説明

消臭剤

【課題】 本発明は、人体に使用するための従来の消臭剤よりも優れた消臭効果を有する消臭剤および消毒剤を提供することを目的とする。特に、従来の消臭剤よりも速乾性であり、使用時に不快感がなく、かつ水分による効果の低減を抑制した、人体に使用するための消臭剤および消毒剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、二酸化塩素と揮発性物質とを含有する、人体用消臭剤を提供する。特に、本発明は、二酸化塩素とエタノールとを含有する、人体用消臭剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤に関する。より詳細には、二酸化塩素を含有する、人体に使用するための消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関における院内感染、インフルエンザ感染およびノロウイルス感染など、細菌による感染症に関する問題は、重大である。また、自然災害などの劣悪な環境において、生活環境を維持することは困難である。人体に対する感染症の多くは、細菌の繁殖および蔓延によるものである。したがって、長期間にわたる避難生活を強いられる被災者などに対して、衛生管理の徹底は当然ながら、安直かつ完璧な衛生管理が望まれている。
【0003】
また、自然災害などの劣悪な環境においては、人体に由来する種々の臭いも問題となる。また、人体に由来する種々の臭いは、劣悪な環境における場合だけでなく、日常生活においても消臭が望まれることが多い。たとえば、脇の下、足、耳周りおよび全身の部位において、それぞれ腋臭、足臭、耳臭および体臭が気になる場合があり、人体に由来するにおいについても、安直かつ完璧な消臭が望まれている。
【0004】
従来、衛生管理の観点などから、消毒を目的として、アルコールの消毒効果を利用したアルコール製剤が利用されてきた。特に、エタノールを含有する消毒液は、優れた消毒効果を有することが知られており、たとえば70%エタノールを含有する消毒液がアルコール製剤として使用されている。
【0005】
二酸化塩素も、優れた消毒効果を有することが知られている。このため、消毒を目的として、二酸化塩素を含有する消毒剤が利用されてきた。二酸化塩素は、通常二酸化塩素を水に溶解することにより、液状の水溶液が使用されている。たとえば、密閉した空間内に被消毒物体を装入し、二酸化塩素の水溶液をミスト状にして前記空間内に噴霧し、被消毒物体の消毒および消臭を行う方法が開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、繰返し使用される医療器具類の洗浄・滅菌・脱臭処理方法において、特に高い殺菌性を有する二酸化塩素水溶液により、使用済み医療器具類を短時間に効率よく洗浄・滅菌・脱臭処理方法が開示されている(特許文献2)。この方法は、体内に挿入される医療器具類を清浄水等により予備洗浄した後、二酸化塩素と接触せしめることにより、該医療器具類の外部及び管路ないし中空部内部を洗浄・殺菌・消毒処理することを特徴としている。
【0007】
一方、人体を消臭することを目的として、種々の消臭剤が開発されている。しかし、人体を消臭することを目的として、二酸化塩素による消臭効果は利用されていなかった。従来、二酸化塩素は、一般に水に溶解することによって溶液として使用されてきた。このため、水分が多く、人体に使用するために適しているとはいえなかった。たとえば、二酸化塩素水溶液を主成分とする人体用消臭剤は、日常的に使用するには使用感触が悪いという問題があった。また、二酸化塩素水溶液を人体に使用すると、水分が皮膚および衣服に残ってしまうため、人体に由来する種々の臭いの原因となる細菌などが増殖する原因となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-306577号公報
【特許文献2】特開2003-284764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような状況を鑑み、本発明は、人体に使用するための従来の消臭剤よりも優れた消臭効果を有する消臭剤および消毒剤を提供することを目的とする。特に、従来の消臭剤よりも速乾性であり、使用時に不快感がなく、かつ水分による効果の低減を抑制した、人体に使用するための消臭剤および消毒剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、二酸化塩素が消臭効果を有することを見いだし、本発明に想到した。特に、二酸化塩素をエタノールと併用することにより、二酸化塩素単独よりも優れた消臭および消毒効果を有することを見いだした。また、二酸化塩素をエタノールと併用することにより、使用時に不快感がなく、かつ水分による消臭および消毒効果の低減が抑制されることを見いだし、本発明に想到した。
【0011】
すなわち、本発明は、二酸化塩素と揮発性物質とを含有する、人体用消臭剤を提供する。
【0012】
また、本発明は、揮発性物質がエタノールである、上記人体用消臭剤を提供する。
【0013】
また、本発明は、エタノールが、人体用消臭剤の容量の少なくとも60%以上含まれることを特徴とする、上記人体用消臭剤を提供する。
【0014】
また、本発明は、二酸化塩素が、少なくとも1ppm以上の濃度で含まれることを特徴とする、上記人体用消臭剤を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、遮光容器内に充填された、上記人体用消臭剤を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の消臭剤は、揮発性物質中に二酸化塩素を含むことにより、従来の消臭剤よりも速乾性であり、使用時に不快感がなく、かつ水分による効果の低減を抑制した、人体に使用するための消臭剤および消毒剤を提供することができる。
【0017】
また、本発明の消臭剤は、臭いの発生原因となる雑菌を消毒することができるため、即効性を有するだけでなく、雑菌などを死滅させることにより、臭いの発生原因を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の消臭剤について、詳細を説明する。本発明の消臭剤および消毒剤は、溶媒としての揮発性物質中に二酸化塩素を含有する。
【0019】
二酸化塩素は、強力な漂白作用があることが古くから知られており、多くの製造方法が提案されている。二酸化塩素は、一般に水に溶解することによって溶液として提供されている。本発明の消臭剤には、たとえば、市販の二酸化塩素水溶液を使用することができる。また、当業者に公知の方法を使用して二酸化塩素を発生させることができる。二酸化塩素は、たとえば亜塩素酸ナトリウムを塩素ガスまたは次亜塩素酸ナトリウム溶液などの塩素剤で酸化する方法、亜塩素酸ナトリウムに塩酸を添加する方法など、亜塩素酸ナトリウムから製造することができる。その他、硫酸の存在下で塩素酸ナトリウムと過酸化水素を反応させることにより、二酸化塩素を発生させることができる。また、二酸化塩素を発生することができるその他の前駆物質を含有することもできる。
【0020】
本発明の消臭剤において、二酸化塩素は、消臭および消毒効果を有する任意の濃度で含有させることができる。二酸化塩素による消毒効果に関して、当該技術分野において様々な実験がなされており、1ppm、30ppmおよび100ppmの濃度で消毒効果を有することが示されている。たとえば、http://tanix02-sh.sv1.allin1.jp/user_file/tanix02-sh/etc/wcl_data.pdfを参照されたい。したがって、本発明の消臭剤は、少なくとも1ppm、30ppmおよび100ppm以上の濃度で二酸化塩素を含有する。
【0021】
また、本発明の消臭剤に使用される揮発性物質としては、当業者に公知の任意の揮発性物質を使用することができる。本発明の消臭剤は、揮発性物質として、たとえばエタノールおよびメタノールなどのアルコールを使用することができる。また、本発明の消臭剤は、揮発性物質として、たとえばジメチルエーテルなどのエーテルを使用することができる。
【0022】
揮発性物質は、任意の濃度で使用することができるが、人体に対して噴霧および塗布された場合に、水と比較して容易に揮発される濃度で使用される。たとえば、揮発性物質としてエタノールを使用する場合、50%、60%および70%以上の濃度で使用される。特に、揮発性物質としてエタノールを使用する場合、エタノールによる消毒効果が得られる濃度で使用することにより、二酸化塩素による消臭および消毒効果だけでなく、エタノールによる効果も期待される。エタノールは、60%および70%以上の濃度で使用されたときに、消毒効果が高いことが知られている。
【0023】
また、それぞれの成分を所定の濃度に調整するために、任意の溶媒を使用することができる。本発明の消臭剤には、たとえば上記のようなエタノールに加えて、溶媒として精製水を使用することができる。
【0024】
また、二酸化塩素分子は、不対電子をもつラジカルとして存在しており、非常に不安定である。したがって、本発明の消臭剤には、二酸化塩素分子を安定にするためのさらなる成分を含んでいてもよい。また、二酸化塩素は、pHに応じてその効果が変化することが知られている。過剰なアルカリ性の範囲では、二酸化塩素の分解を加速するので消臭および消毒効果が低減してしまう。このため、本発明の消臭剤は、分解に対する影響を受けにくいpHの範囲に調製するために、pH調整剤を含有することができる。
【0025】
本発明の消臭剤は、任意の形態で提供することができる。たとえば、スプレーボトルおよびキュピテナーなどの任意の形態の容器に充填して提供することができる。
【0026】
また、二酸化塩素は、非常に反応性に富んでおり、光によっても分解が促進される。したがって、本発明の消臭剤は、暗所に密栓して保存するために、遮光可能な容器内に提供することができる。
【0027】
本発明の消臭剤は、人体に対して直接適用することができる。たとえば、スプレーボトルとして提供された本発明の消臭剤を消臭部位に直接噴霧することができる。また、適宜、手のひらなどに噴射した後、消臭部位に適用することができる。
【0028】
本発明の消臭剤は、上記の通り、食品および消毒液として認可された成分のみで製造することができる。たとえば、エタノール、精製水および二酸化塩素は、いずれも消毒剤として使用することが認められている。このため、人体に対して使用しても、非常に安全な消臭剤である。このため、本発明の消臭剤は、使用量が多くても、それによる弊害は認められないと考えられる。
【0029】
また、本発明の消臭剤は、人体を対象にした消臭剤であるが、人体以外にも使用することができる。本発明の消臭剤は、従来のエタノールによる消毒剤および二酸化塩素による消毒剤と同様に適用することができ、たとえば病院内において、病室、給食室、トイレ、寝具、器具、カーテン、ゴミ箱および下駄箱などにも使用することができる。
【0030】
院内感染対策として、医師、看護し、レントゲン技師、検査技師等の医療従事者から、致傷を受ける患者に対して、接触感染、給食などによる体内感染および咳などによる空気感染その他により、感染する可能性がある。本発明の消臭剤は、首周り、耳周り、手、指、腕周り、および足などの露出する肌の部分を消臭すると共に消毒することもできる。
【実施例】
【0031】
消臭剤の効果
70%エタノール水溶液中に100ppmの濃度で二酸化塩素を含有する消臭剤を使用して、人体に対する消臭効果および使用の際の不快感を評価した。
【0032】
材料および方法
消臭剤に使用する70%エタノール水溶液は、市販のエタノール(甘糠化学株式会社)を市販の精製水と混合することにより、70%となるように調製した。
【0033】
消臭剤に使用する二酸化塩素は、市販の二酸化塩素水溶液(有限会社ファイネックス)を上記エタノール水溶液と混合して、70%エタノールおよび100ppm二酸化塩素の濃度となるように調製した。この消臭剤をスプレーボトルに入れた。
【0034】
上記70%エタノール水溶液中に100ppmの濃度で二酸化塩素を含有する消臭剤を被験者の下着または靴下に噴霧した。消臭剤は、被験者の消臭部位に対して、スプレーボトルから直接噴霧した。それぞれの消臭部位に対して、数回噴霧した。噴霧した量は、おおよそ1mL〜2mLである。上記消臭剤を噴霧後、被検体は、自己が感じる不快感について評価した。また、被検体は、およそ1日の日常生活の後に、上記消臭剤を噴霧し、噴霧部位の臭いを人の嗅覚により評価した。
【0035】
結果
複数の被検体に対して、本発明の消臭剤の効果および不快感を評価した。いずれの被検体についても、本発明の消臭剤を噴霧した場合は、人体に由来するにおいが消臭された。また、本発明の消臭剤を噴霧した場合は、使用時に皮膚や衣服に噴霧した際に、体温によりすみやかに揮発した。また、本発明の消臭剤を噴霧した場合は、水分による不快感が少なかった。
【0036】
本発明の消臭剤は、従来のアルコール消毒剤の利点と二酸化塩素の利点を越えた、消臭効果を有していた。また、本発明の消臭剤は、揮発性物質を含有することにより、人体に対して適用したときに、体温によって速やかに揮発し、従来の水溶液の場合と比較して、水分による不快感が減少することが確認された。また、本発明の消臭剤は、即効性のある消臭剤であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化塩素と揮発性物質とを含有する、人体用消臭剤。
【請求項2】
前記揮発性物質がエタノールである、請求項1に記載の人体用消臭剤。
【請求項3】
前記エタノールが、該人体用消臭剤の容量の少なくとも60%以上含まれることを特徴とする、請求項2に記載の人体用消臭剤。
【請求項4】
前記二酸化塩素が、少なくとも1ppm以上の濃度で含まれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の人体用消臭剤。
【請求項5】
遮光容器内に充填された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の消毒剤。

【公開番号】特開2012−95713(P2012−95713A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243828(P2010−243828)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(510288806)
【Fターム(参考)】