説明

液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法

【課題】ヘッド内流路がポンプ効果による圧力変動の影響を直接受ける構成でも、吐出精度の低下や無駄な吐出量増加を抑制できるヘッド内圧力の調整方法を提案すること。
【解決手段】インクジェットプリンター1の記憶部に、印刷動作時のキャリッジ14およびインクジェットヘッド13の1回の往復移動に伴ってインクジェットヘッド13に流れ込むインクの移動量(単位移動量ΔF)を記憶させておく。印刷ジョブ実行時に、この印刷ジョブにおけるキャリッジ14の往復移動回数Nに単位移動量ΔFを乗じた値から、この印刷ジョブにおける総インク吐出量Qを減じて、今回の印刷ジョブによる新たなヘッド側インク蓄積量ΔVを算出する。次回の印刷ジョブまでに行う休止時フラッシングや吐出開始前フラッシングの実行時に、予定されている吐出内容に追加して、蓄積した分のインクを吐出する排出フラッシングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復移動するキャリッジに搭載したヘッドに可撓性チューブからインクなどの液体を供給しており、この可撓性チューブのポンプ効果によりヘッドの内圧上昇が発生する構造の液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
往復運動するキャリッジに搭載した液体吐出ヘッドに可撓性チューブを接続して、この可撓性チューブを経由してヘッドにインクなどの液体を供給する構造では、キャリッジが加減速する時に可撓性チューブ内の液体が慣性によって移動するポンプ効果が発生する。従来、このような構造のインクジェットプリンターでは、ポンプ効果によるヘッド内圧力の変動を防止するために、インク供給流路に自己封止弁や圧力ダンパーなどのヘッド内圧力調整機構を設けている。
【0003】
ここで、コストダウンなどのために自己封止弁や圧力ダンパーを廃止した場合には、ヘッドがポンプ効果によるインク供給流路の圧力変動の影響を直接受けることとなり、ヘッド内圧力が過度に上昇してしまう場合がある。特に、自己封止弁や圧力ダンパーを廃止してインク供給流路に逆止弁のみを設けた構成にした場合には、ポンプ効果によるインクの移動はヘッド側に向かう一方向のみとなってヘッド内圧力が上昇し続けてしまうため、過度な内圧上昇が発生しやすくなる。ヘッド内圧力が過度に上昇した状態でヘッドに設けたノズルからインクを吐出すると、各ドットのインク液滴量が通常のヘッド内圧力のときに吐出されるものよりも多くなり、吐出精度が低下して印刷品質が低下してしまう。また、インクの吸引によるノズルクリーニングやフラッシング(インクの空吐出)などのメンテナンス動作の際に通常のヘッド内圧力のときよりも多くのインクを吐出あるいは吸引してしまうため、無駄なインク消費が多くなってしまう。更に、吐出されるインク液滴量が予め設定した1ドット当たりのインク消費量よりも多くなるため、インクカートリッジのICチップに記録しているインク消費量の計測値よりも実際のインク消費量の方が多くなり、インクがないのに印刷可能としてしまうなどの不具合が生じる。
【0004】
特許文献1には、フラッシングにおけるインク吐出量の吐出条件に応じた目標値からのずれ量を把握して、インク残量の検出精度を向上させるインクジェットプリンターが記載されている。また、特許文献2には、ヘッド内圧力が適正圧力範囲外になった場合には、圧力センサーによりそのことを検出し、検出した内圧に対応する加減速パターンでキャリッジを走査することにより、ヘッド内圧力の上昇を解消してヘッド内を適正圧力に維持し、ノズルからのインク垂れなどを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−38536号公報
【特許文献2】特開2009−83387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のインクジェットプリンターは、フラッシングにおけるインク吐出量の検出精度を正確に把握できるため、インク残量の計測値と実際のインク残量との不一致による不具合を抑制できるものの、上昇したヘッド内圧力を適正圧力に戻すことはできず、印刷品質の低下などの他の不具合を抑制することはできない。
【0007】
また、特許文献2のヘッド内圧力の調整方法は、上昇したヘッド内圧力を調整して適正圧力範囲内に戻すことができるものの、キャリッジの走査プロファイルを変えるため、液体吐出動作のスループットを低下させるおそれがある。また、ヘッドに圧力センサーを設けるため、構成が複雑化するという問題点がある。
【0008】
更に、複数の色のインクをヘッドに供給する場合には、インクカートリッジ内における各色のインクパックとヘッドとの位置関係の相違によってポンプ効果による圧力変動量がインクの色ごとに異なってしまうが、特許文献2の方法では、各色ごとの圧力変動の相違を考慮した調整動作を行うことができないという問題点もある。
【0009】
本発明の課題は、この点に鑑みて、ポンプ効果による液体供給流路の圧力変動の影響によってヘッド内圧力が過度に上昇するおそれのある構成において、ヘッド内圧力の上昇を確実に解消あるいは軽減できる液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、
所定の走査方向に往復移動するキャリッジに搭載した液体吐出ヘッドに液体を供給するための可撓性流路を備える液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法であって、
前記キャリッジの往復移動に伴う前記可撓性流路内の液体の慣性移動に基づいて前記液体吐出ヘッドに蓄積する液体による前記液体吐出ヘッドの内圧上昇状態を把握し、
当該内圧上昇状態において行われる前記液体吐出ヘッドのフラッシングにおける液体の吐出内容を、当該フラッシングの実行により前記内圧上昇状態が解消あるいは軽減されるように決定することを特徴としている。
【0011】
本発明は、このように、キャリッジが往復移動するときに可撓性流路内の液体が慣性によって移動するポンプ効果が発生し、このポンプ効果によって液体が液体吐出ヘッドに流入し、これによってキャリッジの往復移動ごとに液体吐出ヘッドの内圧が上昇してしまうという構成を前提としている。このような構成において、キャリッジの往復移動に伴う内圧上昇状態を把握しておき、この内圧上昇状態が解消あるいは軽減されるようにフラッシングの吐出内容を決定して、決定どおりにフラッシングを行えば、液体吐出動作のスループットには影響を与えずに、確実に内圧上昇状態を解消あるいは軽減することが可能である。よって、コストダウンや構成の簡素化のためにヘッド内圧力が過度に上昇するおそれのある構成を採用した場合でも、制御によって、内圧上昇に伴う液体の吐出量の精度低下や、無駄な吐出量増加などを抑制できる。また、液体の吐出ドット数などに基づいて計測している液体カートリッジ内の残量計測値が実際の残量よりも多くなってしまうことによる不具合を抑制できる。
【0012】
本発明において、前記キャリッジの1回の往復移動に伴う前記可撓性流路内の液体の慣性移動に基づいて前記液体吐出ヘッドに流入する単位液体移動量を予め設定しておき、前記キャリッジの往復移動回数に前記単位液体移動量を乗じた値から、前記液体吐出ヘッドのノズルからの液体の吐出量を減算して、前記液体吐出ヘッドへの液体の蓄積量を算出し、当該蓄積量に基づいて、当該蓄積量の算出後に行われる前記液体吐出ヘッドのフラッシングにおける液体の吐出内容を決定することができる。液体吐出ヘッドの内圧上昇状態は液体吐出ヘッドへの液体の蓄積量に対応しているので、蓄積量に基づいて吐出内容を決定することにより、確実に内圧上昇を解消あるいは軽減できる。ここで、液体の蓄積量は、予め、キャリッジの1回の往復移動に伴って液体吐出ヘッドに流入する単位液体移動量を算出しておき、この単位液体移動量にキャリッジの往復移動回数を乗じた値から、吐出した液体量を減算することにより算出できる。このような方法により蓄積量および内圧上昇を把握すれば、液体吐出ヘッドに圧力センサーなどを設ける必要がないので、構成が複雑化することがなく、装置コストを低廉にすることができる。
【0013】
ここで、本発明において、予め設定した算出タイミング毎に前記蓄積量を算出し、各算出タイミング後の予め設定したフラッシングの実行タイミングにおいて、予定されていた吐出内容の通常フラッシングに追加して、算出した前記蓄積量分の液体を吐出する排出フラッシングを行うことができる。このように、蓄積量分を排出する排出フラッシングを追加で行うことにより、蓄積量分を確実に排出でき、内圧上昇状態を確実に解消できる。また、予定されていた通常フラッシングのタイミングにおいて追加で排出フラッシングを行うので、排出フラッシングのために液体吐出ヘッドのホームポジションへの復帰動作や液体吐出ヘッドのキャッピング動作などを別途行う必要がない。よって、キャリッジやヘッドメンテナンスユニットの動作制御が複雑化しない。
【0014】
あるいは、予め設定した算出タイミング毎に前記蓄積量を算出して、当該蓄積量と予め設定した閾値との比較判定を行い、前記蓄積量が前記閾値よりも大きい場合に、当該蓄積量の算出後の予め設定したフラッシングの実行タイミングにおいて、予定されていた吐出内容の通常フラッシングに追加して、算出した前記蓄積量から予め設定した規定値を減じた量の液体を吐出する排出フラッシングを行うことができる。このように、閾値を設定しておいて閾値との比較判定によって排出フラッシングを行うか否かを決定すれば、内圧上昇量が小さいときには排出フラッシングを行わないようにすることができる。よって、排出フラッシングの実行頻度を少なくしてスループットの低下を抑制できる。
【0015】
このとき、前記閾値を、前記蓄積量が前記閾値以下であれば、前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出精度が許容範囲内となる値に設定することが望ましい。このようにすれば、吐出精度への影響が許容範囲を越えるときのみ排出フラッシングを行うことになるので、吐出精度への影響を許容範囲内に維持しつつ、排出フラッシングの実行頻度を必要最小限にすることができる。
【0016】
また、前記蓄積量が前記閾値以下であった場合には、当該蓄積量を記憶しておき、次の前記算出タイミングにおいて、記憶している前記蓄積量に、前回の算出タイミングから今回の算出タイミングまでの間に前記液体吐出ヘッドに流入した液体量を加算した累積蓄積量を算出して、当該累積蓄積量と前記閾値との比較判定を行い、前記累積蓄積量が前記閾値よりも大きい場合にのみ、前記累積蓄積量の算出後の前記予め設定したフラッシングの実行タイミングにおいて、予定されていた吐出内容の通常フラッシングに追加して、算出した前記累積蓄積量から前記規定値を減じた量の液体を吐出する排出フラッシングを行うこともできる。このようにすると、蓄積量を算出タイミング毎に累積して、閾値を越えたタイミングのときにのみ排出フラッシングを行うことができる。よって、排出フラッシングの実行頻度を必要最小限にしつつ、吐出精度への影響を許容範囲内に維持できる。
【0017】
ここで、前記予め設定したフラッシングの実行タイミングは、前記液体吐出ヘッドが待機状態のときに行う休止時フラッシング、前記待機状態から復帰するときに行う吐出開始前フラッシング、前記液体吐出ヘッドが液体吐出動作を規定量実行する毎に行う定期フラッシング、所定のタイムスケジュールに従って行うフラッシングのいずれかの実行タイミングとすることができる。休止時フラッシングにおいて排出フラッシングを行えば、排出フラッシングの実行によりスループットが低下することがない。また、吐出開始前フラッシングにおいて排出フラッシングを行えば、ノズル内の液体の増粘を効率的に解消できる。そして、定期フラッシングにおいて排出フラッシングを行えば、一回の液体吐出ジョブが長いときなどに途中で定期的に排出フラッシングを行うことができるので、液体吐出ジョブ実行中に過度に内圧が上昇しないようにすることができる。更に、予め設定したタイムスケジュールに従って排出フラッシングを行えば、長期間吐出を行わないことが想定されるときなどにも内圧を適切な範囲に維持することができる。
【0018】
本発明において、前記液体吐出ヘッドが複数のノズル群を備えており、各ノズル群が、単一の吸引用ヘッドキャップによって選択的にキャッピングされることにより、異なるタイミングでフラッシングが行われるように構成されている場合には、前記予め設定したフラッシングの実行タイミングを、各ノズル群ごとに設定することが望ましい。例えば、キャリッジ走査方向に並ぶ2つのノズル群を1つの吸引用ヘッドキャップで選択的にキャッピングしてフラッシングを行う構成では、キャリッジ走査範囲の中央側のノズル群は休止時フラッシングを行い、キャリッジ走査範囲の端側(ホームポジション側)のノズル群は吐出開始前フラッシングを行うことにより、休止状態からの復帰時のスループットを低下させないようにしている。そこで、このようなフラッシングのタイミングに合わせて、ノズル群ごとに最適なタイミングで排出フラッシングを実行することが望ましい。
【0019】
また、本発明において、前記液体吐出ヘッドは、複数種類の液体をそれぞれ別個のノズルに供給するための互いに区画された複数のヘッド内流路を備えると共に、前記可撓性流路は、前記複数のヘッド内流路に接続される複数の液体別流路を備えており、各液体別流路に前逆流防止部が設けられており、各ヘッド内流路毎に前記内圧上昇状態を把握して、当該各ヘッド内流路から液体の供給を受ける各ノズルのフラッシングにおける液体の吐出内容を、対応する前記各ヘッド内流路の前記内圧上昇状態に応じて決定することができる。このようにすれば、複数のヘッド内流路のそれぞれについての内圧上昇状態を把握して、各ヘッド内流路を流れる液体ごとにフラッシングにおける最適な吐出内容を決定できる。よって、液体の吐出量の精度低下や、無駄な吐出量増加などをより正確に抑制できる。
【0020】
このとき、前記キャリッジの1回の往復移動に伴う前記可撓性流路内の液体の慣性移動に基づいて前記液体吐出ヘッドに流入する単位液体移動量を、各ヘッド内流路ごとに予め設定しておき、各ヘッド内流路に対応する前記単位液体移動量に前記キャリッジの往復移動回数を乗じた値から、各ヘッド内流路を経由して吐出された液体の吐出量を減算して、各ヘッド内流路への液体の蓄積量を算出し、当該蓄積量の算出後に行われるフラッシングにおける各ノズルからの液体の吐出内容を、各ノズルに液体を供給している各ヘッド内流路における前記蓄積量に基づいて決定することができる。このようにすれば、各ヘッド内流路ごとにポンプ効果による圧力変動量が異なる場合においても、各ヘッド内流路の内圧をそれぞれ別個に調整できる。よって、各ヘッド内流路の内圧をそれぞれ適正な範囲に維持できる。
【0021】
本発明において、前記キャリッジは、印刷媒体が搬送される印刷位置の上方を横断する走査方向に往復移動するように構成されており、前記液体吐出ヘッドは、前記キャリッジを走査しながら前記印刷位置を向いたノズルからインクを吐出することにより前記印刷媒体への印刷動作を行うインクジェットヘッドであり、前記可撓性流路は、インクカートリッジから前記インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給チューブであり、当該インク供給チューブの上流側および下流側の少なくとも一方に逆止弁が設けられた構成のときには、前記インクジェットヘッドによる印刷ジョブの実行毎、印刷ジョブ実行中の所定枚数の印刷毎、所定時間の経過毎のいずれかのタイミングで前記インクジェットヘッドの内圧上昇状態を把握して、当該内圧上昇状態を解消あるいは軽減可能な内容のフラッシングを行うことができる。このようなタイミングで内圧上昇状態を把握してフラッシングを行えば、同一の印刷ジョブ中、あるいは同一の印刷物中での印刷品質を急激に変化させることなく、印刷品質の低下を抑制できる。また、長期間印刷を行わないことが想定されるときなどにもインクジェットヘッドの内圧を適切な範囲に維持することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、キャリッジが往復移動するときに可撓性流路内の液体が慣性によって移動するポンプ効果に起因して液体吐出ヘッドの内圧が上昇してしまう構成において、キャリッジの往復移動に伴う内圧上昇状態が解消あるいは軽減されるようにフラッシングの吐出内容を決定することにより、このフラッシングの実行によって、液体吐出動作のスループットには影響を与えずに、確実に内圧上昇状態を解消あるいは軽減することが可能である。よって、コストダウンや構成の簡素化のために液体吐出ヘッドのヘッド内圧力が過度に上昇するおそれのある構成を採用した場合でも、制御によって、内圧上昇に伴う液体の吐出量の精度低下や、無駄な吐出量増加などを抑制できる。また、液体の吐出ドット数などに基づいて計測している液体カートリッジ内の残量計測値が実際の残量よりも多くなってしまうことによる不具合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用したインクジェットプリンターの外観斜視図である。
【図2】プリンター機構部の概略斜視図である。
【図3】インクジェットプリンターのインク供給系の概略構成を示す説明図である。
【図4】キャリッジおよびインク供給系の背面図である。
【図5】ヘッドメンテナンスユニットの斜視図である。
【図6】インクジェットヘッドと吸引用ヘッドキャップおよび保湿用ヘッドキャップの動作位置を示す説明図である。
【図7】印刷ジョブ実行毎に排出フラッシングを行う制御のフローチャートである。
【図8】インクの蓄積量が閾値を越えた場合に排出フラッシングを行う制御のフローチャートである。
【図9】逆止弁を設けない構成におけるインクの慣性移動の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して、本発明の液体吐出装置の実施の形態であるインクジェットプリンターおよびその制御方法を説明する。
【0025】
(インクジェットプリンターの全体構成)
図1はインクジェットプリンターの外観斜視図である。インクジェットプリンター1(液体吐出装置)は、複数種類のカラーインクを用いてロール紙から繰り出される長尺状の記録紙にカラー印刷を行うものであり、全体として直方体形状をしたプリンターケース2を備え、このプリンターケース2の前面中央部分にはロール紙装着用の開口部3が形成されている。開口部3は上端に記録紙排出ガイド4が取り付けられた開閉蓋5によって封鎖されている。記録紙排出ガイド4とプリンターケース2の開口部3の上縁部分との間に記録紙排出口6が形成されている。不図示のロックを解除して記録紙排出ガイド4に指を掛けて手前に引くと、開閉蓋5を、図示の閉じ位置から、下端を中心として前方に倒れた開き位置まで開けることができる。
【0026】
プリンターケース2の前面における開閉蓋5の右側部分には、電源スイッチ7a、紙送りスイッチ7b、複数個の動作状態表示ランプ7cなどが配列されている。プリンターケース2の前面における開閉蓋5の左側部分には、プリンター前後方向に延びる縦長の長方形断面のインクカートリッジ装着部8の装着口8aが開口しており、このインクカートリッジ装着部8にインクカートリッジ9が装着されている。不図示のボタンを操作すると、ロックが解除されてインクカートリッジ9がばね力によって前方に押し出され、インクカートリッジ9を引き抜くことが可能となっている。
【0027】
図2はインクジェットプリンター1におけるプリンターケース2で覆われているプリンター機構部10を示す概略斜視図である。プリンター機構部10の内部中央にはロール紙収納部が形成されており、開閉蓋5を開けると、このロール紙収納部が前方に開口し、ロール紙の交換などを行うことができる。ロール紙収納部の上側には、プリンター幅方向にプラテン12が架け渡されており、このプラテン12の上側には、ノズル面を下向きにしたインクジェットヘッド13(液体吐出ヘッド)を搭載したキャリッジ14が配置されている。
【0028】
キャリッジ14は、プリンター幅方向に架け渡したキャリッジガイド軸14aに沿って、プラテン12から右側に外れた図2において実線で示すホームポジションAから、プラテン12の左側に外れた図2において想像線で示す左端位置Bまでの間を移動可能である。インクジェットプリンター1は、不図示の記録紙搬送機構によりロール紙から繰り出した記録紙をプラテン12の表面に沿って搬送し、この搬送動作と連動してキャリッジ14を走査しながら記録紙に向けてインクジェットヘッド13からインクを吐出することにより、記録紙への印刷を行う。
【0029】
(インク供給系)
図3はインクジェットプリンター1のインク供給系の概略構成を示す説明図であり、図4は図2のプリンター機構部におけるキャリッジおよびインク供給系の部分の背面図である。キャリッジ14には、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のインクのそれぞれを貯留するサブタンク15a〜15dを備えるダイヤフラムポンプユニット16が搭載されている。ダイヤフラムポンプユニット16からインクジェットヘッド13に供給されるインクは、一旦、各サブタンク15a〜15d内に貯留され、その後、図3に示すように、インクジェットヘッド13のヘッド内流路13a〜13dに供給される。各サブタンク15a〜15dとインクジェットヘッド13のヘッド内流路13a〜13dとを接続する流路部分には逆止弁19aが設けられ、各サブタンク15a〜15dからインクジェットヘッド13側へ向かう一方向にのみインクが流れるように構成されている。
【0030】
各サブタンク15a〜15dには、可撓性インクチューブ17a〜17d(可撓性流路)の一端がそれぞれジョイント流路を介して接続されている。ダイヤフラムポンプユニット16は、各サブタンク15a〜15dの上部に揺動可能に取り付けられた吸引用レバーを備えている。各吸引用レバーは、その一端がダイヤフラムポンプユニット16のホームポジション側に設けられており、もう一端がバネを介して各サブタンク15a〜15dのダイヤフラムに連結されている。ダイヤフラムポンプユニット16が図2に示すホームポジションAに戻ると、各吸引用レバーがプリンターケース2の内壁面によって一端が押圧されて揺動し、これに伴って各吸引用レバーのもう一端に連結されたダイヤフラムが作動して各サブタンク15a〜15dに負圧が形成される。この負圧により、可撓性インクチューブ17a〜17d側から各サブタンク内にインクが吸引される構成となっている。
【0031】
一方、可撓性インクチューブ17a〜17dの他端は、インクカートリッジ装着部8の後端側の位置に配置されている平面流路18の上端部分に接続されている。図3に示すように、平面流路18は上下方向に延びる4本のインク供給路18a〜18dを備えており、各インク供給路18a〜18dの上端に、それぞれ可撓性インクチューブ17a〜17dが接続されている。各インク供給路18a〜18dにはチョーク弁機構19bが設けられ、クリーニング時に各インク供給路18a〜18dを閉鎖可能となっている。また、チョーク弁機構19bの上流側に逆止弁19c(逆流防止部)が設けられ、インクカートリッジ9から可撓性インクチューブ17a〜17d側へ向かう一方向にのみインクが流れるように構成されている。
【0032】
平面流路18の下端部分はインクカートリッジ装着部8まで延びており、インクカートリッジ装着部8に装着されたインクカートリッジ9の後端面と対峙する部分に、各インク供給路18a〜18dとインクカートリッジ9との接続用の4本のインク供給針が上下に配列されて突出している。インクカートリッジ9は全体として前後方向および上下方向に長い扁平な直方体形状をしており、この内部に、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4種類のインクパック9a〜9d(図4参照)が、この順で下から上に並んで収納されている。インクカートリッジ9をインクカートリッジ装着部8の装着位置に差し込むと、インクパック9a〜9dに各インク供給針が接続される。これにより、各インクパックから各インク供給針を経由してインクジェットヘッド13の側に各カラーインクを供給する4系統のインク供給経路が形成される。インクカートリッジ9は、図示しない加圧機構からの圧縮空気の供給によって内部が加圧され、この加圧によって各インクパック9a〜9dに貯留されているインクがインク供給路18a〜18d側に送り出される。
【0033】
(ヘッドメンテナンスユニット)
プラテン12の右側に外れた部位には、ヘッドメンテナンスユニット20が配置されている。図5はヘッドメンテナンスユニット20を取り出して示す斜視図である。ヘッドメンテナンスユニット20は、全体としてプリンター前後方向に細長い直方体形状をしたユニットケース21を備えている。このユニットケース21の前側部分の上端には吸引用ヘッドキャップ22および保湿用ヘッドキャップ23を備えたヘッドキャップユニット24が配置されている。吸引用ヘッドキャップ22および保湿用ヘッドキャップ23は、プリンター幅方向すなわちキャリッジ走査方向に隣接配置されており、それぞれ上方に開口している。ヘッドキャップユニット24の下側には、これらを昇降させるヘッドキャップ昇降機構(図示せず)が組み込まれている。
【0034】
図6(a)〜(d)は、プリンター前面側から見たインクジェットヘッド13と吸引用ヘッドキャップ22および保湿用ヘッドキャップ23の動作位置を示す説明図である。本実施形態では、2つのヘッドキャップのうちの吸引用ヘッドキャップ22をプリンター幅方向(キャリッジ走査方向)の中央寄りに配置し、保湿用ヘッドキャップ23をプリンター幅方向の端寄り(ホームポジション寄り)に配置している。インクジェットヘッド13は、プリンター前後方向に延びる平行な一対のノズル群13A、13Bを備えている。
【0035】
ヘッドキャップユニット24は、図6(a)に示すように、印刷動作中などにおいてキャリッジ14がホームポジションAから離れているときには、インクジェットヘッド13のノズル面の高さ位置よりも下方に退避した退避位置Cにある。キャリッジ14がホームポジションAに戻ると、図6(b)に示すように、当該キャリッジ14に搭載されているインクジェットヘッド13のノズル群13A、13Bの各ノズル面が、吸引用ヘッドキャップ22、保湿用ヘッドキャップ23に対してそれぞれ上側から対峙した状態になる。この状態において、吸引用ヘッドキャップ22および保湿用ヘッドキャップ23を退避位置Cから上昇させることにより、図6(c)に示すように、インクジェットヘッド13のノズル群13A、13Bの各ノズル面を吸引用ヘッドキャップ22および保湿用ヘッドキャップ23によってそれぞれ下側からキャッピングしたキャッピング位置Dにヘッドキャップユニット24が位置決めされる。この状態では、ノズル群13A、13Bが両方ともキャッピングされているため、乾燥によるノズル内のインクの増粘を抑制した状態でインクジェットヘッド13を待機させておくことができる。
【0036】
ユニットケース21におけるヘッドキャップ昇降機構の後側の部分には、チューブポンプ(図示せず)およびチューブポンプ駆動用のモーター(図示せず)が組み込まれている。図6(c)のキャッピング位置Dにおいて、ノズル群13Aのノズル面に吸引用ヘッドキャップ22をキャッピングした状態でチューブポンプを駆動することにより、吸引用ヘッドキャップ22によって形成した密閉空間に負圧を形成し、ノズル群13Aの各インクノズルからインクを吸引してノズルクリーニングを行うことができる。また、ノズル群13Aのノズル面に吸引用ヘッドキャップ22をキャッピングした状態で各インクノズルからインクを吐出して、フラッシングを行うことができる。吸引あるいは吐出された廃インク液は、廃インクチューブ25を通ってインクカートリッジ装着部8に装着されているインクカートリッジ9内の廃インク収納部に回収される。
【0037】
保湿用ヘッドキャップ23にはチューブポンプおよび廃インクチューブ25が接続されていない。そこで、ノズル群13Bのノズルクリーニングあるいはフラッシングを行うときには、図6(d)に示すように、キャリッジ14をホームポジションAからプラテン12側にノズル群13A、13Bの間隔分だけ移動させたメンテナンス位置Eに位置決めして、ノズル群13Bを吸引用ヘッドキャップ22に対峙させる。そして、ヘッドキャップユニット24をキャッピング位置Dに移動させ、ノズル群13Bの各ノズル面を吸引用ヘッドキャップ22によって下側からキャッピングする。これにより、ノズル群13Bのノズルクリーニングあるいはフラッシングを行うことができる。
【0038】
(ポンプ効果による内圧上昇を解消あるいは軽減する制御方法)
上記構成では、インクジェットヘッド13を搭載したキャリッジ14の往復移動に伴い、可撓性インクチューブ17a〜17dの下流端側の部分が、図2に示すホームポジションAから左端位置Bまでの範囲でプリンター幅方向に往復移動し、このとき、可撓性インクチューブ17a〜17d内のインクが慣性移動する。ここで、インクが可撓性インクチューブ17a〜17dの下流側(インクジェットヘッド13側)に慣性移動するとき、すなわちキャリッジ14がホームポジションから離れる方向に移動しながら加速するか、もしくはキャリッジ14がホームポジションに戻る方向に移動しながら減速するときには、インクの移動によって可撓性インクチューブ17a〜17dの上流側が負圧となり、インクカートリッジ9から新たにインクが吸引されて逆止弁19cを通過する。このとき逆止弁19cを通過したインクは、逆向きの加減速によってインクが可撓性インクチューブ17a〜17dの上流側(インクカートリッジ9側)に慣性移動しても、逆止弁19cを通過してインクカートリッジ9側に戻ることはできない。つまり、インクジェットプリンター1は、キャリッジ14の往復移動が行われる毎に、ポンプ効果によってインクが所定量ずつ逆止弁19cを通過してその下流側に蓄積される。そして、このインクの流れに伴ってヘッド内流路13a〜13dに流入したインクが逆止弁19aによってヘッド内流路13a〜13dに蓄積され、ヘッド内流路13a〜13dの内圧が上昇する構造となっている。
【0039】
本実施形態では、印刷動作時のキャリッジ14およびインクジェットヘッド13の往復移動に伴うこのような内圧上昇を考慮して、予め設定したフラッシング実行タイミングにおいて、通常行うフラッシングに加えて、内圧上昇を解消あるいは軽減できる量のインクを吐出する排出フラッシングを行う。これにより、ポンプ効果によって蓄積したインクを外部に排出して、ヘッド内圧力を適正範囲に維持するようにしている。
【0040】
(制御1:印刷ジョブ毎に排出フラッシングを行う制御)
図7は、印刷ジョブ実行毎に、ポンプ効果による内圧上昇を解消するための排出フラッシングを行う制御のフローチャートである。インクジェットプリンター1の制御部は、各印刷ジョブを実行するための印刷データを受信する毎にこのフローチャートの処理を行って、予め設定したタイミングで排出フラッシングを実行する。本実施形態では、圧力センサーを用いずに内圧上昇を把握するために、予め、キャリッジ14の1回の往復移動に伴ってインクジェットヘッド13に流入するインクの移動量である単位移動量ΔF(単位液体移動量)を実験や計算などによって算出しておき、インクジェットプリンター1の記憶部に記憶させておく。
【0041】
まず、ステップS1において、今回の印刷ジョブに起因するインクジェットヘッド13へのインクの蓄積量を算出する。具体的には、インクジェットプリンター1の記憶部から予め記憶させておいた単位移動量ΔFを読み出す。これと共に、受信した印刷データの内容から、今回の印刷ジョブにおけるキャリッジ14の往復移動回数Nと、今回の印刷ジョブによる総インク吐出量Qを把握する。総インク吐出量Qは、印刷に関与するインク吐出量だけでなく、印刷ジョブ実行中の印刷に関与しないインク吐出量(例えば、フラッシングを印刷内容に応じて適宜行う場合には、その吐出量)を加算した値とする。そして、往復移動回数Nに単位移動量ΔFを乗じて、今回の印刷ジョブの実行によってポンプ効果によりインクジェットヘッド13へ移動する総インク移動量Fを算出し、この値から総インク吐出量Qを減じて、今回の印刷ジョブによって新たにインクジェットヘッド13側に蓄積されるヘッド側インク蓄積量ΔVを算出する。このヘッド側インク蓄積量ΔVは、この印刷ジョブに起因するインクジェットヘッド13の内圧上昇量に対応した値となっている。すなわち、ヘッド側インク蓄積量ΔVに基づき、インクジェットヘッド13の内圧上昇状態を把握することができる。
【0042】
次に、ステップS2において、算出したヘッド側インク蓄積量ΔVを、次の排出フラッシングにおけるインクの吐出量として設定する。すなわち、排出フラッシングにおけるインクの吐出量を、内圧上昇を解消できる量に設定する。そして、ステップS3では、この次の予め設定したフラッシングの実行タイミングにおいて、予定している内容のフラッシングに加えて、設定した吐出量のインクを吐出する排出フラッシングを行う。ここで、予め設定したフラッシングとは、インクジェットヘッド13の内圧上昇状態とは関係なく実行が予定されているフラッシングであり、本実施形態では、休止時フラッシングもしくは吐出開始前フラッシングのいずれかの実行タイミングに設定されている。
【0043】
休止時フラッシングは、印刷ジョブ実行終了後にキャリッジ14およびインクジェットヘッド13がホームポジションAに戻って待機状態となっている間にインクジェットヘッド13の各ノズルに対して行うフラッシングである。このタイミングを排出フラッシングの実行タイミングとして設定した場合には、今回の印刷ジョブ実行後の待機状態中に、予定されている吐出内容の休止時フラッシング(通常フラッシング)に加えて、ステップS2で決定した吐出内容の排出フラッシングを行う。このようにすれば、待機状態の間に前回の印刷ジョブで蓄積されたインクを排出してインクジェットヘッド13の内圧上昇を解消できるので、次の印刷ジョブのスループットに全く影響を与えることなく、次の印刷ジョブを適正な内圧状態で開始することができる。
【0044】
また、吐出開始前フラッシングは、各印刷ジョブ実行直前に行うフラッシングである。このタイミングを排出フラッシングの実行タイミングとして設定した場合には、次の印刷ジョブの実行直前に、予定されている吐出内容の吐出開始前フラッシング(通常フラッシング)に続いて、ステップS2で決定した吐出内容の排出フラッシングを行う。このようにすれば、次回の印刷ジョブの実行直前に前回の印刷ジョブで蓄積されたインクを排出してインクジェットヘッド13の内圧上昇を解消でき、次の印刷ジョブを適正な内圧状態で開始することができる。また、印刷直前に行うフラッシングでの吐出量を増加させるので、ノズル内のインクの増粘を効果的に抑制できる。
【0045】
排出フラッシングの実行タイミングについては、インクジェットヘッド13における全てのノズルに対して同一のタイミングで行うように設定してもよいし、各ノズル群毎に、実行タイミングを別々に設定することもできる。例えば、本実施形態では、インクジェットヘッド13における2つのノズル群13A、13Bのうち、ノズル群13Aについてはインクジェットヘッド13がホームポジションAにあるときに吸引用ヘッドキャップ22によってキャッピングされ、待機状態の間に休止時フラッシングを行うように設定されている。よって、このノズル群13Aについては、休止時フラッシングの実行タイミングを排出フラッシングの実行タイミングに設定する。これにより、待機状態中に、ノズル群13Aにインクを供給しているヘッド内流路の内圧上昇を解消しておくことができる。
【0046】
一方、ノズル群13Bについては、インクジェットヘッド13がホームポジションAにあるときには保湿用ヘッドキャップ23によってキャッピングされており、待機状態から復帰して、インクジェットヘッド13がホームポジションAからプラテン12側に移動する途中に吸引用ヘッドキャップ22の上を通過する。そして、このタイミングで吸引用ヘッドキャップ22によってノズル群13Bをキャッピングして吐出開始前フラッシングを行うように設定されている。そこで、ノズル群13Bについては、この吐出開始前フラッシングの実行タイミングを排出フラッシングの実行タイミングとして設定する。これにより、次の印刷ジョブの開始直前に、ノズル群13Bにインクを供給しているヘッド内流路の内圧上昇を解消することができる。
【0047】
また、本実施形態のインクジェットプリンター1におけるインク供給系は、4色のインクを用いて印刷を行うための4系統のインク供給流路を有しており、各インク供給流路にインクを供給するインクパック9a〜9dが、インクカートリッジ9内の異なる高さの位置に収納されている。そのため、各インクパック9a〜9dからインクジェットヘッド13に至るインク供給流路の高低差がインクの色によって異なり、この高低差に応じて、ポンプ効果によるインクの移動量(単位移動量ΔF)が流路毎に異なっている。具体的には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの順で下から上に配列されている各インクパック9a〜9dからのインク供給流路における単位移動量をそれぞれΔFa〜ΔFdとすると、ΔFa<ΔFb<ΔFc<ΔFdのような大小関係となる。
【0048】
そこで、図7のフローチャートによる制御を4色のインクに対してそれぞれ別個に行うことにより、各ヘッド内流路13a〜13dへのインク蓄積量をより正確に把握し、より正確に内圧上昇状態をより正確に把握して、各色のインクをそれぞれ内圧上昇分だけ正確に吐出することができる。このような制御を行う場合には、予め、各色のインクについての単位移動量ΔFa〜ΔFdを、各インクパック9a〜9dとインクジェットヘッド13との高低差に応じてそれぞれ算出して記憶させておく。そして、ステップS1〜S2の処理をインクの色毎に行って、各ヘッド内流路13a〜13dにおける今回の印刷ジョブに起因するインクの蓄積量(ヘッド側インク蓄積量ΔVa〜ΔVd)をそれぞれ算出する。そして、算出したヘッド側インク蓄積量ΔVa〜ΔVdを、各色のインクの排出フラッシングにおける吐出量にそれぞれ設定し、ステップS3において、各ヘッド内流路13a〜13dからインクの供給を受ける各ノズル群から、各ヘッド内流路13a〜13dの内圧上昇分と一致する量のインクを吐出する。これにより、各ヘッド内流路13a〜13dの内圧をそれぞれ適正な状態にすることができる。
【0049】
(制御2:インク蓄積量が閾値を越えた場合に排出フラッシングを行う制御)
図8は、インクの蓄積量が閾値を越えた場合に排出フラッシングを行う制御のフローチャートである。上記制御1では、印刷ジョブ毎に必ず排出フラッシングを行うので、内圧上昇による印刷品質の低下や無駄なインク消費量増加などが許容範囲内であっても排出フラッシングが行われる。制御2は、インク蓄積量と閾値との比較判定を行うことにより、印刷品質やインク消費量などへの影響が許容範囲内のときには排出フラッシングを行わないようにして、排出フラッシングの実行頻度を必要最小限にするものである。
【0050】
制御2は、各印刷ジョブを実行するための印刷データを受信する毎に行われる。まず、ステップS11において、制御1のステップS1と同様にして、今回の印刷ジョブにおけるヘッド側インク蓄積量ΔVを算出する。そして、この値を、前回の印刷ジョブの実行時に算出して記憶させておいた累積インク蓄積量Vに加算することにより、累積インク蓄積量Vを更新する。ここで、累積インク蓄積量Vは、このインクカートリッジ9の装着時点からの印刷ジョブ実行毎に、各印刷ジョブによるヘッド側インク蓄積量ΔV(総液体蓄積量)を算出して、これを累積した値である。累積インク蓄積量Vを算出するにあたっては、排出フラッシングを行った場合には、排出フラッシングにおけるインクの吐出量を累積インク蓄積量Vから減算しておく。これにより、累積インク蓄積量Vは、今回の印刷ジョブ終了時点におけるインクジェットヘッド13の内圧に対応した値となる。
【0051】
続いて、ステップS12において、算出した累積インク蓄積量Vと予め設定した閾値V0との比較判定を行う。閾値V0は、累積インク蓄積量Vがこのレベル以下なら、インクの蓄積に伴う内圧上昇の影響が、印刷品質やインク消費量などの観点で許容範囲内となるレベルに設定されている。この比較判定において累積インク蓄積量Vが閾値V0以下であった場合には(ステップS12:No)、排出フラッシングは不要と判断して、処理を終了する。一方、累積インク蓄積量Vが閾値V0よりも大きかった場合には(ステップS12:Yes)、ステップS13に進む。
【0052】
ステップS13では、累積インク蓄積量Vから予め設定した規定量V1を減じた値を、次の排出フラッシングにおけるインクの吐出量として設定する。この規定量V1は、閾値V0よりも小さい値に適宜設定されている。すなわち、制御2では、排出フラッシングにおけるインクの吐出量を、印刷品質に許容範囲を越えるような影響が出ない程度に内圧上昇を軽減できるように設定している。なお、規定量V1を設定せず、累積インク蓄積量Vを次の排出フラッシングにおけるインクの吐出量として設定して、蓄積分のインクを全て排出フラッシングで吐出するようにしてもよい。
【0053】
続いて、ステップS14では、制御1のステップS3と同様に、休止時フラッシングもしくは吐出開始前フラッシングなどの予め設定したフラッシングの実行タイミングにおいて、予定していた内容の通常フラッシングに追加して、設定した吐出量のインクを吐出する排出フラッシングを行う。なお、制御2においても、制御1と同様に、排出フラッシングの実行タイミングをノズル群毎に異なるタイミングに設定することができる。また、ヘッド内流路13a〜13dとインクパック9a〜9bとの位置関係に応じて単位移動量ΔFa〜ΔFdを設定しておき、インクの色毎に累積インク蓄積量Va〜Vdを算出して、排出フラッシングの実行の有無および排出フラッシングにおける吐出量を設定することができる。
【0054】
以上のように、上記制御1および制御2では、キャリッジが往復移動するときに可撓性インクチューブ17a〜17d内の液体が慣性によって移動するポンプ効果に起因してヘッド内流路13a〜13dに蓄積したインクを排出フラッシングにより吐出して、内圧を適正範囲内に維持できるので、インクの吐出量の精度低下による印刷品質の低下や、無駄な吐出量増加などを抑制できる。また、これにより、吐出されるインクのドット重量をほぼ規定量どおりにすることができるので、インクの吐出ドット数などに基づいて計測され記録されているインクカートリッジ9内のインク残量計測値が実際の残量と大幅に異なってしまうことを抑制でき、インクエンドであるのに印刷可としてしまうなどの不具合を抑制できる。よって、印刷品質の低下や無駄なインク消費の増加を抑制しつつ、自己封止弁や圧力ダンパーの廃止などによるインクジェットプリンター1の構成の簡素化およびコストダウンを図ることができる。
【0055】
(改変例)
(1)上記各制御では、印刷データの受信時に、印刷データの内容に基づいて今回の印刷ジョブにおけるヘッド側インク蓄積量ΔVを算出して、印刷ジョブ実行後の排出フラッシングの実行の有無あるいは排出フラッシングにおけるインクの吐出量を決定しているが、各印刷ジョブの実行直後にヘッド側インク蓄積量ΔVを算出してもよい。この場合には、インクカートリッジ9内のインク残量を記録しているICチップ(CSIC)からインク残量を読み取って、総インク吐出量Qを算出することもできる。
【0056】
(2)上記各制御では、印刷ジョブ実行毎に排出フラッシングを行うか、あるいは印刷ジョブ実行毎に排出フラッシングの実行の有無を決定しており、排出フラッシングを休止時フラッシングもしくは吐出開始前フラッシングの実行と共に行うようにしていたが、1回の印刷ジョブにおける印刷量が多い場合には、所定量の印刷動作を行う毎、例えば、印刷物を所定枚数印刷する毎に定期フラッシングを行うようにして、この定期フラッシングの実行タイミングにおいて、予定した内容の定期フラッシング(通常フラッシング)に加えて、排出フラッシングを行うようにしてもよい。この場合には、所定量の印刷毎にヘッド側インク蓄積量ΔVを算出して、排出フラッシングにおけるインク吐出量を決定するとよい。また、所定のタイムスケジュールに従ってフラッシングを行うように設定されている場合、例えば、毎日一定の時間にフラッシングを含むメンテナンス処理などを実行するように設定されている場合には、このフラッシングのタイミングに合わせて1日の印刷ジョブによるヘッド側インク蓄積量ΔVを算出し、メンテナンス処理におけるフラッシング(通常フラッシング)の実行時に、蓄積された分のインクを排出する排出フラッシングを行うことができる。
【0057】
(3)ポンプ効果による単位移動量ΔF(ΔFa〜ΔFd)は、インクの流入先であるヘッド内流路13a〜13dの内圧に応じて変化する。そこで、このことを考慮して、上記各制御において、単位移動量ΔFa〜ΔFdとヘッド内流路13a〜13dの内圧Pa〜Pdとの対応テーブルを予め作成しておき、印刷データ受信時には、その時点での各ヘッド内流路13a〜13dの内圧Pa〜Pdに応じた単位移動量ΔFa〜ΔFdをテーブルから読み出して、ヘッド側インク蓄積量ΔVa〜ΔVdを算出することができる。このようにすれば、より正確にインク蓄積量を算出できる。なお、各ヘッド内流路13a〜13dの内圧Pa〜Pdについては、各ヘッド内流路13a〜13dにおける累積インク蓄積量Va〜Vdに基づき、この値に対応する内圧上昇量ΔPa〜ΔPdを算出することができるので、算出した内圧上昇量ΔPa〜ΔPdをインク蓄積量がゼロのときの基準内圧に加算することにより、算出することができる。このとき、温度変化による内圧変動を把握して内圧Pa〜Pdを補正してもよい。
【0058】
(逆止弁を設けない実施形態)
上記実施形態は、ダイヤフラムポンプユニット16によって強制的に加圧、減圧させる機構を備えているため、可撓性インクチューブ17a〜17dの上流側および下流側に逆止弁19c、19aを設けることを前提としていたが、上記実施形態の制御方法は、ダイヤフラムポンプユニット16および逆止弁19a、19cを備えていない構成においても有効である。ダイヤフラムポンプユニット16および逆止弁19a、19cは、インクが少なくなってもインク供給流路が大きな負圧とならない場合などに省略することができる。以下、ダイヤフラムポンプユニット16を備えておらず、且つ、可撓性インクチューブ17a〜17dの上流側および下流側に逆止弁19c、19aを設けておらず、他の部分は上記実施形態のインクジェットプリンター1と同様に構成された実施形態について説明する。
【0059】
図9(a)〜(d)は、本実施形態の構成におけるインクの慣性移動の説明図である。この構成のインク供給系においては、インクジェットヘッド13から平面流路18に至るインク供給流路内を流れるインクのうち、キャリッジ14の加速あるいは減速によって慣性移動するインクは、可撓性インクチューブ17a〜17dにおける湾曲状態となった部分よりも下流側(湾曲部分からインクジェットヘッド13までの流路部分)を流れているインクである。
【0060】
図9(a)に示すように、キャリッジ14がホームポジションAから離れて左端位置Bに向かって加速するときには、可撓性インクチューブ17a〜17dの下流寄りの部分が湾曲状態となっている。つまり、このときは、湾曲状態の部分からインクジェットヘッド13に至る流路部分が最も短くなっているため、慣性移動するインク量が最も少なく、インクジェットヘッド13側の流路がそれほど大きな負圧にならない。よって、このときは、流路内の負圧によってインクジェットヘッド13のノズル内に形成されたメニスカスが破壊されることがなく、ノズルの先端側から外気が吸引されない。そのため、インクジェットヘッド13内から上流側へのインクの逆流量は少ない。
【0061】
次に、図9(b)に示すように、キャリッジ14が左端位置Bの直前において減速されるときには、可撓性インクチューブ17a〜17dの上流寄りの部分が湾曲状態となっている。このときは、湾曲状態の部分からインクジェットヘッド13に至る流路部分がキャリッジ14の移動幅分だけ長く、慣性移動するインク量が最も多い。よって、このときには、慣性移動によってインクジェットヘッド13に多くの量のインクが流入する。
【0062】
続いて、図9(c)に示すように、左端位置Bにいるキャリッジ14がホームポジションA側に移動するために加速されるときには、可撓性インクチューブ17a〜17dの湾曲状態は図9(b)の場合と同様になっているので、慣性移動するインク量が多い。よって、このときにも、慣性移動によってインクジェットヘッド13に多くの量のインクが流入する。
【0063】
そして、図9(d)に示すように、キャリッジ14がホームポジションAの直前において減速されるときには、図9(a)の状態と同様に、可撓性インクチューブ17a〜17dにおける下流寄りの部分が湾曲状態となっており、慣性移動するインク量が最も少ない。よって、図9(a)の状態と同様に、インクジェットヘッド13内から上流側へのインクの逆流量は少ない。
【0064】
このように、本実施形態では、慣性移動によってインクジェットヘッド13内へ流入するインクは逆流するインクよりも多い。すなわち、逆止弁19a、19cが設けられていない場合においても、キャリッジ14の往復移動に伴って徐々にヘッド内圧力が上昇する。よって、この構成においても、排出フラッシングにより内圧上昇分のインクを吐出する本発明の制御が、ヘッド内圧力を適正範囲に維持するために有効である。
【0065】
なお、可撓性インクチューブ17a〜17dの上流側と下流側のどちらか一方に逆止弁を設ける場合には、上流側に設けるとよい。このようにすれば、インクカートリッジ9内のインク残量がないためにインク供給流路内が負圧になった状態でインクカートリッジ9を外しても、流路内に気泡が入ることがない。
【0066】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、本発明をインクジェットプリンター1のヘッド内圧力の調整方法に適用した例であったが、本発明は、インク以外の液体を吐出する他の液体吐出装置にも適用できる。例えば、試薬溶液や液状の試料などを液体吐出ヘッドから吐出するための液体吐出装置、液状塗料や液状材料を液体吐出ヘッドから吐出して印刷により塗布するための液体吐出装置、などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…インクジェットプリンター(液体吐出装置)、2…プリンターケース、3…開口部、4…記録紙排出ガイド、5…開閉蓋、6…記録紙排出口、7a…電源スイッチ、7b…紙送りスイッチ、7c…動作状態表示ランプ、8…インクカートリッジ装着部、8a…装着口、9…インクカートリッジ、9a〜9d…インクパック、10…プリンター機構部、12…プラテン、13…インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)、13A、14B…ノズル群、13a〜13d…ヘッド内流路、14…キャリッジ、14a…キャリッジガイド軸、15a〜15d…サブタンク、16…ダイヤフラムポンプユニット、17a〜17d…可撓性インクチューブ(可撓性流路)、18…平面流路、18a〜18d…インク供給路、19a…逆止弁、19b…チョーク弁機構、19c…逆止弁(逆流防止部)、20…ヘッドメンテナンスユニット、21…ユニットケース、22…吸引用ヘッドキャップ、23…保湿用ヘッドキャップ、24…ヘッドキャップユニット、25…廃インクチューブ、A…ホームポジション、B…左端位置、C…退避位置、D…キャッピング位置、E…メンテナンス位置、F…総インク移動量、ΔF、ΔFa〜ΔFd…単位移動量(単位液体移動量)、N…往復移動回数、Q…総インク吐出量、V、Va〜Vd…累積インク蓄積量、ΔV、ΔVa〜ΔVd…ヘッド側インク蓄積量、V0…閾値、V1…規定量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走査方向に往復移動するキャリッジに搭載した液体吐出ヘッドに液体を供給するための可撓性流路を備える液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法であって、
前記キャリッジの往復移動に伴う前記可撓性流路内の液体の慣性移動に基づいて前記液体吐出ヘッドに蓄積する液体による前記液体吐出ヘッドの内圧上昇状態を把握し、
当該内圧上昇状態において行われる前記液体吐出ヘッドのフラッシングにおける液体の吐出内容を、当該フラッシングの実行により前記内圧上昇状態が解消あるいは軽減されるように決定することを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記キャリッジの1回の往復移動に伴う前記可撓性流路内の液体の慣性移動に基づいて前記液体吐出ヘッドに流入する単位液体移動量を予め設定しておき、
前記キャリッジの往復移動回数に前記単位液体移動量を乗じた値から、前記液体吐出ヘッドのノズルからの液体の吐出量を減算して、前記液体吐出ヘッドへの液体の蓄積量を算出し、
当該蓄積量に基づいて、当該蓄積量の算出後に行われる前記液体吐出ヘッドのフラッシングにおける液体の吐出内容を決定することを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。
【請求項3】
請求項2において、
予め設定した算出タイミング毎に前記蓄積量を算出し、
各算出タイミング後の予め設定したフラッシングの実行タイミングにおいて、予定されていた吐出内容の通常フラッシングに追加して、算出した前記蓄積量分の液体を吐出する排出フラッシングを行うことを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。
【請求項4】
請求項2において、
予め設定した算出タイミング毎に前記蓄積量を算出して、当該蓄積量と予め設定した閾値との比較判定を行い、
前記蓄積量が前記閾値よりも大きい場合に、当該蓄積量の算出後の予め設定したフラッシングの実行タイミングにおいて、予定されていた吐出内容の通常フラッシングに追加して、算出した前記蓄積量から予め設定した規定値を減じた量の液体を吐出する排出フラッシングを行うことを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記閾値は、前記蓄積量が前記閾値以下であれば、前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出精度が許容範囲内となる値に設定されていることを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記蓄積量が前記閾値以下であった場合には、当該蓄積量を記憶しておき、
次の前記算出タイミングにおいて、
記憶している前記蓄積量に、前回の算出タイミングから今回の算出タイミングまでの間に前記液体吐出ヘッドに流入した液体量を加算した累積蓄積量を算出して、当該累積蓄積量と前記閾値との比較判定を行い、
前記累積蓄積量が前記閾値よりも大きい場合に、前記累積蓄積量の算出後の前記予め設定したフラッシングの実行タイミングにおいて、予定されていた吐出内容の通常フラッシングに追加して、算出した前記累積蓄積量から前記規定値を減じた量の液体を吐出する排出フラッシングを行うことを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかの項において、
前記予め設定したフラッシングの実行タイミングは、前記液体吐出ヘッドが待機状態のときに行う休止時フラッシング、前記待機状態から復帰するときに行う吐出開始前フラッシング、前記液体吐出ヘッドが液体吐出動作を規定量実行する毎に行う定期フラッシング、所定のタイムスケジュールに従って行うフラッシングのいずれかの実行タイミングであることを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。
【請求項8】
請求項3ないし7のいずれかの項において、
前記液体吐出ヘッドは複数のノズル群を備えており、
各ノズル群は、単一の吸引用ヘッドキャップによって選択的にキャッピングされることにより、異なるタイミングでフラッシングが行われるように構成されており、
前記予め設定したフラッシングの実行タイミングを、各ノズル群ごとに設定することを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかの項において、
前記液体吐出ヘッドは、複数種類の液体をそれぞれ別個のノズルに供給するための互いに区画された複数のヘッド内流路を備えると共に、前記可撓性流路は、前記複数のヘッド内流路に接続される複数の液体別流路を備えており、各液体別流路に逆流防止部が設けられており、
各ヘッド内流路毎に前記内圧上昇状態を把握して、当該各ヘッド内流路から液体の供給を受ける各ノズルのフラッシングにおける液体の吐出内容を、対応する前記各ヘッド内流路の前記内圧上昇状態に応じて決定することを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記キャリッジの1回の往復移動に伴う前記可撓性流路内の液体の慣性移動に基づいて前記液体吐出ヘッドに流入する単位液体移動量を、各ヘッド内流路ごとに予め設定しておき、
各ヘッド内流路に対応する前記単位液体移動量に前記キャリッジの往復移動回数を乗じた値から、各ヘッド内流路を経由して吐出された液体の吐出量を減算して、各ヘッド内流路への液体の蓄積量を算出し、
当該蓄積量の算出後に行われるフラッシングにおける各ノズルからの液体の吐出内容を、各ノズルに液体を供給している各ヘッド内流路における前記蓄積量に基づいて決定することを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかの項において、
前記液体吐出ヘッドは、前記キャリッジを走査しながら印刷位置を向いたノズルからインクを吐出することにより印刷媒体への印刷動作を行うインクジェットヘッドであり、
前記可撓性流路は、インクカートリッジから前記インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給チューブであり、
当該インク供給チューブの上流側および下流側の少なくとも一方に逆止弁が設けられており、
前記インクジェットヘッドによる印刷ジョブの実行毎、印刷ジョブ実行中の所定枚数の印刷毎、所定時間の経過毎のいずれかのタイミングで前記インクジェットヘッドの内圧上昇状態を把握して、当該内圧上昇状態を解消あるいは軽減可能な内容のフラッシングを行うことを特徴とする液体吐出装置におけるヘッド内圧力の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−68059(P2011−68059A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222105(P2009−222105)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】