説明

液体吐出装置

【課題】吐出口から液体と共に気泡及び異物を効率よく排出しつつ、液体が無駄に消費されるのを抑制する。
【解決手段】サブタンクが、インク供給管を介してインク流入流路と連通し、インク帰還管を介して排気流路と連通している。インク流入流路は、インク流出流路及び排気流路と連通している。インク流出流路は、圧力室及び吐出口を含む個別インク流路と連通している。インク供給管にはパージポンプが、インク帰還管には循環バルブが設けられている。循環バルブを開いた状態で、パージポンプを駆動し、サブタンク、インク流入流路及び排気流路の順にインクを循環させる。この状態で、循環バルブを閉じることによって、吐出口からインクを排出する。循環期間において、個別インク流路内のインクが振動するように、アクチュエータユニットを駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の吐出口からインク滴を吐出させるインクジェットヘッドにおいては、インクジェットヘッド内のインク流路にポンプを用いてインクを強制的に供給することによって、吐出口近傍のインク流路に存在する気泡や増粘したインクを排出して吐出口のクリーニングを行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、三方弁を閉じて排出路を閉塞した後、供給ポンプを動作させてインクジェットヘッド内流路のインクを所定時間だけ加圧し、ノズルからインクを排出させてノズルのクリーニングを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−29111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全ての吐出口から確実にインクを排出して吐出口のクリーニングをするためには、インク流路に付与するインク圧を高くする必要がある。しかしながら、ポンプの駆動が開始されてからインク流路におけるインク圧がその所望の圧力に達するまで時間がかかると、インクの排出抵抗(流路抵抗)が低い吐出口から順にインクが排出され、全ての吐出口から瞬時にインクを排出することができない。そのため、吐出口のクリーニング時に、吐出口から無駄にインクが排出される。
【0005】
本発明の目的は、吐出口から液体と共に気泡や異物などを効率よく排出しつつ、液体が無駄に消費されるのを抑制することができる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、液体が流入する流入口と、液体が流出する流出口と、前記流入口と前記流出口とを連通する内部流路と、液体を吐出するための複数の吐出口と、前記内部流路から分岐して前記複数の吐出口に至る複数の個別液体流路と、前記複数の個別液体流路内の液体に圧力を付与する圧力付与手段とを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給される液体を内部に貯溜するタンクと、前記タンクの内部と前記流入口とを連通する供給流路と、前記タンクの内部と前記流出口とを連通する帰還流路と、前記タンクに貯留された液体を、前記供給流路を介して前記内部流路に強制的に供給する供給手段と、前記帰還流路における流路抵抗値を所定の最小値と所定の最大値との間で調整可能な調整手段と、前記圧力付与手段、前記供給手段及び前記調整手段を制御する制御手段とを備えている。前記制御手段は、前記調節手段の調節により前記流路抵抗値を前記所定の最大値より減少させつつ前記供給手段を駆動させることにより、前記タンクの液体を前記供給流路、前記内部流路及び前記帰還流路の順に移送させるように循環させ、前記循環中に、前記調整手段を調整して前記流路抵抗値を増加させることにより、前記複数の吐出口から液体を排出させ、次に、前記排出中に、前記調整手段を調整して前記流路抵抗値を減少させることにより、前記複数の吐出口からの液体の排出を停止させる制御を行い、さらに、前記制御手段は、前記循環中に、前記圧力付与手段を制御して、前記複数の吐出口から液体を吐出させることなく前記複数の個別液体流路内の液体を振動させる。
【0007】
本発明によると、循環を行うことによって、吐出口から液体が漏れ出さないようにしつつ内部流路に残留する気泡や異物などをタンク内に排出できる。この状態で、調整手段の調整により流路抵抗値を増加させることによって、瞬時に内部流路の圧力が高くなり、内部流路の液体が個別液体流路に流れ込む。これにより、吐出口から液体が排出される。このとき、排出開始時から全ての吐出口に高い圧力が付与されて液体が排出される。したがって、吐出口内の増粘した液体、気泡及び異物を効率よく排出することができると共に、液体が無駄に排出されるのを抑制することができる。さらに、循環中に複数の吐出口から液体を吐出することなく複数の個別液体流路内の液体を振動させるため、個別液体流路の壁面に固着している気泡や異物を壁面から剥がして、排出しやすい状態にすることができる。これにより、排出時において気泡や異物を効率よく排出することができる。
【0008】
本発明においては、前記制御手段が、前記排出中に、前記圧力付与手段による前記複数の個別液体流路内の液体振動を行わせないことが好ましい。これによると、個別液体流路内の液体振動は、個別液体流路内の液体を吐出口から排出させない方向にも作用するため、排出中は液体振動を行わないようにすることにより、排出時において吐出口からの液体の排出が阻害されるのを防止することができる。
【0009】
このとき、前記制御手段は、前記排出が開始される時の所定時間前から前記排出が完了するまでの間に、前記圧力付与手段による前記複数の個別液体流路内の液体振動を行わせないことがより好ましい。これによると、排出が開始される時の所定時間前から液体振動が行われないため、排出が開始される時までの所定時間の間に液体振動が減衰し、排出時において吐出口からの液体の排出が阻害されるのをさらに防止することができる。
【0010】
本発明においては、前記制御手段が、前記排出が開始される直前に、前記複数の個別液体流路内の液体振動が打ち消されるように、前記圧力付与手段を駆動させることが好ましい。これによると、排出が開始される直前に液体振動が打ち消されるため、排出時において吐出口からの液体の排出が阻害されるのを確実に防止することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記制御手段が、前記排出中に、前記流路抵抗値を減少させることにより、前記複数の吐出口からの液体の排出を停止させるよう前記調整手段を制御するとともに、前記排出が完了すると同時に前記複数の個別液体流路内の液体振動が開始されるように、前記圧力付与手段を制御することが好ましい。これによると、排出が停止された直後において、個別液体流路内の液体の流れを素早く整えることができる。これにより、吐出口から液体が無駄に漏れ出るのをさらに抑制することができる。
【0012】
さらに、本発明においては、前記圧力付与手段が、前記複数の吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギーを前記複数の個別液体流路内の液体に付与するピエゾ式アクチュエータであることが好ましい。これによると、圧力付与手段が、吐出口から液体を吐出させる機能と、液体振動を行わせる機能とを有しているため、液体振動を行わせる機能を有する機構を別途設ける必要がなく、液体吐出ヘッドの低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、循環を行うことによって、吐出口から液体が漏れ出さないようにしつつ内部流路に残留する気泡や異物などをタンク内に排出できる。この状態で、調整手段の調整により流路抵抗値を増加させることによって、瞬時に内部流路の圧力が高くなり、内部流路の液体が個別液体流路に流れ込む。これにより、吐出口から液体が排出される。このとき、排出開始時から全ての吐出口に高い圧力が付与されて液体が排出される。したがって、吐出口内の増粘した液体、気泡及び異物を効率よく排出することができると共に、液体が無駄に排出されるのを抑制することができる。さらに、循環中に複数の吐出口から液体を吐出することなく複数の個別液体流路内の液体を振動させるため、個別液体流路の壁面に固着している気泡や異物を壁面から剥がして、排出しやすい状態にすることができる。これにより、排出時において気泡や異物を効率よく排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。
【図2】図1に示すインクジェットヘッド及びインク供給ユニットの断面図である。
【図3】図2に示すヘッド本体の平面図である。
【図4】図3に示す一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図5】図4に示すV-V線の断面図である。
【図6】図5に示すアクチュエータユニットの部分拡大断面である。
【図7】図2に示すパージポンプの動作特性を示すグラフである。
【図8】図1に示す制御装置の機能ブロック図である。
【図9】(a)図8に示すヘッド制御部が生成する吐出駆動信号の波形図である。(b)図8に示すヘッド制御部が生成するメニスカス振動信号の波形図である。(c)図8に示すヘッド制御部が生成する振動抑制信号の波形図である。
【図10】図8に示す循環・パージ制御部がインク循環を行ったときのインクの流れを示す図である。
【図11】図1に示すインクジェットプリンタの動作シーケンスを示す図である。
【図12】図8に示す循環・パージ制御部によるパージ動作におけるインク流量の変化示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
インクジェットプリンタ101は、図1に示すように、図1上方から下方に向かって用紙Pを搬送する搬送ユニット20と、搬送ユニット20によって搬送された用紙Pに、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインク滴をそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1と、インクジェットヘッド1にインクを供給する4つのインク供給ユニット10と、インクジェットヘッド1のメンテナンスを行うメンテナンスユニット31と、インクジェットプリンタ101全体を制御する制御装置16とを有している。なお、本実施形態において、副走査方向とは搬送ユニット20で用紙Pを搬送するときの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
【0017】
搬送ユニット20は、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とを有している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、図示しない搬送モータから駆動力が与えられることで回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って回転する。搬送ベルト8の外周面に載置された用紙Pは、図1下方へと搬送される。
【0018】
4つのインクジェットヘッド1は、それぞれ主走査方向に沿って延在し、副走査方向には互いに平行に配置されている。すなわち、インクジェットプリンタ101は、主走査方向にインク滴が吐出される複数の吐出口108が配列されたライン式のカラーインクジェットプリンタである。各インクジェットヘッド1の下面は、複数の吐出口108が配列された吐出面2aとなっている(図2〜図4参照)。
【0019】
搬送ベルト8の上側ループの外周面と吐出面2aとが対向しつつ平行となっている。搬送ベルト8によって搬送されてきた用紙Pが4つのインクジェットヘッド1の下方を通過する際に、各インクジェットヘッド1から用紙Pの上面に向けて各色のインク滴が順に吐出され、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。
【0020】
インク供給ユニット10は、インクジェットヘッド1の下面の図1左方端部近傍に接続されており、接続されたインクジェットヘッド1にインクを供給する。
【0021】
メンテナンスユニット31は、4つのワイパ部材32を有している。4つのワイパ部材32は、後述のメンテナンス動作に係るワイプ動作において、インクジェットヘッド1の吐出面2aをワイプする弾性部材であり、図示しないアクチュエータによって、主走査方向に沿って往復移動可能となっている(図1矢印参照)。
【0022】
次に、図2を参照しつつ、インクジェットヘッド1について詳細に説明する。図2に示すように、インクジェットヘッド1は、リザーバユニット71と、ヘッド本体2とを有している。
【0023】
リザーバユニット71は、ヘッド本体2の上面に固定されており、ヘッド本体2にインクを供給する流路形成部材である。また、リザーバユニット71は、その内部に、インク流入流路72、10個のインク流出流路75及び排気流路73が形成されている。なお、図2においては、1つのインク流出流路75のみが表れている。
【0024】
インク流入流路72は、リザーバユニット71の下面に開口する流入口72aを介して、インク供給ユニット10からのインクが流入する流路である。インク流入流路72は、流入したインクを一時的に貯溜するインクリザーバとしての機能を有する。インク流入流路72の内壁面にはリザーバユニット71の外壁面まで貫通する穴72bが形成されている。可撓性を有する樹脂フィルム76により、リザーバユニット71の外壁面側から封止されている。つまり、樹脂フィルム76が、インク流入流路72の内壁面の一部となっている。樹脂フィルム76は、インク流入流路72におけるインク圧の変動に伴って変位するため、インク圧の変動を抑制するダンパーとして機能する。樹脂フィルム76を用いることによって、ダンパーを安価な構成で実現することができる。なお、通常印刷時においては、樹脂フィルム76はインク流入流路72内に向かって僅かに凸となった状態となっている。リザーバユニット71の外壁面には、穴72bを覆うように板形状の規制部材77が固定されており、樹脂フィルム76がリザーバユニット71の外側に向かって凸となるのを規制している。これにより、インク流入流路72のインク圧が異常に高くなったとき、樹脂フィルム76が過剰に変位して破損するのが防止される。規制部材77には、大気連通孔77aが形成されており、規制部材77と樹脂フィルム76との間が常に大気圧となっている。これにより、樹脂フィルム76が変位し易くなっている。
【0025】
インク流出流路75は、フィルタ75aを介してインク流入流路72と連通していると共に、ヘッド本体2の流路ユニット9の上面に形成されたインク供給口105bに連通している(図3参照)。フィルタ75aは、インク流入流路72におけるインクの流れる方向(図2左右方向)に沿って延在している。通常印刷時においては、インク供給ユニット10からのインクは、インク流入流路72に流入し、インク流出流路75を通過して、インク供給口105bから流路ユニット9に供給される。
【0026】
排気流路73は、インク流入流路72におけるフィルタ75aの上流側においてインク流入流路72と連通していると共に、リザーバユニット71の下面に形成された流出口73aを介してインク供給ユニット10に接続されている。
【0027】
排気流路73の下方側内壁面にはリザーバユニット71の外壁面まで貫通する穴73bが形成されている。また、可撓性を有する樹脂フィルム78により、リザーバユニット71の下方の外壁面側から封止されている。つまり、樹脂フィルム78が、排気流路73の内壁面の一部となっている。樹脂フィルム78は、排気流路73のインク圧の変動に伴って変位するため、インク圧の変動を抑制するダンパーとして機能する。樹脂フィルム78を用いることによって、ダンパーを安価な構成で実現することができる。なお、通常印刷時においては、樹脂フィルム78は排気流路73内に向かって僅かに凸となった状態となっている。リザーバユニット71の下方の外壁面には、穴73bを覆うように板形状の規制部材79が固定されており、樹脂フィルム78がリザーバユニット71の外側に向かって凸となるのを規制している。これにより、排気流路73のインク圧が異常に高くなったとき、樹脂フィルム78が過剰に変位して破損するのが防止される。規制部材79には、大気連通孔79aが形成されており、規制部材79と樹脂フィルム78との間が常に大気圧となっている。これにより、樹脂フィルム78が変位し易くなっている。後述のインク循環時においては、インク供給ユニット10からのインクが、流入口72aを介してインク流入流路72に流入し、インク流入流路72から排気流路73を通過して、流出口73aを介してインク供給ユニット10に還流する(図10参照)。
【0028】
さらに、図3〜図5を参照しつつ、ヘッド本体2について説明する。なお、図4では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
【0029】
ヘッド本体2は、図3に示すように、流路ユニット9と、流路ユニット9の上面に固定された4つのアクチュエータユニット21とを有している。流路ユニット9は、図4に示すように、圧力室110等を含むインク流路が内部に形成されている。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のユニモルフ型のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
【0030】
流路ユニット9は、図5に示すように、ステンレス鋼からなる金属製のプレート122〜130を互いに位置合わせしつつ積層することによって、流路ユニット9内に、マニホールド流路105から圧力室110を経て吐出口108に至る流路が形成された積層体である。図3に示すように、流路ユニット9の上面には、リザーバユニット71のインク流出流路75(図2参照)に連通する計10個のインク供給口105bが開口している。図4に示すように、流路ユニット9の内部には、インク供給口105bに連通するマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105に含まれる複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、図5に示すように、流路ユニット9の内部には、各副マニホールド流路105aから分岐しつつ、圧力室110を介して吐出面2aに開口する吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。吐出面2aには複数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。
【0031】
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。図3〜図5に示すように、通常印刷時においては、リザーバユニット71のインク流出流路75からインク供給口105bに供給されたインクは、マニホールド流路105の副マニホールド流路105aに分配される。副マニホールド流路105a内のインクは、アパーチャ112を経由して各個別インク流路132に流れ込み、圧力室110を介して吐出口108に至る。
【0032】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図6に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シート141〜143から構成されているピエゾ式アクチュエータである。最上層の圧電シート141はその厚み方向に分極されている。また、圧電シート141の上面には、複数の個別電極135が形成されている。圧電シート141とその下側の圧電シート142との間にはシート全面に形成された共通電極134が介在している。複数の個別電極135と共通電極134とが圧電シート141を挟持している。
【0033】
個別電極135は、圧力室110と対向している。個別電極135の先端には個別電極135と電気的に接続された個別ランド136が設けられている。個別電極135を共通電極134と異なる電位にして圧電シート141に分極方向の電界が印加されると、圧電シート141における電界印加部分が圧電効果により歪む駆動活性部として働く。これに対応して、個別電極135と圧力室110とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータとして働く。つまり、アクチュエータユニット21は、圧力室110の数に対応した複数のアクチュエータが作り込まれた圧電素子である。
【0034】
共通電極134は、すべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。一方、個別電極135には駆動信号が供給される。
【0035】
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。例えば、分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、駆動活性部は分極方向に直交する方向(平面方向)に縮む。ここで、アクチュエータユニット21は、圧力室110から離れた上側1枚の圧電シート141を駆動活性部が含まれる層とし、且つ圧力室110に近い下側2枚の圧電シート142、143を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータである。圧電シート141〜143は圧力室110を画定するプレート122の上面に固定されているため、電界印加部分(駆動活性部)が平面方向に縮んでその下方の圧電シート142、143との間で平面方向への歪みに差が生じると、圧電シート141〜143全体が圧力室110側へ凸になるように変形(ユニモルフ変形)する。これにより圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、ノズル108からインク滴が吐出される。
【0036】
なお、本実施形態においては、予め個別電極135に所定の電位を付与しておき、吐出要求があるごとに一旦個別電極135をグランド電位にした後、所定のタイミングで再び個別電極135に所定の電位を付与するような駆動信号が供給される(図9(a)参照)。この場合、個別電極135がグランド電位となるタイミングで圧電シート141〜143が元の状態に戻り、圧力室110の容積は初期状態(予め電圧が印加された状態)と比較して増加し、副マニホールド流路105aから個別インク流路132へとインクが吸い込まれる。その後、再び個別電極135に所定の電位が付与されたタイミングで圧電シート141〜143において活性領域と対向する部分が圧力室110側に凸となるように変形し、圧力室110の容積低下によりインクの圧力が上昇し、ノズル108からインク滴が吐出される。
【0037】
インク供給ユニット10について詳細に説明する。図2に示すように、インク供給ユニット10は、サブタンク80と、サブタンク80に接続されたインク補給管81と、インク補給管81に設けられた補給ポンプ91及び補給バルブ92と、インク供給管82及びインク帰還管83と、インク供給管82に設けられたパージポンプ86と、インク帰還管83に設けられた循環バルブ87と、サブタンク80に接続された大気連通バルブ88とを有している。
【0038】
サブタンク80は、インクジェットヘッド1に供給されるインクを貯溜するものであり、サブタンク80のインク量が少なくなった時、補給バルブ92が開弁され且つ補給ポンプ91が駆動されることで、インクタンク90に貯溜されたインクがインク補給管81を介して補給される。大気連通バルブ88は、サブタンク80内と大気とを連通(以下、開と称する)又は遮断(以下、閉と称する)する。通常印刷時においては、大気連通バルブ88が開となっており、サブタンク80内と大気とを連通している。これにより、サブタンク80内の気圧が、貯溜しているインクの量にかかわらず常に大気圧となり、安定したインク供給を可能にする。
【0039】
インク供給管82の一端はサブタンク80に接続されており、他端はジョイント82aを介してリザーバユニット71の流入口72aに接続されている。これにより、サブタンク80のインクがインク供給管82を介してリザーバユニット71のインク流入流路72に供給される。パージポンプ86は、駆動することによって、サブタンク80のインクを、インク供給管82を介してインク流入流路72に強制的に供給する供給手段として機能する。また、パージポンプ86は、インク供給管82においてジョイント82aからサブタンク80に向かってインクが流れるのを防止する逆止弁として機能する。なお、パージポンプ86が停止している場合であっても、サブタンク80のインクは、インク供給管82を流れてリザーバユニット71に供給可能となっている。パージポンプ86は、容積型ポンプである三相ダイヤフラムポンプであり、図7に示すように、3つのダイヤフラムが互いに異なる位相で駆動し、インクを排出することによって、インク送出時の圧力変動を抑制する構成となっている。
【0040】
図2に示すように、インク帰還管83の一端はサブタンク80に接続されており、他端はジョイント83aを介してリザーバユニット71の流出口73aに接続されている。循環バルブ87は、インク帰還管83における流路抵抗値を所定の最小値(以下、開と称する)と所定の最大値(以下、閉と称する)との間で調整可能な調整手段である。なお、本実施形態においては、循環バルブ87は、完全解放である開と、完全遮断(インクの通過が禁止される)である閉との切り替えを行う開閉弁であるが、流路抵抗値を任意の値で調整可能な流路制御弁であってもよい。
【0041】
次に、図8を参照しつつ、制御装置16について説明する。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置16を構成する各機能部は、これらハードウェアとEEPROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。制御装置16は、インクジェットプリンタ101全体を制御するものであり、搬送制御部41と、画像データ記憶部42と、ヘッド制御部43と、不吐出時間検出部46と、循環・パージ制御部44と、メンテナンス制御部45とを有している。
【0042】
搬送制御部41は、用紙Pが搬送方向に沿って所定の速度で搬送されるように搬送ユニット20の搬送モータを制御する。画像データ記憶部42は、用紙Pに印刷すべき画像に関する画像データを記憶する。
【0043】
ヘッド制御部43は、通常印刷時において、画像データに基づいて、生成した吐出駆動信号をアクチュエータユニット21に供給する。図9(a)に示すように、吐出駆動信号は、1印刷周期において電位V1から所定時間グランド電位V0となるパルスを含む信号である。このパルス幅tは、圧力波が副マニホールド流路105aの出口から吐出口108に至る距離AL(Acoustic Length)長を伝播する時間と等しい。なお、図9(a)の波形は、小滴のインク滴を吐出するときの波形であり、1つのパルスを有している。中滴のインク滴を吐出するときの波形は、2つのパルスを連続して並べて構成し、大滴のインク滴を吐出するときの波形は、3つのパルスを連続して並べて構成する。
【0044】
また、ヘッド制御部43は、後述のメンテナンス動作において、全ての個別インク流路132内のインクを、吐出口108からインクを漏れ出させることなく振動させる(インク振動)インク振動信号をアクチュエータユニット21に供給する。インク振動を行うことにより、個別インク流路132内において、壁面に固着している気泡や異物が、壁面から剥がされる。なお、図9(b)に示すように、メニスカス振動信号は、電位V1から所定時間グランド電位V0となるパルスが所定の周期で繰り返される信号である。このパルス幅は、圧力波がAL長を伝播する時間の1/3以下であることが好ましい。
【0045】
さらに、ヘッド制御部43は、後述のメンテナンス動作において、アクチュエータユニット21にインク振動信号を供給することで各個別インク流路132内に発生させたインク振動を抑制するための振動抑制信号をアクチュエータユニット21に供給する。駆動抑制信号の波形は、図9(c)に示すように、インク振動信号の波形に係る逆位相の波形を有している。個別インク流路132内に、図9(b)のメニスカス振動信号によるインク振動が発生しているときに、アクチュエータユニット21に、図9(b)とは逆位相の信号である図9(c)の駆動抑制信号が供給されることによって、アクチュエータユニット21が、インク振動を打ち消すように変位する。
【0046】
不吐出時間検出部46は、過去の吐出履歴から各インクジェットヘッド1について、最後に吐出口108からインク滴が吐出されてから現在に至るまでの経過時間を検出する。具体的には、ヘッド制御部43から出力される吐出駆動信号あるいは画像データ記憶部42のデータに基づいて経過時間を検出する。
【0047】
循環・パージ制御部44は、後述のメンテナンス動作において、各インク供給ユニット10のパージポンプ86、循環バルブ87及び大気連通バルブ88の動作を制御するものである。具体的な動作内容については後述する。なお、循環・パージ制御部44は、インク補給のために補給ポンプ91と補給バルブ92も制御しているが、図8では省略している。
【0048】
メンテナンス制御部45は、後述のメンテナンス動作において、メンテナンスユニット31の動作を制御するものである。
【0049】
図10〜図12を参照しつつ、メンテナンス動作について説明する。メンテナンス動作は、インクジェットヘッド1のメンテナンスを行う動作であり、インクジェットプリンタ101が起動されたとき、印刷を行わない待機時間が一定時間を超えたとき、及び、ユーザから指示があったときなどに開始される。待機時及び通常印刷時には、パージポンプ86が停止しており、循環バルブ87が閉になっており、大気連通バルブ88が開となっており、また、補給ポンプ91は停止しており、補給バルブ92が閉となっている(図2参照)。
【0050】
図10及び図11に示すように、メンテナンス動作が開始されると、循環・パージ制御部44は、循環バルブ87を開にする。その後、ヘッド制御部43が、アクチュエータユニット21に対するインク振動信号の供給を開始する(インク振動期間の開始)。これにより、全ての個別インク流路132内にインク振動が発生する。個別インク流路132内にインク振動が発生することにより、個別インク流路132内において、壁面に固着している気泡や異物が、壁面から剥がされて浮遊する。
【0051】
これと同時に、循環・パージ制御部44は、大気連通バルブ88を閉にすると同時にパージポンプ86の駆動を開始する(循環期間の開始)。これにより、サブタンク80のインクが、インク供給管82を介してインク流入流路72に強制的に供給される。このとき、循環バルブ87が開になっているため、インク流入流路72から排気流路73及びインク帰還管83を通過してサブタンク80に至る経路における流路抵抗が、インク流入流路72からインク流出流路75及びマニホールド流路105を経由して各吐出口108に至る経路の流路抵抗より小さくなる。このため、インク流入流路72に供給されたインクが、インク流出流路75に流れ込むことなく、排気流路73及びインク帰還管83を順に通過してサブタンク80に帰還するインク循環が行われる。インク循環が行われることによって、循環経路のうちパージポンプ86からサブタンク80に至るまでの流路内のインクの圧力が高くなり、インク循環によるインク流れにより、インク流入流路72内に滞留している気泡及び異物、特にフィルタ75a上に滞留している気泡及び異物が、インクと共に排気流路73及びインク帰還管83を順に通過してサブタンク80にトラップされる。
【0052】
インク循環において、気泡及び異物を効率よくサブタンク80まで移動させるには、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量を、吐出口108に形成されたインクのメニスカスが壊れて(メニスカスブレーク)吐出口108からインクが漏れ出る流量(メニスカスブレーク流量)以下の範囲で高くする必要がある(図12参照)。なお、メニスカスブレーク流量は、インクジェットヘッド1に係る流路構造、インクジェットプリンタ101内におけるインクジェットヘッド1とサブタンク80との高さ関係、インクの粘度などから算出した値、又は、実測により得られた値である。なお、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量は、メニスカスブレーク流量未満、且つ、後に吐出口108からインクがパージされるときに、排気流路73のインク流れを急に塞ぐことで、排気流路73内およびインク流入流路72内のインク圧力が急上昇し、個別インク流路132内に滞留している気泡や異物がインクと共に吐出口108から排出可能な流量(回復可能流量)以上となっている。なお、回復可能流量は、実測により得られた値であり、予め記憶されている。別の観点から、循環バルブ87を閉じた状態で、パージポンプ86の駆動をインク流量が回復可能流量となるように開始した場合に、個別インク流路132内に滞留している気泡や異物がインクと共に全ての吐出口108から排出可能な流量を回復可能流量ということもできる。つまり、回復可能流量未満でパージポンプ86を駆動した場合は、気泡や増粘したインクが少ない個別インク流路132に係る吐出口108のみからインクが排出され続け、排出期間を長くしても、全ての吐出口108から気泡や異物と共にインクが排出されない可能性がある。
【0053】
図10に示すように、インク循環を行っているときは、通常印刷時と比較してインク流入流路72及び排気流路73内のインク圧が高くなるため、インク流入流路72の樹脂フィルム76が規制部材77に密着し、排気流路73の樹脂フィルム78が規制部材79に密着する。
【0054】
また、大気連通バルブ88が閉になっている期間においては、サブタンク80内が負圧になる。サブタンク80内が負圧になることによって、インク流入流路72のインクが排気流路73を介してサブタンク80内に吸引され、大気連通バルブ88が開になっている場合と比較して、インク流出流路75にインクが流れ込み難くなる。これにより、メニスカスブレークが起こり難くなる。そのため、大気連通バルブ88が開になっている場合よりも、インク流入流路72内の圧力が、メニスカスブレークが起こる圧力(メニスカスブレーク圧力)に近接するように、単位時間当りのインク流量を高くすることができる。つまり、循環中のインク流入流路72の流路内圧力が同じとすると、大気連通バルブ88が閉になっている場合は、大気連通バルブ88が開になっている場合よりもインク流量が多くなり、大気連通バルブ88が閉になっている場合は、パージ期間におけるインク流入流路72の流路内圧力を大気連通バルブ88が開になっている場合よりも大きくすることができるので、個別インク流路内に滞留している気泡や異物をインクと共に吐出口108から効率よく排出することができる。この単位時間当りのインク流量は、インク循環中において、大気連通バルブ88が開になっているときに吐出口108からインクが漏れ出さない最大の量を超え、且つ、大気連通バルブ88が閉になっているときに吐出口108からインクが漏れ出さない最大の量以下である。なお、図11において、インク流入流路72に係る流路内圧力変化を示す実線波形は、インク循環において大気連通バルブ88を閉として、上述のようにインク供給量を高くした場合(本実施形態)の流路内圧力変化を示しており、破線波形は、インク循環において大気連通バルブ88が開になっている場合(インク供給量は高くされていない)の流路内圧力変化を示している。
【0055】
パージポンプ86における単位時間当りのインク流量が回復可能流量以上で安定した後に、ヘッド制御部43が、アクチュエータユニット21に対するインク振動信号の供給を停止(インク振動期間の終了)すると同時に、アクチュエータユニット21に対して振動抑制信号の供給を開始する(振動抑制期間の開始)。これにより、インク振動期間において各個別インク流路132内に発生したインク振動が打ち消されるように、アクチュエータユニット21が変位する。アクチュエータユニット21に対する振動抑制信号の供給が開始されてから所定時間が経過すると、個別インク流路132内のインク振動が停止する。そして、ヘッド制御部43が、アクチュエータユニット21に対するインク振動信号の供給を停止する(振動抑制期間の終了)。
【0056】
振動抑制期間が終了すると同時に、パージ動作が開始される。循環・パージ制御部44は、図10及び図11に示すように、循環バルブ87を閉にすると同時に大気連通バルブ88を開にする。これにより、インク循環が停止し(循環期間の終了)、インク流入流路72に供給されたインクが、排気流路73に流れ込むことなく、インク流出流路75に流れ込み、マニホールド流路105及び各個別インク流路を順に通過し、吐出口108から排出される(パージ期間の開始)。排出されたインクは、図示しない廃液トレイに受け止められる。
【0057】
このように、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量が回復可能流量以上でインク循環が行われている状態で、循環バルブ87を閉とすることでパージ動作が開始(インパクトパージ)されるため、パージ開始直後から、インク流入流路72におけるインク圧が高い状態となり、吐出口108内の増粘したインク、滞留している気泡及び異物を、吐出口108から効率よく排出することができる。この点、図12に示すように、このようなインパクトパージを行わない場合、つまり、インク循環をさせることなく、循環バルブ87を閉じた状態でパージポンプ86の駆動を開始し、吐出口108からインクを排出させる従来例(インパクトパージ無)の場合には、各個別インク流路132内のインク圧力が、全ての吐出口108からインクが排出される圧力を超えるまでの到達時間が長くなり、この到達時間に達するまでは、吐出口108からインクが無駄に排出される。つまり、気泡や増粘したインクが少ない個別インク流路132に係る吐出口108からのみインクが排出されるので、インクが無駄に排出されることになる。また、循環バルブ87を閉にすると同時に大気連通バルブ88が開にされるため、サブタンク80内が強制的に大気圧となり、インクが排出されるに伴ってサブタンク80内の圧力が低下するのを抑制することができる。インクが排出される際にサブタンク80内が大気と遮断されている場合は、サブタンク80内へのインク流入がなされないので、インク排出に伴ってインク内が急激に負圧となり、パージポンプ86の作動が阻害されることも考えられるが、インクが排出される際にサブタンク80を大気と連通させておけば、パージポンプ86の作動阻害のおそれを解消できる。
【0058】
また、パージ動作においては、先のインク振動によって、個別インク流路132の壁面から気泡及び異物が剥がされることで、個別インク流路132内に浮遊しているため、気泡及び異物がインクと共に吐出口108から効率よく排出される。
【0059】
循環・パージ制御部44は、所定のパージ量のインクが吐出口108から排出されると、再び、循環バルブ87を開にすると同時に大気連通バルブ88を閉にすることによってパージ動作を停止させる(パージ期間の終了)。パージポンプ86によるインク供給は引き続き継続されているので、これと同時に、再びインク循環が開始される。なお、所定のパージ量は、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量及びパージ期間の長さによって決定される。所定のパージ量を排出するための単位時間当りのインク流量及びパージ期間の長さについては実験的に求められ、予め記憶されている。循環・パージ制御部44は、温度センサ35によって検出された温度が高くなるに伴って、又は、不吐出時間検出部46によって検出された経過時間が長くなるに伴って、循環期間を長くすると共にパージ量を大きくする。
【0060】
また、ヘッド制御部43は、パージ期間が終了すると同時に、アクチュエータユニット21に対するインク振動信号の供給を開始する(振動期間の開始)。これにより、パージ動作が停止された直後において、個別インク流路132内のインクの流れが素早く整えられ、吐出口108からインクが無駄に漏れ出るのが抑制される。
【0061】
その後、循環・パージ制御部44は、パージポンプ86を停止すると同時に大気連通バルブ88を開にする。これにより、インク循環が停止する。また、これと同時に、ヘッド制御部43が、インク振動信号をアクチュエータユニット21に供給するのを停止する(振動期間の終了)。その後、循環バルブ87を閉にする。
【0062】
上述したように、インク循環、及び、パージ動作を順に実行することによって、インク流入流路72に滞留している気泡及び異物を、下流側の流路(マニホールド流路105、及び、個別インク流路132など)に流し込むことなくインクジェットヘッド1外に排出することができる。
【0063】
次に、ワイプ動作が開始されると、メンテナンス制御部45が、図示しない移動機構によって4つのインクジェットヘッド1を上方に移動させた後、4つのワイパ部材32の先端を対向する吐出面2aに接触させつつ、各ワイパ部材32を吐出面2aに沿って主走査方向に移動させる。これにより、パージ動作によって吐出面2aに付着した余分なインクが除去されると共に、吐出口108に形成されるメニスカスが整えられる。各吐出面2aがワイプされた後、メンテナンス制御部45は、4つのワイパ部材32及び各インクジェットヘッド1を通常の位置に戻し、循環・パージ制御部44が循環バルブ87を開く。以上で、ワイプ動作が完了する。
【0064】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、インク循環を行うことによって循環経路のうちパージポンプ86からサブタンク80に至るまでの流路内の圧力が高くなる。この状態で、循環バルブ87を閉にすることによって、瞬時に流路内の圧力を高くしつつ吐出口108からインクを排出することができる。これにより、パージ開始時から全ての吐出口108に高い圧力が付与されてインクが排出されるため、吐出口108内の増粘したインク、気泡及び異物を効率よく排出することができると共に、インクが無駄に排出されるのを抑制することができる。さらに、循環期間中に吐出口108からインクを吐出することなく個別インク流路132内のインクを振動させるため、個別インク流路132の壁面に固着している気泡や異物を壁面から剥がして、排出しやすい状態にすることができる。これにより、パージ動作時において気泡や異物を効率よく排出することができる。
【0065】
また、パージ期間においては、ヘッド制御部43がアクチュエータユニット21にインク振動信号を供給しないため、パージ期間において新たにインク振動が発生することがない。このため、インク振動が、個別インク流路132内のインクを吐出口108から排出させない方向に作用するのを抑制することができる。これにより、パージ動作において、吐出口108からのインクの排出がインク振動により阻害されるのを防止することができる。
【0066】
このとき、ヘッド制御部43が、循環期間においてアクチュエータユニット21に対するインク振動信号の供給を停止した時から、パージ期間が開始される時まで、ヘッド制御部43がアクチュエータユニット21に振動抑制信号を供給することによって、パージ動作が開始される直前にインク振動が打ち消される。これにより、パージ動作時において吐出口108からの液体の排出がインク振動により阻害されるのを確実に防止することができる。
【0067】
さらに、ヘッド制御部43は、パージ期間が終了すると同時に、アクチュエータユニット21に対するインク振動信号の供給を開始するため、パージ動作が停止された直後において、個別インク流路132内のインクの流れが素早く整えられ、吐出口108からインクが無駄に漏れ出るのが抑制される。
【0068】
加えて、アクチュエータユニット21が、吐出口108からインク滴を吐出するための吐出エネルギー、及び、個別インク流路132内のインクを振動させる振動エネルギーを発生させるピエゾ式アクチュエータであるため、振動エネルギーを発生させるための他の機構を別途設ける必要がなく、インクジェットヘッド1の低コスト化を図ることができる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態では、ヘッド制御部43が、循環期間においてアクチュエータユニット21に対するインク振動信号の供給を停止した時から、パージ期間が開始される時までの期間、ヘッド制御部43がアクチュエータユニット21に振動抑制信号を供給する構成であるが、この期間に、アクチュエータユニット21に振動抑制信号を供給しない構成であってもよい。これによると、パージ期間が開始されるまでの期間(図11の振動抑制期間に相当)で、インク振動が減衰するため、パージ動作が開始される時に吐出口108からの液体の排出がインク振動により阻害されるのを防止することができる。この場合は、上述の実施形態のように、強制的に振動を減衰させるものではないので、上述と同程度の振動減衰効果を得るためには、アクチュエータユニット21に振動抑制信号を供給しない期間を、図11に示した振動抑制期間よりも長い期間とすることが必要となる。
【0070】
上述の実施形態においては、ヘッド制御部43が、パージ期間の全てにおいて、アクチュエータユニット21に駆動信号を供給しない構成であるが、パージ期間の一部の期間において、アクチュエータユニット21に駆動信号を供給する構成であってもよい。
【0071】
さらに、上述の実施形態においては、インク振動期間が、パージ期間より前の循環期間と共に開始され、パージ期間が開始されるよりも所定時間前に終了する構成であるが、インク振動期間が、循環期間が開始される時より後に開始されてもよいし、パージ期間が開始されると同時に終了してもよい。
【0072】
加えて、上述の実施形態においては、ヘッド制御部43が、パージ期間が終了すると同時に、アクチュエータユニット21に対するインク振動信号の供給を開始する構成であるが、パージ期間が終了した後に、アクチュエータユニット21に対するインク振動信号の供給を行わない構成であってもよい。
【0073】
また、上述の実施形態においては、アクチュエータユニット21が、吐出口108からインク滴を吐出させるための吐出エネルギーを発生させるアクチュエータと、インク振動を発生させるアクチュエータとを兼ねている構成であるが、アクチュエータユニット21以外のアクチュエータを別途設け、当該アクチュエータによりインク振動を発生させる構成であってもよい。
【0074】
さらに、上述の実施形態においては、アクチュエータユニット21が、ピエゾ式アクチュエータである構成であるが、サーマル式アクチュエータなど、他の方式のアクチュエータであってもよい。
【0075】
本発明は、インク以外の液体を吐出する記録装置にも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 インクジェットヘッド
16 制御装置
43 ヘッド制御部
44 循環・パージ制御部
72 インク流入流路
72a 流入口
73 排気流路
73a 流出口
75 インク流出流路
80 サブタンク
81 インク補給管
82 インク供給管
83 インク帰還管
86 パージポンプ
87 循環バルブ
88 大気連通バルブ
90 インクタンク
101 インクジェットプリンタ
108 吐出口
132 個別インク流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流入する流入口と、液体が流出する流出口と、前記流入口と前記流出口とを連通する内部流路と、液体を吐出するための複数の吐出口と、前記内部流路から分岐して前記複数の吐出口に至る複数の個別液体流路と、前記複数の個別液体流路内の液体に圧力を付与する圧力付与手段とを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに供給される液体を内部に貯溜するタンクと、
前記タンクの内部と前記流入口とを連通する供給流路と、
前記タンクの内部と前記流出口とを連通する帰還流路と、
前記タンクに貯留された液体を、前記供給流路を介して前記内部流路に強制的に供給する供給手段と、
前記帰還流路における流路抵抗値を所定の最小値と所定の最大値との間で調整可能な調整手段と、
前記圧力付与手段、前記供給手段及び前記調整手段を制御する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、前記調節手段の調節により前記流路抵抗値を前記所定の最大値より減少させつつ前記供給手段を駆動させることにより、前記タンクの液体を前記供給流路、前記内部流路及び前記帰還流路の順に移送させるように循環させ、前記循環中に、前記調整手段を調整して前記流路抵抗値を増加させることにより、前記複数の吐出口から液体を排出させ、次に、前記排出中に、前記調整手段を調整して前記流路抵抗値を減少させることにより、前記複数の吐出口からの液体の排出を停止させる制御を行い、
さらに、前記制御手段は、前記循環中に、前記圧力付与手段を制御して、前記複数の吐出口から液体を吐出させることなく前記複数の個別液体流路内の液体を振動させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記排出中に、前記圧力付与手段による前記複数の個別液体流路内の液体振動を行わせないことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記排出が開始される時の所定時間前から前記排出が完了するまでの間に、前記圧力付与手段による前記複数の個別液体流路内の液体振動を行わせないことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記排出が開始される直前に、前記複数の個別液体流路内の液体振動が打ち消されるように、前記圧力付与手段を駆動させることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記排出中に、前記流路抵抗値を減少させることにより、前記複数の吐出口からの液体の排出を停止させるよう前記調整手段を制御するとともに、前記排出が完了すると同時に前記複数の個別液体流路内の液体振動が開始されるように、前記圧力付与手段を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記圧力付与手段は、前記複数の吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギーを前記複数の個別液体流路内の液体に付与するピエゾ式アクチュエータであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−30496(P2012−30496A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172240(P2010−172240)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】