説明

消臭剤及び該消臭剤を含有する消臭用製品

【課題】 広範囲の悪臭に対して有効であり、人体に安全で、溶解性がよく取り扱いが容易で、着色などの問題の少ない有用な消臭剤の提供。
【解決手段】 トウキ、センキュウ、シャクヤク及びジオウの混合物の抽出物からなる消臭剤並びに該消臭剤を含有する消臭用製品。上記生薬の一定比を煎じたものは漢方でシモツトウとよばれているものと同一の組成である。これら生薬の混合物の抽出物は人体に安全で、溶解性がよく取り扱いが容易で、着色などの問題の少ない有用な消臭剤であり、優れた消臭剤組成物、消臭用の化粧料組成物、浴用剤組成物、洗剤組成物などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤に関する。詳しくは、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタン類に有効であり、皮膚刺激等のない安全な消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭用製品は不快な臭気を除去し、人々の住居空間を快適に保つものであり、清潔を好む日本人において欠かせない日用品ともいえる。ことに、最近ではスプレー状に吹き付けることにより瞬間・局所的に消臭を実現する消臭商品も多数開発されてきている。これに伴い消臭剤も多くの素材が開発されてきているが、汎用性のある消臭剤というものはそう多くは提案されてきていない。消臭剤の類型としては、(1)抗菌作用により微生物の発生する悪臭の発生を予防する。(2)悪臭物質を物理的に吸着してしまい脱臭する。(3)アルカリ性の悪臭を酸などで中和する。(4)酸化剤などで化学的に悪臭物質を分解する。(5)香気物質等により感覚的に消臭する。などの方法があるが、(1)の方法は予防手段であって、現に発生した悪臭を除去することはできない。(3)〜(5)の方法は、特定の悪臭物質においては有効であるが汎用性があるとはいえなかった(例えば(3)の方法においてアルカリ性の悪臭物質と酸性の悪臭物質を同時に中和することは困難である)。(2)の吸着による方法は多くの悪臭物質に有効であるが、活性炭に代表される吸着剤の多くは着色しており、粉体であることが多く取り扱い上の問題点を有していた。特に前記スプレー製品においては、消臭剤が人体に接触する機会も多いため、人に安全で環境に優しい消臭剤が求められてきている。汎用性のある消臭剤としては、例えばカルボン酸基を持つビニルモノマーが90重量%以上の重合体微粒子でカルボン酸基の1部が銅、ニッケル、コバルトの少なくとも1種の塩である消臭剤(特許文献1)、2−エチルヘキサン酸亜鉛を有効成分とする消臭剤(特許文献2)、酸解離指数が6〜9の値を持つ特定のアミノ酸骨格を有する化合物を含有してなる消臭剤(特許文献3)などがアミン系及びメルカプタン系の悪臭のいずれにも有効であると提案されているが、いずれも前記問題点の可能性を有していた。天然系で汎用性のある消臭剤としては、アミリスオイルを有効成分として配合することを特徴とする消臭剤(特許文献4)がアミン系及びメルカプタン系の悪臭のいずれにも有効であると提案されているが、アミリスオイル自体が香気を有する香料そのものなので、その消臭効果は限界があるものと推測される。
【0003】
一方、種々の植物抽出物も消臭作用を有していることが知られている(例えば非特許文献1)。しかしながら、特定の組み合わせの植物抽出物を、人への安全性と消臭効果とを併せて検討された例は知られていなかった。皮膚刺激のない混合植物抽出物としては、たとえば漢方と同じ組成の混合植物エキス(特許文献5)なども知られているが、消臭効果については記載されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平6−261931号公報
【特許文献2】特開平9−276381号公報
【特許文献3】特開2004−33436号公報
【特許文献4】特開平11−178907号公報
【特許文献5】特開2005−89402号公報
【非特許文献1】特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第I部 香料一般 230頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、人への安全性と広範な消臭効果とを併せ持つ消臭剤がないという点である。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するものであって、アミン臭やメルカプタン臭など広範囲の悪臭に対して有効であり、人体に安全で、溶解性がよく取り扱いが容易で、着色などの問題の少ない有用な消臭剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者らは種々の植物抽出物及びそれらの混合物を検索した結果、シモツトウと呼ばれる漢方処方と同一組成の生薬混合物の抽出物が相乗的に優れた消臭効果を示すことを見いだし、本発明を完成させた。すなわち本発明は、トウキ、センキュウ、シャクヤク及びジオウの混合物の抽出物からなる消臭剤であり、詳しくは、トウキ0.4〜10.0部(重量部、以下同じ)、センキュウ0.4〜10.0部、シャクヤク0.4〜10.0部及びジオウ0.4〜10.0部の混合物の抽出物からなる消臭剤であり、更に詳しくは、トウキ1.6〜8.0部、センキュウ1.6〜8.0部、シャクヤク1.6〜8.0部及びジオウ1.6〜8.0部の混合物の抽出物からなる消臭剤であり、更に詳しくは、トウキ2.8〜6.0部、センキュウ2.8〜6.0部、シャクヤク2.8〜6.0部及びジオウ2.8〜6.0部の混合物の抽出物からなる消臭剤であり、さらに詳しくは水又はアルコール類又はそれらの混合物による抽出物である上記消臭剤であり、また、上記消臭剤を含有することを特徴とする消臭用製品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の消臭剤はアミン臭やメルカプタン臭など広範囲の悪臭に対して有効であり、人体に安全で、溶解性がよく取り扱いが容易で、着色などの問題の少ない有用な消臭剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用する植物は以下に示すものであり、何れも、葉、茎、根、花、種子あるいは全草を使用することができる。また、下記の植物を起原とする生薬を利用してもよい。
(1)トウキAngelica acutiloba Kitagawa(セリ科)
(2)センキュウCnidium officinale Makino(セリ科)
(3)シャクヤクPaeonia lactiflora Pallas(ボタン科)
(4)ジオウRehmannia glutinosa Liboschitz var. purpurea Makino又は Rehmannia glutinosa Liboschitz(ゴマノハグサ科)
各生薬の種類はこれに限定されることなく変種、同属種、その他近縁類も使用できる。
【0010】
シモツトウは、トウキ、センキュウ、シャクヤク及びジオウの4種を配合し、皮膚が乾燥し、色つやの悪い体質で胃腸障害のない人の次の諸症:産後あるいは流産後の疲労回復、月経不順、冷え性、しもやけ、しみ、血の道症に効果があるとされている。〔天然物医薬品学(糸川秀治、大本太一、永井正博、古谷 力編、朝倉書店発行 1987年4月10日版)〕。
【0011】
シモツトウは、比較的体力が低下したもので貧血の傾向があり、皮膚は乾燥して色つやが悪く、腹が軟弱でへその上に動悸があるものに用いる。婦人の諸疾患、産婦人科疾患の聖薬といわれる。貧血、子宮出血、月経不順、月経痛、冷え性、自律神経失調症、更年期障害や産前産後などに効果があるとされている。〔天然薬物事典(奥田拓男編、廣川書店発行 昭和61年3月3日)〕。
【0012】
これら植物の混合物から適当な溶媒を使用して有効成分を抽出する。溶媒は、水、アルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール、あるいは1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール)などを、単独或いは2種類以上の任意の混液として使用することができる。又、抽出後は、濾過して必要に応じ、抽出液を希釈、又は濃縮、乾燥することもできる。
【0013】
なお、抽出方法は特に制限されるものはないが、常温又は、常圧下での溶媒の沸点までの範囲であればよく、マイクロウェーブ抽出法、超臨界抽出法を用いてもよい。抽出後は濾過又はイオン交換樹脂を用い、吸着精製して溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状とすればよい。更に多くの場合は、そのままの状態で利用できるが、必要ならば、その効果に影響のない範囲で更に脱臭、脱色などの精製処理を加えてもよく、脱臭・脱色などの精製処理手段としては、活性炭カラムなどを用いればよく、抽出物質により一般的に適用される通常の手段を任意に選択して行えばよい。
【0014】
本発明で使用する生薬は、4種類配合した後抽出したものから効果の高い抽出物が得られる。したがって各々から個別に抽出したり、任意に3種類以下の植物を組み合わせて抽出したり、また、各抽出物又は抽出液を混合して使用したものよりも効果がある。4種の植物を配合した後抽出することにより消臭効果の持続性がより向上することから、4種の植物を配合した後抽出した物を使用することに十分意義があると考えられる。
【0015】
本発明で使用する各生薬の配合量は、経験漢方処方分量集(医道の日本社発行 、平成5年9版)、及び一般用漢方処方の手引き(日薬連漢方専門委員会編集、厚生省薬務局監修、薬業時報社発行 平成4年4月30日4版12刷)に記載されている分量が好ましい。配合比はその目的により応じて調整して用いることができ、例えば前記一般用漢方処方の手引きには、シモツトウの処方として、トウキ:センキュウ:シャクヤク:ジオウの重量比で、4:4:4:4などの例が記載されている。したがって、本発明においては通常の配合量としてトウキ0.4〜10.0部(重量部、以下同じ)、センキュウ0.4〜10.0部、シャクヤク0.4〜10.0部及びジオウ0.4〜10.0部であるが、さらに好ましいのはトウキ1.6〜8.0部、センキュウ1.6〜8.0部、シャクヤク1.6〜8.0部及びジオウ1.6〜8.0部であり、最も好ましい配合量は、トウキ2.8〜6.0部、センキュウ2.8〜6.0部、シャクヤク2.8〜6.0部及びジオウ2.8〜6.0部である。
【0016】
本発明による消臭用製品には、本発明の必須の消臭剤の他に、例えば、下記に示すような化粧品類などで通常使用される基剤、添加剤等を併用して製造することができる。
【0017】
(1)各種油脂類:アボカド油、アーモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、ゴマ油、カカオ脂、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、牛脂脂肪酸、ククイナッツ油、サフラワー油、シア脂、液状シア脂、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、綿実油、落花生油、タートル油、ミンク油、卵黄油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂、豚脂又はこれら油脂類の水素添加物(硬化油等)など。
【0018】
(2)ロウ類:ミツロウ、モクロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カンデリラロウ、モンタンロウ、セラックロウ、ライスワックス、スクワレン、スクワラン、プリスタンなど。
【0019】
(3)鉱物油:流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、オゾケライド、セレシン、マイクロクリスタリンワックスなど。
【0020】
(4)脂肪酸類:ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール油脂肪酸、ラノリン脂肪酸などの天然脂肪酸、イソノナン酸、カプロン酸、2−エチルブタン酸、イソペンタン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソペンタン酸などの合成脂肪酸。
【0021】
(5)アルコール類:エタノール、イソプロパノール、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロールなどの天然アルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノールなどの合成アルコール。
【0022】
(6)多価アルコール類:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
【0023】
(7)エステル類:ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、酢酸ラノリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコールなど。
【0024】
(8)金属セッケン類:ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛など。
【0025】
(9)ガム質、糖類又は水溶性高分子化合物:アラビアゴム、ベンゾインゴム、ダンマルゴム、グアヤク脂、アイルランド苔、カラヤゴム、トラガントゴム、キャロブゴム、クインシード、寒天、カゼイン、乳糖、果糖、ショ糖又はそのエステル、トレハロース又はその誘導体、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、カラギーナン、カルボキシメチルキチン又はキトサン、エチレンオキサイドなどのアルキレン(C2〜C4)オキサイドが付加されたヒドロキシアルキル(C2〜C4)キチン又はキトサン、低分子キチン又はキトサン、キトサン塩、硫酸化キチン又はキトサン、リン酸化キチン又はキトサン、アルギン酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヘパリン、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド又はその架橋重合物、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミンなど。
【0026】
(10)界面活性剤:アニオン界面活性剤(アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩)、カチオン界面活性剤(アルキルアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩)、両性界面活性剤〔カルボン酸型両性界面活性剤(アミノ型、ベタイン型)、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤〕、非イオン界面活性剤(エーテル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤、エステル型非イオン界面活性剤、ブロックポリマー型非イオン界面活性剤、含窒素型非イオン界面活性剤)、その他の界面活性剤(天然界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤、チタン・ケイ素を含む界面活性剤、フッ化炭素系界面活性剤)など。
【0027】
(11)各種ビタミン類 ビタミンA群:レチノール、レチナール(ビタミンA1)、デヒドロレチナール(ビタミンA2)、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB群:チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、コリン、イノシトール類、ビタミンC群:ビタミンC酸又はその誘導体、ビタミンD群:エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、ジヒドロタキステロール、ビタミンE群:ビタミンE又はその誘導体、ユビキノン類、ビタミンK群:フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)、メナジオール(ビタミンK4)、その他、必須脂肪酸(ビタミンF)、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロット酸、ビタミンP類(ルチン、エリオシトリン、ヘスペリジン)、ビタミンUなど。
【0028】
(12)各種アミノ酸類:バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジンなどや、それらの硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、或いはピロリドンカルボン酸のごときアミノ酸誘導体など。
【0029】
(13)植物又は動物系原料由来の種々の添加物:これらは、添加しようとする製品種別、形態に応じて常法的に行われる加工(例えば、粉砕、製粉、洗浄、加水分解、醗酵、精製、圧搾、抽出、分画、ろ過、乾燥、粉末化、造粒、溶解、滅菌、pH調整、脱臭、脱色などを任意に選択、組合わせた処理)を行い、各種の素材から任意に選択して供すればよい。
【0030】
なお、上記植物又は動物系原料の抽出を行う場合に用いる溶媒については、供する製品の使用目的、種類、或いは後に行う加工処理等を考慮した上で選択すればよいが、通常では、水、水溶性有機溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなど)の中から選ばれる1種もしくは2種以上の混液を用いるのが望ましい。但し、用途により有機溶媒の含有が好ましくない場合においては、水のみを使用したり、あるいは抽出後に除去しやすいエタノールを採用し、単独又は水との任意の混液で用いたりすれば良く、又、搾取抽出したものでも良い。
【0031】
なお、前記植物又は動物系原料由来の添加物を、全身用又は局所用の外用剤、化粧品類に供する場合、皮膚や頭髪の保護をはじめ、保湿、感触・風合いの改善、柔軟性の付与、刺激の緩和、芳香によるストレスの緩和、細胞賦活(細胞老化防止)、炎症の抑制、肌質・髪質の改善、肌荒れ防止及びその改善、発毛、育毛、脱毛防止、光沢の付与、清浄効果、疲労の緩和、血流促進、温浴効果などの美容的効果のほか、香付け、消臭、増粘、防腐、緩衝などの効果も期待できる。
【0032】
(14)香料:ジャコウ、シベット、カストリウム、アンバーグリスなどの天然動物性香料、アニス精油、アンゲリカ精油、イランイラン精油、イリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、カラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、黒文字精油、ケイ皮精油、シンナモン精油、ゲラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンダー精油、シソ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、ジンジャーグラス精油、杉精油、スペアミント精油、西洋ハッカ精油、大茴香精油、チュベローズ精油、丁字精油、橙花精油、冬緑精油、トルーバルサム精油、パチュリー精油、バラ精油、パルマローザ精油、桧精油、ヒバ精油、白檀精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバー精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボアドローズ精油、芳樟精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー精油、和種ハッカ精油などの植物性香料など。合成香料成分としては、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類、脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類、脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、水素化芳香族アルデヒド、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類、脂肪族ケトン、テルペンケトン、水素化芳香族ケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系芳香族ケトン、芳香族ケトン等のケトン類、アセタール類、ケタール類、フェノール類、フェノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類、酸アマイド類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、水素化芳香族ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系のカルボン酸族エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物など。合成香料のより具体的としては、例えば1996年化学工業日報社刊,印藤元一著(合成香料化学と商品知識)、1969年,ステファンアークタンダー(STEFFENARCTAMDER)著(パフューム アンド フレバー ケミカルス<Perfume and Flavor Chemicals>)等に記載された香料等が好適に使用できる。以下に主な香料等を示す。アルデヒドC6〜C12、アニスアルデヒド、アセタールR、アセトフェノン、アセチルセドレン、アドキサール、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、アルファダマスコン、ベータダマスコン、デルタダマスコン、アンブレットリッド、アンブロキサン、アミルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒドジメチルアセタール、アミルバレリアネート、アミルサリシレート、イソアミルアセテート、イソアミルサリシレート、オーランチオール、アセチルユゲノール、バクダノール、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルサリシレート、ベルガミールアセテート、ボルニルアセテート、ブチルブチレート、パラターシャリーブチルシクロヘキサノール、パラターシャリーブチルシクロヘキシルアセテート、オルトターシャリーブチルシクロヘキサノール、ベンズアルデヒド、ベンジルフォーメート、カリオレフィン、カシュメラン、カルボン、セドロアンバー、セドリルアセテート、セドロール、セリストリッド、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、シスジャスモン、シトラール、シトラールジメチルアセタール、シトラサール、シトロネロール、シトロネリルアセテート、シトロネリルフォーメート、シトロネリルニトリル、シクラセット、シクラメンアルデヒド、シクラプロップ、キャロン、クマリン、シンナミルアセテート、デルタC6〜C13ラクトン、ジメチルベンジルカービノール、ジヒドロジャスモン、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、ジメトール、ジミルセトール、ジフェニルオキサイド、エチルワニリン、ユゲノール、フルイテート、フェンキルアルコール、フェニルエチルフェニルアセテート、ガラキソリッド、ガンマC6〜C13ラクトン、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ゲラニルニトリル、ヘディオン、ヘリオナール、ヘリオトロピン、シス−3−ヘキセノール、シス−3−ヘキセニルアセテート、シス−3−ヘキセニルルサリシレート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘキシルサリシレート、ヒヤシンスジメチルアセタール、ハイドロトロピックアルコール、ヒドロキシシトロネラール、インドール、イソボルニルアセテート、イソシクロシトラール、イソEスーパー、イソユゲノール、イソノニルアセテート、イソブチルキノリン、ジャスマール、ジャスモラクトン、ジャスモフィラン、コアボン、リグストラール、リリアール、ライムオキサイド、リモネン、リナロール、リナロールオキサイド、リナリルアセテート等が挙げられる。
【0033】
更にこの他にも、これまでに知られている各原料素材、例えば、α−ヒドロキシ酸類、無機顔料、紫外線吸収剤、美白剤、チロシナーゼ活性阻害剤、メラニン色素分解物質、細胞賦活物質、収れん剤、活性酸素消去剤、抗酸化剤、過酸化脂質生成抑制剤、抗炎症剤、抗菌剤、保湿剤、エラスターゼ活性阻害剤、抗アンドロゲン剤、温感剤、冷感剤、色素、ホルモン類、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、キレート剤、防腐・防バイ剤、清涼剤、安定化剤、乳化剤、動・植物性蛋白質又はその分解物、動・植物性多糖類又はその分解物、動・植物性糖蛋白質又はその分解物、消炎剤・抗アレルギー剤、創傷治療剤、気泡・増泡剤、増粘剤、口腔用剤、消臭・脱臭剤、酵素などと併用することができる。
【0034】
本発明の消臭剤が用いられる消臭用製品は、消臭剤組成物(室内用、トイレ用、自動車用など)はもちろん、消臭効果が求められるものであれば特に限定されることはなく、例えば消臭用の化粧料組成物、浴用剤組成物、洗剤組成物などが例示され、それぞれ液状、乳液状、ペースト状、ゲル状、パウダー状(粉末状)、顆粒状、ペレット状、スティック状、固形状等の何れの形態として提供されてもよい。
【0035】
化粧料組成物としては、化粧水(ローション)、乳液、クリーム、オイル、軟膏、パック、リップ、口紅、ファンデーション、アイライナー、頬紅、マスカラ、アイシャドウー、マニキュア・ペディキュア、爪被覆剤、爪被覆除去剤、ひげ剃り用剤、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、ヘアトニック、ヘアスプレー、ヘアクリーム、ヘアローション、整髪料、育毛料、パーマネント液、染毛料、ハンドソープ・ボディーソープ、歯磨き剤、洗口料、洗顔料・石けん類等が挙げられる。
【0036】
浴用剤組成物は、入浴時、浴湯に投じて使用するもので、液状、粉末状、顆粒状、固形状など性状は何れであってもよい。粉末、顆粒又は固形状である場合は、本発明の保湿性植物抽出液を乾燥せず、液状のままで吹きつけて乾燥することにより製造することも可能である。
【0037】
洗剤組成物は、日常的に使用する台所用洗剤、浴室、洗面器又はトイレ用洗剤、ガラス用クリーナー、メガネ・コンタクトレンズ洗浄剤、車用洗浄剤、建材クリーナーなどが挙げられる。
【0038】
その他、衛生用品、ウエットタイプのティシュペーパー、不織布、紙タオル、コットンなどに含浸させておくこともできる。
【0039】
本発明の消臭剤が使用される消臭剤組成物においては、消臭剤は乾燥エキス分として0.0001〜5質量%程度、好ましくは0.001〜1質量%程度含有していると使用性が良く、良好な結果が得られる。消臭用の化粧料組成物及び洗剤組成物においては、消臭剤は乾燥エキス分として0.001〜5質量%程度、好ましくは0.01〜1質量%程度含有していると使用性が良く、良好な効果が得られる。また浴用剤組成物においては、0.001〜99質量%で用いることができ、好ましくは0.1〜30質量%含有していると使用性が良く、良好な結果が得られる。
【実施例】
【0040】
以下に製造例、試験例、処方例を挙げて説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
シモツトウの各構成生薬すなわちトウキ4g、シャクヤク4g、センキュウ4g、ジオウ4gを混合したものに対して、水500mLを添加し、1時間還流抽出した。次いで、これを濾過して抽出液を得、さらに濃縮乾燥することにより、黄褐色の粉末状エキス7gを得た。
【0042】
[実施例2]
シモツトウの各構成生薬すなわちトウキ4kg、シャクヤク3kg、センキュウ3kg、ジオウ4kgに対し、エタノール500Lを添加し、1晩浸漬抽出した。次いで、これを濾過して抽出液を得、さらに乾燥することにより、淡褐色の粉末状エキス2.0kgを得た。
【0043】
[実施例3]
シモツトウの各構成生薬すなわちトウキ4g、シャクヤク4g、センキュウ4g、ジオウ4gを混合したものに対して、30%エタノール水溶液500mLを添加し、1時間還流抽出した。次いで、これを濾過して抽出液450mLを得た。
【0044】
安全性試験 皮膚刺激性の評価
本発明の消臭剤の皮膚刺激性を評価するため、健常人(24〜58歳男女)42人のモニターによるパッチテストを行った。
(試料)実施例1、2で得た消臭剤を精製水で膨潤させたもの。
(方法)各試料について皮膚感作テスト用テープ「フィンチャンバー」(大正製薬製)を用いて、被験者の上腕屈側部、前膊内側に24時間閉塞貼付を行い判定した。すなわち、貼付後24時間経過した時点で試料を除去、その1時間後それぞれ皮膚の状態を観察して判定を行った。
(判定基準)判定は以下の基準により行った。
(+)陽 性:紅斑を認めるもの。
(±)疑陽性:軽微の紅斑あるいはその疑いがあるもの。
(−)陰 性:反応が認められないもの。
表1に結果を示した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1より、本発明による消臭剤は、皮膚刺激性が認められなかった。
【0047】
[試験例1]
本発明の消臭剤のアミン系及びメルカプタン系悪臭に対する消臭効果を測定した。測定条件は、5Lの容器中に製造例3の消臭剤を1mL静置し、各悪臭成分を所定濃度(ppm)充満させた後、経時的に悪臭成分の濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
本発明の消臭剤はアミン系及びメルカプタン系において有効であった。
【0050】
[実施例4]
以下の処方で室内用消臭剤a(液体タイプ)を調製した。
実施例2の消臭剤 1.0%
両性界面活性剤 0.5%
緑茶エキス 0.5%
タンニン酸 0.2%
防腐剤 0.1%
残余は精製水にて100%とする。
【0051】
[実施例5]
以下の処方で室内用消臭剤b(液体タイプ)を調製した。
実施例2の消臭剤 1.0%
両性界面活性剤 0.5%
アラントイン 0.1%
防腐剤 0.1%
残余は精製水にて100%とする。
【0052】
[実施例6]
以下の処方で室内用消臭剤c(液体タイプ)を調製した。
実施例2の消臭剤 1.0%
両性界面活性剤 1.0%
エタノール 2.0%
茶抽出物 0.2%
防腐剤 0.1%
残余は精製水にて100%とする。
【0053】
[実施例7]
以下の処方で自動車用消臭剤(液体タイプ)を調製した。
実施例2の消臭剤 1.0%
非イオン系界面活性剤 5.0%
エタノール 10.0%
残余は精製水にて100%とする。
【0054】
[実施例8]
以下の処方でトイレ用消臭剤(液体タイプ)を調製した。
実施例2の消臭剤 1.0%
非イオン系界面活性剤 2.0%
エタノール 5.0%
残余は精製水にて100%とする。
【0055】
[実施例9]
以下の処方で浴用剤a(液体タイプ)を調製した。
実施例2の消臭剤 1.0%
非イオン系界面活性剤 3.0%
グリセリン 10.0%
エタノール 5.0%
防腐剤 0.1%
残余は精製水にて100%とする。
【0056】
[実施例10]
以下の処方で浴用剤b(粉末タイプ)を調製した。
実施例2の消臭剤 1.0%
硫酸ナトリウム 50.0%
炭酸水素ナトリウム 49.0%
【0057】
[実施例11]
以下の処方で制汗剤(デオドラントスプレー)を調製した。
(原液処方)
実施例2の消臭剤 1.0%
パラフェノールスルホン酸亜鉛 2.0%
1,3−ブチレングリコール 2.0%
ミリスチン酸イソプロピル 2.0%
残余はエタノールにて100%とする。
(充填処方)
原液 50%
LPG 50%
【0058】
[実施例12]
以下の処方でボディソープを調製した。
実施例2の消臭剤 1.0%
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 15.0%
ラウリル硫酸トリエタノールアミン 5.0%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 5.0%
ジステアリン酸エチレングリコール 2.0%
モノパルミチン酸グリセリン 1.0%
吸着精製ラノリン 2.0%
グリセリン 2.0%
プロピレングリコール 3.0%
防腐剤 0.1%
残余は精製水にて100%とする。
【0059】
[比較例1〜6]
実施例4、7、8、9、11、12において、本発明の消臭剤に替えて、その配合量を精製水で置き換えたもの(比較例1〜6)を調製した。
【0060】
[試験例2]
以下の要領で、実施例4、7、8、9、11、12及び比較例1〜6の消臭用製品について、その消臭効果を評価した。
(1)実施要領
各実施例で製造した室内用消臭剤a、浴用剤a、制汗剤、ボディソープ、室内・自動車・トイレ用消臭剤(液体タイプ)を試験品(A)とし、男女パネラー(全17名)による使用試験を実施した。比較例1〜6を比較品(B)とし、試験開始後1カ月間は試験品(A)を、次いで翌1カ月間は比較品(B)を下記条件で使用してもらいアンケートによる回答を求めた。
(2)使用条件
実施例4の室内用消臭剤a:各100mlを開放容器に充填し6畳日本間に静置。
実施例7の自動車用消臭剤:各100mlを開放容器に充填し車内シート下に固着。
実施例8のトイレ用消臭剤:各100mlを開放容器に充填しトイレに静置。
実施例9の浴用剤a:浴湯約200Lに30g投じ入浴(1回/日)。
実施例11の制汗剤:朝洗顔直後、夜入浴直後、各3g(各1回/日)を腋芽に適用。
実施例12のボディソープ:入浴時、10ml、(1回/日)を使用。
(3)評価基準
3段階にて評価した。
悪臭を感じない 3
悪臭をやや感じる 2
変わらない 1
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
以上の結果から、本発明の消臭剤を使用した消臭用製品はいずれも優れた消臭効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の消臭剤はアミン臭やメルカプタン臭など広範囲の悪臭に対して有効であり、人体に安全で、溶解性がよく取り扱いが容易で、着色などの問題の少ない有用な消臭剤を提供することができる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウキ、センキュウ、シャクヤク及びジオウの混合物の抽出物からなる消臭剤。
【請求項2】
トウキ0.4〜10.0部、センキュウ0.4〜10.0部、シャクヤク0.4〜10.0部及びジオウ0.4〜10.0部の混合物の抽出物からなる消臭剤。
【請求項3】
トウキ1.6〜8.0部、センキュウ1.6〜8.0部、シャクヤク1.6〜8.0部及びジオウ1.6〜8.0部の混合物の抽出物からなる消臭剤。
【請求項4】
トウキ2.8〜6.0部、センキュウ2.8〜6.0部、シャクヤク2.8〜6.0部及びジオウ2.8〜6.0部の混合物の抽出物からなる消臭剤。
【請求項5】
水又はアルコール類又はそれらの混合物による抽出物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の消臭剤。
【請求項6】
抽出溶媒の量が、被抽出物の10〜100倍量であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の消臭剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの項に記載の消臭剤を含有することを特徴とする消臭用製品。

【公開番号】特開2007−325693(P2007−325693A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158101(P2006−158101)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】