説明

海底観測システム

【課題】海底観測システムにおいて、光ファイバのセンサ部での接続を回避してセンサ筐体の構造を簡単なものとする。
【解決手段】複数個のセンサ信号を受信する端局装置と、物理現象を検知して複数個のセンサ信号を発生する複数個のセンサを内蔵する複数個のセンサ筐体(2a〜2d)と、端局装置に対して記複数個のセンサ信号を伝送する伝送装置と、伝送装置を内蔵する中継器筐体28と、導電材で形成され複数の線路からなる第1の通信線路(253a〜253f)と、第1の通信線路を取り囲むように撚り巻きされている複数個の外装鉄線の間に収納され、個別センサ信号を多重化して伝送する光ファイバで形成される第2の通信線路と、を有して構成される海底ケーブルと、を備える海底観測システムである。端局装置とセンサ筐体と中継器筐体とは海底ケーブルを介して直列に接続されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底で生じた物理現象を検知するために、海底に配置されたセンサからのセンサ信号をモニタリングする海底観測システムに関し、特にセンサからの信号送出の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海底で生じた物理現象、例えば、海底で生じた地震による振動、水圧変化、磁気変化等、を検出して信号を地上に送出する海底観測システムを海底ケーブルに組み込む技術が近年注目されている(特許文献1、特許文献2を参照)。特許文献1、特許文献2では、海底ケーブルに組み込んだセンサからの検出信号を地上に設置される端局装置(端局)に伝送する技術が提案されている。
【0003】
図6は、特許文献1に記載の技術である。図6を参照して特許文献1に記載の技術について説明をする(特許文献1における符号は500番台に変更されている)。特許文献1に記載の海底観測システム500では、海底ケーブル522、524、526、528内の各光ファイバ530、532、534はそれぞれ海底観測装置504、506、508に対応しており、同一の海底観測装置に対応する光ファイバは、対応する海底観測装置の接続箇所を除いてすべて直列に接続されている。前記接続箇所で、海底観測装置の2つのポート516、518は異なる海底ケーブルの対応する光ファイバに接続され、海底ケーブル522、528の光ファイバ530、532、534の端部は陸上端局装置536、538にそれぞれ接続されている。
【0004】
図7は、特許文献2に記載の技術である。図7を参照して特許文献2に記載の技術について説明をする。特許文献2に記載の海底電力複合ケーブルにおいては、導体53と、絶縁体55と、鉛被57と、ポリエチレン防食層59からなる電力ケーブルコア61を有している。電力ケーブルコア61の外周には、通信用光ファイバユニット63と外圧検知用光ファイバユニット65が多数のプラスチック介在線67と共に撚り合わされており、その外周には押さえ巻き69を施した上で、鎧装用鉄線71が撚り合わされている。このような海底ケーブル内に通信線路を収納する場合、外周に通信線路を撚り巻きする場合、いずれも複数のセンサや中継器を海底ケーブルで接続する場合は、センサ筐体や中継器筐体の引留め部で、通信線路通しを接続し、接続部を筐体内に収納していた。
【0005】
図8は、特許文献3に記載の技術である。図8を参照して特許文献3に記載の技術について説明をする(特許文献3における符号は400番台に変更されている)。海底光ケーブル402と回路ユニット400とを接続するに際しては、引留め部401、アンカーディスク404d、収納部(余長収納スペース)404cを設け、接続余長406を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−40152号公報
【特許文献2】特開平8−195131号公報
【特許文献3】特開2006−78677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通信距離を長距離化するためには通信線路に光ファイバを用いると同軸線路に比べて長い距離の通信が可能になる。しかしながら、光ファイバの接続に際しては、接続損失を低減させるためには融着接続が必要となる。そして、光ファイバの接続箇所には光ファイバの余長が必要となると共に光ファイバに曲げロスを与えないための余長収納スペースが必要になる。このために、センサ筐体や中継器筐体には通信線路の引留め部材及び通信線路の余長収納スペースが必要になる。よってセンサ筐体、中継器筐体が大型化し、重量も重くなるという問題があった。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決し、センサ筐体と中継器筐体とを接続する通信線路の接続を容易として、通信線路とセンサ筐体の引留め部材、及び通信線路の余長収納スペースを省略することができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の海底観測システムは、複数個の個別センサ信号を受信する端局装置と、物理現象を検知して前記複数個の個別センサ信号を発生する複数個のセンサと、前記センサの各々を内蔵する複数個のセンサ筐体と、前記端局装置に対して前記複数個の個別センサ信号を伝送する伝送装置と、前記伝送装置を内蔵する中継器筐体と、導電材で形成され複数の線路からなる第1の通信線路と、前記第1の通信線路及び前記センサ筐体を取り囲むように撚り巻きされている複数個の外装鉄線と、前記外装鉄線間に収納され、前記個別センサ信号を多重化して伝送する光ファイバで形成される第2の通信線路と、を有して構成される海底ケーブルと、を備える海底観測システムであって、前記端局装置と前記センサ筐体と前記中継器筐体とは前記海底ケーブルを介して直列に接続されて構成されており、前記複数個のセンサの各々と前記伝送装置とは前記第1の通信線路で接続され、前記端局装置と前記伝送装置とは前記第2の通信線路で接続されている。
【0010】
本発明の海底観測システムでは、導電材で形成され複数の線路からなる第1の通信線路と第1の通信線路を取り囲むように撚り巻きされている複数個の外装鉄線の間に収納され、個別センサ信号を多重化して伝送する光ファイバで形成される第2の通信線路と、を有して構成される海底ケーブルを備える。そして、この海底ケーブルを介して、端局装置とセンサ筐体と中継器筐体とは、複数個のセンサの各々と伝送装置とは第1の通信線路で接続され、端局装置と伝送装置とは第2の通信線路で接続されるようにして、直列に接続されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の海底観測システムでは、導電材で形成され複数の線路からなる第1の通信線路によって、各々のセンサ筐体と伝送装置を有する中継器筐体とを接続するので、センサ筐体と中継器筐体とを接続する通信線路の接続が容易となる。又、端局から中継器まで中継する光ファイバで形成される第2の通信線路を、第1の通信線路とセンサ筐体との外周に撚り巻きして、第2の通信路のセンサ部での接続を回避してセンサ筐体の構造を簡単なものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】海底観測システムに用いる海底ケーブルの構成を示す図である。
【図2】センサ筐体、中継器筐体を海底ケーブルでどのように接続するかを示す概念図である。
【図3】センサ筐体と海底ケーブルとの相互の配置関係を示す概念図である。
【図4】海底観測システムの構成を示す図である。
【図5】海底観測システムにおける、センサ筐体、中継器筐体、海底ケーブルの接続を示す図である。
【図6】特許文献1に記載の技術である。
【図7】特許文献2に記載の技術である。
【図8】特許文献3に記載の技術である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明を実施するための形態では、センサと中継器を海底ケーブルで直列に接続して構成した海底観測システムにおいて、端局から中継器まで中継する通信線路(第2の通信線路)を、第1の通信線路とセンサ筐体との外周に撚り巻きして、センサ部での第2の通信線路の接続を回避してセンサ筐体の引留構造を簡略化、軽量化を図るものである。以下、図面を参照して、実施形態の具体例である、実施例について説明をする。
【0014】
図1は、海底観測システムに用いる海底ケーブル25の構成を示す図である。海底ケーブル25は、抗張力体251、メタルケーブル252、被覆253、外装撚線256、給電線を有して構成されている。抗張力体251は海底ケーブル25の心材となり、海底ケーブル25の強度を維持する。メタルケーブル252(第1の通信線路)は、2心でペアとなる複数本のケーブルからなり、給電線を介して抗張力体251の周囲に配置されている。図1は概念図であるので、メタルケーブル252は17本として記載されているが、実際には例えば、全体として、50本の導電線を有している。
【0015】
メタルケーブル252の周囲を被覆253が覆い、メタルケーブル252に対する浸水を防止するようにしている。外装撚線256は、複数個の外装鉄線と、この複数個の外装鉄線の間に配置されるステンレス管254とで形成されている。外装撚線256は、メタルケーブル252の周囲(直接には被覆253の周囲)に撚って巻き付けられている(図3を参照)。ステンレス管254の内部には光ファイバ255が内装(内挿)されている。
【0016】
又、図1では、外装撚線256は、複数個の外装鉄線と、この複数個の外装鉄線の間に、ステンレス管257を配置するようにして形成されている。ステンレス管257の内部には光ファイバ258が内装(内挿)されている。後述するように、光ファイバ255は複数個のセンサからの信号を伝送する共通センサ信号線路として用いられており、後述するように、光ファイバ257は、端局装置相互で情報を伝送する情報伝送線路として用いられているが、海底観測システムとしては、光ファイバ255を備えれば、十分にその機能を果たすものである。又、共通センサ信号と情報信号を多重化して、光ファイバ255のみで、両方の信号を伝送することもできる。
【0017】
このようにして、外装撚線256は、被覆253の周囲に撚って巻き付けられているので、外装撚線256の内部に凹凸を有する物体が存在しても、その凹凸に応じて変形して、一連となった外装撚線256によってその中の物体を覆うようにできる。
【0018】
図2は、後述するセンサ筐体2、後述する中継器筐体28を海底ケーブル25でどのように接続するかを示す概念図である。外装撚線256は、センサ筐体2a、センサ筐体2b、センサ筐体2c、センサ筐体2d、中継器筐体28、メタルケーブル252a、メタルケーブル252b、メタルケーブル252c、メタルケーブル252d、を撚り巻きしながら覆っている。
【0019】
図3は、センサ筐体2aと海底ケーブル25との相互の配置関係を示す概念図である。図3は、センサ筐体2aの付近の部分拡大図である。海底ケーブル25の外装撚線256は、センサ筐体2aとメタルケーブル252aとメタルケーブル252bとを覆い撚巻きされている。図3では、概念図であるので、外装撚線256の本数は、実施例とは異なり9本で表され、センサ筐体2aとメタルケーブル252aとメタルケーブル252bとは記載が省略されている。
【0020】
図4は、海底観測システムの構成を示す図である。図5は、図4に示す海底観測システムにおけるセンサ筐体、中継器筐体及び海底ケーブルの構成をより詳細に示す図である。図4、図5を参照して、海底観測システムについて説明をする。
【0021】
図4に示す海底観測システム51は、端局装置41と、海底ケーブル25と、センサ筐体2a〜センサ筐体2dと、中継器筐体28と、を有している。海底ケーブル25の各区間である海底ケーブル25a〜海底ケーブル25eの各々の断面構造は、図1に示す構造と基本的には同一とされている。しかしながら、センサ筐体2a〜センサ筐体2d及び中継器筐体28が配置されている部分では、外装撚線256は、被覆253ではなく、センサ筐体2a〜センサ筐体2d及び中継器筐体28を覆うようになされている。
【0022】
なお、海底ケーブル25a〜海底ケーブル25eの各々の長さを海底ケーブル25のシステム長と称している。センサ筐体2a〜センサ筐体2dの各々の構造は同一とされている。
【0023】
ここで用いられる用語の意味について説明をする。海底ケーブル25a、海底ケーブル25b、海底ケーブル25c、海底ケーブル25d、で示すように、添字であるa、b、c、dを付した符号が指し示す各部分は、海底ケーブル25の各々の区間を指し示すものとする。又、海底ケーブル25の用語は、海底ケーブルの各区間である海底ケーブル25a〜海底ケーブル25eの全体で構成される海底ケーブルを指し示すととともに、海底ケーブル25a〜海底ケーブル25eの各々についての総称を指し示すものとする。
【0024】
又、光ファイバ255は、後述する、共通センサ信号線路255として機能するので、同一の符号を用いて以下の説明をおこなう。メタルケーブル252を構成する導電材料の線路の数は、実施例では50本である。そして、その各々は、センサ信号線路として機能するので、同一の符号を付す。センサ信号線路の全体には符号252を付し、以下の説明の図では、センサ信号線路のうちの2本で代表して図面に表し、センサ信号線路2521、センサ信号線路2522の符号を付して表す。又、光ファイバ258は情報を伝送する情報信号線路として機能するので、以下で説明する情報信号線路にも符号258を付して用いる。
【0025】
又、共通センサ信号線路255a〜共通センサ信号線路255d、センサ信号線路2521a〜センサ信号線路2521d、センサ信号線路2522a〜センサ信号線路2522d、及び情報信号線路258a〜情報信号線路258eについても、海底ケーブル25に対すると同様の用語が用いられる。つまり、共通センサ信号線路255の用語は、共通センサ信号線路の各区間である共通センサ信号線路255a〜共通センサ信号線路255dの全体を指し示すととともに、共通センサ信号線路255a〜共通センサ信号線路255dの各々についての総称を指し示すものとする。
【0026】
同様に、センサ信号線路2521の用語は、センサ信号線路の各区間であるセンサ信号線路2521a〜センサ信号線路2521dの全体を指し示すととともに、センサ信号線路2521a〜センサ信号線路2521dの各々についての総称を指し示すものとする。同様に、センサ信号線路2522の用語は、センサ信号線路の各区間であるセンサ信号線路2522a〜センサ信号線路2522dの全体を指し示すととともに、センサ信号線路2522a〜センサ信号線路2522dの各々についての総称を指し示すものとする。同様に、情報信号線路258の用語は、情報信号線路の各区間である情報信号線路258a〜情報信号線路258dの全体を指し示すととともに、情報信号線路258a〜情報信号線路258dの各々についての総称を指し示すものとする。
【0027】
又、センサ筐体2、中継器筐体28、後述する、センサ装置12、中継器14についても、それらが複数個ある場合には添字、a、b、c、等を用いて、その各々を特定する。そして、センサ筐体2と同じ添字を有するセンサ装置12は同一の筐体に含まれる構成部品を表す。又、中継器筐体28と同じ添字を有する中継器は同一の筐体に含まれる構成部品を表す。又、添字を付さないで用いる場合には、センサ筐体2、センサ装置12、中継器筐体28、中継器の各々について、該当する各部を総称するものとする。
【0028】
図4では、海底観測システム51を構成する構成部である、端局装置41と、海底ケーブル25と、センサ筐体2と、中継器筐体28と、他の端局装置(図示せず)と、を備えている。海底観測システム51では、一方の端局装置41と他の端局装置との間で通信すべき情報をやり取りする。他の端局装置は、センサ筐体2dの先に接続されている。端局装置41と他の端局装置とは、各々が陸上に設置され、センサ筐体2は海底に配置されている。海底ケーブル25の一部は、地上の端局装置と接続するために海中又は地上に配置されているが、海底ケーブル25の多くは、海底のセンサ筐体2又は海底の中継器筐体28と接続され海底に配置されている。このようにして、センサ筐体2が海底に配置されている故に海底における物理現象を検出できることとなる。センサ装置12が検出する物理現象は、海底で生じた地震による振動、水圧変化、磁気変化、水温変化等である。
【0029】
海底ケーブル25の1区間当たりの長さであるチャンネル長(例えば、海底ケーブル25aの長さ)は、実施例では、数km程度である。海底ケーブル25は、通信に供する情報(単に情報と以下では省略をする)を伝送する情報信号線路と、後述するセンサ装置で検出するセンサ信号を伝送する線路と、電力を給電する給電線路(図示せず)とを有して構成されている。外装撚線256に含まれる情報信号線路及び共通センサ信号を伝送する線路は、光ファイバであるが、メタルケーブル252に含まれる給電線路及びセンサ信号線路は導電線で形成されている。
【0030】
又、図4では、センサ筐体2の個数は4個、中継器筐体28の個数は1個として記載されているが、これらの本数、個数は、原理的にはこれらに限るものではない。例えば、情報を伝送するケーブルの本数を増やせば通信可能容量を増加させることができる。又、中継器筐体28の個数を増加させれば、通信可能距離を増加させることができる。又、センサ筐体2の個数を増やせば、物理現象の観測点の数を増加させることができる。実施例では上述したように、メタルケーブル252の総本数は50本とされている。
【0031】
端局装置41と他の端局装置とは、海底ケーブル25を介して相互に通信するための変復調器(図示せず)、地上の他の設備と接続するための回線接続装置(図示せず)を配している。又、少なくとも一方の端局装置である端局装置41は、センサ筐体2と中継器筐体28とに給電線路を介して電力を給電するための電圧源としての電源装置(図示せず)を配している。
【0032】
図5を参照して、センサ筐体2及び中継器筐体28のセンサ信号の伝送に係る部分を中心に説明をする。
【0033】
海底ケーブル25aは、センサ筐体2aから中継器筐体28へセンサ信号を送るセンサ信号線路2521a、センサ筐体2bから中継器筐体28へセンサ信号を送るセンサ信号線路2521b、センサ筐体2cから中継器筐体28へセンサ信号を送るセンサ信号線路2521c、センサ筐体2dから中継器筐体28へセンサ信号を送るセンサ信号線路2521d、中継器筐体28から端局装置41又は他の端局装置のいずれか、若しくは、端局装置41及び他の端局装置の両方にセンサ信号を送る共通センサ信号線路255a、を有し、通信情報を送る情報信号線路(図示せず)を有して構成されている。海底ケーブル25b〜海底ケーブル25eの各々は海底ケーブル25aと同様な構成を有している。
【0034】
実施例における海底ケーブル25が、端局装置41、センサ筐体2、中継器筐体28、他の端局装置の各部とどのように接続されているかについて、図5を参照して以下に説明をする。海底ケーブル25は、端局装置41から他の端局装置まで1連のものとして形成されている。以下の説明においては、端局装置41を基点として、基点からの海底ケーブル25の各点までの距離を「海底ケーブルの基点からの距離」の用語で表す。
【0035】
海底ケーブル25のセンサ信号線路2521には、海底ケーブル25の伸びる方向に沿って、センサ装置12a、センサ装置12dの各々が、基点からの距離が順に長くなる位置に分岐して(並列に)接続される。又、センサ信号線路2522には、海底ケーブル25の伸びる方向に沿って、センサ装置12b、センサ装置12cの各々が、基点からの距離が順に長くなる位置に分岐して(並列に)接続される。
【0036】
海底ケーブル25の情報信号線路と中継器と(いずれも図示せず)の接続の態様について説明をする。端局装置41と中継器の一方の端子(図面の左側)とを、情報信号線路を介して接続する。ここで、情報信号線路は、切れ目ない外装撚線とされているので、光ファイバのこれらの区間では光ファイバの接続箇所はない。又、海底ケーブル25の情報信号線路は、中継器の他方の端子(図面の右側)と他の端局装置(図2に図示せず)とを、情報信号線路を介して接続する。ここで、情報信号線路は、切れ目ない外装撚線とされているので、光ファイバのこれらの区間では光ファイバの接続箇所はない。このようにして、情報信号線路は、端局装置41と他の端局装置とを中継器を介して接続し、中継器においてのみ背景技術に示すような方法で光ファイバは中継器を介して接続される。よって、光ファイバの接続箇所の数は少ないものとできる。
【0037】
上述した海底ケーブル25と各機器との接続の態様は一つのブロックであるブロック51aについての説明であり、海底ケーブル25は、複数のブロックを直列に接続する場合もある(図3を参照)。このような場合には、センサ装置12は4個以上用いられ、中継器は複数個用いられる。このような場合には、海底ケーブルの基点からの距離が、相互に異なる位置(以下、異なる位置と省略する)に配置されるセンサ装置12は、センサ信号線路2521、センサ信号線路2522を介して並列接続される。又、異なる位置に配置される複数個の中継器は、情報信号線路を介して直列接続される。
【0038】
センサ筐体2a〜センサ筐体の各々は、防水構造とされている。センサ筐体2aの内部にセンサ装置12aを有し、センサ筐体2bの内部にセンサ装置12bを有し、センサ筐体2cの内部にセンサ装置12cを有している。センサ装置12aは海底ケーブル25bに含まれるセンサ信号線路2521bに接続され、センサ装置12bは海底ケーブル25cに含まれるセンサ信号線路2522cに接続され、センサ装置12cは海底ケーブル25dに含まれるセンサ信号線路2522dに接続され、センサ装置12dは海底ケーブル25eに含まれるセンサ信号線路2521eに接続されている。
【0039】
ここで、センサ信号線路2521とセンサ信号線路2522とを含むセンサ信号線路252は、実施例では50本あるが、各々のセンサ信号線路252と各々のセンサ装置12との接続は、各々のセンサ信号線路252が導電線であるために、コネクタに接続、半田接続等の簡便な接続方法で接続が可能である。よって、50本の大量なセンサ信号線路252を接続するに際しても大きな困難が生じることはない。
【0040】
センサ装置12aから得られるセンサ信号は、センサ信号線路2521bとセンサ信号線路2521cとを介して多重化伝送装置13に入力される。センサ装置12bから得られるセンサ信号は、センサ信号線路2522cを介して多重化伝送装置13に入力される。センサ装置12cから得られるセンサ信号は、センサ信号線路2522dを介して多重化伝送装置13に入力される。センサ装置12dから得られるセンサ信号は、センサ信号線路2521eとセンサ信号線路2521dとを介して多重化伝送装置13に入力される。なお、後述するように、センサ装置12に対して、端局装置41が制御コマンドを送出する場合には、上述した入出力の関係が逆転する。
【0041】
多重化伝送装置13の出力側は、共通センサ信号線路255c及び共通センサ信号線路255dに接続されている。多重化伝送装置13は、センサ装置12a〜センサ装置12eの各々から入力されるセンサ信号を多重化して多重化伝送装置13の出力側に出力する。このようにして、多重化されたセンサ信号は共通センサ信号線路255cを介して端局装置41に伝送されることができ、多重化されたセンサ信号は共通センサ信号線路255dを介して他の端局装置に伝送されることができる。なお、後述するように、センサ装置12に対して、端局装置41が制御コマンドを送出する場合には、上述した入出力の関係が逆転する。
【0042】
多重化伝送装置13における多重化と、多重化伝送装置13と端局装置41又は/及び他の端局装置との間の伝送の手法について簡単に説明する。多重化については、周波数分割、時分割のどちらでも可能であるが、以下では時分割の1例を説明する。又、通信のプロトコルの1例についても説明をするが、実施形態はこのプロトコルに限定されるものではない。つまり、周知の他の通信技術を適用するものであっても良い。
【0043】
端局装置41又は/及び他の端局装置は、共通センサ信号線路255、多重化伝送装置13を介してセンサ装置12a〜センサ装置12dを制御するための制御コマンドを送出し、データを送受信するためのデコーダ・エンコーダ(図示せず)を有している。センサ装置12の各々には、その機器を特定するためのユニークなセンサ装置アドレスが付されている、そして、制御コマンドに含まれるセンサ装置アドレスによって制御するセンサ装置12を特定することができるようになされている。又、制御コマンドによって、検出する物理量(振動、温度、圧力変化等)を特定することができるようになされている。
【0044】
端局装置41又は/及び他の端局装置は、例えば、センサ装置12aに振動データを送出するように命令する制御コマンドを発する。多重化伝送装置13は、自己のブロック内の機器であるセンサ装置12aに対する指令であることを解読して、センサ装置12aに対して、この制御コマンドを転送する。
【0045】
この制御コマンドを受け取ったセンサ装置12aは、センサ装置12aの内部の震度計(図示せず)から得られた振動のデータに自己のセンサ装置アドレスを付したセンサ情報を、多重化伝送装置13を介して、共通センサ信号線路255に対して送信する。
【0046】
端局装置41又は/及び他の端局装置は、共通センサ信号線路255に対して送信されたセンサ情報を解読して、センサ装置12がセンサ装置12aであることを特定して、センサ装置12aからの振動のデータを得ることができる。同様にして、センサ装置12をスキャンしてすべてのセンサ装置12から振動のデータを得ることができる。又、振動以外のデータを得たい場合には、制御コマンドによって、各センサ装置12に対してその旨のコマンドを送出する。
【0047】
同一の共通センサ信号線路255に複数個の多重化伝送装置13が接続され、各々の多重化伝送装置13に4個以外の複数個のセンサ装置12が接続されている場合においても、以上の手法は採用することができる。そして、すべてのセンサ装置12からのセンサ情報を端局装置41又は/及び他の端局装置は得ることができる。
【0048】
中継器筐体28には、多重化伝送装置13と中継器とが内蔵されている。中継器の入力側(図面の左側)には情報信号線路が接続され、中継器の出力側(図面の右側)には情報信号線路が接続されている。そして、中継器筐体28は、情報信号線路で減衰した情報信号を増幅して適性レベルに変換して情報信号線路へ出力している。なお、中継器の入力側、出力側の用語は、図面の左側から右側に情報が伝送される場合を前提として用いるのであり、情報が双方向に伝送される場合には、上述した入力側から情報が出力され、上述した出力側から情報が入力される。
【0049】
特許文献2に記載の技術との比較を以下におこなう。実施形態の海底観測システムでは、共通センサ信号線路にすべての多重化伝送装置が並列に接続されている。従って、多重化電送装置が複数個存在する場合において、その内の一部に障害が発生した場合でも、正常な多重化電送装置が取り扱うセンサ信号は端局装置で検出することができる。一方、特許文献1に記載の技術では、すべてのセンサ装置が直列に接続されることとなるので、その内の一部に障害が発生すると、センサ信号は端局装置で検出することが全くできなくなってしまう。
【0050】
さらに、海底観測システムでは、実施形態のように、2つの端局装置の両方に共通センサ信号を伝達する場合には、共通センサ信号線路一箇所が切断した場合でも、両方の端局装置から得られるセンサ情報を総合してセンサ装置のすべてからのセンサ信号を得ることが可能となる。又、2つの端局装置の両方に共通センサ信号を伝達する場合には、共通センサ信号線路の複数箇所が切断した場合でも、一方の端局装置にのみ共通センサ信号を伝送する場合に比べて、より多くの情報を得ることが可能となる。
【0051】
実施形態の海底観測システムは、情報信号を送受信してセンサ信号を受信する端局装置と、センサ信号を多重化する多重化伝送装置及び情報信号を中継する中継器を内蔵する中継器筐体と、海底における物理現象を検出してセンサ信号を発するセンサ装置を内蔵する複数個のセンサ筐体と、端局装置に対して多重化伝送装置を並列に接続する共通センサ信号線路と、多重化伝送装置と複数個のセンサ装置とを接続する複数本のセンサ信号線路と、を有して形成される海底ケーブルと、を備えている。そして、端局装置を海底ケーブルの終端に接続するようにして、端局装置と中継器筐体と、複数個のセンサ筐体の各々と、を海底ケーブルによって直列に接続する。又、多重化伝送装置と複数個のセンサ装置とを接続する複数本のセンサ信号線路は、センサ信号の多重化の数のセンサ装置を接続できる長さ毎に切断しても良い。
【0052】
このようにして、海底ケーブルに含まれる、センサ信号を伝送する線路の数を低減することができる。その結果、海底ケーブルの径の増大を抑えることができるようになり、海底ケーブルの重量が軽量化でき、屈折が容易となってハンドリング特性も良好な物となる。
【0053】
又、通信距離を長距離化するためには通信線路に光ファイバを用いた場合、センサや中継器筐体は通信線路の引留め部材および通信線路の余長収納スペースが必要になるが、金属管通信ケーブルは海底ケーブルおよびセンサ筐体の外周部に撚り巻きされているので、センサ筐体部において通信線路の接続を回避して、通信線路とセンサ筐体の引留め部材、および通信線路の余長収納部材を省略することができるので、センサ筐体の引留構造を簡略化、軽量化を図ることができる。
【0054】
すなわち、本発明の特徴は、上述したように、情報信号線路、例えば、長距離伝送のための光ファイバを金属管に挿入したケーブルとして、外装線と一緒にケーブル及びセンサ筐体の外周に撚り巻きするものである。情報信号線路として光ファイバを使用すると、メタル線の場合には、最長でも数kmの長さに制限される通信距離が、最長で100km〜200km程度にすることができる。しかし、メタル線とは異なりファイバを接続する場合には融着接続が必要となり接続余長が生じてしまうこととなる。従来通りセンサ筐体に光ファイバを内蔵したケーブルを用いる場合には、筐体内で筐体の前後のケーブルの光ファイバを接続しなければいけないので接続余長が発生して余長を収納するスペースが必要となる。このため筐体の大型化、重量化が生じるという問題点がある。又、外装線も筐体に引留めを行って接続するために、更に、外装線の引留め構造の分も大型化、重量化してしまう。本発明は、外装線、金属管に収納された光ファイバを筐体の外周に撚り巻きして筐体での接続を省くことによって筐体の大型化、重量化という問題点を解決するものである。
【符号の説明】
【0055】
2、2a〜2d センサ筐体、 12、12a〜12d センサ装置、 13 多重化伝送装置、 28 中継器筐体、 41 端局装置、 51 海底観測システム、 25、25a〜25e 海底ケーブル、 256 外装撚線、 255、256 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の個別センサ信号を受信する端局装置と、
物理現象を検知して前記複数個の個別センサ信号を発生する複数個のセンサと、
前記センサの各々を内蔵する複数個のセンサ筐体と、
前記端局装置に対して前記複数個の個別センサ信号を伝送する伝送装置と、
前記伝送装置を内蔵する中継器筐体と、
導電材で形成され複数の線路からなる第1の通信線路と、
前記第1の通信線路及び前記センサ筐体を取り囲むように撚り巻きされている複数個の外装鉄線と、
前記外装鉄線間に収納され、前記個別センサ信号を多重化して伝送する光ファイバで形成される第2の通信線路と、を有して構成される海底ケーブルと、
を備える海底観測システムであって、
前記端局装置と前記センサ筐体と前記中継器筐体とは前記海底ケーブルを介して直列に接続されて構成されており、前記複数個のセンサの各々と前記伝送装置とは前記第1の通信線路で接続され、前記端局装置と前記伝送装置とは前記第2の通信線路で接続されている、ことを特徴とする海底観測システム。
【請求項2】
前記第2の通信線路は金属管に内装されていることを特徴とする請求項1に記載の海底観測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−237153(P2010−237153A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87687(P2009−87687)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(303040585)株式会社オーシーシー (47)
【Fターム(参考)】