説明

液体充填装置、液体充填方法

【課題】サックバック時においてノズルの開口部付近に液体を残りにくくすることにより、液垂れを確実に防止することができる液体充填装置を提供すること。
【解決手段】液体充填装置は、粘調な液体が流れるノズル51を備え、ノズル51の下流側にある開口部52から液体を吐出することにより、液体の充填を開始する一方、液体の充填を停止するときに、開口部52からノズル51の上流側に液体をサックバックする。ノズル51の内部領域60には、充填時にノズル51の下流側に摺動し、サックバック時にノズル51の上流側に摺動する中駒61が設けられる。中駒61は、内部領域60において中駒61よりも上流側の領域60aと下流側の領域60bとを連通させる連通孔65を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味料などの液体の充填に用いられる液体充填装置、及び、液体を充填する液体充填方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体の充填後に液体をサックバック(吸引)することにより、液垂れを防止する液体充填装置が種々提案されている(例えば特許文献1参照)。具体的に言うと、液体充填装置は、ノズル101の下流側にある開口部101aから液体100を吐出することにより、液体100の充填を開始するようになっている(図7(a)参照)。そして、液体充填装置は、液体100の充填を停止するときに、開口部101aからノズル101の上流側に液体100をサックバックするようになっている(図7(b),(c)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−86595号公報(図5など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液体100がノズル101の上流側にサックバックされる際には、液体100とノズル101の内壁面101bとの間に摩擦力(表面張力)が作用する。これにより、内壁面101bに接触する外周部分での液体100の移動距離が、内壁面101bに接触しない中央部分での液体100の移動距離よりも短くなるため、液体100の下端面には勾配が生じるようになる(図7(c)参照)。その結果、液体100の一部が内壁面101bの開口部101a付近に残るようになるため、液垂れを完全に防止できないという問題がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、サックバック時においてノズルの開口部付近に液体を残りにくくすることにより、液垂れを確実に防止することができる液体充填装置及び液体充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、粘調な液体が流れるノズルを備え、前記ノズルの下流側にある開口部から前記液体を吐出することにより、前記液体の充填を開始する一方、前記液体の充填を停止するときに、前記開口部から前記ノズルの上流側に前記液体をサックバックする液体充填装置であって、前記ノズルの内部領域に、充填時に前記ノズルの下流側に摺動し、サックバック時に前記ノズルの上流側に摺動する中駒が設けられ、前記中駒は、前記内部領域において前記中駒よりも上流側の領域と下流側の領域とを連通させる連通孔を有することを特徴とする液体充填装置をその要旨とする。
【0007】
従って、請求項1に記載の発明によると、ノズルの上流側に液体をサックバックする際に、中駒がノズルの上流側に摺動するため、ノズルの内壁面付近に残っている液体が、中駒に押されて上流側に移動するようになる。これにより、ノズル内の中駒の下流側に負圧領域が形成され、ノズルの開口部付近の液体を吸い上げることが可能になるため、液垂れを確実に防止することができる。しかも、中駒は連通孔を有しているため、液体を吐出する際に、中駒の上流側の領域にある液体を、連通孔を介して下流側の領域に移動させて開口部から確実に吐出させることができる。
【0008】
ここで、前記粘調な液体としては、調味料などの食品、洗剤や塗料などの化学薬品、シャンプーやリンスなどの化粧品、医薬品などが挙げられる。また、粘調な調味料の具体例としては、味噌、ソース、ドレッシング、ケチャップ、各種タレ、クリームなどが挙げられる。さらに、粘調な調味料には、例えば、寒天、ガム類(キサンタンガム等の増粘多糖類)、澱粉類、ペクチン、ゼラチン等の増粘剤などが含まれる。なお、前記粘調な液体は、充填時における粘度が例えば1000cps以上10000cps以下であることが好ましく、特には3000cps以上7000cps以下であることが好ましい。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記中駒は、アクチュエータを介さずに摺動するものであり、前記液体が前記ノズルの下流側に移動する際に、前記液体に押されることによって前記ノズルの下流側に摺動するとともに、前記液体が前記ノズルの上流側に移動する際に、前記液体とともに上流側に引っ張られることによって前記ノズルの上流側に摺動することをその要旨とする。
【0010】
従って、請求項2に記載の発明によると、中駒を摺動させるためのアクチュエータが不要となるため、液体充填装置の簡略化を図ることができ、ひいては製造コストの削減を達成しやすくなる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記液体充填装置は、前記ノズルの上流側の端部に連通するとともに供給源からの前記液体を前記ノズルに供給する液体供給管と、前記液体供給管から分岐して計量ポンプに連通する液体給排管と、前記液体供給管における前記液体給排管の分岐部の上流側に配設された上流側弁と、前記液体供給管における前記分岐部の下流側に配設された下流側弁とを備え、前記上流側弁及び前記下流側弁は、弁体の外径よりも内径が大きい大径部と、前記弁体の外径よりも内径が小さい小径部とからなる筒状の弁本体を備え、前記弁体が前記小径部を塞いでいない場合に開状態となり、前記弁体が前記小径部を塞いでいるときに閉状態となるものであり、前記下流側弁における前記弁体の移動距離が、前記上流側弁における前記弁体の移動距離よりも長く設定されていることをその要旨とする。
【0012】
計量ポンプを駆動して液体を供給源から液体給排管側に流すときに、上流側弁が開状態となるとともに下流側弁が閉状態となると、供給源からの液体が計量ポンプ側に移動するようになる。次に、計量ポンプを駆動して液体を計量ポンプ側から液体供給管側に流すときに、上流側弁が閉状態となるとともに下流側弁が開状態となると、計量ポンプ側の液体がノズル側に移動するようになる。ここで、上流側弁における弁体の移動距離を長く設定すると、液体を計量ポンプ側から液体供給管側に流す際に、上流側弁が閉状態となるまでに時間が掛かってしまう。その結果、供給源側に液体の一部が逆流してしまうため、充填量が不安定となってしまう。一方、下流側弁における弁体の移動距離を短く設定すると、液体を供給源から液体給排管側に流す際に、下流側弁がすぐに閉状態となってしまう。その結果、液体給排管に流れてくる液体の大部分が供給源側からのものとなり、ノズル側からの引き込みが殆どない状態となるため、いわゆるサックバックを生じなくなってしまう。
【0013】
そこで、請求項3に記載の発明では、下流側弁における弁体の移動距離を、上流側弁における弁体の移動距離よりも長く設定している。これにより、液体の充填後に液体を液体給排管側に流す際に、下流側弁が開状態から閉状態に切り替わるまでに掛かる時間が長くなるため、サックバックを生じさせることができる。また、液体を充填する際には、上流側弁が開状態から閉状態に素早く切り替わるために充填量が安定する。なお、弁体の形状は特に限定されず任意であるが、例えば、球状、円筒状、逆円錐状などであることが好ましい。
【0014】
請求項4に記載の発明は、ノズルの下流側にある開口部から粘調な液体を吐出することにより、前記液体の充填を開始する一方、前記液体の充填を停止するときに、前記開口部から前記ノズルの上流側に前記液体をサックバックする液体の充填方法であって、前記液体を吐出する際に、前記ノズルの内部領域に設けられた中駒を前記ノズルの下流側に摺動させるとともに、前記中駒に設けられた連通孔を介して、前記内部領域において前記中駒よりも上流側の領域から前記下流側の領域に前記液体を移動させ、前記液体をサックバックする際に、前記中駒を前記ノズルの上流側に摺動させるとともに、前記中駒の外周面が前記ノズルの内壁面に接触した状態で移動することにより、前記開口部付近にある前記液体を前記ノズルの上流側に移動させることを特徴とする液体充填方法をその要旨とする。
【0015】
従って、請求項4に記載の発明によると、ノズルの上流側に液体をサックバックする際に、中駒がノズルの上流側に摺動するため、ノズルの内壁面付近に残っている液体が、中駒に押されて上流側に移動するようになる。これにより、ノズル内の中駒の下流側に負圧領域が形成され、ノズルの開口部付近の液体を吸い上げることが可能になるため、液垂れを確実に防止することができる。しかも、液体を吐出する際に、中駒の上流側にある液体を、中駒に設けられた連通孔を介して下流側に移動させて開口部から確実に吐出させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、請求項1〜3に記載の発明によると、サックバック時においてノズルの開口部付近に液体を残りにくくすることにより、液垂れを確実に防止することができる液体充填装置を提供することができる。また、請求項4に記載の発明によると、液垂れを確実に防止することができる液体充填方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の液体充填装置を示す概略構成図。
【図2】(a)は上流側弁を示す概略断面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は下流側弁を示す概略断面図。
【図3】ノズルを示す概略断面図。
【図4】(a)は中駒を示す概略断面図、(b)は中駒を示す下面図。
【図5】(a)〜(d)は、液体充填方法を示す説明図。
【図6】(a)は他の実施形態の中駒を示す概略断面図、(b)は他の実施形態の中駒を示す下面図。
【図7】(a)〜(c)は、従来技術における液体充填方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1に示される液体充填装置11は、調味料2(液体)を容器3に充填する装置である。なお、本実施形態で用いられる調味料2は、粘調な調味料であり、充填時における調味料2の粘度は4000cps〜6000cps程度である。
【0020】
液体充填装置11は、複数の容器3を搬送する搬送コンベア71を備えている。なお、本実施形態の搬送コンベア71はベルトコンベアである。即ち、搬送コンベア71は、始端及び終端にそれぞれ設けられた回転軸と、両回転軸間に巻回され、容器3を底面側から支持する無端状のベルトと、ベルトを駆動するモータとを有している。
【0021】
また図1に示されるように、液体充填装置11は、液体供給管12と、液体供給管12の分岐部14から分岐する液体給排管13とを備えている。液体供給管12における分岐部14の上流側には、液体供給管12を開状態または閉状態に切り替える上流側弁21が配設され、液体供給管12における分岐部14の下流側には、同じく液体供給管12を開状態または閉状態に切り替える下流側弁31が配設されている。上流側弁21には吸引ホース15の下流側の端部が接続され、吸引ホース15の上流側の端部は、調味料2の供給源であるホッパー16内にて開口している。また、液体給排管13の上流側の端部には計量ポンプ41が接続されている。計量ポンプ41は、エアシリンダ42によって往復動するプランジャー43を備えており、プランジャー43の往復動に伴って調味料2を吸排するようになっている。
【0022】
なお図2(a),(b)に示されるように、上流側弁21は略円筒状の弁本体22を備え、弁本体22の内部には、球状の弁体であるステンレス製のボール20が収容されている。また、弁本体22は、大径部23、小径部24及び弁座25を有している。大径部23は、液体供給管12における上流側の端部に接続され、ボール20の外径よりも内径が大きくなっている。小径部24は、吸引ホース15における下流側の端部に接続され、ボール20の外径よりも内径が小さくなっている。弁座25は、大径部23及び小径部24の接続部分に形成されている。よって、上流側弁21は、ボール20が弁座25から離間して小径部24を塞いでいない場合に開状態となり、ボール20が弁座25に接触して小径部24を塞いでいるときに閉状態となる。そして、大径部23の下流側にある開口部はボール押さえ板26によって塞がれており、ボール押さえ板26には大径部23内の領域と液体供給管12内の領域とを連通させる複数の貫通孔27が設けられている。
【0023】
一方、図2(c)に示される前記下流側弁31は、上流側弁21と略同様の構成を有しているが、一部の構成が異なっている。即ち、下流側弁31を構成する弁本体32は、ボール30の外径よりも内径が大きい大径部33と、ボール30の外径よりも内径が小さい小径部34とを有している。よって、下流側弁31は、ボール30が小径部34を塞いでいない場合に開状態となり、ボール30が小径部34を塞いでいるときに閉状態となる。また、小径部34は、液体供給管12における前記分岐部14側に接続され、大径部33は、液体供給管12において分岐部14側とは反対側に接続されている。なお、大径部33の流路方向における長さは、上流側弁21の大径部23の流路方向における長さよりも長くなっている。よって、本実施形態では、下流側弁31におけるボール30の移動距離が、上流側弁21におけるボール20の移動距離よりも長く設定されている。
【0024】
図1に示されるように、液体供給管12における下流側の端部には、前記調味料2が流れるノズル51が接続されている。ノズル51は、前記ホッパー16から供給されてきた調味料2をノズル51の下流側にある開口部52から吐出することにより、前記容器3内に対して調味料2の充填を開始するようになっている。一方、ノズル51は、調味料2の充填を停止するときに、開口部52からノズル51の上流側に調味料2をサックバック(吸引)するようになっている。
【0025】
図3に示されるように、ノズル51は、略円筒状をなし、小径管部53、大径管部54及び段部55を備えている。小径管部53は、大径管部54よりも内径及び外径が小さく設定されるとともに、開口部52を有している。大径管部54は、小径管部53において開口部52側とは反対側の端部に接続されるとともに、液体供給管12における下流側の端部に接続されている。段部55は、小径管部53及び大径管部54の接続部分に形成されている。なお、小径管部53の流路方向における長さは短く(本実施形態では3mm程度)になっている。
【0026】
また、ノズル51の内部領域60には中駒61が設けられている。中駒61は、前記容器3への充填時において前記調味料2がノズル51の下流側に移動する際に、調味料2に押されることによってノズル51の下流側に摺動するようになっている(図5(a)参照)。また、中駒61は、サックバック時において調味料2がノズル51の上流側に移動する際に、調味料2とともにノズル51の上流側に摺動するようになっている(図5(b)〜(d)参照)。即ち、中駒61は、アクチュエータを介さずに駆動するものである。
【0027】
図3,図4に示されるように、中駒61は、中駒本体62、ロッド部63及び円板部64を備えている。中駒本体62は、円板状をなし、中駒61の下流側の端部に形成されている。中駒本体62は、内部領域60を、中駒61よりも上流側の領域60aと下流側の領域60bとに分けるようになっている。また、中駒本体62の外径は、前記小径管部53の内径よりも大きく、かつ、大径管部54の内径よりもやや小さく設定されている。よって、中駒本体62は、外周面62aがノズル51の内壁面(具体的には、大径管部54の内壁面54a)に摺接するようになっている。また、ロッド部63は、中駒本体62の上流側面62bからノズル51の上流側に突出している。さらに、円板部64は、外径が中駒本体62の外径よりも小さく、かつロッド部63の外径よりも大きく設定され、中心部にロッド部63の上流側の端部が接続されている。
【0028】
図3,図4に示されるように、中駒本体62には、上流側の領域60aと下流側の領域60bとを連通させる円形状の連通孔65が8箇所に設けられている。各連通孔65は、中駒本体62の中心部を避けて配置されるとともに、中駒本体62の外周部に沿って等間隔に配置されている(図4(b)参照)。また、中駒本体62の下流側面62cには、ノズル51の下流側に突出する突出部66が形成されている。突出部66は、円環状をなし、中駒本体62において各連通孔65の外周側に配置されている。また、突出部66の外径は中駒本体62の外径と等しく設定され、突出部66の外周面は中駒本体62の外周面62aの一部を構成している。よって、突出部66は、下流側の端面が前記段部55に対して接離可能となっている。
【0029】
以下、液体充填装置11を用いた調味料2の充填方法を説明する。
【0030】
まず、調味料2を液体充填装置11のホッパー16に投入し、計量ポンプ41のプランジャー43をエアシリンダ42側に移動させる。このとき、液体供給管12内における上流側弁21と下流側弁31との間の領域や、液体給排管13内の領域が負圧となるため、ボール20が分岐部14側に移動して上流側弁21が開状態となる一方、ボール30が分岐部14側に移動して下流側弁31が閉状態となる。その結果、計量ポンプ41とホッパー16とが連通するため、ホッパー16内の調味料2が、吸引ホース15、上流側弁21、液体供給管12及び液体給排管13を順番に通過し、計量ポンプ41内に充填される。
【0031】
計量ポンプ41内への調味料2の充填が終了すると、計量ポンプ41のプランジャー43を液体給排管13側に移動させる。このとき、液体供給管12内における上流側弁21と下流側弁31との間の領域や、液体給排管13内の領域が正圧となるため、ボール30が分岐部14から離間する方向に移動して下流側弁31が開状態となる一方、ボール20が分岐部14から離間する方向に移動して上流側弁21が閉状態となる。その結果、計量ポンプ41とノズル51とが連通するため、計量ポンプ41内の調味料2が、液体給排管13、液体供給管12(下流側弁31)を順番に通過し、ノズル51内に導かれる。
【0032】
そして、ノズル51内に導かれた調味料2がノズル51の下流側に移動して開口部52から吐出され、容器3内への調味料2の充填が開始される(図5(a)参照)。この際、ノズル51内にある中駒61は、調味料2に押されることによってノズル51の下流側に摺動し、突出部66の下流側端面がノズル51内にある段部55に接触する。それとともに、中駒61よりも上流側の領域60aにある調味料2が、連通孔65を通過して中駒61よりも下流側の領域60bに移動する。
【0033】
容器3内への調味料2の充填が終了すると、計量ポンプ41のプランジャー43をエアシリンダ42側に移動させる。このとき、液体供給管12内における上流側弁21と下流側弁31との間の領域や、液体給排管13内の領域が負圧となるため、ボール20が分岐部14側に移動して上流側弁21が閉状態から開状態に切り替わる。また、下流側弁31内のボール30は分岐部14側(即ち、下流側弁31が開状態から閉状態に切り替わる方向)に移動する。しかし、ボール30の移動距離が上流側弁21におけるボール20の移動距離よりも長く設定されているため、この時点で、ボール30は小径部34を塞ぐ位置に到達しておらず、下流側弁31は開状態を維持し続ける。その結果、計量ポンプ41とホッパー16とが連通するのに加えて、計量ポンプ41とノズル51とが連通した状態に維持される。これにより、中駒61の上流側が陰圧になるため、ノズル51内の調味料2が上流側にサックバック(吸引)される。この際、中駒61は、サックバック時の吸引力によって調味料2とともに上流側に引っ張られてノズル51の上流側に摺動し(図5(b)参照)、突出部66の下流側端面が段部55から離間する。このとき、中駒本体62の外周面62aが大径管部54の内壁面54aに接触した状態で移動する(図5(c),(d)参照)。また、上流側の領域60aにおいて大径管部54の内壁面54a付近に残っている調味料2が、中駒本体62に押されて(かき上げられて)上流側に移動する。それとともに、中駒61よりも下流側の領域60bも陰圧となり、開口部52付近の調味料2を吸い上げるため、液垂れを確実に防止することができる。
【0034】
その後、一定時間が経過すると、下流側弁31内のボール30が小径部34を塞ぐ位置に到達し、下流側弁31が開状態から閉状態に切り替わる。その結果、計量ポンプ41とノズル51との連通が遮断され、調味料2のサックバックが終了する。これにより、液体充填装置11による調味料2の充填が終了する。
【0035】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0036】
(1)本実施形態の液体充填装置11では、ノズル51の上流側に調味料2をサックバックする際に、中駒61がノズル51の上流側に摺動するため、ノズル51の内壁面付近に残っている調味料2が、中駒61に押されて上流側に移動するようになる。これと同時に、ノズル51内の中駒61の下流側の領域60bが負圧となり、開口部52付近の調味料2を吸い上げるため、液垂れを確実に防止することができる。しかも、中駒61は連通孔65を有しているため、調味料2を吐出する際に、中駒61の上流側の領域60aにある調味料2を、連通孔65を介して下流側の領域60bに移動させて開口部52から確実に吐出させることができる。
【0037】
(2)本実施形態の中駒61は、中駒本体62からノズル51の下流側に突出し、段部55に対して接離可能な突出部66を備えている。これにより、調味料2の充填時に中駒61がノズル51の下流側に摺動したとしても、ノズル51の下流側への中駒61の摺動は、突出部66の下流側端部がノズル51内にある段部55に接触することで規制される。よって、ノズル51の開口部52からの中駒61の脱落を防止することができる。また、突出部66は、連通孔65を有する中駒本体62からノズル51の下流側に突出しているため、調味料2の充填時に中駒61が段部55に接触したとしても、連通孔65が段部55によって塞がれなくて済む。さらに本実施形態では、突出部66の外周面が中駒本体62の外周面62aの一部を構成しているため、外周面62aと大径管部54の内壁面54aとの接触面積が、突出部66がない場合よりも大きくなる。よって、突出部66がない場合に比べて中駒61を安定させて摺動させることができる。
【0038】
(3)本実施形態の中駒61は、突出部66に加えて、ロッド部63と円板部64とを備えている。このため、摺動時に中駒61が傾いたとしても、円板部64の外周縁が大径管部54の内壁面54aに接触するため、中駒61がさらに傾くことが防止される。ゆえに、中駒61をよりいっそう安定させて摺動させることができる。
【0039】
(4)本実施形態では、小径管部53の流路方向における長さを短く(本実施形態では3mm程度)に設定している。換言すると、中駒本体62によって調味料2がかき上げられない領域(小径管部53の内壁面)の流路方向における長さが短くなっている。このため、ノズル51が小径管部53及び大径管部54によって構成される場合であっても、サックバック時にノズル51の内壁面及び開口部52付近に残る調味料2の量を減らすことができる。しかも、中駒61が上流側に摺動することによって生じた下流側の領域60bの負圧により、残っている調味料2を確実に吸い上げることができる。
【0040】
(5)本実施形態の調味料2の充填方法では、計量ポンプ41への調味料2供給時に、下流側弁31が開状態を維持し続けるため、計量ポンプ41とノズル51とが連通した状態に維持されてノズル51内の調味料2をサックバック(吸引)することができる。
【0041】
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
【0042】
・上記実施形態の中駒61は、アクチュエータを介さずに摺動するものであったが、エアシリンダやソレノイド等のアクチュエータを介して摺動するものであってもよい。
【0043】
・上記実施形態において、サックバック時に連通孔65を塞ぐ閉塞弁を中駒本体62に設けてもよい。即ち、各連通孔65は、充填時に上流側の領域60aと下流側の領域60bとが連通し、サックバック時に上流側の領域60aと下流側の領域60bとの連通が遮断されるようになっていてもよい。サックバック時に前記連通が遮断されると、中駒が上流側へ摺動されやすくなるために好ましい。
【0044】
このような中駒としては、例えば、弾性体で形成された筒状弁であって、外力が加わっていないときに一端が閉塞し、筒内の内圧が高まったときに閉塞された一端が開口する閉塞弁(以下「筒型一端開閉弁」という)を、中駒本体62に設けたものなどが挙げられる。筒型一端開閉弁を用いると、充填時には、調味料2が弁内に流れ込むことで筒内の内圧が上昇して弁が開口し、上流側の領域60aと下流側の領域60bとが連通する。サックバック時には、筒内の内圧が低下するために弁が閉塞し、上流側の領域60aと下流側の領域60bとの連通が遮断される。
【0045】
・上記実施形態の中駒61は、中駒本体62に加えて、ロッド部63、円板部64及び突出部66を備えていたが、ロッド部63、円板部64及び突出部66は省略されていてもよい。また、中駒は、上記した筒型一端開閉弁と同一の形状をなす中駒本体を備えていてもよい。さらに、図6(a),(b)に示す中駒81のように、比較的小径の連通孔85を有する円柱型の中駒本体82を備えていてもよい。
【0046】
・上記実施形態における中駒61の中駒本体62には、中駒本体62の中心部を避けて配置されるとともに、中駒本体62の外周部に沿って等間隔に配置される8個の連通孔65が設けられていた。しかし、連通孔65の位置、大きさ及び数は、中駒61の摺動や調味料2の充填に影響を与えない限り、特に制限されるものではない。但し、複数の連通孔を設ける場合には、中駒本体62の中心部を避けて配置したほうが、サックバック時に、下流側にある調味料2や空気を吸引しにくくなるために好ましい。また、連通孔の断面積を大きくし過ぎると、サックバック時に、下流側にある調味料2や空気を連通孔から吸引しやすくなるため、結果として中駒61自体に作用する吸引力が小さくなり、中駒61が上流側に摺動しにくくなるおそれがある。従って、連通孔の断面積の合計を所定の大きさにする場合には、断面積が大きい連通孔を少数設けるよりも、断面積が小さい連通孔を多数設けるほうが好ましい。断面積が小さい連通孔を多数設けると、連通孔の内周面の合計の表面積が大きくなり、調味料2が通過する際の抵抗が大きくなるため、サックバック時に連通孔から下流側にある調味料2や空気を吸引しにくくなる。当然ながら、抵抗が大き過ぎると、充填時に必要量の調味料2が吐出しにくくなるなどの弊害が生じることもあり得るため、調味料2の粘度や充填速度などを念頭に置き、中駒61の摺動具合などを考慮したうえで適宜設計することがよい。
【0047】
・上記実施形態のノズル51には小径管部53が設けられていたが、充填する液体の種類によっては小径管部53を省略してもよい。ここで、小径管部53を設けることの主目的は、液体を整流して充填方向を定めることにある。従って、例えば充填速度が遅い場合、充填する液体の粘度が高い場合、充填される容器3の入口が大きい場合、ノズル51の開口部52と容器3の入口との距離が短い場合などは、液体を整流しなくても充填に不具合を生じにくいため、小径管部53を設ける必要がなくなってしまう。なお、小径管部53を省略しない場合、小径管部53は、流路方向における長さを短くなるように設計されることが好ましく、内部の体積が小さくなるように設計されることが好ましい。何故なら、サックバック時に開口部52付近に残る調味料2を確実に吸い上げやすくなり、液垂れを防止しやすくなるからである。
【0048】
・上記実施形態では、弁21,31の弁体として球状のボール20,30が用いられていたが、円筒状、直方体状、逆円錐状のものなどを弁体として用いてもよい。
【0049】
・上記実施形態の計量ポンプ41は、エアシリンダ42によってプランジャー43を往復動させていたが、クランクなどを用いてプランジャー43を往復動させてもよい。
【0050】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0051】
(1)請求項1乃至3のいずれか1項において、前記連通孔は、前記中駒の中心部を避けて配置されていることを特徴とする液体充填装置。
【0052】
(2)請求項1乃至3、技術的思想(1)のいずれか1つにおいて、前記連通孔は、前記中駒における複数箇所に設けられるとともに、前記中駒の外周部に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする液体充填装置。
【0053】
(3)請求項1乃至3のいずれか1項において、前記中駒は、前記中駒の下流側の端部に形成され、前記ノズルの内部領域を前記上流側の領域と前記下流側の領域とに分けるとともに、外周面が前記ノズルの内壁面に摺接する中駒本体と、前記中駒本体から前記ノズルの上流側に突出するロッド部とを備えることを特徴とする液体充填装置。
【0054】
(4)技術的思想(3)において、前記ノズルは、前記開口部を有し、前記中駒本体の外径よりも内径が小さい小径管部と、前記小径管部において前記開口部側とは反対側の端部に接続され、前記中駒本体の外径と内径が略等しい大径管部と、前記小径管部及び前記大径管部の接続部分に生じる段部とを備え、前記中駒は、前記中駒本体から前記ノズルの下流側に突出し、前記段部に対して接離可能な突出部を備えることを特徴とする液体充填装置。
【0055】
(5)技術的思想(4)において、前記小径管部の流路方向における長さは、前記大径管部の流路方向における長さよりも短いことを特徴とする液体充填装置。
【0056】
(6)請求項1乃至3、技術的思想(1)乃至(5)のいずれか1つにおいて、吐出時における前記液体の粘度は、1000cps以上10000cps以下、好ましくは3000cps以上7000cps以下であることを特徴とする液体充填装置。
【0057】
(7)ノズルの下流側にある開口部から粘調な液体を吐出することにより、前記液体の充填を開始する一方、前記液体の充填を停止するときに、前記開口部から前記ノズルの上流側に前記液体をサックバックする液体の充填方法であって、前記液体を吐出する際に、前記ノズルの内部領域に設けられた中駒を前記ノズルの下流側に摺動させるとともに、前記中駒に設けられた連通孔を介して、前記内部領域において前記中駒よりも上流側の領域から前記下流側の領域に前記液体を移動させ、前記液体をサックバックする際に、前記中駒を前記ノズルの上流側に摺動させるとともに、前記連通孔を介して、前記下流側の領域から前記上流側の領域に前記液体を移動させ、併せて、前記中駒の外周面が前記ノズルの内壁面に接触した状態で移動することにより、前記開口部付近にある前記液体を前記ノズルの上流側に移動させることを特徴とする液体充填方法。
【符号の説明】
【0058】
2…液体としての調味料
11…液体充填装置
12…液体供給管
13…液体給排管
14…分岐部
16…供給源としてのホッパー
20,30…弁体としてのボール
21…上流側弁
22,32…弁本体
23,33…大径部
24,34…小径部
31…下流側弁
41…計量ポンプ
51…ノズル
52…開口部
60…内部領域
60a…上流側の領域
60b…下流側の領域
61,81…中駒
62a…中駒の外周面
65,85…連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘調な液体が流れるノズルを備え、前記ノズルの下流側にある開口部から前記液体を吐出することにより、前記液体の充填を開始する一方、前記液体の充填を停止するときに、前記開口部から前記ノズルの上流側に前記液体をサックバックする液体充填装置であって、
前記ノズルの内部領域に、充填時に前記ノズルの下流側に摺動し、サックバック時に前記ノズルの上流側に摺動する中駒が設けられ、
前記中駒は、前記内部領域において前記中駒よりも上流側の領域と下流側の領域とを連通させる連通孔を有する
ことを特徴とする液体充填装置。
【請求項2】
前記中駒は、アクチュエータを介さずに摺動するものであり、前記液体が前記ノズルの下流側に移動する際に、前記液体に押されることによって前記ノズルの下流側に摺動するとともに、前記液体が前記ノズルの上流側に移動する際に、前記液体とともに上流側に引っ張られることによって前記ノズルの上流側に摺動することを特徴とする請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項3】
前記液体充填装置は、前記ノズルの上流側の端部に連通するとともに供給源からの前記液体を前記ノズルに供給する液体供給管と、前記液体供給管から分岐して計量ポンプに連通する液体給排管と、前記液体供給管における前記液体給排管の分岐部の上流側に配設された上流側弁と、前記液体供給管における前記分岐部の下流側に配設された下流側弁とを備え、
前記上流側弁及び前記下流側弁は、弁体の外径よりも内径が大きい大径部と、前記弁体の外径よりも内径が小さい小径部とからなる筒状の弁本体を備え、前記弁体が前記小径部を塞いでいない場合に開状態となり、前記弁体が前記小径部を塞いでいるときに閉状態となるものであり、
前記下流側弁における前記弁体の移動距離が、前記上流側弁における前記弁体の移動距離よりも長く設定されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体充填装置。
【請求項4】
ノズルの下流側にある開口部から粘調な液体を吐出することにより、前記液体の充填を開始する一方、前記液体の充填を停止するときに、前記開口部から前記ノズルの上流側に前記液体をサックバックする液体の充填方法であって、
前記液体を吐出する際に、前記ノズルの内部領域に設けられた中駒を前記ノズルの下流側に摺動させるとともに、前記中駒に設けられた連通孔を介して、前記内部領域において前記中駒よりも上流側の領域から前記下流側の領域に前記液体を移動させ、
前記液体をサックバックする際に、前記中駒を前記ノズルの上流側に摺動させるとともに、前記中駒の外周面が前記ノズルの内壁面に接触した状態で移動することにより、前記開口部付近にある前記液体を前記ノズルの上流側に移動させる
ことを特徴とする液体充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−189029(P2010−189029A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34774(P2009−34774)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【特許番号】特許第4354522号(P4354522)
【特許公報発行日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【出願人】(301058333)株式会社ミツカンサンミ (13)
【Fターム(参考)】