説明

浸漬処理装置

【課題】ワークの処理に影響を与えることなく、開閉蓋により処理溶液の気化を最大限抑制することができる浸漬処理装置を提供する。
【解決手段】ワークWに表面処理を行うワーク処理槽5と、ワークWを、徐給材部15の第1直上位置およびワーク処理槽5の第2直上位置を経由して、給材位置と浸漬位置との間で移動させる浸漬移動機構17と、ワーク処理槽5を開閉する開閉蓋14と、開閉蓋14を、閉塞位置と開放待機位置との間で略水平方向に移動させる蓋移動機構18と、これら機構を制御する制御手段9と、を備え、制御手段9は、ワークWを、第2直上位置から浸漬位置に移動させる直前に、開閉蓋14を閉塞位置から開放位置に移動させ、浸漬位置から第2直上位置に移動させた直後に、開閉蓋14を開放位置から閉塞位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留した処理溶液にワークを浸漬することにより、ワークの表面処理を行う浸漬処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浸漬処理装置として、基板を洗浄処理する処理槽と処理槽を覆うチャンバとを備え、基板に対する洗浄処理と乾燥処理とを一体の洗浄乾燥部で行う基板洗浄乾燥装置が知られている(特許文献1参照)。この洗浄乾燥部には、基板を搬入・搬出する搬送機構が臨み、搬送機構は、基板を給材位置からチャンバの直上部まで搬送した後、これを下降させて処理槽に投入する。処理槽には、洗浄液が供給され、投入された基板は、洗浄液に浸漬されて洗浄される。洗浄が完了する処理槽から洗浄液が排水され、続いてチャンバ内にドライエアーが吹き込まれて基板の乾燥が行われる。一方、処理槽に対する基板の搬入・搬出にあっては、チャンバの上部に設けたヒンジ形式の蓋部材を開放して行われる。
【特許文献1】特開2005−101183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような、従来の浸漬処理装置において、例えば洗浄液に代えて毒性の有機溶媒を含む処理溶液を導入する場合には、蓋部材を開放に際し、気化した有機溶媒がチャンバから外部に極力漏れないようにする必要がある。しかし、ヒンジ形式の蓋部材が完全開放してから基板を搬入しないと、搬送機構の保持ヘッドと蓋部材とが干渉するおそれがあり、また基板を搬出時も同様である。このため、蓋部材を開閉動作する間、保持ヘッドをチャンバから離れた位置に待機させておく必要があり、その分、チャンバの開放時間が長くなって、気化溶媒の外部への漏れを抑制することに限界が生ずる。
【0004】
本発明は、ワークの処理に影響を与えることなく、開閉蓋により処理溶液の気化を最大限抑制することができる浸漬処理装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の浸漬処理装置は、貯留した処理溶液にワークを浸漬することにより、ワークの表面処理を行うワーク処理槽と、徐給材部に給材したワークを、徐給材部の第1直上位置およびワーク処理槽の第2直上位置を経由して、給材位置と処理溶液に浸漬する浸漬位置との間で移動させる浸漬移動機構と、ワーク処理槽を開閉する開閉蓋と、開閉蓋を、閉塞位置と開放待機位置との間で略水平方向に開閉移動させる蓋移動機構と、浸漬移動機構および蓋移動機構を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、ワークを、第2直上位置から浸漬位置に移動させる直前に、開閉蓋を閉塞位置から開放待機位置に移動させ、浸漬位置から第2直上位置に移動させた直後に、開閉蓋を開放待機位置から閉塞位置に移動させることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、制御手段は、ワークを、第2直上位置から浸漬位置に移動させる直前に、開閉蓋を閉塞位置から開放待機位置に移動させ、浸漬位置から第2直上位置に移動させた直後に、開閉蓋を開放待機位置から閉塞位置に移動させる。この場合、開閉蓋は略水平方向に移動して開閉されるため、開閉蓋とワークとが干渉しない限りにおいて、第2直上位置をワーク処理槽の直近に設定することができる。このため、開閉蓋を開放してからワークをワーク処理槽に浸漬するまでの時間、およびワークをワーク処理槽から引き上げてから開閉蓋を閉塞するまでの時間を短縮することができる。したがって、ワークの浸漬処理に影響を与えることなく、開閉蓋により処理溶液の気化を最大限抑制することができる。
【0007】
この場合、浸漬移動機構および蓋移動機構は、第1直上位置と第2直上位置との間のワークのワーク移動軌跡と、開放待機位置と閉塞位置との間の開閉蓋の蓋移動軌跡と、が略平行になるように構成されているが、好ましい。
【0008】
また、開放待機位置が、徐給材部の直上に設定されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、ワークのワーク移動軌跡と開閉蓋の蓋移動軌跡とが上下に重なった配置されるため、全体として省スペース化を図ることができ、装置の小型化を達成することができる。
【0010】
一方、浸漬移動機構は、ワークを昇降させるワーク昇降機構と、ワーク昇降機構を介してワークを水平移動させるワーク水平移動機構と、を有していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ワークの昇降と水平移動とを単一の装置で行うことができると共に、浸漬移動をコンパクトに構成することができる。
【0012】
また、蓋移動機構は、開閉蓋を閉塞位置と開放位置との間で昇降させる蓋昇降機構と、蓋昇降機構を介して開閉蓋を開放位置と開放待機位置との間で水平移動させる蓋水平移動機構と、を有しているが好ましい。
【0013】
この構成によれば、開閉蓋の昇降と水平移動とを単一の装置で行うことができると共に、蓋移動機構をコンパクトに構成することができる。
【0014】
この場合、蓋昇降機構は、開閉蓋を片持ちで保持していることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、蓋昇降機構の構造を単純化することができると共に、移動軌跡を含む蓋昇降機構の占有スペースを小さくすることができる。
【0016】
これらの場合、浸漬移動機構は、浸漬位置において、ワーク処理槽を閉塞する処理時開閉蓋を有していることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、ワークがワーク処理槽に浸漬されている間、ワーク処理槽は、処理時開閉蓋により閉塞されるため、浸漬処理時においても処理溶液(の溶媒)の気化を抑制することができる。
【0018】
同様に、ワーク処理槽の上周縁部には、閉塞位置に移動した開閉蓋との間をシールするシール部材が埋め込まれていることが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、開閉蓋を閉塞位置に移動させると、シール部材によりワーク処理槽は密閉される。これにより、処理溶液(の溶媒)の気化を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置について説明する。この浸漬処理装置は、処理溶液にワークを浸漬してコーティング等の表面処理を行う、いわゆるDipコータである。
【0021】
図1および図2に示すように、浸漬処理装置1は、下部のタンクキャビネット2と、タンクキャビネット2の上面に配設した機台3と、機台3上に設置され、ワーク処理槽5を有する処理装置本体4と、処理装置本体4を収容し、機台3の上部空間を覆うようにして設けられた装置カバー6と、を備えている。タンクキャビネット2および装置カバー6は、図外の排気設備に連通しており、内部雰囲気が適宜換気されるようになっている。また、浸漬処理装置1には、装置カバー6の背面側に設けた電装ボックス7と、装置カバー6の正面(前面)に設けた制御装置本体8とから成る制御装置9が組み込まれている。
【0022】
処理対象物であるワークWは、方形の金属板であり、その複数枚(20枚)を単位としてワークマガジン11に収容して、浸漬処理装置1に対し徐給材される。より具体的には、複数枚のワークWを並べて収容した2個のワークマガジン11,11が、マガジントレイ12に搭載され、マガジントレイ12と共に2個のワークマガジン11,11が一括して、浸漬処理装置1に対し徐給材される。そして、複数枚のワークWは、ワークマガジン11と共にワーク処理槽5に浸漬され、表面処理される。
【0023】
処理装置本体4は、ワークを浸漬処理するワーク処理槽5と、ワーク処理槽5の上端開放部を開閉する開閉蓋14と、ワーク処理槽5に隣接するワーク給材部(徐給材部)15に配設したマガジンセット機構16と、複数枚のワークWをワークマガジン11と共に、ワーク給材部15とワーク処理槽5との間で浸漬移動させる浸漬移動機構17と、ワーク処理槽5に対し開閉蓋14を開閉移動させる蓋移動機構18と、を備えている。ワーク処理槽5とマガジンセット機構16とは、機台3の前部に配設され、浸漬移動機構17と蓋移動機構18とは、上下に重なった状態で機台3の後部に配設されている。
【0024】
浸漬移動機構17は、ワークマガジン11をフッキングしてワーク処理槽5の直上部まで移動させ、蓋移動機構18が開閉蓋14を開放するのを待って、ワークマガジン11をワーク処理槽5に浸漬する。この浸漬処理では、浸漬移動機構17は、ワークマガジン11を処理溶液にゆっくり沈めてゆき、液面の波立ちが静まるのを待ってゆっくり引き上げてゆく。これにより、ワークマガジン11内の複数枚のワークWに表面処理が適切に行われる。後述するように、処理溶液は揮発性の高い溶媒を含んでおり、このワークマガジン11の引き上げ中に、ワークマガジン11やワークWに付着した処理溶液(溶媒)は、急速に気化してゆく(乾燥)。ワークマガジン11の引き上げが完了すると、直ちに蓋移動機構18が開閉蓋14を閉塞する。一方、引き上げられたワークマガジン11は、ワーク給材部15のマガジントレイ12に戻される。以上の動作を2回行って、2個のワークマガジン(ワークW)11,11の浸漬処理が終了したら、ワークマガジン11をマガジントレイ12と共に徐材し、新たなワークマガジン(未処理のワークW)11を給材する。
【0025】
一方、タンクキャビネット2内には、ワーク処理槽5に処理溶液を供給する給液タンク21と、使用済みの処理溶液をワーク処理槽5から回収する廃液タンク22と、フィルタリングのためにワーク処理槽5から処理溶液を抜き取って回収するバッファタンク23と、が収容されている。さらに、タンクキャビネット2内には、これらタンク21,22,23に併設するように、各種のポンプおよびバルブが各種配管(詳細は後述する。)と共に収容されている。
【0026】
処理溶液は、表面処理の主成分となる溶剤と、溶剤を溶かしこんだ溶媒とから成り、溶媒は給液タンク21からワーク処理槽5に供給され、溶剤はワーク処理槽5の供給した溶媒に直接投入され混合される。また、溶媒には、揮発性の高いものが用いられている。このため、ワーク処理槽5は、浸漬処理を実施するとき以外は、上記の開閉蓋14で気密に閉塞され、また浸漬処理時にワーク処理槽5から蒸散した気化溶媒は、装置カバー6内の雰囲気と共に排気ダクト25を介して、上記の排気設備(排気処理設備)に排気される。
【0027】
ここで、図3および図4を参照して、ワークマガジン11およびワーク処理槽5について簡単に説明すると共に、図5ないし図8を参照して、浸漬移動機構17および蓋移動機構18について詳細に説明する。上述のように、ワークマガジン11は、マガジントレイ12に搭載した状態で、機台3の前部に配設されたマガジンセット機構16にセットされ、またワーク処理槽5は、マガジンセット機構16の右隣に配設したドレンパン27上に設置されている。一方、浸漬移動機構17と蓋移動機構18とは、上下に重なった状態で、機台3の後部に立設した左右一対の支柱28,28により支持されている。
【0028】
図3に示すように、ワークマガジン11は、複数枚のワークWを鉛直姿勢で相互に平行にセットするためのワークセット部31を構成する一対のワーク支持板32,32、および一対のワーク支持板32,32を両端部で連結する一対の連結板33,33から成る矩形枠状に組んだマガジン本体30と、ワークセット部31の上部と各連結板33側とを仕切るように配設した一対の連結隔板34,34と、一対の連結板33,33の下端部間に渡した一対の支持ロッド35,35と、で構成されている。各連結板33には、上側の打抜き開口37により連結板33の上部にハンドリング部38が構成され、このハンドリング部38には、浸漬移動機構17によりフッキングされる2つの小切欠き部39,39が形成されている。
【0029】
図4に示すように、ワーク処理槽5は、ドレンパン27上に設置され、ステンレス等で略方形に形成されている。また、ワーク処理槽5は、内部を隔板42により処理槽部5Aと補充槽部5Bとに画成した処理槽本体41と、処理槽本体41をドレンパン27上に支持する4つの脚片43と、処理槽本体41の上端部に設けられ上記の開閉蓋14を受ける蓋載置部44と、で構成されている。蓋載置部44には、開閉蓋14および後述する処理時開閉蓋67との間隙をシールする蓋シール45が上向きに埋め込まれている。複数枚のワークWを収容したワークマガジン11は、処理槽部5Aに浸漬されて表面処理され、その際の処理槽部5Aの処理溶液の目減り分は、補充槽部5Bの処理溶液が隔板42からオーバーフローさせるようにして補充される。
【0030】
一方、図5および図6に示すように、浸漬移動機構17は、ワークマガジン(ワーク)11をフッキングして吊り下げる吊下げ機構51と、吊下げ機構51を昇降自在に支持すると共に、吊下げ機構51を介してワークマガジン11をワーク処理槽5に浸漬する昇降機構(ワーク昇降機構)52と、昇降機構52および吊下げ機構51を介して吊り下げたワークマガジン11を、ワーク給材部(徐給材位置)15とワーク処理槽5との間で水平に移動させる横移動機構(ワーク水平移動機構)53と、を備えている。
【0031】
ワーク給材部15には、マガジンセット機構(マガジントレイ)16にセットしてワークマガジン11が給材され、横移動機構53は、昇降機構52と共に吊下げ機構51をワークマガジン11の直上部に移動させる。ここで、昇降機構52により吊下げ機構51を下降させ、吊下げ機構51を駆動して、ワークマガジン11をフッキングする。続いて、昇降機構52により吊下げ機構51と共にワークマガジン11を上昇させる。次に、横移動機構53により、ワークマガジン11をワーク処理槽5の直上部に移動させる。ここで、再度昇降機構52を駆動し、ワークマガジン11をワーク処理槽(処理槽部5A)5に浸漬する。そして、ワーク処理槽5による浸漬処理が終了したら、上記と逆の手順で、ワークマガジン11をマガジンセット機構16上のマガジントレイ12に戻す。
【0032】
図6および図7に示すように、吊下げ機構51は、ワークマガジン11を吊り下げる前後一対のフック61,61と、一対のフック61,61を吊下げ位置と吊下げ解除位置との間で水平移動させるフックエアーシリンダ(アクチュエータ)62と、中心部の下面にフックエアーシリンダ62を固定した水平姿勢の板状フレーム63と、を備えている。板状フレーム63の中心部上面には連結ブロック65が固定されており、この連結ブロック65を介して、後述する昇降機構52の出力端が上側から連結されている。また、板状フレーム63の上面には、連結ブロック65を中心に180°点対称位置に配設され、板状フレーム63から鉛直方向上方に延在する前後一対のガイドバー66,66が立設されている。さらに、吊下げ機構51は、板状フレーム63に平行に配設され、ワークマガジン11の浸漬時にワーク処理槽5を閉塞する処理時開閉蓋67を備えている。
【0033】
板状フレーム63は、前後方向に長い矩形に形成されており、中心部上面に設けた連結ブロック65には、昇降機構52のリードねじ79の下端部(出力端が)が固定されている。前後一対のガイドバー66,66は、後述する昇降機構52の一対の筒状ガイド77,77に上下方向スライド自在に係合しており、昇降機構52による吊下げ機構51の昇降を案内する。そして、一対のガイドバー66,66の上端は、両ガイドバー66,66の相互の平行状態を維持すべく、板状の連結片68で連結されている。なお、各ガイドバー66と各筒状ガイド77とのスライド面は、ボールスプラインが構成されていることが、好ましい。
【0034】
各フック61は、左右一対の棒状フック69,69と、一対の棒状フック69,69の上端部を固定したフック取付けブロック70と、で構成されており、各棒状フック69は、丸棒を「J」字状に折り曲げて形成され且つ外向きに配設されている。この場合、一対のフック61,61は、ワークマガジン11に形成した一対のハンドリング部38,38に対応しており、各ハンドリング部38の一対の小切欠き部39,39に一対の棒状フック69,69が、フッキングされるようになっている。
【0035】
フックエアーシリンダ62は、ワークマガジン11に対し、一対のフック61,61を吊下げ位置と吊下げ解除位置との間で同時に平行移動させるミラー動作型のシリンダで構成されている。フックエアーシリンダ62の前後一対のプランジャ部72,72には、それぞれフック取付けブロック70を介して一対の棒状フック69,69がそれぞれ連結されている。昇降機構52により、一対のフック61,61を、上記ワークマガジン11の各連結板33と各連結隔板34との間に挿入するように下降させ(吊下げ解除位置)、次いで、フックエアーシリンダ62を駆動して、両フック61,61をハンドリング部38の直下までそれぞれ外側に向って移動させ(吊下げ位置)、ここで、一対のフック61,61を上昇させることにより、ワークマガジン11のフッキングが行われる。また、逆の動作でフッキング解除が行われる。
【0036】
処理時開閉蓋67は、4本のスペーサ支柱73を介して、板状フレーム63に平行に垂設されている。この場合、処理時開閉蓋67は、上記の開閉蓋14と異なり、浸漬移動機構17によりワークマガジン11がワーク処理槽5に浸漬されている状態で、ワーク処理槽5を閉蓋(閉塞)するものであり、矩形の外観形状を有している。また、ワークマガジン11は、ワーク処理槽5の処理槽部5Aに浸漬されるが、処理時開閉蓋67は、ワーク処理槽5全体(処理槽本体41)を開閉するため、処理時開閉蓋67は片寄った位置で、板状フレーム63に垂設されている。
【0037】
さらに、処理時開閉蓋67には、前後一対の大きな開口部74,74が形成されており、この各開口部74に、フックエアーシリンダ62の各プランジャ部72および各フック61が臨んでいる。昇降機構52により、ワークマガジン11がワーク処理槽5に完全に浸漬されると、同時に処理時開閉蓋67が下降して、ワーク処理槽5の蓋載置部44に密接して、ワーク処理槽5を閉塞する(図8および図9参照)。上述のように、ワーク処理槽5に貯留されている処理溶液は、揮発性が高く気化し易いが、浸漬処理時にあっても、ワーク処理槽5を閉塞するようにしているため、処理溶液の気化が抑制される。
【0038】
図6に示すように、昇降機構52は、後述する横移動機構53のL字ブラケット83に搭載されており、L字ブラケット83の略中心位置に配設され、吊下げ機構51を昇降自在に支持する特殊モータ76と、特殊モータ76を中心に180°点対称に位置して、L字ブラケット83上に配設された前後一対の筒状ガイド77,77と、上記の両ガイドバー66,66および連結片68と共に、特殊モータ76および一対の筒状ガイド77,77を覆う昇降部集塵ボックス78と、を備えている。この場合、昇降部集塵ボックス78は、その下部でL字ブラケット83を覆っており、この状態でL字ブラケット83の側面に固定されている。そして、昇降部集塵ボックス78は、上記の排気設備に接続されている。また、各筒状ガイド77には、各ガイドバー66がスライド自在に挿通しており、この一対の筒状ガイド77,77により、吊下げ機構51の昇降が回転ブレ等を生ずることなく安定にガイドされるようになっている。
【0039】
特殊モータ76は、ステッピングモータの一種であり、ロータの軸心に形成した雌ねじにリードねじ79を螺合して、構成されている。リードねじ79および雌ねじは、ボールねじで構成されており、ロータの正逆回転(雌ねじの正逆回転)に伴ってリードねじ79が昇降(上下動)する。リードねじ79の下端は、昇降機構52の出力端になっており、上記の連結ブロック65を介して板状フレーム63に固定されている。この場合、連結ブロック65は、処理時開閉蓋67を含む吊下げ機構52、およびこれに吊り下げられた複数枚のワークWを含むワークマガジン11の重心位置に配設されている。すなわち、リードねじ79は、これが吊り下げる機構や部品、ワークW等をこれらの重心位置で支持している。なお、回転する雌ねじ(ロータ)との摩擦によりリードねじ79も小さな回転力が作用するが、この回転力は、一対のガイドバー66,66および一対の筒状ガイド77,77により抑えられる。
【0040】
横移動機構53は、上記の一対の支柱28に支持されたモータ駆動の移動テーブル81と、移動テーブル81のスライダ82に固定したL字ブラケット83と、移動テーブル81の上側に併設したケーブルベア(商標:ケーブル担持体)84と、ケーブルベア84を覆う横移動部集塵ボックス85と、を有している。そして、このL字ブラケット83に上記の昇降機構52が搭載されている。すなわち、昇降機構52および吊下げ機構51は、L字ブラケット83を介して横移動機構53に片持ちで支持されている。
【0041】
横移動部集塵ボックス85および移動テーブル81は、上下に位置し且つ左右方向に水平に延在している。移動テーブル81は、スライダ82と、スライダ82を左右方向にスライド自在に支持するスライドガイド86を有し、リードねじ機構とモータとで構成された駆動部(いずれも図示省略)により、昇降機構52および吊下げ機構51を、ワーク給材部15の直上部とワーク処理槽5の直上部との間で水平に移動させる。また、横移動部集塵ボックス85は、上記の排気設備に接続されており、ケーブルベア84の摺動部分から発生した塵埃を排気する。
【0042】
一方、図5および図10に示すように、蓋移動機構18は、開閉蓋14を片持ちで保持し、これをワーク処理槽5に対し開閉動作させる鉛直移動機構(蓋昇降機構)91と、鉛直移動機構91を介して開閉蓋14を、ワーク処理槽5の直上部位置とマガジンセット機構16の直上位置との間で水平に移動させる水平移動機構(蓋水平移動機構)92と、水平移動機構92に併設したケーブルベア(商標:ケーブル担持体)93と、ケーブルベア93を覆う蓋移動部集塵ボックス94と、を備えている。水平移動機構92は、左右方向に水平に延在し、ケーブルベア93および蓋移動部集塵ボックス94は、水平移動機構92の下側に位置して、水平移動機構92と平行に延在している。
【0043】
開閉蓋14は、ワーク処理槽5の蓋載置部44に密接して、ワーク処理槽5を閉塞する矩形の蓋本体96と、蓋本体96の後端中間部から後方に延在し、鉛直移動機構91に取り付けられた取付け片部97と、で板状に一体に形成されている。鉛直移動機構91は、復動の昇降シリンダ(エアーシリンダ)98と、昇降シリンダ98を支持する鉛直支持プレート99とで構成されており、開閉蓋14は、昇降シリンダ98のプランジャブロック100の下端面に取り付けられている。昇降シリンダ98は、僅かな距離上下動するようになっており、開閉蓋14を、ワーク処理槽5に対する開放位置と閉塞位置との間で、開閉動作させる。
【0044】
水平移動機構92は、上記一対の支柱28に支持された厚板状の横長フレーム102と、横長フレーム102の前面に設けた水平ガイド板103と、水平ガイド板103にスライド自在に取り付けたスライドブロック104と、横長フレーム102の背面に固定され、そのプランジャ106をスライドブロック104に連結した復動の水平シリンダ(エアーシリンダ)105と、を有している。横長フレーム102の前面には、スライドブロック104に当接する左右一対の度当りストッパ107,107が取り付けられており、鉛直移動機構91の左右の移動端位置をワーク処理槽5の直上部位置とマガジンセット機構16の直上位置との間で、位置規制している。
【0045】
ここで、図11および図12を参照して、制御装置9により関連付けて制御される浸漬移動機構17および蓋移動機構18の制御動作について、説明する。装置の起動開始時において、複数枚のワークWを収容した2個のワークマガジン11,11が、マガジントレイ12を介してマガジンセット機構16上にセットされている。すなわち、2個のワークマガジン11,11は、ワーク給材部15にセットされている。また、浸漬移動機構17は、その吊下げ機構51が左側のワークマガジン11の直上部の上昇端位置(第1直上位置)にあって、駆動待機している。同様に、蓋移動機構18は、開閉蓋14がワーク処理槽5を閉塞する閉塞位置にあって、ワーク処理槽5を閉蓋している。
【0046】
この状態から、装置の起動を開始すると、先ず浸漬移動機構17の昇降機構52が駆動し、吊下げ機構51をフッキング位置に下降させると共に吊下げ機構51を駆動する(図11(a)参照)。吊下げ機構51により一対のフック61,61を吊下げ位置に移動したら再度昇降機構52を駆動し、左側のワークマガジン11を吊り上げた状態で吊下げ機構51を元の上昇端位置に上昇させる(図11(b)参照)。続いて、横移動機構53が駆動し、吊り上げたワークマガジン11をワーク処理槽5の直上部位置(第2直上位置)まで移動させる(図11(c)参照)。
【0047】
ここで、蓋移動機構18の鉛直移動機構91が駆動し、開閉蓋14を開放位置に上動させ(図11(d)参照)、更に水平移動機構92が駆動し、開放位置にある開閉蓋14を右側のワークマガジン11の直上部の開放待機位置に移動させる(図11(e)参照)。続いて、浸漬移動機構17の昇降機構52が駆動し、吊り上げたワークマガジン11を吊下げ機構51と共に下降させ、ワークマガジン11をワーク処理槽5に浸漬する(図11(f)参照)。この浸漬ための下降動作では、ワークマガジン11を、処理溶液にゆっくり且つ定速で沈めてゆく。ワークマガジン(ワークW)11が処理溶液に完全に没する(浸漬位置)と、昇降機構52が停止し、同時に処理時開閉蓋67がワーク処理槽5を閉塞する。
【0048】
ここで、液面の波立ちが静まるのを待って(所定時間)、再度昇降機構52が駆動し、ワークマガジン11をワーク処理槽5から引き上げる(図12(a)参照)。この引き上げのための上昇動作では、処理溶液に波立ちが生じないように、ワークマガジン11をゆっくり且つ定速で引き上げる。これにより、ワークWにムラの無い表面処理が行われる。吊下げ機構51(ワークマガジン11)が上昇端位置に達したら、続いて蓋移動機構18の水平移動機構92が駆動し、開放待機位置の開閉蓋14をワーク処理槽5の直上部の開放位置に移動させ(図12(b)参照)、更に鉛直移動機構91が駆動し、開閉蓋14を閉塞位置に移動させる(図12(c)参照)。
【0049】
以降、上記と逆の手順で、横移動機構53が駆動し、吊り上げたワークマガジン11をワーク給材部15に戻し(図12(d)参照)、マガジントレイ12上にセットする(図12(e)参照)。これにより、左側のワークマガジン11(ワークW)の一連の浸漬処理を終了する。続いて、右側のワークマガジン11(ワークW)を上記と同様の動作で行い、2個のワークマガジン(ワークW)11,11の浸漬処理を完了する。そして、2個のワークマガジン11,11をマガジントレイ12と共に徐材する。
【0050】
なお、図11(e)に示す動作において、ワークマガジン11と開閉蓋14とが干渉しない限りにおいて、ワークマガジン11の下降が開始されてから開閉蓋14の水平移動を開始するようにしてもよい。同様に、図12(b)に示す動作において、ワークマガジン11の上昇が終了する前に、水平移動してきた開閉蓋14がワーク処理槽5の直上部(開放位置)に達するように、制御してもよい。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、ワークマガジン(ワークW)11を、ワーク処理槽5に浸漬する直前に開閉蓋を開放する一方、ワーク処理槽5から引き上げた直後に開閉蓋を閉塞するようにしているため、浸漬処理に影響を与えることなく、ワーク処理槽5が開放されている時間を極力短縮することができる。これにより、揮発性の高い処理溶液の気化量を最大限抑制することができ、処理溶液の濃度を安定させることができる。したがって、ワークWを適切に表面処理することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、ワークWを、ワークマガジン11と共にワーク処理槽5に浸漬するようにしているが、ワークWを直接把持して浸漬する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態に係る浸漬処理装置の正面側から見た外観斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る浸漬処理装置の背面側から見た外観斜視図である。
【図3】ワークマガジンの斜視図である。
【図4】ワーク処理槽廻りの斜視図である。
【図5】処理装置本体の拡大斜視図である。
【図6】浸漬移動機構の斜視図である。
【図7】吊下げ機構廻り拡大斜視図である。
【図8】浸漬動作前後の吊下げ機構廻りの側面図である。
【図9】浸漬動作中の吊下げ機構廻りの側面図である。
【図10】蓋移動機構の斜視図である。
【図11】浸漬移動機構および蓋移動機構の動作を表した模式図(1)である。
【図12】浸漬移動機構および蓋移動機構の動作を表した模式図(2)である。
【符号の説明】
【0054】
1 浸漬処理装置、4 処理装置本体、5 ワーク処理槽、5A 処理槽部、5B 補充槽部、9 制御装置、11 ワークマガジン、15 ワーク給材部、16 マガジンセット機構、17 浸漬移動機構、51 吊下げ機構、52 昇降機構、53 横移動機構、67 処理時開閉蓋、91 鉛直移動機構、92 水平移動機構、W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留した処理溶液にワークを浸漬することにより、ワークの表面処理を行うワーク処理槽と、
徐給材部に給材したワークを、前記徐給材部の第1直上位置および前記ワーク処理槽の第2直上位置を経由して、給材位置と前記処理溶液に浸漬する浸漬位置との間で移動させる浸漬移動機構と、
前記ワーク処理槽を開閉する開閉蓋と、
前記開閉蓋を、閉塞位置と開放待機位置との間で略水平方向に開閉移動させる蓋移動機構と、
前記浸漬移動機構および前記蓋移動機構を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ワークを、前記第2直上位置から前記浸漬位置に移動させる直前に、前記開閉蓋を前記閉塞位置から前記開放待機位置に移動させ、前記浸漬位置から前記第2直上位置に移動させた直後に、前記開閉蓋を前記開放待機位置から前記閉塞位置に移動させることを特徴とする浸漬処理装置。
【請求項2】
前記浸漬移動機構および前記蓋移動機構は、前記第1直上位置と前記第2直上位置との間のワークのワーク移動軌跡と、前記開放待機位置と前記閉塞位置との間の前記開閉蓋の蓋移動軌跡と、が略平行になるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の浸漬処理装置。
【請求項3】
前記開放待機位置が、前記徐給材部の直上に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の浸漬処理装置。
【請求項4】
前記浸漬移動機構は、ワークを昇降させるワーク昇降機構と、前記ワーク昇降機構を介してワークを水平移動させるワーク水平移動機構と、を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の浸漬処理装置。
【請求項5】
前記蓋移動機構は、前記開閉蓋を前記閉塞位置と開放位置との間で昇降させる蓋昇降機構と、前記蓋昇降機構を介して前記開閉蓋を前記開放位置と前記開放待機位置との間で水平移動させる蓋水平移動機構と、を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の浸漬処理装置。
【請求項6】
前記蓋昇降機構は、前記開閉蓋を片持ちで保持していることを特徴とする請求項5に記載の浸漬処理装置。
【請求項7】
前記浸漬移動機構は、前記浸漬位置において、前記ワーク処理槽を閉塞する処理時開閉蓋を有していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の浸漬処理装置。
【請求項8】
前記ワーク処理槽の上周縁部には、前記閉塞位置に移動した前記開閉蓋との間をシールするシール部材が埋め込まれていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の浸漬処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate