説明

液中の固形分分離除去装置

【課題】 不要な渦流や波の発生を防止し、固形分を液分から自然分離させて円滑で静かな分離を可能にすると共に、装置を小型化をし、安価で信頼性の高い装置を提供することを課題とする
【解決手段】 排液中含まれる浮上固形分、沈降固形分と液分とを自然分離する分離槽と、該分離槽の液中に該排液を水平に流出する排液供給パイプと、固形分を貯留する貯留槽と、ガイド溝と該貯留槽との連通路に設けた第2開閉弁と、貯留槽の液面レベルを計測する液面計と、分離槽の中間液位レベルで連通する連通孔を有する清澄水分離槽と、清澄水分離槽内に取水口を有する清澄水管と、分離槽の底部と貯留槽の底部との連通路に設けた第1開閉弁と、貯留槽の底部と外部の適宜の位置に配置された外部装置とを連通する連通路に設けた第3開閉弁と、制御装置とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排液中の固形分分離除去装置の技術分野に属する。更に詳細には、汚泥処理装置の脱水機や濃縮機等から排出される排液中に含まれる固形分を分離して、除去する処理装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
下水処理や産業排水処理等から発生する汚泥は、後段の処理・処分におけるコスト低減や処理効率の向上を図るため、汚泥の濃縮処理や脱水処理が行われてきた。濃縮や脱水に使用される従来の濃縮装置や脱水装置において、分離液側に処理固形物量の5%〜10%の固形物が含まれており、従来はそれをそのまま水処理系へ返流していた。しかし、近年、固形物の回収率を98%〜95%程度に高め、返流水の水質を向上させて水処理系への負荷を低減することが求められている。このために、その分離液からさらに固液分離処理する装置を濃縮装置または脱水機に組み込んだ装置が開発されつつある。
【0003】
このような装置は一般に本体装置の付属装置として開発される。従来から公開されてきた特許文献にはこのような装置が見当たらない。従って、ここでは非特許文献1に記載されている汚泥処理装置の付属装置として技術マニュアルに掲載されている従来装置(以下、従来装置1という。)について説明する。しかし、技術マニュアルには機能の詳細な説明はなされていないので、一部説明を補充して簡単に説明する。図7はこのろ液分離装置の関連するシステムを示し、図8及び図9はこの装置の正面図及び平面図を示す。図9(B)は図9(A)のX矢視の断面図を示す。
【非特許文献1】汚泥処理装置、圧入式スクリュープレス脱水機、技術マニュアル、2001年−3月号、(財)下水道新技術推進機構
【0004】
図7において、50は圧入式スクリュ−プレス脱水機で、51は凝集装置である。52は洗浄水タンクで、53はポンプである。脱水機50によって脱水された脱水ケーキはシュート50aによってベルトコンベア54に搭載され、脱水ケーキ貯留ホッパ55に放出される。56はろ液分離装置で、ろ液はホッパ50bからろ液分離装置56に供給される。ろ液分離装置56に供給されたろ液は固形分が除去され、固形汚泥は汚泥貯留タンクに返送され、清澄水は水処理施設に供給される。
【0005】
図8、図9(A)、(B)において、60はろ液分離槽で、61は分離汚泥槽である。62はろ液を供給するための流入管62で、63は洗浄水を供給する洗浄管63である。また、64はろ液分離槽掻寄板で、ろ液分離槽60の底に沈降した固形物を掻き寄せる。65は掻寄ブレードで浮上した固形物を掻き寄せて溢出する流水と一緒に分離汚泥槽61に流出させる。ろ液分離槽60の上部には掻寄ブレード65によって、掻き寄せられた浮上固形物を分離汚泥槽61に供給するホッパ状のシュート68が設けられている。
【0006】
分離汚泥槽61の一部(図9の上側部)が仕切り板69によって小室70が形成され、図9(B)に示すように、ろ液分離槽60と小室70との間には連通路71が液面からの中間液レベルに設けられている。小室70の中央に清澄水管73が設けられている。分離汚泥槽61には更に攪拌装置75と液位計76が設けられている。また、開閉弁(分離汚泥引抜弁)77を介して、ろ液分離槽60の底部と分離汚泥槽61の底部を連通する連通パイプ78が設けられると共に開閉弁(分離混合汚泥引抜弁)79を介して分離汚泥槽61の底部と汚泥貯留タンク8(図7)とを結ぶ管路80が設けられている。
【0007】
従来装置1は、以上に述べたように、脱水機50の運転中は駆動機67を常時運転し、沈降分離した固形物を掻寄機の下部ブレード64によって、ろ液分離槽60の下部円錐中央に掻き寄せておき、分離汚泥引抜弁77を開いて分離汚泥槽61に移動する。また、浮上分離した固形物を掻寄機のブレード65によって掻き寄せ、分離汚泥槽61の上部に張り出したシュート68から分離汚泥槽61に放出する。従って、掻寄ブレード64及び掻寄ブレード65を駆動するための動力機が必要となる。ブレード64及びブレード65や駆動機構によって装置が複雑となり、大型化し、重量も重くなる。従って、装置自体の他にランニングコストも高価になるという問題が生じる。更に、磨耗部品が多いために、故障が起こりやすく信頼性に欠けるという問題も生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に説明したように、本願発明は、可動部品をできるだけ少なくして信頼性が向上させると共に、固形分を自然分離させることで装置の単純化及び小型化を図り、安価で信頼性の高い装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】

上記課題を解決するために本発明は以下の手段を採用している。即ち、
請求項1記載の発明は、汚泥処理装置の脱水機や濃縮機等から排出される排液中に含まれる固形分を分離して除去する分離除去装置において、該排液中含まれる浮上固形分、沈降固形分と液分とを自然分離する分離槽と、該分離槽の液中に該排液の流出口を有する排液供給パイプと、浮上固形分を集めるガイド溝と、固形分を貯留する貯留槽と、該ガイド溝と該貯留槽との連通路に設けた第2開閉弁と、該貯留槽の液面レベルを計測する液面計と、該分離槽の中間液位レベルで連通する連通孔を有する清澄水分離槽と、該清澄水分離槽内に取水口を有する清澄水管と、該分離槽の底部と該貯留槽の底部との連通路に設けた第1開閉弁と、該貯留槽の底部と外部の適宜の位置に配置された外部装置とを連通する連通路に設けた第3開閉弁と、前記各開閉弁を制御する制御装置とを具備したことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、前記液面計は前記貯留槽の液面レベルの高レベル、中レベル、低レベルを検出し、前記制御装置は液面レベルが低レベルにあるときは第1開閉弁並びに第3開閉弁を閉じ、液面レベルが高レベルになったときに攪拌機を回転させると共に第1開閉弁を開き、分離槽の底に沈降した固形分を水位ヘッド差により貯留槽中に流入させ、その後に第3開閉弁を開いて固形分を外部装置に送出することを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記制御装置は該分離除去装置が運転中で、前記貯留槽の液面レベルが前記低レベル又は中レベルにあるときは前記第2開閉弁を一定時間ごとに開閉して前記浮上固形分を前記貯留槽へ放出する制御をすることを特徴としている。
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3に記載の発明において、該分離槽の液面上方に散水装置を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では掻寄板や掻寄ブレード等の回転部材及び駆動装置をなくしたので故障が起こりにくく、耐久性が向上するという効果が得られる。更に、固形分の浮上又は沈降が重力により行われるので、静かで円滑な分離が可能になると共に装置のコンパクト化、低価格化が可能になるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本願発明を実施した実施形態について以下に図を参照して説明する。なお、この実施形態は脱水機50の排液(ろ液)中の固形分を分離除去する分離除去装置で(以下、ろ液分離装置と呼ぶ)、脱水機の下流側に設けた実施例である。図1は本実施形態の正面図で、図2は上平面図である。図3はコントローラの手順を示すフローチャートである。図4はタイムチャートである。図5、図6の(A)〜(D)は各工程の状態を示した図である。なお、図において、引用番号は従来装置(図7〜図9)と相違する部分も多いので対応していない。
【0014】
図1、図2において、ろ液分離装置10は脱水機50の下側に設けている。ろ液分離装置10は、固形分と液分を分離するためのろ液分離槽11、固形分を貯留する貯留槽12、清澄水を取り出すための清澄水分離槽13から構成され、ろ液分離槽11を挟んで両側に貯留槽12、清澄水分離槽13が設けられている。なお、貯留槽12は分離した固形分をポンプにより原液貯留タンクに戻す場合に必要であるが、原液貯留タンクが下方にあり、自然流れによって戻せる場合は省略できる。ろ液分離槽11の満液レベルの半分の高さより少し高いレベルに、ろ液が水平に流出するようにろ液供給管15が側壁を貫通して固設されている。これにより供給水の動圧による浮上固形分や沈殿固形分の攪拌を防ぐことが望ましい。また、ろ液分離槽11の液面上方の上流側に散水管17を設け、固形分と共に浮上した気泡を消滅させて、気泡による液表面近くの攪拌効果や液面での気泡破裂による波紋発生を防ぎ液面を平らにして浮上固形分の液中への分散を防ぐことが望ましい。
【0015】
貯留槽12のろ液分離槽11と隣接する側(下流側)に、浮上した軽固形分を円滑に貯留槽12に放出するためのガイド溝19が貯留槽12の上部に設けられている。ガイド溝19と貯留槽12は第2開閉弁20を介して管路21、21により連結されている。また、貯留槽12には貯留した固形分を攪拌するための攪拌機22が設けられると共に貯留槽内の液レベル12aを計測するための液面計23が設けられている。液面計23は従来から知られたものでよい。
【0016】
一方反対側には清澄水分離槽13が隣接して設けられており、清澄水分離槽13は略中間液レベルに設けられた開口27を介して連通している。また、清澄水を取り出すための清澄水管28が適宜の位置に設けられている。清澄水管28の取水口28aの高さレベルはろ液分離槽11の通常運転時の水面レベルより少し低くなっている。清澄水管28に清澄水が円滑に流れる程度に低くするのが望ましい。
【0017】
また、ろ液分離槽11の底と貯留槽12の底は第1開閉弁30を介して管路31、31により連通しており、更に、貯留槽12の底は第3開閉弁32を介して外部(例えば、汚泥貯留槽)に連通している。第1開閉弁30、第2開閉弁20、第3開閉弁32及び攪拌機22は制御装置35によって制御されている。以下に本実施形態の装置の運転、制御手順について説明する。
【0018】
図3において、ステップS1は脱水ろ液でろ液分離槽11を満たしていき、清澄水管28から清澄水の排出が始まる状態で運転を開始する。このときの状況を図5(A)に示す。貯留槽12内の固形分の量が少なく液位計23の液レベルは中レベル以下であり、第1開閉弁30、第2開閉弁20及び第3開閉弁32は閉じた状態にある。ステップS2では運転開始から所定時間T1経過したときに第2開閉弁20を時間T2だけ開いて浮上固形分をガイド溝19から貯留槽12へ送出する。このときの状況を図5(B)に示す。ステップS3では第2開閉弁20を閉じた後第1開閉弁30を時間T4だけ開いて沈殿固形分をろ液分離槽11から貯留槽12へ送出する。この際、沈殿固形分の送出はろ液分離槽11と貯留槽12の水位ヘッド差により行う。このときの状況を図6(C)に示す。この際ろ液分離槽11内の液面レベルが多少下がり、清澄水管28からの清澄水量が減少する。
【0019】
このとき貯留槽12の液レベルが中レベルを超えていれば攪拌機22を回転させて貯留槽12の固形分(浮上した固形分、沈殿した固形分)を混合する(ステップS4)。この操作(ステップS2〜ステップS4)を貯留槽12の液レベルが高レベルを超えるまで繰り返す。液レベルが高レベルを超えたときは第3開閉弁32を開いて貯留槽12内の混合固形分を外部に送出する。このときの状況を図6(D)に示す。混合固形分の送出は液レベルが底レベルに到達するまで続行する。以上の操作を運転停止まで行う。なお、T1(浮上固形分初期排出開始時間)、T3(浮上固形分排出開始時間)は何れも(0〜60)分の範囲から選択し、T2(浮上固形分排出時間)、T4(沈殿固形分排出時間)は何れも(0〜60)分の範囲から選択するのが望ましい。この時間選択により、水槽からのあふれ防止を図ったり、水位ヘッド差がうまく確保でき、装置の処理連続性が確保できる。
図4は以上の流れを示したタイムチャートである。
【0020】
以上に説明したように、本実施形態よれば、従来装置に比べてより掻寄ブレード64、65の代わりに自然分離を利用して軽固形分を分離除去するようにしたので、渦流が発生せず固形分の沈降や浮上が静かに円滑に行われ、装置のコンパクト化が可能になり、かつ、構造も簡単になり故障が生じにくく、信用性が高くなるという効果が得られる。又製造コストも安価になり、掻寄ブレード64、65を駆動する装置も不要となり、装置のコストやランニングコストが安価になるという効果も得られる。
【0021】
以上、この発明の実施形態、実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を実施した実施形態の全体正面図を示す。
【図2】本実施形態の上面図を示す。
【図3】本実施形態の操作のフローチャートを示す。
【図4】本実施形態のタイムチャートを示す。
【図5】(A)、(B)は本実施形態の工程における状況を示す。
【図6】(C)、(D)は本実施形態の続きの工程における状況を示す。
【図7】従来装置の周辺システムを示す。
【図8】従来装置の正面図を示す。
【図9】従来装置の上面図を示す。
【符号の説明】
【0023】
10 ろ液分離装置(分離除去装置)
11 ろ液分離槽(分離槽)
12 貯留槽
13 清澄水分離槽
15 ろ液供給管(排液供給パイプ)
17 散水装置
19 ガイド溝
20 第2開閉弁
22 攪拌機
27 清澄水連通孔
28 清澄水管
30 第1開閉弁
32 第3開閉弁
35 コントローラ(制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥処理装置の脱水機や濃縮機等から排出される排液中に含まれる固形分を分離して除去する分離除去装置において、該排液中含まれる浮上固形分、沈降固形分と液分とを自然分離する分離槽と、該分離槽の液中に該排液の流出口を有する排液供給パイプと、浮上固形分を集めるガイド溝と、固形分を貯留する貯留槽と、該ガイド溝と該貯留槽との連通路に設けた第2開閉弁と、該貯留槽の液面レベルを計測する液面計と、該分離槽の中間液位レベルで連通する連通孔を有する清澄水分離槽と、該清澄水分離槽内に取水口を有する清澄水管と、該分離槽の底部と該貯留槽の底部との連通路に設けた第1開閉弁と、該貯留槽の底部と外部の適宜の位置に配置された外部装置とを連通する連通路に設けた第3開閉弁と、前記各開閉弁を制御する制御装置とを具備したことを特徴とする液中の固形分分離除去装置。
【請求項2】
前記液面計は前記貯留槽の液面レベルの高レベル、中レベル、低レベルを検出し、前記制御装置は液面レベルが低レベルにあるときは第1開閉弁並びに第3開閉弁を閉じ、液面レベルが高レベルになったときに攪拌機を回転させると共に第1開閉弁を開き、分離槽の底に沈降した固形分を水位ヘッド差により貯留槽中に流入させ、その後に第3開閉弁を開いて固形分を外部装置に送出することを特徴とする請求項1に記載の液中の固形分分離除去装置。
【請求項3】
前記制御装置は該分離除去装置が運転中で、前記貯留槽の液面レベルが前記低レベル又は中レベルにあるときは前記第2開閉弁を一定時間ごとに開閉して前記浮上固形分を前記貯留槽へ放出する制御をすることを特徴とする請求項1又は請求項2の何れか1に記載の液中の固形分分離除去装置。
【請求項4】
該分離槽の液面上方に散水装置を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1に記載の液中の固形分分離除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−152243(P2007−152243A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351730(P2005−351730)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【Fターム(参考)】