説明

液体噴射装置および液体噴射装置の液体容器交換方法

【課題】インクカートリッジのような複数の液体容器の内の任意の数の液体容器を交換して液体の種類を交換する場合に、交換しない非交換の液体容器内の液体の消費を抑えて確実に液体の種類の交換を行うことができる液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】液体の種類を交換をする際に、流路開閉部70が液体の流路部140を閉塞した状態で、複数の液体容器11A〜11Dを保持部3から取り外した後に、複数の液体容器の内の交換をしない非交換の液体容器に代えて保持部に装着されて、非交換の液体容器に対応する液体の流路部を閉塞するための流路閉塞体130と、流路開閉部70が液体の流路部140を開いた状態でヘッド20のノズルを封止して吸引して、保持部の液体の流路部に残っている液体を、液体供給経路部40とノズルを通じて排出するための吸引部80を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置および液体噴射装置の液体容器交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、記録ヘッドから記録媒体に対してインク滴を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録媒体に対して微小なインク滴を吐出させて、所望の文字や図形等の画像を記録する。
この種のインクジェット式記録装置は、複数のインクカートリッジから記録ヘッドに対してインクを供給するようになっている。各インクカートリッジは、たとえば異なる種類の色のインクを収容している。
いわゆるオフキャリッジ形のインクジェット式記録装置では、複数のインクカートリッジは、記録ヘッドに対してインク供給経路を通じて接続されている。複数のインクカートリッジはホルダにより着脱可能に保持されている。
従来カラー印刷用に用いられているインクジェット式記録装置では、ブラックインクのみを用いてモノクロ印刷をする時には、ブラックインク以外のインクを収容したカラーインクカートリッジに代えてダミーカートリッジをホルダに装着してカラーインクの浪費を防ぐことが提案されている(たとえば特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−292904号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、上述したように使用しないカラーインクカートリッジに代えてダミーカートリッジが装着される。特許文献1は、カラー印刷用のインクジェット式記録装置において、モノクロ印刷する場合にカラーインクを吐出させないようにするためにカラーインクカートリッジに代えてダミーカートリッジを用いている。
しかしながら、複数のインクカートリッジがホルダに装着されていて、各インクカートリッジが互いに異なるインクの種類を収容している場合に、複数のインクカートリッジの内のある1つのインクカートリッジを交換したい場合には、次のように行う。
【0004】
ホルダから交換しようとするインクカートリッジを取り除く一方で、交換しないいわゆる非交換インクカートリッジはホルダに装着したままである。そして、ホルダに対して上述した非交換インクカートリッジを装着したままの状態でヘッドのノズルを吸引することにより、交換しようとするホルダのインクの流路およびインク供給経路内の残りのインクを排出する。この排出作業が不十分であると、新旧インクの混色を生じてしまい、色相が不安定になってしまう。
【0005】
しかも、1つのインクカートリッジを交換する際に、残りの非交換インクカートリッジはホルダに装着されたままであるので、非交換インクカートリッジ内のインクの浪費が発生してしまう。
【0006】
そこで本発明は上記課題を解消し、インクカートリッジのような複数の液体容器の内の任意の数の液体容器を交換して液体の種類を交換する場合に、交換しない非交換の液体容器内の液体の消費を抑えて確実に液体の種類の交換を行うことができる液体噴射装置および液体噴射装置の液体容器交換方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、本発明にあっては、ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、前記液体を収容するための複数の液体容器と、前記複数の液体容器に対応して配置された複数の前記液体の流路部を有し、前記ヘッドへ前記液体を供給するために前記複数の液体容器を着脱可能に装着して保持する保持部と、各前記液体容器から前記液体を、前記保持部の前記液体の流路部を通じて前記ヘッド側に供給するための液体供給経路部と、各前記液体の流路部に対応して前記液体の流路部の途中を開閉可能に閉塞する流路開閉部と、前記液体の種類を交換をする際に、前記流路開閉部が前記液体の流路部を閉塞した状態で、前記複数の液体容器を前記保持部から取り外した後に、前記複数の液体容器の内の交換をしない非交換の前記液体容器に代えて前記保持部に装着されて、前記非交換の前記液体容器に対応する前記液体の流路部を閉塞するための流路閉塞体と、前記流路開閉部が前記液体の流路部を開いた状態で前記ヘッドの前記ノズルを封止して吸引して、前記保持部の前記液体の流路部に残っている前記液体を、前記液体供給経路部と前記ノズルを通じて排出するための吸引部と、を備えることを特徴とする液体噴射装置により、達成される。
本発明の構成によれば、複数の液体容器は、液体を収容するためのものである。保持部は、複数の液体容器に対応して配置された複数の液体の流路部を有している。この保持部は、ヘッドへ液体を供給するために複数の液体容器を着脱可能に装着して保持する。
液体供給経路部は、各液体容器から液体を、保持部の液体の流路部を通じてヘッド側へ供給するためのものである。流路開閉部は、各液体の流路部に対応して液体の流路部の途中を開閉可能に閉塞する。
流路閉塞体は、液体の種類を交換する際に、流路開閉部が液体の流路部を閉塞した状態で、複数の液体容器を保持部から取り外した後に、複数の液体容器の内の交換しない非交換の液体容器に代えて保持部に装着させて、非交換の液体容器に対応する液体の流路部を閉塞する。
吸引部は、流路開閉部が液体の流路を開いた状態でヘッドのノズルを封止して吸引する。この吸引部は、保持部の液体の流路部に残っている液体を液体供給経路とノズルを通じて排出させる。
これにより、液体の種類を交換する際には、流路開閉部が液体の流路部を閉塞した状態で、複数の液体容器を保持部から取り外す。複数の液体容器を保持部から取り外した後に、複数の容器の内の交換をしない非交換の液体容器に代えて流路閉塞体が保持部に装着される。この流路閉塞体は非交換の液体容器に対応する液体の流路部を閉塞する。そして吸引部は、流路開閉部が液体の流路部を開いた状態でヘッドのノズルを封止して吸引することで、保持部の液体の流路部に残っている液体は、液体供給経路部とノズルを通じて排出する。
このために、液体の種類を交換する際に、非交換の液体容器は保持部にはまったく装着されておらず非交換の液体容器の代わりに流路閉塞体が保持部に装着されていることから、非交換の液体容器から非交換の液体が保持部の液体の流路部に残っている液体が排出されることがまったく無い。したがって、非交換の液体容器の液体の消費を抑えながら、保持部の全ての液体流路部および液体供給経路内の液体をノズルを通じて確実に排出させることができ、液体の種類の交換が確実に行える。
【0008】
本発明は、前記液体容器の外形と前記流路閉塞体の外形は、同じ大きさであることが望ましい。
本発明の構成によれば、液体容器の外形と流路閉塞体の外形は、同じ大きさである。
これにより、保持部に対して、非交換の液体容器に代えて流路閉塞体が確実に装着できる。
【0009】
本発明は、前記液体容器は接続部材を有し、前記液体の流路部は、前記液体容器の前記接続部材に通して前記液体容器内から前記液体を前記液体供給経路部側へ導くための液体供給針を有し、前記流路閉塞体は、前記液体供給針を封止する弾性体の封止シール部材を有することが望ましい。
本発明の構成によれば、液体容器は弾性体からの接続部材を有している。液体の流路部は、液体供給針を有している。この液体供給針は、液体容器の接続部材に通して液体容器から液体を液体供給経路部側へ導くものである。
流路閉塞体は、液体供給針を封止する封止シール部材を有している。
これによって、液体供給針は液体容器から液体を液体供給経路部側へ導くことができる。そして流路閉塞体の封止シール部材は、液体供給針を封止することにより、液体供給針における液体の流れを確実に止める。
【0010】
本発明は、前記流路開閉部は、各前記液体の流路部に対応して前記液体の流路部の途中を開閉可能に閉鎖するように前記保持部に設けられていることが望ましい。
本発明の構成によれば、流路開閉部は、各液体の流路部に対応して液体の流路部の途中を開閉可能に閉鎖するように保持部に設けられている。
これにより、液体の流路部の途中は流路開閉部により開閉可能に閉鎖することができる。
【0011】
本発明は、前記吸引部は、前記ヘッドの前記ノズルを着脱可能に封止する本体と、前記本体内を吸引して負圧状態にするポンプと、を有することが望ましい。
本発明の構成によれば、吸引部の本体は、ヘッドのノズルを着脱可能に封止する。ポンプは、本体内を吸引して負圧状態にする。
これによって、ポンプが作動すると本体内は負圧状態になり、保持部および液体供給経路部内の液体は、ノズルを通じて本体側に確実に吸引して排出することができる。
【0012】
本発明は、前記液体供給経路部は、前記保持部の各前記液体の流路部を前記ヘッドに接続するフレキシブルな複数のチューブを有していることが望ましい。
本発明の構成によれば、液体供給経路部は、保持部の各液体の流路部をヘッドに接続するチューブを有している。
これにより、ヘッドと保持部との間隔が大きい場合であっても、フレキシブルな複数のチューブは自由に配置することができるので、液体噴射装置の小型化を図ることができる。
【0013】
上記目的は、本発明にあっては、ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、前記液体を収容するための複数の液体容器と、前記複数の液体容器に対応して配置された複数の前記液体の流路部を有し、前記ヘッドへ前記液体を供給するために前記複数の液体容器を着脱可能に装着して保持する保持部と、各前記液体の流路部に対応して前記液体の流路部の途中を開閉可能に閉塞する流路開閉部と、前記液体の種類を交換をする際に、前記流路開閉部が前記液体の流路部を閉塞した状態で、前記複数の液体容器を前記保持部から取り外した後に、前記複数の液体容器の内の交換をしない非交換の前記液体容器に代えて前記保持部に装着されて、前記非交換の前記液体容器に対応する前記液体の流路部を閉塞するための流路閉塞体と、前記流路開閉部が前記液体の流路部を開いた状態で前記ヘッドの前記ノズルを封止して吸引して、前記保持部の前記液体の流路部に残っている前記液体を、前記ノズルを通じて排出するための吸引部と、を備えることを特徴とする液体噴射装置により、達成される。
これにより、液体の種類を交換する際には、流路開閉部が液体の流路部を閉塞した状態で、複数の液体容器を保持部から取り外す。複数の液体容器を保持部から取り外した後に、複数の容器の内の交換をしない非交換の液体容器に代えて流路閉塞体が保持部に装着される。この流路閉塞体は非交換の液体容器に対応する液体の流路部を閉塞する。そして吸引部は、流路開閉部が液体の流路部を開いた状態でヘッドのノズルを封止して吸引することで、保持部の液体の流路部に残っている液体を液体供給経路部とノズルを通じて排出する。
このために、液体の種類を交換する際に、非交換の液体容器は保持部にはまったく装着されておらず非交換の液体容器の代わりに流路閉塞体が装着されていることから、非交換の液体容器から非交換の液体が保持部の液体の流路部に残っている液体が排出されることがまったく無い。したがって、非交換の液体容器の液体の消費を抑えながら、インク交換する保持部の全ての液体流路部内の液体をノズルを通じて確実に排出させることができ、液体の種類の交換が確実に行える。
【0014】
上記目的は、本発明にあっては、ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置の液体容器交換方法であって、前記液体を交換する際に、前記液体を収容する複数の液体容器を保持している保持部における各前記液体容器に対応する液体の流路部を流路開閉部が閉塞した状態で、前記複数の液体容器を取り外す取り外しステップと、前記複数の液体容器の内の交換をしない非交換の前記液体容器に代えて流路閉塞体を前記保持部に装着して、前記非交換の液体容器に対応する前記液体の流路部を閉塞する流路閉塞体装着ステップと、前記流路開閉部が前記液体の流路部を開いた状態で、吸引部が前記ヘッドの前記ノズルを封止して吸引して、前記保持部の前記液体の流路部に残っている前記液体を、前記ノズルを通じて排出するための液体の第1吸引ステップと、前記吸引を停止後に、前記流路開閉部が前記液体の流路部を閉塞して前記流路閉塞体を前記保持部から取り除いて前記流路閉塞体の代わりに前記非交換の液体容器を前記保持部に再度装着して残りの前記液体の流路部には交換したい液体容器を前記保持部に装着する装着ステップと、前記流路開閉部が前記液体の流路部を開いて、前記吸引部が前記ヘッドの前記ノズルを通じて前記液体の流路部の前記液体を吸引する液体の第2吸引ステップと、を有することを特徴とする液体噴射装置の液体容器交換方法により、達成される。
本発明の構成によれば、取り外しステップでは、液体の種類を交換する際に液体を収容する複数の液体容器を保持している保持部における各液体容器に対応する液体の流路部を流路開閉部が閉塞した状態で複数の液体容器を取り外す。
流路閉塞体装着ステップでは、複数の液体容器の内の交換をしない非交換の液体容器に代えて流路閉塞体を保持部に装着して、非交換の液体容器に対応する液体の流路部を閉塞する。
液体の第1吸引ステップでは、流路開閉部が液体の流路部を開いた状態で、吸引部がヘッドのノズルを封止して吸引して、保持部の液体の流路部に残っている液体をノズルを通じて排出する。
装着ステップでは、吸引を停止後に、流路開閉部が液体の流路部を閉塞して流路閉塞体を保持部から取り除いて流路閉塞体の代わりに非交換の液体容器を保持部に再度装着して残りの液体の流路部には交換した液体容器を保持部に装着する。
液体の第2吸引ステップでは、流路開閉部が液体の流路部を開いて、吸引部がヘッドのノズルを開いて、吸引部がヘッドのノズルを通じて液体の流路部の液体を吸引する。
これにより、液体の種類を交換する際には、流路開閉部が液体の流路部を閉塞した状態で、複数の液体容器を保持部から取り外す。複数の液体容器を保持部から取り外した後に、複数の容器の内の交換をしない非交換の液体容器に代えて流路閉塞体が保持部に装着される。この流路閉塞体は非交換の液体容器に対応する液体の流路部を閉塞する。そして吸引部は、流路開閉部が液体の流路部を開いた状態でヘッドのノズルを封止して吸引することで、保持部の液体の流路部に残っている液体をノズルを通じて排出する。
その後、保持部には非交換の液体容器を再度装着し、しかも交換したい新たな液体容器も装着し、第2吸引ステップでは、吸引部がノズルを通じて液体吸引することで、各液体容器内の液体をノズル側へ導くことができる。
このために、液体の種類を交換する際に、非交換の液体容器は保持部にはまったく装着されておらず非交換の液体容器の代わりに流路閉塞体が装着されていることから、非交換の液体容器から非交換の液体が保持部の液体の流路部に残っている液体が排出されることがまったく無い。したがって、非交換の液体容器の液体の消費を抑えながら、保持部の全ての液体流路部内の液体をノズルを通じて確実に排出させることができ、液体の種類の交換が確実に行える。
【0015】
本発明は、前記第1吸引ステップと前記第2吸引ステップでは、各前記液体容器からの前記液体は、前記保持部の前記液体の流路部と、前記液体の流路部に接続された液体供給経路部とを通じて、前記ヘッド側に供給されることが望ましい。
本発明の構成によれば、第1吸引ステップと第2吸引ステップでは、各液体容器からの液体は、保持部の液体の流路部と、液体の流路部に接続された液体供給経路部とを通じて、ヘッド側に供給される。
これにより、ヘッドと保持部の距離が離れていても、液体供給経路部により接続して配置することができる。
【0016】
本発明では、前記第2吸引ステップでは、前記吸引中に前記流路開閉部は前記液体の流路部の開閉動作を繰り返すことが望ましい。
本発明の構成によれば、第2吸引ステップでは、吸引中に流路開閉部が液体の流路部の開閉動作を繰り返す。
これにより、流路開閉部が液体の流路部の開閉動作を繰り返すことにより、より確実に保持部と液体供給経路部内に残っている液体の吸引および排出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の液体噴射装置の実施形態であるインクジェット式記録装置10を示している。
図1に示すインクジェット式記録装置は、インクジェットプリンタとも呼んでいる。インクジェット式記録装置10は、本体部1を有している。この本体部1は、2つのカートリッジホルダ3,3、圧力ポンプ4、キャリッジ5、記録ヘッド20、ガイド軸6、移動操作部7、液体供給経路部40、そして制御部100を有している。
【0018】
カートリッジホルダ3,3は、保持部の一例である。一方のカートリッジホルダ3は、4つのインクカートリッジ11Aないし11Dを着脱可能に収容している。もう一方のカートリッジホルダ3は、4つのインクカートリッジ11Eないし11Hを着脱可能に収容している。
各インクカートリッジ11Aないし11Hは、それぞれ同じ大きさのカートリッジである。たとえばインクカートリッジ11Aないし11Dは異なる種類の色のインクを収容している。たとえばインクカートリッジ11Aは、マットブラックインクを収容し、インクカートリッジ11Bはシアンインクを収容し、インクカートリッジ11Cはマゼンタインクを収容し、インクカートリッジ11Dはイエローインクを収容している。
【0019】
インクカートリッジ11Eはフォトブラックインクを収容し、インクカートリッジ11Fはライトシアンインクを収容し、インクカートリッジ11Gはライトマゼンタインクを収容し、インクカートリッジ11Hはグレーインクを収容している。
各インクカートリッジ11Aないし11Hは、キャリッジ5側には直接搭載されておらず、キャリッジ5と記録ヘッド20からは離れたカートリッジホルダ3,3にそれぞれ収容されているので、このインクジェット式記録装置10は、いわゆるオフキャリッジ形のインクジェットプリンタである。
【0020】
圧力ポンプ4は、各カートリッジホルダ3に対して圧縮空気を送ることにより、各インクカートリッジ11Aないし11Hに対して圧力を与える。これによって、インクカートリッジ11Aないし11H内のそれぞれのインクは、液体供給経路部40を通じてキャリッジ5側の記録ヘッド20側に供給できるようになっている。
【0021】
ガイド軸6は、本体部1に対して水平に設けられている。キャリッジ5は、移動操作部7の作動により、ガイド軸6に沿って主走査方向Tに沿って往復移動して位置決め可能である。移動操作部7は、たとえばモータと、このモータにより駆動される歯付きベルトを有している。歯付きベルトはキャリッジ5に取り付けられていて、歯付きベルトとともにキャリッジ5が主走査方向Tに移動する。キャリッジ5の下部には記録ヘッド20が設けられている。この記録ヘッド20の下面にはノズルプレート21が固定されている。
記録紙22は、記録用媒体の一種であり、記録ヘッド20から噴射されるインクにより文字や画像を記録できるようになっている。記録紙22は、図示しない用紙搬送機構によりたとえば図1の紙面垂直方向に搬送することができる。
【0022】
図1の記録ヘッド20はヘッドの一例であるが、印刷ヘッドとも呼ぶことができる。
液体供給経路部40は、各インクカートリッジ11Aないし11Hから記録ヘッド20側へインクを供給するためのインク供給経路部である。
液体供給経路部40は、図1に示すように2つのカートリッジホルダ3,3とキャリッジ5および記録ヘッド20を接続して、各インクカートリッジ11Aないし11H内のインクを記録ヘッド20側に供給する。液体供給経路部40は、図1の例では8本のフレキシブルなチューブ41Aないし41Hと、8つの圧力調整部43を有している。このために、図示例では液体供給経路部40は、8組のチューブと圧力調整部のユニットにより構成されている。
図1のインクカートリッジ11Aないし11Hはインクを貯留する液体容器であり、各色のインクは液体の一例である。
【0023】
図2は、図1に示す液体供給経路部40のチューブ41と圧力調整部43と、キャリッジ5および記録ヘッド20の構造例を拡大して示している。
圧力調整部43は、液体容器であるインクカートリッジ11Aないし11Hから記録ヘッド20側へインクを供給する際のインクの圧力を調整するためのユニットである。
【0024】
図2のキャリッジ5の下部には記録ヘッド20が設けられている。キャリッジ5と記録ヘッド20は、インク経路51を有している。このインク経路51は、圧力調整部43と記録ヘッド20のノズル開口52とを接続している。ノズル開口52は、図2において紙面垂直方向に複数個配列されている。各ノズル開口列53は、複数のノズル開口52により構成されている。各ノズル開口列53はたとえば図2の紙面垂直方向に平行に配列されている。ノズル開口52は、ノズルプレート21のノズルプレート面21Aに形成されている。各ノズル開口52は、圧力室54に接続されている。
【0025】
図2の圧力調整部43の中には自己封止弁(減圧弁)43Aが収容されている。この自己封止弁の動作により、インクカートリッジ11からチューブ41を通じて針部材61を通って記録ヘッド20側に送られるインクの圧力を減圧して調整することができる。
たとえばキャリッジの加減速に伴ってチューブ41内のインクに圧力変動が生じた場合には、インク滴の吐出が不安定になるので、圧力調整部43はインクの圧力変動を抑制する。
【0026】
図3は、記録ヘッド20のノズルプレート21のノズルプレート面21Aを吸引するための吸引部80の構造例を示している。
吸引部80は、本体81、密着部材82、吸収材83、吸引ポンプ88、廃インクタンク89および昇降手段90を有している。本体81はキャップとも呼ばれており、プラスチックや金属により作られている。本体81の上端部は上部開口81Aとなっている。上部開口81Aを形成する密着部材82は、本体81の上端部側に装着されている。密着部材82は、ノズルプレート面21Aに対して密着することにより、本体81がすべてのノズル52を封止することができる。
【0027】
本体81の密着部材82がノズルプレート面21Aに対して密着して封止できるようにするために、昇降手段90は本体81をZ1方向に上昇させる。本体81がノズルプレート面21Aの封止を解除する場合には、昇降手段90は、本体81をZ2方向に下げる。
本体81は、底面部85と4つの側面部84を有している箱形状のものである。本体81の中には、吸収材83が好ましくは収容されている。この吸収材83は、インクを吸収することができるものである。底面部85は、接続部86を介してチューブ87に接続されている。このチューブ87は、吸引ポンプ88に接続されている。吸引ポンプ88は制御部100からの指令により動作する。
本体81の密着部材82がノズルプレート面21Aに密着した状態で、本体81がノズルプレート面21Aのノズル開口52を封止して吸引ポンプ88が動作すると、本体81内にはノズル開口52を通じてインクを吸引して排出できる。排出されたインクは、吸引ポンプ88を通じて廃インクタンク89に回収される。
【0028】
図4は、インクカートリッジ11Aないし11Hの好ましい形状例を示している。
インクカートリッジ11Aないし11Hは、同じ形状のものであるが、図1と図3に示すように、カートリッジホルダ3に対して着脱可能に装着することができる。インクカートリッジ11Aないし11Hは、カートリッジフレーム111および封止用接続部材113を有している。カートリッジフレーム111は箱形状のものであり、カートリッジフレーム111の中にはインクパック112が着脱可能に収容されている。
インクパック112は、たとえばアルミニウムと樹脂を積層したような構造の変形可能な液体収容容器である。インクパック112は、封止用接続部材113に接続されている。封止用接続部材113は、カートリッジフレーム111の底面部111Aに対して固定されている。カートリッジフレーム111は、底面部111A、上面部111B、側面部111C,111C,111Dを有している。
【0029】
インクカートリッジ11Aないし11Hのそれぞれのインクパック112は、上述したように異なる種類のインクを収容している。このインクパック112は、カートリッジフレーム111内において図1の圧力ポンプ4からの圧力により押されることにより、インクパック112内のインクは封止用接続部材113を通じて押し出すことができる。
【0030】
図5は、インクカートリッジ11Aないし11Hに代えて使用する流路閉塞体130を示している。この流路閉塞体130は、インクカートリッジ11Aないし11Hに代えて使用するダミーカートリッジとも呼ぶことができる。
流路閉塞体130の外形は、図4のインクカートリッジ11Aないし11Hの外形と同じ大きさである。すなわち、流路閉塞体130のフレーム131は、図4に示すインクカートリッジ11Aないし11Hのカートリッジフレーム111と同じ大きさのものである。このように流路閉塞体130とインクカートリッジ11Aないし11Hを同じ大きさにするのは、流路閉塞体130が図1に示すカートリッジホルダ3内に任意のインクカートリッジに代えて確実に装着できるようにするためである。
【0031】
図5に示す封止用のフレーム131の中空部132には何も収容されておらず、フレーム131は、底面部131A、上面部131B、側面部131Cを有している。
封止用のシール部材134は、底面部131Aに対して固定されている。シール用部材134は、図4に示す封止用接続部材113とは異なるほぼ円筒形状の部材である。封止用のシール部材134は、後で説明する液体供給針を封止するために弾性変形可能な部材により作るのが望ましい。
【0032】
図1に示す各チューブ41Aないし41Hは、フレキシブルな弾性変形可能なチューブを採用することができる。これにより、図1の例では8本のチューブ41Aないし41Hを使用しているが、フレキシブルなチューブを使用することにより各チューブの取り回しが容易になり、カートリッジホルダ3と記録ヘッド20側の距離が離れていても、各チューブは自由にレイアウトしながらインクの流路を確保することができるので、インクジェット式記録装置10の小型化が図れる。
【0033】
図6は、1つのカートリッジホルダ3と4つのインクカートリッジ11Aないし11Dおよびチューブ41Aないし41Dなどを示す斜視図である。この一方のカートリッジホルダ3と図1に示す他方のカートリッジホルダ3の構造は同じ構造である。
カートリッジホルダ3に対しては、4つのインクカートリッジ11Aないし11Dは、たとえば図6に示すようにY方向から挿入することができ、Y方向とは反対方向に取り外すことができる。
図6に示すカートリッジホルダ3の下部には、流路開閉部70が下方に突出して設けられている。
【0034】
図7と図8は、図6におけるA−A線における断面構造例を示している。図7の状態は、液体の流路部140が開いてインクを通すことができる、たとえば印刷動作時の例を示しており、図8は、液体の流路部140はバルブ72により閉じていて、たとえばインクカートリッジの着脱時の例を示している。
【0035】
図7と図8において、流路開閉部70は、カートリッジホルダ3の下部に設けられている。インクカートリッジホルダ3内にはインクカートリッジ11Aないし11Hが収容されていて、インクカートリッジ11Aないし11H内にはインクパック112が収容されている。インクパック112の中にはインク1000が収容されている。インクカートリッジ11Aないし11Hおよびインクパック112の下部には、封止用の接続部材113が設けられている。この封止用の接続部材113は、たとえばほぼ円筒状の部材であり、インクパック112内のインク1000を通すことができる通路113Rを有している。
【0036】
カートリッジホルダ3の下部には、液体供給針90がZ1方向に突出して設けられている。インクカートリッジ11Aないし11Hの下部にはシール部材92が設けられている。インクカートリッジ11Aないし11Hがカートリッジホルダ3内にY方向に沿って装着されると、液体供給針90は、シール部材92を弾性変形させながら通ることにより、液体供給針90は封止用の接続部材113内の通路113R内に達する。液体供給針90は、この外周面にインクの供給口91を有している。
カートリッジホルダ3の下部の凸部3Tは、流路開閉部70の本体部74の凹部74C内に収容されている。凹部74Cと凸部3TはO−リング74Bによりシールされている。
【0037】
図7に示す流路開閉部70は、バルブホルダ71A、バルブ72、軸部72A、シールバネ73、バルブ操作レバー75、バルブカム76、突出部77および本体部74を有している。
本体部74はバルブホルダ71Aと一体になっていて、液体の流路部140を形成している。液体の流路部140はバルブ72の動作により開閉することができる。バルブ72とシールバネ73は、バルブホルダ71Aの中に収容されている。バルブ72は軸部72Aの内端部に取り付けられていて、弾性変形可能な部材により作られている。軸部72Aは、シールバネ73の付勢力によりZ1方向に沿って、図7に示す状態から図8に示すようにしてバルブ72を押し上げることで、液体の流路部140を閉鎖することができる。この液体の流路部140は、逆止弁74Aを介して液体供給針90の通路90Aに接続されている。この通路90Aは供給口91と通路113Rに通じている。
【0038】
図7のバルブ操作レバー75の一端部75Bは、バルブカム76のカム面に当たっている。バルブ操作レバー75の他端部75Cは、軸部72Aに対して固定されている。バルブ操作レバー75は、軸75Aを中心として回転可能である。
バルブカム76は、中心軸CLを有する偏心カムである。図7に示すようにバルブカム76がLL線に沿って位置されていると、バルブ操作レバー75は、D1方向に押されることから、バルブ操作レバー75は軸部72Aをシールバネ73の付勢力に抗してZ2方向に押し下げている。
これに対して、図8に示すように、バルブカム76のLL線が180度回転することにより、バルブ操作レバー75の一端部75Bが開放されてRT方向に回転する。これによって、シールバネ73は軸部72Aとバルブ72をZ1方向に押し上げる。これによって、バルブ72は液体の流路140を開閉可能に閉鎖することができる。
【0039】
このバルブカム76は、図1に示すバルブレバー71の操作により、図7に示す状態と図8に示す状態に変えることができる。図1に示すようにバルブレバー71がE1方向に操作されると、図7に示すように液体の流路部140はバルブ72により開放される。これに対して、図1に示すバルブレバー71がE2方向に操作されると、図8に示すように液体の流路部140はバルブ72により閉鎖される。
【0040】
図7に示すように、液体の流路部140は、チューブ41Aないし41Hに対してナット78により着脱可能に接続することができる。ナット78が突出部77に対してねじ込まれることにより、O−リング79がチューブ41Aないし41Hと、突出部77との間のシール機能を保つ。
【0041】
図9は、インクの種類の交換時に、流路閉塞体130が、交換しないいわゆる非交換インクカートリッジに代えてカートリッジホルダ3内に対して装着されている状態を示している。図9に示す流路閉塞体130は、図7に示すインクカートリッジ11Aないし11Hに代えてカートリッジホルダ3の中に装着されている。図9に示す流路開閉部70の状態は、一例としてバルブ72が下がっていて液体の流路部140は開いた状態にある。
【0042】
図9に示す流路閉塞体130は、図5に示す流路閉塞体130の構造を有しているが、封止用のシール部材134の構造が特に図示されている。封止用のシール部材134は、液体供給針90の供給口91を封止して閉じるために、弾性変形可能な封止部材131Eを有している。この封止部材131Eの内径は、液体供給針90の外径よりもやや小さくなっている。流路閉塞体130がカートリッジホルダ3内にY方向に沿って装着されると、液体供給針90はシール部材134の封止部材131E内に圧入でき、確実に液体供給針90の供給口91を封止することができる。
【0043】
図7ないし図9に示す流路開閉部70は、各インクカートリッジ11Aないし11Hとチューブ41Aないし41Hに対応して設けられている。
つまり図1に示す一方のカートリッジホルダ3は、4つの流路開閉部70を有していて、もう1つのカートリッジホルダ3はやはり4つの流路開閉部70を有している。そして図1に示すカートリッジホルダ3はそれぞれ図7に示す4つの液体流路部140を有していることになる。カートリッジホルダ3は、図7と図8に示すインクカートリッジ11Aないし11Hと、図9に示す流路閉塞体130のいずれかを着脱可能に装着して保持する。
【0044】
図1に示す液体供給経路部40は、各インクカートリッジからの液体を、カートリッジホルダ3の図7に示す液体の流路部140を通じて図1に示す記録ヘッド20側へ供給することができる。図7ないし図9に示す流路開閉部70は、液体の流路部140の途中を開閉可能に閉塞することができる。図9に示す流路閉塞体130は、対応する各液体流路部140の液体供給針90を閉鎖することにより閉塞する。
【0045】
図10は、本発明の液体噴射装置の好ましい実施形態であるインクジェット式記録装置10における液体容器の交換方法の好ましい例を示している。
図1に示すインクジェット式記録装置10において、一例として左側のカートリッジホルダ3におけるインクカートリッジの交換方法について代表して説明する。左側のカートリッジホルダ3と右側のカートリッジホルダ3におけるインクカートリッジの交換方法は、同じようにして行うことができる。
【0046】
図10は、概略的には取り外しステップSA1、流路閉塞体装着ステップSA2、液体の第1吸引ステップSA3、装着ステップSA4および液体の第2吸引ステップSA5を有している。
図10に示すフロー図の各ステップST1ないしステップST19は、図11ないし図16においてより具体的に図示している。
【0047】
ステップST1
図10に示すステップST1では、インク交換指令が制御部100よりなされる。制御部100は、たとえば図1に示す左側のカートリッジホルダ3のインクカートリッジ11Dの交換指令を出す例について説明する。このため、インクカートリッジ11Dは交換しようとするインクカートリッジであり、残りの3つのインクカートリッジ11Aないし11Cは、今回は交換をしない非交換カートリッジである。
【0048】
取り外しステップSA1
図10に示す取り外しステップSA1では、インクカートリッジ11Dを別の新しいインクカートリッジに交換するのであるが、この別の新しいインクカートリッジの中には異なる種類のインクがたとえば収容されている。
この取り外しステップSA1では、インクの交換をする際に、図11(A)のバルブレバー71がE1方向から図11(B)のステップST2のE2方向に操作されることで、カートリッジホルダ3の図7に示す全ての液体の流路部140が流路開閉部70のバルブ72により閉塞される。
この閉塞した状態で、図12(C)のステップST3で示すように、図10のステップST3および図12(C)に示すように、カートリッジホルダ3からは全てのインクカートリッジ11Aないし11Hが取り外される。
このようにして、カートリッジホルダ3の液体の流路部140を全て閉塞した状態で、4つのインクカートリッジ11Aないし11Dがカートリッジホルダ3から取り外されるのである。
【0049】
流路閉塞体装着ステップSA2
図10に示す流路閉塞体装着ステップSA2は、ステップST4で示すように非交換カートリッジの箇所に対して流路閉塞体130を装着する。この非交換カートリッジとは、今回は交換しない非交換のインクカートリッジ11A,11B,11Cである。これに対して今回交換するのはインクカートリッジ11Dである。
このために、図12(D)に示すステップST4のように、流路閉塞体130は、非交換のインクカートリッジ11A,11B,11Cに対応する位置においてカートリッジホルダ3内に装着する。これに対して交換するインクカートリッジ11Dに対応するカートリッジホルダ3の箇所150には何も装着しない。図12(D)では、流路閉塞体130はハッチングにより示している。
このように流路閉塞体130が、図12(D)のようにカートリッジホルダ3の中に、非交換インクカートリッジ11Aないし11Cを装着する箇所に装着されることにより、図9に示すような状態になる。すなわち、液体供給針90の供給口91は、封止用のシール部材134により封止された状態になる。図9のバルブ72は、液体の流路部140を閉鎖した状態である。
これによって、流路閉塞体130はバルブ72とともに液体の流路部140を閉鎖している。
【0050】
液体の第1吸引ステップSA3
図10に示す液体の第1吸引ステップSA3は、図10に示すようにステップST5とステップST6を有している。
図10のステップST5では、図13(E)に示すように、バルブレバー71がE1方向に操作されることにより、図9に示すようにバルブ72がZ2方向に下がって液体の流路部140が開通する。そしてステップST6では、図13(F)に示すように、吸引ポンプ88が作動することにより、本体81を通じて、図3に示す記録ヘッド20のノズル開口52から液体供給経路部40および対応する図9に示す液体の流路部140内に残っているインクを吸引する。
【0051】
この吸引の場合に、図13(F)に示すように、カートリッジホルダ3には3つの流路閉塞体130がすでに装着されていて、1つの箇所150には流路閉塞体130は装着されていない。
このために3つの流路閉塞体130に対応するチューブ41A,41B,41C内のインクは吸引されず、カートリッジホルダ3内の空間150に対応するチューブ41Dおよびそれに対応する図9に示す液体の流路部140内のインクのみが吸引ポンプ88によりノズル開口を通じて吸引されることになる。
【0052】
つまり、箇所150に対応する液体の流路部140とチューブ41D内に残っているインクは吸引されて排出することができることから、液体の流路部140とそれに対応するチューブ41D内の排出およびクリーニングを確実に行うことができる。
これに対して、図11(A)に示す非交換カートリッジ11Aないし11Cに対応する図13(F)のチューブ41Aないし41C内のインクは排出されないので、これらの排出する必要の無いインクを残しておくことができるので、インクの消費を抑えることができる。
これは図13(F)のように、カートリッジホルダ3内に3つの流路閉塞体130が装着されていることから、外部から空気が液体の流路部140とチューブ41Aないし41Cに入り込まないために、3つの液体の流路部140と3本のチューブ41Aないし41C内に残っているインクが排出されない。
【0053】
装着ステップSA4
図10の装着ステップSA4は、ステップST7ないしステップST11を有している。
ステップST7では、図14(G)に示すように、吸引ポンプ88の動作を停止してノズルを通じてインクの吸引を停止する。この際、非交換インク流路内も減圧されているため吸引ポンプが停止するとノズル開口52から気泡を引き込む。ステップST8では、図14(G)のようにバルブレバー71がE2方向に操作されて、図8に示すようにバルブ72は液体の流路部140を閉塞する。ステップST9では、図14(H)に示すように3つの流路閉塞体130をカートリッジホルダ3の中から取り外す。
ステップST10では、図15(I)に示すように、3つの非交換インクカートリッジ11Aないし11Cをカートリッジホルダ3の中に再度装着するとともに、ステップST11では、交換したい新しいインクカートリッジ11Rがカートリッジホルダ3の箇所150の中に装着される。この交換した新しいインクカートリッジ11Rは、たとえばその中にイエローインク以外の種類のインクが収容されている。
【0054】
液体の第2吸引ステップSA5
図10の液体の第2吸引ステップSA5は、ステップST12からステップST19を有している。
ステップST12では、図15(J)に示すように、バルブレバー71がE1方向に操作されると図7に示すように液体の流路部140は開通する。ステップST13では、図16(K)に示すように吸引ポンプ88が作動して、ノズルを介して4つの液体流路部140と4本のチューブ41Aないし41D内のインクをそれぞれ吸引して排出する。
【0055】
次に、ステップST14ないしステップST19では、液体の流路部140を繰り返して開閉するために、バルブレバー71がE1方向とE2方向にたとえば3回ずつ繰り返して操作されることになる。このように繰り返してバルブレバー71を操作することにより、たとえば液体の流路部140を3回開閉することができるので、吸引ポンプ88によりノズルを通ってインクを吸引する場合において、液体の流路部140と対応するチューブ41Aないし41D内のインクを確実に吸引して排出することができる。さらに説明すると、バルブレバー71を操作して流路を閉じてポンプ88で吸引することでチューブ内の減圧度を高め、その後バルブレバー71を操作して流路をあけることでインク流速を高めてチューブ内の気泡を一気に流すことができる。これを3回ほど繰り返すことで流路内の気泡は完全に排出できる。
そして、図16(M)および図10のステップST19とステップST20で示すように、再びバルブレバー71がE1方向に操作されることにより、各液体の流路部140は開通し、その後吸引ポンプ88の吸引動作を停止させる。
【0056】
上述したように、図11(A)に示す今回は交換しない非交換インクカートリッジ11Aないし11Cに対応して、図12(D)に示すように流路閉塞体130がそれぞれカートリッジホルダ3内に装着される。そして図11(A)の今回交換しようとするインクカートリッジ11Aはカートリッジホルダ3から取り除いた状態で、吸引ポンプにより吸引することにより、交換するインクカートリッジ11Dに対応する液体の流路部140とそれに対応するチューブ41Dの中に残っているインクを確実にヘッド20のノズルを通じて本体81側に吸引して排出することができる。
このように液体の流路部140とチューブ41Dの中をきれいに清掃した後に、図15(I)に示す交換したい新しいインクカートリッジ11Rをカートリッジホルダ3の箇所150に装着する。これとともに、非交換インクカートリッジ11Aないし11Cも、カートリッジホルダ3の中に再度装着する。その後、吸引ポンプ88の吸引により各非交換カートリッジ11Aないし11Cと新しいインクカートリッジ11Rに対応する液体の流路部140と対応するチューブ41Aないし41Dを通じてそれぞれにインクを吐出させることができ、印刷の準備ができる。
【0057】
上述した実施形態では、図1に示す一方のカートリッジホルダ3のインクカートリッジ11Aないし11Hを例に挙げて、その中でインクカートリッジ11Aないし11Cを非交換インクカートリッジとし、インクカートリッジ11Dは交換するインクカートリッジとしている。しかしこれに限らず、インクカートリッジ11Aないし11Dの1つまたは2つ以上の組み合わせで交換する場合でも同様の要領で行うことができる。またもう1つのカートリッジホルダ3内のインクカートリッジ11Eないし11Hの交換作業においても同様にして行うことができるのである。
【0058】
本発明の実施形態では、たとえばインクカートリッジ11Dを交換したいインクカートリッジとして用い、新しく装着するインクカートリッジには、インクカートリッジ11D内に収容されたインクの種類とは異なる種類のインクを収容している。しかしこれに限らず、交換したいインクカートリッジ11Dと同じ種類のインクを収容した新たなインクカートリッジを装着する場合においても本発明は適用することができる。
【0059】
本発明の実施形態ではインクの種類の異なるインクカートリッジが、交換するインクカートリッジ11Dとは交代で付け替えて、同じインクジェット式記録装置で印刷作業を行うことができる。この場合に、すでに述べたように非交換インクカートリッジはインクホルダに装着せずにその代わりに流路閉塞体130を装着することにより、流路閉塞体130に対応する液体の流路およびチューブ内のインクは、吸引によっても外部に排出されることがない。このことから非交換カートリッジ内のインクの不要な消費を抑えて確実にインクの種類の交換を行うことができる。
【0060】
本発明の実施形態では、液体の種類を交換する際に、非交換の液体容器は保持部には装着されておらず流路閉塞体が装着されていることから、非交換の液体容器から非交換の液体が保持部の液体の流路部に残っている液体が排出されることがまったく無く、非交換の液体容器の液体の消費を抑えながら、インク交換する保持部の全ての液体流路部および液体供給経路内の液体をノズルを通じて確実に排出させることができる。
本発明の実施形態では、流路閉塞体と液体容器が同じ外形であるので、保持部に対して、非交換の液体容器に代えて流路閉塞体が確実に装着できる。
【0061】
本発明の実施形態では、液体供給針は液体容器から液体を液体供給経路部側へ導くことができる。そして流路閉塞体の封止シール部材は、液体供給針を封止することにより、液体供給針における液体の流れを確実にシールする。
【0062】
図1に示すオフキャリッジ形のインクジェット式記録装置では、たとえば8つのインクカートリッジ11を備えている。しかしこれに限らず、2つないし7つあるいは9つ以上のインクカートリッジを備えるものであっても勿論構わない。
本発明は、図1に示す液体供給経路部40を設けずに、インクカートリッジとカートリッジホルダがキャリッジ5を記録ヘッド20側に直接接続された、いわゆるオンキャリッジ形のインクジェット式記録装置にも適用できる。
【0063】
本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタなどの画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイなどのカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどの液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置などにも適用できる。
【0064】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す図。
【図2】記録ヘッドおよびその周辺を示す図。
【図3】記録ヘッドおよび周辺と吸引部を示す図。
【図4】インクカートリッジ(液体容器)の一例を示す斜視図。
【図5】流路閉塞体の一例を示す斜視図。
【図6】カートリッジホルダおよび流路開閉部の付近を示す斜視図。
【図7】図6のA−A線における断面を示し、バルブが液体流路部を開いている状態を示す図。
【図8】図7におけるバルブが液体流路部を閉じている状態を示す図。
【図9】流路閉塞体がカートリッジホルダに装着されている状態を示す断面図。
【図10】本発明の液体噴射装置の液体容器交換の好ましい例を示すフロー図。
【図11】ステップST1、ステップST2を示す図。
【図12】ステップST3、ステップST4を示す図。
【図13】ステップST5、ステップST6を示す図。
【図14】ステップST7、ステップST8、ステップST9を示す図。
【図15】ステップST10、ステップST11、ステップST12を示す図。
【図16】ステップST13ないしステップST20を示す図。
【符号の説明】
【0066】
3・・・カートリッジホルダ(保持部の一例)、10・・・インクジェット式記録装置(液体噴射装置の一例)、11Aないし11H・・・インクカートリッジ(液体容器の一例)、20・・・記録ヘッド、40・・・液体供給経路部、41Aないし41H・・・・チューブ、70・・・流路開閉部、80・・・吸引部、81・・・吸引部の本体、88・・・吸引部の吸引ポンプ、130・・・流路閉塞体、140・・・液体の流路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、
前記液体を収容するための複数の液体容器と、
前記複数の液体容器に対応して配置された複数の前記液体の流路部を有し、前記ヘッドへ前記液体を供給するために前記複数の液体容器を着脱可能に装着して保持する保持部と、
各前記液体容器から前記液体を、前記保持部の前記液体の流路部を通じて前記ヘッド側に供給するための液体供給経路部と、
各前記液体の流路部に対応して前記液体の流路部の途中を開閉可能に閉塞する流路開閉部と、
前記液体の種類を交換をする際に、前記流路開閉部が前記液体の流路部を閉塞した状態で、前記複数の液体容器を前記保持部から取り外した後に、前記複数の液体容器の内の交換をしない非交換の前記液体容器に代えて前記保持部に装着されて、前記非交換の前記液体容器に対応する前記液体の流路部を閉塞するための流路閉塞体と、
前記流路開閉部が前記液体の流路部を開いた状態で前記ヘッドの前記ノズルを封止して吸引して、前記保持部の前記液体の流路部に残っている前記液体を、前記液体供給経路部と前記ノズルを通じて排出するための吸引部と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体容器の外形と前記流路閉塞体の外形は、同じ大きさであることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体容器は接続部材を有し、
前記液体の流路部は、前記液体容器の前記接続部材に通して前記液体容器内から前記液体を前記液体供給経路部側へ導くための液体供給針を有し、
前記流路閉塞体は、前記液体供給針を封止する弾性体の封止シール部材を有することを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記流路開閉部は、各前記液体の流路部に対応して前記液体の流路部の途中を開閉可能に閉鎖するように前記保持部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記吸引部は、前記ヘッドの前記ノズルを着脱可能に封止する本体と、前記本体内を吸引して負圧状態にするポンプと、を有することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体供給経路部は、前記保持部の各前記液体の流路部を前記ヘッドに接続するフレキシブルな複数のチューブを有していることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、
前記液体を収容するための複数の液体容器と、
前記複数の液体容器に対応して配置された複数の前記液体の流路部を有し、前記ヘッドへ前記液体を供給するために前記複数の液体容器を着脱可能に装着して保持する保持部と、
各前記液体の流路部に対応して前記液体の流路部の途中を開閉可能に閉塞する流路開閉部と、
前記液体の種類を交換をする際に、前記流路開閉部が前記液体の流路部を閉塞した状態で、前記複数の液体容器を前記保持部から取り外した後に、前記複数の液体容器の内の交換をしない非交換の前記液体容器に代えて前記保持部に装着されて、前記非交換の前記液体容器に対応する前記液体の流路部を閉塞するための流路閉塞体と、
前記流路開閉部が前記液体の流路部を開いた状態で前記ヘッドの前記ノズルを封止して吸引して、前記保持部の前記液体の流路部に残っている前記液体を、前記ノズルを通じて排出するための吸引部と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置の液体容器交換方法であって、
前記液体を交換する際に、前記液体を収容する複数の液体容器を保持している保持部における各前記液体容器に対応する液体の流路部を流路開閉部が閉塞した状態で、前記複数の液体容器を取り外す取り外しステップと、
前記複数の液体容器の内の交換をしない非交換の前記液体容器に代えて流路閉塞体を前記保持部に装着して、前記非交換の液体容器に対応する前記液体の流路部を閉塞する流路閉塞体装着ステップと、
前記流路開閉部が前記液体の流路部を開いた状態で、吸引部が前記ヘッドの前記ノズルを封止して吸引して、前記保持部の前記液体の流路部に残っている前記液体を、前記ノズルを通じて排出するための液体の第1吸引ステップと、
前記吸引を停止後に、前記流路開閉部が前記液体の流路部を閉塞して前記流路閉塞体を前記保持部から取り除いて前記流路閉塞体の代わりに前記非交換の液体容器を前記保持部に再度装着して残りの前記液体の流路部には交換したい液体容器を前記保持部に装着する装着ステップと、
前記流路開閉部が前記液体の流路部を開いて、前記吸引部が前記ヘッドの前記ノズルを通じて前記液体の流路部の前記液体を吸引する液体の第2吸引ステップと、
を有することを特徴とする液体噴射装置の液体容器交換方法。
【請求項9】
前記第1吸引ステップと前記第2吸引ステップでは、各前記液体容器からの前記液体は、前記保持部の前記液体の流路部と、前記液体の流路部に接続された液体供給経路部とを通じて、前記ヘッド側に供給されることを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置の液体容器交換方法。
【請求項10】
前記第2吸引ステップでは、前記吸引中に前記流路開閉部は前記液体の流路部の開閉動作を繰り返すことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の液体噴射装置の液体容器交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−159470(P2006−159470A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350822(P2004−350822)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】