液体吐出装置
【課題】吐出時の吐出量が一定で安定的にインクを吐出することが可能な記録装置を実現すること。
【解決手段】記録ヘッドに供給する発泡液の負圧を積極的に制御して、発泡液側に適正な負圧を印加する。
【解決手段】記録ヘッドに供給する発泡液の負圧を積極的に制御して、発泡液側に適正な負圧を印加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギ等による気泡の発生によって、所望の液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置に関し、特に、気泡の発生を利用して変位する可動分離膜を有する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置に関する。
【0002】
なお、本明細書において「記録」とは、文字や図形等のように意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターン等のように意味を持たない画像を付与することをも意味するものである。
【背景技術】
【0003】
熱等のエネルギをインクに与えることで、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出して記録媒体上に付着させることで記録を行うインクジェット記録方法が知られている。このインクジェット記録方法を用いる記録装置には、インクを吐出する記録ヘッドに設けられた吐出口と、この吐出口に連通するインク流路と、インク流路内に配された吐出エネルギ発生手段としての発熱体(電気熱変換体)とが一般的に設けられている。
【0004】
このような記録方法によれば、品位の高い画像を高速、低騒音で記録することができるとともに、この記録に用いられる記録ヘッドでは、インクを吐出するための吐出口を高密度に配置することができる。そのためインクジェット記録方式を採用する記録方法は、小型の装置で高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得ることができる等の多くの優れた点を有している。このため、このインクジェット記録方法は近年、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムにまで利用されるようになってきている。
【0005】
しかし、従来のインクジェット記録方法においては、発熱体がインクに接した状態で加熱を繰り返すため、発熱体の表面にインクの焦げによる堆積物が発生する場合があった。また、吐出すべき液体が熱によって劣化しやすい液体の場合や十分な発泡が得られにくい液体の場合は、前述の発熱体による直接加熱気泡形成では、良好な吐出が行われない場合があった。
【0006】
そこで、特許文献1では、発泡液と吐出液とを分離する可撓性膜を介して、発泡液を熱エネルギによって発泡させて吐出液を吐出する方法が提案されている。特許文献1の方法における可撓性膜と発泡液との構成は、可撓性膜がノズルの一部に設けられているものである。それに対して、記録ヘッド全体を上下に分離する大きな膜を用いる構成が特許文献2に開示されている。この大きな膜は、液路を形成する2つの板材によって挟持されることによって2つの液路内の液体が互いに混合されないことを目的として設けられたものである。
【0007】
また、特許文献3には、発泡液自体に特徴を持たせ、発泡特性を考慮したものとして、吐出液よりも低沸点の液体を用いる技術が開示されており、特許文献4には、導電性を有する液体を発泡液として用いる技術が開示されている。
【0008】
更に、特許文献5、特許文献6において、液体吐出ヘッドにおける分離膜は、第1の液流路壁と第2の液流路壁に挟持されており、各ノズル当りの可動面積は液流路壁によって規制されている。すなわち、第1と第2の液流路壁は、膜の変位を規制し、液体吐出ヘッド特性に大きな影響を与えていることを開示している。
【0009】
これは結果的に吐出効率に影響を与え、膜自体の復帰メカニズムにも影響を与える。そのため、液流路壁ではなく膜自体が変位を規制し膜の変位をスムーズにすることで、常に信頼性の高い吐出性能を持ち続けることが重要となる。そして、膜を実質的に伸びない分離膜とし、その分離膜に凹部を設けることで凹部の変位量が吐出液の吐出量に相当する、すなわち吐出量が分離膜の凹部の変位量に応じることになる。そのため、凹部の変位量を規定することで供給液体の種類に関係なく安定した吐出が得られる。また、分離膜の凹部の変位量を、その凹部が最大変位時に伸縮することのないように規定すれば、分離膜の耐久性が向上することが示されている。さらには、凹部に変位のためのエネルギが付与されないときに復元力を発揮させれば、吐出液のリフィルも向上することも示されている。
【0010】
【特許文献1】特開昭55−81172号公報
【特許文献2】特開昭59−26270号公報
【特許文献3】特開平5−229122号公報
【特許文献4】特開平4−329148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし上記のような、発泡液と吐出液とを分離する凹部を設けた分離膜を介して、発泡液を熱エネルギによって発泡させて吐出液を吐出する液体吐出ヘッドでは以下の点が問題として挙げられていた。つまり、発泡液が熱エネルギによって発泡し分離膜の凹部が吐出液側に変位するが、その後の消泡あるいは変位のためのエネルギが付与されない時の分離膜の復元力は自然復帰に頼らねばならない。これは、次の発泡までに常に安定して一定の位置に戻ることが困難で有り、吐出液の吐出の不安定を招くことがあった。
【0012】
また別の観点からは、分離膜に凹部を設けても、多種多様の液体が吐出液として使用される場合、吐出口から熱などのエネルギによって吐出される液体の吐出量は、液体の種類によってばらつきが生じる。そしてこのばらつきは高粘度液体になるほど大きくなる傾向にある。そしてこれは、一度変位した分離膜が次の発泡、吐出までに常に一定の状態でないことで、吐出量のばらつきが更に大きくなる原因となっていた。
【0013】
よって本発明は、吐出時の吐出量が一定で安定的にインクを吐出することが可能な記録装置(液体吐出装置)を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのため本発明の液体吐出装置は、記録媒体に対して吐出される第1の液体が流れる第1の流路と、第2の液体が流れ、可動部を備えた分離膜によって前記第1の流路と分離された第2の流路と、を備えた記録手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えた液体吐出装置において、前記第2の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、該圧力制御手段によって、前記第1の流路内の圧力よりも前記第2の流路内の圧力を低く制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の液体吐出装置は、記録媒体に対して吐出される第1の液体が流れる第1の流路と、第2の液体が流れ、可動部を備えた分離膜によって前記第1の流路と分離された第2の流路と、を備えた記録手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えた液体吐出装置において、前記第1の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、前記第2の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、該圧力制御手段によって、前記第1の流路内の圧力よりも前記第2の流路内の圧力を低く制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第2の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、その圧力制御手段によって、第1の流路内の圧力よりも前記第2の流路内の圧力を低く制御する。これによって、吐出時の吐出量が一定で安定的にインクを吐出することが可能な記録装置(液体吐出装置)を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0018】
(基本的構成)
(画像形成システムの概要)
図1および図2は、それぞれ、本実施形態の液体吐出装置(以下、記録装置ともいう)を用いた複合プリントシステムの概要を示すブロック図および模式的斜視図である。この複合プリントシステムは、情報処理装置100および記録ユニット200からなり、記録ユニット200は、媒体搬送装置117および複数の記録装置116−1〜116−5(以下、まとめて記録装置116ともいう)を具えている。ここで、情報処理装置100は形成すべき画像データの供給源であり、1枚の画像を領域分割し、記録ユニット200に分割画像データを供給する。媒体搬送装置117は、記録装置116の記録可能な範囲に対応した幅方向のサイズを有する記録媒体206(図2参照)を搬送し、その記録媒体206の端部(紙端)を検出して、記録装置116が記録開始位置を規定するための信号を出力する。
【0019】
各記録ユニット200は、情報処理装置100から供給された分割画像データに基づき、媒体搬送装置117により規定されるタイミングにて、担当する記録領域に対し、それぞれ独立して記録動作(記録動作)を実行する。各記録ユニットには、記録媒体206に対してフルカラー記録を行うべく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の三原色にブラック(K)のインクをそれぞれ吐出するための記録ヘッドが搭載されている。各記録ヘッドに対しては、インク供給源であるインクタンク2203Y、2203M、2203Cおよび2203Kからそれぞれの色のインクが供給され、同様に、発泡液供給源である発泡液タンク203Y、203M、203C、203Kから発泡液が供給される。
【0020】
図1において、CPU101は、情報処理装置100全般のシステム制御を掌る中央演算処理装置である。情報処理装置100においてCPU101は、画像データの生成や編集を行うアプリケーションプログラム、画像分割プログラム、複数の記録ユニットの制御プログラム、および後述する媒体搬送装置117の制御プログラム等が規定する処理を実行する。
【0021】
CPU101のシステムバスは、階層的なバス構成を有し、例えばホスト/PCIブリッジ102を介してローカルバスとしてのPCIバスに接続され、さらにPCI/ISAブリッジ105を介してISAバスと接続されて、各バス上の機器と接続される。
【0022】
メインメモリ103は、オペレーティングシステム(OS)、アプリケーションプログラムおよび制御プログラムの一時的記憶領域が設けられるRAMであり、さらに各プログラム実行のための作業用メモリ領域としても用いられる。これらのプログラムは、例えばハードディスクドライブHDD104から読み出されてロードされるものである。なお、システムバスにはキャッシュメモリ120と呼ぶSRAMを使用した高速のメモリをもち、メインCPU101が常時アクセスするようなコードおよびデータはここに保存される。
【0023】
ROM112は、入出力回路(不図示)を介して接続されるキーボード114、マウス115、CDD111およびFDD110等の入出力機器を制御するプログラム、システムのパワーON時の初期化プログラム、および自己診断プログラム等を格納する。EEPROM113は、恒久的に利用する各種のパラメータを記憶させるための不揮発性のメモリである。
【0024】
記録装置116との通信インタフェース109はPCIバスに接続されており、使用可能なインタフェースとしては、例えばIEEE1284の標準に準拠した双方向セントロニクスインターフェース、USB、ハブ接続等がある。図1では、通信インタフェース109を介してハブ140が接続され、さらにこのハブ140が記録装置116および媒体搬送装置117のそれぞれに接続された構成が示されている。また、本実施形態では有線タイプの通信インタフェース109を使用しているが、無線LAN等の通信インタフェースが用いられるものでもよい。
【0025】
再び図2を参照するに、情報処理装置100と複数の記録装置116および搬送装置117とはハブ140を介して接続され、記録データ、動作開始および終了コマンド等の転送を行う。また、記録装置116の各々と搬送装置117との間も信号接続され、記録媒体206の先端検出ないし記録先頭位置の設定や、媒体搬送速度と各記録装置116における記録動作(インク吐出動作)とを同期させるための信号を授受する。
【0026】
各記録ユニットにはフルカラー記録を行うべく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)のインクをそれぞれ吐出するための記録ヘッド811Y、811M、811Cおよび811Kの4本の記録ヘッドが搭載されている。
【0027】
各記録装置116における記録ヘッド811Y、811M、811Cおよび811Kに対しては、インク供給源であるインクタンク2203Y、2203M、2203Cおよび2203Kから専用のチューブ2204を介してそれぞれの色のインクが供給さる。またインクと同様に、発泡液供給源である発泡液タンク203Y、203M、203Cおよび203Kから専用のチューブ204を介して発泡液が供給される。
【0028】
(記録装置の制御系)
図3は、本実施形態の記録装置116における制御系の構成例を示した図である。CPU800は、後述する処理手順に対応したプログラム等に従って記録装置116の全体的な制御を行う。RAM803は、そのプログラムや固定データを格納したROM、805は作業用メモリ領域として用いられる。EEPROM814は、CPU800が制御のために使用する所要のパラメータ等を、記録装置の電源が遮断されている場合にも保持しておくためのメモリである。
【0029】
インタフェースコントローラ802は、USBケーブルを介して情報処理装置100に対し記録装置116を接続し、VRAM801は各色画像データを展開する。メモリコントローラ804は、インタフェースコントローラ802に受信した画像データをVRAM801に転送するとともに、記録の進捗に従って画像データを読み出す制御を行う。情報処理装置100からUSBケーブルを介して、記録データがインタフェースコントローラ802に受信されると、CPU800はその記録データに付加されたコマンドを解析した後、記録データのイメージデータをVRAM801に展開する指示を行う。この指示を受けて、メモリコントローラ804は、画像データをインタフェースコントローラ802からVRAM801に高速に書き込む。
【0030】
制御回路810は、各色記録ヘッド811Y、811M、811Cおよび811Kを制御する。キャッピングモータ809は、記録ヘッド811の吐出口が形成された面のキャッピングを行うためのキャッピング機構(不図示)を入出力ポート806、駆動部807を介して駆動される。ポンプモータ(不図示)は、後述する(図9参照)発泡液サブタンク40と記録ヘッド811の間に挿入するポンプ48を駆動する正逆可能であることから液体に対して加圧方向を変更可能なモータである。またソレノイドは、後述する(図9参照)バルブ35を駆動するアクチュエータであり、PWM回路にCPU800が設定するPWM値によって、バルブ35は開閉状態のアナログ的制御が可能である。
【0031】
また、上記とは別の不図示のポンプモータは、記録ヘッド内流路近傍に設けた後述する(図9参照)圧力センサ49の出力をポンプモータ制御部にフィードバックすることによってメカポンプ36を制御する。
【0032】
図3に戻り、記録装置116の非使用時等においては、キャッピングモータ809を駆動することにより、記録ヘッド811Y、811M、811Cおよび811Kとキャッピング機構とを相対移動させてキャッピングが行われる。一方、記録すべき記録データがVRAM801に展開された場合は、キャッピングモータ809を駆動して、記録ヘッドとキャッピング機構とを相対移動させてキャッピング状態を解除し媒体搬送装置117からの記録開始信号を待つ。
【0033】
入出力(I/O)ポート806は、モータ駆動部807、他の駆動手段、および所要のセンサなど(不図示)が接続されて、CPU800との間で信号の授受を行う。同期化回路812は、媒体搬送装置117から記録媒体の頭出し信号と媒体の移動に同期した位置パルス信号を受信し、これらに適切に同期して記録動作を実行するためのタイミング信号を発生するである。すなわち、記録媒体の搬送に伴う位置パルスに同期してVRAM801のデータがメモリコントローラ804にて高速に読み出され、記録ヘッド制御回路810を介して記録ヘッド811に転送されることで、カラー記録(記録)が行われる。
【0034】
(搬送装置の構成および制御系)
媒体搬送装置(以下、単に搬送装置ともいう)117は、幅方向は所定のサイズであり搬送方向には任意のサイズをもつ記録媒体の搬送にも適したものである。また、記録装置116が有する記録ヘッド810との対向部位において記録媒体206の被記録面を平坦に規制するために、メディアステージ208(図2参照)が設けられている。記録媒体206には種々の厚みを有するものが用いられるため、厚紙等でもその被記録面を平坦にするために、記録媒体のメディアステージ208への密着性を向上させるための手段が付加されていてもよい。搬送モータ205は、メディアステージ208上面に密着した記録媒体を搬送するための搬送ローラ列205Aの駆動源である。
【0035】
図4は、媒体搬送装置117の制御系の構成例を示したブロック図である。CPU901は、後述する処理手順に対応したプログラム等に従って媒体搬送装置の全体的な制御を行う。ROM903は、プログラムや固定データを格納するメモリであり、RAM904は作業用メモリ領域として用いられる。インターフェース902は、情報処理装置100に対し媒体搬送装置117を接続する。操作パネル905は、画像形成装置に対してユーザが種々の指示や入力を行うための入力部や所要の表示を行うための表示部を有しており、本実施形態では媒体搬送装置に設けてある。サクションモータ908は、メディアステージ208と記録媒体の密着性を向上させるための手段の一例として、メディアステージ208の下部から搬送面に開口させた多数の微細孔を介して吸引を行うことで記録媒体の吸着を行う真空ポンプの駆動源である。情報処理装置100からインタフェース902を介し搬送開始コマンドを受信すると、CPU901によりまずサクションモータ908が起動され、記録媒体206がメディアステージ208の上面に吸着されるように動作する。
【0036】
駆動部907は、サクションモータ908およびその他所要の作動部を駆動するための駆動部である。駆動回路909は搬送モータ205の駆動回路である。ロジック回路912は、搬送モータ205の軸に備えられたロータリ(回転式)エンコーダ910の出力を受容し、記録媒体を定速度搬送させるべく搬送モータ205のフィードバック制御を行うための回路である。ここで記録媒体の搬送速度は、CPU901からロジック回路912に書き込まれた速度指示値にて任意に設定可能である。なおロータリエンコーダ910は、搬送モータ205の軸ではなく搬送ローラ列205Aと同軸に備えられたものでもよい。
【0037】
ロジック回路912には、記録媒体206の先端が記録開始位置近傍に到達したことを検出するべく、記録位置より搬送方向上流側に設けた媒体検知センサ911の出力も入力される。そしてロジック回路912は、媒体検知センサ911が記録媒体先端を検出する位置から各記録装置までの搬送方向上の距離に応じて、適切な記録指示信号を各記録装置に出力する。本実施形態では、記録装置116−1〜116−5は搬送方向(図2矢印方向)に2列に並んでおり、搬送方向上流側には記録装置116−1、116−3および116−5が配置され、下流側には記録装置116−2および116-4が配置されている。そのためロジック回路912は、2種の記録指示信号914,915を出力する。なお、記録装置の取り付け位置には誤差のあることを考慮し、媒体検知センサ911から各記録装置までの物理的な距離に応じて、各記録装置毎に記録開始信号914または915に対して独立に補正を加えるようにしてもよい。
【0038】
また、ロジック回路912はエンコーダ910の出力を適切に変換して記録媒体の位置パルス913を生成し、各記録装置はこの位置パルス913に同期して記録動作を行う。なお、位置パルス913の分解能は適宜のものであってよく、例えば、複数の記録ライン(行)分に設定されるものでもよい。さらに、媒体搬送装置117における記録媒体の搬送部の構成としては、図2に示したような固定のメディアステージ208を具えたものに限られない。例えば、記録位置に対する媒体搬送方向の上流側および下流側に配された一対のドラムに架け渡された無端の搬送ベルトを具え、その搬送ベルト上に記録媒体を担持しつつ、ドラムの回転に伴う搬送ベルトの走行によって記録媒体の搬送を行うものでもよい。また、記録媒体の形態は、カット紙状または連続紙状、いずれの記録媒体でも搬送可能である。
【0039】
(画像形成システムの動作概要)
図5は、情報処理装置100と、記録装置116と、媒体搬送装置117との相互の動作手順を示すフローチャートである。ステップS1001で記録実行のため情報処理装置100は、各記録装置への分割記録データを作成しデータの送信を行う。記録装置116はステップS1041で、その分割記録データの受信に応じてキャッピング状態を解除するとともに、VRAM801へのデータ展開を行う。また全ての記録装置116−1〜116−5で受信が完了すると、ステップS1002で情報処理装置100は媒体搬送装置117に搬送開始コマンドを送信する。その後、ステップS1061で媒体搬送装置117は送信されたコマンドに応じてサクションモータ908を駆動し、記録媒体206をメディアステージ208上に吸着する準備を行う。
【0040】
次にステップS1062で搬送モータ205を駆動して記録媒体206の搬送を開始し、ステップS1063で記録媒体206の先端を検知した後、ステップS1064で各記録装置に記録開始信号914および915と、位置パルス913とを送信する。上述の通り、記録開始信号は媒体検知センサ911から各記録装置までの距離に関係して出力される。ステップS1042で記録装置116の記録動作が終了すると、ステップS1043に移行して記録終了ステイタスを情報処理装置100に送信し処理を終了する。この際、各記録ヘッド801をキャッピング機構によってキャッピングすることで、ノズル(吐出口)の乾燥や目詰まり等を防ぐようにする。
【0041】
記録が完了し、記録媒体206がメディアステージ208上から排出されるとステップS1065からステップS1066へ移行して、媒体搬送装置117は情報処理装置100へ搬送終了ステイタスを送信する。次にステップS1067でサクションモータ908を停止して、ステップ1068で搬送モータ205を停止して動作を終了する。
【0042】
(複合プリンタシステムへの信号系)
図6は、記録ユニット200における信号の流れが分かるように示したブロック図である。記録装置116−1〜116−5のそれぞれに接続される信号系としては大きく2系統ある。一方は、情報処理装置100から供給される分割記録データ(動作開始および終了コマンド等を含む)の伝達に係るもの、他方は、媒体搬送装置117から供給される記録タイミングの規定信号(記録開始信号および位置パルスを含む)の伝達に係るものである。前者は、情報処理装置100と記録装置116−1〜116−5とを中継するハブ140を具えている。このハブ140は、情報処理装置100に対しては例えば100BASE−T規格のコネクタ/ケーブル142を介して、また記録装置116−1〜116−5のそれぞれに対しては例えば10BASE−T規格のコネクタ/ケーブル144を介して接続されている。
【0043】
記録タイミングの規定信号の伝達系統は、図6の例では、転送制御回路150と同期回路160とを有し、これらは図4におけるロジック回路912を構成する回路部として設けられていてもよい。転送制御回路150は、搬送モータ205の軸に備えられたロータリエンコーダ910の出力ENCODERと、媒体検知センサ911による記録媒体先端部の検出出力TOFとを同期回路160に供給する。
【0044】
同期回路160には記録動作許可回路166が設けられ、分割画像データの受信の完了に応じた各記録装置116−1〜116−5からの動作準備完了信号PU1−RDY〜PU5−RDYの論理積を取る。これによって、すべての記録装置の動作準備が完了した時点(キャップ状態の解除等)で、記録動作を許可する信号PRN−STARTを出力する。また同期回路160には、動作準備完了信号PU1−RDY〜PU5−RDYに関連した表示を行うLED等の表示部167が設けられ、ユーザの目視による記録装置の動作準備完了の確認に供するようになっている。さらに同期回路160には、ユーザ等が手動で記録装置を強制的にリセットするためのリセット回路部168および、例えば記録媒体1枚分の記録完了を待って一時停止させるためのポーズ回路部169が付加されている。また同期回路160は各記録装置が同期して記録動作を行うための同期信号(Hsync)である位置パルス913(例えば記録媒体の搬送量1インチあたり300個のパルス信号)をエンコーダ出力ENCODERから生成する同期信号発生回路部162を有する。更に同期回路160は、各記録装置の媒体搬送方向上の位置に応じた遅延信号である記録指示信号914、915を記録媒体先端部検出出力TOFから生成する遅延回路164とを有する。
【0045】
記録媒体搬送方向上流側の記録装置116−1、116−3および116−5の記録動作は、媒体検知センサ911からこれら記録装置の配設位置までの距離分だけ遅れをもった遅延信号である記録指示信号(TOF−IN1)914の受信をもって開始する。媒体検知センサ911からこれら記録装置の配設位置までの距離が0であれば、検出出力TOFとほぼ同時に記録指示信号914が供給される。
【0046】
一方、より下流側に配置された記録装置116−2および116-4の記録動作は媒体検知センサ911からこれら記録装置の配設位置までの距離分だけ遅れをもった遅延信号である記録指示信号(TOF−IN2)915の受信をもって開始する。本実施形態では、媒体検知センサ911からこれら記録装置の配設位置までの距離を450mmに設定している。従って、同期信号(Hsync)である位置パルス913が記録媒体の搬送量1インチ(25.4mm)あたり300パルスであれば、検出出力TOFから5315パルス分遅れて記録指示信号915が供給される。
【0047】
なお、上述のように各記録装置の媒体搬送方向の微小な記録位置を個別に補正するために、あるいは記録装置を2列に整列させないような場合を考慮して、各々の記録装置毎に独立して記録指示信号を供給するようにしてもよい。
【0048】
図6から明らかなように、記録装置116−1〜116−5のそれぞれは、情報処理装置100から分割記録データの供給を受けるとともに、媒体搬送装置117から供給される記録タイミングの規定信号に応じ、独立して記録動作を行うものである。つまり、それぞれの記録装置116−1〜116−5は、信号系に関して完結した記録ユニットであって、記録データの供給や記録タイミングが一の記録装置を経由して他の記録装置に伝達されるような構成ではない。記録装置116−1〜116−5は、自らが用いる記録ヘッド811Y〜811Kおよび各記録ヘッドに配列されるノズルに対応してそれぞれにデータを整列し、規定のタイミングにてインク吐出動作を行う手段を個々に有するものである。すなわち記録装置116−1〜116−5は、それぞれ同様のハードウェアを有し、同様のソフトウェアにて動作を行うもので、一の記録装置の動作が他の記録装置の動作に直接影響を与えることはないが、全体として一つの画像データを記録すべく協働する。
【0049】
(2液系の概要)
本実施形態における記録装置116−1〜116−5は、独立して動作可能であることに加え、各記録装置における各記録ヘッド811に対するインク供給系および発泡液供給系の2液系についても互いに独立した構成を有している。
【0050】
図7は、インク(第1の液体)および発泡液(第2の液体)供給系の構成を説明するための模式図である。各記録装置の記録ヘッド811Y、811M、811Cおよび811Kはそれぞれ同じ構成であるため、以下では代表して記録装置116−1のC(シアンインク)についての構成のみ説明する。記録装置116−1における記録ヘッド811Cに対しては、インク供給源であるインクタンク2203Cから、専用のチューブ2204Cを介してインクが分配供給される。同様に、発泡液供給源(第2の液体供給源)である発泡液タンク203Cから、専用のチューブ204Cを介し発泡液が分配供給される。なおインクおよび発泡液の供給方式としては、インクタンクに常時流体連通して連続的にインクが供給されるものでもよいし、記録ヘッド毎に設けたインク供給ユニットに保持されるインクが少なくなった時点で流体連通するように間歇的にインク供給されてもよい。ここで発泡液は、インクよりも低粘度性、発泡性、熱安定性のいずれかの性質が優れている液体であることが好ましい。
【0051】
本実施形態の回復系は、記録ヘッド811の吐出口形成面に接合して、吐出口より強制排出されるインクを受容するキャップを備え、さらに当該受容されたインクを液体流路(第1の連通路)を介して再利用可能に循環させるように構成される。ここでキャップは、記録媒体206搬送面の下側すなわちメディアステージ208の内側にあって、記録ヘッドの吐出口形成面と対向ないし当接可能に設けられる。しかしロール紙など連続紙状の記録媒体を扱う用途を考慮し、記録媒体の取り外しなどを伴わずに回復動作が行えるように、記録媒体206搬送面の上側すなわち記録ヘッド811と同じ側に配置されたものでもよい。
【0052】
以上のように、本実施形態においては、各記録装置における各記録ヘッド811に対するインク供給系および回復系についても、記録装置間で互いに独立した構成を有している。これによって、各記録装置の動作状態すなわち記録量等に応じて、適切な量のインク供給や回復動作が可能となる。
【0053】
(2液系の構成例)
図8は、記録装置116における2液系主要部の配置関係を示した概略斜視図であり、図9は、1つの記録ヘッドに対する2液系の内部構成例を示した概略図である。本実施形態の記録ヘッド811は可動分離膜を備えており、この可動分離膜によってインク流路(第1の流路)と発泡液流路(第2の流路)とが分離されている。また本実施形態の記録ヘッド811に設けられている可動分離膜には凹部(可動部)が設けられており、この凹部を変位させることでインクを吐出口から吐出させる。
【0054】
記録ヘッド811には発泡液接続管およびインク接続管がそれぞれ接続されている。発泡液接続管(循環流路)の一方は、可動分離膜の凹部が常に一定位置で発泡液流路側に凸となるような負圧を発生するための負圧室30に接続されている。また他方は、記録ヘッド毎の発泡液供給ユニット(以下、発泡液サブタンクともいう)40にポンプ48(圧力制御手段)を介して接続されている。また、インク接続管は、記録ヘッド毎のインク供給ユニット940に、一方はポンプ948を介して、他方はバルブ936を介して接続されている。
【0055】
図10(a)〜(f)は、本実施形態の記録ヘッドにおけるインク吐出の様子を時間を追って示した断面図である。吐出口1に連通したインク流路3内(第1の流路内)には、インクの共通液室143から供給されるインクが満たされている。また気泡発生領域7を有する発泡液流路4内(第2の流路内)には、発熱体2から熱エネルギを与えられることにより加熱され発泡する発泡液が満たされている。可動分離膜5の気泡発生領域7と対峙する部分には凹部8が設けられ、その凹部8の支点には角部8aが設けられておりインク流路3に対して凹部を形成している。また、可動分離膜5とオリフィスプレート9とは互いに密着固定され、ここでもそれぞれの液流路内の液体が混ざり合うことはない。なお、発泡液流路4のうち、発熱体2の投影領域近辺が気泡発生領域7である。発泡液が発泡することで可動分離膜5の凹部の膜が押し上げられて、その作用によってインク流路3内のインクが吐出口より吐出して記録媒体に付着することで記録が行われる。
【0056】
図11は、記録ヘッド811のノズル部を部分的に断面にし拡大して示した図である。発熱体2は素子基板10に複数個並んで設けられており、この素子基板10上に発泡液流路4(図10参照)が各発熱体2に対応して複数配設されている。また、可動分離膜5を支持する支持部材11が、各々の発泡液流路4を区画形成する壁を兼ねている。可動分離膜5には複数の凹部8が、各発熱体2の投影領域近辺である気泡発生領域7に面して形成されている。そしてインク流路3は各々の凹部8を含むようにして複数配設されている。但し、図11では各々の第1の液流路3を区画形成する壁28が置かれる位置を点線で示している。
【0057】
図12(a)〜(c)は、発泡液の量が異なる負圧室30(図9参照)の内部をそれぞれ示した概略図である。負圧室30には、圧力調整バルブ35(図9参照)を介して機械式の発泡液ポンプ(以下、「メカポンプ」ともいう)36が接続されており、負圧室30への発泡液供給を制御している。このメカポンプ36によって負圧室30内の圧力を制御可能になっている。また、圧力調整バルブ35は、流路内における発泡液の流抵抗の調整が可能である。本実施形態における発泡液ポンプ36はギアポンプである。図12(a)は、発泡液ポンプ36による発泡液の供給量が多い場合を示しており、図12(c)は供給量が少ない場合を示している。そしてこの発泡液の量は負圧室30内の圧力と所定の関係にあり、発泡液の量を検出することで、間接的に負圧室30内の圧力を検出可能である。そのため、負圧室30には光学式センサ149(受光素子149C、発光素子149B)が設けられており、板状発泡液保持部33には反射板149Aが取り付けられている。発光素子149Bからの光は、反射板149Aによって反射されてから受光素子149Cに受光され、その受光量は、図12(a)のように負圧室30内の発泡液量が多い時に多くなり、図12(b)、(c)のように発泡液量が減少するにつれて減少する。したがってセンサ149は、負圧室30内の発泡液量を検知することになり、その発泡液量と負圧室30内の負圧との関係から、間接的に負圧室30内の圧力を圧力損失が無く検出可能である。
【0058】
また、負圧室30内の圧力を検知する方法として、は圧力センサによって直接圧力を検出してもよい。その場合は、圧力センサ49のように板状発泡液保持部33に直接取り付けることで圧力検出することが可能である。このように、負圧室30内の圧力を検出するには、種々の検出方式のものを用いることができる。
【0059】
同様に、インク流路内の圧力を検出するための圧力センサ949(図9参照)も、インク流路内負圧を直接的に検出する検出方式のものの他、種々の検出方式のものを用いることができる。このような、圧力検出手段による圧力の検出結果に基づいてポンプ(負圧付与手段)を制御することで発泡液流路内の圧力を制御する。
【0060】
ここで、バルブ35を含め、発泡液およびインク供給経路の各部に配されるバルブとしては、制御信号に応じ流路を適切に開閉または流量を適切に制御できるものであれば、いかなる形態のものが用いられてもよい。
【0061】
図13は、本実施形態における発泡液およびインク流路に設けられたバルブを説明するための模式図である。バルブ58は液流路上に介挿されたボール状の弁体56と、この弁体56を受けるシート体57とを備え、ソレノイドにより進退するプランジャ55に弁体56を接続した構成である。この場合には、ソレノイドへの通電を制御して、弁体56をシート体57に対して受容/離脱させることで液流路を開閉することができる。図13(a)は液流路の開状態、図13(b)は液流路の閉状態を示す。しかしバルブ35に関しては、応答性が高い高性能の負圧制御を可能とするために、ピエゾ素子のような自重の軽い素子をアクチュエータとして用いたものとすることもできる。
【0062】
またポンプ36を含め、発泡液およびインク供給経路の各部に配されるポンプとしては、駆動信号に応じて液を移送可能なものであれば、いかなる形態のものが用いられてもよい。しかし特にポンプ36は、本実施形態では発泡液の流れの方向を切り替え可能で、また発泡液流量を調節可能なものとする。図9に示した例では、負圧室30に対して発泡液を供給する方向(以下、この方向への回転を正転という)と、負圧室30から発泡液を抜き出す方向(以下、この方向への回転を逆転という)と、に選択的にインクを移送可能なギアポンプが示されている。ポンプ36は、系を循環可能にする適切な量の発泡液を収納する発泡液サブタンク40に接続されている。
【0063】
発泡液サブタンク40は、発泡液収納空間の一部を画成し且つ収納する発泡液量に応じて変形可能なバッファ部材と、発泡液メインタンク203に接続される発泡液チューブ204(図7参照)との間で適宜発泡液連通を行うジョイント42と、を有している。
【0064】
図14(a)、(b)は、メインタンクに連列されるチューブと記録ヘッドとを連結するジョイントの42構成例を示す縦断側面図である。このジョイント42は、発泡液サブタンク内部の発泡液が少なくなった際に、発泡液チューブ204に設けられたジョイント43に接続されることによって、発泡液メインタンク203から発泡液サブタンク40にインクを適宜補充できる構成になっている。ジョイント42、43のそれぞれの対向部には、連通孔が形成されたバルブゴム66A、66Bが設けられている。ジョイント42、43が接続されていないときには、図14(a)のように、バルブばね65A、65Bによって付勢されているバルブボール63A、64Aがバルブゴム66A、66Bにおける連通孔の開口部が閉塞している。これにより、ジョイント42、43のそれぞれに接続されている発泡液流路は、いずれも外気と遮断されている。
【0065】
ジョイント42、43を接続するときは、図14(b)のように、それらを接近させて、バルブゴム66A、66Bを密着させると共に、バルブボール63Bに設けられたボールレバー67によってバルブボール63Aを押す。この結果、バルブボール63A、64Aがバルブゴム66A、66Bから離れて、ジョイント42、43のそれぞれに接続されている発泡液流路が互いに接続される。
【0066】
なお、ジョイント42、43の構成としては、非接続時に開口部を遮断して発泡液漏洩を阻止し、また外気と遮断した状態で発泡液流路を接続可能な構成であれば、いかなるものでもよい。また、このようにジョイントの適宜の接続および分離を行うことで流体連通のオン/オフを行うものの他、供給経路自体は常時接続しておいて、開閉バルブによって流体連通のオン/オフを行うようにしてもよい。さらにまた、インクサブタンク940の構成も上記と同様であり、分割画像データの内容に応じて各記録装置間のインク要求量が異なるときに、各記録装置間のインク供給が互いに干渉しないような構成であればよい。
【0067】
図15(a)、(b)は、インクタンク2203(2203Y、2203M、2203C、2203K)の概略構成図である。本実施形態のインクタンク2203は、インクを収容した可撓性のインク袋69と、それを収納するタンクハウジング68とを含む。タンクハウジング68には、大気連通孔71が形成されていると共に、記憶素子70が取付けられている。記憶素子70には、インクタンク2203に関連する種々の情報を記憶させることができる。例えば、収容するインクの種類、インクの残量、インクタンクの形式などの情報を書き込み、それを必要に応じて読み出して利用することができる。インク袋69は、その内部に収容するインクの消費に応じて図15(a)、(b)のように変形する。したがって、インク袋69内のインクを外気と遮断した状態のまま供給することができる。また、発泡液タンク203の構成もインクタンク2203の構成と同様である。
【0068】
記録ヘッド811と接続される発泡液の接続管(連通流路)の他方は、図9のように、ポンプ48を介して発泡液サブタンク40と接続されている。このポンプ48とポンプ36との作動によって発泡液サブタンク40、負圧室30および記録ヘッド811間で発泡液を循環させることができる。
【0069】
同様に記録ヘッド811と接続されるインクの接続管の他方は、バルブ948を介してインクサブタンク940と接続されている。このポンプ948の作動によって、インクサブタンク940と記録ヘッド811間でインクを循環させることができる。
【0070】
また記録装置116は、記録ヘッド811のインク吐出性能を健全な状態に維持、もしくは回復するための回復系機構を備え、その一部として記録ヘッド811を密閉キャップするキャップ44(図9参照)を備えている。回復動作時、バルブ936は閉じた状態でポンプ948を動作させる。すると記録ヘッド811の内部が急激に加圧され、記録ヘッド811の各ノズルから比較的大量のインクが短時間で強制排出される。この強制排出によってノズル内の異物や増粘インク等が排出されて、各ノズルの吐出状態は良好な状態に回復する。なお強制排出されたインクはキャップ44内のインク溜りに排出されるが、予め動作中であるポンプ945の作用により、バルブ947を介してインクサブタンク940へ素早く回収、再利用される。その際、排出された異物はフィルタ(不図示)等で除去され、増粘したインクはインクサブタンク940内で薄められて通常のインクの粘度になる。
【0071】
その後記録装置116は、不図示のワイパブレードによる記録ヘッド811のノズル列のワイプ動作、および画像の記録に寄与しないインクを吐出する予備的な吐出動作を行って、記録ヘッド811の回復動作が完了する。
【0072】
本実施形態の記録装置116ないしは記録ヘッド811は、このような供給系を備えることにより、画像形成システムや画像形成装置から分離して、また他の記録装置から独立して、様々な条件下での制御が可能となり、独立した設置、交換も可能となる。
【0073】
(特徴的構成)
(発泡液系の動作)
以下、記録装置116の使用状況などに応じた発泡液系の動作について説明する。
【0074】
記録待機時(図10および図16参照)
図16は、記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。記録開始前などの通常の待機状態では、図10(a)のように、可動分離膜5の凹部8のたるみが発泡液流路4側に凸の状態になり、一定の位置で安定性を維持するために、記録ヘッド811内の発泡液に対して負圧を作用させる。すなわち、図16のように、ポンプ48を止めて記録ヘッド811から流路(第2の連通路)を経て発泡液サブタンク40への発泡液の戻りを制限した上、ポンプ36を逆転させて、負圧室30内の発泡液を発泡液サブタンク40内に戻す。これにより、記録ヘッド811内の発泡液に作用する負圧が増大する。そして図10(a)のように、可動分離膜5の凹部8のたるみが発泡液流路4側に一定の位置で安定する負圧状態を維持して記録の開始を待つ。発泡液サブタンク40は、負圧室30から戻された発泡液の分だけ容積が増大する。
【0075】
記録時の制御(図10および図17参照)
図17は、記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。負圧調整バルブ35およびメカポンプ36を適切に制御することにより、非発泡時の可動分離膜5の凹部8のたるみをより安定に維持できる。一般的には、図10(d)のように、発泡により可動分離膜5はインク流路側3に変位し、図10(e)のように、消泡に従い可動分離膜5は発泡液流路側4に変位しようとする。しかし、その際に、インク流路側のインクの再充填(=メニスカスの復帰)に従い、インク流路側に負圧が発生するため、可動分離膜5の凹部8のたるみが確実に元の状態に戻るとは限らない。そこで、ポンプ48を止めて記録ヘッド811から発泡液サブタンク40への発泡液の戻りを制限した上、ポンプ36を逆転させて、負圧室30内の発泡液を発泡液サブタンク40内に戻す。これにより、記録ヘッド811内の発泡液に作用する負圧を増大させ、図10(f)のように、可動分離膜5の凹部8のたるみを発泡液流路4側に一定の位置で安定させる。
【0076】
また、記録装置116ないし記録ヘッド811が記録する画像データの内容に対応する様々な記録デューティ(記録密度)に応じて、非発泡時の可動分離膜5の凹部8のたるみをより安定して維持することができる。例えば、記録デューティが低い場合には、インク側にかかる負圧も小さいため、ポンプ36を低速で逆転させて負圧室30内の発泡液を発泡液サブタンク40内に戻す。さらに非発泡時の可動分離膜5の凹部8のたるみを適正化するために、記録の直後に負圧調整バルブ35を制御して発泡液側にかかる負圧を高精度に安定させる。その場合、流路が開かれる割合は比較的少なく、且つ開度は比較的小さい範囲で制御されることになる。
【0077】
また記録デューティ(記録密度)が高い場合には、インク側にかかる負圧が大きくなるため、ポンプ36をより高速で逆転させて負圧室30内の発泡液を発泡液サブタンク40内に戻すと共に、負圧調整バルブ35を制御して負圧を安定化させる。その場合、流路が開かれる割合は比較的多くなり、且つ開度は比較的大きい範囲で制御されることになる。
【0078】
負圧調整バルブ35の制御は、負圧室30、すなわち発泡液側の負圧を検出するセンサ49およびインク側の負圧を検出するセンサ949の出力信号をフィードバックすることにより行うことができる。また後述するように、記録データに基づいて予め負圧調整バルブ35とポンプ36を関連的に制御することもできる。
【0079】
回復動作(メンテナンス)時の制御(図10および図18参照)
図18は、記録ヘッド811の吐出口から、画像の記録に寄与しないインクを強制的に排出させる回復動作の説明図である。この回復動作においては、バルブ936は閉じた状態でポンプ948を稼動させる。すると、記録ヘッド811のインク流路側は急激に加圧され、記録ヘッド811の各ノズルから比較的大量のインクが短時間で強制排出される。この瞬間、各ノズルは健全な状態に回復する。なお、強制排出されたインクはキャップ44内のインク溜りに排出されるが、予め動作中であるポンプ945の作用により、バルブ947を介してインクサブタンク940へ素早く回収、再利用される。この後、不図示のワイパブレードによる記録ヘッド811のノズル列のワイピングおよび予備的な吐出動作を行って記録ヘッド811の回復動作が完了する。
【0080】
この間、インク流路側が加圧されているため、可動分離膜5の凹部8は発泡液流路4側へたるむ(発泡液流路側に凸の状態)。しかしこの際、可動分離膜5にかかる余分な圧力を緩和させるため、ポンプ36を正転させて発泡液流路側に正圧を加え、さらに適正化するために、負圧調整バルブ35を制御して圧力を高精度に安定させる。この際、可動分離膜5の凹部8のたるみが記録待機時の図10(a)と同様の位置で安定して維持される範囲で圧力を制御する。このようにすることにより、可動分離膜5に余分な圧力がかかることを防ぎ、可動分離膜5の寿命を延ばすことが可能となる。そして回復動作後は、記録待機時と同様の、可動分離膜5の凹部8のたるみが発泡液流路4側に一定の位置で安定する負圧状態を維持するよう制御する。
【0081】
このように、記録ヘッドに供給する発泡液の負圧を積極的に制御して、発泡液側に適正な負圧を安定して印加することで、非発泡時の可動分離膜5の凹部8のたるみをより安定して維持させることが可能となる。これによって、吐出時の吐出量が一定で安定的にインクを吐出することが可能な記録装置を実現することができた。
【0082】
(第2の実施形態)
図19は、1つの記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。記録ヘッド811には発泡液接続管およびインク接続管がそれぞれ接続されている。発泡液接続管の一方は、記録ヘッド811の可動分離膜5が発泡液流路4側に常に一定位置で凹部8を形成するに好ましい負圧を発生するための負圧室30に接続されている。また発泡液接続管の他方は、記録ヘッド毎の発泡液供給ユニット(以下、発泡液サブタンクともいう)40にポンプ48を介して接続されている。また、同様にインク接続管の一方は、記録ヘッド811のインク吐出口1に形成されるインクメニスカスの保持力と平衡する好ましい負圧を発生するための負圧室1930に接続されている。そしてインク接続管の他方は、記録ヘッド811毎のインク供給ユニット(以下、インクサブタンクともいう)940にポンプ948を介して接続されている。
【0083】
圧力センサ49は、負圧室30内の負圧を直接的に検出する検出方式のものの他、種々の検出方式のものを用いることができる。同様に、圧力センサ949としては、負圧室1930内の負圧を直接的に検出する検出方式のものの他、種々の検出方式のものを用いることができる。
【0084】
負圧室30には、圧力調整バルブ35を介して機械式の発泡液ポンプ36が接続されており、負圧室30への発泡液供給を制御している。本実施形態における発泡液ポンプ36はギアポンプである。ポンプ36は、系を循環する適切な量の発泡液を収納する発泡液サブタンク40に接続されている。
【0085】
負圧室1930には、圧力調整バルブ1935を介して機械式のインクポンプ1936が接続されており、負圧室1930へのインク供給を制御している。本実施形態におけるインクポンプ1936はギアポンプである。ポンプ1936は、系を循環する適切な量のインクを収納するインクサブタンク940に接続されている。
【0086】
また、インクサブタンク940の構成も上記と同様であり、分割画像データの内容に応じて各記録装置間のインク要求量が異なるときに、各記録装置間のインク供給が互いに干渉しないような構成であればよい。
【0087】
記録ヘッド811の接続管の他方は、ポンプ48を介して発泡液サブタンク40と接続されており、このポンプ48とポンプ36との作動によって、発泡液サブタンク40、負圧室30および記録ヘッド811間で発泡液を循環させることができる。同様に、ポンプ948を介してインクサブタンク940と接続されており、このポンプ948の作動によって、インクサブタンク940と記録ヘッド811間でインクを循環させることができる。また記録装置116は、記録ヘッド811のインク吐出性能を健全な状態に維持、もしくは回復する為の回復系機構を備え、その一部として記録ヘッド811を密閉キャップするキャップ44を備える。
【0088】
本実施形態の記録装置116ないしは記録ヘッド811は、このような供給系を備えることで、負圧室1930でインク流路側の負圧を制御することにより、インクメニスカスの保持力を安定させることができる。また、負圧室30で発泡液流路側の負圧を制御することにより、記録ヘッド811の可動分離膜5の凹部8を安定した位置に形成することがそれぞれ可能となり、より安定した吐出を行うことができる。
【0089】
このように、記録ヘッドに供給する発泡液の負圧を積極的に制御して、発泡液側に適正な負圧を安定して印加することで、非発泡時の可動分離膜5の凹部8のたるみをより安定して維持させることが可能となる。これによって、吐出時の吐出量が一定で安定的にインクを吐出することが可能な記録装置を実現することができた。
【0090】
なお、本発明において、本実施形態で採用した複数の記録装置は、それぞれが互いに独立性を有するものである。すなわち、複数の記録装置は各々相互の関係において、空間(配置)上独立したものであり、また信号系およびインク系においても独立している。そのため、各記録装置の動作状態すなわち記録量等に応じて、適切な量のインク供給や回復動作が可能となる。また、画像形成システムや画像形成装置から分離して、また他の記録装置から独立して、様々な条件下において記録装置を制御することができ、記録装置の単体での取り引きや取り扱いも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1の実施形態の液体吐出装置を用いた画像形成システムの概要を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の液体吐出装置を用いた画像形成システムの概要を示す外観斜視図である。
【図3】第1の実施形態の記録装置における制御系の構成例を示した図である。
【図4】媒体搬送装置の制御系の構成例を示したブロック図である。
【図5】情報処理装置と、記録装置と、媒体搬送装置との相互の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】記録ユニットにおける信号の流れが分かるように示したブロック図である。
【図7】インクおよび発泡液供給系の構成を説明するための模式図である。
【図8】記録装置における2液系主要部の配置関係を示した概略斜視図である。
【図9】1つの記録ヘッドに対する2液系の内部構成例を示した概略図である。
【図10】(a)〜(f)は、本実施形態の記録ヘッドにおけるインク吐出の様子を時間を追って示した断面図である。
【図11】記録ヘッドのノズル部を拡大して示した図である。
【図12】(a)〜(c)は、発泡液の量が異なる負圧室の内部をそれぞれ示した概略図である。
【図13】第1の実施形態における発泡液およびインク流路に設けられたバルブを説明するための模式図である。
【図14】(a)、(b)は、メインタンクに連列されるチューブと記録ヘッドとを連結するジョイントの構成例を示す縦断側面図である。
【図15】(a)、(b)は、インクタンクの概略構成図である。
【図16】記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。
【図17】記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。
【図18】記録ヘッドの吐出口から、画像の記録に寄与しないインクを強制的に排出させる回復動作の説明図である。
【図19】記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。
【符号の説明】
【0092】
4 発泡液流路
5 可動分離膜
8 凹部
30 負圧室
33 板状発泡液保持部
35 負圧調整バルブ
36 ポンプ
40 発泡液サブタンク
49 圧力センサ
116 記録装置
811 記録ヘッド
940 インクサブタンク
949 圧力センサ
1930 負圧室
1936 インクポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギ等による気泡の発生によって、所望の液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置に関し、特に、気泡の発生を利用して変位する可動分離膜を有する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置に関する。
【0002】
なお、本明細書において「記録」とは、文字や図形等のように意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターン等のように意味を持たない画像を付与することをも意味するものである。
【背景技術】
【0003】
熱等のエネルギをインクに与えることで、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出して記録媒体上に付着させることで記録を行うインクジェット記録方法が知られている。このインクジェット記録方法を用いる記録装置には、インクを吐出する記録ヘッドに設けられた吐出口と、この吐出口に連通するインク流路と、インク流路内に配された吐出エネルギ発生手段としての発熱体(電気熱変換体)とが一般的に設けられている。
【0004】
このような記録方法によれば、品位の高い画像を高速、低騒音で記録することができるとともに、この記録に用いられる記録ヘッドでは、インクを吐出するための吐出口を高密度に配置することができる。そのためインクジェット記録方式を採用する記録方法は、小型の装置で高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得ることができる等の多くの優れた点を有している。このため、このインクジェット記録方法は近年、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムにまで利用されるようになってきている。
【0005】
しかし、従来のインクジェット記録方法においては、発熱体がインクに接した状態で加熱を繰り返すため、発熱体の表面にインクの焦げによる堆積物が発生する場合があった。また、吐出すべき液体が熱によって劣化しやすい液体の場合や十分な発泡が得られにくい液体の場合は、前述の発熱体による直接加熱気泡形成では、良好な吐出が行われない場合があった。
【0006】
そこで、特許文献1では、発泡液と吐出液とを分離する可撓性膜を介して、発泡液を熱エネルギによって発泡させて吐出液を吐出する方法が提案されている。特許文献1の方法における可撓性膜と発泡液との構成は、可撓性膜がノズルの一部に設けられているものである。それに対して、記録ヘッド全体を上下に分離する大きな膜を用いる構成が特許文献2に開示されている。この大きな膜は、液路を形成する2つの板材によって挟持されることによって2つの液路内の液体が互いに混合されないことを目的として設けられたものである。
【0007】
また、特許文献3には、発泡液自体に特徴を持たせ、発泡特性を考慮したものとして、吐出液よりも低沸点の液体を用いる技術が開示されており、特許文献4には、導電性を有する液体を発泡液として用いる技術が開示されている。
【0008】
更に、特許文献5、特許文献6において、液体吐出ヘッドにおける分離膜は、第1の液流路壁と第2の液流路壁に挟持されており、各ノズル当りの可動面積は液流路壁によって規制されている。すなわち、第1と第2の液流路壁は、膜の変位を規制し、液体吐出ヘッド特性に大きな影響を与えていることを開示している。
【0009】
これは結果的に吐出効率に影響を与え、膜自体の復帰メカニズムにも影響を与える。そのため、液流路壁ではなく膜自体が変位を規制し膜の変位をスムーズにすることで、常に信頼性の高い吐出性能を持ち続けることが重要となる。そして、膜を実質的に伸びない分離膜とし、その分離膜に凹部を設けることで凹部の変位量が吐出液の吐出量に相当する、すなわち吐出量が分離膜の凹部の変位量に応じることになる。そのため、凹部の変位量を規定することで供給液体の種類に関係なく安定した吐出が得られる。また、分離膜の凹部の変位量を、その凹部が最大変位時に伸縮することのないように規定すれば、分離膜の耐久性が向上することが示されている。さらには、凹部に変位のためのエネルギが付与されないときに復元力を発揮させれば、吐出液のリフィルも向上することも示されている。
【0010】
【特許文献1】特開昭55−81172号公報
【特許文献2】特開昭59−26270号公報
【特許文献3】特開平5−229122号公報
【特許文献4】特開平4−329148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし上記のような、発泡液と吐出液とを分離する凹部を設けた分離膜を介して、発泡液を熱エネルギによって発泡させて吐出液を吐出する液体吐出ヘッドでは以下の点が問題として挙げられていた。つまり、発泡液が熱エネルギによって発泡し分離膜の凹部が吐出液側に変位するが、その後の消泡あるいは変位のためのエネルギが付与されない時の分離膜の復元力は自然復帰に頼らねばならない。これは、次の発泡までに常に安定して一定の位置に戻ることが困難で有り、吐出液の吐出の不安定を招くことがあった。
【0012】
また別の観点からは、分離膜に凹部を設けても、多種多様の液体が吐出液として使用される場合、吐出口から熱などのエネルギによって吐出される液体の吐出量は、液体の種類によってばらつきが生じる。そしてこのばらつきは高粘度液体になるほど大きくなる傾向にある。そしてこれは、一度変位した分離膜が次の発泡、吐出までに常に一定の状態でないことで、吐出量のばらつきが更に大きくなる原因となっていた。
【0013】
よって本発明は、吐出時の吐出量が一定で安定的にインクを吐出することが可能な記録装置(液体吐出装置)を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのため本発明の液体吐出装置は、記録媒体に対して吐出される第1の液体が流れる第1の流路と、第2の液体が流れ、可動部を備えた分離膜によって前記第1の流路と分離された第2の流路と、を備えた記録手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えた液体吐出装置において、前記第2の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、該圧力制御手段によって、前記第1の流路内の圧力よりも前記第2の流路内の圧力を低く制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の液体吐出装置は、記録媒体に対して吐出される第1の液体が流れる第1の流路と、第2の液体が流れ、可動部を備えた分離膜によって前記第1の流路と分離された第2の流路と、を備えた記録手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えた液体吐出装置において、前記第1の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、前記第2の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、該圧力制御手段によって、前記第1の流路内の圧力よりも前記第2の流路内の圧力を低く制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第2の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、その圧力制御手段によって、第1の流路内の圧力よりも前記第2の流路内の圧力を低く制御する。これによって、吐出時の吐出量が一定で安定的にインクを吐出することが可能な記録装置(液体吐出装置)を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0018】
(基本的構成)
(画像形成システムの概要)
図1および図2は、それぞれ、本実施形態の液体吐出装置(以下、記録装置ともいう)を用いた複合プリントシステムの概要を示すブロック図および模式的斜視図である。この複合プリントシステムは、情報処理装置100および記録ユニット200からなり、記録ユニット200は、媒体搬送装置117および複数の記録装置116−1〜116−5(以下、まとめて記録装置116ともいう)を具えている。ここで、情報処理装置100は形成すべき画像データの供給源であり、1枚の画像を領域分割し、記録ユニット200に分割画像データを供給する。媒体搬送装置117は、記録装置116の記録可能な範囲に対応した幅方向のサイズを有する記録媒体206(図2参照)を搬送し、その記録媒体206の端部(紙端)を検出して、記録装置116が記録開始位置を規定するための信号を出力する。
【0019】
各記録ユニット200は、情報処理装置100から供給された分割画像データに基づき、媒体搬送装置117により規定されるタイミングにて、担当する記録領域に対し、それぞれ独立して記録動作(記録動作)を実行する。各記録ユニットには、記録媒体206に対してフルカラー記録を行うべく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の三原色にブラック(K)のインクをそれぞれ吐出するための記録ヘッドが搭載されている。各記録ヘッドに対しては、インク供給源であるインクタンク2203Y、2203M、2203Cおよび2203Kからそれぞれの色のインクが供給され、同様に、発泡液供給源である発泡液タンク203Y、203M、203C、203Kから発泡液が供給される。
【0020】
図1において、CPU101は、情報処理装置100全般のシステム制御を掌る中央演算処理装置である。情報処理装置100においてCPU101は、画像データの生成や編集を行うアプリケーションプログラム、画像分割プログラム、複数の記録ユニットの制御プログラム、および後述する媒体搬送装置117の制御プログラム等が規定する処理を実行する。
【0021】
CPU101のシステムバスは、階層的なバス構成を有し、例えばホスト/PCIブリッジ102を介してローカルバスとしてのPCIバスに接続され、さらにPCI/ISAブリッジ105を介してISAバスと接続されて、各バス上の機器と接続される。
【0022】
メインメモリ103は、オペレーティングシステム(OS)、アプリケーションプログラムおよび制御プログラムの一時的記憶領域が設けられるRAMであり、さらに各プログラム実行のための作業用メモリ領域としても用いられる。これらのプログラムは、例えばハードディスクドライブHDD104から読み出されてロードされるものである。なお、システムバスにはキャッシュメモリ120と呼ぶSRAMを使用した高速のメモリをもち、メインCPU101が常時アクセスするようなコードおよびデータはここに保存される。
【0023】
ROM112は、入出力回路(不図示)を介して接続されるキーボード114、マウス115、CDD111およびFDD110等の入出力機器を制御するプログラム、システムのパワーON時の初期化プログラム、および自己診断プログラム等を格納する。EEPROM113は、恒久的に利用する各種のパラメータを記憶させるための不揮発性のメモリである。
【0024】
記録装置116との通信インタフェース109はPCIバスに接続されており、使用可能なインタフェースとしては、例えばIEEE1284の標準に準拠した双方向セントロニクスインターフェース、USB、ハブ接続等がある。図1では、通信インタフェース109を介してハブ140が接続され、さらにこのハブ140が記録装置116および媒体搬送装置117のそれぞれに接続された構成が示されている。また、本実施形態では有線タイプの通信インタフェース109を使用しているが、無線LAN等の通信インタフェースが用いられるものでもよい。
【0025】
再び図2を参照するに、情報処理装置100と複数の記録装置116および搬送装置117とはハブ140を介して接続され、記録データ、動作開始および終了コマンド等の転送を行う。また、記録装置116の各々と搬送装置117との間も信号接続され、記録媒体206の先端検出ないし記録先頭位置の設定や、媒体搬送速度と各記録装置116における記録動作(インク吐出動作)とを同期させるための信号を授受する。
【0026】
各記録ユニットにはフルカラー記録を行うべく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)のインクをそれぞれ吐出するための記録ヘッド811Y、811M、811Cおよび811Kの4本の記録ヘッドが搭載されている。
【0027】
各記録装置116における記録ヘッド811Y、811M、811Cおよび811Kに対しては、インク供給源であるインクタンク2203Y、2203M、2203Cおよび2203Kから専用のチューブ2204を介してそれぞれの色のインクが供給さる。またインクと同様に、発泡液供給源である発泡液タンク203Y、203M、203Cおよび203Kから専用のチューブ204を介して発泡液が供給される。
【0028】
(記録装置の制御系)
図3は、本実施形態の記録装置116における制御系の構成例を示した図である。CPU800は、後述する処理手順に対応したプログラム等に従って記録装置116の全体的な制御を行う。RAM803は、そのプログラムや固定データを格納したROM、805は作業用メモリ領域として用いられる。EEPROM814は、CPU800が制御のために使用する所要のパラメータ等を、記録装置の電源が遮断されている場合にも保持しておくためのメモリである。
【0029】
インタフェースコントローラ802は、USBケーブルを介して情報処理装置100に対し記録装置116を接続し、VRAM801は各色画像データを展開する。メモリコントローラ804は、インタフェースコントローラ802に受信した画像データをVRAM801に転送するとともに、記録の進捗に従って画像データを読み出す制御を行う。情報処理装置100からUSBケーブルを介して、記録データがインタフェースコントローラ802に受信されると、CPU800はその記録データに付加されたコマンドを解析した後、記録データのイメージデータをVRAM801に展開する指示を行う。この指示を受けて、メモリコントローラ804は、画像データをインタフェースコントローラ802からVRAM801に高速に書き込む。
【0030】
制御回路810は、各色記録ヘッド811Y、811M、811Cおよび811Kを制御する。キャッピングモータ809は、記録ヘッド811の吐出口が形成された面のキャッピングを行うためのキャッピング機構(不図示)を入出力ポート806、駆動部807を介して駆動される。ポンプモータ(不図示)は、後述する(図9参照)発泡液サブタンク40と記録ヘッド811の間に挿入するポンプ48を駆動する正逆可能であることから液体に対して加圧方向を変更可能なモータである。またソレノイドは、後述する(図9参照)バルブ35を駆動するアクチュエータであり、PWM回路にCPU800が設定するPWM値によって、バルブ35は開閉状態のアナログ的制御が可能である。
【0031】
また、上記とは別の不図示のポンプモータは、記録ヘッド内流路近傍に設けた後述する(図9参照)圧力センサ49の出力をポンプモータ制御部にフィードバックすることによってメカポンプ36を制御する。
【0032】
図3に戻り、記録装置116の非使用時等においては、キャッピングモータ809を駆動することにより、記録ヘッド811Y、811M、811Cおよび811Kとキャッピング機構とを相対移動させてキャッピングが行われる。一方、記録すべき記録データがVRAM801に展開された場合は、キャッピングモータ809を駆動して、記録ヘッドとキャッピング機構とを相対移動させてキャッピング状態を解除し媒体搬送装置117からの記録開始信号を待つ。
【0033】
入出力(I/O)ポート806は、モータ駆動部807、他の駆動手段、および所要のセンサなど(不図示)が接続されて、CPU800との間で信号の授受を行う。同期化回路812は、媒体搬送装置117から記録媒体の頭出し信号と媒体の移動に同期した位置パルス信号を受信し、これらに適切に同期して記録動作を実行するためのタイミング信号を発生するである。すなわち、記録媒体の搬送に伴う位置パルスに同期してVRAM801のデータがメモリコントローラ804にて高速に読み出され、記録ヘッド制御回路810を介して記録ヘッド811に転送されることで、カラー記録(記録)が行われる。
【0034】
(搬送装置の構成および制御系)
媒体搬送装置(以下、単に搬送装置ともいう)117は、幅方向は所定のサイズであり搬送方向には任意のサイズをもつ記録媒体の搬送にも適したものである。また、記録装置116が有する記録ヘッド810との対向部位において記録媒体206の被記録面を平坦に規制するために、メディアステージ208(図2参照)が設けられている。記録媒体206には種々の厚みを有するものが用いられるため、厚紙等でもその被記録面を平坦にするために、記録媒体のメディアステージ208への密着性を向上させるための手段が付加されていてもよい。搬送モータ205は、メディアステージ208上面に密着した記録媒体を搬送するための搬送ローラ列205Aの駆動源である。
【0035】
図4は、媒体搬送装置117の制御系の構成例を示したブロック図である。CPU901は、後述する処理手順に対応したプログラム等に従って媒体搬送装置の全体的な制御を行う。ROM903は、プログラムや固定データを格納するメモリであり、RAM904は作業用メモリ領域として用いられる。インターフェース902は、情報処理装置100に対し媒体搬送装置117を接続する。操作パネル905は、画像形成装置に対してユーザが種々の指示や入力を行うための入力部や所要の表示を行うための表示部を有しており、本実施形態では媒体搬送装置に設けてある。サクションモータ908は、メディアステージ208と記録媒体の密着性を向上させるための手段の一例として、メディアステージ208の下部から搬送面に開口させた多数の微細孔を介して吸引を行うことで記録媒体の吸着を行う真空ポンプの駆動源である。情報処理装置100からインタフェース902を介し搬送開始コマンドを受信すると、CPU901によりまずサクションモータ908が起動され、記録媒体206がメディアステージ208の上面に吸着されるように動作する。
【0036】
駆動部907は、サクションモータ908およびその他所要の作動部を駆動するための駆動部である。駆動回路909は搬送モータ205の駆動回路である。ロジック回路912は、搬送モータ205の軸に備えられたロータリ(回転式)エンコーダ910の出力を受容し、記録媒体を定速度搬送させるべく搬送モータ205のフィードバック制御を行うための回路である。ここで記録媒体の搬送速度は、CPU901からロジック回路912に書き込まれた速度指示値にて任意に設定可能である。なおロータリエンコーダ910は、搬送モータ205の軸ではなく搬送ローラ列205Aと同軸に備えられたものでもよい。
【0037】
ロジック回路912には、記録媒体206の先端が記録開始位置近傍に到達したことを検出するべく、記録位置より搬送方向上流側に設けた媒体検知センサ911の出力も入力される。そしてロジック回路912は、媒体検知センサ911が記録媒体先端を検出する位置から各記録装置までの搬送方向上の距離に応じて、適切な記録指示信号を各記録装置に出力する。本実施形態では、記録装置116−1〜116−5は搬送方向(図2矢印方向)に2列に並んでおり、搬送方向上流側には記録装置116−1、116−3および116−5が配置され、下流側には記録装置116−2および116-4が配置されている。そのためロジック回路912は、2種の記録指示信号914,915を出力する。なお、記録装置の取り付け位置には誤差のあることを考慮し、媒体検知センサ911から各記録装置までの物理的な距離に応じて、各記録装置毎に記録開始信号914または915に対して独立に補正を加えるようにしてもよい。
【0038】
また、ロジック回路912はエンコーダ910の出力を適切に変換して記録媒体の位置パルス913を生成し、各記録装置はこの位置パルス913に同期して記録動作を行う。なお、位置パルス913の分解能は適宜のものであってよく、例えば、複数の記録ライン(行)分に設定されるものでもよい。さらに、媒体搬送装置117における記録媒体の搬送部の構成としては、図2に示したような固定のメディアステージ208を具えたものに限られない。例えば、記録位置に対する媒体搬送方向の上流側および下流側に配された一対のドラムに架け渡された無端の搬送ベルトを具え、その搬送ベルト上に記録媒体を担持しつつ、ドラムの回転に伴う搬送ベルトの走行によって記録媒体の搬送を行うものでもよい。また、記録媒体の形態は、カット紙状または連続紙状、いずれの記録媒体でも搬送可能である。
【0039】
(画像形成システムの動作概要)
図5は、情報処理装置100と、記録装置116と、媒体搬送装置117との相互の動作手順を示すフローチャートである。ステップS1001で記録実行のため情報処理装置100は、各記録装置への分割記録データを作成しデータの送信を行う。記録装置116はステップS1041で、その分割記録データの受信に応じてキャッピング状態を解除するとともに、VRAM801へのデータ展開を行う。また全ての記録装置116−1〜116−5で受信が完了すると、ステップS1002で情報処理装置100は媒体搬送装置117に搬送開始コマンドを送信する。その後、ステップS1061で媒体搬送装置117は送信されたコマンドに応じてサクションモータ908を駆動し、記録媒体206をメディアステージ208上に吸着する準備を行う。
【0040】
次にステップS1062で搬送モータ205を駆動して記録媒体206の搬送を開始し、ステップS1063で記録媒体206の先端を検知した後、ステップS1064で各記録装置に記録開始信号914および915と、位置パルス913とを送信する。上述の通り、記録開始信号は媒体検知センサ911から各記録装置までの距離に関係して出力される。ステップS1042で記録装置116の記録動作が終了すると、ステップS1043に移行して記録終了ステイタスを情報処理装置100に送信し処理を終了する。この際、各記録ヘッド801をキャッピング機構によってキャッピングすることで、ノズル(吐出口)の乾燥や目詰まり等を防ぐようにする。
【0041】
記録が完了し、記録媒体206がメディアステージ208上から排出されるとステップS1065からステップS1066へ移行して、媒体搬送装置117は情報処理装置100へ搬送終了ステイタスを送信する。次にステップS1067でサクションモータ908を停止して、ステップ1068で搬送モータ205を停止して動作を終了する。
【0042】
(複合プリンタシステムへの信号系)
図6は、記録ユニット200における信号の流れが分かるように示したブロック図である。記録装置116−1〜116−5のそれぞれに接続される信号系としては大きく2系統ある。一方は、情報処理装置100から供給される分割記録データ(動作開始および終了コマンド等を含む)の伝達に係るもの、他方は、媒体搬送装置117から供給される記録タイミングの規定信号(記録開始信号および位置パルスを含む)の伝達に係るものである。前者は、情報処理装置100と記録装置116−1〜116−5とを中継するハブ140を具えている。このハブ140は、情報処理装置100に対しては例えば100BASE−T規格のコネクタ/ケーブル142を介して、また記録装置116−1〜116−5のそれぞれに対しては例えば10BASE−T規格のコネクタ/ケーブル144を介して接続されている。
【0043】
記録タイミングの規定信号の伝達系統は、図6の例では、転送制御回路150と同期回路160とを有し、これらは図4におけるロジック回路912を構成する回路部として設けられていてもよい。転送制御回路150は、搬送モータ205の軸に備えられたロータリエンコーダ910の出力ENCODERと、媒体検知センサ911による記録媒体先端部の検出出力TOFとを同期回路160に供給する。
【0044】
同期回路160には記録動作許可回路166が設けられ、分割画像データの受信の完了に応じた各記録装置116−1〜116−5からの動作準備完了信号PU1−RDY〜PU5−RDYの論理積を取る。これによって、すべての記録装置の動作準備が完了した時点(キャップ状態の解除等)で、記録動作を許可する信号PRN−STARTを出力する。また同期回路160には、動作準備完了信号PU1−RDY〜PU5−RDYに関連した表示を行うLED等の表示部167が設けられ、ユーザの目視による記録装置の動作準備完了の確認に供するようになっている。さらに同期回路160には、ユーザ等が手動で記録装置を強制的にリセットするためのリセット回路部168および、例えば記録媒体1枚分の記録完了を待って一時停止させるためのポーズ回路部169が付加されている。また同期回路160は各記録装置が同期して記録動作を行うための同期信号(Hsync)である位置パルス913(例えば記録媒体の搬送量1インチあたり300個のパルス信号)をエンコーダ出力ENCODERから生成する同期信号発生回路部162を有する。更に同期回路160は、各記録装置の媒体搬送方向上の位置に応じた遅延信号である記録指示信号914、915を記録媒体先端部検出出力TOFから生成する遅延回路164とを有する。
【0045】
記録媒体搬送方向上流側の記録装置116−1、116−3および116−5の記録動作は、媒体検知センサ911からこれら記録装置の配設位置までの距離分だけ遅れをもった遅延信号である記録指示信号(TOF−IN1)914の受信をもって開始する。媒体検知センサ911からこれら記録装置の配設位置までの距離が0であれば、検出出力TOFとほぼ同時に記録指示信号914が供給される。
【0046】
一方、より下流側に配置された記録装置116−2および116-4の記録動作は媒体検知センサ911からこれら記録装置の配設位置までの距離分だけ遅れをもった遅延信号である記録指示信号(TOF−IN2)915の受信をもって開始する。本実施形態では、媒体検知センサ911からこれら記録装置の配設位置までの距離を450mmに設定している。従って、同期信号(Hsync)である位置パルス913が記録媒体の搬送量1インチ(25.4mm)あたり300パルスであれば、検出出力TOFから5315パルス分遅れて記録指示信号915が供給される。
【0047】
なお、上述のように各記録装置の媒体搬送方向の微小な記録位置を個別に補正するために、あるいは記録装置を2列に整列させないような場合を考慮して、各々の記録装置毎に独立して記録指示信号を供給するようにしてもよい。
【0048】
図6から明らかなように、記録装置116−1〜116−5のそれぞれは、情報処理装置100から分割記録データの供給を受けるとともに、媒体搬送装置117から供給される記録タイミングの規定信号に応じ、独立して記録動作を行うものである。つまり、それぞれの記録装置116−1〜116−5は、信号系に関して完結した記録ユニットであって、記録データの供給や記録タイミングが一の記録装置を経由して他の記録装置に伝達されるような構成ではない。記録装置116−1〜116−5は、自らが用いる記録ヘッド811Y〜811Kおよび各記録ヘッドに配列されるノズルに対応してそれぞれにデータを整列し、規定のタイミングにてインク吐出動作を行う手段を個々に有するものである。すなわち記録装置116−1〜116−5は、それぞれ同様のハードウェアを有し、同様のソフトウェアにて動作を行うもので、一の記録装置の動作が他の記録装置の動作に直接影響を与えることはないが、全体として一つの画像データを記録すべく協働する。
【0049】
(2液系の概要)
本実施形態における記録装置116−1〜116−5は、独立して動作可能であることに加え、各記録装置における各記録ヘッド811に対するインク供給系および発泡液供給系の2液系についても互いに独立した構成を有している。
【0050】
図7は、インク(第1の液体)および発泡液(第2の液体)供給系の構成を説明するための模式図である。各記録装置の記録ヘッド811Y、811M、811Cおよび811Kはそれぞれ同じ構成であるため、以下では代表して記録装置116−1のC(シアンインク)についての構成のみ説明する。記録装置116−1における記録ヘッド811Cに対しては、インク供給源であるインクタンク2203Cから、専用のチューブ2204Cを介してインクが分配供給される。同様に、発泡液供給源(第2の液体供給源)である発泡液タンク203Cから、専用のチューブ204Cを介し発泡液が分配供給される。なおインクおよび発泡液の供給方式としては、インクタンクに常時流体連通して連続的にインクが供給されるものでもよいし、記録ヘッド毎に設けたインク供給ユニットに保持されるインクが少なくなった時点で流体連通するように間歇的にインク供給されてもよい。ここで発泡液は、インクよりも低粘度性、発泡性、熱安定性のいずれかの性質が優れている液体であることが好ましい。
【0051】
本実施形態の回復系は、記録ヘッド811の吐出口形成面に接合して、吐出口より強制排出されるインクを受容するキャップを備え、さらに当該受容されたインクを液体流路(第1の連通路)を介して再利用可能に循環させるように構成される。ここでキャップは、記録媒体206搬送面の下側すなわちメディアステージ208の内側にあって、記録ヘッドの吐出口形成面と対向ないし当接可能に設けられる。しかしロール紙など連続紙状の記録媒体を扱う用途を考慮し、記録媒体の取り外しなどを伴わずに回復動作が行えるように、記録媒体206搬送面の上側すなわち記録ヘッド811と同じ側に配置されたものでもよい。
【0052】
以上のように、本実施形態においては、各記録装置における各記録ヘッド811に対するインク供給系および回復系についても、記録装置間で互いに独立した構成を有している。これによって、各記録装置の動作状態すなわち記録量等に応じて、適切な量のインク供給や回復動作が可能となる。
【0053】
(2液系の構成例)
図8は、記録装置116における2液系主要部の配置関係を示した概略斜視図であり、図9は、1つの記録ヘッドに対する2液系の内部構成例を示した概略図である。本実施形態の記録ヘッド811は可動分離膜を備えており、この可動分離膜によってインク流路(第1の流路)と発泡液流路(第2の流路)とが分離されている。また本実施形態の記録ヘッド811に設けられている可動分離膜には凹部(可動部)が設けられており、この凹部を変位させることでインクを吐出口から吐出させる。
【0054】
記録ヘッド811には発泡液接続管およびインク接続管がそれぞれ接続されている。発泡液接続管(循環流路)の一方は、可動分離膜の凹部が常に一定位置で発泡液流路側に凸となるような負圧を発生するための負圧室30に接続されている。また他方は、記録ヘッド毎の発泡液供給ユニット(以下、発泡液サブタンクともいう)40にポンプ48(圧力制御手段)を介して接続されている。また、インク接続管は、記録ヘッド毎のインク供給ユニット940に、一方はポンプ948を介して、他方はバルブ936を介して接続されている。
【0055】
図10(a)〜(f)は、本実施形態の記録ヘッドにおけるインク吐出の様子を時間を追って示した断面図である。吐出口1に連通したインク流路3内(第1の流路内)には、インクの共通液室143から供給されるインクが満たされている。また気泡発生領域7を有する発泡液流路4内(第2の流路内)には、発熱体2から熱エネルギを与えられることにより加熱され発泡する発泡液が満たされている。可動分離膜5の気泡発生領域7と対峙する部分には凹部8が設けられ、その凹部8の支点には角部8aが設けられておりインク流路3に対して凹部を形成している。また、可動分離膜5とオリフィスプレート9とは互いに密着固定され、ここでもそれぞれの液流路内の液体が混ざり合うことはない。なお、発泡液流路4のうち、発熱体2の投影領域近辺が気泡発生領域7である。発泡液が発泡することで可動分離膜5の凹部の膜が押し上げられて、その作用によってインク流路3内のインクが吐出口より吐出して記録媒体に付着することで記録が行われる。
【0056】
図11は、記録ヘッド811のノズル部を部分的に断面にし拡大して示した図である。発熱体2は素子基板10に複数個並んで設けられており、この素子基板10上に発泡液流路4(図10参照)が各発熱体2に対応して複数配設されている。また、可動分離膜5を支持する支持部材11が、各々の発泡液流路4を区画形成する壁を兼ねている。可動分離膜5には複数の凹部8が、各発熱体2の投影領域近辺である気泡発生領域7に面して形成されている。そしてインク流路3は各々の凹部8を含むようにして複数配設されている。但し、図11では各々の第1の液流路3を区画形成する壁28が置かれる位置を点線で示している。
【0057】
図12(a)〜(c)は、発泡液の量が異なる負圧室30(図9参照)の内部をそれぞれ示した概略図である。負圧室30には、圧力調整バルブ35(図9参照)を介して機械式の発泡液ポンプ(以下、「メカポンプ」ともいう)36が接続されており、負圧室30への発泡液供給を制御している。このメカポンプ36によって負圧室30内の圧力を制御可能になっている。また、圧力調整バルブ35は、流路内における発泡液の流抵抗の調整が可能である。本実施形態における発泡液ポンプ36はギアポンプである。図12(a)は、発泡液ポンプ36による発泡液の供給量が多い場合を示しており、図12(c)は供給量が少ない場合を示している。そしてこの発泡液の量は負圧室30内の圧力と所定の関係にあり、発泡液の量を検出することで、間接的に負圧室30内の圧力を検出可能である。そのため、負圧室30には光学式センサ149(受光素子149C、発光素子149B)が設けられており、板状発泡液保持部33には反射板149Aが取り付けられている。発光素子149Bからの光は、反射板149Aによって反射されてから受光素子149Cに受光され、その受光量は、図12(a)のように負圧室30内の発泡液量が多い時に多くなり、図12(b)、(c)のように発泡液量が減少するにつれて減少する。したがってセンサ149は、負圧室30内の発泡液量を検知することになり、その発泡液量と負圧室30内の負圧との関係から、間接的に負圧室30内の圧力を圧力損失が無く検出可能である。
【0058】
また、負圧室30内の圧力を検知する方法として、は圧力センサによって直接圧力を検出してもよい。その場合は、圧力センサ49のように板状発泡液保持部33に直接取り付けることで圧力検出することが可能である。このように、負圧室30内の圧力を検出するには、種々の検出方式のものを用いることができる。
【0059】
同様に、インク流路内の圧力を検出するための圧力センサ949(図9参照)も、インク流路内負圧を直接的に検出する検出方式のものの他、種々の検出方式のものを用いることができる。このような、圧力検出手段による圧力の検出結果に基づいてポンプ(負圧付与手段)を制御することで発泡液流路内の圧力を制御する。
【0060】
ここで、バルブ35を含め、発泡液およびインク供給経路の各部に配されるバルブとしては、制御信号に応じ流路を適切に開閉または流量を適切に制御できるものであれば、いかなる形態のものが用いられてもよい。
【0061】
図13は、本実施形態における発泡液およびインク流路に設けられたバルブを説明するための模式図である。バルブ58は液流路上に介挿されたボール状の弁体56と、この弁体56を受けるシート体57とを備え、ソレノイドにより進退するプランジャ55に弁体56を接続した構成である。この場合には、ソレノイドへの通電を制御して、弁体56をシート体57に対して受容/離脱させることで液流路を開閉することができる。図13(a)は液流路の開状態、図13(b)は液流路の閉状態を示す。しかしバルブ35に関しては、応答性が高い高性能の負圧制御を可能とするために、ピエゾ素子のような自重の軽い素子をアクチュエータとして用いたものとすることもできる。
【0062】
またポンプ36を含め、発泡液およびインク供給経路の各部に配されるポンプとしては、駆動信号に応じて液を移送可能なものであれば、いかなる形態のものが用いられてもよい。しかし特にポンプ36は、本実施形態では発泡液の流れの方向を切り替え可能で、また発泡液流量を調節可能なものとする。図9に示した例では、負圧室30に対して発泡液を供給する方向(以下、この方向への回転を正転という)と、負圧室30から発泡液を抜き出す方向(以下、この方向への回転を逆転という)と、に選択的にインクを移送可能なギアポンプが示されている。ポンプ36は、系を循環可能にする適切な量の発泡液を収納する発泡液サブタンク40に接続されている。
【0063】
発泡液サブタンク40は、発泡液収納空間の一部を画成し且つ収納する発泡液量に応じて変形可能なバッファ部材と、発泡液メインタンク203に接続される発泡液チューブ204(図7参照)との間で適宜発泡液連通を行うジョイント42と、を有している。
【0064】
図14(a)、(b)は、メインタンクに連列されるチューブと記録ヘッドとを連結するジョイントの42構成例を示す縦断側面図である。このジョイント42は、発泡液サブタンク内部の発泡液が少なくなった際に、発泡液チューブ204に設けられたジョイント43に接続されることによって、発泡液メインタンク203から発泡液サブタンク40にインクを適宜補充できる構成になっている。ジョイント42、43のそれぞれの対向部には、連通孔が形成されたバルブゴム66A、66Bが設けられている。ジョイント42、43が接続されていないときには、図14(a)のように、バルブばね65A、65Bによって付勢されているバルブボール63A、64Aがバルブゴム66A、66Bにおける連通孔の開口部が閉塞している。これにより、ジョイント42、43のそれぞれに接続されている発泡液流路は、いずれも外気と遮断されている。
【0065】
ジョイント42、43を接続するときは、図14(b)のように、それらを接近させて、バルブゴム66A、66Bを密着させると共に、バルブボール63Bに設けられたボールレバー67によってバルブボール63Aを押す。この結果、バルブボール63A、64Aがバルブゴム66A、66Bから離れて、ジョイント42、43のそれぞれに接続されている発泡液流路が互いに接続される。
【0066】
なお、ジョイント42、43の構成としては、非接続時に開口部を遮断して発泡液漏洩を阻止し、また外気と遮断した状態で発泡液流路を接続可能な構成であれば、いかなるものでもよい。また、このようにジョイントの適宜の接続および分離を行うことで流体連通のオン/オフを行うものの他、供給経路自体は常時接続しておいて、開閉バルブによって流体連通のオン/オフを行うようにしてもよい。さらにまた、インクサブタンク940の構成も上記と同様であり、分割画像データの内容に応じて各記録装置間のインク要求量が異なるときに、各記録装置間のインク供給が互いに干渉しないような構成であればよい。
【0067】
図15(a)、(b)は、インクタンク2203(2203Y、2203M、2203C、2203K)の概略構成図である。本実施形態のインクタンク2203は、インクを収容した可撓性のインク袋69と、それを収納するタンクハウジング68とを含む。タンクハウジング68には、大気連通孔71が形成されていると共に、記憶素子70が取付けられている。記憶素子70には、インクタンク2203に関連する種々の情報を記憶させることができる。例えば、収容するインクの種類、インクの残量、インクタンクの形式などの情報を書き込み、それを必要に応じて読み出して利用することができる。インク袋69は、その内部に収容するインクの消費に応じて図15(a)、(b)のように変形する。したがって、インク袋69内のインクを外気と遮断した状態のまま供給することができる。また、発泡液タンク203の構成もインクタンク2203の構成と同様である。
【0068】
記録ヘッド811と接続される発泡液の接続管(連通流路)の他方は、図9のように、ポンプ48を介して発泡液サブタンク40と接続されている。このポンプ48とポンプ36との作動によって発泡液サブタンク40、負圧室30および記録ヘッド811間で発泡液を循環させることができる。
【0069】
同様に記録ヘッド811と接続されるインクの接続管の他方は、バルブ948を介してインクサブタンク940と接続されている。このポンプ948の作動によって、インクサブタンク940と記録ヘッド811間でインクを循環させることができる。
【0070】
また記録装置116は、記録ヘッド811のインク吐出性能を健全な状態に維持、もしくは回復するための回復系機構を備え、その一部として記録ヘッド811を密閉キャップするキャップ44(図9参照)を備えている。回復動作時、バルブ936は閉じた状態でポンプ948を動作させる。すると記録ヘッド811の内部が急激に加圧され、記録ヘッド811の各ノズルから比較的大量のインクが短時間で強制排出される。この強制排出によってノズル内の異物や増粘インク等が排出されて、各ノズルの吐出状態は良好な状態に回復する。なお強制排出されたインクはキャップ44内のインク溜りに排出されるが、予め動作中であるポンプ945の作用により、バルブ947を介してインクサブタンク940へ素早く回収、再利用される。その際、排出された異物はフィルタ(不図示)等で除去され、増粘したインクはインクサブタンク940内で薄められて通常のインクの粘度になる。
【0071】
その後記録装置116は、不図示のワイパブレードによる記録ヘッド811のノズル列のワイプ動作、および画像の記録に寄与しないインクを吐出する予備的な吐出動作を行って、記録ヘッド811の回復動作が完了する。
【0072】
本実施形態の記録装置116ないしは記録ヘッド811は、このような供給系を備えることにより、画像形成システムや画像形成装置から分離して、また他の記録装置から独立して、様々な条件下での制御が可能となり、独立した設置、交換も可能となる。
【0073】
(特徴的構成)
(発泡液系の動作)
以下、記録装置116の使用状況などに応じた発泡液系の動作について説明する。
【0074】
記録待機時(図10および図16参照)
図16は、記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。記録開始前などの通常の待機状態では、図10(a)のように、可動分離膜5の凹部8のたるみが発泡液流路4側に凸の状態になり、一定の位置で安定性を維持するために、記録ヘッド811内の発泡液に対して負圧を作用させる。すなわち、図16のように、ポンプ48を止めて記録ヘッド811から流路(第2の連通路)を経て発泡液サブタンク40への発泡液の戻りを制限した上、ポンプ36を逆転させて、負圧室30内の発泡液を発泡液サブタンク40内に戻す。これにより、記録ヘッド811内の発泡液に作用する負圧が増大する。そして図10(a)のように、可動分離膜5の凹部8のたるみが発泡液流路4側に一定の位置で安定する負圧状態を維持して記録の開始を待つ。発泡液サブタンク40は、負圧室30から戻された発泡液の分だけ容積が増大する。
【0075】
記録時の制御(図10および図17参照)
図17は、記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。負圧調整バルブ35およびメカポンプ36を適切に制御することにより、非発泡時の可動分離膜5の凹部8のたるみをより安定に維持できる。一般的には、図10(d)のように、発泡により可動分離膜5はインク流路側3に変位し、図10(e)のように、消泡に従い可動分離膜5は発泡液流路側4に変位しようとする。しかし、その際に、インク流路側のインクの再充填(=メニスカスの復帰)に従い、インク流路側に負圧が発生するため、可動分離膜5の凹部8のたるみが確実に元の状態に戻るとは限らない。そこで、ポンプ48を止めて記録ヘッド811から発泡液サブタンク40への発泡液の戻りを制限した上、ポンプ36を逆転させて、負圧室30内の発泡液を発泡液サブタンク40内に戻す。これにより、記録ヘッド811内の発泡液に作用する負圧を増大させ、図10(f)のように、可動分離膜5の凹部8のたるみを発泡液流路4側に一定の位置で安定させる。
【0076】
また、記録装置116ないし記録ヘッド811が記録する画像データの内容に対応する様々な記録デューティ(記録密度)に応じて、非発泡時の可動分離膜5の凹部8のたるみをより安定して維持することができる。例えば、記録デューティが低い場合には、インク側にかかる負圧も小さいため、ポンプ36を低速で逆転させて負圧室30内の発泡液を発泡液サブタンク40内に戻す。さらに非発泡時の可動分離膜5の凹部8のたるみを適正化するために、記録の直後に負圧調整バルブ35を制御して発泡液側にかかる負圧を高精度に安定させる。その場合、流路が開かれる割合は比較的少なく、且つ開度は比較的小さい範囲で制御されることになる。
【0077】
また記録デューティ(記録密度)が高い場合には、インク側にかかる負圧が大きくなるため、ポンプ36をより高速で逆転させて負圧室30内の発泡液を発泡液サブタンク40内に戻すと共に、負圧調整バルブ35を制御して負圧を安定化させる。その場合、流路が開かれる割合は比較的多くなり、且つ開度は比較的大きい範囲で制御されることになる。
【0078】
負圧調整バルブ35の制御は、負圧室30、すなわち発泡液側の負圧を検出するセンサ49およびインク側の負圧を検出するセンサ949の出力信号をフィードバックすることにより行うことができる。また後述するように、記録データに基づいて予め負圧調整バルブ35とポンプ36を関連的に制御することもできる。
【0079】
回復動作(メンテナンス)時の制御(図10および図18参照)
図18は、記録ヘッド811の吐出口から、画像の記録に寄与しないインクを強制的に排出させる回復動作の説明図である。この回復動作においては、バルブ936は閉じた状態でポンプ948を稼動させる。すると、記録ヘッド811のインク流路側は急激に加圧され、記録ヘッド811の各ノズルから比較的大量のインクが短時間で強制排出される。この瞬間、各ノズルは健全な状態に回復する。なお、強制排出されたインクはキャップ44内のインク溜りに排出されるが、予め動作中であるポンプ945の作用により、バルブ947を介してインクサブタンク940へ素早く回収、再利用される。この後、不図示のワイパブレードによる記録ヘッド811のノズル列のワイピングおよび予備的な吐出動作を行って記録ヘッド811の回復動作が完了する。
【0080】
この間、インク流路側が加圧されているため、可動分離膜5の凹部8は発泡液流路4側へたるむ(発泡液流路側に凸の状態)。しかしこの際、可動分離膜5にかかる余分な圧力を緩和させるため、ポンプ36を正転させて発泡液流路側に正圧を加え、さらに適正化するために、負圧調整バルブ35を制御して圧力を高精度に安定させる。この際、可動分離膜5の凹部8のたるみが記録待機時の図10(a)と同様の位置で安定して維持される範囲で圧力を制御する。このようにすることにより、可動分離膜5に余分な圧力がかかることを防ぎ、可動分離膜5の寿命を延ばすことが可能となる。そして回復動作後は、記録待機時と同様の、可動分離膜5の凹部8のたるみが発泡液流路4側に一定の位置で安定する負圧状態を維持するよう制御する。
【0081】
このように、記録ヘッドに供給する発泡液の負圧を積極的に制御して、発泡液側に適正な負圧を安定して印加することで、非発泡時の可動分離膜5の凹部8のたるみをより安定して維持させることが可能となる。これによって、吐出時の吐出量が一定で安定的にインクを吐出することが可能な記録装置を実現することができた。
【0082】
(第2の実施形態)
図19は、1つの記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。記録ヘッド811には発泡液接続管およびインク接続管がそれぞれ接続されている。発泡液接続管の一方は、記録ヘッド811の可動分離膜5が発泡液流路4側に常に一定位置で凹部8を形成するに好ましい負圧を発生するための負圧室30に接続されている。また発泡液接続管の他方は、記録ヘッド毎の発泡液供給ユニット(以下、発泡液サブタンクともいう)40にポンプ48を介して接続されている。また、同様にインク接続管の一方は、記録ヘッド811のインク吐出口1に形成されるインクメニスカスの保持力と平衡する好ましい負圧を発生するための負圧室1930に接続されている。そしてインク接続管の他方は、記録ヘッド811毎のインク供給ユニット(以下、インクサブタンクともいう)940にポンプ948を介して接続されている。
【0083】
圧力センサ49は、負圧室30内の負圧を直接的に検出する検出方式のものの他、種々の検出方式のものを用いることができる。同様に、圧力センサ949としては、負圧室1930内の負圧を直接的に検出する検出方式のものの他、種々の検出方式のものを用いることができる。
【0084】
負圧室30には、圧力調整バルブ35を介して機械式の発泡液ポンプ36が接続されており、負圧室30への発泡液供給を制御している。本実施形態における発泡液ポンプ36はギアポンプである。ポンプ36は、系を循環する適切な量の発泡液を収納する発泡液サブタンク40に接続されている。
【0085】
負圧室1930には、圧力調整バルブ1935を介して機械式のインクポンプ1936が接続されており、負圧室1930へのインク供給を制御している。本実施形態におけるインクポンプ1936はギアポンプである。ポンプ1936は、系を循環する適切な量のインクを収納するインクサブタンク940に接続されている。
【0086】
また、インクサブタンク940の構成も上記と同様であり、分割画像データの内容に応じて各記録装置間のインク要求量が異なるときに、各記録装置間のインク供給が互いに干渉しないような構成であればよい。
【0087】
記録ヘッド811の接続管の他方は、ポンプ48を介して発泡液サブタンク40と接続されており、このポンプ48とポンプ36との作動によって、発泡液サブタンク40、負圧室30および記録ヘッド811間で発泡液を循環させることができる。同様に、ポンプ948を介してインクサブタンク940と接続されており、このポンプ948の作動によって、インクサブタンク940と記録ヘッド811間でインクを循環させることができる。また記録装置116は、記録ヘッド811のインク吐出性能を健全な状態に維持、もしくは回復する為の回復系機構を備え、その一部として記録ヘッド811を密閉キャップするキャップ44を備える。
【0088】
本実施形態の記録装置116ないしは記録ヘッド811は、このような供給系を備えることで、負圧室1930でインク流路側の負圧を制御することにより、インクメニスカスの保持力を安定させることができる。また、負圧室30で発泡液流路側の負圧を制御することにより、記録ヘッド811の可動分離膜5の凹部8を安定した位置に形成することがそれぞれ可能となり、より安定した吐出を行うことができる。
【0089】
このように、記録ヘッドに供給する発泡液の負圧を積極的に制御して、発泡液側に適正な負圧を安定して印加することで、非発泡時の可動分離膜5の凹部8のたるみをより安定して維持させることが可能となる。これによって、吐出時の吐出量が一定で安定的にインクを吐出することが可能な記録装置を実現することができた。
【0090】
なお、本発明において、本実施形態で採用した複数の記録装置は、それぞれが互いに独立性を有するものである。すなわち、複数の記録装置は各々相互の関係において、空間(配置)上独立したものであり、また信号系およびインク系においても独立している。そのため、各記録装置の動作状態すなわち記録量等に応じて、適切な量のインク供給や回復動作が可能となる。また、画像形成システムや画像形成装置から分離して、また他の記録装置から独立して、様々な条件下において記録装置を制御することができ、記録装置の単体での取り引きや取り扱いも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1の実施形態の液体吐出装置を用いた画像形成システムの概要を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の液体吐出装置を用いた画像形成システムの概要を示す外観斜視図である。
【図3】第1の実施形態の記録装置における制御系の構成例を示した図である。
【図4】媒体搬送装置の制御系の構成例を示したブロック図である。
【図5】情報処理装置と、記録装置と、媒体搬送装置との相互の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】記録ユニットにおける信号の流れが分かるように示したブロック図である。
【図7】インクおよび発泡液供給系の構成を説明するための模式図である。
【図8】記録装置における2液系主要部の配置関係を示した概略斜視図である。
【図9】1つの記録ヘッドに対する2液系の内部構成例を示した概略図である。
【図10】(a)〜(f)は、本実施形態の記録ヘッドにおけるインク吐出の様子を時間を追って示した断面図である。
【図11】記録ヘッドのノズル部を拡大して示した図である。
【図12】(a)〜(c)は、発泡液の量が異なる負圧室の内部をそれぞれ示した概略図である。
【図13】第1の実施形態における発泡液およびインク流路に設けられたバルブを説明するための模式図である。
【図14】(a)、(b)は、メインタンクに連列されるチューブと記録ヘッドとを連結するジョイントの構成例を示す縦断側面図である。
【図15】(a)、(b)は、インクタンクの概略構成図である。
【図16】記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。
【図17】記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。
【図18】記録ヘッドの吐出口から、画像の記録に寄与しないインクを強制的に排出させる回復動作の説明図である。
【図19】記録ヘッドに対する2液系の内部構成を示した概略図である。
【符号の説明】
【0092】
4 発泡液流路
5 可動分離膜
8 凹部
30 負圧室
33 板状発泡液保持部
35 負圧調整バルブ
36 ポンプ
40 発泡液サブタンク
49 圧力センサ
116 記録装置
811 記録ヘッド
940 インクサブタンク
949 圧力センサ
1930 負圧室
1936 インクポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して吐出される第1の液体が流れる第1の流路と、第2の液体が流れ、可動部を備えた分離膜によって前記第1の流路と分離された第2の流路と、を備えた記録手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えた液体吐出装置において、
前記第2の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、
該圧力制御手段によって、前記第1の流路内の圧力よりも前記第2の流路内の圧力を低く制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第2の流路の前記分離膜と対峙する位置に発熱体を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記発熱体は前記第2の液体を加熱して気泡を発生させることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1の液体と前記第2の液体とは異なる液体であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2の液体は前記第1の液体と比較して、低粘度性、発泡性、熱安定性のうち少なくとも1つの性質において優れていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
圧力検出手段を備え、前記圧力制御手段は前記圧力検出手段の検出結果に基づいて負圧の付与手段を制御することで前記第2の流路内の圧力を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記圧力検出手段は、前記第1の流路内と前記第2の流路内の圧力を圧力損失が無く検出可能であることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1の連通路は、液体供給源から前記記録手段に前記第1の液体を供給するための液体流路であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第1の連通路は、前記記録手段から前記液体供給源に前記第1の液体を戻すための戻し流路であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記第2の連通路は、第2の液体供給源から前記記録手段に前記第2の液体を供給するための液体流路であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記第2の連通路は、前記記録手段から前記第2の液体供給源に前記第2の液体を戻すための戻し通路であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記負圧付与手段は、前記第2の流路に備えられるポンプとバルブとを含み、前記圧力制御手段は、前記ポンプと前記バルブとを関連的に制御することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記ポンプは、前記第2の流路における前記第2の液体の加圧方向の変更が可能であることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記第2の流路は、前記第2の液体を循環可能な循環流路と、該循環流路と前記記録手段とを連通する連通流路とを含み、前記ポンプは前記循環流路に備えられ、前記バルブは、前記循環流路および前記連通流路の少なくとも一方に備えられていることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記バルブは、前記循環流路に備えられて前記第2の液体の流抵抗の調整が可能であることを特徴とする請求項14に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記記録手段から前記第1の液体を吐出し、前記記録媒体に前記第1の液体を付着させることで記録を行う請求項1ないし請求項15のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項17】
複数の液体吐出装置で複合プリントシステムを構成することを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項18】
記録媒体に対して吐出される第1の液体が流れる第1の流路と、第2の液体が流れ、可動部を備えた分離膜によって前記第1の流路と分離された第2の流路と、を備えた記録手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えた液体吐出装置において、
前記第1の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、
前記第2の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、
該圧力制御手段によって、前記第1の流路内の圧力よりも前記第2の流路内の圧力を低く制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項19】
圧力検出手段を備え、前記圧力制御手段は前記圧力検出手段の検出結果に基づいて負圧の付与手段を制御することで前記第1の流路内または前記第2の流路内の圧力を制御することを特徴とする請求項18に記載の液体吐出装置。
【請求項1】
記録媒体に対して吐出される第1の液体が流れる第1の流路と、第2の液体が流れ、可動部を備えた分離膜によって前記第1の流路と分離された第2の流路と、を備えた記録手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えた液体吐出装置において、
前記第2の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、
該圧力制御手段によって、前記第1の流路内の圧力よりも前記第2の流路内の圧力を低く制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第2の流路の前記分離膜と対峙する位置に発熱体を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記発熱体は前記第2の液体を加熱して気泡を発生させることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1の液体と前記第2の液体とは異なる液体であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2の液体は前記第1の液体と比較して、低粘度性、発泡性、熱安定性のうち少なくとも1つの性質において優れていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
圧力検出手段を備え、前記圧力制御手段は前記圧力検出手段の検出結果に基づいて負圧の付与手段を制御することで前記第2の流路内の圧力を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記圧力検出手段は、前記第1の流路内と前記第2の流路内の圧力を圧力損失が無く検出可能であることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1の連通路は、液体供給源から前記記録手段に前記第1の液体を供給するための液体流路であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第1の連通路は、前記記録手段から前記液体供給源に前記第1の液体を戻すための戻し流路であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記第2の連通路は、第2の液体供給源から前記記録手段に前記第2の液体を供給するための液体流路であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記第2の連通路は、前記記録手段から前記第2の液体供給源に前記第2の液体を戻すための戻し通路であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記負圧付与手段は、前記第2の流路に備えられるポンプとバルブとを含み、前記圧力制御手段は、前記ポンプと前記バルブとを関連的に制御することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記ポンプは、前記第2の流路における前記第2の液体の加圧方向の変更が可能であることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記第2の流路は、前記第2の液体を循環可能な循環流路と、該循環流路と前記記録手段とを連通する連通流路とを含み、前記ポンプは前記循環流路に備えられ、前記バルブは、前記循環流路および前記連通流路の少なくとも一方に備えられていることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記バルブは、前記循環流路に備えられて前記第2の液体の流抵抗の調整が可能であることを特徴とする請求項14に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記記録手段から前記第1の液体を吐出し、前記記録媒体に前記第1の液体を付着させることで記録を行う請求項1ないし請求項15のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項17】
複数の液体吐出装置で複合プリントシステムを構成することを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項18】
記録媒体に対して吐出される第1の液体が流れる第1の流路と、第2の液体が流れ、可動部を備えた分離膜によって前記第1の流路と分離された第2の流路と、を備えた記録手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えた液体吐出装置において、
前記第1の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、
前記第2の流路内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、
該圧力制御手段によって、前記第1の流路内の圧力よりも前記第2の流路内の圧力を低く制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項19】
圧力検出手段を備え、前記圧力制御手段は前記圧力検出手段の検出結果に基づいて負圧の付与手段を制御することで前記第1の流路内または前記第2の流路内の圧力を制御することを特徴とする請求項18に記載の液体吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−137380(P2010−137380A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313651(P2008−313651)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
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