説明

液体吐出装置

【課題】吐出空間内に液体が残留しにくくする。
【解決手段】プリンタは、ヘッドと、キャップ機構と、加湿空気供給機構と、ワイパユニットと、これらを制御する制御装置とを含んでいる。制御装置は、メンテナンス信号を受信したときに、キャップ機構及び加湿空気供給機構を制御して、吐出空間に対して、封止状態で空気を第1開口から供給する第1供給動作に続いて、非封止状態で空気を第2開口から供給する第2供給動作を行う。この後、制御装置は、ワイパユニット及びキャップ機構を制御して、対向部材の表面を払拭する払拭動作を行ってから封止状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録ヘッドの周囲に設けられたキャップ部材を搬送ベルトに密着させることによって、記録ヘッドのノズル面をキャップ部材及び搬送ベルトによってキャッピングするインクジェット記録装置について記載されている。このインクジェット記録装置において、キャップ部材は、記録ヘッドを囲む環状の側板と、外周端が側板の上端に、内周端が記録ヘッドの外側面に固着された可撓性シートとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−85959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のインクジェット記録装置において、側板と記録ヘッドとの位置関係によっては、シートが変形してシートと記録ヘッドの外側面との間、あるいはシートと側板との間に狭い空間が形成されることになる。そして、印刷動作やパージ動作が行われたときに、記録ヘッドから排出されたインクが、例えば、これら狭い空間に捕獲されることがある。さらには、キャッピング状態において装置本体を移動させるときに傾くと、吐出口からインクが漏れ、当該インクがキャップ部材の側板及びシートの内面、記録ヘッドの外側面などに付着する。このような付着インク(残留インク)は、時間が経過すると乾燥して増粘する。そして、キャップ部材及び記録ヘッドの外側面に増粘インクが存在した状態で、キャッピングが行われると、この増粘インクによって吐出口近傍のインクから水分が吸収される。このため、吐出口近傍のインクが乾燥して吐出口の目詰まりが生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、吐出空間内に液体が残留しにくくすることが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、複数の吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを取り囲む環状のリップ部材、前記吐出面と対向する吐出空間を挟んで前記吐出面に対向する対向部材、前記リップ部材が前記対向部材の表面に当接する当接位置及び前記リップ部材が前記対向部材の前記表面から離隔する離隔位置の間において、前記リップ部材を移動させるリップ移動機構、及び、前記リップ部材と前記液体吐出ヘッドの側面との間を繋ぐ弾性のダイアフラムを有し、前記リップ部材が前記当接位置で前記対向部材と当接して前記吐出空間が外部空間から封止された封止状態と、前記リップ部材が前記対向部材から離隔して前記吐出空間が前記外部空間に対して開放された非封止状態とを取り得るキャップ手段と、前記複数の吐出口を挟んで配置された第1開口及び第2開口を有し、空気を前記第1開口又は前記第2開口を介して前記吐出空間に供給する供給手段と、前記対向部材の前記表面を払拭する払拭動作を行う払拭手段と、前記キャップ手段、前記払拭手段及び前記供給手段を制御するメンテナンス制御手段と、ユーザが所定の操作を行ったとき及び時間に関する所定条件が満たされたときのいずれかにおいてメンテナンス信号を出力する出力手段とを備えている。そして、前記リップ部材が前記当接位置に配置されたとき、前記第1開口を通過する空気が流れる前記リップ部材の第1領域の内周面に沿った第1経路と、前記第2開口を通過する空気が流れる前記第1領域に対向した前記リップ部材の第2領域の内周面に沿った第2経路とが形成され、前記封止状態において、前記リップ部材と前記液体吐出ヘッドの側面との間に、前記第1経路と前記第2経路とを結ぶ第3経路が形成され、前記メンテナンス制御手段は、前記出力手段から前記メンテナンス信号が出力されたときに、前記吐出空間に対して、前記封止状態で空気を前記第1開口から供給する第1供給動作に続いて、前記封止状態または前記非封止状態で空気を前記第2開口から供給する第2供給動作を行い、この後、前記払拭動作を行ってから前記封止状態とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体吐出装置によると、第1供給動作による第1開口から第2開口に向かう気流でリップ部材などに付着した液体(特に、リップ部材と液体吐出ヘッドの側面との間に存在する液体)を第3経路を介して第2開口側に移動させた後、第2供給動作が行われる。このため、第2開口から供給された空気によって、第2開口側に集まった液体が第2経路を通って対向部材の表面側に排出される。そして、対向部材の表面から液体が払拭されてから封止状態とされる。したがって、封止状態において、吐出空間内に液体が残留しにくくなるので、吐出口近傍の液体が乾燥しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態によるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のプリンタに含まれるヘッドのヘッド本体及びカバーを示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
【図4】図3に示すIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】図4の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
【図6】図1のプリンタに含まれるヘッドホルダ及び加湿空気供給機構を示す概略図である。
【図7】キャップ機構及びヘッドの主走査方向に関する部分断面図であり、(a)はリップ部材が離隔位置にある状況を示し、(b)はリップ部材が当接位置にある状況を示す。
【図8】キャップ機構及びヘッドの副走査方向に関する部分断面図であり、(a)はリップ部材が離隔位置にある状況を示し、(b)はリップ部材が当接位置にある状況を示す。
【図9】図6(a)のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】キャップ機構、支持機構及び対向部材の動作を説明するための動作状況図である。
【図11】図1に示す制御装置の機能ブロック図である。
【図12】図1のプリンタの制御装置が実行するメンテナンス動作に関する一連の動作フローを示すフローチャート図である。
【図13】第1及び第2ワイピング動作を説明するための動作状況図である。
【図14】図1のプリンタの制御装置が実行するメンテナンス動作に係わる動作フローを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
先ず、図1を参照し、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
【0011】
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部1cから排紙部31に向かう用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像形成と、用紙Pの排紙部31への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)1に対してインクが供給される。
【0012】
空間Aには、ブラックインクを吐出するインクジェットヘッド1(以下、ヘッド1と称する)、搬送機構8、キャップ機構(キャップ手段)40、用紙センサ32、加湿動作に用いられる加湿空気供給機構50(図6参照)、ヘッド昇降機構30(図11参照)、ワイパユニット36(図13参照)、及び、制御装置100等が配置されている。
【0013】
ヘッド1は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有し、駆動信号に基づいて画像を形成する。ヘッド1は、ヘッドホルダ13を介して筐体101aに支持されている。ヘッド1は、ヘッドホルダ13に保持されて、プラテン6a,6bと所定の間隙を介して対向する。ヘッド1は、ヘッド本体3(図2参照)に加えて、リザーバユニット12(図7参照)、フレキシブルプリント配線基板(FPC)、制御基板等が積層された積層体である。上流側流路部材としてのリザーバユニット12には、リザーバを含む上流側インク流路(ともに不図示)が形成されており、カートリッジ4からインクが供給される。リザーバは、インクを一時的に貯留する。
【0014】
下流側流路部材としての流路ユニット11は、アクチュエータユニット21と共にヘッド本体3を構成し、リザーバユニット12のインクが供給される。流路ユニット11の下面は、複数の吐出口108が形成された吐出面1aである。吐出口108からは、アクチュエータユニット21の駆動により、インクが吐出される。なお、ヘッド1は、後に詳述する。
【0015】
制御基板は、制御装置100からの信号を調整する。出力信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、さらにヘッド本体3のアクチュエータユニット21に出力される。アクチュエータユニット21は、駆動信号が供給されると、流路ユニット11内のインクに圧力を加える。
【0016】
ヘッドホルダ13には、ヘッド1に加えて、キャップ機構40を構成するキャップ41が取り付けられている。キャップ41は、ヘッド1に配設された環状部材であって、平面視でヘッド1を内包する。キャップ機構40の構成、動作、機能等は、後に詳述する。
【0017】
搬送機構8は、用紙Pをガイドする2つのガイド部9a,9bと支持機構5とを含み、用紙搬送経路を構成する。2つのガイド部9a,9bは、支持機構5(2つのプラテン6a,6b)を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部9aは、3つのガイド18aと3つの送りローラ対22〜24とを有し、給紙部1cとプラテン6a,6bとを繋ぐ。画像形成用の用紙Pが、プラテン6a,6bに向けて搬送される。搬送方向下流側のガイド部9bは、3つのガイド18bと4つの送りローラ対25〜28とを有し、プラテン6a,6bと排紙部31とを繋ぐ。画像形成後の用紙Pが、排紙部31に向けて搬送される。
【0018】
支持機構5は、画像形成に際して、搬送される用紙Pを下から支える。支持機構5は、2つのプラテン6a,6bと、これらを回動させる駆動モータ(不図示)とを有する。2つのプラテン6a、6bは、搬送方向にこの順で配置され、主走査方向に回動軸7a,7bを持つ。上流側のプラテン6aは、上流端に回動中心がある。下流側のプラテン6bは、下流端に回動中心がある。2つのプラテン6a,6bは、制御装置100の制御により、駆動モータが駆動されることで、支持面形成位置と開放位置との間で回動する。支持面形成位置では、図1に示すように、2つのプラテン6a,6bの先端が突き合わされて、全体として平面形状の支持面5aを構成する。開放位置では、図10(b)に示すように、2つのプラテン6a、6bが、90°回動されて下方に垂れ下がり、上面同士が平行に対向する。これにより、ヘッド1(吐出面1a)が、空間を介して対向部材10と直接対向する。対向部材10は、昇降可能となる。なお、2つのプラテン6a,6bは、通常は、支持面形成位置に配置され、メンテナンス時に開放位置に配置される。
【0019】
用紙センサ32は、送りローラ対24の上流側に配置され、搬送される用紙Pの先端を検知する。このとき出力された検知信号は、同期したヘッド1及び搬送機構8の駆動に用いられ、所望の解像度と速度で画像が形成されることになる。
加湿空気供給機構50は、吐出面1aに対向した吐出空間S1に加湿空気を供給する。吐出空間S1に開口する吐出口108は、内部のインクに水分が補給されることになり、増粘や乾燥が抑制される。
【0020】
ヘッド昇降機構30は、ヘッドホルダ13の昇降により、ヘッド1を印刷位置と退避位置の間で移動する。印刷位置では、図1に示すように、ヘッド1が移動範囲の下端に位置し、支持面形成位置のプラテン6a、6bと印刷に適した間隔で対向する。退避位置(図13(c)参照)では、ヘッド1が移動範囲の上端に位置し、プラテン6a、6bから大きく離隔する。ワイピング位置(図13(b)参照)は、印刷位置と退避位置との間にある。ワイピング位置及び退避位置では、ヘッド1と対向部材10との間の空間を、後述するワイパ36a,36bが移動可能である。
【0021】
ワイパユニット(払拭手段)36は、図13に示すように、吐出面1a及び対向部材10の表面10aを主走査方向に払拭する。そのため、ワイパユニット36は、2つのワイパ36a、36bを有し、これを支持する基部36c及びワイパ移動機構27を含む。ワイパ36aは、基部36cの上面側に立設され、吐出面1aを払拭する(第1ワイピング動作)。ワイパ36bは、基部36cの下面側に立設され、表面10aを払拭する(第2ワイピング動作)。ワイパ移動機構27は、一対のガイド28と駆動モータ(図示せず)とから構成される。駆動モータが駆動されると、基部36cがガイド28に沿って往復移動する。図13(a)に示すように、ヘッド1の左側端部近傍が、基部36cの待機位置である。いずれのワイピング動作でも、ワイパ36a、36bは、図中右方に移動しつつ面を払拭する。基部36cの待機位置への帰還は、ヘッド1が退避位置に、対向部材10が第4位置(後述)に移動するのを待って行われる。
【0022】
空間Bには、給紙部1cが配置されている。給紙部1cは、給紙トレイ20及び給紙ローラ21を有する。このうち、給紙トレイ20が、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ20には、複数の用紙Pが収納可能である。給紙ローラ21は、給紙トレイ20内で最も上方の用紙Pを送り出す。
【0023】
ここで、副走査方向とは、用紙Pが送りローラ対23〜25によって搬送される搬送方向D(図1中矢印D方向)と平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0024】
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ4が、筐体101aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジ4は、ヘッド1にチューブ(不図示)及びポンプ38(図11参照)を介して接続されている。なお、ポンプ38は、ヘッド1にインクを強制的に送るとき(すなわち、パージ時や液体の初期導入時)に駆動される。これ以外は停止状態にあり、ポンプ38はヘッド1へのインク供給を妨げない。
【0025】
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、プリンタ各部の動作を制御して、プリンタ101全体の動作を司る。制御装置100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された記録指令(画像データなど)に基づいて、画像形成動作を制御する。記録指令を受けると、制御装置100は、給紙部1c、ガイド部9a,9b(搬送機構8)を駆動する。給紙トレイ20から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部9aによりガイドされ支持面5a上に送られる。用紙Pは、ヘッド1の真下を副走査方向(搬送方向D)に通過する際に、制御装置100の制御により、吐出面1aからインクが吐出され、所望の画像が形成される。なお、インクの吐出タイミングは、用紙センサ32からの検知信号により決められる。そして、画像が形成された用紙Pは、下流側ガイド部9bによりガイドされて、筐体101aの上部から排紙部31に排出される。
【0026】
制御装置100は、ヘッド1の液体吐出特性の回復や維持、さらにはヘッド回りの残留インクの排出を行うメンテナンス動作を制御する。メンテナンス動作には、パージやフラッシング動作、吐出面1aに対する第1ワイピング動作(吐出面払拭動作)、対向部材10に対する第2ワイピング動作(払拭動作)、キャッピング動作、加湿動作、及び、残留インク排出動作等が含まれる。
【0027】
パージ動作では、ポンプ38が駆動されて、すべての吐出口108に対してインクが強制的に圧送される。このとき、アクチュエータは駆動されない。フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、吐出口108からインクが吐出される。フラッシング動作は、フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づいて行われる。
【0028】
第1ワイピング動作は、パージ動作後に行われ、吐出面1a上の残留したインクなどの異物が取り除かれる(図13(b)参照)。第2ワイピング動作は、各動作(パージ動作、フラッシング動作、及び、残留インク排出動作)が行われる度に行われ、表面10aの残留したインクなどの異物が取り除かれる(図13(c)参照)。
【0029】
キャッピング動作では、図6に示すように、吐出空間(吐出面1a(吐出口108)と対向する空間)S1が、キャップ41により外部空間S2から隔離され封止状態となる。吐出口108内のインクは、水分の発散する経路が閉じられることになり、増粘や乾燥が抑制される。
【0030】
加湿動作では、図6に示すように、隔離された吐出空間S1に加湿空気が供給される。このとき、吐出空間S1内には、水蒸気が留まることになり、インクの乾燥がさらに抑制される。残留インク排出動作では、加湿空気の第1供給動作と第2供給動作が行われる。第1供給動作は、加湿動作と同様な動作である。加湿空気が供給されて、リップ部材42(後述する)とヘッド1との間に残留したインクが排出口側に移動する。第2供給動作は、吐出空間S1を解除された状態(非封止状態)にして、加湿空気が供給される。このとき、第1供給動作における排出口(開口51b)から加湿空気が供給される。これにより、第1供給動作で開口51b側に集まった残留インクを、下方の対向部材10側に排出可能となる。
【0031】
次に、図2〜図5、図7、及び、図8を参照して、ヘッド本体3及びサイドカバー33について説明する。図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
【0032】
ヘッド本体3は、図2に示すように、流路ユニット11の上面に4つのアクチュエータユニット21が固定された積層体である。上面には、圧力室110が開口している。アクチュエータユニット21は、この開口を封止し、圧力室110の側壁を構成している。
【0033】
流路ユニット11は、図4に示すように、9枚のステンレス製プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット11の内部には、インク流路が形成されている。インク流路は、上流側の共通インク流路と下流側の個別インク流路132とから構成される。共通インク流路は、マニホールド流路105及びこれから分岐した副マニホールド流路105aからなる。マニホールド流路105は、一端に上面のインク供給口105bを持つ。個別インク流路132は、副マニホールド流路105aの出口から、アパーチャ112及び圧力室110を経て、下面(吐出面1a)の吐出口108に至る。吐出口108は、吐出面1aにおいて、主走査方向に600dpiに相当する間隔で配列している。
【0034】
ヘッド1は、サイドカバー33を有している。サイドカバー33は、図2に示すように、ヘッド本体3の全周を取り囲む環状部材である。サイドカバー33は、樹脂の成型部材であって、図7に示すように、流路ユニット11及びリザーバユニット12の両側面に跨って取り付けられている。サイドカバー33は、取付部34,37と鍔部35,38とを有し、主走査方向に沿う長尺部33aと副走査方向に沿う短尺部33bとで構成される。取付部34,37は、吐出面1aに垂直な取付面を有し、ヘッド1の側面に固定される。鍔部35,38は、外側に向かって水平に延びた突出部であって、取付部34,37の下端に接続する。鍔部35,38の下面は、吐出面1aよりもプラテン6a、6bから離隔して、用紙Pの搬送を妨げない。
【0035】
長尺部33aは、図7に示すように、取付部34の上方部分から鍔部35の先端に向かって傾斜した傾斜面34aが形成されている。短尺部33bは、略コの字形状の断面を有し、図8に示すように、取付部37及び鍔部38に加え、貫通孔51を持つ上突出部39で構成される。上突出部39は、外側に向かって水平に延びた突出部であって、取付部37の上端に接続する。外側への突出は、上突出部39の方が鍔部38より小さい。上突出部39の上面には、副走査方向中央部に、円筒状の接続部39aが立設され、接続部39aの中空部39bが貫通孔51と連通している。貫通孔51の下側開口51a(51b)は、鍔部38の上面に対向し、吐出空間S1に対する加湿空気の入口(出口)である。このように、サイドカバー33は、ヘッド1の側面の一部を構成する。
【0036】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図2に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は主走査方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は副走査方向に沿って重なっている。
【0037】
図5に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックスであり、3枚の圧電層161〜163から構成されている。最上層の圧電層161は、上面に複数の個別電極135が形成され、厚み方向に分極されている。圧電層162の上面には、圧電層161に挟まれて、共通電極134が全体的に形成されている。両電極134、135間に分極方向の電界が生じると、間の圧電層161(駆動活性部)が面方向に縮む。圧電層162、163は、自発的に変形しないので、圧電層161との間に歪み差が生じる。これにより、個別電極135と圧力室110とに挟まれた部分が、圧力室110に向かって突出(ユニモルフ変形)する。このとき圧力室110内のインクは加圧され、インク滴として吐出される。
【0038】
このように、アクチュエータユニット21には、個別電極135毎にアクチュエータが作り込まれており、独立してインクに吐出エネルギーを付与できる。ここで、共通電極134は、常にグランド電位にある。また、駆動信号は、個別ランド136から個別電極135に選択的に供給される。個別ランド136は、個別電極135の先端部にある。
【0039】
本実施形態では、インクの吐出に際して、引き打ち法が採用されている。個別電極135は、予め所定の電位にあり、アクチュエータはユニモルフ変形している。駆動信号が供給されると、個別電極135は、一旦共通電極134と同電位となり、所定時間後に所定電位に復帰する。同電位となるタイミングで、アクチュエータがユニモルフ変形を解消して、圧力室110にインクが吸い込まれる。電位の復帰タイミングで、アクチュエータが再びユニモルフ変形して、吐出口108からインク滴が吐出される。
【0040】
次に、図6〜図8を参照し、ヘッドホルダ13及びキャップ機構40の構成について説明する。
【0041】
ヘッドホルダ13は、金属等からなる剛体の枠状フレームであり、ヘッド1の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ13には、キャップ機構40のキャップ41が取り付けられている。キャップ41は、加湿空気供給機構50の構成部材でもあって、キャップ41が閉ざされた吐出空間S1を作ると、この空間内の空気が加湿空気と置換可能となる。
【0042】
ここで、ヘッドホルダ13とヘッド1との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。また、ヘッドホルダ13とキャップ41との当接部は、全周に亘って接着剤で固定されている。ヘッドホルダ13には、サイドカバー33の短尺部33bに対応して貫通孔13aが形成されており、上突出部39が挿通されている。貫通孔13aは、上突出部39より一回り大きく、上突出部39と作る隙間に封止剤が充填されている。これにより、キャップ41が吐出空間S1を閉ざしたとき、空間S1内の水分の発散経路が確実に遮断されることになる。
【0043】
キャップ機構40は、キャップ41、キャップ41を昇降させるキャップ昇降機構48、対向部材10、対向部材10を昇降させる対向部材昇降機構49(図11参照)を含む。キャップ41は、ヘッド1とともにサイドカバー33及び吐出空間S1を内包可能で、主走査方向に長い。キャップ41は、図7及び図8に示すように、リップ部材42、及び、ダイアフラム44を含む。
【0044】
リップ部材42は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド1を囲んでいる。つまり、リップ部材42は、サイドカバー33の外側に配置されている。リップ部材42は、図7に示すように、基部42x、及び、基部42xの下面から突出した突出部42aを含む。このうち、突出部42aは、断面が三角形である。基部42xの上面には、凹部42bが形成されており、後述の可動体43の下端と嵌合している。
【0045】
ダイアフラム44も、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド1を囲んでいる。より具体的には、ダイアフラム44は、可撓性を有した薄膜部材であって、外周端(一端)がリップ部材42の内周面に接続されている。リップ部材42とダイアフラム44とは一体である。また、ダイアフラム44の内周端は、密着部44aである。密着部44aは、外側側面が薄膜部材の基部であり、内側側面がヘッド1の側面に密着し、上面がヘッドホルダ13の下面に密着し、下面がサイドカバー33の上端面に密着している。このうち、上面が、全長に亘って、ヘッドホルダ13と接着剤で固定されている。
【0046】
キャップ昇降機構(リップ移動機構)48は、可動体43、複数のギア45、昇降モータ(不図示)を有している。可動体43は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、ヘッド1をサイドカバー33の外側から取り囲んでいる。可動体43は、複数のギア45と接続されている。制御装置100による制御の下、昇降モータが駆動されると、ギア45が回転して可動体43が昇降する。基部42xも、共に昇降する。これにより、突出部42aの先端と吐出面1aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。
【0047】
リップ部材42は、可動体43の昇降に伴って、その先端(突出部42a)が対向部材10の表面10aに当接する当接位置(図7(b)、図8(b)及び図10(b)に示す位置)と、表面10aから離隔した離隔位置(図7(a)及び図8(a)に示す位置)とを選択的に取る。当接位置は、リップ部材42が第1位置(後述する)にある対向部材10の表面10aに当接可能な位置であり、インク吐出方向に関して吐出面1aよりも前方に突出部42aが位置する。また、離隔位置では、吐出面1aよりも後方に突出部42aが位置し、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放状態(非封止状態)となる。
【0048】
なお、当接位置にあっては、リップ部材42の主走査方向に沿う長尺部は、図7(b)に示すように、内周面が鍔部35の先端と接触する。ダイアフラム44は、小さな隙間63を残して、サイドカバー33の上面と接触する。リップ部材42の副走査方向に沿う短尺部33bは、図8(b)に示すように、ダイアフラム44と共に、所定の間隙を介して鍔部35の先端と離隔する。一方、離隔位置にあっては、長尺部33a及び短尺部33bは共に、図7(a)及び図8(a)に示すように、鍔部35の先端と大きく離隔する。ダイアフラム44も、U字状に湾曲して、サイドカバー33から離隔する。
【0049】
対向部材10は、平面視において、リップ部材42よりも一回り大きく、矩形平面形状を有するガラス板である。表面10aは、リップ部材42の表面よりも親水性が高い。これにより、リップ部材42と対向部材10とが当接したときに、リップ部材42から対向部材10へのインク移動が容易に生じる。なお、対向部材10は、親水性に同様の差があれば、ガラス以外の材質から構成されていてもよく、特に限定するものではない。
【0050】
対向部材昇降機構49は、対向部材10を昇降させ、対向部材10が第1位置から第4位置の間で移動する。第1位置は、図10(b)に示すように、対向部材10が最も吐出面1aに近づく位置であって、リップ部材42の当接位置と対応し、キャッピング動作に関連する。ここでは、表面10aと吐出面1aとの離隔距離を、印刷中の支持面5aと吐出面1aとの離隔距離と同じに設定してある。第2位置は、図10(c)に示すように、表面10aと吐出面1aとの離隔距離が第1位置よりも大きく、パージ動作に関連する。第3位置では、この離隔距離が第2位置よりも大きく、ヘッド1の退避位置に対応し、ワイパ36bによる第2ワイピング動作に関連する。第4位置では、この離隔距離が第3位置よりも大きく、ヘッド1のワイピング位置に対応し、ワイパ36aによる第1ワイピング動作に関連する。なお、第3位置及び第4位置は、図中2点差線で示されている。また、第4位置は、印刷中における対向部材10の配置位置でもある。
【0051】
次に、図6に戻って、加湿空気供給機構50の構成について説明する。
【0052】
加湿空気供給機構(供給手段)50は、図6に示すように、キャップ41及び一対の接続部39aに加え、チューブ55,57、切換弁59、ポンプ56及びタンク54などを含む。チューブ55の一端は左側短尺部33bの接続部39aに嵌合し、他端はタンク54に接続されている。一方、チューブ57の一端は右側短尺部33bの接続部39aに嵌合し、他端はタンク54に接続されている。このように、チューブ55、57は、吐出空間S1とタンク54とを連通させている。
【0053】
タンク(生成手段)54は、下部空間に加湿用の水を貯留し、且つ、上部空間に加湿された加湿空気を貯蔵している。チューブ57は、タンク54の下部空間(水中)と連通している。一方、チューブ55は、タンク54の上部空間と連通している。また、チューブ55のタンク54と切換弁59との間には、ポンプ56が設けられている。なお、チューブ57のタンク54近傍には、タンク54内の水がチューブ57側に流れ込まないように、図示しない逆止弁が取り付けられている。また、タンク54内の水が少なくなった場合には、図示しない水補給タンクより水がタンク54に補給される。
【0054】
切換弁59は、チューブ55,57に跨って設けられている。切換弁59は、制御装置100の制御によって、タンク54の加湿空気を開口51aに供給する第1切換状態(図6(a)参照)と、タンク54の加湿空気を開口51bに供給する第2切換状態(図6(b)参照)とを選択的に取り得るように切り換えられる。
【0055】
このような構成において、制御装置100の制御により、切換弁59が第1切換状態においてポンプ56が駆動されると、図6(a)に示すように、タンク54内の空気が白抜き矢印に沿って循環する。タンク54の上部空間の加湿空気は、開口51aから吐出空間S1に供給される。このとき、吐出空間S1が封止状態であると、内部の空気が加湿空気と置換されながら開口51bに向かって流れる。チューブ57はタンク54と水中で連通しているため、吐出空間S1内の空気は、タンク54で加湿される。生成された加湿空気は、ポンプ56の駆動が続く間、吐出空間S1に供給される。一方、制御装置100の制御により、キャップ41が非封止状態にあって切換弁59が第2切換状態においてポンプ56が駆動されると、図6(b)に示すように、タンク54内の空気が黒矢印に沿って流れる。このときは、加湿空気が開口51bから吐出空間S1に供給され、開口51aから吸い込まれた空気がタンク54の水中に放出される。
【0056】
本実施形態におけるサイドカバー33の鍔部38は、図8(b)に示すように、主走査方向外側の端部が、リップ部材42の第1領域61a及び第2領域62aとそれぞれ隙間61,62を介して対向している。これらの隙間61,62は、図9に示すように、鍔部38の副走査方向両端部まで延在している。この両端部では、吐出空間S1が封止状態のときに、リップ部材42の内周面と鍔部38の角部近傍とが接触している。なお、第1領域61aは、矩形のリップ部材42において一方の短辺及び当該短辺と長辺とを繋ぐ角部で構成された領域である。第2領域62aは、主走査方向に関して第1領域61aと対向する領域であって、第1領域61aと同様の形態を有する。これら第1及び第2領域61a,62aは、図9中のハッチング領域に相当する。
【0057】
次に、主にキャップ41内での空気の流れについて説明する。封止状態において、吐出面1aと対向部材10とが作る経路に加えて、3つの経路が吐出空間S1内に形成されて、加湿空気が流れる。3つの経路は、第1領域61aの内周面に沿う第1経路R1、第2領域62aの内周面に沿う第2経路R2及びダイアフラム44とサイドカバー33の上面との間の第3経路R3である。第3経路R3は、主走査方向に沿う隙間63であって、第1経路R1及び第2経路R2を繋ぐ。
【0058】
ポンプ56が駆動されると、図8(b)中白抜き矢印で示すように、加湿空気が開口51aを介して吐出空間S1内に流入する。加湿空気は、副走査方向に細長い隙間61全体から流れ込み、開口51bに向かう。このとき、一部の加湿空気は、第3経路R3を通って第2経路R2に至る。第2経路R2を伝う加湿空気は、隙間62を介して開口51bから排出される。なお、封止状態において、開口51bから加湿空気が供給されると、加湿空気は上述と逆方向に流れる。一方、非封止状態において、開口51bから加湿空気が供給されると、加湿空気は第2経路R2を通って対向部材10に向かって放出され、外部空間S2の空気が第1経路R1を通って開口51aから吸引される。このとき、第3経路R3を流れる加湿空気はない。
【0059】
次に、図11を参照しつつ、制御装置100について説明する。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図11に示すように、制御装置100は、搬送制御部141と、画像データ記憶部142と、ヘッド制御部143と、メンテナンス制御部150、時間計測部151と、判定部152とを有している。
【0060】
搬送制御部141は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙部1c、及び、ガイド部9a,9bの各動作を制御する。画像データ記憶部142は、外部装置からの記録指令に含まれる画像データ(インク吐出データ)を記憶する。
【0061】
ヘッド制御部143は、画像形成において、用紙Pに対してインクを吐出するようヘッド1を制御する。画像形成は、ヘッド制御部143が、画像データ記憶部142に記憶された画像データに基づいて、ヘッド1からのインク吐出を制御する。ヘッド1の制御は、用紙Pの搬送と同期して行われ、用紙Pの先端検出信号に基づく。画像データに基づく制御の開始は、先端が検出されてから、所定時間後である。このとき、用紙Pの印刷領域の先端が、最も上流にある吐出口108の直下に到達する。なお、画像形成には、フラッシングデータに基づくドット形成も含まれる。これは、画像形成中の吐出特性維持動作であって、メニスカス振動を伴う場合もある。
【0062】
メンテナンス制御部150は、パージ動作、フラッシング動作、第1ワイピング動作、第2ワイピング動作、キャッピング動作、加湿動作、及び、残留インク排出動作等のメンテナンス動作において、支持機構5、ヘッド昇降機構30、ワイパユニット36、キャップ昇降機構48、対向部材昇降機構49、切換弁59、及び、ポンプ38,56を制御する。なお、フラッシング動作においては、ヘッド制御部143を介して、ヘッド1を制御する。
【0063】
時間計測部151は、前回の残留インク排出動作が行われてから今回の残留インク排出動作が行われるまでの経過時間を計測する。なお、時間計測部151は、今回の残留インク排出動作が行われるときに、前回の残留インク排出動作から計測していた経過時間をリセットし、今回の残留インク排出動作から新たに経過時間を計測する。
【0064】
判定部(出力手段)152は、メンテナンス信号を出力して、ヘッド周りに残留するインクの排出を含むメンテナンス動作を指示する。判定部152は、プリンタ101の電源投入時に、時間に関する所定条件との比較を行い、条件が満たされたと判定するとメンテナンス信号を出力する。所定条件としては、例えば、時間計測部151が所定時間以上の経過時間を計測した時、制御装置100のバッテリー切れにより経過時間が計測されない時が、これに相当する。前者の場合、パージ動作に伴うワイピングを繰り返すことによるインクの蓄積が想定され、後者の場合、未計測期間内に発生する不測のインク漏れとこれに伴うヘッド周りの汚染が想定される。なお、本実施形態では、60時間が所定時間である。また、以上の判定動作は、プリンタ101の電源投入時に行われ、印刷の準備動作に含まれる。
【0065】
メンテナンス信号は、上述の所定条件との関係から出力されるだけでなく、ユーザの指示によっても出力される。本実施形態では、プリンタ101は押しボタン69を有する。ユーザがボタン69を押せば、判定部152からメンテナンス信号が出力される。例えば、不測の原因でヘッド周りが汚染されると、画像形成後の用紙Pに汚れが付着することがあり、ユーザの判断によりボタン69が押される。このとき、連続印刷中であれば、印刷途中の用紙Pへの印刷完了を待って、メンテナンス動作に移ることになる。なお、ボタン69によるメンテナンス信号の出力は、電源投入後、いつでも可能である。
【0066】
続いて、上述のメンテナンス動作の係わる動作手順について、図14に従って簡単に説明する。この動作は、電源投入(SW−ON)直後のプリンタ101のスタンバイ動作である。
【0067】
ステップG1において、判定部152は、制御装置100のバッテリー切れを判定する。バッテリー切れは、時間計測部151による経過時間情報の取得の可否で判定される。バッテリーが切れると、適正な経過時間情報が取得できない。バッテリーが切れたと判定されると(G1:Yes)、ヘッド周りへの不測の汚染が疑われ、メンテナンス動作を行うステップG8に移る。バッテリー切れがなければ(G1:No)、ステップG2に移る。
【0068】
ステップG2において、判定部152は、先のメンテナンス動作(残留インク排出動作)からの経過時間が所定時間(例えば、60時間)以上か否かを判定する。経過時間が所定時間以上と判定されると(G2:Yes)、ヘッド周りへのインクの蓄積が疑われ、メンテナンス動作を行うステップG8に移る。所定時間未満であれば(G2:No)、次のステップG3に移る。
【0069】
ステップG3において、制御装置100は、印字指令の入力の有無を判定する。この段階で印字指令が入力されておれば(G3:Yes)、ステップG9に移って、印刷開始のための準備動作が開始される。印字指令が入力されなければ(G3:No)、入力されるまで待機する。本実施形態では、この待機中に加湿動作が行われ、待機中のインクの増粘や乾燥を抑制する。
【0070】
まず、ステップG4に移る。メンテナンス制御部150は、支持機構5、ヘッド昇降機構30、キャップ昇降機構48、対向部材昇降機構49を制御して、吐出面1aのキャッピングを行う。吐出空間S1が、封止状態となる。電源投入直後であれば、予め封止状態にあるので、見かけ上変位を伴う動作はない。ステップG8のメンテナンス動作後であれば、リップ部材42が離隔位置から当接位置に移動する。ステップG13の印刷完了後も、同様に、リップ部材42が移動する。
【0071】
さらに、ステップG5に移り、加湿空気の循環が始まる。メンテナンス制御部150は、ポンプ56及び切換弁59を制御して、加湿空気を開口51aから供給する。この加湿空気の循環動作は、所定時間(例えば、1〜5分で、ここでは、3分)だけ行う。ポンプ56による加湿空気の送圧は、吐出口108のメニスカスが破壊されない最大圧力(メニスカス耐圧)以下に設定されている。加湿中に印字指令が入力されれば、ステップG3からステップG9に移ることになる(G6:No)。所定時間が過ぎると(G6:Yes)、加湿空気の循環が止められ、封止状態に留まる(ステップG7)。これにより、キャップ41内のインクの乾燥が抑制される。
【0072】
変形例として、上述の加湿動作において、加湿空気を開口51bから供給しても良い。キャップ41内のインクの乾燥抑制効果に違いはない。
【0073】
ステップG8において、残留インク排出動作を伴うメンテナンス動作が行われる。詳細な手順については、後述する。メンテナンス動作が完了すると、ステップG3に移り、印刷動作又は待機動作を行う。
【0074】
ステップG9において、印字動作の準備として、吐出空間S1を非封止状態にする。メンテナンス制御部150は、キャップ昇降機構48、対向部材昇降機構49を制御して、吐出面1aを開放する。このとき、次のフラッシング動作に備えて、対向部材10は、図10(c)に示す第2位置に配置される。キャップ41(リップ部材42)は、当接位置から離隔位置に戻される。各部材が移動し終わると、ステップG10に移る。
【0075】
ステップG10において、フラッシング動作が行われる。フラッシング動作には、対向部材10の表面10aへのインク吐出と表面10aからのインク除去とが含まれる。メンテナンス制御部150は、ヘッド制御部143と協働して、全吐出口108から所定数のインク滴を吐出する。吐出先は、表面10aである。インク吐出に加えて、所定回数のメニスカス振動を行っても良い。インク吐出後、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構30、ワイパユニット36、対向部材昇降機構49を制御して、第2ワイピング動作を行う。ワイピングに先立ち、ヘッド1は退避位置に、対向部材10は第3位置に、それぞれ移動される。ワイピング後、次の印刷動作に備えて、ヘッド1は印刷位置に、対向部材は第4位置に移動される。加えて、プラテン6は、回動されて、開放位置から支持面形成位置に移される。
【0076】
ステップG11において、制御装置100は、搬送制御部141及びヘッド制御部143を制御して、用紙Pの搬送と、これに同期したインク吐出を始める。画像データ記憶部142の画像データに基づいて、用紙Pへの印刷が行われる。
【0077】
ステップG12において、判定部152が、ユーザからのメンテナンス動作への要請(ボタン69の押し込み動作)を監視する。監視は、印刷動作が完了するまで続く。メンテナンス動作への要請があれば(G12:Yes)、判定部152はメンテナンス信号を出力し、ステップG8に移る。一方、この要請がなければ(G12:No)、印刷動作が継続される。
【0078】
ステップG13において、制御装置100は、印字指令が指示する印刷の完了を判定する。次に印刷すべき用紙Pがあれば(G13:No)、ステップG11に戻って、新たな用紙Pの繰り出しと印刷に移る。印刷すべき用紙Pが無ければ(G13:Yes)、ステップG3に移って、次の印字指令の入力を待つ。本実施形態では、この段階で、ステップG4からステップG7の手順を一通り踏んだ後、キャッピング状態のまま待機する。
【0079】
続いて、ステップG8におけるメンテナンス動作の一例について、図12を参照して説明する。
【0080】
制御装置100は、判定部152から出力されたメンテナンス信号を受信する(F1)。次に、ステップF2において、制御装置100が、パージ動作を制御する。
【0081】
ステップF1において、経過時間情報に基づいてメンテナンス信号を受信するときは、封止状態となっている。このとき、プラテン6a,6bは開放位置にあり、対向部材10は第1位置にあり、ヘッド1は印刷位置にあり、リップ部材42が当接位置にある。一方、押しボタン69からのメンテナンス信号を受信するときは、非封止状態の場合もある。例えば、印刷中の受信であれば、プラテン6a,6bは支持面形成位置にあり、対向部材10は第4位置にあり、ヘッド1は印刷位置にあり、リップ部材42が離隔位置にある。したがって、パージ動作の実行に際して、封止状態にある場合は、メンテナンス制御部150が、キャップ昇降機構48及び対向部材昇降機構49を制御して、リップ部材42を離隔位置に移動させ、図13(a)に示すように、対向部材10を第2位置に移動させる。一方、非封止状態にある場合は、メンテナンス制御部150が、支持機構5及び対向部材昇降機構49を制御して、プラテン6a,6bを開放位置に移動させた後、図13(a)に示すように、対向部材10を第2位置(液体排出位置)に移動させる。
この後、メンテナンス制御部150は、ポンプ38を制御し、ヘッド1へインクが圧送される(パージ動作)。本実施形態におけるパージ動作は、カートリッジ4内の所定量のインクが、ヘッド1に強制的に送液されて、吐出口108から液体が排出される。
【0082】
次に、ステップF3において、第1ワイピング動作を実行する。このとき、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構30及び対向部材昇降機構49を制御して、ヘッド1をワイピング位置に移動させ、対向部材10を第4位置に移動させる。この後、メンテナンス制御部150は、ワイパユニット36(ワイパ移動機構27)を制御して、図13(b)に示すように、吐出面1aをワイパ36aで払拭する(第1ワイピング動作)。
【0083】
このとき、吐出面1aは、開口51a側から開口51b側に向かって払拭される。この方向は、後述のステップF6(第1供給動作)における空気の流れ方向と同じである。このため、ワイパ36aによる拭き残しがあって、この残留インクは第2領域62a側に集められることになる。よって、後述のステップF8の第2供給動作におけるインク排出性が向上する。
【0084】
また、このとき、ワイパ36aを、図13(b)中2点鎖線で示すように、鉛直方向に関してリップ部材72の第2領域62aと対向する位置(鍔部38の第2経路R2と対向する角部)まで、待機位置から移動させる。これにより、ワイパ36aで吐出面1a及び鍔部38の下面に付着したインクを、払拭することが可能になるとともに、インクを第2経路R2近傍まで移動させることができる。このため、第2供給動作におけるインク排出性がより向上する。この第1ワイピング動作の後に、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構30及びワイパユニット36を制御して、ヘッド1を退避位置に移動させた後、基部36c(ワイパ36a,36b)を待機位置に戻す。
【0085】
次に、ステップF4において、第2ワイピング動作を実行する。このとき、メンテナンス制御部150は、対向部材昇降機構49を制御して、対向部材10を第3位置に移動させる。この後、メンテナンス制御部150は、ワイパユニット36(ワイパ移動機構27)を制御して、図13(c)に示すように、表面10aをワイパ36bで払拭する(第2ワイピング動作)。この第2ワイピング動作の後に、メンテナンス制御部150は、対向部材昇降機構49及びワイパユニット36を制御して、対向部材10を第4位置に移動させた後、基部36c(ワイパ36a,36b)を待機位置に戻す。そして、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構30を制御して、ヘッド1を印刷位置に移動させる。
【0086】
次に、ステップF5において、キャッピング動作を実行する。このとき、メンテナンス制御部150は、対向部材昇降機構49及びキャップ昇降機構48を制御して、図10(b)に示すように、対向部材10を第1位置に移動させてからリップ部材42を当接位置に移動させる。これにより、吐出空間S1が封止状態となる。
【0087】
次に、ステップF6において、第1供給動作を実行する。メンテナンス制御部150は、切換弁59及びポンプ56を制御し、第1切換状態において、ポンプ56を所定時間だけ駆動する。また、このとき、メンテナンス制御部150は、開口51aからの加湿空気の供給圧力が、吐出口108aに形成されるインクメニスカスが破壊されない最大の圧力であるインクメニスカスの耐圧以下となるように、ポンプ56を制御する。これにより、吐出口108の内部に加湿空気が気泡として浸入しない。こうして、開口51aから供給された加湿空気が、第1経路R1、対向部材10と吐出面1aとの間の空間、及び、第2経路R2を順に通って開口51bから排出される。供給された加湿空気の一部は、第3経路R3を通って第2経路R2に至る。この加湿空気の流れが、隙間63(リップ部材42とヘッド1との間)にある残留インクを開口51a側から開口51b側に移動させる。
【0088】
次に、ステップF7において、キャッピングの解除を行う。このとき、メンテナンス制御部150は、対向部材昇降機構49を制御して、図10(c)に示すように、対向部材10を第2位置(液体排出位置)に移動させる。これにより、リップ部材42が当接位置にある状態で非封止状態となる。
【0089】
次に、ステップF8において、第2供給動作を実行する。このとき、メンテナンス制御部150は、切換弁59及びポンプ56を制御し、第2切換状態において、ポンプ56を所定時間だけ駆動する。これにより、開口51bから加湿空気が供給され、開口51aからは外部空間S2の空気が吸引される。開口51bから供給された加湿空気によって、吐出面払拭動作や第1供給動作によって開口51b側に集められたインクが、第2経路R2から対向部材10側に排出される。このとき、対向部材10が第1位置より吐出面1aから遠い第2位置にあり、加湿空気の風圧で、表面10a上の廃インクが飛散しない。開口51b付近のインクが、第3経路R3を開口51a側に戻ることもない。
【0090】
また、このとき、メンテナンス制御部150は、開口51bからの加湿空気の供給圧力が、インクメニスカスの耐圧を超えるように、ポンプ56を制御する。つまり、第2供給動作における加湿空気の供給圧力は、第1供給動作におけるよりも大きい。これにより、開口51b側に集められたインクを効果的に対向部材10側に排出することが可能となる。このため、ステップF8におけるポンプ56の駆動時間を短くすることが可能となる。
【0091】
次に、ステップF9において、2回目の第2ワイピング動作を行う。1回目の第2ワイピング動作(ステップF4)とは、表面10aの払拭範囲に違いがある。2回目は、表面10aの途中部から払拭を開始し、開口51b側に向けて払拭する。払拭の終わりは、第2領域62aの対向領域よりも主走査方向外側である。まず、メンテナンス制御部150が、ヘッド昇降機構30及びキャップ昇降機構48を制御して、ヘッド1を退避位置に移動させるとともに、リップ部材42を離隔位置に移動させる。そして、メンテナンス制御部150が、対向部材昇降機構49及びワイパユニット36を制御して、対向部材10を第4位置に移動させた後、ワイパ36bと対向部材10の表面10aの主走査方向中央部とが対向するように基部36cを移動させる。この後、対向部材10を第3位置に移動させ、図13(c)に示すように、ワイパ36bと表面10aとを接触させる。そして、ワイパ36bを図13(c)中2点鎖線で示す位置まで表面10aを払拭する(第2ワイピング動作)。
【0092】
これにより、対向部材10の吐出空間S1を画定する領域の内側には、インクが残留しない。封止状態において、吐出口近傍のインクが乾燥しにくくなる。また、ワイパ36bによる乾拭き距離が短くなって、ワイパ36bの長寿命化が図れる。
【0093】
この第2ワイピング動作後に印刷動作に移る際は、メンテナンス制御部150が、対向部材昇降機構49及びワイパユニット36を制御して、対向部材10を第4位置に移動させた後、基部36c(ワイパ36a,36b)を待機位置に戻す。そして、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構30を制御して、ヘッド1を印刷位置に移動させる。
【0094】
一方、第2ワイピング動作後に待機動作に移る際は、メンテナンス制御部150が、ヘッド昇降機構30、対向部材昇降機構49及びワイパユニット36を制御して、印刷動作に移る際と同様に、基部36cを待機位置に戻した後、ヘッド1を印刷位置に移動し、対向部材10を第4位置から第1位置に戻す。
【0095】
変形例として、ステップF9において、ヘッド1を退避位置、リップ部材42を離隔位置、対向部材10を第3位置に移動させた後、表面10a全体をワイパ36bで払拭してもよい。この場合、表面10aを払拭するまでの、動作が短縮され、第2ワイピング動作に要する時間が短くなる。
【0096】
こうして、メンテナンス動作が終了する。
【0097】
なお、パージ動作に代えてフラッシング動作が行われてもよい。この場合、対向部材10の表面10aにヘッド1からインク滴が吐出され、その後、表面10aからインク滴を除去する第2ワイピング動作が行われればよい。このとき、吐出面1aの払拭動作は行われない。
【0098】
以上のように、本実施形態のプリンタ101によると、メンテナンス信号を受信すると、加湿空気が、第1供給動作に次ぐ第2供給動作の二段階で供給される。第1供給動作で、開口51aから開口51bに向かう気流が作られ、ヘッド周りのインクを開口51b側に移動させる。第2供給動作で、開口51bから表面10aに向かう気流が作られ、開口51b側のインクが表面10aに排出される。そして、表面10aからインクが払拭されてから封止状態とされる。したがって、封止状態において、吐出空間S1内にインクが残留しにくくなるので、吐出口近傍のインクが乾燥しにくくなる。
【0099】
また、第2供給動作の後であって第2ワイピング動作が行われる前に、対向部材10が第2位置から第3位置に配置される。これにより、対向部材10の表面10aが払拭しやすくなる。
【0100】
また、加湿空気供給機構50が、加湿空気を生成するためのタンク54を有しているため、第1及び第2供給動作においては、開口51a,51bから加湿空気が供給される。これにより、両供給動作において、リップ部材42などに付着したインクが増粘していても、水分が補給される。このため、当該インクの粘度が低下して、第2供給動作において、対向部材10側に排出しやすくなる。
【0101】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、第1及び第2供給動作において、開口51a,51bから加湿されていない空気を供給してもよい。これにおいても、第1供給動作によるインクの集積及び第2供給動作による集積インクの排出が可能で、上述の実施形態と同様の効果がある。また、第2供給動作において、封止状態で加湿空気を供給してもよい。これにおいて、供給された加湿空気は、主に、第2経路R2から第1経路R1に向かって流れるため、開口51b側に集まったインクを対向部材10側に排出することが可能となる。このとき、リップ部材42よりも表面10aの親水性が高ければ、インクの表面10aへの移行が促進される。したがって、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、ステップF7において、対向部材10を移動させずにリップ部材42を離隔位置に移動させてもよい。これにおいても、開口51b側に集まったインクを対向部材10側に排出することが可能となる。また、ヘッド1は、平面視で、長方形以外の多角形、円形の輪郭を有していてもよい。
【0102】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
1a 吐出面
10 対向部材
10a 表面
33 サイドカバー
36 ワイパユニット(払拭手段)
38 ポンプ(排出手段)
40 キャップ機構(キャップ手段)
42 リップ部材
44 ダイアフラム
48 キャップ昇降機構(リップ移動機構)
49 対向部材昇降機構(対向部材移動機構)
50 加湿空気供給機構(供給機構)
51a 開口(第1開口)
51b 開口(第2開口)
61a 第1領域
62a 第2領域
69 押しボタン(出力手段)
100 制御装置
101 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
108 吐出口
150 メンテナンス制御部(メンテナンス制御手段)
152 判定部(出力手段)
R1 第1経路
R2 第2経路
R3 第3経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを取り囲む環状のリップ部材、前記吐出面と対向する吐出空間を挟んで前記吐出面に対向する対向部材、前記リップ部材が前記対向部材の表面に当接する当接位置及び前記リップ部材が前記対向部材の前記表面から離隔する離隔位置の間において、前記リップ部材を移動させるリップ移動機構、及び、前記リップ部材と前記液体吐出ヘッドの側面との間を繋ぐ弾性のダイアフラムを有し、前記リップ部材が前記当接位置で前記対向部材と当接して前記吐出空間が外部空間から封止された封止状態と、前記リップ部材が前記対向部材から離隔して前記吐出空間が前記外部空間に対して開放された非封止状態とを取り得るキャップ手段と、
前記複数の吐出口を挟んで配置された第1開口及び第2開口を有し、空気を前記第1開口又は前記第2開口を介して前記吐出空間に供給する供給手段と、
前記対向部材の前記表面を払拭する払拭動作を行う払拭手段と、
前記キャップ手段、前記払拭手段及び前記供給手段を制御するメンテナンス制御手段と、
ユーザが所定の操作を行ったとき及び時間に関する所定条件が満たされたときのいずれかにおいてメンテナンス信号を出力する出力手段とを備えており、
前記リップ部材が前記当接位置に配置されたとき、前記第1開口を通過する空気が流れる前記リップ部材の第1領域の内周面に沿った第1経路と、前記第2開口を通過する空気が流れる前記第1領域に対向した前記リップ部材の第2領域の内周面に沿った第2経路とが形成され、前記封止状態において、前記リップ部材と前記液体吐出ヘッドの側面との間に、前記第1経路と前記第2経路とを結ぶ第3経路が形成され、
前記メンテナンス制御手段は、前記出力手段から前記メンテナンス信号が出力されたときに、前記吐出空間に対して、前記封止状態で空気を前記第1開口から供給する第1供給動作に続いて、前記封止状態または前記非封止状態で空気を前記第2開口から供給する第2供給動作を行い、この後、前記払拭動作を行ってから前記封止状態とすることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第2供給動作後の前記払拭動作において、前記対向部材の表面は、前記吐出空間と対向する領域の途中部から前記リップ部材の前記第2領域が当接する領域を超えて払拭されることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第2供給動作は、前記非封止状態で空気を前記第2開口から供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第2供給動作における空気の供給圧力は、前記第1供給動作における空気の供給圧力を超えており、
前記第1供給動作における空気の供給圧力は、前記吐出口に形成された液体メニスカスが破壊されない最大の圧力である前記液体メニスカスの耐圧以下であることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記キャップ手段は、前記リップ部材が前記当接位置にあるときに当該リップ部材と当接する第1の位置と、前記リップ部材の移動方向に関して前記第1の位置よりも前記吐出面から離隔した第2の位置との間において、前記対向部材を移動させる対向部材移動機構をさらに有しており、
前記メンテナンス制御手段は、前記第2供給動作の後であって前記払拭動作が行われる前に、前記対向部材移動機構によって前記対向部材を前記第2の位置に移動させることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記メンテナンス制御手段は、前記第1供給動作の後であって前記第2供給動作が行われる前に、前記対向部材移動機構によって前記対向部材を前記第1の位置と前記第2の位置との間の液体排出位置に移動させることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
加湿空気を生成する生成手段をさらに備えており、
前記供給手段は、前記生成手段で生成された加湿空気を前記第1開口又は第2開口を介して前記吐出空間に供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記メンテナンス制御手段は、前記吐出空間が前記第2供給動作の後に前記封止状態とされてから、加湿空気を前記第1開口又は前記第2開口を介して前記吐出空間に供給するように、前記供給手段を制御することを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッド内の液体に圧力を加えて、前記複数の吐出口から液体を強制的に排出する液体排出動作を行う排出手段をさらに備え、
前記払拭手段は、前記吐出面を払拭する吐出面払拭動作を行い、
前記メンテナンス制御手段は、前記第1供給動作に先立って、前記液体排出動作に続く前記吐出面払拭動作を行った後、前記払拭動作を行い、
前記吐出面払拭動作において、前記吐出面が前記第1供給動作における空気の流れの方向に沿って払拭されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記吐出面払拭動作において、前記リップ部材の前記第2領域の内周面に沿った前記第2経路と対向する位置までが払拭されることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−91279(P2013−91279A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235688(P2011−235688)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】