説明

液体吐出装置

【課題】液体吐出時の状態、待機時の状態、及びクリーニング時の状態を簡単に切り替えられるようにする。
【解決手段】ラインヘッドのインク吐出面に対向した位置にあるときに記録用紙を載置可能になるプラテンユニット40と、インク吐出面に対向した位置にあるときにインク吐出面と当接可能になるキャップユニット50と、ラインヘッドの下方に配置され、プラテンユニット40及びキャップユニット50を上下に揺動させてプラテンユニット40又はキャップユニット50をインク吐出面に選択的に対向させることが可能な揺動アーム61と、揺動アーム61によるプラテンユニット40及びキャップユニット50の揺動位置にかかわらず、プラテンユニット40及びキャップユニット50の水平姿勢を維持させるためのプラテン用アーム62及びヘッドキャップ用アーム63とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出するためのノズル列が形成された液体吐出ヘッドにおいて、液体吐出時の状態から待機時の状態やクリーニング時の状態に簡単に切り替えられるようにした液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の液体吐出装置は、液体吐出ヘッドに形成されたノズル列から液体を吐出し、記録用紙に画像等を形成している。そのため、液体吐出ヘッドの液体吐出面(ノズル列の形成部分)にホコリや紙粉等が付着していたり、液体吐出面が余計な液体(インク等)で汚れている状態で画像等を形成すると、印画品質が低下してしまう。また、待機中に液体吐出面が乾燥してしまうと、ノズルの目詰まりが生じる。
【0003】
そこで、印画品質の低下を防止して液体吐出ヘッドの性能を維持するため、目的に応じた様々なメンテナンスの方法が知られている。例えば、液体吐出ヘッドの液体吐出面をキャッピングすることにより、ホコリや紙粉等の付着、乾燥から液体吐出面を保護する技術がある。
【0004】
具体的には、上面が開口した浅い箱状のキャップユニットを液体吐出面に対向するように配置する。そして、非印画時等の待機時に、キャップユニットを液体吐出面に当接させることによってノズル列の周囲を覆う。これにより、キャップユニット内が密閉された状態となり、ホコリや紙粉等から液体吐出面が保護されるとともに、乾燥しにくくなる。その結果、ノズルの目詰まりを防止できるようになる。
なお、印画時には、液体吐出面からキャップユニットを開放して液体を吐出することにより、記録用紙に印画を行う。
【0005】
また、別のメンテナンス技術として、液体吐出ヘッドの液体吐出面にゴム質のブレードや多孔質体で形成されたローラを押し当てて移動させ、液体吐出面をクリーニングする技術がある。このようなワイピング方式によれば、液体吐出面に付着した汚れ、インク溜まり、増粘又は固化したインク等をふき取って除去することができる。そのため、ワイピングによって液体吐出面が清潔な状態に保たれ、液体の吐出性能を安定化させることができる。
【0006】
このように、液体吐出ヘッドのメンテナンス技術として、液体吐出面をキャッピングしたりワイピングしたりする技術が知られている。
しかし、キャッピングやワイピングを行うためには、液体吐出ヘッドとメンテナンス装置(キャップユニット、ブレード又はローラ)とを相対的に移動させなければならない。特に、液体吐出ヘッドの長さが用紙幅に相当するラインヘッド式のインクジェットプリンタにおいては、ラインヘッドが大型かつ精巧である。そのため、シリアル式のインクジェットプリンタのように、シリアルヘッドを印画位置から退避させてキャッピングやワイピングを行うことは、非能率的である。
【0007】
したがって、ラインヘッドの場合は特に、液体吐出ヘッド(ラインヘッド)を固定してメンテナンス装置を移動させることが好ましい。例えば、固定された液体吐出ヘッドの液体吐出面に対し、メンテナンス装置を構成するキャップユニットを昇降させたり、ブレードやローラを平行移動させる。そして、このようなメンテナンス動作が相互に干渉しないように、物理的な配慮をした技術が開示されている。
【0008】
具体的には、ラインヘッドの液体吐出面を密閉可能なキャップユニットを液体吐出面に対向するように配置し、液体吐出面とキャップユニットとの間に位置するプラテンには、キャップユニット又はラインヘッドの通過を可能とする開口部を形成する。そして、インクジェットプリンタの待機時は、プラテンの開口部を通して、キャップユニットによる液体吐出面の密閉を可能とする技術である。
【0009】
また、液体吐出ヘッドの下方に回転体を配置し、この回転体に、ブレードやヘッドキャップ等のメンテナンス部と、記録用紙を裏面から支持するためのリブ状のプラテンとを設けた技術も開示されている。この技術によれば、回転体を回転させることにより、キャッピング(待機時)、ワイピング(クリーニング時)、プライミング(クリーニング時)、及び印画の4種類の状態を切り替えられる。そのため、メンテナンス装置(回転体)を前後又は左右に大きく移動させる必要がないので、メンテナンスに要する時間を短縮できるだけでなく、メンテナンス機構を簡素化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−291273号公報
【特許文献2】特開2001−71521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1の技術(プラテンにキャップユニット等の通過を可能とする開口部を形成する技術)の場合には、キャップユニット等が通過できるような開口部をプラテンに形成するため、ノズル数や色構成の多いラインヘッドほど開口部面積が増大する。その結果、プラテンによって記録用紙(液体の吐出対象)を支持し、記録用紙の平面性を維持することが困難となり、別途、開口部を開閉するための遮蔽部材が必要となる。
【0012】
一方、特許文献2の技術(回転体にヘッドキャップ等を設ける技術)の場合には、非キャッピング時に、インクの廃液が収容されている可能性のあるキャップ部が反転又は傾斜状態となる。そのため、非キャッピング時の状態に移行するときに廃液がこぼれ落ち、周囲を汚損するおそれがある。また、乾燥防止のための保湿液があれば、保湿液も同様に流出しやすく、多孔質体に保湿液を含浸させたとしても、反転又は傾斜時に保湿液がこぼれ落ちる可能性がある。さらにまた、回転体が回転すると、キャップ部内に溜まった廃液を回転体の外部に排出するための排液チューブがねじれてしまう。
【0013】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、液体の吐出対象の支持や廃液の処理に問題がなく、液体吐出時の状態、待機時の状態、及びクリーニング時の状態を簡単に切り替えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の解決手段により、上述の課題を解決する。
請求項1に記載の発明は、液体を吐出するための複数のノズルと、各前記ノズルを一方向に配列したノズル列が形成された液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に対向した位置にあるときに液体の吐出対象を載置可能になるプラテンユニットと、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に対向した位置にあるときに前記ノズル列の形成部分と当接可能になるキャップユニットと、前記液体吐出ヘッドの下方に配置され、前記プラテンユニット及び前記キャップユニットを上下に揺動させて前記プラテンユニット又は前記キャップユニットを前記ノズル列の形成部分に選択的に対向させることが可能な揺動手段と、前記揺動手段による前記プラテンユニット及び前記キャップユニットの揺動位置にかかわらず、前記プラテンユニット及び前記キャップユニットの水平姿勢を維持させるための姿勢維持手段とを有する液体吐出装置である。
【0015】
(作用)
上記の請求項1に記載の発明は、プラテンユニット及びキャップユニットを上下に揺動させる揺動手段を有しているので、プラテンユニット又はキャップユニットをノズル列の形成部分に選択的に対向させることができる。また、プラテンユニット及びキャップユニットは、姿勢維持手段により、プラテンユニット及びキャップユニットの揺動位置にかかわらず、水平姿勢が維持される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水平姿勢に維持されたプラテンユニットにより、液体の吐出対象の平面性が維持される。また、水平姿勢に維持されたキャップユニットにより、キャップユニット内の廃液がこぼれ落ちることがない。そして、揺動手段によってプラテンユニット及びキャップユニットを上下に揺動させることにより、液体吐出時の状態、待機時の状態、及びクリーニング時の状態を簡単に切り替えられる
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)である。
【図2】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す斜視図である。
【図3】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおけるプラテンユニット及びキャップユニットを示す斜視図である。
【図4】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおけるラインヘッドを示す斜視図である。
【図5】図3に示すラインヘッド中の1つのヘッドモジュールを示す分解斜視図である。
【図6】図4に示すヘッドモジュールのインク吐出面側を示す斜視図、及びヘッドモジュール中の1つのヘッドチップを示す断面図である。
【図7】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタのキャッピング時の状態を示す正面図(一部断面図)である。
【図8】図7に示すインクジェットプリンタにおけるインクの空吐出中の状態、及びインク吐出面の湿潤中の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおけるプラテンユニット及びキャップユニットの揺動の第1段階を示す斜視図である。
【図10】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおけるプラテンユニット及びキャップユニットの揺動の第2段階を示す斜視図である。
【図11】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおけるプラテンユニット及びキャップユニットの揺動の第3段階を示す斜視図である。
【図12】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおけるプラテンユニット及びキャップユニットの揺動の第4段階を示す斜視図である。
【図13】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおけるプラテンユニット及びキャップユニットの揺動の第5段階を示す斜視図である。
【図14】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタのクリーニング時の状態を示す正面図(一部断面図)である。
【図15】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタのクリーニング時の状態を示す斜視図である。
【図16】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタのクリーニング時の状態を示す側面図(一部断面図)である。
【図17】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第2実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
ここで、本発明における液体吐出装置は、以下の実施の形態では、液体としてインクを吐出するインクジェットプリンタ10,80であるとする。また、インクジェットプリンタ10,80は、ラインヘッド式となっており、印画幅分(例えば、A4サイズ)のラインヘッド20(本発明における液体吐出ヘッドに相当する)を備えている。さらにまた、インクジェットプリンタ10,80は、フルカラー対応となっており、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色のインクを吐出する。
なお、説明は、以下の順序で行う

1.第1の実施の形態(キャップユニット:ラインヘッドに対応する大きさの例)
2.第2の実施の形態(キャップユニット:インク色ごとに別々にした例)

【0019】
<1.第1の実施の形態>
[液体吐出装置の構成例]

図1は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す正面図(一部断面図)である。
また、図2は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す斜視図である。
さらに、図3は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10におけるプラテンユニット40及びキャップユニット50を示す斜視図である。
図1に示すように、第1実施形態のインクジェットプリンタ10は、給紙部(図示せず)から搬送された記録用紙11(本発明における液体の吐出対象に相当する)に対して印画を行う。そのため、記録用紙11を給紙する給紙ローラ12と、印画が行われた記録用紙11をペーパトレイ(図示せず)に排紙する排紙ローラ13とを備えている。
【0020】
また、インクジェットプリンタ10は、記録用紙11に向けてインクを吐出し、画像を形成するためのラインヘッド20を備えている。そして、ラインヘッド20は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のインクをそれぞれ別々に吐出する4つのヘッドモジュール30によって構成されており、各色のインクは、ノズル31から吐出される。
なお、各ヘッドモジュール30は、ラインヘッド20のヘッドフレーム21に保持されている。
【0021】
さらにまた、インクジェットプリンタ10は、上面に記録用紙11を載置可能なプラテンユニット40を備えている。プラテンユニット40は、各ノズル31に対向する位置で記録用紙11の裏面側を支持する。そして、記録用紙11を円滑に搬送するため、プラテンユニット40の表面には、搬送方向に沿う複数のリブ41が突設されており、部分的に記録用紙11と接触するようになっている。そのため、給紙部(図示せず)から搬送された記録用紙11は、給紙ローラ12によってリブ41上に移動し、略水平に載置される。さらに、印画が行われた記録用紙11は、排紙ローラ13によってリブ41上から離れ、排紙部(図示せず)に排出される。
【0022】
ここで、プラテンユニット40は、各リブ41の周囲が液体収容部となっており、液体収容部には、インクを吸収可能な連続気孔の多孔質体42が挿入されている。多孔質体42は、例えば、PVA(polyvinyl alcohol)等の親水性の高い材質で形成されたスポンジ状の液体吸収体であり、各リブ41の周囲を覆って配置されている。そのため、多孔質体42によって吸水・保水能力が高められ、ノズル31の乾燥等を防止するために、印画の合間にリブ41を避けて空吐出されたインクを能率良く受け入れることができる。
【0023】
また、多孔質体42に蓄積された廃インク(液体収容部に収容された廃インク)は、吸引ポンプ(図示せず)により、液体収容部の液体排出口に接続された軟質のチューブ43を通して外部に排出されるようになっている。これにより、廃インクを必要に応じて適度なタイミングで吸引でき、多孔質体42の水分量が適正に維持される。
なお、多孔質体42の形態や材質等は、インクを吸収可能であればスポンジ状のPVAに限定されない。
【0024】
さらにまた、インクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20のインク吐出面22(各ヘッドモジュール30の下面)を保護するキャップユニット50を備えている。キャップユニット50は、各ノズル31の乾燥や目詰まり等を防ぐためのもので、上面が開口した浅い箱状の硬質樹脂製の容器である。そして、非印画時等に、インク吐出面22を全面にわたって覆うことができる大きさとなっている。
【0025】
ここで、キャップユニット50は、その開口内が液体収容部となっており、液体収容部には、液体(インク、インク吐出面22の乾燥を防止するための純水等の保湿液)を吸収可能な連続気孔の多孔質体51が挿入されている。多孔質体51は、例えば、PVA等の親水性の高い材質で形成されたスポンジ状の液体吸収体である。そのため、多孔質体51によって吸水・保水能力が高められ、ノズル31の吐出回復動作によって空吐出されたインクを能率良く受け入れたり、保湿液を能率良く保持できる。
【0026】
また、多孔質体51に蓄積された液体(液体収容部に収容されたインク、余分な保湿液)は、吸引ポンプ(図示せず)により、液体収容部の液体排出口に接続された軟質のチューブ52を通して外部に排出されるようになっている。これにより、液体を必要に応じて適度なタイミングで吸引でき、多孔質体51の水分量が適正に維持される。
なお、多孔質体51の形態や材質等は、液体を吸収可能であればスポンジ状のPVAに限定されない。
【0027】
さらにまた、チューブ52に供給ポンプ(図示せず)を接続することにより、多孔質体51に保湿液(純水等)を供給することもできる。そして、多孔質体51に保湿液を含浸させておけば、気化した保湿液によってインク吐出面22が湿潤状態となり、インク吐出面22の乾燥を能動的に防止できる。
【0028】
さらに、キャップユニット50の開口の周囲には、インク吐出面22に当接して当接部内を密閉するためのシール突起53が全周にわたって設けられている。このシール突起53はゴム製であり、キャッピングの際にインク吐出面22を押圧する。そのため、シール突起53の頂点付近に押圧力が集中し、弾性変形量が増加して密着性を高めるので、機密性の高いキャッピングが可能となる。
【0029】
また、プラテンユニット40とキャップユニット50とは、本発明における揺動手段の一部を構成する揺動アーム61によって連結されている。
具体的には、揺動アーム61は、一端側でプラテンユニット40を支持するとともに他端側でキャップユニット50を支持する板状の部材であり、中央部を中心として回転可能となっている。そのため、揺動アーム61を回転させることにより、プラテンユニット40及びキャップユニット50を上下に揺動させ、プラテンユニット40又はキャップユニット50をインク吐出面22に選択的に対向させることができる。
【0030】
さらにまた、プラテンユニット40にはプラテン用アーム62が連結され、キャップユニット50にはヘッドキャップ用アーム63が連結されている。このプラテン用アーム62及びヘッドキャップ用アーム63は、本発明における姿勢維持手段の一部を構成する。そして、揺動アーム61によるプラテンユニット40及びキャップユニット50の揺動位置にかかわらず、プラテンユニット40及びキャップユニット50は、水平姿勢を維持できる。
【0031】
さらに、図2及び図3に示すように、インクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20のインク吐出面22(図1参照)をクリーニングするためのクリーニングユニット70を備えている。そして、クリーニングユニット70は、スポンジローラ71とゴムブレード72とを有している。
【0032】
スポンジローラ71は、インク吐出面22に付着したインク等を吸着可能な連続気孔のローラであり、例えば、PVA等の親水性の高い材質で形成された多孔質体からなる。また、ウレタン、ポリエチレン等から形成された多孔質体やフェルトを使用することもでき 一方、ゴムブレード72は、ゴムやエラストマ等の弾性材料から形成された刃形状の板状部材であり、インク吐出面22を押圧してゴミや増粘したインクをかき落とすために用いられる。
【0033】
[液体吐出ヘッドの構成例]

図4は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10におけるラインヘッド20を示す斜視図である。
図4に示すように、ラインヘッド20は、ヘッドフレーム21と、ヘッドフレーム21に保持された複数のヘッドモジュール30とから構成されている。具体的には、各ヘッドモジュール30がヘッドフレーム21の長手方向(用紙幅方向)に挿入され、印画可能な最大サイズの記録用紙11(図1参照)の用紙幅(例えば、A4の横幅)の長さをカバーして1色を印画するようになっている。また、ヘッドモジュール30が平行に4ライン設けられ、各ラインがそれぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のインクを吐出することで、フルカラー画像を形成する。
【0034】
さらに、各ヘッドモジュール30は、それぞれ複数のヘッドチップ32を備えている。具体的には、各ヘッドモジュール30には、ヘッドチップ32が千鳥状に、4個×2列で合計8個配置されている。また、各ヘッドチップ32には、インクを吐出するための複数のノズル31が一方向に配列され、ノズル列31aとなっている。そのため、ノズル列31aは、各ヘッドモジュール30について2列に並列し、全体として記録用紙11(図1参照)の横幅に対応する長さとなっている。そして、このノズル列31aの形成部分(ノズル列31aが形成されている側の面)がインク吐出面22となっている。
なお、各ノズル31の相互の間隔は、千鳥状に隣接する部分を含めて、すべて等間隔である。
【0035】
図5は、図4に示すラインヘッド20中の1つのヘッドモジュール30を示す分解斜視図である。
図5に示すように、ヘッドモジュール30は、8個のヘッドチップ32と、各ヘッドチップ32が配置されるフレキシブルシート33と、インクタンク34とから構成されている。
【0036】
ここで、フレキシブルシート33は、ヘッドチップ32と制御基板(図示せず)とを電気的に接続するための可撓性を有する配線基板であり、厚さが約50μm程度のポリイミド製のものである。また、フレキシブルシート33には、千鳥状に開口部33aが形成されている。そして、各ヘッドチップ32は、すべてのノズル31(図3参照)が開口部33a内に位置するとともに、ヘッドチップ32が開口部33aを塞ぐようにして、フレキシブルシート33に接合される。
【0037】
また、フレキシブルシート33の上には、各ヘッドチップ32を覆うようにして、インクタンク34が接合される。このインクタンク34は、各ヘッドチップ32にインクを供給する共通流路を形成するものである。そして、インクのカートリッジ(図示せず)と接続され、共通流路内にインクを供給するためのインク供給口35と、共通流路内のインクを排出するためのインク排出口36とを有している。そのため、カートリッジ内のインクは、インク供給口35を通ってインクタンク34内の共通流路を流れ、各ヘッドチップ32に供給される。
なお、ヘッドモジュール30をヘッドフレーム21(図4参照)に挿入する際は、ヘッドモジュール30からはみ出た部分のフレキシブルシート33がインクタンク34の側面に沿って折り曲げられる。
【0038】
図6は、図5に示すヘッドモジュール30のインク吐出面22側を示す斜視図、及びヘッドモジュール30中の1つのヘッドチップ32を示す断面図である。
図6に示すように、ヘッドモジュール30は、フレキシブルシート33とインクタンク34との内部空間に8個のヘッドチップ32を千鳥状に配置したものである。そして、各ヘッドチップ32のすべてのノズル31は、フレキシブルシート33の開口部33a内に位置している。そのため、インク吐出面22は、開口部33aを除くフレキシブルシート33の表面と、開口部33a内のヘッドチップ32の表面とによって構成されることとなる。
【0039】
また、各ヘッドチップ32は、各ノズル31と対向する位置に複数の発熱抵抗体37が配列されており、各ノズル31と各発熱抵抗体37との間がインクの液室となっている。そして、インク供給口35からインクが供給されると、ヘッドチップ32の周囲だけでなく、ヘッドチップ32の液室内がインクで満たされる。
【0040】
ここで、制御基板(図示せず)からの指令により、フレキシブルシート33の配線を介して発熱抵抗体37に短時間(例えば、1〜3μsec)のパルス電流が流れると、発熱抵抗体37が急速に加熱される。そのため、発熱抵抗体37と接する部分にインクの気泡が発生(インクが沸騰)し、その気泡の膨張によって所定の体積のインクが押しのけられる。その結果、これが吐出圧力となり、押しのけられたインクと同等の体積のインクがノズル31から吐出されるようになる。
【0041】
このように、ヘッドチップ32は、発熱抵抗体37を加熱させてノズル31からインクを吐出し、記録用紙11(図1参照)に画像を形成する。そのため、インク吐出面22にホコリや紙粉等が付着したり、インク吐出面22が乾燥してノズル31に目詰まりが生じると、インクの吐出が阻害され、不吐出や不完全吐出等の吐出不良を起こしてしまう。
そこで、インク吐出面22をホコリ、紙粉、乾燥等から保護し、ノズル31の目詰まりを回復したりヘッドモジュール30内の気泡の除去するための吐出回復動作によって空吐出されたインクを受けるキャップユニット50(図1から図3参照)が設けられている。
【0042】
[液体吐出ヘッドのキャッピング例]

図7は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10のキャッピング時の状態を示す正面図(一部断面図)である。
また、図8は、図7に示すインクジェットプリンタ10におけるインクの空吐出中の状態、及びインク吐出面22の湿潤中の状態を示す断面図である。
【0043】
本実施形態のインクジェットプリンタ10は、プラテンユニット40及びキャップユニット50を上下に揺動させ、プラテンユニット40又はキャップユニット50をインク吐出面22に選択的に対向させることが可能な揺動アーム61を有している。そのため、揺動アーム61により、ラインヘッド20の印画位置(図1に示す位置)と、ラインヘッド20のキャッピング位置(図7に示す位置)とを切り替えることができる。
【0044】
具体的には、図1に示す印画位置では、プラテンユニット40がインク吐出面22と対向しており、インク吐出面22の直下に記録用紙11(図1参照)の搬送経路が形成されていた。そのため、プラテンユニット40によって記録用紙11を支持し、印画を行うことが可能であり、プラテンユニット40と反対側のキャップユニット50は、下降した待機位置となっていた。
【0045】
一方、図7に示すキャッピング位置では、キャップユニット50が上昇してゴム製のシール突起53がインク吐出面22に当接する。これにより、シール突起53の頂点付近が弾性変形し、当接部内を密閉する。そのため、シール突起53がシール用パッキンの役割を担い、インク吐出面22は、キャップユニット50によって覆蓋される。その結果、図8に示すように、印画を再開する場合等に行う空吐出や、ノズル31の目詰まりを回復したりヘッドモジュール30内の気泡の除去するために行う空吐出(吐出回復動作)の実行が可能となる。
なお、キャップユニット50と反対側のプラテンユニット40は、下降した待機位置となっている。
【0046】
また、キャップユニット50内の多孔質体51に保湿液が含浸されていれば、保湿液が気化して蒸気となった保湿成分によってノズル31の周辺部が加湿される。その結果、長期間にわたって印画が行われずに放置された場合であっても、保水能力の高い多孔質体51により、ノズル31の乾燥防止効果を長期間にわたって持続できる。さらに、ノズル31の目詰まりが予防され、ノズル31に乾燥インクや増粘インクがすでに詰まっている場合には、これらのインクを軟化させることができ、吐出の回復が容易になる。
【0047】
このように、プラテンユニット40及びキャップユニット50は、揺動アーム61によって上下に揺動し、互いの配置に対して排他的な関係となっている。そのため、両者が物理的に干渉することはない。そして、キャップユニット50がインク吐出面22に対向するキャッピング位置(図7に示す位置)では、吐出回復動作が可能となる。また、プラテンユニット40をインク吐出面22に対向させれば印画位置(図1に示す位置)となり、印画動作が可能となる。
【0048】
[液体吐出装置の動作例]

図9は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10におけるプラテンユニット40及びキャップユニット50の揺動の第1段階を示す斜視図である。
本実施形態では、図9に示すように、揺動アーム61によってキャップユニット50がプラテンユニット40の真上にあるキャッピング位置を揺動の第1段階とする。
【0049】
揺動の第1段階は、キャップユニット50が上昇し、印画が実行されない待機状態である。そして、待機状態では、左右一対の揺動アーム61の上端側がキャップユニット50を回転可能に支持し、下端側がプラテンユニット40を回転可能に支持している。また、各揺動アーム61は、中央部61aがインクジェットプリンタ10のメインフレーム(図示せず)に支持され、中央部61aを中心として回転可能になっている。さらにまた、各中央部61aの周囲が揺動アーム61を回転させるための駆動プーリとなっており、ここに揺動ベルト64が巻き回されている。
【0050】
揺動ベルト64は、中間プーリ65にも巻き回されており、中間プーリ65とモータ66の回転軸67との間には、伝達ベルト68が巻き回されている。そのため、揺動アーム61及びモータ66が本発明における揺動手段を構成し、モータ66を時計回りに回転駆動すれば、回転軸67から伝達ベルト68、中間プーリ65、及び各揺動ベルト64に駆動力が伝達され、各揺動アーム61が時計回りに回転する。
したがって、モータ66の正逆回転によって揺動アーム61が揺動し、プラテンユニット40及びキャップユニット50が円弧状の移動軌跡を有して昇降するようになる。そして、揺動アーム61の揺動量は、モータ66の電気的な制御によって調整される。
【0051】
図10は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10におけるプラテンユニット40及びキャップユニット50の揺動の第2段階を示す斜視図である。
揺動の第2段階は、印画指令の入力によってモータ66が時計回りに回転駆動された初期の段階である。この第2段階では、モータ66の回転に応じて各揺動アーム61が時計回りに回転し、キャップユニット50を下降させるとともにプラテンユニット40を上昇させる。
【0052】
ここで、キャップユニット50には、左右一対のヘッドキャップ用アーム63の一端側が回転可能に連結されている。また、プラテンユニット40には、左右一対のプラテン用アーム62の一端側が回転可能に連結されている。そして、各ヘッドキャップ用アーム63の他端側の支点部63a、及び各プラテン用アーム62の他端側の支点部62aは、インクジェットプリンタ10のメインフレーム(図示せず)によって各揺動アーム61の中央部61aと同じ高さに支持され、回転可能となっている。
【0053】
したがって、プラテン用アーム62は、揺動アーム61の中央部61aの回転中心から一端側のプラテン支持部61cとの間で、第1の4節リンク機構を構成する。また、ヘッドキャップ用アーム63は、揺動アーム61の中央部61aの回転中心から他端側のキャップ支持部61bとの間で、第2の4節リンク機構を構成する。これにより、揺動アーム61の揺動に基づく変位があっても、その位置におけるプラテンユニット40及びキャップユニット50の姿勢を傾斜させず、水平姿勢を維持する姿勢維持手段となる。
【0054】
この点に関して詳述すると、プラテンユニット40、プラテン用アーム62、支点部62a及び中央部61aを支持するメインフレーム(図示せず)、及びプラテン支持部61cが第1の4節リンク機構となる。また、キャップユニット50、ヘッドキャップ用アーム63、支点部63a及び中央部61aを支持するメインフレーム(図示せず)、及びキャップ支持部61bが第2の4節リンク機構となる。
【0055】
ここで、プラテン用アーム62は、両端に回転軸を有する板状の部材であり、その一端がプラテンユニット40に、他端が支点部62aによってメインフレーム(図示せず)に回動自在に結合されている。そして、プラテン用アーム62の回転軸間の距離は、プラテン支持部61cの回転軸間の距離と等しく、かつ平行となっている。そのため、平行リンク(第1の4節リンク機構)が形成されることとなり、プラテンユニット40は、メインフレームの水平面(支点部62a及び中央部61aを通る平面)に対し、平行な姿勢を維持できる。
【0056】
同様に、ヘッドキャップ用アーム63も、両端に回転軸を有する板状の部材であり、その一端がキャップユニット50に、他端が支点部63aによってメインフレーム(図示せず)に回動自在に結合されている。そして、ヘッドキャップ用アーム63の回転軸間の距離は、キャップ支持部61bの回転軸間の距離と等しく、かつ平行となっている。そのため、平行リンク(第2の4節リンク機構)が形成されることとなり、キャップユニット50は、メインフレームの水平面(支点部63a及び中央部61aを通る平面)に対し、平行な姿勢を維持できる。
【0057】
また、第1の4節リンク機構及び第2の4節リンク機構は、揺動アーム61(キャップ支持部61b及びプラテン支持部61c)が共有の構成要素となっている。そして、揺動アーム61の中央部61aに対して、第1の4節リンク機構及び第2の4節リンク機構が対称的に配置されている。そのため、図10に示す揺動の第2段階のように、揺動アーム61が傾斜すると、プラテンユニット40及びキャップユニット50が連動して変位し、物理的に干渉することなく、両者の水平姿勢が維持される。
【0058】
図11は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10におけるプラテンユニット40及びキャップユニット50の揺動の第3段階を示す斜視図である。
図11に示す揺動の第3段階は、揺動アーム61が初期状態(揺動の第1段階)から時計回りに90°回動した状態である。この第3段階では、キャップユニット50がさらに下降するとともにプラテンユニット40がさらに上昇し、両者が一時的に横並びの状態となる。
【0059】
このように、プラテンユニット40及びキャップユニット50が水平姿勢を維持したまま横並びになると、ラインヘッド20(図2参照)とプラテンユニット40及びキャップユニット50との間に空きスペースが生じる。そのため、クリーニングユニット70(図2参照)によるインク吐出面22(図4参照)のクリーニングが可能となる。
【0060】
図12は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10におけるプラテンユニット40及びキャップユニット50の揺動の第4段階を示す斜視図である。
図12に示す揺動の第4段階では、揺動アーム61がさらに時計回りに回動し、プラテンユニット40とキャップユニット50との上下関係が逆転する。そして、プラテンユニット40は、水平姿勢を維持したまま印画位置に向かって変位し、キャップユニット50は、水平姿勢を維持したまま待機位置に向かって変位する。
【0061】
図13は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10におけるプラテンユニット40及びキャップユニット50の揺動の第5段階を示す斜視図である。
図13に示す揺動の第5段階では、揺動アーム61が初期状態(揺動の第1段階)から時計回りに180°回動し、プラテンユニット40とキャップユニット50とが反転するようになる。そして、プラテンユニット40がインク吐出面22(図1参照)と対向し、印画位置になるので、印画動作が可能となる。
なお、キャップユニット50は、下降した待機位置となる。
【0062】
このように、揺動の第1段階から第5段階までのいずれの段階においても、プラテンユニット40及びキャップユニット50は、水平姿勢が維持される。そのため、プラテンユニット40内の廃インクやキャップユニット50内の保湿液等をこぼすことなく収容することが可能となる。また、プラテンユニット40に接続されたチューブ43(図1参照)やキャップユニット50に接続されたチューブ52(図1参照)のねじれや屈曲が低減され、チューブ43及びチューブ52に負担をかけない接続が容易になる。さらにまた、図11に示す揺動の第3段階では、クリーニングユニット70(図2参照)によるインク吐出面22(図4参照)のクリーニングが可能となる。
【0063】
図14は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10のクリーニング時の状態を示す正面図(一部断面図)である。
また、図15は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10のクリーニング時の状態を示す斜視図である。
さらに、図16は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10のクリーニング時の状態を示す側面図(一部断面図)である。
図14から図16に示すように、インクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20のインク吐出面22をクリーニングするためのクリーニングユニット70を有している。
【0064】
ここで、クリーニングユニット70は、スポンジローラ71とゴムブレード72とを備えており、通常は、プラテンユニット40及びキャップユニット50(図15参照)の邪魔にならない位置に退避している。
しかし、揺動アーム61(図14参照)の回転によってプラテンユニット40及びキャップユニット50が横並びになると、ラインヘッド20とプラテンユニット40及びキャップユニット50との間に空きスペースが生じる。そして、クリーニング指令があれば、クリーニングユニット70が空きスペースに移動する。
【0065】
また、このような空間が形成されたときに、クリーニングユニット70は、移動手段により、ノズル31(図14参照)の配列方向(図15及び図16に示す矢印の方向)に移動する。そのため、ゴムブレード72がインク吐出面22を押圧しながら移動し、インク吐出面22のゴミや増粘したインクをかき落とす。また、スポンジローラ71がインク吐出面22を押圧しながら従動回転し、残ったインクかすをふき取る。したがって、インク吐出面22のクリーニングが可能となる。
なお、クリーニングユニット70の移動手段は、例えば、モータによって駆動回転されるギヤ、ベルト、カム、ピストン、又はこれらの組合せ等によって構成できる。また、ガイドシャフト(図示せず)等を用いることにより、クリーニングユニット70を水平移動させることができる。
【0066】
したがって、第1実施形態のインクジェットプリンタ10は、クリーニング動作を含む一般的な動作の流れを一連の動作中で効率的かつ迅速に実行できる。
具体的には、キャップユニット50を開け、インク吐出面22のクリーニングを行い、印画を実行できる。また、印画の終了後、インク吐出面22のクリーニングを行い、キャップユニット50を閉じることができる。
【0067】
また、ラインヘッド20が固定されているため、ラインヘッド20の信頼性及びインクの吐出精度が向上する。さらにまた、ノズル31のメニスカスのバランスが破壊されないので、そのバランス回復のためにインクを消費することもない。
一方、上下に揺動するプラテンユニット40及びキャップユニット50は、揺動アーム61を回動させるだけの簡単な構成で、インク吐出面22に選択的に対向させることができる。しかも、プラテンユニット40及びキャップユニット50の水平姿勢が維持されるので、廃インクや保湿液をこぼすことなく収容できる。さらに、水平姿勢の維持により、チューブ43及びチューブ52(図1参照)のねじれや屈曲が低減され、これに起因するトラブルを解消できる。
【0068】
<2.第2の実施の形態>
[ヘッドキャップの構成例]

図17は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第2実施形態)としての、インクジェットプリンタ80の概要を示す斜視図である。
図17に示すように、第2実施形態のインクジェットプリンタ80は、キャップユニット81が4つのヘッドキャップ82を備える構成となっている。この4つのヘッドキャップ82は、4つのヘッドモジュール30(図4参照)が吐出するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のインクに対応する。
【0069】
また、各ヘッドキャップ82は、上面が開口した浅い箱状で、ラインヘッド20のインク吐出面22とほぼ同じ長さで細長く伸びている。そして、3つの支持軸83をキャップユニット81に挿入することにより、上下動可能に取り付けられている。さらにまた、各ヘッドキャップ82の下面とキャップユニット81の上面との間に2つの上昇バネ84が挿入されており、各ヘッドキャップ82が上向きに付勢されている。
【0070】
このような第2実施形態のインクジェットプリンタ80において、キャップユニット81がキャッピング位置に揺動すると、各ヘッドキャップ82がそれぞれインク吐出面22に当接する。そして、各ヘッドキャップ82は、それぞれの上昇バネ84の作用によってインク吐出面22を均一に押圧し、4つのヘッドモジュール30(図4参照)ごとにノズル31(図4参照)の周囲を覆う。そのため、インク吐出面22がホコリや紙粉等から保護されるだけでなく、乾燥しなくなるので、ノズル31の目詰まりが防止される。
なお、各ヘッドキャップ82に多孔質体を挿入し、保湿液を含浸させておけば、ノズル31の乾燥防止効果を長期間にわたって持続できる。
【0071】
また、印画を再開する場合等に行うインクの空吐出や、ノズル31(図4参照)の目詰まりを回復したりヘッドモジュール30(図4参照)内の気泡の除去するために行う空吐出(吐出回復動作)を実行すると、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のインクがそれぞれ別々のヘッドキャップ82に収容される。そのため、各色のインクが各ヘッドキャップ82に混ざらずに収容されるので、廃インクの再利用が可能となる。
なお、廃インクの再利用に際しては、異物等を除去するため、フィルタを通すことが好ましい。
【0072】
以上、説明したように、本実施形態のインクジェットプリンタ10,80は、プラテンユニット40及びキャップユニット50,81を上下に揺動させ、インク吐出面22に選択的に対向させることができる。そして、上下に揺動しても、プラテンユニット40及びキャップユニット50,81の水平姿勢が維持される。そのため、インク等がこぼれ落ちることなく、印画時の状態、待機時の状態、及びクリーニング時の状態を簡単に切り替えられる。
【0073】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、以下のような種々の変形等が可能である。
(1)本実施形態は、ラインヘッド20を備えるラインヘッド式のインクジェットプリンタ10,80を液体吐出装置としている。しかし、液体吐出装置は、これに限らず、ヘッドを記録用紙の幅方向に移動させて印画を行うシリアルヘッド式のプリンタであってもよい。また、プリンタの他、複写機、ファクシミリ等にも適用できる。
【0074】
(2)本実施形態では、クリーニングユニット70がスポンジローラ71及びゴムブレード72を有しており、それぞれがインク吐出面22をクリーニングするようにした。しかし、クリーニングユニット70の構成は、これに限らず、ローラ又はブレードの単独使用等、メンテナンスの目的等に応じて適宜構成できる。
【符号の説明】
【0075】
10 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
11 記録用紙(液体の吐出対象)
20 ラインヘッド(液体吐出ヘッド)
22 インク吐出面(ノズル列の形成部分)
31 ノズル
31a ノズル列
40 プラテンユニット
41 リブ
42 多孔質体
50 キャップユニット
51 多孔質体
53 シール突起
61 揺動アーム(揺動手段)
61a 中央部
61b キャップ支持部
61c プラテン支持部
62 プラテン用アーム(姿勢維持手段)
62a 支点部
63 ヘッドキャップ用アーム(姿勢維持手段)
63a 支点部
64 揺動ベルト(揺動手段)
65 中間プーリ(揺動手段)
66 モータ(揺動手段)
67 回転軸(揺動手段)
68 伝達ベルト(揺動手段)
70 クリーニングユニット
80 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
81 キャップユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数のノズルと、
各前記ノズルを一方向に配列したノズル列が形成された液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に対向した位置にあるときに液体の吐出対象を載置可能になるプラテンユニットと、
前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に対向した位置にあるときに前記ノズル列の形成部分と当接可能になるキャップユニットと、
前記液体吐出ヘッドの下方に配置され、前記プラテンユニット及び前記キャップユニットを上下に揺動させて前記プラテンユニット又は前記キャップユニットを前記ノズル列の形成部分に選択的に対向させることが可能な揺動手段と、
前記揺動手段による前記プラテンユニット及び前記キャップユニットの揺動位置にかかわらず、前記プラテンユニット及び前記キャップユニットの水平姿勢を維持させるための姿勢維持手段と
を有する液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記揺動手段は、
一端側で前記プラテンユニットを支持するとともに他端側で前記キャップユニットを支持し、かつ中央部を中心として回転可能な揺動アームと、
前記揺動アームを回転駆動するためのモータと
を有し、
前記姿勢維持手段は、
一端側が前記プラテンユニットに連結され、中央部の回転中心から一端側の前記揺動アームとの間で第1の4節リンク機構を構成するプラテン用アームと、
一端側が前記キャップユニットに連結され、中央部の回転中心から他端側の前記揺動アームとの間で第2の4節リンク機構を構成するヘッドキャップ用アームと
を有する液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記プラテンユニットは、
前記吐出対象を載置するためのリブと、
前記ノズルから吐出された液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部に収容された液体を排出するための液体排出口と
を有する液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記キャップユニットは、
前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に当接して当接部内を密閉するためのシール突起と、
前記ノズルから吐出された液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部に収容された液体を排出するための液体排出口と
を有する液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分をクリーニングするためのクリーニングユニットと、
前記揺動アームの回転によって前記プラテンユニット及び前記キャップユニットと前記ノズル列の形成部分との間に空間が形成されたときに前記クリーニングユニットを前記ノズル列の配列方向に移動させるための移動手段と
を有する液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドは、前記吐出対象の横幅に対応する長さの前記ノズル列が形成されたラインヘッドである
液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−16314(P2011−16314A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163189(P2009−163189)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】