説明

液体吐出ヘッド

【課題】小液滴の吐出や高粘度液体の吐出が可能な、吐出能力の高い液体吐出ヘッド21及び、それを備えた液体吐出装置Aを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッド21(ヘッド本体)は、圧力室11、圧力室11に連通するノズル12、圧力室11の少なくとも一部を区画する弾性区画部18、弾性区画部18を所定の変形方向に変形させることによって、圧力室11内の液体に圧力を印加するアクチュエータ19、及び、アクチュエータ19の駆動によって圧力室11内の液体に圧力を印加するときに、弾性区画部18が圧力室11の外方に向かって逃げ変形することを規制する規制部18a、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する液体吐出ヘッド及び、それを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙に対してインク滴を吐出するインクジェット技術が、近年、各種のデバイス製造過程におけるパターンの形成や均一薄膜の形成等に応用されている。そうしたパターン形成等に用いられる液体吐出ヘッドには、さらなる小液滴の吐出や高粘度液体の吐出が要求される。それらの要求を満たす吐出能力の高いヘッドを実現するには、圧力室内の液体に、より高い圧力を加える必要がある。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている液体吐出ヘッドは、その圧力室の一部を弾性変形可能な弾性体によって区画し、アクチュエータの駆動によって、その弾性体を変形させて圧力室の体積を変化させる。この構成によって、アクチュエータの駆動により発生したエネルギーが、圧力室内の液体に印加する圧力へと効率的に変換されて、液体に高い圧力が印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2721127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記文献に記載された構造の液体吐出ヘッドでは、吐出能力を向上させるべく液体に印加する圧力をさらに高めようしても、圧力室内の圧力が高くなるほど、その圧力室を区画する弾性体が、圧力室の外方に向かって逃げ変形してしまう。その結果、液体に印加される圧力は、その逃げ変形の分だけ低下してしまう。つまり、従来構造の液体吐出ヘッドは吐出能力をさらに向上させることが難しい、という問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、吐出能力の高い液体吐出ヘッド及び、それを備えた液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、液体吐出ヘッドは、液体を収容する圧力室、前記圧力室に連通しかつ、前記圧力室内の液体を吐出するノズル、前記圧力室の少なくとも一部を区画する弾性区画部、前記弾性区画部を所定の変形方向に変形させることによって、前記圧力室内の前記液体に圧力を印加するアクチュエータ、及び、前記アクチュエータの駆動によって前記圧力室内の前記液体に圧力を印加するときに、前記弾性区画部が前記圧力室の外方に向かって逃げ変形することを規制する規制部、を含むヘッド本体を備える。
【0008】
この構成によると、圧力室の少なくとも一部は、アクチュエータの駆動によって変形する弾性区画部により区画される。弾性区画部の変形に伴い圧力室内の液体に圧力が印加されることで、液体がノズルから吐出される。
【0009】
前記液体吐出ヘッドは規制部を備えているため、アクチュエータの駆動によって弾性区画部を変形させたときに、その弾性区画部が圧力室の外方に向かって逃げ変形することが規制される。これによって、圧力室内の体積が確実に減少して、液体に高い圧力が確実に印加されるようになる。その結果、液体吐出ヘッドの吐出能力が向上する。
【0010】
前記ヘッド本体は、前記ノズルが形成されたノズル板、前記ノズル板に対向して配置されて前記弾性区画部に当接すると共に、前記アクチュエータの駆動に伴い前記弾性区画部に対し前記変形方向に相対変位することで、当該弾性区画部を伸縮変形させる加圧部、及び、前記加圧部が内挿される貫通孔を有し、それによって、当該加圧部を前記変形方向に変位可能に保持する保持部、を含んだ積層構造に構成されている、としてもよい。
【0011】
こうすることでアクチュエータを駆動したときには、保持部に保持された加圧部が弾性区画部に対し変形方向に相対変位して、弾性区画部をその変形方向に伸縮変形させる。そうして、圧力室内の体積が変化して、液体に高い圧力が印加されるようになる。
【0012】
このヘッド本体はまた、積層構造であるためその組立が比較的容易であり、低コストでの製造が実現する。
【0013】
前記ヘッド本体は、前記ノズル板と前記保持部との間に介在して前記圧力室の一部を区画する圧力室壁部をさらに含み、前記弾性区画部は、前記圧力室壁部と前記保持部との間に介設されており、前記規制部は、前記弾性区画部の外周面を取り囲むと共に、前記圧力室壁部と前記保持部とを互いに接着する接着層によって構成されている、としてもよい。
【0014】
こうすることで、圧力室壁部と保持部とを互いに接着する接着層が、弾性区画部の、圧力室の外方への変形を規制する規制部として機能する。こうした部材の兼用化は、部品点数の削減及びヘッド本体の小型化の点で有利である。
【0015】
前記圧力室壁部における、前記保持部との接合面には窪みが形成されており、前記弾性区画部は、前記窪み内に配設されている、としてもよい。
【0016】
こうすることで、ヘッド本体の製造の際に、弾性区画部のアライメント調整が容易になる。
【0017】
前記ヘッド本体は、前記ノズル板に対し接合されて前記圧力室の一部を区画する圧力室壁部をさらに含み、前記圧力室壁部には、前記ノズル板の接合面とは逆側の面に、当該面から凹陥した凹部が形成され、前記弾性区画部は前記凹部内に配設されており、前記規制部は、前記凹部の内周壁によって構成されている、としてもよい。
【0018】
この構成において、前記圧力室壁部と前記保持部とは一体形成され、それによって、前記圧力室壁部の凹部と前記保持部の貫通孔とは互いに連続している、としてもよい。
【0019】
こうすることで部材点数が実質的に削減し、ヘッド本体の小型化の点で有利になる。
【0020】
前記弾性区画部は、互いに積層された前記ノズル板と前記保持部との間に介設されており、前記規制部は、前記弾性区画部の外周面を取り囲むと共に、前記ノズル板と前記保持部とを互いに接着する接着層によって構成されている、としてもよい。
【0021】
このヘッド本体は、前記の圧力室壁部材を省略した構造であるため、部材点数が低減する。また、圧力室壁部材を省略した分、圧力室の体積は小さくなり、圧力室の体積変化率(=体積変化量/圧力室の体積)は相対的に大きくなる。その結果、液体吐出ヘッドの吐出能力がさらに高まる。
【0022】
前記ノズル板における、前記保持部との接合面には窪みが形成されており、前記弾性区画部は、前記窪み内に配設されている、としてもよい。
【0023】
また、前記ノズル板には、前記保持部側の面に、当該面から凹陥した凹部が形成され、前記弾性区画部は前記凹部内に配設され、前記規制部は、前記凹部の内周壁によって構成されている、としてもよい。
【0024】
さらに、前記ノズル板と前記保持部とは一体形成され、それによって、前記ノズル板の凹部と前記保持部の貫通孔とは互いに連続している、としてもよい。
【0025】
前記加圧部は、その内部に前記圧力室の一部を区画する貫通孔を有しており、前記ヘッド本体は、前記保持部を挟んで前記ノズル板とは逆側に配設されて前記圧力室の一部を区画する第2の圧力室壁部をさらに含み、前記弾性区画部は、前記第2の圧力室壁部と前記保持部との間に介設されており、前記規制部は、前記弾性区画部の外周面を取り囲むと共に、前記第2の圧力室壁部と前記保持部とを互いに接着する接着層によって構成されている、としてもよい。
【0026】
つまり、弾性区画部は、加圧部とノズル板との間に配置するに限らず、加圧部を挟んだノズル板とは逆側に配置してもよい。
【0027】
前記加圧部には、前記圧力室に連通しかつ当該圧力室に前記液体を供給する供給孔が形成されている、としてもよい。
【0028】
こうすることで、圧力室に液体に供給する液体供給経路の構成が簡略化される。
【0029】
前記保持部の貫通孔内には、当該貫通孔と前記加圧部との隙間を埋めると共に、弾性変形することによって前記加圧部が前記保持部に対し相対変位することを許容する充填剤が充填されている、としてもよい。
【0030】
こうすることで、例えばヘッド本体の組立時に、加圧部を、保持部に対し固定することができるため、組立の容易化が図られる。
【0031】
また、加圧部の変位によって弾性区画部が変形したときに、加圧部と保持部の貫通孔との隙間に前記弾性区画部が入り込むことが、前記充填剤によって防止される。その結果、圧力室内の液体に、高い圧力が確実に印可される。
【0032】
前記ヘッド本体は、前記保持部を挟んで前記ノズル板とは逆側の位置に、当該保持部に対して所定の間隔を開けて配置されたヘッドプレートをさらに含み、前記加圧部は、前記ヘッドプレートに固定されており、前記アクチュエータは、前記保持部と前記ヘッドプレートとの間で、前記加圧部を囲むように配設されて、前記保持部及び前記ヘッドプレートの双方にそれぞれ接合されている、としてもよい。
【0033】
また、これとは異なり、前記アクチュエータは、前記ノズル板に接着されると共に、前記加圧部を囲むように配設されることで当該加圧部を保持する保持部を兼用しており、前記ヘッド本体は、前記アクチュエータが接合されるヘッドプレートをさらに含み、前記加圧部は、前記ヘッドプレートに固定され、前記弾性区画部は、前記アクチュエータと前記ノズル板との間に介設されており、前記規制部は、前記弾性区画部の外周面を取り囲むと共に、前記アクチュエータと前記ノズル板とを互いに接着する接着層によって構成されている、としてもよい。これによって、部材点数の削減が図られ、ヘッド本体の構造がさらに簡略化される。
【0034】
前記加圧部は、前記ヘッドプレートをその厚み方向に貫通しており、前記加圧部には、前記圧力室に連通しかつ当該圧力室に前記液体を供給する供給孔が形成されている、としてもよい。
【0035】
こうすることで、液体供給経路の構成が簡略化され、圧力室への液体の供給がスムースになる。
【0036】
前記アクチュエータは圧電アクチュエータであり、前記加圧部は電気絶縁体により形成されている、としてもよい。
【0037】
こうすることで、アクチュエータと加圧部との間隔を小さくすることが可能になり、ヘッド本体の小型化が図られる。
【0038】
前記アクチュエータは、圧電アクチュエータであって前記加圧部と一体形成されている、としてもよい。これによって、部材点数が実質的に低減する。
【0039】
一体化された前記圧電アクチュエータと前記加圧部との間には、両者を隔てる溝が形成されている、としてもよい。
【0040】
こうすることで、圧電アクチュエータと一体化された加圧部が、当該圧電アクチュエータの駆動によって変位し易くなり、液体吐出ヘッドの駆動効率が向上する。
【0041】
前記ヘッド本体は、前記アクチュエータの駆動によって、前記ノズル板側と前記ヘッドプレート側との内、前記ノズル板側が変位するように構成されている、としてもよい。
【0042】
つまり、アクチュエータの駆動により相対的に質量が小さい側を変位させることで、液体吐出ヘッドの駆動効率が向上する。
【0043】
液体吐出ヘッドは、少なくとも2のヘッド本体と、前記ヘッド本体それぞれのノズルが所定の並びで配置されるように、前記各ヘッド本体のヘッドプレートが固定される基部と、をさらに備えている、としてもよい。
【0044】
この構成により、アクチュエータの駆動によって、ノズル板側とヘッドプレート側との内、ノズル板側が変位する構成が実現する。
【0045】
また、前記の基部を省略すべく、液体吐出ヘッドは、少なくとも2のヘッド本体を備え、前記各ヘッド本体のヘッドプレートは、当該ヘッド本体それぞれのノズルが所定の並びで配置されるように、共通化されている、としてもよい。
【0046】
本発明の他の側面によると、液体吐出装置は、上述した液体吐出ヘッドを備える。このため、吐出能力の高い液体吐出装置が実現する。
【発明の効果】
【0047】
以上説明したように、本発明によると、圧力室の少なくとも一部を区画する弾性区画部が圧力室の外方に向かって逃げ変形することを防止して、圧力室内の液体に対し高い圧力を確実に印加することができるため、吐出能力が高くなって小液滴の吐出や高粘度液体の吐出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態に係る液体吐出装置を示す概略斜視図である。
【図2】実施形態1に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図3】前記ヘッド本体の弾性区画部材の近傍を拡大して示す横断面図である。
【図4】実施形態1の変形例に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図5】実施形態1のさらに別の変形例に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図6】実施形態2に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図7】実施形態3に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図8】実施形態4に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図9】実施形態5に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図10】実施形態5の変形例に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図11】実施形態5のさらに別の変形例に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図12】実施形態6に係る液ヘッド本体を示す横断面図である。
【図13】実施形態7に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図14】実施形態7の変形例に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図15】実施形態7のさらに別の変形例に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図16】実施形態8に係るヘッド本体を示す横断面図である。
【図17】実施形態9に係る液体吐出ヘッドを示す横断面図である。
【図18】実施形態9の変形例に係る液体吐出ヘッドを示す横断面図である。
【図19】実施形態10に係る液体吐出ヘッドを示す横断面図である。
【図20】実施形態10の変形例に係る液体吐出ヘッドを示す横断面図である。
【図21】実施形態11に係る液体吐出ヘッドを示す横断面図である。
【図22】実施形態11に係る液体吐出ヘッドを示す平面図である。
【図23】実施形態11の変形例に係る液体吐出ヘッドを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0050】
(実施形態1)
図1は、液体吐出装置Aの概略構成を示している。この液体吐出装置Aは、一又は複数のヘッド本体(図2等参照)を備えた液体吐出ヘッド21と、被記録物4を支持するステージ31と、を備えている。
【0051】
液体吐出ヘッド21は、装置基台6に支持されたヘッド移動装置2によって主走査方向(図1に示すX方向)に往復移動し、ステージ31は、同じく装置基台6に支持されたステージ移動装置3によって副走査方向(図1に示すY方向)に往復移動する。
【0052】
ヘッド移動装置2は、液体吐出ヘッド21を支持するキャリッジ22を含む。キャリッジ22は、主走査方向に延びるキャリッジ軸23にガイドされ、図示を省略する駆動源(例えばモータ)によって、主走査方向に往復移動する。
【0053】
ステージ移動装置3は、主走査方向に所定間隔を開けて配置されかつ、それぞれ副走査方向に延びる2つのステージ軸32,32を含む。ステージ31はこれらのステージ軸32,32にガイドされ、図示を省略する駆動源(例えばモータ)によって、副走査方向に往復移動する。
【0054】
液体吐出装置Aはこの構成によって、液体吐出ヘッド21とステージ31上の被記録物4とを相対移動させながら、液体吐出ヘッド21(ヘッド本体)から被記録物4に向かって液体材料を吐出し、被記録物4上に所望のパターンや均一薄膜等を形成する。
【0055】
図2に示すように、ヘッド本体91は、液体材料が収容される圧力室11と、その圧力室11に連通するノズル12とを備えている。このヘッド本体91は、ノズル12が形成されたノズル板13と、圧力室11の側面を区画する圧力室壁部材14と、後述する加圧部材15を保持する保持部材16と、アクチュエータ19と、を上下方向に積層した積層構造を有している。
【0056】
ノズル板13は、例えば約0.3mm厚のステンレス鋼からなる板状の部材であり、その上面によって圧力室11の底面が区画される。
【0057】
ノズル12は、ノズル板13に対して、その板厚方向に貫通して形成されており、その径は、基端から先端に向かって小さくなるテーパ形状を有している。基端開口の径は、例えば約φ0.2mm、先端開口の径は、例えば約φ0.03mmとすればよい。
【0058】
尚、このノズル板13の下面は、図示は省略するが、液体材料の吐出安定性の観点から、撥水膜で被覆されていることが好ましい。この撥水膜は、公知の方法により形成することが可能である。
【0059】
圧力室壁部材14は、例えば約0.4mm厚のステンレス鋼からなる板状部材であり、前記ノズル板13の上面に対して接着層を介して接着されている。圧力室壁部材14には、その厚み方向に貫通する圧力室用孔14aが形成されている。圧力室用孔14aは、その内周面によって圧力室11の側面を区画する孔であり、例えば横断面円形状に形成すればよい。また、圧力室用孔14aの直径は、例えば約φ0.25mmとしてもよい。
【0060】
圧力室壁部材14にはまた、その板厚方向の中間部を水平方向に延びて圧力室用孔14aに連通する供給口14bが形成されている。供給口14bは、図示は省略する液体材料の供給源から圧力室11内に、液体材料を供給するための孔である。供給口14bは、例えば一辺の長さが約0.07mmの横断面矩形状の孔としてもよい。
【0061】
保持部材16は、例えばその厚みが約0.3mmの板状部材であり、前記圧力室壁部材14の上面に対して接着層18aを介して接着されている。保持部材16にはまた、板厚方向に貫通した貫通孔16aが形成されている。貫通孔16aは、後述する加圧部材15が内挿される孔である。保持部材16を圧力室壁部材14の上面に接着した状態において、圧力室壁部材14の圧力室用孔14aと、保持部材16の貫通孔16aとは、互いに同軸にされる。貫通孔16aの直径は、加圧部材15の径に応じて適宜設定すればよく、例えばφ0.8mm程度とすればよい。
【0062】
この保持部材16の上面は、図2においては図示しないヘッド本体91の他の構成部材に固定されており、それによって保持部材16は、アクチュエータ19が駆動したときにも、変位しないようにされている。
【0063】
保持部材16と圧力室壁部材14との間には、圧力室11の側面の上端部を区画する弾性区画部材18が介設されている。弾性区画部材18は、後述するように、アクチュエータ19の駆動に伴い加圧部材15が積層方向に変位することで弾性的に伸縮変形して、圧力室11の体積を変化させるための部材であり、例えば円環状に形成される。弾性区画部材18は、例えばその外径は約φ0.9mm、その内径は約φ0.3mmとすればよい。またその厚みは0.02mm〜0.1mm程度、好適には0.05mm程度とすればよい。弾性区画部材18はまた、液体材料に対する耐食性を考慮して、例えば耐溶剤性のゴム、具体的にはフッ素ゴムやシリコンゴム等によって形成すればよい。
【0064】
保持部材16と圧力室壁部材14とを互いに接合する接着層18aは、弾性区画部材18の外周面を取り囲んでいる。これによって、接着層18aは、弾性区画部材18が弾性変形するときに、その弾性区画部材18が圧力室11の外方に向かって逃げ変形することを規制するようになっている。
【0065】
加圧部材15は、保持部材16の貫通孔16aに内挿されて保持されることで、弾性区画部材18の上面に対して当接しており、この加圧部材15の下面によって、圧力室11の上面が区画される。加圧部材15は、保持部材16によって積層方向に変位可能に保持されており、アクチュエータ19の駆動に伴い積層方向(上下方向)に変位することで、弾性区画部材18を積層方向に伸縮変形させる。加圧部材15は、例えばステンレス鋼やセラミック等の、比較的高剛性の材料によって構成された円盤状の部材であり、その外径は例えば約φ0.7mm、その高さは保持部材16の高さと同じ約0.3mm程度とすればよい。
【0066】
加圧部材15と保持部材16の貫通孔との隙間には充填剤16bが充填されている。この充填剤16bは、加圧部材15が積層方向に変位可能となるように弾性変形するようになっている。尚、充填剤16bは、省略することも可能である。
【0067】
アクチュエータ19は、例えば1mm厚の積層型圧電体からなり、積層方向の一端(下端)が加圧部材15の上面に対して接合されていると共に、その他端(上端)が、図示は省略する他の構成部材に固定されている。アクチュエータ19は、図2では図示を省略する電極に電圧が印可されることによって、図2における上下方向に伸縮変形する(図2の矢印参照)。アクチュエータ19の駆動に伴い、加圧部材15が図2における上下方向に変位し、それに伴い弾性区画部材18が上下方向に伸縮変形することで、圧力室11の体積が増減するようになっている。
【0068】
次に、上記構成のヘッド本体91の動作について説明する。供給口14b、圧力室11、及びノズル12内のそれぞれに液体材料が充填された状態でアクチュエータ19に所定の電圧(例えば20V)を印可する。このことによって、アクチュエータ19を伸長変形させる(同図の矢印参照)。
【0069】
アクチュエータ19の伸長変形に伴い加圧部材15は下方に変位するため、弾性区画部材18が収縮変形し、圧力室11内の液体材料に対して圧力が印加される。そうして液体材料がノズル12から押し出されて被記録物4に向かって液滴として吐出される。液滴は被記録物4の上面にドット状に付着する。
【0070】
アクチュエータ19への電圧印加を解除することによって、伸長していたアクチュエータ19が元に戻り、加圧部材15が上方に変位して圧力室11の体積が元に戻る。このときに、液体材料の供給源から供給口14bを介して、液体材料が圧力室11内に補充される。
【0071】
このヘッド本体91では、図3に示すように、アクチュエータ19の駆動によって弾性区画部材18を積層方向に圧縮したときに、圧力室11の圧力が高まることでその弾性区画部材18が圧力室11の外方に向かって逃げ変形しようとするが、その弾性区画部材18の逃げ変形は、接着層18aによって規制されることで(図3の矢印参照)、弾性区画部材18は圧力室11の内方に向かって変形する。これによって圧力室11内の液体材料に、高い圧力が確実に印加される。
【0072】
その結果、ヘッド本体91の吐出能力が高くなり、小液滴の吐出や高粘度液体の吐出が実現する。前記構成のヘッド本体91は、例えば粘度が50cP(0.05Pa・s)の高粘度液体を、約20pl(ピコリットル)の小さい液滴量で吐出することが可能である。
【0073】
また、保持部材16の貫通孔16a内に充填剤16bを充填することによって、弾性区画部材18が圧縮したときに、その弾性区画部材18が、加圧部材15と貫通孔16aとの隙間に入り込むことがなく、圧力室11内の液体材料に対して、さらに高い圧力を印加することができるようになる。
【0074】
ここで、アクチュエータ19の駆動は、前記のようないわゆる押し引き駆動ではなくて、加圧部材15を上方に変位させて液体材料を圧力室11内に充填させた後に、その加圧部材15を元に戻すことで、液体材料をノズル12から吐出させる、いわゆる引き押し駆動としてもよい。
【0075】
(変形例)
ヘッド本体における前記アクチュエータ19の配設位置としては、種々の変形例が考えられる。例えば図4に示すヘッド本体92のように、アクチュエータ19の下端を保持部材16の上面に対して接合してもよい。この場合は、アクチュエータ19の上端及び加圧部材15をそれぞれ、例えば、前述の他の構成部材に固定してもよい。そうすることによって、アクチュエータ19を駆動させたときには、弾性区画部材18が、積層方向に、加圧部材15に対して相対変位し、それによって、弾性区画部材18が伸縮変形するようになる。
【0076】
また、図4に示すヘッド本体92において、アクチュエータ19の上端及び加圧部材15を、連結部材等によって互いに連結してもよい。そうすることによって、アクチュエータ19を駆動させたときには、連結部材を介して加圧部材15が変位し、それによって、弾性区画部材18が伸縮変形するようになる。
【0077】
さらに、例えば図5に示すヘッド本体93のように、アクチュエータ19の上端をノズル板13の下面に対して接合してもよい。この場合は、アクチュエータ19の下端及び加圧部材15をそれぞれ、他の構成部材に固定することになる。そうすることによって、アクチュエータ19を駆動させたときには、弾性区画部材18が、積層方向に、加圧部材15に対して相対変位し、それによって、弾性区画部材18が伸縮変形するようになる。
【0078】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係るヘッド本体94を示している。尚、実施形態2のヘッド本体94において、図2に示すヘッド本体91と同じ構成については、同じ符号を付すと共に、適宜その説明を省略する。
【0079】
このヘッド本体94では、圧力室壁部材14の上面に、圧力室用孔14aと同軸に、窪み14cが形成されており、弾性区画部材18は、その窪み14c内に配設されている。ここで、窪み14cは、例えばその内径が約1.0mm、深さが約0.03mmとしてもよい。
【0080】
このように弾性区画部材18を配置するための窪み14cを形成することによって、ヘッド本体94の組立の際に、その弾性区画部材18の位置決めを容易に行い得るという利点がある。
【0081】
(実施形態3)
図7は、実施形態3に係るヘッド本体95を示している。尚、実施形態3のヘッド本体95において、図6に示すヘッド本体94と同じ構成については、同じ符号を付すと共に、適宜その説明を省略する。
【0082】
このヘッド本体95では、図6に示すヘッド本体94における圧力室壁部材14と保持部材16とが、接着層18aを介して接合されるのではなく、互いに一体化されている(図6における一点鎖線参照、以下この一体化された部材を一体化部材40と呼ぶ)。
【0083】
この一体化部材40においては、圧力室壁部材14における窪み14cと保持部材16における貫通孔16aとが連続して、収容凹部40aが形成されており、この収容凹部40aの底面に弾性区画部材18が配設されると共に、収容凹部40aに内挿された加圧部材15がこの弾性区画部材18に当接している。尚、加圧部材15と収容凹部40aとの隙間は充填剤16bによって埋められている。
【0084】
この構造のヘッド本体95では、弾性区画部材18の外周面が、収容凹部40aの内周壁によって囲まれており、アクチュエータ19の駆動によって弾性区画部材18を積層方向に圧縮したときには、収容凹部40aの内周壁によって、弾性区画部材18が圧力室11の外方に向かって変形することが規制される。そうして、圧力室11内の液体材料に、高い圧力が確実に印加される。
【0085】
また、この構造のヘッド本体95は、部材点数が実質的に低減するから、ヘッド本体95の小型化の点で有利になる。
【0086】
(実施形態4)
図8は、実施形態4に係るヘッド本体96を示している。尚、実施形態4のヘッド本体96において、図4に示すヘッド本体92と同じ構成については、同じ符号を付すと共に、適宜その説明を省略する。
【0087】
このヘッド本体96は、図4に示すヘッド本体92と比較して、圧力室壁部材14が省略されている。すなわち、このヘッド本体96では、保持部材16が、ノズル板13の上面に対して接着層18aを介して接着されており、弾性区画部材18は、保持部材16とノズル板13との間に介設されている。尚、図例では、ノズル板13の上面に、弾性区画部材18を配置するための窪み13aが形成されているが、この窪み13aは省略することも可能である。
【0088】
そうして、この構造のヘッド本体96では、弾性区画部材18の内周面によって、圧力室11の側面が区画されると共に、その弾性区画部材18の外周面は、保持部材16とノズル板13とを接合する接着層18aによって取り囲まれている。従って、アクチュエータ19の駆動によって弾性区画部材18を積層方向に圧縮したときには、その接着層18aによって、弾性区画部材18の逃げ変形が規制されるようになる。
【0089】
前記加圧部材15は、図例では、保持部材16の上面よりも上方に突出して配設されている。この加圧部材15には、その中心軸に沿って貫通孔15aが形成されている。この貫通孔15aの下端開口は、圧力室11に連通しており、貫通孔15aは、圧力室11に液体材料を供給するための供給口として機能する。このように、加圧部材15に供給口を形成することによって、液体材料の供給系の構成が簡略化するという利点がある。尚、この貫通孔15a(供給口)の径は、例えば約φ0.07mm程度とすればよい。
【0090】
この構造のヘッド本体96では、圧力室壁部材14を省略することによって圧力室11の体積は小さくなる。その結果、圧力室11の体積変化率(=体積変化量/圧力室の体積)は相対的に大きくなり、ヘッド本体96の吐出能力はさらに高まる。
【0091】
また、部品点数の削減により、製造工程数も削減されるため、製造コストの低減化が図られる。
【0092】
(実施形態5)
図9は、実施形態5に係るヘッド本体97を示している。尚、実施形態5のヘッド本体97において、図8に示すヘッド本体96と同じ構成については、同じ符号を付すと共に、適宜その説明を省略する。
【0093】
このヘッド本体97は、保持部材16を挟んでノズル板13とは逆側にヘッドプレート41が配設されており、ヘッドプレート41と保持部材16との間には、後述するように、アクチュエータ19の厚みに相当する間隔が空けられている。
【0094】
ヘッドプレート41は、例えば約2.0mm厚のステンレス鋼からなる板状の部材であり、厚み方向に貫通する貫通孔41aが形成されている。この貫通孔41aは、後述するように、液体材料の供給口の一部となる孔であり、その径は、例えばφ0.06mm程度としてもよい。
【0095】
加圧部材15は、その上端がヘッドプレート41の下面に対し固定されており、ヘッドプレート41の貫通孔41aと加圧部材15の貫通孔15aとが互いに連通することによって、圧力室11に液体材料を供給する供給口が構成されている。
【0096】
アクチュエータ19は、厚み方向に貫通して形成された貫通孔19a内に加圧部材15が位置するよう、この加圧部材15の外周囲を取り囲んで配設されている。アクチュエータ19は、積層型圧電体からなり、その下端が保持部材16の上面に対して接合されていると共に、その上端がヘッドプレート41の下面に対して接合されている。アクチュエータ19は、例えばその厚みを約1.0mm、その貫通孔19aの径を約φ0.9mmとしてもよい。
【0097】
この構造のヘッド本体97では、加圧部材15を、例えばアルミナやセラミック等の電気絶縁材料によって構成することが好ましい。こうすることで、加圧部材15と積層型圧電体からなるアクチュエータ19との隙間を小さくすることが可能になる。つまりヘッド本体97を小型化する上で有利になる。
【0098】
尚、図示は省略するが、加圧部材15とアクチュエータ19との隙間を、充填剤によって埋めるようにしてもよい。この場合に用いる充填剤は電気絶縁性を有する充填剤としてもよい。
【0099】
また図示は省略するが、加圧部材15に形成する貫通孔の形状を適宜変更することによって、その貫通孔の内周面が圧力室11の側面の一部を区画するようにしてもよい。つまり、圧力室11の一部を、加圧部材15の内部に形成するようにしてもよい。
【0100】
(変形例1)
図10は変形例1を示しており、このヘッド本体98は、加圧部材15がヘッドプレート41を貫通して配設されている。
【0101】
すなわち、ヘッドプレート41には、加圧部材15が内挿可能な、比較的大径の貫通孔が形成されている。加圧部材15はこの貫通孔に内挿された状態で、その上端がヘッドプレート41よりも上方に突出して配設されている。このヘッド本体98では、加圧部材15において、その中心軸に沿って貫通形成された貫通孔15aにより、圧力室11に液体材料を供給するための供給口が構成されている。この貫通孔15aは、その径を約0.08mm程度に設定すればよい。
【0102】
この構成では、液体材料の供給口が単一の部材(つまり、加圧部材15)によって構成されるため、液体材料の圧力室11への充填がスムースになると共に、ヘッド本体98の組立の容易化も図られる。
【0103】
(変形例2)
図11は変形例2を示しており、このヘッド本体99は、加圧部材15に形成した貫通孔からなる供給口の形状を工夫することによって流路抵抗を低減させ、それによって、圧力室11への液体材料の供給をより一層スムースに行い得るようにしている。
【0104】
具体的に供給口42は、その上端(上流側)から下端(下流側)に向かって順に、相対的に大径の大径部42aと、大径部42aと比較して径が縮小した首部42bと、圧力室11に向かって径が次第に拡大する拡径部42cと、が連続することによって構成されている。
【0105】
この構成の供給口42は、前記首部42bを備えることで、アクチュエータ19の駆動によって圧力室11の圧力が上昇したときに液体材料の逆流を防止して、圧力室11内の液体材料をノズル12から吐出させることができる一方で、大径部42aを備えることで流路抵抗が低減し、圧力室11への液体材料の供給が良好になる。また、その下端から上端に向かう方向において拡径部42c、首部42b、大径部42aの順に並べることで、供給口42において径が急縮小しない、換言すれば段差が生じないため、その段差部分に気泡等が残留することがない。それによって、液体材料の吐出不良を防止して、液体材料の良好な吐出が実現する。
【0106】
尚、大径部42aの径は例えばφ0.2mm程度、首部42bの径は例えばφ0.08mm程度、拡径部42cにおける下端開口の径は例えばφ0.25mm程度とすればよい。
【0107】
(実施形態6)
図12は、実施形態6に係るヘッド本体100を示している。尚、実施形態6のヘッド本体100において、図11に示すヘッド本体99と同じ構成については、同じ符号を付すと共に、適宜その説明を省略する。
【0108】
このヘッド本体100では、図11に示すヘッド本体99における保持部材16とノズル板13とが、接着層18aを介して接合されるのではなく、互いに一体化されている(図12における一点鎖線参照、以下この一体化された部材を一体化部材43と呼ぶ)。
【0109】
この一体化部材43においては、ノズル板13における窪み13aと保持部材16における貫通孔16aとが連続して、収容凹部43aが形成されており、実施形態3と同様に、この収容凹部43aの底面に弾性区画部材18が配設されると共に、収容凹部43aに内挿された加圧部材15がこの弾性区画部材18に当接している。尚、加圧部材15と収容凹部43aとの隙間は充填剤16bによって埋められている。
【0110】
この構造のヘッド本体100では、部材の点数がさらに減少し、製造コストがさらに削減される。
【0111】
(実施形態7)
図13は、実施形態7に係るヘッド本体101を示している。尚、実施形態7のヘッド本体101において、図10に示すヘッド本体98と同じ構成については、同じ符号を付すと共に、適宜その説明を省略する。
【0112】
このヘッド本体101は、図10に示すヘッド本体98と比較して、保持部材16が省略されており、その代わりにアクチュエータ19が加圧部材15を保持する保持部を兼用している。
【0113】
すなわち、このヘッド本体101では、積層型圧電体からなるアクチュエータ19の下端がノズル板13に対して接着層18aを介して接合されており、弾性区画部材18は、アクチュエータ19とノズル板13との間に介設されている。
【0114】
そうして、この構造のヘッド本体101では、弾性区画部材18の外周面は、アクチュエータ19とノズル板13とを接合する接着層18aによって取り囲まれており、アクチュエータ19の駆動によって弾性区画部材18を積層方向に圧縮したときには、その接着層18aによって、弾性区画部材18の逃げ変形が規制されるようになる。
【0115】
尚、本構成のヘッド本体101では、加圧部材15とアクチュエータ19の貫通孔19aとの隙間には、充填剤19bが充填されている。但し、この充填剤19bは、適宜省略することが可能である。
【0116】
この構造のヘッド本体101では、部材の点数がさらに減少するため、製造コストの点で有利である。
【0117】
(変形例)
アクチュエータ19が保持部を兼用する構成においては、例えば図14にその一例を示すように、加圧部材とアクチュエータとを一体形成することも可能である。
【0118】
つまり、このヘッド本体102は、ノズル板13とヘッドプレート41との間に、加圧部材(加圧部)とアクチュエータ(積層圧電アクチュエータ)とを一体形成した一体化部材44が介設されている。この一体化部材44は、電極が形成されていない加圧部44aの周りを、電極44dが形成されているアクチュエータ44bが取り囲む構造を有する、全体として板状の部材である。一体化部材44は、その上面が接着層を介してヘッドプレート41に接合されると共に、その下面が接着層18aを介してノズル板13に接合される。また、加圧部44aの中心には、板厚方向に貫通して圧力室11に連通する貫通孔44cが形成され、この貫通孔44cは、液体材料の供給口として機能する。
【0119】
この一体化部材44は、一例として、次のような手順で製造することができる。つまり、電極が非形成の中央部分を取り囲むような円環状の電極が形成された複数のグリーンシートを用意すると共に、それを積層することで所定厚みのグリーン積層体を作成する。そうして、そのグリーン積層体を焼成し、その後、レーザ加工等の適宜の加工手法を採用して、前記貫通孔44cを電極非形成部分の中心に貫通形成する。
【0120】
こうすることで、一体化部材44において、電極44dが形成されている部分が、上下方向に伸縮変形する積層型圧電アクチュエータ44bとして機能する一方、電極が形成されていない部分が、アクチュエータ44bの変形駆動に伴い上下方向に変位する加圧部44aとして機能するようになる。
【0121】
尚、例えば図15に示すヘッド本体103のように、前記グリーン積層体を焼成した後に、エッチングやレーザ加工等の、適宜の加工手法を採用して、弾性区画部材18に当接する側の面から厚み方向に凹陥する溝44eを形成してもよい。この溝44eは、加圧部44aとアクチュエータ44bとを隔てる溝であり、例えば外径がφ0.9mm程度、内径がφ0.7mm程度、深さが0.9mm程度の円環状としてもよい。
【0122】
こうした溝44eを形成することによって、アクチュエータ44bの変形駆動時に加圧部44aが上下方向に変位し易くなり、液体吐出ヘッドの駆動効率が向上する。尚、図示は省略するが、この溝44e内には、例えば電気絶縁性を有する充填剤を充填するようにしてもよい。こうすることで、アクチュエータ44bのショートを防止することができる。
【0123】
(実施形態8)
図16は、実施形態8に係るヘッド本体104を示している。尚、実施形態8のヘッド本体104において、図8に示すヘッド本体96と同じ構成については、同じ符号を付すと共に、適宜その説明を省略する。
【0124】
このヘッド本体104において、加圧部材15には、その中心軸に沿って比較的大径の貫通孔15aが形成されており、この貫通孔15aの内周面によって、圧力室の側面の一部が区画される。加圧部材15の貫通孔15aの径は、例えばφ0.3mm程度に設定すればよい。
【0125】
この加圧部材15は、保持部材16の貫通孔16aに内挿されて保持されることにより、その下端が弾性区画部材18の上面に対して当接すると共に、その上端が、後述する第2の弾性区画部材52の下面に対して当接するようになっている。
【0126】
このヘッド本体104では、保持部材16を挟んでノズル板13とは逆側に、第2の圧力室壁部材51が配設されている。この第2の圧力室壁部材51は、保持部材16に対して接着層52aを介して接合されている。
【0127】
第2の圧力室壁部材51は、例えばステンレス鋼からなる板状の部材であり、圧力室11の上面を区画する。この第2の圧力室壁部材51には、厚み方向に貫通する貫通孔51aが形成されており、この貫通孔51aは、圧力室11に連通して、その圧力室11内に液体材料を供給するための供給口として機能する。貫通孔51aの径は、例えばφ0.06mm程度とすればよい。
【0128】
保持部材16と第2の圧力室壁部材51との間には、第2の弾性区画部材52が介設されている。第2の弾性区画部材52は、その内周面によって圧力室11の側面の上端部を区画する。また、その外周面は、保持部材16と第2の圧力室壁部材51とを互いに接合する接着層52aに取り囲まれており、これによって、アクチュエータ19の駆動によって第2の弾性区画部材52を積層方向に圧縮したときには、その接着層52aによって、第2の弾性区画部材52の逃げ変形が規制されるようになる。
【0129】
尚、加圧部材15の下端に当接する弾性区画部材18は、圧力室の側面の下端部を区画することになる。
【0130】
このように圧力室11の一部を区画する弾性区画部材は、加圧部材15の下側に配置することに限定されるのではなく、加圧部材15の上側に設けてもよい。尚、この構成のヘッド本体104において、加圧部材15の下側に配置した弾性区画部材18は省略することも可能である。
【0131】
(実施形態9)
図17は、実施形態9に係る液体吐出ヘッド21を示している。実施形態9の液体吐出ヘッド21は、複数のヘッド本体を基材71に対して固定して構成されている。
【0132】
基材71は、ステンレス鋼又はセラミック製の板状部材であって、それぞれ板厚方向に貫通する複数の(図例では4つの)収容部72が、長手方向に所定の間隔を空けて形成されている。
【0133】
各収容部72には、ヘッド本体105が収容されると共に、そのヘッドプレート41が基材に対して固定される。ヘッド本体105の構成は特に限定されるものではなく、例えば図9〜15それぞれに示す構成のヘッド本体を適宜採用することができる。
【0134】
また、ヘッドプレート41と基材71との固定は、接着剤等を利用して接合してもよいし、ビス等の締結手段を利用した機械的な固定としてもよい。また、例えばばね力を利用するクランプ等の手段を用いた機械的な固定を採用してもよい。そうして、各ヘッド本体105のノズル板13の下面を、各収容部72の下端開口を通じて下方に露出させる。
【0135】
複数のヘッド本体105を基材71に対し固定する本構成では、ヘッド本体105の配置を変えることで、液体吐出ヘッド21のノズルピッチを自由に変更することができるという利点がある。
【0136】
また、ヘッドプレート41を基材71に対して固定することによって、各ヘッド本体105のアクチュエータが駆動したときに、ヘッドプレート41とノズル板13との内、ノズル板13側が変位するようになり(例えば図9に示す一点鎖線の矢印参照)、それによって弾性区画部材18が圧縮変形するようになる。このように、アクチュエータの駆動により相対的に質量が小さい側、ここではノズル板13側を変位させることで、液体吐出ヘッド21の駆動効率が向上する。
【0137】
尚、前記基材71に固定するヘッド本体105の構成は、互いに同じものに限らず、例えば互いに異なる構成のヘッド本体を、同じ基材71に対して固定するようにしてもよい。
【0138】
(変形例)
図18は変形例に係る液体吐出ヘッド21を示しており、この例では、ヘッド本体105のヘッドプレート73を、複数のヘッド本体105間で共通化している。こうすることで前記基材71を省略することができる。尚、ヘッドプレート73は、ヘッド本体105の個数やその長さに応じてその厚みを変更すればよい。ヘッドプレート73の厚みは、例えば3.0mm〜5.0mm程度としてもよい。
【0139】
(実施形態10)
図19は、実施形態10に係るヘッド本体106を示している。尚、実施形態10のヘッド本体106において、図6に示すヘッド本体94と同じ構成については、同じ符号を付すと共に、適宜その説明を省略する。
【0140】
このヘッド本体106は、ノズルが貫通形成されたノズル板を備えておらず、ノズル12は、圧力室壁部材14の側面に開口している。すなわち、圧力室壁部材14には、この圧力室壁部材14を貫通しない圧力室用凹部14dが、その上面に開口して形成されている。この圧力室用凹部14dの側面に対し、前記供給口14bが連通していると共に、圧力室用凹部14dを挟んで供給口14bとは逆側に、圧力室壁部材14の板厚方向の中間部を水平方向に延びる吐出口14eが形成されている。吐出口14eは、圧力室用凹部14dの側面に連通していると共に、その先端部が先細されることによってノズル12を構成しており、このノズル12が、前述したように、圧力室壁部材14の側面に開口している。
【0141】
このように、ヘッド本体106としては、弾性区画部材18の伸縮方向(つまり、上下方向)とは異なる方向(この実施形態では水平方向)に、液体材料を吐出するように構成してもよい。
【0142】
尚、図20は変形例を示しており、このヘッド本体107は、圧力室11に液体材料を供給するための供給口が、加圧部材15に貫通形成された貫通孔15aによって構成されている。すなわち、供給口の配置は、適宜設定することが可能である。
【0143】
(実施形態11)
図21,22は、実施形態11に係るヘッド本体108を示している。尚、実施形態11のヘッド本体108において、図19に示すヘッド本体106と同じ構成については、同じ符号を付すと共に、適宜その説明を省略する。
【0144】
このヘッド本体108は、圧力室11が横断面円形状ではなく、図21,22における左右方向に延びるように形成されている。すなわち、圧力室壁部材14には、その上面において左右方向に延びて開口すると共に、その上面から凹陥した圧力室用凹部14fが形成されていると共に、その上面に、窪み14gが圧力室用凹部14fの開口よりも一回り大きく形成されている。圧力室壁部材14にはまた、その圧力室用凹部14fにおける左右方向の一側(図例では左側)において、その底部に開口することで圧力室11に連通する吐出口14hが形成されており、この吐出口14hの先端は先細のテーパ状にされて圧力室壁部材14の下面に開口している。この吐出口14hの先端がノズル12として機能する。尚、図6等に示すように、ノズル12が貫通形成されたノズル板13を圧力室壁部材14の下面に接着するようにしてもよい。
【0145】
前記圧力室壁部材14の窪み14g内には、略矩形状の孔が貫通形成された弾性区画部材18が配設されており、その圧力室壁部材14の上面に対して保持部材16が接着されている。従って、保持部材16と圧力室壁部材14とを互いに接合する接着層18aは、略矩形状の弾性区画部材18の外周面を取り囲んでいる。
【0146】
保持部材16には、横断面略矩形状の貫通孔16cが形成されており、この貫通孔16c内に左右に細長い略矩形状の加圧部材15が内挿されて、これが保持されている。
【0147】
そうして加圧部材15の上面に対して、同じく左右に細長い略矩形状のアクチュエータ15が接合されている。
【0148】
このように、圧力室11の形状は、円形状に限らず、適宜設定することが可能である。
【0149】
尚、図23は変形例を示しており、このヘッド本体109は、その吐出口14eが圧力室壁部材14の板厚方向の中間部を水平方向に延びて形成され、ノズル12が、圧力室壁部材14の側面に開口している。すなわち、圧力室11の形状と、液体材料の吐出方向との組み合わせにおいて制限はない。
【0150】
(他の実施形態)
尚、前記の実施形態は、それらを適宜組み合わせることが可能である。
【0151】
また、本発明におけるアクチュエータは、圧電アクチュエータに限らない。エネルギーの供給を受けて変位することにより弾性区画部材を変形させるものであればよく、例えば磁歪素子等を利用することも可能である。
【0152】
本発明に係る液体吐出ヘッド及び液体吐出装置は、インクを記録紙等に吐出して画像を形成するインク吐出ヘッド及び画像記録装置に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上説明したように、本発明は、小液滴の吐出や高粘度液体の吐出が実現するから、例えば液晶パネルや回路基板等の各種デバイスの製造のために、種々のパターンや均一薄膜を形成する液体材料吐出ヘッド及び液体材料吐出装置、またインクを吐出することによって例えば記録紙等の記録媒体上に画像を形成するインク吐出ヘッド及び画像形成装置として有用である。
【符号の説明】
【0154】
11 圧力室
12 ノズル
13 ノズル板
13a,14c,14g 窪み
14 圧力室壁部材(圧力室壁部)
15 加圧部材(加圧部)
15a 貫通孔(供給孔)
16 保持部材(保持部)
16a,16c 貫通孔
16b 充填剤
18 弾性区画部材(弾性区画部)
18a 接着層(規制部)
19 アクチュエータ
21 液体吐出ヘッド
40a,43a 凹部
41 ヘッドプレート
44e 溝
51 第2の圧力室壁部材(第2の圧力室壁部)
52 第2の弾性区画部材(弾性区画部)
52a 接着層(規制部)
71 基材(基部)
91〜109 ヘッド本体
A 液体吐出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する圧力室、
前記圧力室に連通しかつ、前記圧力室内の液体を吐出するノズル、
前記圧力室の少なくとも一部を区画する弾性区画部、
前記弾性区画部を所定の変形方向に変形させることによって、前記圧力室内の前記液体に圧力を印加するアクチュエータ、及び、
前記アクチュエータの駆動によって前記圧力室内の前記液体に圧力を印加するときに、前記弾性区画部が前記圧力室の外方に向かって逃げ変形することを規制する規制部、
を含むヘッド本体を備え、
前記ヘッド本体は、
前記ノズルが形成されたノズル板、
前記ノズル板に対向して配置されて前記弾性区画部に当接すると共に、前記アクチュエータの駆動に伴い前記弾性区画部に対し前記変形方向に相対変位することで、当該弾性区画部を伸縮変形させる加圧部、及び、
前記加圧部が内挿される貫通孔を有し、それによって、当該加圧部を前記変形方向に変位可能に保持する保持部、を含んだ積層構造に構成され、
前記弾性区画部は、互いに積層された前記ノズル板と前記保持部との間に介設されており、
前記規制部は、前記弾性区画部の外周面を取り囲むと共に、前記ノズル板と前記保持部とを互いに接着する接着層によって構成されている液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル板における、前記保持部との接合面には窪みが形成されており、
前記弾性区画部は、前記窪み内に配設されている液体吐出ヘッド。
【請求項3】
液体を収容する圧力室、
前記圧力室に連通しかつ、前記圧力室内の液体を吐出するノズル、
前記圧力室の少なくとも一部を区画する弾性区画部、
前記弾性区画部を所定の変形方向に変形させることによって、前記圧力室内の前記液体に圧力を印加するアクチュエータ、及び、
前記アクチュエータの駆動によって前記圧力室内の前記液体に圧力を印加するときに、前記弾性区画部が前記圧力室の外方に向かって逃げ変形することを規制する規制部、
を含むヘッド本体を備え、
前記ヘッド本体は、
前記ノズルが形成されたノズル板、
前記ノズル板に対向して配置されて前記弾性区画部に当接すると共に、前記アクチュエータの駆動に伴い前記弾性区画部に対し前記変形方向に相対変位することで、当該弾性区画部を伸縮変形させる加圧部、及び、
前記加圧部が内挿される貫通孔を有し、それによって、当該加圧部を前記変形方向に変位可能に保持する保持部、を含んだ積層構造に構成され、
前記ノズル板には、前記保持部側の面に、当該面から凹陥した凹部が形成され、前記弾性区画部は前記凹部内に配設され、
前記規制部は、前記凹部の内周壁によって構成されている液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル板と前記保持部とは一体形成され、それによって、前記ノズル板の凹部と前記保持部の貫通孔とは互いに連続している液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項3に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ヘッド本体は、前記保持部を挟んで前記ノズル板とは逆側の位置に、当該保持部に対して所定の間隔を開けて配置されたヘッドプレートをさらに含み、
前記加圧部は、前記ヘッドプレートに固定されており、
前記アクチュエータは、前記保持部と前記ヘッドプレートとの間で、前記加圧部を囲むように配設されて、前記保持部及び前記ヘッドプレートの双方にそれぞれ接合されている液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記加圧部は、前記ヘッドプレートをその厚み方向に貫通しており、
前記加圧部には、前記圧力室に連通しかつ当該圧力室に前記液体を供給する供給孔が形成されている液体吐出ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−254636(P2012−254636A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172689(P2012−172689)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2007−157152(P2007−157152)の分割
【原出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】