説明

液体吐出ヘッド

【課題】導電性バンプのマイグレーションに起因する電気回路の短絡を防止することができる、液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド10は、個別電極66、共通電極68、圧電シート60、個別電極66のそれぞれに対して電気的に導通する複数の個別電極端子70a,70b、および共通電極68に対して電気的に導通する共通電極端子72を有するアクチュエータユニット16を備えており、個別電極端子70a,70bおよび共通電極端子72がアクチュエータユニット16の表面に配設されている。そして、個別電極端子70a,70bの表面には、導電性バンプ74が形成されており、共通電極端子72とその近傍に配設された個別電極端子70aに形成された導電性バンプ74との間には、導電性バンプ74よりもマイグレーションが生じ難い材料からなり、かつ、導電性バンプ74と電気的に導通するマイグレーション防止部82が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路ユニットの圧力室に容積変化を生じさせることによって圧力室内の液体に吐出圧を付与し、これにより圧力室に連通するノズルから液体を吐出させるようにした、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体吐出ヘッドの1つとして、インクジェットプリンタのインクジェットヘッドが周知であり、特許文献1には、インクジェットヘッドの一例が開示されている。
【0003】
特許文献1のインクジェットヘッドは、インク(液体)を吐出するノズルを有する流路ユニットと、流路ユニット内のインク(液体)に吐出圧を付与するアクチュエータユニットとを積層することによって構成されており、アクチュエータユニットの表面には、アクチュエータユニットに駆動電圧を付与するフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuits:以下、「FPC」と略す。)が接合されている。
【0004】
アクチュエータユニットは、流路ユニットに形成された圧力室のそれぞれに対応して設けられ、かつ、駆動電圧が個別に印加される複数の個別電極と、複数の圧力室に共通に設けられ、かつ、グランド電位に保持される共通電極と、個別電極と共通電極とで挟まれた圧電シートとを有している。そして、アクチュエータユニットの表面には、個別電極および共通電極のそれぞれに対して電気的に導通する複数の電極端子が形成されており、電極端子の表面には、Ag(銀)を含む金属材料からなる導電性バンプが形成されている。そして、導電性バンプのそれぞれに対してFPCの対応する電極が電気的に接続されている。
【特許文献1】特開2005−305847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術(特許文献1)によれば、接触抵抗の小さいAgを含む金属材料を用いて導電性バンプを形成しているので、アクチュエータユニットとFPCとの電気的接続を確実に行うことができ、接続不良を防止することができる。
【0006】
しかし、導電性バンプに含まれるAgは、電気回路に用いられる金属材料(Ag、Pd、Cu、Sn、Au)の中でも電位差によるマイグレーションが最も発生しやすいため、当該マイグレーションによってAgのデントライト結晶が成長して電気回路が短絡するおそれがあった。たとえば、共通電極をグランド電位に保持するためには、共通電極に対して電気的に導通する共通電極端子をアクチュエータユニットの表面に配設するとともに、この共通電極端子をグランド電位に接地することが考えられるが、この場合には、個別電極端子の表面に形成された導電性バンプと共通電極端子との間に生じる電位差によって、導電性バンプのマイグレーションが発生し、Agのデントライト結晶が成長して個別電極端子と共通電極端子とが短絡するおそれがあった。
【0007】
インクジェットヘッドのアクチュエータユニットにおいては、インクジェットプリンタの「多チャンネル化」または「小型化」を達成するために、複数の個別電極を高密度で配置する必要があるが、個別電極の密度が高くなるほど、個別電極端子と共通電極端子との間隔が狭くなるため、導電性バンプのマイグレーションが発生した場合には、Agのデントライト結晶による電気回路の短絡が発生し易くなり、故障が頻発するようになる。そのため、従来では、個別電極端子と共通電極端子との間隔を、Agのデントライト結晶が到達しない程度に十分に確保せざるを得ず、このことが、「多チャンネル化」または「小型化」の妨げになっていた。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、導電性バンプのマイグレーションに起因する電気回路の短絡を防止することができる、液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の液体吐出ヘッドは、液体を吐出する複数のノズルおよび前記ノズルのそれぞれに個別に連通された複数の圧力室を有する流路ユニットと、前記圧力室のそれぞれに対応して設けられ、かつ、駆動電圧が個別に印加される複数の個別電極、前記圧力室のそれぞれに共通に設けられ、かつ、一定電位に保持される共通電極、前記個別電極と前記共通電極とで挟まれた圧電シート、前記個別電極のそれぞれに対して電気的に導通する複数の個別電極端子、および前記共通電極に対して電気的に導通する共通電極端子を有し、前記駆動電圧に基づいて前記圧力室内の液体に吐出圧を与えるアクチュエータユニットとを備える、液体吐出ヘッドであって、前記個別電極端子および前記共通電極端子が前記アクチュエータユニットの表面に配設されており、前記個別電極端子の表面には、導電性バンプが形成されており、前記共通電極端子とその近傍に配設された前記個別電極端子に形成された前記導電性バンプとの間には、前記導電性バンプよりもマイグレーションが生じ難い材料からなり、かつ、前記導電性バンプと電気的に導通するマイグレーション防止部が配設されていることを特徴とする。
【0010】
この構成では、導電性バンプとマイグレーション防止部とが電気的に導通しているので、これらの間に電位差が生じることはない。したがって、導電性バンプの金属イオン(たとえばAg+)がマイグレーション防止部に引き寄せられることはなく、当該金属イオンがマイグレーション防止部を乗り越えて共通電極端子に到達するのを防止することができる。また、導電性バンプの金属イオンがマイグレーション防止部を迂回できる場合であっても、マイグレーション防止部によって当該金属イオンの迂回経路を長く確保することができるので、当該金属イオンが共通電極端子に到達するのを防止することができる。さらに、導電性バンプが形成される個別電極端子と共通電極端子とを必要以上に離間させる必要はないので、複数の個別電極端子およびこれらに電気的に導通する複数の個別電極を高密度で配置することができる。
【0011】
前記個別電極端子は、表面に前記導電性バンプが形成される端子部本体を有しており、前記マイグレーション防止部は、前記個別電極端子の一部として前記端子部本体の周囲に配設されている構成であってもよい。
【0012】
この構成では、導電性バンプをマイグレーション防止部で取り囲むことができるので、導電性バンプの金属イオンがマイグレーション防止部を迂回するのを防止することができ、当該金属イオンが共通電極端子に到達するのを確実に防止することができる。
【0013】
待機状態においては、前記個別電極と前記共通電極との間に電位差が生じており、前記ノズルから液体を吐出する際には、当該電位差が瞬間的に解消される構成であってもよい。
【0014】
この構成では、液体を吐出しない待機状態において、導電性バンプと共通電極端子との間に長時間に亘って電位差が生じるが、上述のように、マイグレーション防止部によって導電性バンプのマイグレーションの発生を防止、或いは、進行を阻止することができるので、電気回路の短絡を防止することができる。
【0015】
待機状態においては、前記共通電極に基準電圧が印加されるとともに、前記個別電極に前記基準電圧よりも絶対値の大きい待機電圧が印加されることによって、前記圧力室の容積が自然状態よりも縮小され、前記ノズルから液体を吐出する際には、前記個別電極に前記待機電圧よりも絶対値の小さい駆動電圧が印加されることによって、前記圧力室の容積が瞬間的に拡大される構成であってもよい。
【0016】
この構成は、待機状態において導電性バンプと共通電極端子との間に電位差が生じる態様に関するものである。
【0017】
待機状態においては、前記共通電極に基準電圧が印加されるとともに、前記個別電極に前記基準電圧とほぼ同じ大きさの待機電圧が印加されることによって、前記圧力室の容積が自然状態に保たれ、前記ノズルから液体を吐出する際には、前記個別電極に前記待機電圧よりも絶対値の大きい駆動電圧が印加されることによって、前記圧力室の容積が瞬間的に縮小される構成であってもよい。
【0018】
この構成では、個別電極に駆動電圧が印加されたときに、個別電極と共通電極との間に一定の電位差が発生するため、液体の吐出頻度が高くなるほど、当該電位差が長時間に亘って発生するようになるが、上述のように、マイグレーション防止部によって導電性バンプのマイグレーションの発生を防止、或いは、進行を阻止することができるので、電気回路の短絡を防止することができる。
【0019】
前記導電性バンプはAgを含む金属材料で形成されていてもよい。
【0020】
この構成では、接触抵抗の小さいAgを含む金属材料で導電性バンプが形成されているので、導電性バンプのマイグレーションによる電気回路の短絡を防止しつつ、アクチュエータユニットとFPCとの電気的な接続を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上に説明したように構成され、マイグレーション防止部によって導電性バンプのマイグレーションの発生を防止、或いは、進行を阻止することができるので、導電性バンプの金属イオン(たとえばAg+)が共通電極端子に到達することによる電気回路の短絡を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明をインクジェットプリンタのインクジェットヘッドに適用したものであるが、本発明は、カラーフィルタ製造装置の着色液吐出ヘッドや、電気配線装置の導電液吐出ヘッドのような他の液体吐出ヘッドにも適用可能である。
【0023】
(第1実施形態)
[インクジェットヘッドの全体構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る「液体吐出ヘッド」としてのインクジェットヘッド10およびこれに接合されるFPC12を示す分解斜視図であり、図2は、インクジェットヘッド10を示す平面図であり、図3は、インクジェットヘッド10およびこれに接合されるFPC12を示す部分拡大断面図である。
【0024】
インクジェットヘッド10は、インクジェットプリンタに往復可能に設けられたキャリッジ(図示省略)に搭載されて、用紙の搬送方向(すなわち、副走査方向)Yに対して直交する方向(すなわち、主走査方向)Xへ移動されるとともに、図示しないインクカートリッジから供給されたインク(本実施形態では、ブラック(BK)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびシアン(C)の4色)を、FPC12から付与された駆動電圧に基づいて選択的に吐出するものであり、図1および図3に示すように、流路ユニット14と、アクチュエータユニット16とを備えている。
【0025】
[流路ユニットの構成]
流路ユニット14は、図3に示すように、圧力室プレート18、アパーチャプレート20、接続流路プレート22、第1マニホールドプレート24、第2マニホールドプレート26、ダンパープレート28、カバープレート30およびノズルプレート32の8枚のプレートを上側からこの順に積層した状態で構成されている。これらのプレート18〜32には、電解エッチングまたはレーザー加工等によって「凹部」または「貫通孔」が形成されており、これらの「凹部」または「貫通孔」が互いに連通されることによって、図1および図2に示すように、ブラック(BK)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)およびシアン(C)の4色のインクのそれぞれに対応する4つのインク流路N1〜N4が構成されている。
【0026】
なお、本実施形態の説明で用いる「下側」または「下方」とは、インクを吐出する方向を意味し、「上側」または「上方」とは、その反対側を意味するものとする(他の実施形態においても同じ。)。
【0027】
インク流路N1〜N4は、図2に示すように、流路ユニット14における主走査方向Xの一方端側から他方端側へ向けて並べて配置された4つの長方形の領域S1〜S4に作り込まれており、最も頻繁に使用されるブラック(BK)インク用のインク流路N1は、他のインク流路N2〜N4よりも大きく設計されている。
【0028】
ブラック(BK)インク用のインク流路N1は、1つのインク導入流路34(図2)と、インク導入流路34に連通された複数(本実施形態では3つ)の共通インク室36(図2)と、共通インク室36のそれぞれに連通された複数(本実施形態では68個)の個別インク流路38(図3)とを備えており、これらがインクの流れの上流側からこの順に連通されている。
【0029】
インク導入流路34(図2)は、インクカートリッジ(図示省略)からのインクを共通インク室36へ導入するための導入流路であり、流路ユニット14における副走査方向Yの一方端部において、圧力室プレート18、アパーチャプレート20および接続流路プレート22のそれぞれに形成された貫通孔(図示省略)が、これらのプレート18〜22の厚さ方向へ連通されることによって構成されている。
【0030】
共通インク室36は、図3に示すように、第1マニホールドプレート24および第2マニホールドプレート26のそれぞれに形成された貫通孔24a,26aがこれらの厚さ方向へ連通されるとともに、これにより生じた空間の上端開口が接続流路プレート22で塞がれ、かつ、下端開口がダンパープレート28で塞がれることによって構成されており、共通インク室36を平面視したときのその形状(以下、「平面視形状」という。)は、図2に示すように、副走査方向Yへ長く延びた長方形に設計されている。そして、共通インク室36における副走査方向Yの一方端部はインク導入流路34に連通されており、他方端部は閉塞されている。また、貫通孔26aを閉塞する部分となる共通インク室36の底部には、図3に示すように、ダンパープレート28の下面に凹部28aを形成することによって、弾性変形可能な板状のダンパ40が構成されており、このダンパ40が弾性変形されることによって共通インク室36内のインクに作用する圧力波が減衰される。そして、共通インク室36の幅方向両側には、図1に示すように、複数の個別インク流路38(図3)が2列に並んで千鳥状に配設されており、個別インク流路38のそれぞれが共通インク室36に連通されている。
【0031】
各個別インク流路38は、図3に示すように、共通インク室36内のインクを「駆動信号」に基づいてノズル50から外部へ吐出させるための流路であり、接続流路42、アパーチャ44、圧力室46、吐出流路48およびノズル50が上流側からこの順に連通されることによって構成されている。
【0032】
接続流路42は、接続流路プレート22に形成された貫通孔22aによって構成されており、接続流路42の上流側端部は共通インク室36に連通されており、下流側端部はアパーチャ44の上流側端部に連通されている。アパーチャ44は、アパーチャプレート20の下面に形成された凹部20aの下側開口が接続流路プレート22で覆われることによって構成されており、アパーチャ44の下流側端部は貫通孔20cを介して圧力室46の上流側端部に連通されている。
【0033】
圧力室46は、圧力室プレート18に形成された貫通孔18aの上端開口がアクチュエータユニット16で塞がれ、下端開口がアパーチャプレート20で塞がれることによって構成されており、圧力室46の内部上面46aがアクチュエータユニット16の下面によって構成されている。圧力室46の平面視形状(すなわち、貫通孔18aの平面視形状)は、主走査方向Xへ長く延びた略長方形に設計されており、インク流路N1においては、複数の個別インク流路38のそれぞれを構成する複数の圧力室46が、副走査方向Yへ千鳥状に列を成すように並べて配置されている。
【0034】
吐出流路48は、アパーチャプレート20、接続流路プレート22、第1マニホールドプレート24、第2マニホールドプレート26、ダンパープレート28およびカバープレート30のそれぞれに形成された貫通孔20b,22b,24b,26b,28b,30aによって構成されており、吐出流路48の上流側端部は圧力室46の下流側端部に連通されている。
【0035】
ノズル50は、ノズルプレート32に形成されたテーパ状の貫通孔32aによって、下流側端部(すなわち、吐出口)へ向かうにつれて内径が縮径されたテーパ状に構成されており、ノズル50の上流側端部は吐出流路48の下流側端部に連通されている。インク流路N1においては、複数の個別インク流路38のそれぞれを構成する複数のノズル50が、圧力室46に対応して、副走査方向Yへ千鳥状に列を成すように並べて配置されている。
【0036】
したがって、インク流路N1においては、1つのインク導入流路34から、3つの共通インク室36(図2)のそれぞれにブラック(BK)インクが導入され、当該インクが各共通インク室36から千鳥状に列を成すように並べて配置された複数の圧力室46に与えられ、圧力室46のそれぞれに連通された複数のノズル50から外部へ吐出される。
【0037】
一方、ブラック(BK)インク以外のインクが流れるインク流路N2〜N4は、1つのインク導入流路52(図1、図2)と、インク導入流路52に連通された複数(本実施形態では2つ)の共通インク室54(図2)と、共通インク室54のそれぞれに連通された複数(本実施形態では68個)の個別インク流路56(図1)とを備えている。
【0038】
インク導入流路52(図1、図2)は、インク流路N1のインク導入流路34(図1、図2)に比べて容積が小さい点を除いて、インク導入流路34と同様に構成されており、共通インク室54(図2)および個別インク流路56(図1)は、インク流路N1の共通インク室36(図2)および個別インク流路38(図1)に比べて総数が少ない点を除いて、これらと同様に構成されている。これにより、インク流路N1〜N4の全てにおいて、「インク吐出性能」の均一性が保持されており、かつ、「インク吐出量のバランス」が図られている。つまり、インク流路N2〜N4に要求される「インク吐出性能」は、インク流路N1に要求される「インク吐出性能」と共通しているため、インク導入流路52(図1、図2)、共通インク室54(図2)および個別インク流路56(図1)の構成は、インク導入流路34(図1、図2)、共通インク室36(図2)および個別インク流路38(図1)の構成と同じに設計されている。また、インク流路N2〜N4を流れるインクの「使用頻度」は、インク流路N1を流れるブラック(BK)インクの「使用頻度」に比べて少ないため、共通インク室54(図2)および個別インク流路56(図1)の総数は、共通インク室36(図2)および個別インク流路38(図1)の総数よりも少なく設計されている。
【0039】
そして、図1および図2に示すように、流路ユニット14の上面におけるインク導入流路34,52が形成された領域には、インクに混入した異物を捕捉するフィルタ58が接着剤等を用いて接合されており、その他の領域には、アクチュエータユニット16が接着剤等を用いて接合されている。
【0040】
[アクチュエータユニットの構成]
アクチュエータユニット16は、図3に示すように、流路ユニット14における圧力室46の内部上面46aを構成するとともに、複数の圧力室46内のインクに吐出圧を選択的に付与するものであり、第1圧電シート60、第2圧電シート62および第3圧電シート64を上側からこの順に積層した状態で構成されている。
【0041】
圧電シート60,62,64のそれぞれは、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなり、かつ、略15〜30μm程度の厚さを有するシート部材であり、最上層となる第1圧電シート60の上面には、複数の圧力室46のそれぞれに個別に対応する複数の個別電極66が圧力室46と対向する位置に形成されており、中間層となる第2圧電シート62の上面には、圧力室46のそれぞれに共通に対応する共通電極68が圧力室46のそれぞれに跨って形成されている。したがって、アクチュエータユニット16においては、第1圧電シート60が「活性層」となっており、第2圧電シート62および第3圧電シート64が「非活性層」となっており、第1圧電シート60における個別電極66と共通電極68とで挟まれた部分が、「活性部60a」となっている。
【0042】
また、最上層となる第1圧電シート60の上面には、図4に示すように、個別電極66のそれぞれに対して電気的に導通する複数の個別電極端子70a,70bが形成されるとともに、共通電極端子72が形成されており、個別電極端子70a,70bの表面には、1つの導電性バンプ74が形成されており、共通電極端子72の表面には、複数(本実施形態では5個)の導電性バンプ76が形成されている。そして、第1圧電シート60には、図3に示すように、スルーホール60bが厚さ方向へ貫通して形成されており、スルーホール60bの内部には、導電性の接続材78が配設されており、この接続材78を介して共通電極68と共通電極端子72とが電気的に接続されている。
【0043】
なお、圧電シート60,62,64の積層体を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、本実施形態では、個別電極66、個別電極端子70a,70bおよび共通電極端子72のそれぞれを構成する導電性パターンが上面に形成された第1グリーンシートと、共通電極68を構成する導電性パターンが上面に形成された第2グリーンシートと、導電性パターンを有しない第3グリーンシートとを重ねて焼成する「グリーンシート法」が採用されている。また、個別電極66、個別電極端子70a,70b、共通電極68および共通電極端子72の「導電性パターン」を形成する方法としては、Ag−Pd等を含む金属材料からなる導電性ペーストをグリーンシートの上面にスクリーン印刷する「スクリーン印刷法」が採用されている。
【0044】
以下には、共通電極端子72、個別電極66および個別電極端子70a,70bについて、さらに詳細に説明する。
【0045】
共通電極端子72は、図2に示すように、第1圧電シート60の上面(すなわち、アクチュエータユニット16の表面)における主走査方向Xの両端部に副走査方向Yへ延びて形成された帯状の導電層であり、本実施形態では、Ag−Pd等を含む金属材料からなる3つの共通電極端子72が互いに間隔を隔てて副走査方向Yへ並べて配設されている。そして、共通電極端子72の表面には、Agを含む金属材料からなる略半球状の導電性バンプ76が形成されている。
【0046】
なお、共通電極端子72の数は、特に限定されるものではなく、たとえば、第1圧電シート60の上面における主走査方向Xの両端部に1つの共通電極端子72が配設されていてもよいし、主走査方向Xの一方端部にだけ1つまたは複数の共通電極端子72が配設されていてもよい。また、共通電極端子72の表面に形成される導電性バンプ76の数も、適宜増減されてもよい。
【0047】
個別電極66は、図4に示すように、第1圧電シート60の上面に形成された島状の導電層であり、本実施形態では、個別インク流路38(図1)の数と同じ数の個別電極66が、Ag−Pd等を含む金属材料によって、共通インク室36(図4),54(図2)の幅方向両側に2列に並んで千鳥状に形成されている。個別電極66の平面視形状は、圧力室46の平面視形状とほぼ同じ形状(本実施形態では略四角形)に設計されており、個別電極66を平面視したときのその面積(以下、「平面視面積」という。)は、圧力室46の平面視面積とほぼ同じ大きさに設計されている。
【0048】
個別電極端子70a,70bは、マイグレーションが生じ難い材料(Ag−Pd等を含む金属材料等)からなり、かつ、第1圧電シート60の上面に個別電極66のそれぞれから延びて形成された島状の導電層であり、圧力室の容積変化を阻害することのないように、圧力室46が配置された領域から側方へ外れた位置に配置されている。そして、個別電極端子70a,70bの表面には、Agを含む金属材料からなる略半球状の導電性バンプ74が形成されている。
【0049】
個別電極端子70a,70bの平面視形状および平面視面積は、図4に示すように、第1圧電シート60の上面(すなわち、アクチュエータユニット16の表面)における個別電極端子70a,70bの位置に応じて2通りに設計されている。
【0050】
すなわち、共通電極端子72の近傍に配設された個別電極端子70aの平面視形状は、略扇形に設計されており、略扇形の幅狭部分が個別電極66に連なっている。また、当該個別電極端子70aの平面視面積は、その表面に形成される導電性バンプ74の底面積よりも大きく設計されており、当該個別電極端子70aの表面中央部に導電性バンプ74が形成されている。したがって、当該個別電極端子70aにおいては、導電性バンプ74が形成された円形部分が端子部本体80となっており、端子部本体80の周囲の環状部分が、導電性バンプ74よりもマイグレーションが生じ難い材料(Ag−Pd等を含む金属材料)からなり、かつ、導電性バンプ74と電気的に導通するマイグレーション防止部82となっている。つまり、マイグレーション防止部82は、個別電極端子70aの一部として端子部本体80の周囲に配設されている。
【0051】
したがって、マイグレーション防止部82が存在しない場合と比べると、個別電極端子70aと共通電極端子72との離間距離を短くすることが可能であり、アクチュエータユニット16を小型化することができ、ひいてはインクジェットヘッド10を小型化することができる。
【0052】
なお、個別電極端子70aの平面視形状は、環状のマイグレーション防止部82を確保できる限り、特に限定されるものではなく、円形、正方形または六角形等であってもよい。また、マイグレーション防止部82の材料は、導電性バンプ74よりもマイグレーションが生じ難い材料である限り、特に限定されるものではなく、たとえば、導電性バンプ74がAgを含む金属材料で形成される場合には、マイグレーション防止部82はAuまたはAg−Cu等を含む金属材料で形成されてもよい。また、導電性バンプ74の材料は、「Agを含む金属材料」に限定されるものではなく、「Agと樹脂とを含む材料」等であってもよい。
【0053】
一方、共通電極端子72から離間して配設された個別電極端子70bの平面視形状は、長手方向一方端部が円弧状に丸められた略長方形に設計されており、個別電極端子70bの長手方向他方端部が個別電極66に連なっている。個別電極端子70bの幅は、導電性バンプ74の底面の幅または直径よりも小さく設計されており、個別電極端子70bの表面に形成された導電性バンプ74の一部は、個別電極端子70bからはみ出して第1圧電シート60の上面に接触している。
【0054】
したがって、個別電極端子70bが、個別電極66を高密度で配設する際の妨げになることはなく、高密度配設による小型化を図ることができる。また、個別電極端子70bは、共通電極端子72から必要かつ十分に離間して配設されているため、個別電極端子70bの表面に形成された導電性バンプ74にマイグレーションが発生したとしても、導電性バンプ74のAg+イオンが共通電極端子72に到達することはなく、電気回路の短絡は生じない。
【0055】
なお、本実施形態では、共通電極端子72の近傍にだけ、マイグレーション防止部82を有する個別電極端子70aを配設しているが、他の領域にも個別電極端子70aを配設することによって、電位差が生じる2つの個別電極66間における導電性バンプ74のマイグレーションを防止するようにしてもよい。
【0056】
[FPCの構成]
FPC12は、図3に示すように、可撓性の合成樹脂材料(ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等)からなるベース材86と、導電性の金属材料(銅箔等)からなり、かつ、ベース材86の下面に形成された複数の配線(図示省略)と、複数の配線のそれぞれの端部に設けられた複数の端子88と、複数の配線を覆うようにしてベース材86の下面に形成された絶縁層90とを有しており、ベース材86の上面における所定箇所には、配線のそれぞれに電気的に導通する駆動装置92(図1)が実装されている。
【0057】
アクチュエータユニット16にFPC12を接続する際には、まず、ベース材86の下面に、配線(図示省略)を覆うようにして未硬化の絶縁性の合成樹脂(ソルダレジスト等)を塗布する。続いて、FPC12における複数の端子88のそれぞれを、アクチュエータユニット16の個別電極端子70a,70bに形成された導電性バンプ74と共通電極端子72に形成された導電性バンプ76とに押し当てる。すると、導電性バンプ74,76が未硬化の合成樹脂を貫通して端子88に当接され、導電性バンプ74,76と未硬化の合成樹脂とが広い面積で接触される。そこで、次工程では、未硬化の合成樹脂を加熱して硬化させることによってこれを絶縁層90に変え、導電性バンプ74,76と絶縁層90との接合を確実にするとともに、導電性バンプ74,76と端子88とを電気的かつ機械的に接続する。これにより、個別電極端子70a,70bのそれぞれが駆動装置92の対応する出力端子(図示省略)に電気的に接続されるとともに、共通電極端子72のそれぞれが駆動装置92の接地端子(図示省略)に電気的に接続される。
【0058】
[インクジェットヘッドの動作]
インクジェットヘッド10を使用する際には、インクジェットヘッド10がインクジェットプリンタのキャリッジ(図示省略)に搭載されるとともに、インクジェットヘッド10のインク導入流路34,52(図1、図2)とプリンタ本体に組み込まれたインクタンク(図示省略)とがインクチューブを介して接続される。また、FPC12の入力側端部がプリンタ本体に組み込まれた制御基板(図示省略)に接続される。
【0059】
インクジェットプリンタの電源を「オン」にしてインクジェットヘッド10を待機させた状態(以下、「待機状態」という。)では、制御基板(図示省略)からFPC12の駆動装置92(図1)に対して待機信号が与えられ、図5に示すように、駆動装置92から共通電極68には、当該待機信号に応じた一定の「基準電圧(本実施形態ではグランド電位0V)」が印加され、駆動装置92から個別電極66には、「基準電圧」よりも絶対値の大きい一定の「待機電圧(本実施形態では28V)」が印加される。すると、第1圧電シート60の活性部60a(図3)が厚さ方向(すなわち、分極方向)に対して直交する方向に収縮され、圧電シート60,62,64の全体が下側へ凸となるように変形される。このとき、最下層である第3圧電シート64の下面は圧力室46の内部上面46aを構成しているので、当該下面は、圧力室46の内側へ出っ張るように変形され、これにより圧力室46の容積が自然状態よりも縮小される。
【0060】
ノズル50からインク(液体)を吐出する際には、制御基板(図示省略)からFPC12の駆動装置92に対して吐出要求信号が与えられ、図5に示すように、駆動装置92から個別電極66には、「待機電圧」よりも絶対値の小さい一定の「駆動電圧(本実施形態では0V)」が瞬間的に印加される。このとき、共通電極68は一定の「基準電圧」に保持されている。したがって、「駆動電圧」が印加された瞬間において、個別電極66と共通電極68との間の電位差が解消され、活性部60aが復元されることによって圧力室46の容積が自然状態まで拡大され、圧力室46の内部に共通インク室36内のインクが吸引される。そして、電位差が解消された瞬間を過ぎると、個別電極66には、再び「待機電圧」が印加され、活性部60aが再び収縮されて、圧力室46の容積が自然状態よりも縮小される。したがって、圧力室46内のインクには、吐出要求信号に応じたタイミングで吐出圧が付与され、当該吐出圧によってノズル50からインクが吐出される。
【0061】
本実施形態では、個別電極66と個別電極端子70a,70bとが電気的に接続されており、かつ、共通電極68と共通電極端子72とが電気的に接続されているので、印字をしていない待機状態においては、個別電極端子70a,70bと共通電極端子72との間にも、「待機電圧」に応じた電位差(本実施形態では28V)が発生する。しかし、本実施形態では、上述のように、導電性バンプ74が形成された個別電極端子70aがマイグレーション防止部82(図4)を有しているので、導電性バンプ74のマイグレーションが発生することはなく、当該マイグレーションによって電気回路が短絡することはない。
【0062】
つまり、マイグレーション防止部82と導電性バンプ74とは電気的に導通しているため、これらの間に電位差が生じることはなく、導電性バンプ74のAg+イオンがマイグレーション防止部82側へ移動することはない。したがって、当然ながら、当該Ag+イオンがマイグレーション防止部82を乗り越えて共通電極端子72に到達することもない。また、マイグレーション防止部82は、導電性バンプ74よりもマイグレーションが生じ難い材料(Ag−Pd、AuまたはAg−Cu等を含む金属材料)で形成されているので、マイグレーション防止部82のマイグレーションによって電気回路が短絡することもない。
【0063】
なお、図5に示した動作態様では、「待機電圧」を28Vとし、「駆動電圧」を0Vとしているが、「駆動電圧」は「待機電圧」よりも絶対値の小さい電圧であればよく、これらの電圧の値は当該条件を満たす限り適宜変更されてもよい。
【0064】
[インクジェットヘッドの他の動作]
なお、インクジェットヘッド10の動作態様は、制御基板(図示省略)から駆動装置92へ与えられる信号によって適宜変更可能であり、図5に示した動作態様に変えて、図6に示した動作態様等が採用されてもよい。
【0065】
図6に示した動作態様では、待機状態において、制御基板(図示省略)からFPC12の駆動装置92(図1)に対して待機信号が与えられ、駆動装置92から共通電極68には、当該待機信号に応じた一定の「基準電圧(本実施形態ではグランド電位0V)」が印加され、駆動装置92から個別電極66には、「基準電圧」とほぼ同じ大きさの「待機電圧(本実施形態では0V)」が印加される。したがって、個別電極66と共通電極68との間の電位差はほぼ「0(ゼロ)」になっており、圧力室46の容積は、縮小されておらず、自然状態のままである。ノズル50からインク(液体)を吐出する際には、制御基板(図示省略)からFPC12の駆動装置92に対して吐出要求信号が与えられ、駆動装置92から個別電極66には、図6に示すように、「待機電圧」よりも絶対値の大きい「駆動電圧(本実施形態では28V)」が瞬間的に印加される。すると、個別電極66と共通電極68との間には、一定の電位差(本実施形態では28V)が瞬間的に発生し、圧電シート60,62,64の全体が下側へ凸となるように変形される。このとき、最下層である第3圧電シート64の下面は圧力室46の内部上面46aを構成しているので、当該下面は、圧力室46の内側へ出っ張るように変形され、圧力室46の容積が縮小される。これにより、圧力室46内のインクには、吐出要求信号に応じた所定のタイミングで吐出圧が付与され、当該吐出圧によってノズル50からインクが吐出される。
【0066】
この動作態様(図6)では、個別電極66に「駆動電圧」が印加されたときに、個別電極66と共通電極68との間に一定の電位差(本実施形態では28V)が発生するため、インクの使用頻度が高くなるほど、当該電位差が長時間に亘って発生するようになり、マイグレーション防止部82がより有効に機能するようになる。なお、図6に示した動作態様では、「待機電圧」を0Vとし、「駆動電圧」を28Vとしているが、「駆動電圧」は「待機電圧」よりも絶対値の大きい電圧であればよく、これらの電圧の値は当該条件を満たす限り適宜変更されてもよい。
【0067】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッド100の要部を示す部分拡大平面図である。第2実施形態に係るインクジェットヘッド100は、第1実施形態に係るインクジェットヘッド10におけるマイグレーション防止部82を有する個別電極端子70aを、他の個別電極端子102aに変更したものである。
【0068】
個別電極端子102aは、Ag−Pd、AuまたはAg−Cu等を含む金属材料によって第1圧電シート60の上面に形成された島状の導電層である。個別電極端子102aの平面視形状は、略T字状に設計されており、略T字状を構成する縦棒部分104aが個別電極66に連なっており、略T字状を構成する横棒部分104bが縦棒部分104aと共通電極端子72との間において、共通電極端子72と略平行に配設されている。そして、縦棒部分104aの表面に、Agを含む金属材料からなり、かつ、横棒部分104bに対して電気的に導通する略半球状の導電性バンプ106が形成されている。縦棒部分104aの幅は、図7に示すように、導電性バンプ106の底面の幅または直径よりも小さく設計されており、導電性バンプ106の一部が第1圧電シート60の上面に接触している。
【0069】
第2実施形態では、導電性バンプ106の一部が第1圧電シート60の上面に接触しているため、導電性バンプ106のマイグレーションが発生するおそれがあるが、導電性バンプ106と共通電極端子72との間に配設された横棒部分104bを「マイグレーション防止部」として機能させることができるので、当該マイグレーションの進行を阻止することができる。
【0070】
つまり、導電性バンプ106と横棒部分(マイグレーション防止部)104bとは電気的に導通しているので、これらの間に電位差が生じることはなく、導電性バンプ106のAg+イオンが横棒部分(マイグレーション防止部)104bに引き寄せられることはない。したがって、当該横棒部分(マイグレーション防止部)104bを、Ag+イオンの進行を阻止する壁として機能させることができ、Ag+イオンの迂回径路を長く確保することができる。これにより、当該Ag+イオンが共通電極端子72に到達することによる電気回路の短絡を防止することができる。
【0071】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッド110およびこれに接合されるFPC12を示す部分拡大断面図であり、図9は、インクジェットヘッド110を示す部分拡大平面図である。第3実施形態に係るインクジェットヘッド110は、第1実施形態に係るインクジェットヘッド10におけるアクチュエータユニット16を他のアクチュエータユニット112に変更したものである。
【0072】
アクチュエータユニット112は、図8に示すように、絶縁性を有するトップシート114、第1圧電シート116、第2圧電シート118、第3圧電シート120、第4圧電シート122、第5圧電シート124および第6圧電シート126を上側からこの順に積層した状態で構成されており、トップシート114の上面には、個別表面電極128、個別電極端子130a,130b(図9)および共通電極端子132が形成されている。そして、第3圧電シート120および第5圧電シート124のそれぞれの上面には、圧力室46のそれぞれに個別に対応する複数の個別電極134が圧力室46と対向する位置に形成されており、これらの個別電極134と個別電極端子130a,130bとが、スルーホール136の内部に配設された導電性の接続材138を介して電気的に接続されている。また、第2圧電シート118、第4圧電シート122および第6圧電シート126のそれぞれの上面には、圧力室46のそれぞれに共通に対応する共通電極140が圧力室46のそれぞれに跨って形成されており、これらの共通電極140と共通電極端子132とがスルーホール142の内部に配設された導電性の接続材144を介して電気的に接続されている。
【0073】
このインクジェットヘッド110では、図9に示すように、第1実施形態の個別電極66とほぼ同じ構成の個別表面電極128と、第1実施形態の個別電極端子70a,70bとほぼ同じ構成の個別電極端子130a,130bと、第1実施形態の共通電極端子72とほぼ同じ構成の共通電極端子132とが、アクチュエータユニット112の表面に形成されており、インクの吐出動作に直接寄与する個別電極134は、図8に示すように、アクチュエータユニット112の内部に配設されている。したがって、個別表面電極128は、インクの吐出動作に直接寄与しない点において直接寄与する個別電極66と相違するが、アクチュエータユニット112を平面視したときの構成は、アクチュエータユニット16を平面視したときの構成とほぼ同じである。
【0074】
つまり、共通電極端子132の近傍に配設された個別電極端子130aの平面視形状は、略扇形に設計されており、略扇形の幅狭部分が個別表面電極128に連なっている。また、個別電極端子130aの平面視面積は、その表面に形成される導電性バンプ146の底面積よりも大きく設計されており、個別電極端子130aの表面中央部に導電性バンプ146が形成されている。したがって、個別電極端子130aにおいては、導電性バンプ146が形成された円形部分が端子部本体148となっており、端子部本体148の周囲の環状部分が、導電性バンプ146よりもマイグレーションが生じ難い材料(Ag−Pd等を含む金属材料)からなり、かつ、導電性バンプ146と電気的に導通するマイグレーション防止部150となっている。
【0075】
したがって、第3実施形態においても、導電性バンプ146のマイグレーションをマイグレーション防止部150によって防止することができ、電気回路の短絡を防止することができる。
【0076】
なお、第3実施形態においても、第1実施形態の説明で記載した各種の「構成の変更」および「動作態様の変更(図6)」が可能であり、また、個別電極端子130a(図9)に代えて、第2実施形態における個別電極端子102a(図7)を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】第1実施形態に係るインクジェットヘッドおよびこれに接合されるFPCを示す分解斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るインクジェットヘッドを示す平面図である。
【図3】第1実施形態に係るインクジェットヘッドおよびこれに接合されるFPCを示す部分拡大断面図である。
【図4】第1実施形態に係るインクジェットヘッドを示す部分拡大平面図である。
【図5】第1実施形態に係るインクジェットヘッドの動作を示すグラフである。
【図6】第1実施形態に係るインクジェットヘッドの他の動作を示すグラフである。
【図7】第2実施形態に係るインクジェットヘッドを示す部分拡大平面図である。
【図8】第3実施形態に係るインクジェットヘッドおよびこれに接合されるFPCを示す部分拡大断面図である。
【図9】第3実施形態に係るインクジェットヘッドを示す部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0078】
10… インクジェットヘッド
12… FPC
14… 流路ユニット
16… アクチュエータユニット
46… 圧力室
60a… 活性部
60,62,64… 圧電シート
66… 個別電極
68… 共通電極
70a,70b… 個別電極端子
72… 共通電極端子
74,76… 導電性バンプ
80… 端子部本体
82… マイグレーション防止部
92… 駆動装置
100… インクジェットヘッド
102a… 個別電極端子
104a… 縦棒部分
104b… 横棒部分(マイグレーション防止部)
106… 導電性バンプ
110… インクジェットヘッド
112… アクチュエータユニット
114… トップシート
128… 個別表面電極
130a,130b… 個別電極端子
132… 共通電極端子
134… 個別電極
140… 共通電極
146… 導電性バンプ
148… 端子部本体
150… マイグレーション防止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルおよび前記ノズルのそれぞれに個別に連通された複数の圧力室を有する流路ユニットと、
前記圧力室のそれぞれに対応して設けられ、かつ、駆動電圧が個別に印加される複数の個別電極、前記圧力室のそれぞれに共通に設けられ、かつ、一定電位に保持される共通電極、前記個別電極と前記共通電極とで挟まれた圧電シート、前記個別電極のそれぞれに対して電気的に導通する複数の個別電極端子、および前記共通電極に対して電気的に導通する共通電極端子を有し、前記駆動電圧に基づいて前記圧力室内の液体に吐出圧を与えるアクチュエータユニットとを備える、液体吐出ヘッドであって、
前記個別電極端子および前記共通電極端子が前記アクチュエータユニットの表面に配設されており、前記個別電極端子の表面には、導電性バンプが形成されており、
前記共通電極端子とその近傍に配設された前記個別電極端子に形成された前記導電性バンプとの間には、前記導電性バンプよりもマイグレーションが生じ難い材料からなり、かつ、前記導電性バンプと電気的に導通するマイグレーション防止部が配設されている、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記個別電極端子は、表面に前記導電性バンプが形成される端子部本体を有しており、
前記マイグレーション防止部は、前記個別電極端子の一部として前記端子部本体の周囲に配設されている、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
待機状態においては、前記個別電極と前記共通電極との間に電位差が生じており、
前記ノズルから液体を吐出する際には、当該電位差が瞬間的に解消される、請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
待機状態においては、前記共通電極に基準電圧が印加されるとともに、前記個別電極に前記基準電圧よりも絶対値の大きい待機電圧が印加されることによって、前記圧力室の容積が自然状態よりも縮小され、
前記ノズルから液体を吐出する際には、前記個別電極に前記待機電圧よりも絶対値の小さい駆動電圧が印加されることによって、前記圧力室の容積が瞬間的に拡大される、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
待機状態においては、前記共通電極に基準電圧が印加されるとともに、前記個別電極に前記基準電圧とほぼ同じ大きさの待機電圧が印加されることによって、前記圧力室の容積が自然状態に保たれ、
前記ノズルから液体を吐出する際には、前記個別電極に前記待機電圧よりも絶対値の大きい駆動電圧が印加されることによって、前記圧力室の容積が瞬間的に縮小される、請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記導電性バンプはAgを含む金属材料で形成されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−125765(P2010−125765A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304622(P2008−304622)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】