説明

液体吐出ヘッド、及び、その製造方法

【課題】吐出面に対するワイパやマスク等の部材からの圧力のばらつきを軽減する。
【解決手段】吐出面10aに凹部14bが形成されており、凹部14bの底部14b3に吐出口14aが開口している。凹部14bを含む吐出面10aの全体(吐出口14aを除く)に、撥インク膜12kが形成されている。凹部14bは、間隔d1の間隔d2に対する大小関係が間隔x1の間隔x2に対する大小関係と同じになるように、底部14b3の中心が吐出口14aの中心に対して偏心して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッド、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッドにおいて、インク吐出性能を高めるため、吐出面における吐出口の周縁に撥インク膜を形成する技術が知られている。しかし、当該撥インク膜は、吐出面に付着した異物を払拭するワイパからの圧力によって、損傷することがある。そこで、吐出口周縁の撥インク膜を保護するため、吐出面に凹部を形成し、当該凹部の底部に吐出口を開口させるという技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記のようなヘッドを製造する場合、凹部の底部に撥インク膜を形成する撥インク膜形成工程の後、撥インク膜のうち吐出口の内部に形成された余剰部分を除去する余剰部分除去工程が行われる。余剰部分除去工程では、例えば、吐出面をマスクで覆った状態で、洗浄、UV照射、プラズマ照射等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−334910号公報(図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術を採用した場合、吐出面における凹部の形状や配置によって、吐出面に対するワイパやマスク等の部材からの圧力にばらつきが生じ得る。当該圧力のばらつきは、以下のような問題を引き起こす。
例えば、吐出面の全域においてワイパからの圧力を異物払拭に必要な所定値以上にしようとすると、吐出面においてワイパからの圧力が過大になる部分が生じ、凹部内の吐出口周縁の撥インク膜が損傷することがある。
また、吐出面に対するマスクからの圧力を、マスクが吐出口の内部に侵入しないように調整するのが困難になる。マスクが吐出口の内部に侵入した状態で余剰部分除去工程を行うと、余剰部分を確実に除去することができず、吐出不良に繋がる。
【0006】
本発明の目的は、吐出面に対するワイパやマスク等の部材からの圧力のばらつきを軽減することができる液体吐出ヘッド及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1観点によると、液体を吐出する吐出口が底部に開口した凹部が形成された、吐出面を備え、前記底部に撥液膜が形成されており、前記凹部は、前記吐出面に平行な一方向に関して、前記吐出口の中心と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく一方側で隣接する他の前記凹部の他方側側面又は前記吐出面の一方側端部との間隔をd1とし、前記吐出口の中心と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく他方側で隣接する他の前記凹部の一方側側面又は前記吐出面の他方側端部との間隔をd2とし、さらに、前記吐出口の中心と当該凹部の一方側側面との間隔をx1とし、前記吐出口の中心と当該凹部の他方側側面との間隔をx2としたときに、前記間隔d1の前記間隔d2に対する大小関係が前記間隔x1の前記間隔x2に対する大小関係と同じになるように、前記底部の中心が前記吐出口の中心に対して配置されていることを特徴とする、液体吐出ヘッドが提供される。
【0008】
本発明の第2観点によると、液体を吐出する吐出口が底部に開口した凹部が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、前記吐出面に前記凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部形成工程の後、前記底部に撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、前記撥液膜形成工程の後、前記吐出面の前記吐出口を含む部分をマスクで覆うマスク工程と、前記マスク工程の後、前記撥液膜のうち前記吐出口の内部に形成された余剰部分を除去する余剰部分除去工程と、前記余剰部分除去工程の後、前記マスクを前記吐出面から剥離する剥離工程と、を備え、前記凹部形成工程において、前記凹部は、前記吐出面に平行な一方向に関して、前記吐出口の中心と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく一方側で隣接する他の前記凹部の他方側側面又は前記吐出面の一方側端部との間隔をd1とし、前記吐出口の中心と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく他方側で隣接する他の前記凹部の一方側側面又は前記吐出面の他方側端部との間隔をd2とし、さらに、前記吐出口の中心と当該凹部の一方側側面との間隔をx1とし、前記吐出口の中心と当該凹部の他方側側面との間隔をx2としたときに、前記間隔d1の前記間隔d2に対する大小関係が、前記間隔x1の前記間隔x2に対する大小関係と同じになるように、前記底部の中心が前記吐出口の中心に対して配置されることを特徴とする、液体吐出ヘッドの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、凹部は、間隔d1の間隔d2に対する大小関係が間隔x1の間隔x2に対する大小関係と同じになるように、底部の中心が吐出口の中心に対して配置されている。これにより、間隔d1,d2に対応する吐出面の領域に加わる圧力のばらつきが軽減される。即ち、吐出面に対するワイパやマスク等の部材からの圧力のばらつきを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドが適用されるインクジェット式プリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】インクジェットヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図である。
【図4】(a)は、図3のIVA−IVA線に沿った部分断面図である。(b)は、(a)の一点鎖線で囲まれた領域IVBを示す拡大図である。
【図5】インクジェットヘッドの縦断面図である。
【図6】インクジェットヘッドの吐出面の部分拡大図である。
【図7】図7のVII−VII線に沿った部分断面図である。
【図8】インクジェットヘッドの製造方法を示すフロー図である。
【図9】(a)〜(e)はそれぞれ図8のS1a〜S1eの各工程を説明するための部分断面図である。
【図10】マスク工程(図8のS1d)を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッド10が適用されるインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0013】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A及びBは、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成された空間である。空間Aでは、用紙Pの搬送と用紙Pへの画像の記録が行われる。空間Bでは、給紙に係る動作が行われる。空間Cには、インク供給源としてのインクカートリッジ40が収容されている。
【0014】
空間Aには、4つのインクジェットヘッド10、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、用紙Pをガイドするガイドユニット(後述)等が配置されている。空間Aの上部には、これらの機構を含めたプリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司るコントローラ1pが配置されている。
【0015】
コントローラ1pは、外部から供給された画像データに基づいて、用紙Pに画像が記録されるよう、記録に係わる準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作、吐出性能の回復維持動作(メンテナンス動作)等を制御する。
【0016】
各ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。4つのヘッド10は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドフレーム3を介して筐体1aに支持されている。ヘッド10は、流路ユニット12、8つのアクチュエータユニット17(図2参照)、及びリザーバユニット11を含む。画像記録に際して、4つのヘッド10の下面(吐出面10a)からは、それぞれマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが吐出される。ヘッド10のより具体的な構成については後に詳述する。
【0017】
搬送ユニット21は、図1に示すように、ベルトローラ6,7及び両ローラ6,7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8に加え、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたプラテン9等を有する。
【0018】
ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータ(図示せず)の駆動により回転し、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8が図1中の太矢印方向に走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、上流側ガイド部(後述)から供給された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえつける。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを外周面8aから剥離して下流側ガイド部(後述)へと導く。プラテン9は、4つのヘッド10に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。これにより、外周面8aとヘッド10の吐出面10aとの間に、画像記録に適した所定の間隙が形成される。
【0019】
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送ユニット21とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21と排紙部31とを繋ぐ。
【0020】
空間Bには、給紙ユニット1bが配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有し、給紙トレイ23が筐体1aに対して着脱可能である。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納する。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0021】
上述したように、空間A及びBに、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。記録指令に基づいて、コントローラ1pは、給紙ローラ25を駆動する給紙モータ(図示せず)、各ガイド部の送りローラを駆動する送りモータ(図示せず)、搬送モータ等を駆動する。給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。用紙Pが各ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出面10aからインクが吐出されて、用紙P上にカラー画像が記録される。インクの吐出動作は、用紙センサ32からの検出信号に基づいて行われる。用紙Pは、その後剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送される。さらに用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0022】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0023】
空間Cには、インクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された4つのカートリッジ40を有する。各カートリッジ40は、インクチューブ(図示せず)を介して、対応するヘッド10にインクを供給する。
【0024】
次いで、図2〜図5を参照し、ヘッド10の構成についてより詳細に説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0025】
図5に示すように、ヘッド10は、流路ユニット12、アクチュエータユニット17、リザーバユニット11、及び基板64が積層した積層体である。このうち、アクチュエータユニット17、リザーバユニット11、及び基板64が、流路ユニット12の上面12xとカバー65とにより形成される空間に収容されている。当該空間内において、FPC(平型柔軟基板)50は、アクチュエータユニット17と基板64とを電気的に接続している。FPC50の途中部には、ドライバIC57が実装されている。
【0026】
FPC50は、アクチュエータユニット17毎に設けられており、対応するアクチュエータユニット17の各電極に対応する配線を有する。配線はそれぞれドライバIC57の出力端子と接続されている。FPC50は、コントローラ1p(図1参照)による制御の下、基板64で調整されたデータをドライバIC57に伝達し、ドライバIC57で生成された各駆動電圧を、配線を介してアクチュエータユニット17の各電極に伝達する。駆動電圧は、各電極に対し、選択的に印加される。
【0027】
カバー65は、図5に示すように、トップカバー65a及びアルミ製のサイドカバー65bを含む。カバー65は、下方に開口する箱であり、流路ユニット12の上面12xに固定されている。ドライバIC57は、サイドカバー65bの内面に当接し、カバー65bと熱的に結合している。なお、当該熱的結合を確実にするため、ドライバIC57は、リザーバユニット11の側面に固定された弾性部材(例えばスポンジ)58によってサイドカバー65b側に付勢されている。
【0028】
リザーバユニット11は、4枚の金属プレート11a〜11dを互いに接着した積層体である。リザーバユニット11の内部には、インク溜りのリザーバ72を含むインク流路が形成されている。当該インク流路の一端はチューブ等を介してカートリッジ40に接続し、他端は流路ユニット12に接続している。プレート11dの下面には、図5に示すように、凹凸が形成されており、凹部によってプレート11dと上面12xとの間に空間が形成されている。アクチュエータユニット17は、FPC50の上方に若干の間隙を残して、当該空間内で上面12xに固定されている。凸部には、その先端面(即ち、上面12xとの接合面)に開口したインク流出流路73が形成されている。
【0029】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i(図4(a)参照)を互いに接着した積層体と、ニッケルのメッキ層12jとを含む。プレート12iには、ノズルとなる円錐台形状の貫通孔が多数形成されている。ノズルの先端が、インクを吐出する吐出口14aであり、プレート12iの下面(プレート12hとは反対側の表面)に開口している。メッキ層12jは、プレート12iの下面の略全体(吐出口14aとその周縁とを除く部分)に形成されている。
【0030】
流路ユニット12の上面12xには、図2に示すように、インク流出流路73の開口73aに接続する開口12yが形成されている。流路ユニット12の内部には、開口12yから吐出口14aに繋がるインク流路が形成されている。当該インク流路は、図2、図3、及び図4(a)に示すように、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別流路14を含む。
【0031】
個別流路14は、吐出口14a毎に形成されており、図4(a)に示すように、流路抵抗調整用の絞りとして機能するアパーチャ15、及び、上面12xに開口した圧力室16を含む。圧力室16は、図3に示すように、それぞれ略菱形形状であり、上面12xでマトリクス状に配置されることで、平面視で略台形領域を占める計8つの圧力室群を構成している。各圧力室群は、主走査方向に延びる16の圧力室列から構成されている。1の圧力室列に含まれる圧力室の数は、台形領域の形状に合わせて、台形の下底側から上底側に向けて順に少なくなっている。吐出口14aも、圧力室16と同様、吐出面10aでマトリクス状に配置されることで、平面視で略台形領域を占める計8つの吐出口群を構成している。各吐出口群は、主走査方向に延びる16の吐出口列から構成されている。
【0032】
吐出面10a(メッキ層12jの下面)には、吐出口列にそれぞれ対応した複数の凹部14bが形成されている(図6参照)。凹部14bは、図4(b)に示すように、プレート12i及びメッキ層12jによって画定された空間である。メッキ層12jの貫通孔からは、プレート12iにおける吐出口14a近傍が露出している。
凹部14bの底部14b3は、プレート12iの下面であり、凹部14bの側面(凹部14bの側部を画定する部分)は、メッキ層12jにおける貫通孔を画定する側壁面である。凹部14bを含む吐出面10aの全体(吐出口14aを除く)に、撥インク膜12kが形成されている。メッキ層12jの厚み(即ち、凹部14bの深さ)は、略2μmである。凹部14bのより具体的な構成については、図6及び図7を参照しつつ後述する。
【0033】
アクチュエータユニット17は、図2に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、上面12xにおいて2列の千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、図3に示すように、圧力室群(吐出口群)の占める台形領域上に配置されている。アクチュエータユニット17は、ユニモルフ型圧電アクチュエータを圧力室16毎に含み、各アクチュエータが独立して変形可能である。FPC50から駆動電圧が印加されると、圧電型アクチュエータが変形して、圧力室16の容積を変化させ、圧力室16内のインクにエネルギーが付与される。
【0034】
次いで、図6を参照し、凹部14bのより具体的な構成について説明する。
【0035】
図6に示すように、吐出面10aには、吐出口群(アクチュエータユニット17に対応する領域)毎に、16の凹部14bが形成されている。凹部14bは、それぞれ主走査方向(流路ユニット12の長手方向)に長尺であり、副走査方向(流路ユニット12の幅方向)に互いに離隔している。凹部14bは、吐出口群の台形領域の形状に合わせて、台形の下底側から上底側に向けて順に、主走査方向の長さが短くなっている。各凹部14bの幅(副走査方向の長さ)は同じ(略0.1mm)である。
【0036】
16の凹部14bは、凹部14b同士の集合形態から、2種類の群に分けられる。第1群は2の凹部14bから構成され、第2群は4の凹部14bから構成されている。本実施形態では、図6の上方から順に、第1群に属する1の凹部群X1、第2群に属する3の凹部群X2,X3,X4、及び、第1群に属する1の凹部群X5が配置されている。副走査方向に関して、2の第1群が、3の第2群を挟んでいる。凹部群X2〜X4はそれぞれ、凹部14b同士の間隔のうち最も小さい間隔で隣接する2の凹部14bx、及び、これらを副走査方向両側から挟む2の凹部14byを含む。凹部14bxとこれに隣接する凹部14byとの間隔は、凹部14b同士の間隔のうち2番目に小さい。第1群を構成する2の凹部14bz同士の間隔は、凹部14bxと凹部14byとの間隔よりも大きい。
【0037】
換言すると、凹部14bは、副走査方向に関してより近くに隣接する他の凹部14bとの間隔に応じて、凹部14bx,14by,14bzの3種類に区分される。第1群は2の凹部14bzで構成されており、第2群は2の凹部14bxと2の凹部14byとで構成されている。
【0038】
各底部14b3には、複数の吐出口14aが開口している。各底部14b3に形成された複数の吐出口14aの主走査方向に関する中心間距離は、一定である。即ち、各底部14b3において、吐出口14aは主走査方向に等間隔で配列している。
【0039】
吐出口14aの副走査方向に関する中心間距離は、本実施形態では、図6に示すように設定されている。具体的には、第1群では、2の凹部14bzにおいて、吐出口14aの副走査方向に関する中心間距離は、0.75mmである。第2群では、2の凹部14bxにおいて、吐出口14aの副走査方向に関する中心間距離は、0.24mmであり、凹部14bxとこれに隣接する凹部14byとにおいて、吐出口14aの副走査方向に関する中心間距離は、0.50mmである。凹部群間では、別の凹部14bを間に挟まずに互いに隣接する2つの凹部14b(例えば、凹部群X1と凹部群X2とでは、凹部14bzと凹部14by)において、吐出口14aの副走査方向に関する中心間距離は、1.78mmである。
【0040】
吐出口群は、千鳥状の配置形態から、それぞれ副走査方向に関して吐出面10aの一方側又は他方側に偏倚している。図6に示す吐出口群は、当該群の領域を画定する台形の下底と吐出面10aの一方側端部(縁)10a1との距離が、台形の上底と吐出面10aの他方側端部(縁)10a2との距離よりも小さい。即ち、当該吐出口群は、副走査方向に関して吐出面10aの一方側に偏倚している。
端部10a1に最も近い吐出口14aの中心と端部10a1との間隔Y1mmは、1.78mmよりも大きく、且つ、端部10a2に最も近い吐出口14aの中心と端部10a2との間隔Y2mmよりも小さい(1.78<Y1<Y2)。
【0041】
以下、図7を参照し、底部14b3と吐出口14aとの位置関係について説明する。なお、以下の説明は、図7における右から2番目(中央)の凹部14bxに着目して行うが、全ての凹部14bに該当する。
【0042】
当該凹部14b(図7における右から2番目の凹部14bx)は、副走査方向に関して、当該凹部14bとの間に別の凹部14bを挟むことなく、一方側(図7の左側)で他の凹部14b(凹部14by)と隣接し、他方側(図7の右側)で他の凹部14b(当該凹部14bxとは別の凹部14bx)と隣接している。
ここで、当該凹部14bの底部14b3に開口する吐出口14aの中心Oと一方側で隣接する凹部14bの他方側側面との間隔をd1とし、中心Oと他方側で隣接する凹部14bの一方側側面との間隔をd2とする。さらに、中心Oと当該凹部14bの一方側側面との間隔をx1とし、中心Oと当該凹部14bの他方側側面との間隔をx2とする。
【0043】
図7に示すように、底部14b3の中心は、中心Oに対して、一方側に偏心している。当該偏心は、当該凹部14bとより近くに(本例では他方側で)隣接する凹部14bとの間隔を大きくし、且つ、当該凹部14bとより遠くに(本例では一方側で)隣接する凹部14bとの間隔を小さくする。換言すると、間隔d1の間隔d2に対する大小関係が間隔x1の間隔x2に対する大小関係と同じになるように、底部14b3の中心が中心Oに対して配置されている。
【0044】
d1=d2であれば、x1=x2となる。
【0045】
また、底部14b3の中心の中心Oに対する偏心方向は、間隔D1と間隔D2との差が、両中心同士が一致する場合に比べて小さくなる方向である。間隔D1,D2は、隣接する凹部14b間において互いに隣接する側面同士の間隔(当該凹部14bの側面と、当該凹部14bに隣接する他の凹部14bの当該側面に近い方の側面との間隔)である。
【0046】
なお、当該凹部14bに対して、副走査方向の一方側又は他方側に、隣接する凹部14bが無い場合(例えば、副走査方向両端に配置された凹部14bzの場合)、中心Oと端部10a1又は10a2との間隔をd1又はd2、当該凹部14bの一方側又は他方側側面と端部10a1又は10a2との間隔をD1又はD2、にそれぞれ読み替える。
【0047】
当該凹部14b(図7における右から2番目の凹部14bx)において、中心Oに対する底部14b3の中心の偏心量Δは、一方側に、(x1−x2)/2である。
【0048】
各凹部14bにおいて、偏心量Δは、当該凹部14bに形成された吐出口14aと、当該凹部を副走査方向両側から挟む2の凹部14bに形成された吐出口14aとの、中心間距離の平均値に基づいて決められる。
なお、当該凹部14bに対して、副走査方向の一方側又は他方側に、隣接する凹部14bが無い場合(例えば、副走査方向両端に配置された凹部14bzの場合)、当該凹部14bに形成された吐出口14aの中心と端部10a1又は10a2との間隔(Y1又はY2mm)を、上記の中心間距離に読み替える。
【0049】
以下、図6を参照し、各凹部14bにおける偏心量Δについて説明する。
【0050】
各凹部群X2,X3,X4に属する中央の2の凹部14bxに形成された吐出口14aは、互いに中心間距離0.24mmで隣接し、且つ、それぞれ外側の凹部14byに形成された吐出口14aと中心間距離0.50mmで隣接している。
したがって、凹部14bxにおいて、上記平均値は0.37(=(0.24+0.50)/2)mmである。
【0051】
各凹部群X2,X3,X4に属する外側の2の凹部14byに形成された吐出口14aは、それぞれ、さらに外側の凹部(別の群に属し且つ別の凹部14bを間に挟まずに隣接する凹部)14bに形成された吐出口14aと中心間距離1.78mmで隣接し、且つ、同じ群に属する凹部14bxに形成された吐出口14aと中心間距離0.50mmで隣接している。
したがって、凹部14byにおいて、上記平均値は1.14(=(0.50+1.78)/2)mmである。
【0052】
各凹部群X1,X5に属する2の凹部14bzのうち、副走査方向内側に配置された凹部14bz(内側の凹部14bz)に形成された吐出口14aは、それぞれ、外側の凹部14bzに形成された吐出口14aと中心間距離0.75mmで隣接し、且つ、さらに内側の凹部(別の群に属し且つ別の凹部14bを間に挟まずに隣接する凹部)14bに形成された吐出口14aと中心間距離1.78mmで隣接している。
したがって、内側の凹部14bzにおいて、上記平均値は1.265(=(0.75+1.78)/2)mmである。
【0053】
各凹部群X1,X5に属する2の凹部14bzのうち、副走査方向外側に配置された凹部14bz(外側の凹部14bz)に形成された吐出口14aは、それぞれ、内側の凹部14bzに形成された吐出口14aと中心間距離0.75mmで隣接し、且つ、端部10a1又は10a2と間隔Y1又はY2mmで隣接している。
したがって、外側の凹部14bzにおいて、上記平均値は(0.75+Y1又はY2)/2mmである。
【0054】
1.78<Y1<Y2の関係より、上記平均値が大きいものから順に、凹部群X5に属する外側の凹部14bz、凹部群X1に属する外側の凹部14bz、各凹部群X1,X5に属する内側の凹部14bz、各凹部群X2,X3,X4に属する凹部14by、各凹部群X2,X3,X4に属する凹部14bx、と並べられる。
偏心量Δは、上記平均値の大小関係と逆であり、小さいものから順に、凹部群X5に属する外側の凹部14bz、凹部群X1に属する外側の凹部14bz、各凹部群X1,X5に属する内側の凹部14bz、各凹部群X2,X3,X4に属する凹部14by、各凹部群X2,X3,X4に属する凹部14bx、と並べられる。
【0055】
なお、当該凹部14bに形成された吐出口14aと、当該凹部を副走査方向両側から挟む2の凹部14bに形成された吐出口14aとの中心間距離が、所定値以上の場合、吐出面10aに対するワイパやマスク80等の部材からの圧力や、これら部材の凹部14b内への侵入量に、ばらつきが殆ど無くなる。そのため、上記平均値のみで偏心量Δを決めると、上記圧力や侵入量に対する上記中心間距離の影響を過小評価することになる。
そこで、凹部14bに係る2つの中心間距離(即ち、副走査方向一方側及び他方側の中心間距離)のいずれか一方が所定値以上の場合、上記平均値の代わりに、他方の(所定値未満の)中心間距離のみを用いる。具体的には、下記のとおりである。
【0056】
凹部群X5に属する外側の凹部14bz、凹部群X1に属する外側の凹部14bz、各凹部群X1,X5に属する内側の凹部14bz、各凹部群X2,X3,X4に属する凹部14by、及び、各凹部群X2,X3,X4に属する凹部14bxにおいて、上記平均値はそれぞれ、(0.75+Y2)/2、(0.75+Y1)/2、1.265(=(0.75+1.78)/2)、1.14(=(0.50+1.78)/2)、及び、0.37(=(0.24+0.50)/2)(単位:mm)であったところ、下記のとおり変更を施す。
即ち、中心間距離の所定値を1mmとした場合、Y2、Y1、1.78(単位:mm)が所定値以上である。したがって、変更後の上記平均値(変更平均値)は、凹部群X5に属する外側の凹部14bz、凹部群X1に属する外側の凹部14bz、各凹部群X1,X5に属する内側の凹部14bz、各凹部群X2,X3,X4に属する凹部14by、及び、各凹部群X2,X3,X4に属する凹部14bxにおいてそれぞれ、0.75、0.75、0.75、0.50、及び0.37(単位:mm)となる。
【0057】
偏心量Δは、上記変更平均値の大小関係と逆であり、大きいものから順に、各凹部群X2,X3,X4に属する凹部14bx、各凹部群X2,X3,X4に属する凹部14by、及び、これら以外の凹部14b、と並べられる。
偏心方向は、副走査方向に関して、当該凹部14bとより近くに隣接する凹部14bとの間隔を大きくし、且つ、当該凹部14bとより遠くに隣接する凹部14bとの間隔を小さくする方向である。
【0058】
なお、凹部14bに係る2つの中心間距離(即ち、副走査方向一方側及び他方側の中心間距離)の両方が所定値以上の場合、中心間距離に関わらず、偏心量Δをゼロ(0)とする(底部14b3の中心と中心Oとが一致するように、吐出口14aが底部14b3に配置される)。凹部14bに係る間隔d1,d2の両方が所定値以上の場合も同様に、偏心量Δをゼロ(0)とする。
【0059】
次いで、図8〜図10を参照し、ヘッド10の製造方法について説明する。
【0060】
先ず、流路ユニット12、アクチュエータユニット17、及びリザーバユニット11を別々に作製する(S1,S2,S3)。これら工程S1,S2,S3は、独立して行われるものであり、いずれの工程を先に行ってもよく、並行して行ってもよい。
【0061】
S1では、9枚の金属プレートにそれぞれ貫通孔を形成することにより、プレート12a〜12iを準備する。プレート12iの準備にあたっては、先ず、先細りのポンチ等を用いて、プレート12iとなる金属プレートに、吐出口14aを先端に有する貫通孔を形成する(吐出口形成工程S1a:図9(a)参照)。その後プレート12iの吐出口14aが開口した面を研磨し、吐出口14a周縁に形成されたバリを除去する。これによりプレート12iが完成する。
【0062】
しかる後、凹部14bの領域に合わせて、プレート12iの吐出口14aが開口した面に、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト層を形成する。そして当該レジスト層をマスクとして、メッキ層12jを形成する(メッキ層形成工程S1b:図9(b)参照)。このとき、当該面を電解溶液に浸してニッケルの電解メッキを行う。そしてプレート12iを洗浄等してマスクを除去することで、凹部14bを含む吐出面10aが完成する。換言すると、当該工程により、吐出面10aに凹部14bが形成される。このとき、各凹部14bは、上述のように底部14b3の中心が中心Oに対して偏心して配置されるように(図7参照)、形成される。
【0063】
次に、吐出面10aに撥インク膜12kを形成する(撥インク膜形成工程S1c:図9(c)参照)。このとき、例えばスプレー法によって、凹部14bの内面を含む吐出面10aの全体に撥インク剤を塗布し、当該塗布された撥インク剤を熱処理することで、撥インク膜12kを形成する。この際、撥インク剤の一部が吐出口14aの内部に侵入し、吐出口14aの内部や出口付近に余剰部分12kxが形成される。
【0064】
次に、撥インク膜12kが形成された吐出面10aの全体をマスク80で覆う(マスク工程S1d:図9(d)参照)。このとき、例えば図10に示すような、マスク(レジストシート)80を表面に保持したテープ81、及び、テープ81を吐出面10aに押圧するローラ82を用いる。ローラ82は、副走査方向に延在し、副走査方向に関する長さは吐出面10aの幅(副走査方向の長さ)よりも長い。先ず表面が吐出面10aに対向するようにテープ81を配置し、ローラ82をテープ81の裏面に接触させつつ回転させながら主走査方向に移動させる。ローラ82の押圧力は一定である。これにより、吐出面10aの主走査方向一端から他端に向けて、順次マスク80が圧着される。このとき、マスク80における各凹部14bへの侵入量は略均等になる。
【0065】
次に、吐出口14aの内部等に形成された余剰部分12kxを除去する(余剰部分除去工程S1e:図9(e)参照)。このとき、プレート12iの吐出口14aが開口した面とは反対側の面(図9(e)の紙面上側の面)から、プラズマ照射等を行うことで、余剰部分12kxを除去する。
【0066】
次に、マスク80を吐出面10aから剥離する(マスク剥離工程S1f)。そして、メッキ層12j及び撥インク膜12kが形成されたプレート12iと他のプレート12a〜12hとを互いに位置合わせしつつ積層して接合する。これにより、流路ユニット12が完成する。
【0067】
S2では、8つのアクチュエータユニット17を作製する。このとき、例えば、複数枚の圧電セラミックスのグリーンシート上に、金属ペーストを電極のパターンでスクリーン印刷する。そして、当該グリーンシートを積層した積層体を公知のセラミックスと同様に脱脂して焼成する工程等を経て、アクチュエータユニット17を作製する。
【0068】
S3では、4枚の金属プレートにそれぞれ貫通孔や凹部を形成して、金属プレート11a〜11dを準備する。そしてこれらプレート11a〜11dを互いに位置合わせしつつ積層して接合することで、リザーバユニット11を作製する。
【0069】
次に、S1で作製した流路ユニット12に、S2で作製した8つのアクチュエータユニット17を固定する(S4)。S4の後、アクチュエータユニット17の表面に形成された各電極の接点に、半田、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム)等の金属ペーストを塗布することで、バンプを形成する(S5)。その後、S5で形成したバンプを介して、個別電極のそれぞれにFPC50の端子を接続する(S6)。S6の後、リザーバユニット11を流路ユニット12に固定する(S7)。このとき、インク流出流路73の開口73aがマニホールド流路13の開口12yと接続される。その後、基板64を組み付けてFPC50と基板64とをコネクタ64aを介して電気的に接続する工程、流路ユニット12とでリザーバユニット11及びアクチュエータユニット17とを取り囲むようにサイドカバー65b及びトップカバー65aを組み付ける工程等を経て、ヘッド10が完成する。
【0070】
以上に述べたように、本実施形態のヘッド10及びその製造方法によると、凹部14bは、間隔d1の間隔d2に対する大小関係が間隔x1の間隔x2に対する大小関係と同じになるように、底部14b3の中心が吐出口14aの中心Oに対して配置されている(図7参照)。これにより、ワイパやマスク80等の部材から間隔d1,d2に対応する吐出面10aの領域に加わる圧力のばらつきが軽減される。即ち、吐出面10aに対する部材からの圧力のばらつきを軽減することができる。
【0071】
また、各凹部14bは、間隔D1と間隔D2との差が、底部14b3及び吐出口14aの中心同士が一致する場合に比べて小さくなるように、底部14b3の中心が中心Oに対して偏心して配置されている。間隔D1,D2が小さいほど、部材から当該間隔D1,D2に対応する吐出面10aの領域に加わる圧力が大きくなり、間隔D1,D2が大きいほど、部材から当該間隔D1,D2に対応する吐出面10aの領域に加わる圧力が小さくなる。本実施形態成によれば、間隔D1,D2の差が小さくなるように(即ち、間隔D1,D2が均一化されるように)、各凹部14bをシフトさせたことで、当該間隔D1,D2に対応する吐出面10aの領域に加わる圧力のばらつきが軽減される。即ち、吐出面10aに対する部材からの圧力のばらつきを軽減することができる。
【0072】
吐出面10aには、それぞれ底部14b3に複数の吐出口14aが開口した複数の凹部14bが形成されている(図6参照)。1の凹部14bに1の吐出口14aを設ける場合、凹部14bの数が多くなり、凹部14bの形成作業が煩雑化する。これに対し、本実施形態によれば、凹部14bの数を抑制し、凹部14bを容易に形成することができる。
【0073】
凹部14bを画定する部分を含む吐出面10aの全体に撥インク膜12kが形成されている(図7参照)。この場合、吐出口14aの周縁にのみ撥インク膜12kを設ける場合に比べ、撥インク膜12kを容易に形成することができる。
【0074】
凹部14bは、プレート12iとメッキ層12jとによって画定されている。この場合、プレート12iをエッチング等で加工して凹部14bを形成する場合に比べ、凹部14bを精度よく且つ容易に形成することができる。
【0075】
凹部14bは、間隔d1,d2がいずれも所定値以上のとき、底部14b3の中心が中心Oと一致して配置される。これにより、吐出面10aの幅(副走査方向の長さ)を小さくすることができる。
例えば、凹部群X1,X5に属する外側の凹部14bzに着目する。当該凹部14bzに形成された吐出口14aの中心Oと端部10a1又は10a2との間隔(Y1又はY2mm)は、ヘッド10の全体的構成に規制され、殆ど変更の余裕がないのが実情である。ここで、所定値を0.75mm以下とすれば、当該凹部14bzは、底部14b3の中心が中心Oと一致して配置される。この場合、当該凹部14bzがそれぞれ吐出面10aの副走査方向より内側に位置することとなるため、吐出面10aの幅を小さくすることができる。
【0076】
余剰部分除去工程S1e(図9(e)参照)において、プレート12iの吐出口14aが開口した面とは反対側の面(図9(e)の紙面上側の面)から、余剰部分12kxを除去する。これにより、余剰部分12kxを精度よく且つ容易に除去することができる。
【0077】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0078】
間隔D1と間隔D2との差が0に近づくことが好ましく、d1=d2且つx1=x2となるように凹部を配置してもよい。
【0079】
他の凹部は、吐出口が底部に開口した凹部の他、吐出口が底部に開口していない凹部も含む。
【0080】
間隔d1,d2がいずれも所定値以上のときであっても、凹部を、底部の中心が吐出口の中心から偏心するように配置してよい。
【0081】
凹部は、基材とメッキ層とによって画定されることに限定されず、例えば基材をエッチング等で加工して凹部を形成してよい。
基材は、板状に限定されない。
【0082】
凹部は、吐出面に直交する方向から見た形状が長尺な場合、吐出面に平行ないずれの方向に延在してもよい。また、複数の長尺な凹部において、延在方向が異なってもよい。複数の長尺な凹部において、幅が同じでなくてもよい。また、凹部は、長尺方向に亘って幅が一定であることに限定されず、幅が変化してもよい。
凹部は、吐出面に直交する方向から見た形状が、長尺であることに限定されず、円形や正方形等であってもよい。
凹部は、吐出面に複数形成されることに限定されず、1つだけ形成されてもよい。
1の凹部に、複数の吐出口を設けることに限定されず、1の吐出口を設けてもよい。
【0083】
撥液膜は、凹部を画定する部分を含む吐出面の全体に形成されることに限定されず、少なくとも凹部の底部に形成されればよい。
【0084】
マスク工程において用いる部材やマスクの吐出面への圧着方法は任意である。例えば、上述の実施形態において、図10に示すローラ82を固定した状態で、ヘッド10を主走査方向に移動させてもよい。また、主走査方向に延在するローラを用い、吐出面の副走査方向一端から他端に向けて順次マスクを圧着してもよい。さらに、ローラ82の代わりに、吐出面10aよりも一回り大きな面を有する平板を用いて、テープ81を吐出面10aに押圧してもよい。この場合、平板がテープ81の裏面に接触し、吐出面10aの全体が一度にマスク80で覆われる。
【0085】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等の液体吐出装置に適用可能である。また、液体吐出装置に適用される液体吐出ヘッドの数は4に限定されず、1以上であればよい。
液体を吐出させるエネルギーを付与するアクチュエータ(吐出エネルギー発生手段)として、圧電素子を用いたピエゾ方式のものを例示したが、他の方式(例えば、発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)のものであってもよい。
液体吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式でもよい。さらに、本発明に係る液体吐出ヘッドは、インク以外の液体を吐出してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 インクジェット式プリンタ
10 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
10a 吐出面
12 流路ユニット
12i プレート(基材)
12j メッキ層
12k 撥インク膜(撥液膜)
12kx 余剰部分
14 個別流路(液体流路)
14a 吐出口
14b 凹部
14b3 底部
16 圧力室
80 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口が底部に開口した凹部が形成された、吐出面を備え、
前記底部に撥液膜が形成されており、
前記凹部は、
前記吐出面に平行な一方向に関して、前記吐出口の中心と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく一方側で隣接する他の前記凹部の他方側側面又は前記吐出面の一方側端部との間隔をd1とし、前記吐出口の中心と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく他方側で隣接する他の前記凹部の一方側側面又は前記吐出面の他方側端部との間隔をd2とし、さらに、前記吐出口の中心と当該凹部の一方側側面との間隔をx1とし、前記吐出口の中心と当該凹部の他方側側面との間隔をx2としたときに、
前記間隔d1の前記間隔d2に対する大小関係が前記間隔x1の前記間隔x2に対する大小関係と同じになるように、前記底部の中心が前記吐出口の中心に対して配置されていることを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記凹部は、
前記吐出面に平行な一方向に関して、当該凹部の一方側側面と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく一方側で隣接する他の前記凹部の他方側側面又は前記吐出面の一方側端部との間隔をD1とし、当該凹部の他方側側面と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく他方側で隣接する他の前記凹部の一方側側面又は前記吐出面の他方側端部との間隔をD2としたときに、
前記間隔D1と前記間隔D2との差が、前記底部及び前記吐出口の中心同士が一致する場合に比べて小さくなるように、前記底部の中心が前記吐出口の中心に対して偏心して配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記吐出面に、前記一方向に互いに離隔し且つ前記一方向と交差する方向に長尺で、それぞれの前記底部に複数の前記吐出口が開口した、複数の前記凹部が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記凹部を画定する部分を含む前記吐出面の全体に前記撥液膜が形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記凹部は、表面に前記吐出口が開口した基材、及び、前記表面の前記吐出口とその周縁とを除く部分に形成されたメッキ層によって、画定されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記凹部は、前記吐出面に平行な一方向に関して、前記間隔d1,d2がいずれも所定値以上のとき、前記底部の中心が前記吐出口の中心と一致して配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
液体を吐出する吐出口が底部に開口した凹部が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、
前記吐出面に前記凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部形成工程の後、前記底部に撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、
前記撥液膜形成工程の後、前記吐出面の前記吐出口を含む部分をマスクで覆うマスク工程と、
前記マスク工程の後、前記撥液膜のうち前記吐出口の内部に形成された余剰部分を除去する余剰部分除去工程と、
前記余剰部分除去工程の後、前記マスクを前記吐出面から剥離する剥離工程と、を備え、
前記凹部形成工程において、
前記凹部は、前記吐出面に平行な一方向に関して、前記吐出口の中心と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく一方側で隣接する他の前記凹部の他方側側面又は前記吐出面の一方側端部との間隔をd1とし、前記吐出口の中心と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく他方側で隣接する他の前記凹部の一方側側面又は前記吐出面の他方側端部との間隔をd2とし、さらに、前記吐出口の中心と当該凹部の一方側側面との間隔をx1とし、前記吐出口の中心と当該凹部の他方側側面との間隔をx2としたときに、前記間隔d1の前記間隔d2に対する大小関係が、前記間隔x1の前記間隔x2に対する大小関係と同じになるように、前記底部の中心が前記吐出口の中心に対して配置されることを特徴とする、液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記凹部形成工程において、
前記凹部は、前記吐出面に平行な一方向に関して、当該凹部の一方側側面と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく一方側で隣接する他の前記凹部の他方側側面又は前記吐出面の一方側端部との間隔をD1とし、当該凹部の他方側側面と、当該凹部との間に別の前記凹部を挟むことなく他方側で隣接する他の前記凹部の一方側側面又は前記吐出面の他方側端部との間隔をD2としたときに、前記間隔D1と前記間隔D2との差が、前記底部及び前記吐出口の中心同士が一致する場合に比べて小さくなるように、前記底部の中心が前記吐出口の中心に対して偏心して配置されることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記凹部形成工程において、前記一方向に互いに離隔し且つ前記一方向と交差する方向に長尺な複数の前記凹部を、それぞれの前記底部に複数の前記吐出口が開口するように、形成することを特徴とする、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記撥液膜形成工程において、前記凹部を画定する部分を含む前記吐出面の全体に、前記撥液膜を形成することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記凹部形成工程において、表面に前記吐出口が開口した基材の、前記表面の前記吐出口とその周縁とを除く部分にメッキ層を形成することで、前記凹部を形成することを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記液体吐出ヘッドを構成する板に、前記吐出口を先端に有する貫通孔を形成する吐出口形成工程を備え、
前記余剰部分除去工程において、前記板の前記吐出口が開口した面とは反対側の面から、前記余剰部分を除去することを特徴とする、請求項7〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記凹部形成工程において、
前記凹部は、前記吐出面に平行な一方向に関して、前記間隔d1,d2がいずれも所定値以上のとき、前記底部の中心が前記吐出口の中心と一致して配置されることを特徴とする、請求項7〜12のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−81613(P2012−81613A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228342(P2010−228342)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】