説明

液体吐出検査装置、液体吐出検査方法、印刷装置、及びプログラム

【課題】内部吐出検査の欠点を補うことにある。
【解決手段】本発明に係る液体吐出検査装置は、媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部の液体状態に基づいて液体の吐出不良を検知する内部センサーと、前記ヘッドに設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検知センサーと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出検査装置、液体吐出検査方法、印刷装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙やフィルム等の各種媒体に対してインク等の液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、を有するインクジェットプリンター等の印刷装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3794431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このインクジェットプリンターでは、ノズルが目詰まりして液滴を吐出できない場合がある(吐出不良)。これによってドット抜けが発生し、印刷画像を劣化させる原因となる。
このような吐出不良を検出するための吐出検査の1つとして、内部センサーを用いる内部吐出検査があるが、この検査には欠点があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内部吐出検査の欠点を補うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための主たる発明は、
媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部の液体状態に基づいて液体の吐出不良を検知する内部センサーと、
前記ヘッドに設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検知センサーと、
を有することを特徴とする液体吐出検査装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンター1の構成例を示すブロック図である。
【図2】図2Aはヘッド31の断面図であり、図2Bはノズルの配列を示す図である。
【図3】図3A乃至図3Cは、ヘッド31とインク吸引ユニット50との位置関係を示す図である。
【図4】キャップ51の構成を示す概略平面図である。
【図5】図5A及び図5Bは、ヘッド31とワイピングユニット55との位置関係を示す図である。
【図6】ヘッド内検査ユニット70を説明する図である。
【図7】図7Aは、ピエゾ素子の残留振動に応じて出力される信号を示す図である。図7Bは、オペアンプの出力をコンデンサーと抵抗からなる高域通過フィルターを通過した後に出力される信号を示す図である。図7Cは、コンパレーターを通過した後に出力される信号を示す図である。
【図8】図8Aは付着物検査ユニット80を説明する図であり、図8Bは検出制御部を説明するブロック図である。
【図9】図9Aは、気泡が混入した状態を示す図である。図9Bは、乾燥増粘した状態を示す図である。図9Cは、紙粉がノズルに密着した状態を示す図である。図9Dは、紙粉がノズル付近に付着した状態を示す図である。
【図10】ドット抜け検査の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
即ち、媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部の液体状態に基づいて液体の吐出不良を検知する内部センサーと、
前記ヘッドに設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検知センサーと、
を有することを特徴とする液体吐出検査装置である。
このような液体吐出検査装置によれば、内部センサーでは検知できない吐出不良を付着物検知センサーが検知することができるため、内部センサーの欠点を補うことができる。このため、吐出不良の検査精度を向上させることが可能となる。
【0008】
また、かかる液体吐出検査装置であって、
前記内部センサーを用いた内部吐出検査処理と、前記付着物検知センサーを用いた付着物検査処理と、を同時に行わないこととしてもよい。
このような液体吐出検査装置によれば、センサー同士の干渉を避けることができる。
【0009】
また、かかる液体吐出検査装置であって、
前記内部センサーを用いた内部吐出検査処理を行う前に、前記付着物検知センサーを用いた付着物検査処理を行うこととしてもよい。
このような液体吐出検査装置によれば、先に内部吐出検査処理を行う場合に比べて、検査時間を短縮することができる。
【0010】
また、かかる液体吐出検査装置であって、
前記付着物検知センサーの検知結果から付着物が存在することを判定した場合には、前記ノズル面に付着した付着物を取り除く回復動作を行い、
前記ノズル面に付着した付着物を取り除く回復動作の後、前記内部センサーからの検知結果を取得し、当該検知結果に基づいて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復動作を行うこととしてもよい。
このような液体吐出検査装置によれば、検査時間を短縮することができると共に、吐出不良の原因を考慮した適切な回復動作が行われるため、回復のために消費されるインク量の無駄を抑えることができる。
【0011】
また、液体吐出検査装置を用いる液体吐出検査方法であって、前記液体吐出検査装置は、媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部の液体状態に基づいて液体の吐出不良を検知する内部センサーと、前記ヘッドに設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検知センサーと、コントローラーと、を有し、
前記コントローラーにより、前記内部センサーを用いた内部吐出検査処理を行い、及び、前記コントローラーにより、前記付着物検知センサーを用いた付着物検査処理を行う、液体吐出検査方法である。
このような液体吐出検査方法によれば、内部センサーでは検知できない吐出不良を付着物検知センサーが検知することができるため、内部センサーの欠点を補うことができる。
【0012】
また、媒体に対して液体を吐出して印刷を行うヘッドと、
前記ヘッドの内部の液体状態に基づいて液体の吐出不良を検知する内部センサーと、
前記ヘッドに設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検知センサーと、
を有することを特徴とする印刷装置である。
このような印刷装置によれば、内部センサーでは検知できない吐出不良を付着物検知センサーが検知することができるため、内部センサーの欠点を補うことができる。
【0013】
また、媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部の液体状態に基づいて液体の吐出不良を検知する内部センサーと、前記ヘッドに設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検知センサーと、コントローラーと、を有する液体吐出検査装置に、
前記内部センサーを用いた内部吐出検査処理、及び、前記付着物検知センサーを用いた付着物検査処理を実行させるためのプログラムである。
このようなプログラムによれば、内部センサーでは検知できない吐出不良を付着物検知センサーが検知することができるため、内部センサーの欠点を補うことができる。
【0014】
===実施の形態===
<<<液体吐出検査装置について>>>
液体吐出検査装置は、印刷装置に組み込んだ状態で用いられる。また、工程内で用いる場合には専用装置として構成することもできる。以下に説明する実施形態では、印刷装置に組み込まれた液体吐出検査装置について説明する。具体的には、インクジェットプリンター1(以下、単に「プリンター1」ともいう。)を例に挙げて説明する。この場合、プリンター1は、印刷装置の一例であり、液体吐出検査装置の一例でもある。
【0015】
<<<プリンター1の構成例について>>>
プリンター1の構成例について、図1、図2A及び図2B、図3A乃至図3C、図4、図5A及び図5Bを用いて説明する。図1は、プリンター1のブロック図である。図2Aは、ヘッドの断面図である。図2Bは、ノズルの配列を示す図である。図3A乃至図3Cは、ヘッド31とインク吸引ユニット50との位置関係を示す図である。図4は、キャップ51を上方から見た図である。図5A及び図5Bは、ヘッド31とワイピングユニット55との位置関係を示す図である。
【0016】
プリンター1は、用紙、布、フィルム等の媒体に向けて、液体の一例としてのインクを吐出するものであり、コンピューターCPと通信可能に接続されている。コンピューターCPは、プリンター1に画像を印刷させるため、その画像に応じた印刷データをプリンター1に送信することができる。
【0017】
本実施の形態に係るプリンター1は、図1に示すように、媒体を搬送方向に搬送する搬送ユニット10と、キャリッジユニット20と、ヘッドユニット30と、駆動信号生成部40と、インク吸引ユニット50と、ワイピングユニット55と、フラッシングユニット60と、ヘッド内検査ユニット70と、付着物検査ユニット80と、検出器群90と、これらのユニット等を制御しプリンター1としての動作を司るコントローラー100と、を有している。
【0018】
キャリッジユニット20は、ヘッドユニット30(ヘッド31)を移動させるためのものである。このキャリッジユニット20は、ガイドレールに沿って移動方向へ往復移動可能に支持されたキャリッジ21と、モーターとを有する。キャリッジ21は、このモーターの駆動により、ヘッド31と一体となって移動するよう構成されている(図3A参照)。キャリッジ21(ヘッド31)のガイドレールにおける位置(移動方向の位置)は、コントローラー100がモーターに設けられたエンコーダーから出力されるパルス信号における立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出してこのエッジをカウントすることにより、求めることができる。
【0019】
ヘッドユニット30は、搬送ユニット10によりプラテン上に搬送された媒体に対してインクを吐出するものである。このヘッドユニット30は、ヘッド31と、ヘッド制御部HCとを有する。ヘッド31は、インクを媒体に向けて吐出する。ヘッド制御部HCは、コントローラー100からのヘッド制御信号に基づいてヘッド31を制御する。
【0020】
ヘッド31は、図2Aに示すように、ケース32と、流路ユニット33と、ピエゾ素子ユニット34とを有する。ケース32は、ピエゾ素子PZTなどを収容して固定するための部材であり、例えばエポキシ樹脂等の非導電性の樹脂材によって作製される。
【0021】
流路ユニット33は、流路形成基板33aと、ノズルプレート33bと、振動板33cとを有する。流路形成基板33aにおける一方の表面にはノズルプレート33bが接合され、他方の表面には振動板33cが接合されている。流路形成基板33aには、圧力室331、インク供給路332、及び、共通インク室333となる空部や溝が形成されている。この流路形成基板33aは、例えばシリコン基板によって作製されている。ノズルプレート33bには、複数のノズルNzからなるノズル群が設けられている。このノズルプレート33bは、導電性を有する板状の部材、例えば薄手の金属板によって作製されている。また、ノズルプレート33bは、グランド線に接続されてグランド電位になっている。振動板33cにおける各圧力室331に対応する部分にはダイヤフラム部334が設けられている。このダイヤフラム部334はピエゾ素子PZTによって変形し、圧力室331の容積を変化させる。なお、振動板33cや接着層等が介在していることで、ピエゾ素子PZTとノズルプレート33bとは電気的に絶縁された状態になっている。
【0022】
ピエゾ素子ユニット34は、ピエゾ素子群341と、固定板342とを有する。ピエゾ素子群341は櫛歯状をしている。そして、櫛歯の1つ1つがピエゾ素子PZTである。各ピエゾ素子PZTの先端面は、対応するダイヤフラム部334が有する島部335に接着される。固定板342は、ピエゾ素子群341を支持するとともに、ケース32に対する取り付け部となる。ピエゾ素子PZTは、電気機械変換素子の一例であり、駆動信号COMが印加されると長手方向に伸縮し、圧力室331内の液体に圧力変化を与える。圧力室331内のインクには、圧力室331の容積の変化に起因して圧力変化が生じる。この圧力変化を利用して、ノズルNzからインク滴を吐出させることができる。なお、電気機械変換素子としてのピエゾPZTに代えて、印加される駆動信号COMに応じた気泡を発生させることによりインク滴を吐出させる構造にしてもよい。
【0023】
図2Bに示すように、ノズルプレート33bには媒体の搬送方向に沿って180dpiの間隔で180個のノズル(#1〜#180)が並んだノズル列が複数設けられている。各ノズル列はそれぞれ異なる色のインクを吐出するものであり、このノズルプレート33bには例えば4つのノズル列が設けられている。具体的には、ブラックインクノズル列K、シアンインクノズル列C、マゼンタインクノズル列M、イエローインクノズル列Yである。
【0024】
駆動信号生成部40は、駆動信号COMを生成するためのものである。駆動信号COMがピエゾ素子PZTに印加されると、ピエゾ素子は伸縮し、各ノズルNzに対応する圧力室331の容積が変化する。そのため、駆動信号COMは、印刷処理時、後述する内部吐出検査処理時、ドット抜けするノズルNzに対して行うフラッシング処理時などに、ヘッド31に印加される。
【0025】
インク吸引ユニット50は、図3A乃至図3C、図4に示すように、キャップ51と、キャップ51を支持するとともに斜め上下方向に移動可能なスライダー部材52とを有する。キャップ51は、長方形の底部(不図示)と底部の周縁から起立する側壁部511とを有し、ノズルプレート33bと対向する上面が開放された薄手の箱状をしている。底部と側壁部511に囲まれた空間には、フェルトやスポンジ等の多孔質部材で作製されたシート状の保湿部材が配置されている。キャップ51の底部には廃液チューブ58が接続されており、廃液チューブ58の途中には吸引ポンプ(不図示)が接続されている。
【0026】
図3Aに示すように、キャリッジ21がホームポジション(ここでは移動方向の右側)から外れた状態では、キャップ51はノズルプレート33bの表面(以下、「ノズル面」ともいう)よりも十分に低い位置に位置付けられる。そして、図3Bに示すように、キャリッジ21がホームポジション側へ移動すると、スライダー部材52に設けられた当接部53にキャリッジ21が当接し、当接部53はキャリッジ21と共にホームポジション側へ移動する。当接部53がホームポジション側へ移動する際に案内用の長孔54に沿ってスライダー部材52が上昇し、それに伴ってキャップ51も上昇する。最終的には、図3Cに示すように、キャリッジ21がホームポジションに位置すると、キャップ51の側壁部511(多孔質部材)とノズルプレート33bが密着する。つまり、キャップ51の開口縁がノズル面に当接した状態になる。
【0027】
このようにして、キャップ51の側壁部511とノズル面が密着した状態になると、インク吸引ユニット50はポンプ吸引を行うことが可能となる。すなわち、インク吸引ユニット50は、キャップ51の側壁部511とノズル面が密着した状態で吸引ポンプ(不図示)を動作させると、キャップ51の空間を負圧にできるため、ヘッド31内のインクを、ヘッド内(ノズル内)に混入した気泡と共に吸引することが可能となる。これにより、ドット抜けノズルを回復することができる。
【0028】
ワイピングユニット55は、ヘッド31のノズル面に当接可能なワイパー56を有している。ワイパー56は、可撓性を有する弾性部材により構成され、キャップ51の端部に設けられている(図3A参照)。本実施形態に係るワイパー56は、キャップ51が図3Bに示す状態に維持されると、キャップ51の側壁部511よりも上方に突出した状態に配置される。すなわち、図5Aに示すように、ワイパー56の先端部がノズル面よりも上側に位置するようになる。その後、図5Bに示すように、キャリッジ21(ヘッド31)がモーターの駆動により移動方向(図中の矢印方向)に移動すると、ワイパー56の先端部はヘッド31のノズル面に当接して撓み、ノズル面の表面をクリーニング(拭き掃除)する。これにより、ワイピングユニット55は、ノズル面に付着した紙粉等の異物を除去することができるため、当該異物により目詰まりしていたノズルから正常にインクを吐出させることが可能となる。
【0029】
フラッシングユニット60は、ヘッド31がフラッシング動作を行うことにより吐出されたインクを受けて貯留するためのものである。このフラッシング動作とは、図3Bに示すように、ノズル面とキャップ51の開口縁の間に若干の隙間が開いた状態で、印刷する画像とは関係のない駆動信号を駆動素子(ピエゾ素子)に印加し、ノズルから強制的に連続してインク滴を吐出させる動作である。これにより、ヘッド内(ノズル内)のインクが増粘・乾燥して、適正な量のインクが吐出されなくなってしまうことを防止することができるため、目詰まりしたノズルが不吐出状態から回復することが可能となる。
【0030】
ヘッド内検査ユニット70は、ヘッド31の内部におけるインクの状態を検査するためのものである。すなわち、このヘッド内検査ユニット70は、後述する内部吐出検査時において、ヘッド31の内部におけるインク状態を検知する内部センサーとして機能する。なお、このヘッド内検査ユニット70の具体的な構成等については、追って詳述する。
【0031】
付着物検査ユニット80は、後述する付着物検査時において、紙粉などの異物がノズル面に付着しているか否かを検知する付着物検知センサーとして機能するものである。なお、この付着物検査ユニット80の具体的な構成等については、追って詳述する。
【0032】
コントローラー100は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。このコントローラー100は、図1に示すように、インターフェース部101と、CPU102と、メモリー103と、ユニット制御回路104と、を有している。インターフェース部101は、外部装置であるホストコンピューターCPとプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU102は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー103は、CPU102のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU102は、メモリー103に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路104により各ユニットを制御する。
【0033】
検出器群90は、プリンター1内の状況を監視するものであり、例えば、媒体の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送される媒体の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ21(又はヘッド31)の移動方向の位置を検出するためのリニア式エンコーダーなどがある。
【0034】
<ヘッド内検査ユニット70について>
ここでは、ヘッド内検査ユニット70について説明する。ヘッド内検査ユニット70は、後述する内部吐出検査時にヘッド31の内部におけるインク状態を検知する内部センサーである。
【0035】
(吐出検査の原理)
図2Aに示すように、ピエゾ素子PZTに駆動信号COMが印加されると、ピエゾ素子PZTが撓んで振動板33cが振動する。ピエゾ素子PZTへの駆動信号COMの印加を止めても、振動板33cには残留振動が生じている。振動板33cが残留振動により振動すると、ピエゾ素子PZTは、振動板33cの残留振動に応じて振動し信号を出力する。よって、振動板33cに残留振動を発生させて、そのときのピエゾ素子PZTに発生する信号を検出することで、各ピエゾ素子PZTの特性(周波数特性)を求めることができる。
【0036】
具体的には、駆動信号生成部40から出力される駆動信号COMが、対応するピエゾ素子PZTに印加されると、当該ピエゾ素子PZTと接する振動板33cが振動する。その振動板33cの振動はすぐに停止せず残留振動が生じる。このため、ピエゾ素子PZTが残留振動に応じて振動して信号(逆起電圧)を出力する。そして、その信号がヘッド内検査ユニット70に入力される。ヘッド内検査ユニット70は、入力される信号に基づいて、そのピエゾ素子PZTの周波数特性を検出する。この処理を各ノズルに対応するピエゾ素子PZTについて順次行っていけば、各ピエゾ素子PZTの周波数特性を検出することができる。このようにして検出された周波数特性は、ヘッド31の内部のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)によって異なる。すなわち、残留振動の振動パターンが、ヘッド31の内部のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)に応じて異なる。
【0037】
(構成)
図6は、ヘッド内検査ユニット70の構成の説明図である。ヘッド内検査ユニット70は、増幅部701と、パルス幅検出部702とを有する。
増幅部701では、ピエゾ素子341からの信号に含まれる低周波成分をコンデンサーC1と抵抗R1からなる高域通過フィルターによって除去し、オペアンプ701aにより所定の増幅率で増幅する。次に、オペアンプ701aの出力をコンデンサーC2と抵抗R4からなる高域通過フィルターに通過させることにより、基準電圧Vrefを中心に上下に振動する信号に変換する。そして、コンパレーター701bによって基準電圧Vrefと比較し、基準電圧Vrefより高いか否かによって信号を2値化する。
【0038】
(検査時の動作)
図7Aは、ピエゾ素子PZTが残留振動に応じて出力する信号を示す図である。周波数特性はヘッド内のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)に応じて異なるため、そのインク状態それぞれに対応する固有の電圧波形(振動パターン)が出力されることになる。
【0039】
図7Bは、オペアンプ701aの出力をコンデンサーC2と抵抗R4からなる高域通過フィルターに通過させた後の信号、及び基準電圧Vrefを示す図である。すなわち、これらはコンパレーター701bに入力される信号である。
【0040】
図7Cは、コンパレーター701bからの出力信号を示す図である。すなわち、パルス幅検出部702に入力される信号である。
【0041】
パルス幅検出部702は、図7Cに示されるパルスが入力されると、パルスの立ち上がりでカウント値をリセットし、その後のクロック信号毎にカウント値をインクリメントし、次のパルスの立ち上がりでのカウント値をコントローラー100のCPU102に出力する。CPU102は、パルス幅検出部702の出力するカウント値に基づいて、すなわち、ヘッド内検査ユニット70から出力される検知結果に基づいて、ピエゾ素子PZTの出力する信号の周期を検出することができる。
【0042】
以上のように、ヘッド内検査ユニット70が残留振動に応じた周波数特性を有する振動パターンを出力することにより、コントローラー100は、ヘッド内のインク状態(正常であるのか、又は、ヘッド内に気泡混入が原因で吐出不良が生じているのか、又は、インクの増粘が原因で吐出不良が生じているのか、又は、紙粉等の異物がノズルNzに密着しているのか)を特定することができるため、当該インク状態それぞれに対応する適切な回復動作を行うことができる。
【0043】
<付着物検査ユニット80について>
次に、付着物検査ユニット80の構成例について説明する。付着物検査ユニット80は、後述する付着物検査時に、ノズルから実際にインクを吐出させることなく、ノズル面に付着した紙粉などの付着物を検知するための付着物検知センサーである。
【0044】
(構成)
図8Aは、付着物検査ユニット80の構成を説明する図であり、図8Bは、検出制御部87を説明するブロック図である。
【0045】
付着物検査ユニット80は、図8Aに示すように、検出用電極513と、高圧電源ユニット81と、第1制限抵抗82と、第2制限抵抗83と、検出用コンデンサー84と、増幅器85と、平滑コンデンサー86と、検出制御部87とを有する。なお、ヘッド31のノズルプレート33bは、接地されており、付着物検査ユニット80の一部としても機能する。
【0046】
後述する付着物検査処理時においては、図3B及び図8Aに示すように、キャップ51はノズル面と所定の間隔dを空けて対向するように配置される。キャップ51の側壁部511に囲われた空間内には、図4に示すように、保湿部材512と、ワイヤー状の検出用電極513が配設されている。このため、ノズルプレート33bと検出用電極513とが所定の間隔dを空けて対向するように配置されることになる。
【0047】
この検出用電極513は、後述する付着物検査処理時には600V〜1kV程度の高電位に設定される。そして、検出用電極513は、図4に示すように、二重の矩形状に設けられた枠部と、枠部の対角同士を結ぶ対角線部、枠部の各辺における中点同士を結ぶ十字部とを有している。この構造によって、広い範囲に亘って一様に帯電されるようにしている。また、保湿部材512が湿った状態で検出用電極513を高電位にすると、保湿部材512の表面も同じ電位になる。この点でも、ノズルからインクが吐出される領域は広い範囲に亘って一様に帯電されるようになる。
【0048】
高圧電源ユニット81は、キャップ51内の検出用電極513を所定電位にする電源である。本実施形態の高圧電源ユニット81は、600V〜1kV程度の直流電源によって構成され、検出制御部87からの制御信号によって動作が制御される。
【0049】
第1制限抵抗82及び第2制限抵抗83は、高圧電源ユニット81の出力端子と検出用電極513との間に配置され、高圧電源ユニット81と検出用電極513との間で流れる電流を制限する。本実施形態では、第1制限抵抗82と第2制限抵抗83は同じ抵抗値(例えば1.6MΩ)とし、第1制限抵抗82と第2制限抵抗83は直列に接続する。図示するように、第1制限抵抗82の一端を高圧電源ユニット81の出力端子に接続し、他端を第2制限抵抗83の一端と接続し、第2制限抵抗83の他端を検出用電極513に接続する。
【0050】
検出用コンデンサー84は、検出用電極513の電位変化成分を抽出するための素子であり、一方の導体が検出用電極513に接続され、他方の導体が増幅器85に接続されている。この間に検出用コンデンサー84を介在させることで、検出用電極513のバイアス成分(直流成分)を除くことができ、信号の扱いを容易にすることができる。本実施形態では、検出用コンデンサー84を容量が4700pFとする。
【0051】
増幅器85は、検出用コンデンサー84の他端に現れる信号(電位変化)を増幅して出力する。本実施形態の増幅器85は増幅率が4000倍のものによって構成されている。これにより、電位の変化成分を2〜3V程度の変化幅を持った電圧信号として取得できる。これらの検出用コンデンサー84及び増幅器85の組は検出部の一種に相当し、インク滴の吐出によって生じた検出用電極513に生じた電気的な変化を検出する。
【0052】
平滑コンデンサー86は、電位の急激な変化を抑制する。本実施形態の平滑コンデンサー86は一端が第1制限抵抗82と第2制限抵抗83とを接続する信号線に接続され、他端がグランドに接続されている。そして、その容量は0.1μFである。
【0053】
検出制御部87は、コントローラー100による制御に基づいて、付着物検査ユニット80の制御を行う。この検出制御部87は、図8Bに示すように、レジスタ群87a、AD変換部87b、電圧比較部87c、及び、制御信号出力部87dを有する。レジスタ群87aは、複数のレジスタによって構成されている。各レジスタには、ノズルNz毎の判定結果や判定用の電圧閾値などが記憶される。AD変換部87bは、増幅器85から出力された増幅後の電圧信号(アナログ値)をデジタル値に変換する。電圧比較部87cは、増幅後の電圧信号に基づく振幅値の大きさを電圧閾値と比較する。制御信号出力部87dは、高圧電源ユニット51の動作を制御するための制御信号を出力する。
【0054】
(吐出検査の原理)
ノズル面(ヘッド31の下面)に紙粉が付着すると、検出用電極513の電位が変化し、この電位変化を検出用コンデンサー84及び増幅器85が検出し、検出信号が検出制御部87に出力される。すなわち、図8Aに示すように、ノズル面に紙粉が付着していると、検出用電極513の電位に変化が現れ、検出信号に正常時と異なる電圧変化が現れることになる。
【0055】
具体的には、ノズルプレート33bをグランド電位に設定し、キャップ51に配置された検出用電極513を600V〜1kV程度の高い電位に設定する。ノズルプレート33bと検出用電極513とを、所定間隔d(図8Aを参照)を空けた状態で対向させる。ノズル面に紙粉が付着した場合、これに起因して検出用電極513側に生じた電気的な変化を検出用コンデンサー84及び増幅器85を介して検出制御部87が電圧信号として取得する。そして、検出制御部87は、電圧信号における振幅値(電位変化)に基づいて、ノズル面に紙粉が付着しているか否かを判別する。図8Aに示すように、ノズルプレート33bと検出用電極513とを所定間隔dを空けて配置したことにより、これらの部材が恰もコンデンサーの様に振る舞う構成ができるからである。
【0056】
(検査時の動作)
付着物検査ユニット80は、付着物検査処理において、ノズル面に紙粉が付着した状態にある場合、その紙粉によってノズルプレート33bと検出用電極513との間で短絡が生じるため、検出用電極513に生じた正常時とは異なる電気的な変化を含む検出信号が、検出用コンデンサー84及び増幅器85の組からなる検出部から出力される。そして、コントローラー100は、付着物検査ユニット80から出力された検出信号を用いて、検出用電極513の電位が所定電位よりも低下しているか否か判定し、電位が低下している場合には、ノズルプレート33bと検出用電極513との間で短絡が生じ、紙粉がノズル面に付着していることを判定することができる。
【0057】
なお、付着物検査ユニット80は、ヘッド31からインク滴を吐出することにより、検出用電極513側に生じた電気的な変化を検出用コンデンサー84及び増幅器85を介して検出信号として出力させることも可能であるが、本実施形態にかかる付着物検査においては、ヘッド31からインク滴を吐出することなく検出用電極513側に生じた電気的な変化を検出することができるため、消費インクを節約することが可能となる。
【0058】
<<<プリンター1の動作例について>>>
<全体的な動作について>
ここでは、プリンター1の全体的な動作について説明する。本実施形態に係るプリンター1では、コントローラー100が、メモリー103に格納されたコンピュータープログラムに従って、制御対象(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、駆動信号生成部40、インク吸引ユニット50、ワイピングユニット55、フラッシングユニット60、ヘッド内検査ユニット70、付着物検査ユニット80)を制御して、各処理を行う。従って、このコンピュータープログラムは、これらの処理を実行するため、制御対象を制御するためのコードを有する。
【0059】
具体的には、コントローラー100は、印刷処理において、印刷命令の受信、給紙動作、ドット形成動作、搬送動作、排紙判断、及び印刷終了判断を行い、ドット抜け検査処理において、ドット抜け検査動作、回復動作を行う。以下、各処理について、簡単に説明する。
【0060】
印刷命令の受信は、コンピューターCPからの印刷命令を受信する処理である。この処理において、コントローラー100はインターフェース部101を介して印刷命令を受信する。
【0061】
給紙動作は、印刷対象となる媒体を移動させ、印刷開始位置(所謂頭出し位置)に位置決めする動作である。この動作において、コントローラー100は、搬送モーターを駆動させることにより、媒体を移動させる。
【0062】
ドット形成動作は、媒体にドットを形成するための動作である。この動作において、コントローラー100は、キャリッジ21を駆動させたり、ヘッド31に対して制御信号を出力したりする。このとき、駆動信号生成部40が生成した駆動信号COMがピエゾ素子PZTに印加されることにより、ノズルNzからインクが吐出される。これにより、ヘッド31の移動中にノズルNzから断続的にインクがされ、媒体にドットが形成される。
【0063】
搬送動作は、媒体を搬送方向へ移動させる動作である。コントローラー100は、搬送モーターを駆動させることにより、先程のドット形成動作によって形成されたドットとは異なる位置に、ドットを形成することができる。
【0064】
印刷終了判断は、印刷を続行するか否かの判断である。コントローラー100は、印刷対象となっている媒体に対する印刷データの有無に基づき印刷終了判断を行う。
【0065】
ドット抜け検査動作は、吐出不良(ドット抜け)の有無を検査する動作である。コントローラー100は、印刷処理を行っていない所定のタイミングで、付着物検査ユニット80からの検知結果に基づきノズル面から紙粉を取り除く動作を行い、ヘッド内検査ユニット70からの検知結果に基づいて予め設定された複数種類の回復動作の中から適切な回復動作を選択する。なお、このドット抜け検査動作については、追って詳述する。
【0066】
回復動作は、吐出不良の状態にあるヘッド31を、インクを正常に吐出できる状態に回復させる動作である。コントローラー100は、吐出不良の原因に応じて、フラッシング動作、インク吸引動作、ワイピング動作のうちのいずれかの動作を行う。
【0067】
ここで、本実施形態に係るプリンター1において、吐出不良の原因に応じた回復動作を行うことには、以下のようなメリットがある。
【0068】
フラッシング動作、インク吸引動作、ワイピング動作をそれぞれ行う際、回復のために消費されるインク量はそれぞれ異なる。たとえば、ワイピング動作はノズル面をワイパー56でクリーニング(拭き掃除)する動作であるから、回復のために消費されるインク量は極少量である。一方で、フラッシング動作は増粘・乾燥したインクと共にヘッド内のインクを吐き捨てる動作であるから、回復のために消費されるインク量はワイピング動作時の消費インク量に比べて多い。また、インク吸引動作はヘッド内のインクを混入した気泡と共に吸引する動作であり、回復のために消費されるインク量はフラッシング動作時の消費インク量に比べてさらに多い。このため、たとえば、紙粉がノズル面に付着したことに起因して吐出不良が発生した場合、ワイピング動作を選択することによって回復することができるのにも関わらず、フラッシング動作やインク吸引動作を選択することになれば、回復のために消費されるインク量が無駄になってしまう。
【0069】
このため、本実施形態に係るプリンター1においては、付着物検査ユニット80の検知結果に基づいて紙粉を取り除く動作を行い、ヘッド内検査ユニット70の検知結果に基づいて予め設定された複数種類の回復動作の中から適切な回復動作を選択することにより、無駄なインク消費を抑えることが可能となる。
【0070】
<ドット抜け検出動作について>
次に、ドット抜け検査動作について、図9A乃至図9D、図10を用いて説明する。図9Aは、気泡が混入した状態を示す図である。図9Bは、インクが増粘・乾燥した状態を示す図である。図9Cは、紙粉等の異物がノズルに密着した状態を示す図である。図9Dは、紙粉等の異物がノズル付近に付着した状態を示す図である。図10は、ドット抜け検査の動作例を示すフローチャートである。
【0071】
図10に示すように、まず、コントローラー100は、ヘッド31をホームポジションに位置させた状態で(図3C参照)、ヘッド31に対する付着物検査処理を行う(S101)。
この付着物検査処理では、付着物検査ユニット80の検知結果に基づき、ヘッド31のノズル面に紙粉の異物が付着しているか否かが検査される。
【0072】
次いで、コントローラー100は、付着物検査ユニット80の検知結果に基づいて、ノズル面に紙粉等の異物が付着しているか否か判定し(S102)、ノズル面に紙粉等の異物が付着していると判定した場合(S102:YES)、ワイピング処理を行う(S103)。
このワイピング処理では、ヘッド31がホームポジションから移動しながら(図3B、図5A、図5B参照)、ワイピングユニット55による回復動作が行われ、ノズル面から紙粉等の異物が除去されることになる。
【0073】
このように、紙粉等の異物が付着していると判定した場合には、図9Cに示すようなノズル面に紙粉が密着した状態で付着している、又は、図9Dに示すような紙粉が密着していない状態で付着していると推測できるが、いずれの場合もワイピング動作によりノズル面から紙粉が除去されることになる。その後、ワイピング処理が終了すると、ステップS101に戻って再検査が行われる。
【0074】
ステップS102に戻り、コントローラー100は、付着物検査ユニット80の検知結果に基づいて、ノズル面に紙粉等の異物が付着しているか否か判定し、ノズル面に紙粉等の異物が付着していないと判定した場合(S102:NO)、ヘッド31に対する内部吐出検査処理を行う(S104)。すなわち、付着物検査の終了後に、内部吐出検査処理が行われることになる。
【0075】
この内部吐出検査処理では、ヘッド内検査ユニット70の検知結果を取得することにより、ヘッド内のインク状態に起因する吐出不良(ドット抜け)の有無が検査される。そして、この内部吐出検査により、ヘッド内検査ユニット70の検知結果として、インクの状態が正常であること(ドット抜けなし)、気泡混入が原因で吐出異常が生じていること(図9A参照)、インクの増粘・乾燥が原因で吐出異常が生じていること(図9B参照)、紙粉等の異物がノズルNzに密着することにより吐出異常が生じていること(図9C参照)、のいずれかの結果を、コントローラー100は取得することができる。しかしながら、紙粉等の異物(ノズル面に密着していない紙粉等の異物)がノズルNz付近に付着したことにより吐出異常が生じていること(図9D参照)の結果は、取得することができない。そこで、本実施形態に係るドット抜け検査処理では、上述したとおり、内部吐出検査処理に併せて付着物検査処理を行うようにしたため、内部吐出検査では検知できない吐出不良を付着物検査で検知することができるようになり、ドット抜けの検査精度を向上させることが可能となる。
【0076】
次いで、コントローラー100は、内部吐出検査処理によって取得したヘッド内検査ユニット70の検知結果から、吐出不良(ドット抜け)の有無に応じた適切な回復動作を選択する。
【0077】
具体的には、コントローラー100は、ステップS105において、内部吐出検査の検知結果から、ヘッド内のインク状態が正常であると判定した場合には、そのまま処理を終了する。
【0078】
引き続き、コントローラー100は、ステップS105において、内部吐出検査の検知結果から、気泡混入が原因で吐出異常が生じている(図9A参照)と判定した場合に、インク吸引処理を行う(S106)。
【0079】
このインク吸引処理では、インク吸引ユニット50による回復動作が行われ、ヘッド内に混入した気泡がヘッド内のインクと共に吸引されることになる。
【0080】
このように、内部吐出検査の結果(気泡混入)に基づいて回復動作(インク吸引動作)を選択することで、吐出不良の原因に応じた適切な回復動作が行われ、回復のために消費されるインク量の無駄を抑えることができる。
【0081】
引き続き、コントローラー100は、ステップS105において、内部吐出検査の検知結果から、インクが増粘した状態にあることにより吐出異常が生じている(図9B参照)と判定した場合には、フラッシング処理を行う(S106)。
【0082】
このフラッシング処理では、フラッシングユニット60による回復動作が行われ、増粘したインクがヘッド外へ吐き出されるようになる。
【0083】
このように、内部吐出検査の結果(インクの増粘)に基づいて回復動作(フラッシング動作)を選択することで、吐出不良の原因に応じた適切な回復動作が行われ、回復のために消費されるインク量の無駄を抑えることができる。
【0084】
引き続き、コントローラー100は、ステップS105において、内部吐出検査の検知結果から、ノズル面に紙粉が密着したこと(図9C参照)に起因して吐出不良が発生したと判定した場合に、ワイピング処理を行う(S108)。
【0085】
このワイピング処理では、ヘッド31がホームポジションから移動しながら(図3B、図5A、図5B参照)、ワイピングユニット55による回復動作が行われ、ノズル面から紙粉等の異物が除去されることになる。
【0086】
このように、内部吐出検査の結果(紙粉の密着)に基づいて回復動作(ワイピング動作)を選択することで、吐出不良の原因に応じた適切な回復動作が行われ、回復のために消費されるインク量の無駄を抑えることができる。
【0087】
次いで、ステップ108におけるワイピング処理が終了すると、ステップS104に戻って再び内部吐出検査が行われる。このように、ワイピング処理終了後に内部吐出検査を行うようにしたのは、以下の理由によるものである。
【0088】
これは、ワイピング処理においてノズル面に付着した紙粉を拭き取る際、ワイパー56がノズルNzに触れることでインクのメニスカスが崩れ、ドット抜けを発生させるおそれがあるためである。このように、ワイピング処理終了後に再検査を行うことで、ドット抜けの検出精度を向上させることができる。
【0089】
以上のように、本実施形態に係るドット抜け検査処理においては、内部吐出検査の前に付着物検査を行って、ドット抜けの検出精度を高めている。このように、先に付着物検査を行うことによって、以下の点で有効となる。
【0090】
たとえば、仮に、先に内部吐出検査を行ったとすると、後に行う付着物検査において紙粉の付着が検知された場合、ワイピング処理を行うことになる。そして、ワイピング処理により、ノズル面から紙粉が除去されることになるが、この紙粉をノズル面から拭き取る際、ワイパー56がノズルNzに触れることでインクのメニスカスが崩れ、ドット抜けを発生させるおそれがある。そのため、再び内部吐出検査を行って、ノズルに異常がないかを確認する必要が生じてしまう。これに対し、先に付着物検査を行えば、その後に内部吐出検査を1回だけ行えば足りることになる。つまり、内部吐出検査を2回も行う必要がなくなるため、ドット抜け検査時間を短縮することが可能となる。
【0091】
また、内部吐出検査の前に付着物検査を行うことによって、ヘッド内検査ユニット70と付着物検査ユニット80とを同時に動作させることを回避することができる。これは、仮に、内部吐出検査及び付着物検査を同時に行えば、たとえば、付着物検査ユニット80の検出用電極に生じる電気的変化の影響がヘッド内検査ユニット70に作用することにより、ヘッド内検査ユニット70の出力信号にノイズが混入するおそれがある。これに対し、本実施形態に係るドット抜け検査処理では、内部吐出検査と付着物検査ユニット80とを同時に行わないように制御したため、センサー同士の干渉を避けることができる。
【0092】
<<<本実施の形態に係るプリンター1の有効性について>>>
上述したとおり、本実施形態に係るプリンター1は、媒体に対してインクを吐出して印刷を行うヘッド31と、ヘッド内のインク状態に基づいてインクの吐出不良を検知するヘッド内検査ユニット70と、ヘッド31に設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検査ユニット80と、を備えている。
【0093】
インクカートリッジからヘッドへインクを充填する際に気泡が混入したり、長時間ノズルNzからインク(液体)が吐出されないことによりインクが増粘・乾燥したり、ノズルNzに紙粉などの異物が付着したりすると、ノズルNzが目詰まりすることがある。このようにノズルNzが目詰まりすると、ノズルNzからインクが吐出されるべき時にインクが吐出されず、ドット抜けが発生する(吐出不良)。ドット抜けとは、本来ノズルNzからインクが吐出されてドットが形成されるべき所にドットが形成されない現象をいう。ドット抜けが発生すると画質劣化の原因となる。上述したとおり、ドット抜けの原因は、気泡混入、インクの増粘・乾燥、紙粉などの異物付着など、様々であるため、内部吐出検査だけではドット抜けを検出できない場合がある。たとえば、内部吐出検査(ヘッド内検査ユニット70)では、気泡混入(図9A参照)、インクの増粘・乾燥(図9B参照)、ノズルに密着した紙粉(図9C参照)を検出することができても、ノズルに密着しない紙粉(図9D参照)を検出することができない。そこで、本実施形態では、内部吐出検査では検知できない吐出不良を検知しうる付着物検査ユニット80を用いることにより、内部吐出検査の欠点を補うようにしたため、吐出不良の検出精度を向上させることが可能となる。
【0094】
また、ヘッド内検査ユニット70を用いた内部吐出検査処理と、付着物検査ユニット80を用いた付着物検査処理と、を同時に行わないように制御するコントローラーを備えるようにした。これにより、センサー同士の干渉を避けることができるため、お互いに影響を受けることなくそれぞれの検査を行うことが可能となる。
【0095】
また、ヘッド内検査ユニット70を用いた内部吐出検査処理を行う前に、付着物検査ユニット80を用いた付着物検査処理を行うように制御するコントローラーを備えるようにした。これにより、先に内部吐出検査処理を行う場合に比べて、ドット抜け検査時間を短縮することができる。
【0096】
また、付着物検査ユニット80の検知結果から付着物が存在することを判定した場合には、ノズル面に付着した付着物を取り除くためにフラッシング動作を行い、その後、ヘッド内検査ユニット70からの検知結果を取得し、当該検知結果に基づいて、ヘッド31によるインクの吐出を回復させる回復動作を行うコントローラーを備えるようにした。これにより、先に内部吐出検査処理を行う場合に比べて、ドット抜け検査時間を短縮することができると共に、内部吐出検査で検出したドット抜けの原因を解消するべく、吐出不良の原因を考慮した適切な回復動作が行われ、無駄なインク消費を抑えることができる。
【0097】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として印刷装置(液体吐出検査装置)について記載されているが、液体吐出検査方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0098】
<印刷装置について>
上記の実施形態においては、印刷装置としてインクジェット式プリンターを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、インク以外の他の液体を吐出する印刷装置であってもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の印刷装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、印刷装置が吐出させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。印刷装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する印刷装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する印刷装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する印刷装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する印刷装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する印刷装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する印刷装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の印刷装置に本発明を適用することができる。
【0099】
また、上記の実施形態における印刷装置としては、キャリッジユニット20を備える、いわゆるシリアル走査型のプリンターであってもよいし、キャリッジユニット20を備えず、ヘッドユニット30(ヘッド31)が往復移動しない、いわゆるライン走査型のプリンターであってもよい。
【0100】
<内部センサーについて>
上記の実施形態においては、ヘッド内検査ユニット70(内部センサー)の一例として、ピエゾ素子等のアクチュエーターが振動板を振動させ、この振動板に生じる残留振動の周波数特性(振動パターン)の変化を検知するもの(図6及び図7)を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、振動板に限らず、ピエゾ素子等のアクチュエーター自体の振動から残留振動の周波数特性の変化を検知してもよい。
また、内部センサーは、ヘッド31の内部におけるインクの状態を検査できればよく、内部センサーとして、駆動信号COMが印加されるピエゾ素子PZTからの信号がヘッド内検査ユニット70に入力されてもよいし、内部センサーとして、駆動信号COMが印加されないピエゾ素子PZTからの信号がヘッド内検査ユニット70に入力されてもよいし、内部センサーとして、ピエゾ素子PZT以外のセンサーを用いてもよい。
【0101】
<付着物検知センサーについて>
上記の実施形態においては、付着物検査ユニット80(付着物検知センサー)の一例として、検出用電極に生じる電気的な変化を検知するもの(図8A及び図8B参照)を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
たとえば、撮像装置(カメラ等)を付着物検知センサーとして用いてもよい。具体的には、付着物検査時に、カメラをノズル面に対向させて配置し、カメラでノズル面を撮像する。そして、カメラで撮像した撮像データと予め記録した基準画像データとを比較することにより、ノズル面に付着した付着物を検出するようにしてもよい。
【0102】
このように、撮像装置(カメラ等)を付着物検知センサーとして用いた場合にも、内部センサーを用いた内部吐出検査処理と、付着物検知センサーを用いた付着物検査処理と、を同時に行わないように制御することにより、センサー同士の干渉を避けることができる点で有効となる。仮に、各検査を同時に行えば、ノズル面とカメラが対向して配置されるため、内部吐出検査で吐出されたインクがカメラに向かって飛行することになり、付着物検査ではそのインクが邪魔になってノズル面をカメラで撮像することができなくなる。これに対し、各検査を同時に行わないように制御すれば、お互いに影響なく各検査を行うことができる。
【0103】
<ドット抜け検出動作>
上記の実施形態においては、印刷処理を行っていない所定のタイミングでドット抜け検出動作を行う場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、たとえば、印刷処理を行っている最中にドット抜け検出動作を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 プリンター、 10 搬送ユニット、
20 キャリッジユニット、 21 キャリッジ、
30 ヘッドユニット、 31 ヘッド、
32 ケース、 33 流路ユニット、
33a 流路形成基板、 33b ノズルプレート、
331 圧力室、 332 インク供給路、
333 共通インク室、 334 ダイヤフラム部、
335 島部、 34 ピエゾ素子ユニット、
341 ピエゾ素子群、 342 固定板、
40 駆動信号生成部、 50 インク吸引ユニット、
51 キャップ、 511 側壁部、
512 保湿部材、 513 検出用電極、
52 スライダー部材、 53 当接部、
54 長穴、 55 ワイピングユニット、
56 ワイパー、 58 廃液チューブ、
60 フラッシングユニット、 70 ヘッド内検査ユニット、
701 増幅部、 701a オペアンプ、
701b コンパレーター、 702 パルス幅検出部、
80 付着物検査ユニット、 81 高電圧ユニット、
82 第一制限抵抗、 83 第二制限抵抗、
84 検出用コンデンサー、 85 増幅器、
86 平滑コンデンサー、 87 検出制御部、
90 検出器群、 100 コントローラー、
CP コンピューター、 Nz ノズル、 PZT ピエゾ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部の液体状態に基づいて液体の吐出不良を検知する内部センサーと、
前記ヘッドに設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検知センサーと、
を有することを特徴とする液体吐出検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出検査装置であって、
前記内部センサーを用いた内部吐出検査処理と、前記付着物検知センサーを用いた付着物検査処理と、を同時に行わないことを特徴とする液体吐出検査装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体吐出検査装置であって、
前記内部センサーを用いた内部吐出検査処理を行う前に、前記付着物検知センサーを用いた付着物検査処理を行うことを特徴とする液体吐出検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液体吐出検査装置であって、
前記付着物検知センサーの検知結果から付着物が存在することを判定した場合には、前記ノズル面に付着した付着物を取り除く回復動作を行い、
前記ノズル面に付着した付着物を取り除く回復動作の後、前記内部センサーの検知結果を取得し、当該検知結果に基づいて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復動作を行うことを特徴とする液体吐出検査装置。
【請求項5】
液体吐出検査装置を用いる液体吐出検査方法であって、
前記液体吐出検査装置は、媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部の液体状態に基づいて液体の吐出不良を検知する内部センサーと、前記ヘッドに設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検知センサーと、コントローラーと、を有し、
前記コントローラーにより、前記内部センサーを用いた内部吐出検査処理を行い、
前記コントローラーにより、前記付着物検知センサーを用いた付着物検査処理を行う、
液体吐出検査方法。
【請求項6】
媒体に対して液体を吐出して印刷を行うヘッドと、
前記ヘッドの内部の液体状態に基づいて液体の吐出不良を検知する内部センサーと、
前記ヘッドに設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検知センサーと、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部の液体状態に基づいて液体の吐出不良を検知する内部センサーと、前記ヘッドに設けられたノズル面に付着した付着物を検知する付着物検知センサーと、コントローラーと、を有する液体吐出検査装置に、
前記内部センサーを用いた内部吐出検査処理、及び、前記付着物検知センサーを用いた付着物検査処理を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−111769(P2013−111769A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257170(P2011−257170)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】