱硬化性樹脂には、例えば、不飽和ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,ウレタン樹脂,シリコーン樹脂,フェノール樹脂,ユリア樹脂,メラミン樹脂、これらの混合物、等を用いることができる。複数の層からなるフィルム状ないしシート状の汚れ物質除去材を形成するには、各層を形成するための軟化状態の各素材(加熱軟化した熱可塑性樹脂や硬化前の液状の熱硬化性樹脂など)を用いた多層成形により各素材を積層したり、被塗布物に刷毛等で基材から順次、各素材を塗布して積層したりする。多層成形は、押出成形、プレス成形、射出成形、注型成形、等により行うことができる。
吸着層21bは、湯面の汚れ物質を付着させる観点から、湯面に対向する下面にあるのが好ましい。そして、非融解層21aを上に向け吸着層21bを下に向けて湯面上に載置すると、湯面の汚れ物質16を吸着層21bに付着させて汚れ物質除去材21とともに除去することができる。
各層21a,bの厚みは、汚れ物質除去材に付与する汚れ物質の除去性能や強度に応じて設定すればよいが、例えば、吸着層を非融解層よりも厚くすると汚れ物質除去材における汚れ物質の除去能力を大きくさせるので好ましいと考えられる。
なお、非融解層を2層以上にしたり吸着層を2層以上にしたりして汚れ物質除去材を3層以上積層した構造にしてもよい。
【0023】
図2の中段に示す汚れ物質除去材22は、上述した有機化合物を少なくとも含む吸着層22b,cと、浴槽内の湯の熱で融解しない非融解層22aと、が少なくとも積層されてフィルム状ないしシート状に形成されている。ここで、第一の吸着層22bは非融解層22aの下側で下面に形成され、第二の吸着層22cは非融解層22aの上側で上面に形成されている。まず、第二の吸着層22cを上に向け第一の吸着層22bを下に向けて湯面上に載置すると、湯面の汚れ物質16は第一の吸着層22bに付着して湯面から除去される。その後、第一の吸着層22bを上に向け第二の吸着層22cを下に向けて湯面上に載置すると、湯面の汚れ物質16は第二の吸着層22cに付着して湯面から除去される。このように、汚れ物質除去材を二度使用することができるので、汚れ物質除去材の消費量を少なくさせることができる。
【0024】
図2の下段に示す汚れ物質除去材23の吸着層23bに含まれる有機化合物に、光により汚れ物質16を分解する光触媒、汚れ物質16を吸着する吸着材、抗菌材、カルキ抜き材、の中から選ばれる一種以上の機能性素材23cが混合されている。そして、汚れ物質除去材23は、前記吸着層23bと、浴槽内の湯の熱で融解しない非融解層23aと、が少なくとも積層されてフィルム状ないしシート状に形成されている。
上記光触媒には、酸化チタン等が考えられる。上記吸着材には、多孔質無機材料等の多孔質素材等が考えられ、ゼオライト、活性炭、木質系材料、多孔質セラミックス、セピオライト、ワラストナイト、マグネシウムウイスカ、フライアッシュ、等が考えられる。上記抗菌剤には、銀ナノ粒子等の銀粒子等が考えられる。光触媒や吸着材や抗菌剤の形状は、機能性素材の機能を十分に発揮させる観点から、微粒状が好ましい。なお、微粒状は、粉末状ないしペレットよりも細かい粒状をいい、粉末状や微細な繊維状を含む。以下、同じである。また、上記カルキ抜き材には、圧延銅等が考えられる。前記有機化合物を含む素材のうち機能性素材を除く素材と機能性素材との配合割合は、機能性素材の性質を発現させながら前記有機化合物の性質を十分に残す観点から、前記機能性素材を除く素材80〜99.99重量%に対して前記機能性素材を0.01〜80重量%配合するのが好ましく、前記機能性素材を除く素材90〜99.9重量%に対して前記機能性素材を0.1〜90重量%配合するのがさらに好ましい。
光触媒を上記有機化合物に混合すると、光が汚れ物質除去材に当たると付着している汚れ物質が光触媒により分解されるので、さらに確実に湯面の汚れ物質が除去され、有用性が向上する。吸着材を上記有機化合物に混合すると、汚れ物質除去材に付着した汚れ物質が吸着材に吸着されるので、さらに確実に湯面の汚れ物質が除去され、有用性が向上する。抗菌剤を上記有機化合物に混合すると、汚れ物質除去材に接触した湯面で細菌の増殖が抑えられるので、有用性が向上する。カルキ抜き材を上記有機化合物に混合すると、湯からカルキが除去されるので、有用性が向上する。
【0025】
図3に示す汚れ物質除去材30は、上述した有機化合物を少なくとも含む素材30bを浴槽内の湯の熱で融解しないメッシュ状シートないしメッシュ状フィルム30aに含浸させてシート状ないしフィルム状に形成されている。メッシュ状シートないしメッシュ状フィルムとは、上述したシートないしフィルムの定義により、薄くて厚さが長さと幅の割には小さいメッシュ状の素材を指すものとする。このような素材30aには、紙、不織布、ガラスクロス、樹脂クロス、等が考えられる。メッシュ状素材30aの厚みの範囲は特に無く、例えば0.01〜10mm、0.25〜5mmとされる。メッシュ状素材におけるメッシュ(穴)の大きさの範囲は特に無く、例えば0.001〜2mm、0.25〜1mmとされる。メッシュ状素材が親水性の媒体である場合、有機化合物の少なくとも一部に酸変性樹脂を用いると、メッシュ状素材との相溶性を高めることができるので好適である。
メッシュ状素材30aに上述した融解固化可能な有機化合物を少なくとも含む素材30bを含浸させる方法には、例えば、素材30bを加熱して融解させて所定形状のトレイに注ぎ、メッシュ状素材30aを前記トレイに入れて液状の素材30bをメッシュ状素材30aに含浸させ、その後メッシュ状素材30aをトレイから出して冷却して素材30bを固化させる方法が考えられる。また、融解した素材30bを入れた容器にメッシュ状素材をくぐらせて素材30bをメッシュ状素材に含浸させてもよい。
【0026】
本汚れ物質除去材30でも、汚れ物質除去材を浴槽内の湯面上へ容易に拡げることができるので、汚れ物質除去材を湯面の汚れ物質に接触させやすくなる。また、汚れ物質がメッシュ状シートないしメッシュ状フィルム自体に吸着されることも期待される。従って、より確実に湯面の汚れ物質を付着させて除去することが可能になる。
なお、図2のように汚れ物質除去材を積層構造にし、上述した有機化合物を少なくとも含む素材を浴槽内の湯の熱で融解しないメッシュ状シートないしメッシュ状フィルムに含浸させて吸着層21b,22b,22c,23bを形成してもよい。この場合も、汚れ物質がメッシュ状シートないしメッシュ状フィルム自体に吸着されることも期待されるので、より確実に湯面の汚れ物質を付着させて除去することが可能になる。
なお、汚れ物質除去材20、吸着層21b,22b,22c、素材30bに上述した機能性素材を混合すると、さらに確実に汚れ物質が除去されたり、湯面での細菌の増殖が抑えられたり、湯からカルキが除去されたりするので、有用性が向上する。
【0027】
(2)浴槽用汚れ物質除去材および汚れ物質除去方法の作用、効果:
図1の工程1で汚れ物質除去材20を浴槽12内に入れると、汚れ物質除去材20は湯面15上に浮かぶ。ここで、湯14の温度が前記有機化合物を有する素材の融点Mpよりも高いと(T1℃とする)、前記有機化合物を有する素材は、湯14の熱を吸収して融解熱とすることにより融解し、湯面15の汚れ物質16を付着させる(工程2)。なお、前記有機化合物を有する素材の全てが融解する場合のみならず、当該素材の一部のみ融解する場合でも、湯面の汚れ物質を付着させる作用が得られるので、本発明に含まれる。ここで、汚れ物質除去材20がシート状ないしフィルム状であると、断熱効果により浴槽内の湯14の保温性を向上させることができる。
なお、湯14の温度が融点Mpよりも低い場合には、追い炊きをしたりT1℃より高い温度の湯を注ぎ足したりすることにより、湯14の温度を融点Mpより高く、好ましくはT1℃以上にすればよい。その後、汚れ物質除去材を浴槽中に入れると、汚れ物質除去材が湯面に浮かんで汚れ物質を付着させる。
【0028】
しばらくそのままにしておくと、湯14の温度がT1℃から融点Mp未満の温度(T2℃)に低下する。すると、前記有機化合物を有する素材は、凝固熱を放出しながら固化する。このとき、前記有機化合物を有する素材が汚れ物質16を付着させて固化するので、当該汚れ物質16は汚れ物質除去材20から容易には離れない。これにより、汚れ物質除去材20を浴槽内の湯面15から取り除くと、汚れ物質16は汚れ物質除去材20に付着したまま湯面15から除去される(工程3)。なお、前記有機化合物を有する素材の全てが固化する場合のみならず、当該素材の一部のみ固化する場合でも、付着した汚れ物質が除去される作用が得られるので、本発明に含まれる。
また、汚れ物質除去材20が固化するときに凝固熱を放出して浴槽内の湯14に伝えるので、浴槽内の湯の保温性を向上させることができる。
なお、湯14の温度がなかなか融点Mp未満の温度まで低下しない場合には、T2℃より低い温度の水を注ぎ足したり氷を入れたりすることにより、素早く湯14を融点Mp未満の温度まで下げることができる。
【0029】
以上説明したように、浴槽内で融点Mpより高くした湯に本汚れ物質除去材を入れて融解後に固化したときに湯面から取り除けば湯面の湯垢等の汚れ物質が除去されるので、汚れ物質除去用の浄化装置を設けることなく、浴槽内の湯面に浮かぶ汚れ物質を容易に除去することが可能になる。また、汚れ物質除去材が固化するときの凝固熱により、浴槽内の湯をある程度保温することができる。
さらに、シート状ないしフィルム状の汚れ物質除去材を用いると、浴槽内の湯と外気とが断熱されるので、浴槽内の湯をある程度保温させ、エネルギー消費を低減させることができる。
【0030】
図4に示す汚れ物質除去材40は、浴槽12内の湯14の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも含んで湯面15に浮かぶ固形材から構成されている。この場合、工程1で汚れ物質除去材40を浴槽12内に入れると、汚れ物質除去材40は湯面15上に浮かび、湯温が前記有機化合物を有する素材の融点Mpよりも高いと、前記有機化合物を有する素材が湯14の熱により融解する。すると、汚れ物質除去材40は、湯面15に拡がって、湯面15の汚れ物質16を付着させる(工程2)。ここで、汚れ物質除去材が湯面上に拡がるので、浴槽内の湯14を外気から断熱し、浴槽内の湯14の保温性を向上させる。
しばらくそのままにしておくと、湯14の温度が融点Mp未満の温度に低下する。すると、湯面に拡がった汚れ物質除去材40は、凝固熱を放出しながら固化し、フィルム状ないしシート状になる。このとき、汚れ物質除去材40が汚れ物質16を付着させて固化するので、汚れ物質除去材40を浴槽内の湯面15から取り除くと、汚れ物質16は汚れ物質除去材40に付着したまま湯面15から除去される(工程3)。
【0031】
本汚れ物質除去材40でも、浴槽内で融点Mpより高くした湯に入れて融解後に固化したときに湯面から取り除けば湯面の汚れ物質が除去されるので、浴槽内の湯面に浮かぶ汚れ物質を容易に除去することが可能になる。また、汚れ物質除去材が固化するときの凝固熱により、浴槽内の湯をある程度保温することができる。さらに、湯面に拡がった汚れ物質除去材により浴槽内の湯と外気とが断熱されるので、浴槽内の湯をある程度保温させ、エネルギー消費を低減させることができる。
【0032】
(3)具体例:
以下、本浴槽用汚れ物質除去材および汚れ物質除去方法の具体例を示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
本具体例では、汚れ物質除去材を構成する有機化合物として、ヘンイコサン(C2144、融点40.5℃)を用いる。ヘンイコサンを約50℃に加熱して融解させ、厚み0.5mmで480mm×480mmのポリプロピレン板(融点150〜175℃)上に厚み約0.5mmとなるように塗布して、2層構造のシート状汚れ物質除去材サンプルを作製し、重量を測定する。深さ300mmで湯面が500mm×500mmとなるテスト浴槽に42℃の湯を深さ200mmとなるように入れ、模擬的な湯垢として粉末状としたオレイン酸カルシウム1.0gを浴槽中に入れて湯面に浮かべる。ヘンイコサンの層を下側に向けて汚れ物質除去材サンプルをテスト浴槽内の湯面に浮かべ、湯が38℃に低下するまで放置する。その後、汚れ物質除去材サンプルをテスト浴槽内の湯面から取り除くと、固化したヘンイコサンにオレイン酸カルシウムが付着した状態で湯面から除去されると推測される。
【0033】
(4)まとめ:
以上説明したように、本発明は、種々の態様により、浄化装置を設けることなく浴槽内の湯面に浮かぶ湯垢等の汚れ物質を容易に除去する技術を提供することができる。なお、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】浴槽用汚れ物質除去材を用いた汚れ物質除去方法を模式的に示す流れ図。
【図2】積層構造としたフィルム状汚れ物質除去材の例を示す図。
【図3】メッシュ状シートに熱可塑性樹脂を含む素材を含浸させたシート状汚れ物質除去材の例を示す図。
【図4】固形状汚れ物質除去材を用いた汚れ物質除去方法を模式的に示す流れ図。
【符号の説明】
【0035】
12…浴槽、14…湯、15…湯面、16…汚れ物質、
20〜23,30,40…浴槽用汚れ物質除去材、
23c…機能性素材、30a…メッシュ状素材、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内の湯の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも有し、浴槽内の湯に入れると湯面に浮かんで前記湯の熱により融解して湯面の汚れ物質を付着させ、前記湯の温度が低下すると固化して付着した汚れ物質とともに湯面から除去可能とされたことを特徴とする浴槽用汚れ物質除去材。
【請求項2】
前記浴槽内の湯の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも含む層と、前記浴槽内の湯の熱で融解しない層と、が少なくとも積層されてフィルム状ないしシート状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の浴槽用汚れ物質除去材。
【請求項3】
前記浴槽内の湯の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも含む素材を前記浴槽内の湯の熱で融解しないメッシュ状シートないしメッシュ状フィルムに含浸させてシート状ないしフィルム状に形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浴槽用汚れ物質除去材。
【請求項4】
前記浴槽内の湯の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも含む固形材からなり、浴槽内の湯に入れると湯面に浮かんで前記湯の熱により融解して湯面に拡がって当該湯面の汚れ物質を付着させ、前記湯の温度が低下すると前記汚れ物質を付着した状態で固化して湯面から除去可能とされたことを特徴とする請求項1に記載の浴槽用汚れ物質除去材。
【請求項5】
光により前記汚れ物質を分解する光触媒、前記汚れ物質を吸着する吸着材、抗菌材、カルキ抜き材、の中から選ばれる一種以上を前記有機化合物に混合したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の浴槽用汚れ物質除去材。
【請求項6】
浴槽内の湯の熱により融解可能であるとともに固化可能な有機化合物を少なくとも有して湯面に浮かぶ素材を用い、当該素材を浴槽内の湯に入れて湯面に浮かべて前記湯の熱により融解させて湯面の汚れ物質を前記素材に付着させ、前記湯の温度が低下して前記素材が固化したときに付着した汚れ物質とともに前記素材を湯面から除去することを特徴とする浴槽の汚れ物質除去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−62132(P2008−62132A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240425(P2006−240425)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】