説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】ノズル開口の高密度化を図ることができると共に、小型化することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル開口21Aを有する第1ノズル列と、ノズル開口21Bを有する第2ノズル列とが設けられたノズルプレート20と、ノズル開口21Aに第1の面側4Aで連通し、第2の面5A側に開口する個別流路が設けられた第1流路形成基板10A、振動板50、及び第1圧力発生手段300を具備する第1アクチュエーター部材2Aと、第1アクチュエーター部材2Aの第2の面5A側に設けられて、ノズル開口21Bに第1の面4B側で連通し、第2の面5B側に開口する凹形状を有する個別流路及び個別流路とノズル開口21Bとを連通するノズル連通孔が設けられた第2流路形成基板10B、振動板50、及び第2圧力発生手段300を具備する第2アクチュエーター部材2Bと、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室内のインクに圧力変化を生じさせてノズル開口からインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが知られている。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、ノズル開口を高密度に配置するために、ノズル開口を第1の方向に並設した第1ノズル列と、ノズル開口を第1の方向に並設した第2ノズル列と、を第1の方向に交差する第2の方向に並設し、第1ノズル列と第2ノズル列とを第2の方向で同じ位置とならないように第1の方向にずらした、いわゆる千鳥配置としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−309877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、第1ノズル列と第2ノズル列とを第1の方向にずらした、いわゆる千鳥配置としただけでは、個別流路形成に必要な流路や隔壁の寸法確保のため、第1の方向のノズル間ピッチを狭めて高密度化するのに限界があったという問題がある。
【0006】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、ノズル開口の高密度化を図ることができると共に、小型化することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、ノズル開口が第1の方向に並設された第1ノズル列と、ノズル開口が第1の方向に並設された第2ノズル列とが、第1の方向に直交する第2の方向に並設され、前記第1ノズル列の前記ノズル開口と前記第2ノズル列の前記ノズル開口とが前記第1の方向で異なる位置に設けられたノズルプレートと、前記第1ノズル列の前記ノズル開口に一方面である第1の面側で連通し、前記第1の面とは反対側の第2の面側に開口する個別流路が設けられた第1流路形成基板、該第1流路形成基板の前記第1の面とは反対側の第2の面側に設けられた振動板、及び前記個別流路内に圧力変化を生じさせる第1圧力発生手段を具備する第1アクチュエーター部材と、前記第1アクチュエーター部材の第2の面側に設けられて、前記第2ノズル列の前記ノズル開口に一方面である第1の面側で連通し、前記第1の面とは反対側の第2の面側に開口する凹形状を有する個別流路及び該個別流路に連通して前記第1の面側に設けられた前記ノズル開口に連通するノズル連通孔が設けられた第2流路形成基板、該第2流路形成基板の前記第2の面側に設けられた振動板、及び前記個別流路内に圧力変化を生じさせる第2圧力発生手段を具備する第2アクチュエーター部材と、を具備し、前記第1アクチュエーター部材の前記個別流路と前記第2アクチュエーター部材の前記個別流路とが、前記第1アクチュエーター部材と前記第2アクチュエーター部材の積層方向において少なくとも一部が互いに重なる位置に配置されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、個別流路を凹形状に設けることで、第1アクチュエーター部材の圧力発生室と第2アクチュエーター部材の個別流路とをアクチュエーター部材の積層方向で少なくとも一部が重なる位置に配置することができる。したがって、ノズル開口を第1の方向に高密度に配設することができると共に第1の方向の小型化を図ることができる。
【0009】
ここで、前記第2アクチュエーター部材には、前記第1アクチュエーター部材側に開口する凹形状を有し、且つ当該第1アクチュエーター部材の前記振動板上に設けられた前記第1圧力発生手段を内包する第1保持部が設けられており、前記第1アクチュエーター部材と前記第2アクチュエーター部材の積層方向において、前記第1保持部の少なくとも一部が前記第2アクチュエーター部材の前記個別流路に重なる位置に設けられていることが好ましい。これによれば、第2アクチュエーター部材の個別流路を凹形状に形成することで、圧力発生室と保持部とを重なる位置に設けることができ、ノズル開口を第1の方向で高密度に配置することができると共に小型化を図ることができる。
【0010】
また、前記第2アクチュエーター部材の前記第2の面側には、当該第2アクチュエーター部材の前記振動板上に設けられた前記第2圧力発生手段を内包する第2保持部が設けられた保護基板が設けられていることが好ましい。これによれば、第2アクチュエーター部材の第2圧力発生手段を保護することができる。
【0011】
また、前記第1アクチュエーター部材の前記第1圧力発生手段及び前記第2アクチュエーター部材の前記第2圧力発生手段から引き出された引き出し配線が、前記保護基板の前記第2アクチュエーター部材とは反対側の面まで延設されて外部配線と接続されていることが好ましい。これによれば、積層されたアクチュエーター部材の圧力発生手段と外部配線とを確実に接続することができる。
【0012】
また、前記第1アクチュエーター部材の前記第1圧力発生手段及び前記第2アクチュエーター部材の前記第2圧力発生手段から引き出された引き出し配線が、前記第1アクチュエーター部材の前記第2の面の前記第2アクチュエーター部材に覆われていない領域まで延設されて外部配線と電気的に接続されていてもよい。これによれば、積層されたアクチュエーター部材の圧力発生手段と外部配線とを確実に接続することができる。
【0013】
また、前記第1アクチュエーター部材の前記第1圧力発生手段から引き出された引き出し配線は、前記第1流路形成基板の前記第1圧力発生手段が設けられた面側に、前記第2アクチュエーター部材に覆われていない領域まで延設されており、前記第2アクチュエーター部材の前記第2圧力発生手段から引き出された引き出し配線は、前記第2流路形成基板の前記第2圧力発生手段が設けられた面側に設けられていてもよい。これによれば、引き出し配線をアクチュエーター部材の積層方向に引き出す必要がなく、引き出し配線の形成不良や断線などを抑制することができると共にアクチュエーター部材を3段以上に容易に積層することができる。
【0014】
また、前記第1及び第2アクチュエーター部材には、複数の圧力発生室に共通して連通するマニホールドが設けられており、前記第1アクチュエーター部材の前記個別流路と、前記第2アクチュエーター部材の前記個別流路とは、前記マニホールドから前記個別流路の前記振動板の振動中心までの距離及び体積が等しく、且つ前記個別流路の前記振動板の振動中心から前記ノズル開口までの距離及び体積が等しいことが好ましい。これによれば、各アクチュエーター部材において、振動中心からノズル開口までの距離(流路長)と体積及びマニホールドから振動中心までの距離(流路長)及び体積を等しくすることで、ノズル開口から吐出される液体の噴射特性を揃えることができる。
【0015】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、被噴射媒体に液滴を高密度に着弾させることができると共に小型化した液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る記録ヘッドを示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る記録ヘッドを示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る記録ヘッドの変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る記録ヘッドを示す平面図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る記録ヘッドを示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る記録ヘッドの変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る記録ヘッドの変形例を示す断面図である。
【図12】本発明の実施形態4に係る記録ヘッドを示す断面図である。
【図13】本発明の実施形態4に係る記録ヘッドを示す断面図である。
【図14】本発明の実施形態5に係る記録ヘッドの断面図である。
【図15】本発明の実施形態5に係る記録ヘッドの断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係る記録ヘッドを示す断面図である。
【図17】本発明の一実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例を示すインクジェット式記録ヘッドの保護基板側の平面図であり、図2は図1のA−A′線断面図であり、図3は図1のB−B′線断面図であり、図4は図1のC−C′線断面図である。
【0019】
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1は、2つのアクチュエーター部材2A、2B(第1アクチュエーター部材2A及び第2アクチュエーター部材2Bの総称としてアクチュエーター部材2とも言う)と、一方のアクチュエーター部材2(第1アクチュエーター部材2A)に固定されたノズルプレート20と、他方のアクチュエーター部材2(第2アクチュエーター部材2B)に固定された保護基板3と、を具備する。
【0020】
ノズルプレート20は、例えば、ステンレス鋼等の金属やシリコン等の半導体、セラミックス材料で形成された板状部材からなる。このノズルプレート20には、第1ノズル開口21Aが第1の方向Xに並設された第1ノズル列と、第2ノズル開口21Bが第1の方向Xに並設された第2ノズル列と、が設けられている。そして、第1ノズル開口21Aの並設された第1ノズル列と第2ノズル開口21Bの並設された第2ノズル列とが第2の方向Yに並設されている。第2ノズル列の第2ノズル開口21Bは、第1の方向Xにおいて第1ノズル列の第1ノズル開口21Aの間に配置されている。逆に、第1ノズル列の第1ノズル開口21Aは、第1の方向Xにおいて第2ノズル列の第2ノズル開口21Bの間に配置されている。すなわち、第1ノズル開口21Aと第2ノズル開口21Bとを有するノズル開口21は、第1の方向Xに交互に配置された所謂、千鳥配置となっている。
【0021】
また、第1ノズル列の第1の方向で互いに隣り合う第1ノズル開口21Aのピッチ(間隔)と、第2ノズル列の第1の方向で互いに隣り合う第2ノズル開口21Bのピッチ(間隔)とは同じピッチで設けられている。そして、第2ノズル開口21Bは、第1の方向Xで第1ノズル開口21Aのピッチの半ピッチの位置に配置されている。これにより、第1ノズル開口21Aと第2ノズル開口21Bとは、第1の方向Xで第1ノズル開口21Aの半ピッチの間隔で配置されていることになる。つまり、第1ノズル開口21Aと第2ノズル開口21Bとを設けることによって、第1ノズル開口21Aのみを設けた場合に比べて2倍の高密度化を図ることができる。
【0022】
なお、本実施形態では、第1ノズル開口21Aの並設方向を第1の方向Xと称し、第1の方向Xに直交する方向を第2の方向Yと称する。
【0023】
アクチュエーター部材2は、一方面である第1の面4Aにノズルプレート20が接合された第1アクチュエーター部材2Aと、第1アクチュエーター部材2Aの第1の面4Aとは反対側の第2の面5Aに接合された第2アクチュエーター部材2Bと、を具備する。なお、第2アクチュエーター部材2Bは、ノズルプレート20に連通する側の第1の面4Bが第1アクチュエーター部材2Aの第2の面5Aに接合され、第2アクチュエーター部材2Bの第1の面4Bとは反対側の第2の面5Bには、保護基板3が設けられている。
【0024】
図2に示すように、第1アクチュエーター部材2Aを構成する第1流路形成基板10Aは、例えば、アルミナ(Al)や、ジルコニア(ZrO)などのセラミックス板からなる。
【0025】
第1流路形成基板10Aには、複数の第1圧力発生室12Aが同じ色のインクを吐出する複数のノズル開口21(第1ノズル開口21A)が並設される方向、すなわち、第1の方向Xに沿って並設されている。
【0026】
第1流路形成基板10Aの第1圧力発生室12Aは、第1の面4Aとは反対側の第2の面5A側に開口し、第1流路形成基板10Aを第1の面4Aに達することなく、すなわち、厚さ方向Zに貫通することなく形成された凹形状を有する。ちなみに厚さ方向Zとは、第1の面4Aから第2の面5Aに向かう方向である。
【0027】
また、第1流路形成基板10Aには、第1圧力発生室12Aの第1の方向Xに直交する第2の方向Yの一端部側にマニホールドを構成する第1マニホールド部13Aが設けられている。この第1マニホールド部13Aは、第1の方向Xに沿って複数の第1圧力発生室12Aに亘って連続して設けられている。そして、第1マニホールド部13Aと複数の第1圧力発生室12Aとが、各第1圧力発生室12A毎に設けられた第1供給路14Aを介して連通されている。なお、第1マニホールド部13Aは、第1圧力発生室12Aと同様に、第2の面5Aに開口する凹形状を有する。もちろん、第1マニホールド部13Aを第1流路形成基板10Aを貫通させて設け、第1マニホールド部13Aの第1の面4A側の開口をノズルプレート20によって封止してもよい。
【0028】
また、第1供給路14Aは、第1圧力発生室12Aと同じ深さ(厚さ方向Z)で、第1圧力発生室12Aよりも狭い幅(第1の方向Xの幅)で形成されており、ノズル開口21側に押し出すインク量を調整している。なお、本実施形態では、流路の幅を両側から絞ることで第1供給路14Aを形成したが、流路の幅を片側から絞ることで第1供給路14Aを形成しても良い。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向Z(第1流路形成基板10Aとノズルプレート20との積層方向)から絞ることで第1供給路14Aを形成してもよい。本実施形態では、第1圧力発生室12A、第1供給路14Aを第1アクチュエーター部材2Aの個別流路と称する。
【0029】
また、第1流路形成基板10Aには、第1圧力発生室12Aの第2の方向Yにおいて第1供給路14Aとは反対側の端部に連通する第1ノズル連通孔15Aが設けられている。
【0030】
第1ノズル連通孔15Aは、ノズルプレート20の第1ノズル開口21Aに相対向する位置に、第1ノズル開口21Aに連通するように、第1流路形成基板10Aを厚さ方向Zに貫通して設けられており、第1圧力発生室12Aは、第1ノズル連通孔15Aを介して第1ノズル開口21Aと連通する。
【0031】
すなわち、第1流路形成基板10Aには、凹形状を有する第1供給路14A及び第1圧力発生室12Aを具備する個別流路と、厚さ方向Zに貫通する第1ノズル連通孔15Aと、第1マニホールド部13Aと、が設けられている。
【0032】
そして、第1ノズル連通孔15Aが開口する第1の面4Aには、第1ノズル連通孔15Aに連通するノズル開口21である第1ノズル開口21Aが設けられたノズルプレート20が接合されている。
【0033】
このような第1流路形成基板10Aの第1圧力発生室12Aが開口する第2の面5Aには、本実施形態では、例えば、厚さ(Z方向)が1〜5μmのセラミックス材料の薄板からなる振動板50が固定され、第1圧力発生室12Aの一方面はこの振動板50により封止されている。
【0034】
また、振動板50上(第1流路形成基板10Aとは反対面側)には、各第1圧力発生室12Aに対向する領域のそれぞれに第1圧力発生室12A内のインク(液体)に圧力変動を生じさせる第1圧力発生手段である圧電素子300が設けられている。
【0035】
ここで、各圧電素子300は、振動板50上に設けられた第1電極60と、各第1圧力発生室12A毎に独立して設けられた圧電体層70と、各圧電体層70上に設けられた第2電極80とで構成されている。第1電極60は、第1の方向Xに並設された圧電素子300に亘って設けられて各圧電素子300の共通電極となっており、振動板50の一部としても機能する。また、第1電極60は、圧電素子300の第2の方向Yの第1ノズル連通孔15A側から圧電体層70の端部の内側まで延設されている。
【0036】
圧電体層70は、圧電材料からなるグリーンシートを貼付することや、印刷することで形成されている。もちろん、圧電体層70は、スパッタリング法や溶液法によって第1電極60上に圧電体前駆体膜を形成し、圧電体前駆体膜を加熱して焼成することで結晶化して形成するようにしてもよい。
【0037】
第2電極80は、各圧電素子300毎に設けられて各圧電素子300の個別電極となっており、各圧電素子300の第2の方向Yの第1電極60が延設された第1ノズル連通孔15Aとは反対側の他端部側に延設されている。なお、本実施形態では、第1電極60を共通電極とし、第2電極80を個別電極としたが、特にこれに限定されず、第1電極を圧電体層毎に設けて個別電極とし、第2電極を複数の圧電体層に亘って設けて共通電極としてもよい。
【0038】
このように、第1流路形成基板10Aと、振動板50と、圧電素子300とで本実施形態の第1アクチュエーター部材2Aが構成されている。
【0039】
そして、第1アクチュエーター部材2Aのノズルプレート20が接合された第1の面4Aとは反対側の第2の面5Aには、第2アクチュエーター部材2Bが接合されている。
【0040】
図3に示すように、第2アクチュエーター部材2Bを構成する第2流路形成基板10Bは、例えば、アルミナ(Al)や、ジルコニア(ZrO)などのセラミックス板からなり、本実施形態では、第1流路形成基板10Aと同じ厚さ(Z方向)を有する。第2流路形成基板10Bは、ノズルプレート20側の一方面である第1の面4Bが第1アクチュエーター部材2Aの第2の面5Aに接合されている。
【0041】
また、第2流路形成基板10Bには、第1流路形成基板10Aに接合される第1の面4Bとは反対側の第2の面5Bに開口する凹形状を有する第2圧力発生室12Bが第1の方向Xに並設されている。
【0042】
第2圧力発生室12Bは、第1の方向Xの幅、第2の方向Yの長さ及び第2の面5Bから第1の面4Bに向かう深さ(厚さ方向Z)が第1圧力発生室12Aと同じ大きさを有する。
【0043】
また、第2流路形成基板10Bには、第2圧力発生室12Bの第1の方向Xに直交する第2の方向Yの一端部側にマニホールド100を構成する第2マニホールド部13Bが設けられている。この第2マニホールド部13Bは、第1の方向Xに沿って複数の第2圧力発生室12Bに亘って連続して設けられている。そして、第2マニホールド部13Bと複数の第2圧力発生室12Bとが、各第2圧力発生室12B毎に設けられた第2供給路14Bを介して連通されている。なお、第2マニホールド部13Bは、第2流路形成基板10Bを厚さ方向Zに貫通して、第1マニホールド部13Aと連通して設けられている。
【0044】
また、第2供給路14Bは、第1供給路14Aと同様に、第2圧力発生室12Bと同じ深さ(厚さ方向Z)で、図1に示すように、第2圧力発生室12Bよりも狭い幅(第1の方向Xの幅)で形成されており、ノズル開口21側に押し出すインク量を調整している。なお、本実施形態では、流路の幅を両側から絞ることで第2供給路14Bを形成したが、流路の幅を片側から絞ることで第2供給路14Bを形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向Z(第1流路形成基板10Aとノズルプレート20との積層方向)から絞ることで第2供給路14Bを形成してもよい。本実施形態では、第2圧力発生室12B、第2供給路14Bを第2アクチュエーター部材2Bの個別流路と称する。
【0045】
また、第2流路形成基板10Bには、第2圧力発生室12Bの第2の方向Yにおいて第2供給路14Bとは反対側の端部に連通する第2ノズル連通孔15Bが設けられている。
【0046】
第2ノズル連通孔15Bは、ノズルプレート20の第2ノズル開口21Bに相対向する位置に、第2ノズル開口21Bに連通するように、第2流路形成基板10Bを厚さ方向Zに貫通して設けられている。本実施形態では、第2ノズル連通孔15Bは、第1流路形成基板10Aに厚さ方向Zに貫通して設けられた接続孔17に連通しており、接続孔17を介してノズルプレート20のノズル開口21である第2ノズル開口21Bと連通している。これにより、第2圧力発生室12Bは、第2ノズル連通孔15B及び接続孔17を介して第2ノズル開口21Bに連通する。
【0047】
すなわち、第2流路形成基板10Bには、凹形状を有する第2供給路14B及び第2圧力発生室12Bを具備する個別流路と、厚さ方向Zに貫通する第2ノズル連通孔15Bと、第2マニホールド部13Bと、が設けられている。
【0048】
ここで、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路(第2圧力発生室12B)は、第1流路形成基板10Aと第2流路形成基板10Bとの積層方向(厚さ方向Z)から平面視した際に、第2の方向Yにおいて第1アクチュエーター部材2Aの個別流路(第1圧力発生室12A)よりも第1ノズル連通孔15A側にずれた位置に配置されている。また、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路(第2圧力発生室12B)は、第1流路形成基板10Aと第2流路形成基板10Bとの積層方向(厚さ方向Z)から平面視した際に、第1の方向Xにおいて、当該第1の方向Xで互いに隣り合う第1アクチュエーター部材2Aの個別流路(第1圧力発生室12A)の間に配置されている。そして、これら第1圧力発生室12Aと第2圧力発生室12Bとは、第1流路形成基板10Aと第2流路形成基板10Bとの積層方向(厚さ方向Z)から平面視した際に、少なくとも一部が重なる位置に配置されている。
【0049】
ここで、本実施形態では、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路(第1圧力発生室12A)と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路(第2圧力発生室12B)とが積層方向で少なくとも一部が重なるとは、第1の方向X及び第2の方向Yにおいて重なっていることを言う。すなわち、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路(第1圧力発生室12A)と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路(第2圧力発生室12B)とが、第1の方向Xのみで重なっていても、第2の方向Yで重なっていなければ、「第1圧力発生室12Aと第2圧力発生室12Bとが積層方向で少なくとも一部が重なっている」とは言わない。つまり、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路(第1圧力発生室12A)と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路(第2圧力発生室12B)とが、第1の方向Xで重なっており、第2の方向Yで重なっていない場合とは、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路とが、厚さ方向Zから平面視した際に、第1の方向Xに同じ位置(座標)で設けられているものの、第2の方向Yでは重なることなく並んで設けられているものも含んでしまうためである。そして、このような場合には、インクジェット式記録ヘッド1は、ノズル開口21を高密度に配置することができず、第2の方向Yに大型化してしまう。本実施形態では、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路とを積層方向で第1の方向X及び第2の方向Yにおいて重なるように配置することで、ノズル開口21を高密度に配置することができると共に第2の方向Yに小型化することができるものである。
【0050】
同様の理由から、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路(第1圧力発生室12A)と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路(第2圧力発生室12B)とが、第2の方向Yのみで重なっていても、第1の方向Xで重なっていなければ、「第1圧力発生室12Aと第2圧力発生室12Bとが積層方向で少なくとも一部が重なっている」とは言わない。
【0051】
また、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路(第1圧力発生室12A)と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路(第2圧力発生室12B)とが、第1流路形成基板10Aと第2流路形成基板10Bとの積層方向(厚さ方向Z)から平面視した際に少なくとも一部が重なって設けられているとは、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路とが完全に同一位置に重なって設けられたものは含まない。
【0052】
このように第1アクチュエーター部材2Aの個別流路と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路とを、第1アクチュエーター部材2Aと第2アクチュエーター部材2Bとの積層方向(厚さ方向Z)において少なくとも一部が互いに重なる位置に配置することができるのは、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路が第2流路形成基板10Bを貫通することなく凹形状で形成されているからである。すなわち、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路が第2流路形成基板10Bを貫通して設けられていると、第2流路形成基板10Bと第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300とが干渉してしまうため、第2圧力発生室12Bと個別流路とを、第1アクチュエーター部材2Aと第2アクチュエーター部材2Bとの積層方向(厚さ方向Z)において少なくとも一部が互いに重なる位置に配置することができない。つまり、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路が第2流路形成基板10Bを貫通して設けられている場合、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路を第1アクチュエーター部材2Aの第1の方向Xで隣り合う圧電素子300の間に配置しなくてはならず、また、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路の第1の方向Xの間に第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300を配置しなくてはならない。そして、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路を第1アクチュエーター部材2Aの第1の方向Xで隣り合う圧電素子300の間に配置し、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路の第1の方向Xの間に第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300を配置する場合、第1の方向Xで互いに隣り合う第1圧力発生室12Aの間隔を広くすると共に第1の方向Xで隣り合う第2圧力発生室12Bの間の間隔を広くする必要があり、第1の方向Xに並設されたノズル開口21(第1ノズル開口21Aと第2ノズル開口21B)との間隔が広くなってしまい、ノズル開口21を第1の方向Xに高密度に配置することができず、また、第1流路形成基板10A及び第2流路形成基板10Bが第1の方向Xに大型化してしまう。これに対して、本実施形態では、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路を、第2流路形成基板10Bを貫通することなく凹形状で形成することで、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路とを、第1アクチュエーター部材2Aと第2アクチュエーター部材2Bとの積層方向において少なくとも一部が互いに重なる位置に配置することができる。したがって、第1の方向Xにおいて、隣り合う第1圧力発生室12Aの間隔及び隣り合う第2圧力発生室12Bの間隔を狭くして、ノズル開口21の第1の方向Xの間隔を狭くすることができ、ノズル開口21を高密度に配置することができると共に、第1流路形成基板10A及び第2流路形成基板10Bの第1の方向X及び第2の方向Yを小型化することができる。
【0053】
このように第2圧力発生室12Bが、第1圧力発生室12Aよりも第2の方向Yの第1ノズル連通孔15A側にずれた位置に配置され、且つ第1の方向Xにおいて隣り合う第1圧力発生室12Aの間に配置されている。したがって、第2圧力発生室12Bに連通する第2ノズル連通孔15Bは、第2圧力発生室12Bの第1圧力発生室12Aに対する位置と同様に、第1ノズル連通孔15Aに対して、第2の方向Yで第2圧力発生室12Bとは反対側にずれた位置に配置され、且つ第1の方向Xにおいて隣り合う第1ノズル連通孔15Aの間に配置されている。そして、このように設けられた第2ノズル連通孔15Bは、上述のように接続孔17を介してノズルプレート20のノズル開口21である第2ノズル開口21Bに連通している。
【0054】
なお、本実施形態では、第1圧力発生室12Aと第2圧力発生室12Bとが、第1流路形成基板10Aと第2流路形成基板10Bとの積層方向(厚さ方向Z)から平面視した際に、少なくとも一部が重なる位置に配置されているが、特にこれに限定されず、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路と、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路とが、第1流路形成基板10Aと第2流路形成基板10Bとの積層方向(厚さ方向Z)から平面視した際に、少なくとも一部が重なる位置に設けられていればよい。すなわち、例えば、第1圧力発生室12Aと第2供給路14Bとが厚さ方向Zから平面視した際に少なくとも一部が重なる位置に配置されていてもよい。ちなみに、個別流路の何れが厚さ方向Zで重なる位置に設けられるかについては、第1ノズル開口21Aと第2ノズル開口21Bとの相対位置と、各個別流路の流路長などによって変更されるものである。
【0055】
また、第2流路形成基板10Bの第2の面5Bには、第1流路形成基板10Aと同様に振動板50が設けられ、振動板50上には各第2圧力発生室12Bに対応して第2圧力発生室12B内のインク(液体)に圧力変動を生じさせる第2圧力発生手段である圧電素子300が設けられている。第2流路形成基板10Bに設けられる振動板50及び圧電素子300については、第1流路形成基板10Aに設けられた振動板50及び圧電素子300と同様の構成を有するため同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0056】
ここで、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心から第1ノズル開口21Aまでの距離l及び体積と、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心から第2ノズル開口21Bまでの距離l及び体積とは、等しくなるように設けられており、且つ第1アクチュエーター部材2Aの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心からマニホールド100(第1マニホールド部13A)までの距離l及び体積と、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心からマニホールド100(第2マニホールド部13B)までの距離l及び体積とは、等しくなるように設けられている。
【0057】
ちなみに、第2の方向Yにおける振動板50の振動中心とは、圧電素子300の実質的な駆動部である圧電体能動部の第2の方向Yの中心のことである。また、圧電体能動部とは、第1電極60と第2電極80とによって挟まれた圧電体層70の領域が、両電極への電圧の印加により電圧歪みが生じる部分であり、本実施形態では、この領域のことをいう。なお、ここで言う距離l、lとは、インクの流れる方向であり、第1圧力発生室12A及び第2圧力発生室12Bの振動中心から第1ノズル連通孔15A及び第2ノズル連通孔15Bまでの第2の方向Yの距離と、第1ノズル連通孔15A、第2ノズル連通孔15B及び接続孔17の厚さ方向Zの距離とを合わせた距離のことである。また、距離l、lとは、第1圧力発生室12A及び第2圧力発生室12Bの振動中心から第1供給路14A及び第2供給路14Bまでの第2の方向Yの距離と、第1供給路14A及び第2供給路14Bの第2の方向Yにおける距離とを合わせた距離のことである。
【0058】
このように、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路の振動板50の振動中心から第1ノズル開口21Aまでの距離l及び体積と、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路の振動板50の振動中心から第2ノズル開口21Bまでの距離l及び体積とを等しくし、且つ第1アクチュエーター部材2Aの振動板50の振動中心(第2の方向Yにおける)からマニホールド100(第1マニホールド部13A)までの距離l及び体積と、第2アクチュエーター部材2Bの振動板50の振動中心(第2の方向Yにおける)からマニホールド100(第2マニホールド部13B)までの距離l及び体積とを等しくなるように設けることで、第1アクチュエーター部材2Aと第2アクチュエーター部材2Bとで圧電素子300によって第1圧力発生室12A及び第2圧力発生室12B内のインクに圧力変化を生じさせた際に、第1ノズル開口21A及び第2ノズル開口21Bの圧力状態及びメニスカスの振動状態を同じにすることができ、第1ノズル開口21Aから吐出されるインク滴と第2ノズル開口21Bから吐出されるインク滴との吐出特性(飛翔速度やインク滴の重量)を揃えることができ、均一な吐出特性で被記録媒体にインク滴を着弾させることができる。
【0059】
ちなみに、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心から第1ノズル開口21Aまでの距離l及び体積と、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心から第2ノズル開口21Bまでの距離l及び体積とが等しくなく、且つ、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心からマニホールド100(第1マニホールド部13A)までの距離l及び体積と、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心からマニホールド100(第2マニホールド部13B)までの距離l及び体積とが等しくない場合、第1ノズル開口21Aから吐出されるインク滴と第2ノズル開口21Bから吐出されるインク滴との吐出特性(飛翔速度やインク滴の重量)にばらつきが生じてしまう。
【0060】
また、第2流路形成基板10Bには、第1流路形成基板10Aの圧電素子300に対向する領域に当該圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保可能な第1保持部18が設けられている。この第1保持部18は、第2流路形成基板10Bの第1流路形成基板10A側の面、すなわち第1の面4Bに開口する凹形状を有し、各圧電素子300毎に独立して設けられている。なお、第1保持部18は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0061】
このような第1保持部18は、第1流路形成基板10Aと第2流路形成基板10Bの積層方向(厚さ方向Z)において、第2圧力発生室12Bと重なる位置に配置されている。このため、第1保持部18は、第2圧力発生室12Bに連通しない程度の深さで形成されている。ちなみに、第1保持部18の深さは、第2流路形成基板10Bの厚さ、圧電素子300の厚さ、第2圧力発生室12Bの深さ等に応じて適宜決定されている。
【0062】
さらに、第2流路形成基板10Bの圧電素子300が設けられた第2の面5B側には、第2流路形成基板10Bの圧電素子300に対向する領域に当該圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保可能な第2保持部31を有する保護基板3が設けられている。この第2保持部31は、第2流路形成基板10Bに設けられた第1保持部18と同様に各圧電素子300毎に独立して設けられている。もちろん、第2流路形成基板10Bの第1保持部18及び保護基板3の第2保持部31は、複数の圧電素子300に亘って連続して設けるようにしてもよい。
【0063】
このような保護基板3には、第2流路形成基板10Bの第2マニホールド部13Bに連通する第3マニホールド部32が設けられており、第3マニホールド部32は、第1マニホールド部13A、第2マニホールド部13Bと共にマニホールド100を構成する。すなわち、本実施形態のマニホールド100は、第1流路形成基板10Aに設けられた第1マニホールド部13A、第2流路形成基板10Bに設けられた第2マニホールド部13B及び保護基板3に設けられた第3マニホールド部32によって構成されている。
【0064】
なお、保護基板3としては、第1流路形成基板10A及び第2流路形成基板10Bと同様に、セラミックス板などを用いることができる。さらに、保護基板3上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってマニホールドの一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0065】
なお、コンプライアンス基板40には、マニホールド100に相対向する領域に、当該マニホールド100にインクを導入するためのインク導入孔44が設けられており、インク導入孔44を介して外部のインクカートリッジやインクタンクなどの液体貯留手段からのインクがマニホールド100に供給される。
【0066】
また、第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300及び第2アクチュエーター部材2Bの圧電素子300の各電極60、80は、本実施形態では、保護基板3上まで引き出されて外部配線に接続されている。
【0067】
詳しくは、第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300の各電極60、80は、第2アクチュエーター部材2B及び保護基板3を厚さ方向Zに貫通するコンタクトホール91内に設けられた引き出し配線92を介して保護基板3の第2流路形成基板10Bとは反対側の面まで引き出されている。
【0068】
同様に、第2アクチュエーター部材2Bの圧電素子300の各電極60、80は、保護基板3を厚さ方向Zに貫通するコンタクトホール93内に設けられた引き出し配線94を介して保護基板3の第2流路形成基板10Bとは反対側の面まで引き出されている。
【0069】
なお、第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300の各電極60、80を保護基板3上に引き出すコンタクトホール91は、第2アクチュエーター部材2Bの第1の方向Xで隣り合う第2供給路14Bの間に設けられている。本実施形態では、第2供給路14Bを第2圧力発生室12Bの両側から幅(第1の方向Xの幅)を絞ることで形成しているため、第1の方向Xで隣り合う第2供給路14Bの間の幅は、隣り合う第2圧力発生室12Bの間の幅よりも広い。したがって、コンタクトホール91を大きな開口面積で形成しても、第2供給路14Bと干渉することがなく、コンタクトホール91を大きな開口面積で形成して、コンタクトホール91内に形成する引き出し配線92を太くすることができ、引き出し配線92の断線や引き出し配線92の電気抵抗の増大による不具合などを抑制することができる。
【0070】
そして、保護基板3上に引き出された引き出し配線92及び94には、フレキシブルプリント基板(FPC)やテープキャリアパッケージ(TCP)等の外部配線110が接続されている。
【0071】
このようなインクジェット式記録ヘッド1では、図示しない外部のインク貯留手段からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21(第1ノズル開口21A、第2ノズル開口21B)に至るまで内部をインクで満たした後、図示しない駆動回路からの記録信号に従い、外部配線110を介して圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、振動板50及び圧電素子300を撓み変形させることにより、第1圧力発生室12A及び第2圧力発生室12B内の圧力を変化させてノズル開口21(第1ノズル開口21A及び第2ノズル開口21B)からインク滴を吐出させる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、第1圧力発生室12Aと第2圧力発生室12Bとを各アクチュエーター部材2の第2の面(5A、5B)に開口する凹形状で設け、第1圧力発生室12Aと第2圧力発生室12Bとを第1アクチュエーター部材2Aと第2アクチュエーター部材2Bとの積層方向(厚さ方向Z)で少なくとも一部が互いに重なるように配置することで、ノズル開口21の第1の方向Xの高密度化を図ると共に、各アクチュエーター部材2の第1の方向X及び第2の方向Yの小型化を図ることができる。
【0073】
また、第2アクチュエーター部材2Bの第2圧力発生室12Bから第2ノズル開口21Bまでの距離l及び体積と、第1アクチュエーター部材2Aの第1圧力発生室12Aから第1ノズル開口21Aまでの距離l及び体積とを等しくなるように設け、第2アクチュエーター部材2Bのマニホールド100(第2マニホールド部13B)から第2圧力発生室12Bまでの距離l及び体積と、第1アクチュエーター部材2Aのマニホールド100(第1マニホールド部13A)から第1圧力発生室12Aまでの距離l及び体積とを等しくなるように設けることで、第1ノズル開口21A及び第2ノズル開口21Bから吐出されるインク滴の吐出特性を揃えて、印刷品質を向上することができる。
【0074】
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの断面図であり、図1のA−A′線に対応する断面図である。また、図6は、本発明の実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの図1のB−B′線に対応する断面図である。さらに、図7は、本発明の実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの変形例を示す図1のA−A′線に対応する断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0075】
図5及び図6に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1は、第1アクチュエーター部材2A、第2アクチュエーター部材2B、ノズルプレート20及び保護基板3を具備する。
【0076】
第1アクチュエーター部材2Aは、第2の方向Yの幅が第2アクチュエーター部材2Bよりも幅広に設けられており、第1アクチュエーター部材2Aの第2の方向Yの第1ノズル連通孔15A側の一端部が、第2アクチュエーター部材2Bよりも外側に突出して設けられている。
【0077】
そして、図5に示すように、第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300の各電極60、80は、引き出し配線95によって、第2アクチュエーター部材2Bよりも外側に突出した領域に延設されて、外部配線110と電気的に接続されている。
【0078】
また、図6に示すように、第2アクチュエーター部材2Bの圧電素子300の各電極60、80は、第2アクチュエーター部材2Bの外周の側面上に設けられた引き出し配線96によって、第1アクチュエーター部材2A上の第2アクチュエーター部材2Bよりも外側に突出した領域に延設されて、外部配線110と電気的に接続されている。
【0079】
この第2アクチュエーター部材2Bの圧電素子300の各電極60、80に接続された引き出し配線96は、第2アクチュエーター部材2Bの外周面上に設けずに、図7に示すように、第2アクチュエーター部材2Bを厚さ方向Zで貫通するコンタクトホール97内に設けるようにしてもよい。
【0080】
このように、引き出し配線95を第1アクチュエーター部材2Aの第1流路形成基板10Aの振動板50上に引き出して外部配線110と接続することによって、第2アクチュエーター部材2Bの上(第1アクチュエーター部材2Aとは反対面側)にさらにアクチュエーター部材を積層することもできる。
【0081】
(実施形態3)
図8は、本発明の実施形態3に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの平面図であり、図9は、図8のD−D′線断面図である。また、図10は、本発明の実施形態3に係るインクジェット式記録ヘッドの変形例を示す図8のD−D′線に対応する断面図である。さらに、図11は、本発明の実施形態3に係るインクジェット式記録ヘッドの変形例を示す図8のD−D′線に対応する断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0082】
図8及び図9に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1は、第1アクチュエーター部材2A、第2アクチュエーター部材2B、ノズルプレート20及び保護基板3を具備する。
【0083】
第1アクチュエーター部材2A(第1流路形成基板10A)は、上述した図5及び図6と同様に、第2の方向Yの幅が第2アクチュエーター部材2B(第2流路形成基板10B)よりも幅広に設けられており、第1アクチュエーター部材2Aの第2の方向Yの第1ノズル連通孔15A側の一端部が、第2アクチュエーター部材2Bよりも外側に突出して設けられている。なお、本実施形態では、第1流路形成基板10Aの第2流路形成基板10Bよりも突出した領域には、振動板50が設けられている。
【0084】
そして、第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300の第1電極60及び第2電極80から引き出された引き出し配線95は、第2アクチュエーター部材2Bよりも外側に突出した第1流路形成基板10Aの振動板50上に延設されて、延設された端部で外部配線110と電気的に接続されている。すなわち、本実施形態では、引き出し配線95は、圧電素子300が設けられた面である振動板50上と同一面内に設けられており、一端が圧電素子300の第1電極60または第2電極80に接続され、他端が第1流路形成基板10A(振動板50)の第2アクチュエーター部材2Bよりも外側に突出した領域に延設されて、延設された端部で外部配線110と電気的に接続されている。
【0085】
つまり、第1アクチュエーター部材2Aの第1圧力発生手段である圧電素子300から引き出された引き出し配線95は、第1流路形成基板10Aの第1圧力発生手段である圧電素子300が設けられた面側(振動板50上)に、第2アクチュエーター部材2Bに覆われていない領域まで延設されている。
【0086】
また、第2アクチュエーター部材2Bは、第2流路形成基板10Bの第2の方向Yの幅が、保護基板3よりも幅広に設けられており、第2流路形成基板10Bの第2ノズル連通孔15B側の一端部が、保護基板3よりも外側に突出して設けられている。なお、本実施形態では、第2流路形成基板10Bの保護基板3よりも突出した領域には、振動板50が設けられている。
【0087】
そして、第2アクチュエーター部材2Bの第2圧力発生手段である圧電素子300の第1電極60及び第2電極80から引き出された引き出し配線95は、保護基板3よりも外側に突出した第2流路形成基板10Bの振動板50上に延設されて、延設された端部で外部配線110と電気的に接続されている。
【0088】
すなわち、本実施形態では、引き出し配線95は、圧電素子300が設けられた面である振動板50上と同一面内に設けられており、一端が圧電素子300の第1電極60または第2電極80に接続され、他端が第1流路形成基板10A(振動板50)の第2アクチュエーター部材2Bよりも外側に突出した領域に延設されて、延設された端部で外部配線110と電気的に接続されている。
【0089】
つまり、第2アクチュエーター部材2Bの第2圧力発生手段である圧電素子300から引き出された引き出し配線95は、第2流路形成基板10Bの第2圧力発生手段である圧電素子300が設けられた面側(振動板50上)に設けられている。
【0090】
このような構成では、各アクチュエーター部材2の各圧電素子300から引き出した引き出し配線95をそれぞれ各アクチュエーター部材2の流路形成基板10の圧電素子300が設けられた面側に引き出して、外部配線110と接続することができるため、引き出し配線95を厚さ方向Zに引き回す必要がない。したがって、引き出し配線95の形成不良や断線等が発生するのを抑制して、アクチュエーター部材2を厚さ方向Zに2段以上の複数段に積層し易くすることができる。
【0091】
また、図8及び図9に示すインクジェット式記録ヘッド1の引き出し配線95には、外部配線110を接続せずに、半導体集積回路等の駆動回路を接続するようにしてもよい。このような例を図10及び図11に示す。
【0092】
図10に示すように、第1アクチュエーター部材2Aの第1流路形成基板10Aの引き出し配線95が設けられた面と同一面、すなわち、振動板50上には、半導体集積回路(IC)等の駆動回路120が固定されている。そして、この駆動回路120と、第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300から引き出された引き出し配線95及び第2アクチュエーター部材2Bの圧電素子300から引き出された引き出し配線95とは、ボンディングワイヤー等の接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0093】
また、図11に示すように、保護基板3の第2アクチュエーター部材2Bとは反対面側には、半導体集積回路(IC)等の駆動回路120が設けられている。そして、この駆動回路120と、第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300から引き出された引き出し配線95及び第2アクチュエーター部材2Bの圧電素子300から引き出された引き出し配線95とは、ボンディングワイヤー等の接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0094】
このように、圧電素子300から引き出した引き出し配線95は、図7〜図9に示すように、外部配線110によって外部と接続してもよく、また、図10及び図11に示すように、インクジェット式記録ヘッド1に駆動回路120を設け、駆動回路120と接続するようにしてもよい。
【0095】
(実施形態4)
図12は、本発明の実施形態4に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの断面図であり、図1のA−A′線に対応する断面図である。また、図13は、本発明の実施形態4に係るインクジェット式記録ヘッドの図1のB−B′線に対応する断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0096】
図12及び図13に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1は、第1アクチュエーター部材2A、第2アクチュエーター部材2B、ノズルプレート20及び保護基板3を具備する。
【0097】
第1アクチュエーター部材2Aは、第1流路形成基板10Aを具備し、第1流路形成基板10Aには、厚さ方向に貫通した第1圧力発生室12A、第1マニホールド部13A及び第1供給路14Aが形成されている。
【0098】
この第1流路形成基板10Aの第1圧力発生室12A、第1マニホールド部13A及び第1供給路14Aの圧電素子300とは反対面側の開口は、ノズルプレート20によって封止されている。
【0099】
これにより、第1圧力発生室12Aは、上述した実施形態1のように第1ノズル連通孔15Aを用いることなく、直接、第1ノズル開口21Aと連通する。
【0100】
また、第1アクチュエーター部材2Aには、上述した実施形態1と同様に、振動板50及び圧電素子300が形成されている。
【0101】
さらに、第1アクチュエーター部材2Aの圧電素子300側の第2の面5Aには、第2アクチュエーター部材2Bが接合されている。
【0102】
第2アクチュエーター部材2Bには、上述した実施形態1と同様に、第2圧力発生室12Bと第2供給路14Bとが、第1の面4Bとは反対側の第2の面5B側に開口し、第2流路形成基板10Bを第1の面4Bに達することなく、すなわち、厚さ方向Zに貫通することなく凹形状で形成されている。
【0103】
また、第2流路形成基板10Bには、厚さ方向Zに貫通して、第1マニホールド部13Aと連通する第2マニホールド部13Bが設けられている。
【0104】
さらに、第2流路形成基板10Bには、第2ノズル連通孔15Bが形成され、第2圧力発生室12Bは、第2ノズル連通孔15B及び接続孔17を介して第2ノズル開口21Bに連通する。
【0105】
そして、これら第1アクチュエーター部材2Aと第2アクチュエーター部材2Bとは、上述した実施形態1と同様に、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心から第1ノズル開口21Aまでの距離l及び体積と、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心から第2ノズル開口21Bまでの距離l及び体積とは、等しくなるように設けられており、且つ、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心からマニホールド100(第1マニホールド部13A)までの距離l及び体積と、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路の第2の方向Yにおける振動板50の振動中心からマニホールド100(第2マニホールド部13B)までの距離l及び体積とは、等しくなるように設けられている。
【0106】
これにより、第1ノズル開口21Aから吐出されるインク滴と第2ノズル開口21Bから吐出されるインク滴との吐出特性(飛翔速度やインク滴の重量)を揃えることができ、均一な吐出特性で被記録媒体にインク滴を着弾させることができる。
【0107】
このように、第1アクチュエーター部材2Aの第1圧力発生室12Aや第1供給路14A等を具備する個別流路は、第1流路形成基板10Aを厚さ方向に貫通して設けられていても、少なくとも第2圧力発生室12B及び第2供給路14Bが第1アクチュエーター部材2Aとは反対面である第2の面5Bに開口する凹形状で形成していれば、第1アクチュエーター部材2Aの個別流路と第2アクチュエーター部材2Bの個別流路とは積層方向(厚さ方向Z)で少なくとも互いに重なる位置に設けることができる。ただし、第1流路形成基板10Aと第2流路形成基板10Bとは異なる厚さの部材を用いる必要がある。
【0108】
(実施形態5)
図14は、本発明の実施形態5に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの断面図であり、図1のA−A′線に対応する断面図である。また、図15は、本発明の実施形態5に係るインクジェット式記録ヘッドの図1のB−B′線に対応する断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0109】
図14及び図15に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1は、第1アクチュエーター部材2A、第2アクチュエーター部材2B、ノズルプレート20及び保護基板3を具備する。
【0110】
第1アクチュエーター部材2Aは、第1流路形成基板10Aを具備し、第1流路形成基板10Aは第1流路形成基板用第1基板101Aと、第1流路形成基板用第2基板102Aと、が積層されて構成されている。
【0111】
第1流路形成基板用第1基板101Aには、第1圧力発生室12A、第1マニホールド部13A、第1供給路14A及び第1ノズル連通孔15Aの一部が厚さ方向に貫通して設けられている。
【0112】
また、第1流路形成基板用第2基板102Aには、第1ノズル連通孔15Aの一部が厚さ方向に貫通して設けられている。なお、第1流路形成基板10Aには、厚さ方向に貫通する接続孔17も形成されている。
【0113】
一方、第2アクチュエーター部材2Bは、第2流路形成基板10Bを具備し、第2流路形成基板10Bは、第2流路形成基板用第1基板101Bと、第2流路形成基板用第2基板102Bと、第2流路形成基板用第3基板103Bとが積層されて構成されている。
【0114】
第2流路形成基板用第1基板101Bには、第1流路形成基板用第1基板101Aと同様に、第2圧力発生室12B、第2マニホールド部13Bの一部、第2供給路14B及び第2ノズル連通孔15Bの一部が厚さ方向に貫通して設けられている。
【0115】
また、第2流路形成基板用第2基板102Bには、第2ノズル連通孔15Bの一部と、第2マニホールド部13Bの一部とが厚さ方向に貫通して設けられている。
【0116】
さらに、第2流路形成基板用第3基板103Bには、第2ノズル連通孔15Bの一部と、第2マニホールド部13Bの一部と、第1保持部18とが厚さ方向に貫通して設けられている。なお、第2流路形成基板用第1基板101B及び第2流路形成基板用第2基板102Bには、第1保持部18は設けられておらず、第1保持部18の一方の開口は第2流路形成基板用第2基板102Bによって封止されている。
【0117】
このように、第1流路形成基板10A及び第2流路形成基板10Bのそれぞれを積層された基板101A、102A、101B、102B、103B等で形成することで、基板に貫通しない凹形状の流路や保持部18等の加工をハーフエッチング等で形成する必要がなく、各基板を貫通して流路や保持部などを形成することができる。したがって、材料と加工方法の選択性が広がる。
【0118】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、第1アクチュエーター部材2A及び第2アクチュエーター部材2Bに、個別流路として、第1圧力発生室12A及び第1供給路14Aや第2圧力発生室12B及び第2供給路14Bを設けるようにしたが、これに限定されず、第1供給路14Aと第1マニホールド部13Aとを連通する連通路や、第2供給路14Bと第2マニホールド部13Bとを連通する連通路等を設けるようにしてもよい。
【0119】
また、上述した実施形態1では、第1アクチュエーター部材2Aに第1圧力発生室12Aを第1の方向Xに並設するようにしたが、特にこれに限定されず、第1アクチュエーター部材2Aに第1圧力発生室12Aとして、第1の方向Xに並設された圧力発生室の列を第2の方向Yに2列以上設けるようにしてもよい。もちろん、第2アクチュエーター部材2Bにおいても同様である。つまり、第1流路形成基板10Aに第1圧力発生室12Aが第1の方向Xに並設された列を複数列設けるようにしてもよい。同様に、第2流路形成基板10Bに第2圧力発生室12Bが第1の方向Xに並設された列を複数列設けるようにしてもよい。
【0120】
さらに、上述した各実施形態では、インクジェット式記録ヘッド1に2つのアクチュエーター部材(2A、2B)を設けるようにしたが、3つ以上のアクチュエーター部材2を設けるようにしてもよい。ここで、その他の例として、3つのアクチュエーター部材を設けた例を図16に示す。なお、図16は、本発明の他の実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの断面図であり、図1のC−C′線に対応した断面図である。
【0121】
図16に示すように、ノズルプレート20には、第1ノズル開口21Aが第1の方向Xに並設された第1ノズル列と、第2ノズル開口21Bが第1の方向Xに並設された第2ノズル列と、第3ノズル開口21Cが第1の方向Xに並設された第3ノズル列と、が第2の方向Yに並設されている。
【0122】
これら第2ノズル列及び第3ノズル列は、第1ノズル列に対して、第1ノズル列を構成する第1ノズル開口21Aの第1の方向Xのピッチの1/3ピッチだけ第1の方向Xにずれて配置されている。つまり、第1の方向において、第1の方向Xで隣り合う第1ノズル開口21Aの間には、第2ノズル開口21Bと第3ノズル開口21Cとが等間隔となるように配置されている。
【0123】
また、第2アクチュエーター部材2Bの第2の面5B上には、第3アクチュエーター部材2Cが設けられている。第3アクチュエーター部材2Cを構成する第3流路形成基板10Cには、第2アクチュエーター部材2Bと同様に、第3圧力発生室12C等の個別流路が形成されている。なお、第3アクチュエーター部材2Cには、特に図示していないが、マニホールド100を構成する第3マニホールド部、第3圧力発生室12Cとマニホールド100とを連通する第3供給路、第3圧力発生室12Cと第3ノズル開口21Cとを連通する第3ノズル連通孔等が第2アクチュエーター部材2Bと同様に形成されている。また、第3流路形成基板10Cには、振動板50を介して圧電素子300が設けられている。さらに、第3流路形成基板10Cには、第1の面4C側に第2アクチュエーター部材2Bの圧電素子300を内包する第1保持部18が設けられており、第2の面5C側に保護基板3が設けられている。
【0124】
このような構成の場合、第2アクチュエーター部材2Bと第3アクチュエーター部材2Cとが、特許請求の範囲の第1アクチュエーター部材と第2アクチュエーター部材とに相当し、第2アクチュエーター部材2Bの個別流路と第3アクチュエーター部材2Cの個別流路とが積層方向Zにおいて少なくとも一部が重なる位置に設けられていればよい。これにより、インクジェット式記録ヘッド1を3列のノズル列を高密度に配置することができ、高密度印刷が可能となると共に、インクジェット式記録ヘッド1の第1の方向X及び第2の方向Yの小型化を図ることができる。
【0125】
また、上述した実施形態1では、厚膜型の圧電素子300を有するインクジェット式記録ヘッド1を例示したが、第1圧力発生室12A、第2圧力発生室12Bに圧力変化を生じさせる圧力発生手段(第1圧力発生手段、第2圧力発生手段)としては、特にこれに限定されず、例えば、ゾル−ゲル法、MOD法、スパッタリング法等により形成される圧電材料を有する薄膜型の圧電素子、振動板50と電極を所定の隙間を開けて配置し、静電気力で振動板50の振動を制御する、いわゆる静電アクチュエーターなどを有するインクジェット式記録ヘッドであっても同様の効果を奏するものである。なお、圧力発生手段としては、例えば、上述した実施形態1の圧電素子300を第1アクチュエーター部材2Aと第2アクチュエーター部材2Bとの積層方向に2以上積層したものを用いるようにしてもよい。
【0126】
また、上述したインクジェット式記録ヘッド1は、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図17は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0127】
図17に示すように、インクジェット式記録装置Iは、インクジェット式記録ヘッド1を有する記録ヘッドユニット1A及び1Bを具備する。記録ヘッドユニット1A、1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ200A及び200Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ203は、装置本体204に取り付けられたキャリッジ軸205に軸方向移動可能に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0128】
また、駆動モーター206の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト207を介してキャリッジ203に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ203はキャリッジ軸205に沿って移動される。一方、装置本体204にはキャリッジ軸205に沿ってプラテン208が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン208に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0129】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッド1(ヘッドユニット1A、1B)がキャリッジ203に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0130】
なお、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0131】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 2 アクチュエーター部材、 2A 第1アクチュエーター部材、 2B 第2アクチュエーター部材、 2C 第3アクチュエーター部材、 10A 第1流路形成基板、 10B 第2流路形成基板、 10C 第3流路形成基板、 12A 第1圧力発生室、 12B 第2圧力発生室、 12C 第3圧力発生室、 15A 第1ノズル連通孔、 15B 第2ノズル連通孔、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 21A 第1ノズル開口、 21B 第2ノズル開口、 21C 第3ノズル開口、 50 振動板、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 91、93、97 コンタクトホール、 92、94、95、96 引き出し配線、 100 マニホールド、 110 外部配線、 300 圧電素子(圧力発生手段、第1圧力発生手段、第2圧力発生手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口が第1の方向に並設された第1ノズル列と、ノズル開口が第1の方向に並設された第2ノズル列とが、第1の方向に直交する第2の方向に並設され、前記第1ノズル列の前記ノズル開口と前記第2ノズル列の前記ノズル開口とが前記第1の方向で異なる位置に設けられたノズルプレートと、
前記第1ノズル列の前記ノズル開口に一方面である第1の面側で連通し、前記第1の面とは反対側の第2の面側に開口する個別流路が設けられた第1流路形成基板、該第1流路形成基板の前記第1の面とは反対側の第2の面側に設けられた振動板、及び前記個別流路内に圧力変化を生じさせる第1圧力発生手段を具備する第1アクチュエーター部材と、
前記第1アクチュエーター部材の第2の面側に設けられて、前記第2ノズル列の前記ノズル開口に一方面である第1の面側で連通し、前記第1の面とは反対側の第2の面側に開口する凹形状を有する個別流路及び該個別流路に連通して前記第1の面側に設けられた前記ノズル開口に連通するノズル連通孔が設けられた第2流路形成基板、該第2流路形成基板の前記第2の面側に設けられた振動板、及び前記個別流路内に圧力変化を生じさせる第2圧力発生手段を具備する第2アクチュエーター部材と、を具備し、
前記第1アクチュエーター部材の前記個別流路と前記第2アクチュエーター部材の前記個別流路とが、前記第1アクチュエーター部材と前記第2アクチュエーター部材の積層方向において少なくとも一部が互いに重なる位置に配置されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第2アクチュエーター部材には、前記第1アクチュエーター部材側に開口する凹形状を有し、且つ当該第1アクチュエーター部材の前記振動板上に設けられた前記第1圧力発生手段を内包する第1保持部が設けられており、前記第1アクチュエーター部材と前記第2アクチュエーター部材の積層方向において、前記第1保持部の少なくとも一部が前記第2アクチュエーター部材の前記個別流路に重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第2アクチュエーター部材の前記第2の面側には、当該第2アクチュエーター部材の前記振動板上に設けられた前記第2圧力発生手段を内包する第2保持部が設けられた保護基板が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第1アクチュエーター部材の前記第1圧力発生手段及び前記第2アクチュエーター部材の前記第2圧力発生手段から引き出された引き出し配線が、前記保護基板の前記第2アクチュエーター部材とは反対側の面まで延設されて外部配線と接続されていることを特徴とする請求項3記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第1アクチュエーター部材の前記第1圧力発生手段及び前記第2アクチュエーター部材の前記第2圧力発生手段から引き出された引き出し配線が、前記第1アクチュエーター部材の前記第2の面の前記第2アクチュエーター部材に覆われていない領域まで延設されて外部配線と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第1アクチュエーター部材の前記第1圧力発生手段から引き出された引き出し配線は、前記第1流路形成基板の前記第1圧力発生手段が設けられた面側に、前記第2アクチュエーター部材に覆われていない領域まで延設されており、
前記第2アクチュエーター部材の前記第2圧力発生手段から引き出された引き出し配線は、前記第2流路形成基板の前記第2圧力発生手段が設けられた面側に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記第1及び第2アクチュエーター部材には、複数の圧力発生室に共通して連通するマニホールドが設けられており、
前記第1アクチュエーター部材の前記個別流路と、前記第2アクチュエーター部材の前記個別流路とは、前記マニホールドから前記個別流路の前記振動板の振動中心までの距離及び体積が等しく、且つ前記個別流路の前記振動板の振動中心から前記ノズル開口までの距離及び体積が等しいことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−107256(P2013−107256A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253279(P2011−253279)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】