説明

液体収容容器

【課題】液体収容容器から液体噴射装置への液体供給の高速化および攪拌効率の向上。
【解決手段】カートリッジ本体10は、空気室100と、インク収容室110と、供給ポンプ120と、バッファ室130と、圧力調整弁140と、インク供給口150と、インク収容室110と供給ポンプ120とを連通する連通部160と、バッファ室130とインク収容室110とを連通して接続する連通部170とを備える。インク流路160を介して、インク収容室110からインクを導出し、バッファ室130へ搬送する。供給ポンプ120は、圧電素子を用いて構成されており、圧電素子を用いて、インク収容室110内のインクの残量を検出する残量検出センサとしても機能している。バッファ室130内に貯蔵されているインクのうち、圧力調整弁140へ供給されないインクは、バイパス流路170を介してインク収容室110へ戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器に関し、特に、液体を液体収容容器の外部へ供給するための供給ポンプを内蔵する液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどの液体噴射装置に装着される液体収容体として、例えば、インクジェットプリンタに搭載されるインクカートリッジが利用されている。従来、インクを供給するためのインク供給ポンプは液体噴射装置に設けられており、インク供給ポンプを駆動してインクカートリッジから液体噴射装置へインクの供給が行われている。
【0003】
また、近年、高精度な印刷品質の要求が高まり、印刷用のインクとして、例えば顔料インクがインクカートリッジ内に収容され利用されている。顔料インクは、染料インクに比して色材の粒子径が大きいため、インクカートリッジの鉛直下方(底部)に顔料インクのインク成分が沈降し、この結果、インクカートリッジ内の下方のインクは濃度が高く、上方のインクは濃度が低くなってしまい、インクカートリッジ内のインクの濃度分布に偏りが生じる。このような問題を解決するために、従来のインクカートリッジには、例えば、インクの流動により上下のインクが合流して攪拌・混合されるように構成したインク流路を備えるもの(例えば、引用文献1)や、インクよりも比重の高い移動体(攪拌用部材)を内部に設け、攪拌用部材の移動によってインクカートリッジ内のインクを攪拌するもの(例えば、引用文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−80730号公報
【特許文献2】特開平9−309212号公報
【特許文献3】特開2003−266730号公報
【特許文献4】特開2007−331308号公報
【特許文献5】特開2007−331342号公報
【特許文献6】特開平9−164704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年では液体噴射装置の処理速度が高速化しており、インクカートリッジ外部に設けられているインク供給ポンプは、液体噴射装置がインクを吐出する速度に対して、インク供給ポンプの供給速度が遅い。そのため、液体噴射装置の処理効率に対して十分な速度で十分な量のインクを供給することができないという問題が生じる。
【0006】
また、従来の技術では、インクカートリッジ内のインクの攪拌を十分に行うことができないという問題も生じる。例えば、引用文献1の技術では、インクの流速によって攪拌効率が異なり、十分な攪拌効果を得られない場合があり、引用文献2の技術では、インクを攪拌するための攪拌用部材がインクカートリッジ内に設けられるので、攪拌用部材を移動させる手段を設ける必要があるだけでなく、攪拌用部材の容積分だけインクカートリッジの容積効率の低下を招く。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、液体収容容器から液体噴射装置への液体供給の高速化および攪拌効率の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
液体噴射装置に液体を供給する液体収容容器であって、前記液体を収容する液体収容部と、前記液体を前記液体噴射装置へ供給するための液体供給口と、前記液体収容部に収容されている液体を前記液体供給口を介して前記液体噴射装置へ供給する供給ポンプと、を備える液体収容容器。
【0010】
適用例1の液体収容容器によれば、液体を供給する供給ポンプが液体収容容器に備えられている。従って、液体の供給速度を向上でき、液体噴射装置の処理速度に応じた速度で液体を供給できる。
【0011】
[適用例2]
適用例1の液体収容容器であって、更に、前記供給ポンプと前記液体供給口との間に設けられ、前記液体の圧力を調整する圧力調整手段を備える。なお、「供給ポンプと液体供給口との間」とは、供給ポンプから液体供給口に至るまでの液体の流通経路上の間という意味を含む。一般的に、供給ポンプにより搬送される液体には圧力変動が生じる。適用例2の液体収容容器によれば、液体の圧力を調整する圧力調整手段が、供給ポンプと液体供給口の間に設けられている。従って、液体の圧力を調整して、供給ポンプの駆動によって生じる液体の圧力変動を抑制できる。
【0012】
[適用例3]
適用例2の液体収容容器であって、更に、前記圧力調整手段と前記液体収容室を接続し、前記圧力調整手段から前記液体収容室に前記液体を戻すための接続手段を備える。適用例3の液体収容容器によれば、液体収容室から導出された液体を、再度、液体収容室へ戻すための接続手段が設けられている。従って、液体収容部から導出される液体と、再度液体収容部へ導入される液体の流れにより、液体収容室内において液体の流動を発生させることができる。よって、液体収容部内に移動体などの別部材を設けることなく、液体収容部内の液体を均質化できる。
【0013】
[適用例4]
適用例3記載の液体収容容器であって、前記接続手段は、前記接続手段を介して前記液体収容部内に戻された液体によって前記液体収容部内の液体の攪拌を促す位置に設けられている。適用例4の液体収容容器によれば、液体収容部内の液体の攪拌を促す位置に接続手段が設けられている。従って、接続手段を介して液体収容部内に戻される液体によって、液体収容部に収容されている液体の攪拌を促進できる。
【0014】
[適用例5]
適用例4の液体収容容器であって、前記液体収容部は、前記液体収容容器が前記液体噴射装置に装着された状態で鉛直下方に開口部を有し、前記接続手段の前記液体収容部側の端部は、前記液体収容部の前記開口部に接続されている。適用例5の液体収容容器によれば、接続手段の一端は、液体収容部の鉛直下方に設けられている開口部に接続されている。従って、液体は液体収容部の下方から液体収容部の内部へ戻される。よって、下方に沈降している濃度の濃い液体を効率的に流動させることができ、液体収容部内の液体の攪拌効率を向上できる。
【0015】
[適用例6]
適用例4の液体収容容器であって、前記液体収容部は、開口部を有し、前記接続手段の前記液体収容部側の端部は、前記開口部に接続されているとともに、前記液体収容容器が前記液体噴射装置に装着された状態で鉛直下方に向かうように形成されている。適用例6の液体収容容器によれば、接続手段の一端は、液体収容部の鉛直下方に向かうように開口部に接続されている。従って、液体収容部に収容されている液体を、鉛直方向に上から下へ向かうように流動させることができる。よって、液体収容部内の液体の攪拌効率を向上できる。
【0016】
[適用例7]
適用例4の液体収容容器であって、前記液体収容部は、前記開口部を有し、前記接続手段の前記液体収容部側の端部は、前記開口部に接続されているとともに、前記液体収容容器が前記液体噴射装置に装着された状態で鉛直下方から鉛直上方へ向かうように形成されている。適用例7の液体収容容器によれば、接続手段の一端は、液体収容部の鉛直下方から鉛直上方に向かうように開口部に接続されている。従って、液体収容部に収容されている液体を、鉛直方向に下から上へ向かうように流動させることができる。よって、液体収容部内の液体の攪拌効率を向上できる。
【0017】
[適用例8]
適用例1ないし適用例7いずれかの液体収容容器であって、前記供給ポンプは、圧電素子を用いて構成されているピエゾポンプである。適用例8の液体収容容器によれば、従来から利用されている圧電素子を用いることにより、簡易な構成で液体収容容器内に小型の供給ポンプを構成できる。
【0018】
[適用例9]
適用例8の液体収容容器であって、前記供給ポンプは、前記圧電素子への電圧印加後に生じる前記圧電素子の残留振動を用いて、前記液体の残量検出を行うセンサとして機能するように構成されている。適用例9の液体収容容器によれば、液体の供給ポンプと液体の残量検出センサとを兼用して構成できる。従って、新たに、残量検出センサを設ける必要が無いので、コストの削減や、液体収容容器の小型化を図ることができる。
【0019】
[適用例10]
適用例1ないし9の液体収容容器が装着される液体噴射装置であって、前記供給ポンプを駆動する駆動手段を備える。適用例10の液体噴射装置によれば、液体収容容器に設けられている供給ポンプを液体噴射装置から駆動制御できる。
【0020】
[適用例11]
請求項10の液体噴射装置であって、前記駆動手段は、前記液体噴射装置の電源がオン状態にされると、所定時間、前記供給ポンプを駆動する。一般的に、液体噴射装置の電源がオフ状態とされている間は、液体の流動が発生していないので、液体成分が沈降し、鉛直下方の液体は濃度が高くなっている。適用例11の液体噴射装置によれば、液体噴射装置の電源がオン状態にされると、供給ポンプが自動的に所定時間駆動される。従って、濃いインクが沈降することにより印刷結果に濃度むらが生じることを抑制できる。
【0021】
[適用例12]
請求項10の液体噴射装置であって、更に、前記液体噴射装置の電源がオフ状態とされていたオフ時間に関する時間情報を取得する時間情報取得手段と、前記液体噴射装置の電源がオン状態にされると、前記時間情報により表されるオフ時間に基づいて、前記所定時間を制御する制御手段と、備える。一般的に、オフ時間に比例して濃いインクの沈降の程度は異なる。適用例12の液体噴射装置によれば、液体噴射装置の電源がオン状態とされた際に、液体噴射装置の電源がオフ状態にされていたオフ時間に基づいて、供給ポンプが駆動される時間が制御される。従って、オフ時間に応じて、液体収容部内の液体の攪拌を適切に行うことができる。
【0022】
[適用例13]
請求項10の液体噴射装置であって、更に、前記供給ポンプの駆動指示を受信する指示受信手段を備え、前記駆動手段は、前記駆動指示を受信すると、前記供給ポンプを駆動する。適用例13の液体噴射装置によれば、供給ポンプは、駆動指示を受信すると駆動される。よって、利用者の所望のタイミングで液体収容部内の液体の攪拌を行うことができる。
【0023】
[適用例14]
適用例1ないし適用例10いずれかの液体噴射装置であって、前記駆動手段は、前記液体噴射装置への前記液体の供給時以外においても、前記供給ポンプを駆動する。適用例14の液体収容容器によれば、供給ポンプは、液体噴射装置への液体供給時以外においても駆動される。従って、液体収容部と液体供給口との間に設けられている圧力調整手段には、供給ポンプが駆動されていない場合に比して高い圧力の液体が供給される。よって、液体噴射装置の処理速度に対して必要とされるポンプ能より低いポンプ能の供給ポンプを適用できる。
【0024】
[適用例15]
適用例10ないし適用例14の液体噴射装置であって、前記駆動手段は、前記液体噴射装置の電源がオン状態の間は、前記供給ポンプを駆動する。適用例15の液体収容容器によれば、供給ポンプは、液体噴射装置の電源がオン状態の間は常時駆動されている。従って、供給ポンプが駆動されていない場合に比して、常時、圧力調整手段に高い圧力の液体を供給できる。また、攪拌作用を有する液体収容室では、電源オン状態の間は攪拌が行なわれる。
【0025】
[適用例16]
適用例10ないし適用例14の液体噴射装置であって、前記駆動手段は、前記液体の残量検出時と、前記液体の残留検出時以外とにおいて、前記供給ポンプの駆動方法を切り替える。適用例16の液体収容容器によれば、液体の残量検出時とこれ以外の場合とにおいて、供給ポンプの駆動方法が切り替えられる。従って、それぞれの処理に応じて、適切に供給ポンプを駆動できる。
【0026】
本発明において、上述した種々の態様は、適宜、組み合わせたり、一部を省略したりして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施例に係る液体収容体としてのインクカートリッジの外観斜視図。
【図2】第1実施例に係るインクカートリッジをキャリッジに取り付けた状態を示す図。
【図3】第1実施例におけるカートリッジ本体の内部構成を例示する斜視図。
【図4】第1実施例におけるインクの経路およびインクジェットプリンタの機能ブロックについて説明する説明図。
【図5】第1実施例における供給ポンプ120の構成を説明する模式図。
【図6】第1実施例における供給ポンプ120の駆動波形を示す波形図。
【図7】第1実施例における圧力調整弁140の概略構成を例示する断面図。
【図8】第1実施例におけるインク収容室110内のインクが攪拌される仕組みについて模式的に説明する説明図。
【図9】第2実施例における制御回路190aについて説明する説明図。
【図10】変形例(1)におけるカートリッジ本体10aの内部構成を例示する斜視図。
【図11】変形例(2)におけるカートリッジ本体10bの内部構成を例示する斜視図。
【図12】変形例(3)におけるインクカートリッジのカートリッジ本体10cの内部構成を例示する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
A.第1実施例:
A1.インクカートリッジの構成:
図1は第1実施例に係る液体収容容器としてのインクカートリッジの外観斜視図である。図2は、第1実施例に係るインクカートリッジを液体噴射装置としてのプリンタのキャリッジに取り付けた状態を示す図である。図3は、第1実施例におけるカートリッジ本体の内部構成を例示する斜視図である。なお、図1、図2には、インクカートリッジの姿勢(方向)を特定するためにXYZ軸が図示されている。インクカートリッジ1は、内部に液体の顔料インクを収容する。以降、本明細書では、「鉛直方向」とは、インクカートリッジ1がインクジェットプリンタに装着された状態における鉛直方向を表し、Z軸に当たる。
【0029】
図1に示すようにインクカートリッジ1は、略直方体形状を有し、鉛直方向の上方に位置する上面1a、鉛直方向の下方に位置する底面1b、上面1aと底面1bとの間に位置する右側面1c、左側面1d、正面1e、背面1fから構成されている。上面1aはZ軸正方向側の面、底面1bはZ軸負方向側の面、右側面1cはX軸正方向側の面、左側面1dはX軸負方向側の面、正面1eはY軸正方向側の面、背面1fはY軸負方向側の面に当たる。なお、各面1a〜1fのある側を、それぞれ上面側、底面側、右側面側、左側面側、正面側、背面側とも呼ぶ。
【0030】
図2に示すように、インクカートリッジ1は、例えば、インクジェットプリンタのキャリッジ400に装着され、インクジェットプリンタにインクを供給するためのインクを収容する。なお、図4では、インクカートリッジ1は、キャリッジ400に装着されているが(いわゆる、オンキャリッジ)、キャリッジ400とは別の場所に設けられた装着部に装着されても良い(いわゆる、オフキャリッジ)。
【0031】
図3及び図4に示すように、カートリッジ本体10は、空気室100と、インク収容室110と、供給ポンプ120と、バッファ室130と、圧力調整弁140と、インク供給口150と、インクを流通させるための連通部160〜163と、バッファ室130とインク収容室110とを連通して接続する連通部170とを備える。空気室100とインク収容室110とを仕切る仕切板105の鉛直方向下方に、空気室100とインク収容室110とを連通する開口部107が形成されている。供給ポンプ120とバッファ室130は連通部161によって連通されており、バッファ室130と圧力調整弁140とは連通部162によって連通されており、圧力調整弁140とインク供給口150とは連通部163によって連通されている。連通部163は、連通孔163a、163b、溝163cおよび連通路163dとから構成されている。溝163cはカートリッジ本体10の背面側に形成されている。カートリッジ本体10の背面側にフィルムが貼り付けられることにより、溝163cは密封された空間となり、連通孔163aから連通孔163bにインクを流通させることができる。インクは、圧力調整弁140から連通孔163aを介して溝163cを流れ、連通孔163bを介して連通路163dを通りインク供給口150に供給される。連通部160、161,162および163は、インクを流通させるための流路として機能するので、以降、実施例では、連通部160、161,162および163をインク流路160、161,162および163と呼ぶ。第1実施例において、インク収容室110、供給ポンプ120、は、それぞれ、特許請求の範囲の「液体収容部」、「供給ポンプ」にあたる。また、バッファ室130および圧力調整弁140は、特許請求の範囲の「圧力調整手段」に当たる。
【0032】
空気室100は、図示しない大気連通孔を介して大気と連通している。インク収容室110は、インクをインク収容室110の外部へ導出するインク導出口112と、インクをインク収容室110内へ戻すインク導入口114とを備える。インク導出口112はインク流路160を介して供給ポンプ120と接続されている。インク導入口114は、連通部170を介してバッファ室130と接続されている。第1実施例におけるインク導出口112は、特許請求の範囲の「開口部」に当たる。
【0033】
供給ポンプ120は、圧電素子を用いて構成されており、インク流路160を介して、インク収容室110からバッファ室130へインクを供給する。実施例では、圧電素子としてピエゾ素子を利用している。また、供給ポンプ120は、インク収容室110内のインクの残量を検出する残量検出センサとしても機能するように構成されている。供給ポンプ120の詳細構成について、後に詳述する。
【0034】
バッファ室130は、供給ポンプ120および圧力調整弁140と接続されており、供給ポンプ120から供給されたインクを一時的に貯蔵する。バッファ室130内に貯蔵されているインクは、圧力調整弁140を介してインク供給口150へ供給される。また、バッファ室130は、連通部170を介してインク収容室110と接続されており、バッファ室130内に貯蔵されているインクのうち、圧力調整弁140へ供給されないインクは、連通部170を介してインク収容室110へ戻される。このように、連通部170は、圧力調整弁140を通過しないインクをインク収容室110へ再度戻すバイパスの機能を有している。よって、以降、実施例では、連通部170をバイパス流路170と呼ぶ。第1実施例におけるバイパス流路170は、特許請求の範囲における「接続手段」に当たる。
【0035】
圧力調整弁140は、バッファ室130およびインク供給口150と接続されており、バッファ室130から供給されるインクの圧力を調整し、圧力変動を少なくしてインク供給口150へ供給する。圧力調整弁140の詳細構成については後に詳述する。
【0036】
カートリッジ本体10の詳細構成を説明する前に、図4を参照して、第1実施例におけるインクの経路およびインクジェットプリンタPTの機能ブロックについて説明する。図4は、第1実施例におけるインクの経路およびインクジェットプリンタPTにおける供給ポンプ120の駆動に関する機能ブロックについて説明する説明図である。
【0037】
図4に示すように、インクジェットプリンタPTは、インクカートリッジ1の供給ポンプ120を制御する制御回路190を備える。制御回路190は、インクカートリッジ1がインクジェットプリンタPTに装着されると、インクカートリッジ1と電気的に接続される。制御回路190は、供給ポンプ120を駆動する駆動回路191,供給ポンプ120に設けられている圧電素子の残留振動を検出してインク収容室110内のインク残量を検出する残量検出部192を備える。駆動回路191は、インクジェットプリンタPTの電源がオン状態の間、断続的に供給ポンプを駆動する。また、駆動回路191は、所定のタイミングで供給ポンプ120の駆動を一度停止し、供給ポンプ120の圧電素子へ電圧を印加して、インク収容室110内のインク残量の検出を行う。実施例において駆動回路191は特許請求の範囲の「駆動手段」に当たる。
【0038】
A2.供給ポンプの詳細構成:
図5は、第1実施例における供給ポンプ120の構成を説明する模式図である。図6は、第1実施例における供給ポンプ120の駆動波形を示す波形図である。図5(a)は、供給ポンプ120が駆動されていない状態を示しており、図5(b)および図5(c)は、供給ポンプ120が駆動されている状態を示している。また、図6(a)は、供給ポンプ120を、ポンプとして機能させる場合の波形を示しており、図6(b)は、供給ポンプ120を残量検出センサとして機能させる場合の波形を示している。供給ポンプ120は、略コの字状に形成され、インク流路の一部として機能するキャビティ122と、キャビティ122の壁面の一部を形成する振動板124と、振動板124上に配置された圧電素子126と、下流側(インク収容室110側)に設けられている逆止弁128を備える。圧電素子126の端子は、電気的にインクジェットプリンタPTの回路基板の電極端子の一部に接続されており、インクジェットプリンタPTにインクカートリッジ1が装着されたとき、圧電素子126の端子は、回路基板の電極端子を介してインクジェットプリンタPTと電気的に接続される。
【0039】
圧電素子126に電圧が印加されて、図5(b)に示すように、振動板124がキャビティ122の内側にたわむと、キャビティ122内の圧力が上昇し、矢印R1に示す方向(下流側から上流側に向かう方向)にインクが流れ、バッファ室130に供給される。逆止弁128は、矢印R1方向にインクが流れる方向にのみ開く弁であるので、キャビティ122内のインクがインク収容室110に逆流することはない。
【0040】
次に、圧電素子126に逆向きの電圧が印加され、図5(c)に示すように、振動板124がキャビティ122の外側にたわむと、キャビティ122内の圧力が負圧となり、逆止弁128が開弁して矢印R2に示すようにインク収容室110からキャビティ122へインクが供給される。以上のように、供給ポンプ120はインク収容室110からバッファ室130へインクを供給している。
【0041】
図6(a)に示すように、供給ポンプ120をインクの供給を行うポンプとして機能させる場合には、制御回路190は、一定の振幅W1(電圧値)かつ一定の周波数で、断続的に圧電素子126を振動させる。時間t1から時間t2の間は供給ポンプ120は図5(b)の状態となり、時間t2から時間t3の間は供給ポンプ120は図5(c)の状態となる。
【0042】
供給ポンプ120は、また、110内のインクの残量を検出する残量検出センサとしても機能する。既述の通り、供給ポンプ120の圧電素子126にインクジェットプリンタPTから電圧が印加されると、圧電素子126が電歪し、その後、圧電素子126への電圧印加を停止すると、振動板124は振動し、圧電素子126は電歪によって起電力を発生する。振動板124の振動の特性(周波数等)を、圧電素子126の起電力を介して検出することにより、残量検出部192はキャビティ122におけるインクの有無を検出する。具体的には、カートリッジ本体10に収容されていたインクが消尽されることにより、インクが満たされた状態から大気が満たされた状態に、キャビティ122の内部の状態が変化すると、振動板124の振動の特性が変化する。かかる振動特性の変化を検出することにより、残量検出部192は、キャビティ122におけるインクの有無を検出することができる。
【0043】
図6(b)に示すように、供給ポンプ120をインク残量の検出センサとして機能させる場合には、圧電素子126に対して、一定の振幅(電圧値)W2を所定時間(t5〜t6の間)だけ印加した後、電圧の印加を停止する。電圧印加を停止した時刻t6以降に振動板124は振動を発生し、残量検出部192は、圧電素子126を介してこの振動板124の振動を検出してインクの残量を検出することができる。このように、第1実施例では、駆動回路191は、インク供給時と、インク残量検出時とにおいては、異なる駆動方法で圧電素子126を駆動させている。
【0044】
A3.圧力調整弁の詳細構成:
図7は、第1実施例における圧力調整弁140の概略構成を例示する断面図である。図7(a)は、インクジェットプリンタPTが非印刷状態の場合の圧力調整弁140の状態を示しており、図7(b)は、インクジェットプリンタPTが印刷状態の場合の圧力調整弁140の状態を示している。圧力調整弁140は、ユニットケース200と、フィルム部材202と、インク導入路204と、インク供給室206と、バネ受け座208と、圧力室210と、隔壁212と、フィルム部材214と、可動バルブ216と、シールバネ218と、シール部材220と、凹部222と、圧力室出口224とを備える。インク導入路204は溝状に形成されており、インク流路162と接続されている。インク導入路204を介して供給されたインクは、ユニットケース200のほぼ中央に形成されたインク供給室206に供給される。インク供給室206には、バネ受け座208がユニットケース200の側面において嵌め込まれており、バネ受け座208が嵌め込まれた状態で、インク供給室206及びインク導入路204を覆うように、フィルム部材214がユニットケース200に熱蒸着されている。こうすることにより、インク導入路204およびインク供給室206が密封される。
【0045】
隔壁212は、インク供給室206と圧力室210とを区画するように形成されており、開閉弁を構成する可動バルブ216を摺動可能に構成されている。可動バルブ216とバネ受け座208との間には、付勢部材としてのコイル状のシールバネ218が配置されており。シールバネ218の作用により、可動バルブ216は隔壁212側に、すなわち、インク供給室206と圧力室210とを連通するインク供給孔226を閉鎖する方向に押圧力をもって付勢される。隔壁212には、可動バルブ216を囲むシール部材220が取り付けられており、可動バルブ216は、シールバネ218の付勢力によりシール部材220に当接する。
【0046】
圧力室210は、ユニットケース200に形成された凹部222とこれを覆うフィルム部材202とにより構成されている。圧力室210の圧力室出口224は、鉛直方向上部に形成されており、インク流路163を介してインク供給口150と接続されている。
【0047】
インクジェットプリンタPTが非印刷状態、すなわち、インクが消費されていない状態においては、シールバネ218による荷重と、インク供給室206に供給されるインクの加圧力とが可動バルブ216に加わっている。この結果、図7(a)に示すように、可動バルブ216は、シール部材220に当接し、閉弁状態となる。すなわち、圧力調整弁140は、自己封止の状態となる。
【0048】
一方、インクジェットプリンタPTが印刷状態、すなわち、インクが消費されている状態においては、圧力室210内のインクの減少に伴いフィルム部材202が凹部222側に変位し、フィルム部材202の中央部が可動バルブ216に当接する。インクが更に消費されると、圧力室210内には負圧が発生し、この負圧が所定以上となった場合に、可動バルブ216はフィルム部材202によって押圧される。この結果、図7(b)に示すように、可動バルブ216が開弁状態になる。インク供給室206内のインクは、インク供給孔226を介して圧力室210へ供給され、圧力室210の負圧が解消される。これに伴い、可動バルブ216が移動して再び図7(a)に示す閉弁状態に切り換えられ、インク供給室206から圧力室210へのインクの供給が停止される。このように、圧力調整弁140は、インク供給口150へ供給するインクの圧力を調整している。
【0049】
A4.インクの攪拌について:
図8は、第1実施例におけるインク収容室110内のインクが攪拌される仕組みについて模式的に説明する説明図である。図8(a)は、バッファ室130内の圧力がコイルバネ132の付勢力よりも低い状態を示しており、図8(b)は、バッファ室130内の圧力がコイルバネ132の付勢力よりも高くなった状態を示している。バッファ室130は、内部に、可撓性の膜状部材131と、膜状部材131をバッファ室130の内側に付勢する付勢手段としてのコイルバネ132を備える。なお、図8では、インク供給口150へのインクの供給が行われていない状態を示している。
【0050】
図8(a)の状態で供給ポンプ120が駆動されると、矢印R3に示すようにインク収容室110からインクがバッファ室130に供給され、バッファ室130内の圧力が上昇し、膜状部材131が、コイルバネ132の付勢力とは逆方向に変位し、バッファ室130内の容積が拡張し、図8(b)の状態となる。
【0051】
図8(b)の状態では、バッファ室130内の容積が最大となっており、これ以上拡張できない。更に、インク供給口150へのインクの供給も行われていないので、インクは圧力調整弁140へも流れない。この状態で、供給ポンプ120が駆動され、インク収容室110からバッファ室130へ更にインクの供給が行われると、バッファ室130内のインクが、矢印R4に示すように、バイパス流路170を介してインク収容室110内に戻される。この結果、矢印R5に示すように、インク収容室110内では、インク収容室110から導出されるインクの流動とインク収容室110へ戻されるインクの流動とが発生し、インク収容室110内のインクが攪拌される。
【0052】
以上説明した第1実施例のインクカートリッジ1によれば、インクを供給する供給ポンプ120がカートリッジ本体10に備えられている。従って、インクの供給速度を向上でき、インクジェットプリンタPTの処理速度に応じた速度でインクを供給できる。
【0053】
また、第1実施例のインクカートリッジ1によれば、インク収容室110から導出されたインクを、再度、インク収容室110へ戻すための接続手段としてバイパス流路170が設けられている。従って、インク収容室110から導出されるインクと、再度、インク収容室110へ導入されるインクの流れにより、インク収容室110においてインクの流動を発生させることができる。よって、インク収容室110内に移動体(攪拌用部材)などの別部材を設けることなく、インク収容部内のインクを均質化できる。攪拌用部材を設けると、少なくとも移動体の容積分だけインク収容室110内に収容できるインクの体積が減少するが、本実施例のインクカートリッジ1によれば、攪拌用部材を必要としないため、インク収容室110の容積効率を向上できる。また、攪拌用部材を用いる場合には、インクカートリッジ1の壁面と移動体との衝突音が発生するが、本実施例のインクカートリッジ1によれば、攪拌用部材を必要としないため、衝突音が発生することなく動作音を静かにできる。
【0054】
また、第1実施例のインクカートリッジ1によれば、インク収容室110内のインクを攪拌するようにバイパス流路170が設けられている。具体的には、バイパス流路170の一端は、インク収容室110の鉛直下方に設けられているインク導入口114としての開口部に接続されている。従って、インクはインク収容室110の下方からインク収容室110の内部へ戻される。よって、インク収容室110下方にインク成分が沈降した結果、濃度の高くなった鉛直下方に存在するインクを効率的に流動させることができ、インク収容室110内のインクの攪拌効率を向上できる。
【0055】
一般的に、供給ポンプ120により搬送されるインクには圧力変動が生じる。第1実施例のインクカートリッジ1によれば、インクの圧力を調整する圧力調整手段としての圧力調整弁140が、供給ポンプ120とインク供給口150の間に設けられている。従って、インクの圧力を調整して、供給ポンプの駆動によって生じるインクの圧力変動を抑制できる。
【0056】
第1実施例のインクカートリッジ1によれば、供給ポンプ120は、インクジェットプリンタPTへのインク供給時以外においても駆動される。具体的には、インクジェットプリンタPTの電源がオン状態の間は常時駆動されている。従って、インク収容室110とインク供給口150との間に設けられているバッファ室130には、供給ポンプ120が駆動されていない場合に比して高い圧力のインクが貯留される。よって、インクジェットプリンタPTの処理速度に対して必要とされるポンプ能より低いポンプ能の供給ポンプを適用できる。換言すれば、インクジェットプリンタPTの処理速度に対して必要なインクの最大流速を発生させるポンプ能を有するポンプではなく、よりポンプ能の低い供給ポンプ120を利用できる。供給ポンプ120の圧電素子126に高い圧力を発生させるには、高い電圧を印加する必要があり、圧電素子126の損傷や耐久性の低下を招くので、ポンプ能の低い供給ポンプ120を利用することにより、供給ポンプ120の故障を抑制できる。また、第1実施例のインクカートリッジ1によれば、ポンプ能の低い供給ポンプ120を利用することにより、バッファ室130の耐圧、バイパス流路170の耐圧、圧力調整弁140の自己封止力の耐圧が、供給ポンプ120の加圧力よりも低くなることを抑制でき、各構造の損傷を抑制できるほか、より安価な材料が使用可能となることや、より単純な構造でシステムが実現可能となるなどの利点がある。
【0057】
また、第1実施例のインクカートリッジ1によれば、従来から利用されている圧電素子を用いて供給ポンプ120を構成しているので、簡易な構成でインクカートリッジ1内に小型の供給ポンプを構成できる。また、インクの供給ポンプ120とインクの残量検出センサとを兼用して構成しているので、新たに、残量検出センサを設ける必要が無く、コストの削減や、インクカートリッジ1の小型化を図ることができる。更に、インクカートリッジ1では、インクの残量検出時と、インクの残留検出時以外(インク供給時、インク攪拌時)とにおいて、供給ポンプ120の駆動方法を切り替えているので、それぞれの処理に応じて、適切に供給ポンプを駆動できる。
【0058】
B.第2実施例:
第2実施例では、インクジェットプリンタPTの電源がオフ状態とされていた時間に応じて、供給ポンプ120を駆動し、インク収容室110内のインクを攪拌する。第2実施例において、インクカートリッジ1は、第1実施例と同様の構成を備える。第2実施例では、供給ポンプ120を常時駆動とはせず、インクジェットプリンタPTにおける印刷時と、インクジェットプリンタの電源がオン状態にされたとき、および、利用者からインクジェットプリンタを介してインクの攪拌指示がなされたときに供給ポンプ120の駆動が行われる。
【0059】
図9は、第2実施例におけるインクジェットプリンタの制御回路190aについて説明する説明図である。図9(a)は、制御回路190aの機能ブロックを示しており、図9(b)は、制御回路190aによって実行されるインクジェットプリンタの電源オン時処理について説明するフローチャートである。図9(a)に示すように、制御回路190aは、駆動回路191と、残量検出部192と、時間情報取得部193とを備える。駆動回路191、残量検出部192は、第1実施例と同一の構成である。第2実施例における時間情報取得部193は、特許請求の範囲の時間情報取得手段に当たる。図9(b)に示すように、時間情報取得部193は、インクジェットプリンタの電源がオン状態とされたことを検知して、インクジェットプリンタの電源がオフ状態とされていた経過時間に関する時間情報を取得する(ステップS10)。次に、時間情報取得部193は、オフ状態とされた時間に応じて供給ポンプ120の駆動時間を算出する(ステップS14)。駆動回路191は、時間情報取得部193によって算出された駆動時間に応じて、供給ポンプ120を駆動し、インクの攪拌を行う(ステップS14)。オフ状態とされていた時間を算出する方法として、たとえば、インクカートリッジに、インクカートリッジに関する情報を記憶する読み書き可能な記憶素子を有する場合には、電源オフとされた時の処理に電源オフにされた時刻を記憶素子に記憶する処理を行うようにし、電源オン時に現在時刻と記憶素子から読み出した電源オフ時の時刻との差からオフとされていた時間を算出することができる。この方法によれば、あるインクカートリッジを別のインクジェットプリンタに付け替えた場合にも、電源オフ時間を容易かつ正確に算出することが可能となる。
【0060】
駆動回路191は、インク供給時(インクジェットプリンタによる印刷処理時)および利用者からの指示入力時にも、供給ポンプ120を駆動する。なお、利用者からの指示入力は、例えば、インクジェットプリンタに利用者からインクカートリッジ1のインクの攪拌指示が行われると、インクジェットプリンタの駆動回路191は、インクの攪拌のために、予め規定された所定時間、供給ポンプ120を駆動するように構成してもよい。また、駆動回路191は、特許請求の範囲における「調整手段」および「指示受信手段」の機能を備える。
【0061】
一般的に、インクジェットプリンタの電源がオフ状態とされている間は、インクの流動が発生していないので、鉛直下方に沈降しているインクの濃度が濃くなっていく。第2実施例のインクカートリッジによればインクジェットプリンタの電源がオン状態にされると、供給ポンプ120が自動的に所定時間駆動される。具体的には、インクジェットプリンタの電源がオン状態とされた際に、インクジェットプリンタの電源がオフ状態にされていた経過時間を表すオフ時間に基づいて、供給ポンプ120が駆動される時間が制御される。従って、オフ時間に応じて、インク収容室110内のインクの攪拌時間を長くする、短くするなど適切に時間調整を行うことができ、印刷結果に濃度むらが生じることを抑制できる。
【0062】
また、第2実施例のインクカートリッジ1によれば、供給ポンプ120は、利用者からの駆動指示に応じて駆動される。よって、利用者の所望のタイミングでインクカートリッジ1内の液体の攪拌を行うことができる。
【0063】
C.変形例:
(1)第1実施例では、インク導入口114に接続されているバイパス流路170の一端が、カートリッジ本体10の底面に略平行となるように、換言すれば、インクがカートリッジ本体10の底面の長手方向に略平行な向きに戻されるように、バイパス流路170が構成されているが、例えば、インク導入口114に接続されているバイパス流路170の一端が、鉛直下方に位置する底面11に向かうように構成されていてもよい。
【0064】
図10は、変形例(1)におけるカートリッジ本体10aの内部構成を例示する斜視図である。カートリッジ本体10aにおいて、インク導入口114の位置およびバイパス流路170aの形状以外は、第1実施例のカートリッジ本体10と同一の構成である。カートリッジ本体10aにおいて、インク導入口114は、インク導出口112よりも鉛直上方に形成されている。バイパス流路170aは、インク導入口114に接続されている一端が、カートリッジ本体10aの鉛直下方、すなわち、底面11に向かう方向(矢印R10)に延伸するように形成されている。このように形成することにより、バイパス流路170aからインク収容室110内へ戻されたインクは底面11に向かって流動し、同時に供給ポンプ120によって矢印R11に示すように、インク導出口112からインクが導出され流動している。従って、変形例(1)のカートリッジ本体10aによれば、インク収容室110内のインクを流動させ、矢印R12に示すように、インク収容室110内のインクを攪拌することができる。
【0065】
(2)また、インク導入口114に接続されているバイパス流路170の一端が、鉛直下方から鉛直上方に向かう方向に形成されていてもよい。図11は、変形例(2)におけるカートリッジ本体10bの内部構成を例示する斜視図である。カートリッジ本体10bにおいて、インク導入口114の位置およびバイパス流路170bの形状以外は、第1実施例のカートリッジ本体10と同一の構成である。カートリッジ本体10bにおいて、インク導入口114は、インク導出口112よりも鉛直上方に形成されている。バイパス流路170bは、インク導入口114に接続されている一端が、カートリッジ本体10aの鉛直下方から鉛直上方に向かう方向、すなわち、底面11近傍から上面12に向かう方向(矢印R13)に延伸するように形成されている。このように形成することにより、バイパス流路170bからインク収容室110内へ戻されたインクは底面11近傍から上面12に向かって流動し、同時に、供給ポンプ120によって矢印R14に示すように、インク導出口112からインクが導出され流動する。従って、変形例(2)のカートリッジ本体10bによれば、インク収容室110内のインクを流動させ、矢印R15に示すように、インク収容室110内のインクを攪拌することができる。
【0066】
(3)第1実施例では、オンキャリッジタイプのインクカートリッジ1を例に説明したが、例えば、オフキャリッジタイプのインクカートリッジでもよい。図12は、変形例(3)におけるインクカートリッジのカートリッジ本体10cの内部構成を例示する斜視図である。カートリッジ本体10cは、インクパック110cと、供給ポンプ120cと、バッファ室130cと、圧力調整弁140cと、インク供給口150cと、インクパック110cと供給ポンプ120cとを連通するインク流路160cと、バッファ室130cとインクパック110cとを連通して接続するバイパス流路170cとを備える。インクパック110cは、種々の公知の構成を適用可である。なお、バッファ室130cと圧力調整弁140cおよび圧力調整弁140cとインク供給口150cはインク流路によって連通されている。
【0067】
供給ポンプ120cによってインクパック110cからバッファ室130cに供給され、圧力調整弁140cを通過しないインクは、バイパス流路170cを介してインクパック110c内に戻される。この際、インク収容室110内には、インク流路160cを介してインクパック110cから導出されるインクの流動と、バイパス流路170cを介してインクパック110cに戻されるインクの流動とが発生する。この結果、図12に矢印R20で示すように、インクパック110c内にインクの流動が発生する。従って、変形例(3)のカートリッジ本体10cによれば、インクパック110c内にインクの流動を発生させて、インクを攪拌することができる。
【0068】
(4)上述の各実施例では、インク収容室110と接続されているバイパス流路170の一端は、インク収容室110内の液体を攪拌するように設けられているが、例えば、インクが沈降しにくい組成のものである場合には、いずれの部位、例えば、バイパス流路170の一端は、インク収容室110の上面12近傍に接続されていてもよい。変形例(4)によれば、バイパス流路170を自由に取り回すことができる。
【0069】
上述の各実施例、各変形例のインクカートリッジにおいて、インク流路の構成は、実施例に記載したものに限定されることなく、種々の公知の流路構成を適用可能である。
【0070】
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成をとることができる。
【符号の説明】
【0071】
1…インクカートリッジ
1a…上面
1b…底面
1c…右側面
1d…左側面
1e…正面
1f…背面
10、10a、10b、10c…カートリッジ本体
11…底面
12…上面
20…蓋部材
100…空気室
105…仕切板
107…開口部
110…インク収容室
110c…インクパック
112…インク導出口
114…インク導入口
120、120c…供給ポンプ
122…キャビティ
124…振動板
126…圧電素子
128…逆止弁
130、130c…バッファ室
140、140c…圧力調整弁
150、150c…インク供給口
160、161、162、163、160c…インク流路
170、170a、170b、170c…バイパス流路
190、190a…制御回路
191…駆動回路
192…残量検出部
193…時間情報取得部
200…ユニットケース
202…フィルム部材
204…インク導入路
206…インク供給室
208…バネ受け座
210…圧力室
212…隔壁
214…フィルム部材
216…可動バルブ
218…シールバネ
220…シール部材
222…凹部
224…圧力室出口
226…インク供給孔
400…キャリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置に液体を供給する液体収容容器であって、
前記液体を収容する液体収容部と、
前記液体を前記液体噴射装置へ供給するための液体供給口と、
前記液体収容部に収容されている液体を前記液体供給口を介して前記液体噴射装置へ供給する供給ポンプと、
を備える液体収容容器。
【請求項2】
請求項1記載の液体収容容器であって、更に、
前記供給ポンプと前記液体供給口との間に設けられ、前記液体の圧力を調整する圧力調整手段を備える、
液体収容容器。
【請求項3】
請求項2記載の液体収容容器であって、更に、
前記圧力調整手段と前記液体収容室を接続し、前記圧力調整手段から前記液体収容室に前記液体を戻すための接続手段を備える、
液体収容容器。
【請求項4】
請求項3記載の液体収容容器であって、
前記接続手段は、前記接続手段を介して前記液体収容部内に戻された液体によって前記液体収容部内の液体の攪拌を促す位置に設けられている、
液体収容容器。
【請求項5】
請求項4記載の液体収容容器であって、
前記液体収容部は、前記液体収容容器が前記液体噴射装置に装着された状態で鉛直下方に開口部を有し、
前記接続手段の前記液体収容部側の端部は、前記液体収容部の前記開口部に接続されている、
液体収容容器。
【請求項6】
請求項4記載の液体収容容器であって、
前記液体収容部は、開口部を有し、
前記接続手段の前記液体収容部側の端部は、前記開口部に接続されているとともに、前記液体収容容器が前記液体噴射装置に装着された状態で鉛直下方に延伸するように形成されている、
液体収容容器。
【請求項7】
請求項4記載の液体収容容器であって、
前記液体収容部は、前記開口部を有し、
前記接続手段の前記液体収容部側の端部は、前記開口部に接続されているとともに、前記液体収容容器が前記液体噴射装置に装着された状態で鉛直下方から鉛直上方へ延伸するように形成されている、
液体収容容器。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7いずれか記載の液体収容容器であって、
前記供給ポンプは、圧電素子を用いて構成されているピエゾポンプである、
液体収容容器。
【請求項9】
請求項8記載の液体収容容器であって、
前記供給ポンプは、前記圧電素子への電圧印加後に生じる振動を用いて、前記液体の残量検出を行うセンサとして機能するように構成されている、
液体収容容器。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9いずれか記載の液体収容容器が装着される液体噴射装置であって、
前記供給ポンプを駆動する駆動手段を備える、
液体噴射装置。
【請求項11】
請求項10記載の液体噴射装置であって、
前記駆動手段は、前記液体噴射装置の電源がオン状態にされると、所定時間、前記供給ポンプを駆動する、
液体噴射装置。
【請求項12】
請求項11記載の液体噴射装置であって、更に、
前記液体噴射装置の電源がオフ状態とされていたオフ時間に関する時間情報を取得する時間情報取得手段と、
前記時間情報により表される前記液体噴射装置の電源のオフ時間に基づいて、前記所定時間を調整する調整手段と、
を備える液体噴射装置。
【請求項13】
請求項10記載の液体噴射装置であって、更に、
前記供給ポンプの駆動指示を受信する指示受信手段を備え、
前記駆動手段は、前記駆動指示を受信すると、前記供給ポンプを駆動する、
液体噴射装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項10いずれか記載の液体噴射装置であって、更に、
前記駆動手段は、前記液体噴射装置による前記液体の噴射時以外においても、前記供給ポンプを駆動する、
液体噴射装置。
【請求項15】
請求項14記載の液体噴射装置であって、
前記駆動手段は、前記液体噴射装置の電源がオン状態の間は、前記供給ポンプを駆動する、
液体噴射装置。
【請求項16】
請求項10ないし請求項14記載の液体噴射装置であって、
前記駆動手段は、前記液体の残量検出時と、前記液体の残量検出時以外とにおいて、前記供給ポンプの駆動方法を切り替える、
液体噴射装置。
【請求項17】
液体噴射装置に液体を供給する液体収容容器を複数備える液体供給システムであって、
前記各液体収容容器は、
前記液体を収容する液体収容部と、
前記液体を前記液体噴射装置へ供給する液体供給口と、
前記液体収容部に収容されている液体を前記液体供給口を介して外部へ供給するための供給ポンプと、
を備え、
前記複数の液体収容容器の各前記供給ポンプを駆動する駆動手段を備える、
液体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−214721(P2010−214721A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63102(P2009−63102)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】