説明

液体噴射装置の製造方法

【課題】液体噴射ヘッドを精度良く所定位置に配置して液滴の吐出精度が向上し、かつ大型化を抑えた液体噴射装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第3基準部である溝部・切り欠き部及び第2基準マークを有するアライメントマスクと、当該第3基準部及びサブキャリッジ20に設けられた第2基準部である溝部23・切り欠き部24が位置決めされる位置決め部である円柱部102・凸部103を有する治具100とを用い、第3基準部が円柱部102・凸部103に位置決めされたアライメントマスクの第2基準マークの位置を記憶し、アライメントマスクを取り外した後、記憶した第2基準マークの位置に、記録ヘッド30の第1基準マークMを位置決めし、当該記録ヘッド30をサブキャリッジ20に固定し、当該サブキャリッジ20の第2基準部をメインキャリッジの第1基準部に位置決めしてサブキャリッジ20をメインキャリッジに取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置の製造方法に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインクをインク滴として噴射させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。
【0003】
上記プリンターとして、ノズルを複数列設してなるノズル列を有する記録ヘッドをサブキャリッジに複数並べて固定し、サブキャリッジをメインキャリッジに搭載して1つのヘッドユニットとする構成を採用するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなプリンターの製造は、例えば、サブキャリッジの所定位置に一番目の記録ヘッドを取り付けて固定し、二番目以降の記録ヘッドは、一番目の記録ヘッドのノズルを基準として所定位置に位置決めし、固定する。
【0005】
そして、サブキャリッジに固定された記録ヘッドのノズル列の列設方向が、メインキャリッジの主走査方向に対して所定の角度になるように、サブキャリッジをメインキャリッジに取り付ける。所定の角度としては、例えば、主走査方向に対してノズル列の列設方向が直角となる角度を採用する。
【0006】
サブキャリッジのメインキャリッジへの取り付けには、メインキャリッジに設けられたサブキャリッジの角度調整機構を用いる。角度調整機構は、記録ヘッドのノズルが設けられたノズル面に垂直な方向を回動軸とし、サブキャリッジのメインキャリッジに対する角度を調整するためのものである。
【0007】
具体的には、サブキャリッジに固定された記録ヘッドのノズル列の列設方向が、メインキャリッジの主走査方向に対して直角になるように角度調整機構によりサブキャリッジの角度を調整し、当該サブキャリッジをメインキャリッジに固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−193458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サブキャリッジに記録ヘッドを固定する際に、サブキャリッジの所定位置に一番目の記録ヘッドを配置し、当該一番目の記録ヘッドを基準に二番目以降の記録ヘッドを配置すると、一番目の記録ヘッドはサブキャリッジに対して所定位置に配置される。当該サブキャリッジがメインキャリッジに取り付けられた場合、記録ヘッドがメインキャリッジを基準とした所定位置に配置されるとは限らない。特に、一番目の記録ヘッドがメインキャリッジの所定位置に対して大きくずれると、当該記録ヘッドを基準にして位置決めされる二番目以降の記録ヘッドのずれも大きくなる。例えば、記録ヘッドのノズル列がメインキャリッジの主走査方向に対して直交するような所定位置から大きく傾いてしまう。
【0010】
このような問題に対し、ノズル列をメインキャリッジの主走査方向に対して所定の角度とするためには角度調整機構を調整すればよい。しかしながら、サブキャリッジに固定された記録ヘッドの傾きが、角度調整機構による角度の調整範囲を超えてしまうと、ノズル列をメインキャリッジの主走査方向に対して所定の角度とすることができなくなってしまう。
【0011】
角度調整機構の角度の調整範囲を広くすることも考えられるが、その場合、角度調整機構が大きくなるため、これを保持するメインキャリッジも大きくなり、ヘッドユニットやインクジェット式記録装置全体が大型化してしまう。
【0012】
なお、このような問題は、インク滴を噴射するインクジェット式記録装置だけでなく、他の液滴を噴射する液体噴射装置においても同様に存在する。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、液体噴射ヘッドを精度良く所定位置に配置して液滴の吐出精度が向上し、かつ大型化を抑えた液体噴射装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明は、液体が噴射される被噴射媒体に対して相対移動するメインキャリッジと、液体を吐出するノズルを有する液体噴射ヘッドが複数搭載されたサブキャリッジとを備え、前記サブキャリッジは、前記メインキャリッジに設定された第1基準部に、当該サブキャリッジに設定された第2基準部が位置決めされて、当該メインキャリッジに取り付けられ、前記メインキャリッジには、前記ノズルが設けられた液体噴射面に垂直な方向を回動軸として、前記サブキャリッジを回動させることで前記メインキャリッジに対する前記サブキャリッジの角度を調整する角度調整機構が設けられている液体噴射装置の製造方法であって、第3基準部、及び前記液体噴射ヘッドに設けられた第1基準マークが位置決めされる第2基準マークを有するアライメント部材と、前記第2基準部及び前記第3基準部が位置決めされる位置決め部を有する治具とを用い、前記第3基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記アライメント部材の前記第2基準マークに、前記液体噴射ヘッドの前記第1基準マークを位置決めし、当該液体噴射ヘッドを、前記第2基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記サブキャリッジに固定し、前記液体噴射ヘッドが固定された前記サブキャリッジの前記第2基準部を前記メインキャリッジの前記第1基準部に位置決めして前記サブキャリッジを前記メインキャリッジに取り付けることを特徴とする液体噴射装置の製造方法にある。
かかる態様では、アライメント部材の第2基準マークに第1基準マークを位置決めして液体噴射ヘッドをサブキャリッジに固定するので、第1基準マークの第2基準部に対する相対位置は、第2基準マークの第3基準部に対する相対位置と同じとなる。すなわち、アライメント部材に設けた第2基準マークの配置通りに各液体噴射ヘッドがサブキャリッジに位置決めすることができる。これにより、ノズル列が精度良く所定位置に配置され、液滴の吐出精度が向上し、かつ大型化を抑えた液体噴射装置を作製できる。さらに、液体噴射ヘッドを位置決めし、固定する手順は、全ての液体噴射ヘッドに共通した手順で行うことができるので、製造工程を簡易にすることができる。
【0015】
ここで、前記第3基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記アライメント部材の前記第2基準マークの位置を記憶し、記憶した前記第2基準マークの位置に前記液体噴射ヘッドの前記第1基準マークを位置決めし、当該液体噴射ヘッドを、前記第2基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記サブキャリッジに固定することが好ましい。これにより、アライメント部材から第2基準マークの位置を得たあとは、アライメント部材を介さずに液体噴射ヘッドの第1基準マークの位置決めを行えるので、作業性がよい。
【0016】
また、前記アライメント部材は、第2基準マークが設けられたガラス基板であり、前記第3基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記アライメント部材の前記第2基準マークと、前記第2基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記サブキャリッジに配置された前記液体噴射ヘッドの第1基準マークとを、前記アライメント部材側から二焦点顕微鏡で撮像し、これらの前記第1基準マーク及び前記第2基準マークを一致させて前記液体噴射ヘッドを前記サブキャリッジに固定することが好ましい。これにより、二焦点顕微鏡により、第1基準マーク及び第2基準マークのそれぞれに焦点が合った鮮明な画像が得られるので、これらの画像を用いて、これらの第1基準マーク及び第2基準マークの位置決めを精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】インクジェット式記録装置の概略構成図である。
【図2】ヘッドユニットの上面図である。
【図3】ヘッドユニットの底面図である。
【図4】図2におけるA−A線断面図である。
【図5】図2におけるB−B線断面図である。
【図6】記録ヘッドの斜視図である。
【図7】偏心カムを有する角度調整レバーの斜視図である。
【図8】角度調整機構の動作を説明する概略断面図である。
【図9】角度調整機構の動作を説明する概略平面図である。
【図10】本実施形態に係る製造方法に用いる治具の平面図及び側面図である。
【図11】インクジェット式記録装置の製造方法を示す平面図及び側面図である。
【図12】インクジェット式記録装置の製造方法を示す平面図及び側面図である。
【図13】インクジェット式記録装置の製造方法を示す平面図及び側面図である。
【図14】実施形態2に係る製造方法を示す平面図及び要部拡大図である。
【図15】実施形態2に係る製造方法を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
〈実施形態1〉
図1は、インクジェット式記録装置の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置であるインクジェット式記録装置1は、メインキャリッジ10を備える。メインキャリッジ10は、中空箱体状の部材であり、内部空間内には、詳細は後述するが、液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を複数有するヘッドユニット(図示せず)が内部に搭載されている。
【0019】
ヘッドユニットが搭載されたメインキャリッジ10は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5の軸方向に移動自在に設けられている。そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してメインキャリッジ10に伝達されることで、メインキャリッジ10はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙装置等により給紙された紙等の被記録媒体S(被噴射媒体)がプラテン8上を搬送されるようになっている。すなわち、メインキャリッジ10は、被記録媒体Sの送り方向に交差する方向であるキャリッジ軸5の軸方向(以下、主走査方向)に往復移動する。
【0020】
また、特に図示しないが、メインキャリッジ10には、内部に搭載されたヘッドユニットにインクを供給するためのインク供給チューブと、駆動信号等の信号を供給するための信号ケーブルが接続されている。その他、インクジェット式記録装置1には、図示しないが、インクを貯留したインクカートリッジ(液体貯留手段)が着脱可能に取り付けられるカートリッジ装着部が設けられている。
【0021】
図2は、メインキャリッジに搭載されたヘッドユニットの上面図であり、図3は、メインキャリッジに搭載されたヘッドユニットの底面図であり、図4は、図2におけるA−A線断面図であり、図5は、図2におけるB−B線断面図である。なお、図2は、キャリッジカバー12を取り外した状態である。
【0022】
メインキャリッジ10は、キャリッジ本体11と、このキャリッジ本体11の上部開口を塞ぐキャリッジカバー12とからなり、上下に分割可能な中空箱体状の部材である。キャリッジ本体11とキャリッジカバー12とから構成される内部空間には、後述するヘッドユニット40(本発明における液体噴射ヘッドユニットの一種)およびヘッドユニット40の上部に接続される流路部材(特に図示せず)が搭載されている。
【0023】
キャリッジ本体11は、略矩形状の底板部11aと、当該底板部11aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した側壁部11bとを備えている。また、底板部11aの側壁部11bよりも内側には、側壁部11bよりも高さが低い載置部11cが設けられている。また、底板部11aには、底部開口13が開設されている。
【0024】
また、メインキャリッジ10(キャリッジ本体11)には、サブキャリッジ20のメインキャリッジ10(キャリッジ本体11)に対する角度を調整する角度調整機構70が取り付けられている。角度調整機構70は、底板部11aに立設した回動軸71と、記録ヘッド30の並設方向(図2の左右方向)を軸として回動する偏心カム72を有する角度調整レバー73とから構成されている。
【0025】
さらに、本実施形態では、角度調整機構70は、メインキャリッジ10に設けられた第1基準部としても機能する。第1基準部は、後述するサブキャリッジ20のキャリッジ本体11に対する取り付け位置を規定する基準となる。角度調整機構70の詳細やメインキャリッジ10に対するサブキャリッジ20の取り付けについては後述する。
【0026】
ヘッドユニット40は、複数の記録ヘッド30等を一体化したものであり、複数の記録ヘッド30と、これらの記録ヘッド30が所定位置に位置決めされた状態で複数並列に取り付けられるサブキャリッジ20とから構成されている。本実施形態では、ヘッドユニット40は、サブキャリッジ20に取り付けられた5つの記録ヘッド30を有している。もちろん、記録ヘッド30の個数は5つに限定されない。
【0027】
サブキャリッジ20は、略中央部に矩形状の開口部21を有し、平面視で略長方形状の部材である。サブキャリッジ20には、複数の記録ヘッド30が搭載される。具体的には、記録ヘッド30が開口部21に挿通され、記録ヘッド30に取り付けられたスペーサー34(図6参照)が開口部21の四方の外周を形成する外枠部の裏面側(記録媒体に対向する側)に固定される。なお、各記録ヘッド30は、ノズル形成面33と被記録媒体との間隔が等しくなるようにスペーサー34を介してサブキャリッジに固定されている。
【0028】
サブキャリッジ20には、次のように記録ヘッド30が配置されている。サブキャリッジ20は、その長手方向を被記録媒体に対する主走査方向とする。図2及び図3には、主走査方向がX軸方向となるように図示してある。また、詳細は後述するが、記録ヘッド30には、複数のノズル31が一方向に列設されたノズル列36(図6参照)が設けられている。記録ヘッド30は、このノズル列36の列設方向がX軸に直交するY軸に平行となるようにサブキャリッジ20に配置されている。さらに、各記録ヘッド30は、各記録ヘッド30の各ノズル列36を構成するノズル31のY軸方向における位置が同じになるようにサブキャリッジ20に配置されている。例えば、図3の各記録ヘッド30の各ノズル列36の最も下端のノズル31は、全てY軸方向の位置が同じとなっており、各ノズル列36の二番目以降のノズル31も同様にY軸方向の位置が同じとなっている。
【0029】
また、サブキャリッジ20には、図2に示すように一辺の一部をV字型に切り欠いた溝部23と、溝部23と同じ一辺側の角部を矩形状に切り欠いた切り欠き部24が設けられている。溝部23と切り欠き部24とは、第2基準部の一例である。溝部23及び切り欠き部24は、サブキャリッジ20を、メインキャリッジ10(キャリッジ本体11)を基準とした所定位置に位置決めする際に用いられる。この位置決めについては後述する。
【0030】
このような構成のヘッドユニット40は、キャリッジ本体11の載置部11cの上面にヘッドユニット40を構成するサブキャリッジ20の外縁部が載置され、底板部11a及び側壁部11bに囲まれた空間内にヘッドユニット40および流路部材(特に図示せず)が収容される。そして、ヘッドユニット40をキャリッジ本体11内に収容した状態では、各記録ヘッド30のノズル形成面33(図6参照)は、底板部11aの底部開口13に露出し、キャリッジ本体11の下方(記録動作時における記録媒体側)にインクを吐出可能となっている。
【0031】
なお、特に図示しないが、ヘッドユニット40の上部(キャリッジカバー12側)には、流路部材が設けられている。流路部材は、各記録ヘッド30のサブタンク37(後述)の流路接続部38にそれぞれ対応した各色のインク分配流路(図示せず)が区画形成されている。また、流路部材には、外部のインクカートリッジのインクを供給するインク供給チューブが接続され、インクカートリッジのインクが前記インク分配流路に供給されるようになっている。さらに、流路部材は、インク分配流路のインクが各記録ヘッド30のサブタンク37に供給されるように構成されている。これにより、インクカートリッジ側からインク供給チューブを通じて送られてきた各色のインクが、流路部材内のインク分配流路にそれぞれ導入され、流路部材のインク分配流路を通ったインクは、各記録ヘッド30のサブタンク37に供給される。
【0032】
図6は、記録ヘッドの斜視図である。記録ヘッド30は、ノズル31に連通する圧力室を含むインク流路を形成する流路ユニットや、圧力室内のインクに圧力変動を生じさせる圧電振動子或いは発熱素子などの圧力発生手段(何れも図示せず)を収容するヘッドケース32を備えている。記録ヘッド30は、インクジェット式記録装置1の制御部側からの駆動信号を圧力発生手段に印加して圧力発生手段を駆動することにより、ノズル31からインクを噴射して記録紙等の記録媒体に着弾させる記録動作を行うように構成されている。
【0033】
記録ヘッド30のノズル形成面33(液体噴射面)には、インクを噴射するノズル31が複数列設されてノズル列36を構成し、このノズル列36がノズル列36に直交する方向に2列並べて形成されている。このノズル31は、第1基準マークとしても機能する。第1基準マークとは、記録ヘッド30をサブキャリッジ20の所定位置に位置決めする際に用いられる。この位置決めについての詳細は後述する。本実施形態では、一方のノズル列36の一端(図6左側)のノズル31と、他方のノズル列36の他端(図6右側)のノズルを第1基準マークMとした。
【0034】
ヘッドケース32は、中空箱体状部材であり、その先端側には、ノズル形成面33を露出させた状態で流路ユニットが固定されている。また、ヘッドケース32には、ノズル形成面33とは反対側(上面側。記録媒体とは反対側)には、流路ユニットにインクを供給するためのサブタンク37が装着されている。
【0035】
サブタンク37は、流路部材からのインクを記録ヘッド30の圧力室側に導入する部材である。また、サブタンク37は、内部の圧力変動に応じてバルブを開閉し、圧力室側へのインクの導入を制御する自己封止機能を有している。このサブタンク37のノズル形成面33とは反対面に、流路部材が接続される流路接続部38が設けられている。また、サブタンク37の内部には、圧力発生手段に駆動信号を供給するための駆動基板(図示せず)が設けられており、各駆動基板に電気的に接続された配線部材(図示せず)がサブタンク37の流路接続部38側にそれぞれ引き出されている。この配線部材が上記の信号ケーブルと接続されることで、当該信号ケーブルを通じてインクジェット式記録装置1の制御部から送られてくる駆動信号等を、駆動基板を介して圧力発生手段側に供給することができる。
【0036】
また、ヘッドケース32の上面側におけるノズル列36に沿った方向の両端部には、側方に向けて突出したフランジ部35がそれぞれ形成されている。このフランジ部35には、スペーサー34がネジ等により着脱可能に固定されている。
【0037】
スペーサー34は、直方体状に形成された合成樹脂等の部材であり、1つの記録ヘッド30に対して、両側のフランジ部35のサブタンク37側の面にそれぞれ1つずつ、合計2つ取り付けられる。また、図5に示すように、スペーサー34には、ナット51が収容される空間部50と空間部50に連通して上下方向に貫通した挿通穴52が設けられている。一方、サブキャリッジ20の開口部21の外枠部には、貫通孔である止着穴22が開設されている。止着穴22と挿通穴52の位置が揃えられ、これらの止着穴22と挿通穴52にネジ53が挿通し、当該ネジ53がナット51に螺合することで、スペーサー34を介して記録ヘッド30がサブキャリッジ20に固定されている。
【0038】
図7は、偏心カムを有する角度調整レバーの斜視図である。図7及び図4に示すように、角度調整機構70は、底板部11aに立設した回動軸71と、偏心カム72を有する角度調整レバー73とから構成されている。
【0039】
角度調整レバー73は、平板状の部材である把持部74と、把持部74の一方面に設けられた軸部75とを有する。軸部75には、軸部75と同軸となるように偏心カム72が設けられている。
【0040】
このような構成の角度調整レバー73は、軸部75の軸方向が、キャリッジ本体11の主走査方向(図2のX軸方向)と平行になるように回動自在にキャリッジ本体11に取り付けられている。
【0041】
回動軸71は、角度調整レバー73の軸部75の略延長線上に位置するように、キャリッジ本体11の底板部11aに立設されている。図2には、回動軸71の方向をZ軸方向としてある。
【0042】
このような構成の角度調整機構70に対して、図2に示すように、サブキャリッジ20が取り付けられている。すなわち、サブキャリッジ20は、溝部23が回動軸71の側面に当接し、切り欠き部24が偏心カム72に当接して配置され、キャリッジ本体11に固定されている。
【0043】
図8は、角度調整機構の動作を説明する概略断面図であり、図9は、角度調整機構の動作を説明する概略平面図である。
【0044】
上述したサブキャリッジ20をキャリッジ本体11に取り付ける際には、サブキャリッジ20に搭載された記録ヘッド30の各ノズル列36がメインキャリッジ10の主走査方向(図2中のX軸方向)に対して所定の角度、例えば直角となるようにする。この角度の調整に際しては、角度調整レバー73を回動させることにより行う。すなわち、サブキャリッジ20の溝部23が回動軸71の側面に当接し、切り欠き部24が偏心カム72に当接する方向にサブキャリッジ20を付勢した状態で、角度調整レバー73を回動させる。
【0045】
角度調整レバー73の回動と共に偏心カム72が回動し、その回動中心から外周面までのカム径が増減する。上述したようにサブキャリッジ20が付勢された状態でカム径が増大すれば、図8に示すように、偏心カム72により切り欠き部24が押圧され、図9に示すように回動軸71を中心としてサブキャリッジ20が時計回りに回動する。角度調整レバー73を回動する量を適宜調整することで、サブキャリッジ20に搭載された記録ヘッド30のノズル列36をメインキャリッジ10の主走査方向に対して直角とすることができる。図示しないが、偏心カム72のカム径が減少すれば、サブキャリッジ20は反時計回りに回動する。
【0046】
このように、角度調整機構70によれば、記録ヘッド30のノズル形成面33に垂直な方向の軸(回動軸71)を中心としてサブキャリッジ20を回動させることができ、サブキャリッジ20に搭載された記録ヘッド30のノズル列36をメインキャリッジ10の主走査方向に対して所定角度とすることができる。
【0047】
ここで、上述した構成のインクジェット式記録装置1の製造方法について説明する。図10は、インクジェット式記録装置1を製造する際に用いる治具の平面図及び側面図である。
【0048】
治具100は、平板状の基台部101と、基台部101上に設けられた円柱部102及び凸部103とを備えている。円柱部102及び凸部103は、位置決め部の一例である。
【0049】
円柱部102は、円柱状の部材であり、キャリッジ本体11に設けられた回動軸71と同形状である。詳細は後述するが、円柱部102は、サブキャリッジ20に設けられた溝部23が位置決めされる部材である。
【0050】
凸部103は、直方体状の部材である。詳細は後述するが、凸部103は、サブキャリッジ20に設けられた切り欠き部24が位置決めされる部材である。
【0051】
また、治具100は、記録ヘッド30の位置調整に用いるマイクロメータヘッド104を備えている。本実施形態では、4つのマイクロメータヘッド104がそれぞれ±X方向、±Y方向に押圧可能に配置されている。
【0052】
基台部101には、直方体状の載置部105が4つ設けられ、各載置部105の上面には、サブキャリッジ20が載置される。また、各載置部105は、基台部101の上面から各載置部105の上面までの高さが同一となるように形成されている。
【0053】
治具100の上方には、CCDカメラなどの撮像手段106が配置されている。撮像手段106は、記録ヘッド30の第1基準マークM(ノズル31)や後述するアライメントマスクの第2基準マークNを撮像するために用いられる。
【0054】
図11〜図13は、インクジェット式記録装置の製造方法を示す平面図及び側面図である。
【0055】
図11に示すように、治具100にアライメント部材の一例であるアライメントマスク110を配置する。
【0056】
アライメントマスク110は、第3基準部と第2基準マークNとが設けられたガラス基板からなる。第3基準部の一例として、アライメントマスク110には、一辺の一部をV字型に切り欠いた溝部113と、溝部113と同じ一辺側の角部を矩形状に切り欠いた切り欠き部114が設けられている。
【0057】
また、アライメントマスク110には、ノズル31の開口径と同程度の大きさの第2基準マークNが、各記録ヘッド30に対応して複数設けられている。第3基準部(溝部113及び切り欠き部114)に対する第2基準マークNの相対位置は、サブキャリッジ20の第2基準部(溝部23及び切り欠き部24)を基準として記録ヘッド30が配置されるべき相対位置に対応して設けられている。本実施形態では、第2基準マークNに記録ヘッド30の第1基準マークMを位置決めすると、各記録ヘッド30のノズル列36がY方向に平行となり、各記録ヘッド30が等間隔で配置されるように、第2基準マークNを設けた。
【0058】
このようなアライメントマスク110を4つの載置部105の上面に載置する。そして、円柱部102(位置決め部)に溝部113(第3基準部)を位置決めし、凸部103(位置決め部)に切り欠き部114(第3基準部)を位置決めする。溝部113が円柱部102に位置決めされた状態とは、溝部113の内面が円柱部102の外周面に当接した状態をいう。また、切り欠き部114が凸部103に位置決めされた状態とは、切り欠き部114の側面が凸部103の一方面に当接した状態をいう。
【0059】
そして、撮像手段106で第2基準マークNを撮像するとともに、各第2基準マークNの位置を記憶する。例えば、図11(a)の平面視において任意の場所を原点とし、各第2基準マークNのX方向及びY方向の座標を記憶する。
【0060】
次に、図12に示すように、アライメントマスク110を治具100から外す。そして、4つの載置部105の上面に、サブキャリッジ20を載置するとともに、円柱部102(位置決め部)に溝部23(第2基準部)を位置決めし、凸部103(位置決め部)に切り欠き部24(第2基準部)を位置決めする。同図では、サブキャリッジ20の主走査方向がX軸方向となるように図示してある。なお、溝部23が円柱部102に位置決めされた状態とは、溝部23の内面が円柱部102の外周面に当接した状態をいう。また、切り欠き部24が凸部103に位置決めされた状態とは、切り欠き部24の側面が凸部103の一方面に当接した状態をいう。
【0061】
そして、サブキャリッジ20を円柱部102及び凸部103側に付勢し、クランプなどでその状態を保持する。
【0062】
次に、サブキャリッジ20に、一番目の記録ヘッド30を仮固定する。すなわち、記録ヘッド30のスペーサー34をサブキャリッジ20の開口部21の外枠部に載置し、サブキャリッジ20に設けられた止着穴22にスペーサー34の挿通穴52(図5参照)の位置を揃え、これらの止着穴22と挿通穴52にネジ53を挿通し、当該ネジ53をナット51に螺合する。このネジ53とナット51は、スペーサー34がサブキャリッジ20に完全に締結されない程度に螺合させる。すなわち、記録ヘッド30がサブキャリッジ20に対してサブキャリッジの止着穴22とネジ53のガタ分、XY平面で多少移動できる程度に仮固定し仮位置決めする。
【0063】
次に、撮像手段106で、記録ヘッド30の第1基準マークM(ノズル31)を撮像しながら、当該第1基準マークMの位置が、先に記憶した第2基準マークNの位置となるように記録ヘッド30の位置をマイクロメータヘッド104で調整する。本実施形態では、第1基準マークMは2つであるので、2つの第1基準マークMの位置が、これに対応する2つの第2基準マークNの位置となるように記録ヘッド30の位置を調整する。
【0064】
そして、記録ヘッド30が位置決めされたならば、当該記録ヘッド30のスペーサー34とサブキャリッジ20との接触面に瞬間接着剤を注入して仮固定する。そして、止着穴22とスペーサー34の挿通穴52とに挿通し、ナット51に螺合させてあったネジ53をさらにナット51に螺合して本固定する。
【0065】
その後、図13に示すように、二番目以降の記録ヘッド30についても、一番目の記録ヘッド30と同様にサブキャリッジ20に固定することで、サブキャリッジ20に複数の記録ヘッド30が位置決めされて固定されたヘッドユニット40が作製される。
【0066】
以降、特に図示しないが、サブキャリッジ20の溝部23及び切り欠き部24をキャリッジ本体11の回動軸71及び偏心カム72に位置決めして、サブキャリッジ20をキャリッジ本体11に固定する。具体的には、治具100からサブキャリッジ20を取り外し、図4に示すように、キャリッジ本体11の載置部11cにサブキャリッジ20を載置する。そして、図2に示すように、サブキャリッジ20の溝部23が回動軸71に当接し、切り欠き部24が偏心カム72に当接するようにサブキャリッジ20を付勢し、図示しないネジなどでキャリッジ本体11に固定する。なお、このとき、偏心カム72は、サブキャリッジ20の長手方向が被記録媒体に対する主走査方向(X軸方向)となるような角度としておく。
【0067】
そして、サブキャリッジ20(ヘッドユニット40)が固定されたキャリッジ本体11にキャリッジカバー12を取り付けてメインキャリッジ10を構成し、メインキャリッジ10をキャリッジ軸5に移動自在に取り付ける。そして、メインキャリッジ10にその内部のヘッドユニット40にインクを供給するためのインク供給チューブや、駆動信号等の信号を供給するための信号ケーブルを接続することで、インクジェット式記録装置1が作製される。
【0068】
以上に説明したように、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の製造方法では、第2基準マークNが設けられたアライメントマスク110を用いて、記録ヘッド30の第1基準マークMを位置決めしてサブキャリッジ20に固定した。本発明でいう第2基準マークNに第1基準マークMを位置決めするとは、直接的に第1基準マークMと第2基準マークNの位置を重ねるような場合のみならず、本実施形態のように、第2基準マークNからその位置を得て、その位置に第1基準マークMを合わせる場合も含む。
【0069】
このようなアライメントマスク110の第3基準部(溝部113及び切り欠き部114)と、サブキャリッジ20の第2基準部(溝部23及び切り欠き部24)とを、同じ位置決め部(円柱部102及び凸部103)に位置決めした。すなわち、第1基準マークMの相対位置の基準となる第2基準部と、第2基準マークNの相対位置の基準となる第3基準部とを、図11及び図12に示すような平面視において、同じ位置に配置したことになる。
【0070】
そして、アライメントマスク110の第2基準マークNに第1基準マークMを位置決めして記録ヘッド30をサブキャリッジ20に固定したので、第1基準マークMの第2基準部に対する相対位置は、第2基準マークNの第3基準部に対する相対位置と同じとなる。本実施形態では、第2基準マークNに記録ヘッド30の第1基準マークMを位置決めすると、各記録ヘッド30のノズル列36がY方向に平行となり、各記録ヘッド30が等間隔で配置されるように、第2基準マークNを設けたので、この通りの配置で各記録ヘッド30がサブキャリッジ20に位置決めされている。
【0071】
また、本実施形態に係る製造方法では、アライメントマスク110に合わせて複数の記録ヘッド30を位置決めし、サブキャリッジ20に固定した。すなわち、記録ヘッド30を位置決めし、固定する手順は、全ての記録ヘッド30に共通した手順で行うことができる。例えば、一番目の記録ヘッド30については或る方法で位置決めしてサブキャリッジ20に固定し、二番目以降の記録ヘッド30については一番目の記録ヘッド30を基準として位置決めするように、記録ヘッド30ごとに異なる位置決め方法を用いる場合が考えられる。このような位置決め方法に対して、本製造方法は、同じ手順で複数の記録ヘッド30の位置決めを行えるので、製造工程を簡易にすることができる。
【0072】
さらに、アライメントマスク110から第2基準マークNの位置を得たあとは、アライメントマスク110を治具100から取り外した。これにより、アライメントマスク110の配置に制約されることなく、記録ヘッド30の第1基準マークMの位置決めを行うことができ、作業性が向上する。
【0073】
また、図12に示したように、円柱部102及び凸部103(位置決め部)に位置決めされた溝部23及び切り欠き部24(第2基準部)を基準として、各記録ヘッド30をサブキャリッジ20に位置決めした。このようなサブキャリッジ20を、上述したように、治具100から取り外し、溝部23及び切り欠き部24を回動軸71及び偏心カム72に位置決めすると、各記録ヘッド30のキャリッジ本体11に対する位置は、回動軸71及び偏心カム72(第1基準部)に位置決めされた溝部23及び切り欠き部24(第2基準部)を基準とした位置となる。
【0074】
すなわち、第2基準部である溝部23及び切り欠き部24を介して、記録ヘッド30は第1基準部である回動軸71及び偏心カム72を基準として位置決めされたことになる。
【0075】
本実施形態では、記録ヘッド30は、溝部23及び切り欠き部24を基準とし、ノズル列36がサブキャリッジ20の主走査方向に直交する方向(Y軸方向)となるようにサブキャリッジ20に取り付けたので、記録ヘッド30のノズル列36は、キャリッジ本体11の回動軸71及び偏心カム72を基準とし、キャリッジ本体11の主走査方向に直交している。
【0076】
このように、記録ヘッド30のノズル列36は、主走査方向に対して直交するような所定位置に精度良く配置されるので、インクジェット式記録装置1は、インクの吐出精度が向上したものとなる。
【0077】
また、治具100の円柱部102及び凸部103を基準とした記録ヘッド30の相対位置と、回動軸71及び偏心カム72を基準とした記録ヘッド30の相対位置とには、寸法公差により若干ずれが生じる場合もある。この場合は、各ノズル列36がキャリッジ本体11の主走査方向に直交するように、角度調整機構70により当該角度を調整し、サブキャリッジ20をキャリッジ本体11に固定する。
【0078】
この場合においては、角度調整機構70による調整の範囲は、上述した寸法公差によるノズル列36のずれを調整する程度であるので、角度調整機構70による角度の調整の範囲を大きくする必要が無い。例えば、偏心カム72のカム径を大きくするなど、角度調整機構70を大きくする必要が無い。したがって、角度調整機構70の大きさを最小限にすることができ、ヘッドユニット40及び角度調整機構70を収納するメインキャリッジ10の大きさを最小限とすることができ、インクジェット式記録装置1の大型化を抑えることができる。
【0079】
〈実施形態2〉
実施形態1では、アライメントマスク110の第2基準マークNの位置を記憶し、その記憶した第2基準マークNの位置に記録ヘッド30の第1基準マークMを位置決めしたが、このような態様に限定されない。図14は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の製造方法を示す平面図及び側面図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0080】
図示するように、治具100には、サブキャリッジ20が配置されるとともに、そのサブキャリッジ20の上方にアライメントマスク110が配置されている。
【0081】
サブキャリッジ20は、実施形態1と同様に、載置部105に載置されるとともに、溝部23が円柱部102に位置決めされ、切り欠き部24が凸部103に位置決めされている。
【0082】
アライメントマスク110は、サブキャリッジ20よりも高く突出した載置部109に載置され、溝部113が円柱部102に位置決めされ、切り欠き部114が凸部103に位置決めされている。
【0083】
このように、アライメントマスク110の第3基準部(溝部113及び切り欠き部114)と、サブキャリッジ20の第2基準部(溝部23及び切り欠き部24)とを、同じ位置決め部(円柱部102及び凸部103)に位置決めした。すなわち、第1基準マークMの相対位置の基準となる第2基準部と、第2基準マークNの相対位置の基準となる第3基準部とを、平面視において同じ位置に配置し、また、Z方向で異なる位置に配置した。
【0084】
また、サブキャリッジ20には、実施形態1と同様に、記録ヘッド30が仮固定されている。
【0085】
さらに、治具100の上方には、第1基準マークM及び第2基準マークNを撮像する二焦点顕微鏡120及び撮像手段106が設けられている。
【0086】
図15を用いて、第1基準マークMと第2基準マークNとの位置決めについて説明する。図15は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の製造方法を示す要部を拡大した側面図である。
【0087】
二焦点顕微鏡120は光軸Lを共有する一つの光学系121と、他の光学系122とを有する。光軸Lはアライメントマスク110及び記録ヘッド30側に向けられ、アライメントマスク110の表面及び記録ヘッド30のノズル31が設けられた表面(液体噴射面)に垂直となっている。
【0088】
また、対物レンズ123は、アライメントマスク110及び記録ヘッド30の方向に光軸Lが向けられた状態で鏡筒124に収納してあり、この鏡筒124が筐体125に固定されている。筐体125内には2個のビームスプリッタ126,127、2個のミラー128,129及び2個の焦点レンズ130,131が収納してある。
【0089】
光学系121はビームスプリッタ126,ミラー128,焦点レンズ130及びビームスプリッタ127で形成され、ビームスプリッタ126を透過した光がミラー128で反射され、焦点レンズ130を通った後、ビームスプリッタ127を介して外部に至る光路(図中に点線で示す)を有する。
【0090】
光学系122はビームスプリッタ126,焦点レンズ131,ミラー129及びビームスプリッタ127で形成され、ビームスプリッタ126で反射された光が焦点レンズ131を通った後、ミラー129及びビームスプリッタ127で反射されて外部に至る光路(図中に点線で示す)を有する。
【0091】
CCDなどの撮像手段106は、光学系121,122を介して第1基準マークMと第2基準マークNとの画像を同時に取り込んで再生処理する。ここで、第1基準マークMは焦点レンズ130の焦点位置を調整することにより、また第2基準マークNは焦点レンズ131の焦点位置を調整することにより撮像手段106上にそれぞれ合焦画像を結像させる。
【0092】
このような二焦点顕微鏡120と撮像手段106を用いて、第1基準マークM及び第2基準マークNに個別に焦点が合った鮮明な画像を得て、これらの画像が重なるよう記録ヘッド30の位置を、図示しないマイクロメータヘッドなどで調整することによって第1基準マークMと第2基準マークNとの位置決めを行う。
【0093】
このようにして位置決めした記録ヘッド30をサブキャリッジ20に本固定してヘッドユニット40が作製される。以降、実施形態1と同様にして、ヘッドユニット40をメインキャリッジ10に取り付け、本実施形態に係るインクジェット式記録装置1が作製される。
【0094】
以上に説明したように、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の製造方法によれば、実施形態1と同様に、記録ヘッド30を精度良くサブキャリッジ20の所定位置に配置することで、インク滴の吐出精度が向上し、かつ大型化を抑えたインクジェット式記録装置を製造することができる。また、二焦点顕微鏡120により、第1基準マークM及び第2基準マークNのそれぞれに焦点が合った鮮明な画像が得られるので、これらの画像を用いて、これらの第1基準マークM及び第2基準マークNの位置決めを精度よく行うことができる。
【0095】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の実施形態を説明したが、勿論、本発明は上述したものに限定されるものではない。
【0096】
実施形態1〜実施形態2では、記録ヘッド30をサブキャリッジ20に位置決めする際には、治具100を用いたが、このような治具100を用いる場合に限定されない。すなわち、サブキャリッジ20の第2基準部と、アライメントマスク110の第3基準部とを共通の位置決め部材に位置決めし、第2基準マークNに第1基準マークMを位置決めすることができるものであれば、上述した治具100のような態様に限定されない。
【0097】
また、予め記録ヘッド30をサブキャリッジ20にネジ53で仮止めし、その後、サブキャリッジ20に記録ヘッド30を位置決めして固定したが、必ずしもネジ53による記録ヘッド30の仮止めは必須ではない。例えば、サブキャリッジ20に記録ヘッド30を位置決めして接着剤で仮固定し、その後にネジ53により本固定を行ってもよい。
【0098】
角度調整機構70を構成する回動軸71及び偏心カム72は第1基準部を兼ねていたが、別であってもよい。すなわち、第1基準部は、キャリッジ本体11(メインキャリッジ10)の任意の部分、若しくはこれに取り付けられた部材であってもよい。さらに、角度調整機構70は偏心カム72のカム径の増大によるものに限らず、サブキャリッジ20のメインキャリッジ10に対する角度(図2及び図3のXY平面における角度)を調整できるものであればよい。
【0099】
また、記録ヘッド30は、ノズル列36がメインキャリッジ10(サブキャリッジ20)の主走査方向と直交するようにサブキャリッジ20に位置決めされたが、これに限らず、ノズル列36と主走査方向との角度は任意であってもよい。
【0100】
記録ヘッド30に設けられた第1基準マークMとして、ノズル31を用いたが、これに限らず、記録ヘッド30の任意の部位を第1基準マークMとしてもよい。
【0101】
上述した実施形態1及び2では、インクジェット式記録装置1として、被噴射媒体に対してメインキャリッジ10(ヘッドユニット40)を主走査方向に移動させながら印刷を行う、シリアル型のインクジェット式記録装置を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、メインキャリッジ10(ヘッドユニット40)を固定し、被噴射媒体を搬送するだけで印刷を行う、いわゆるライン型のインクジェット式記録装置についても本発明を適用することができる。
【0102】
なお、上述した実施形態においては、本発明の液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを説明したが、液体噴射ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。本発明は、広く液体噴射ヘッドの全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射するものにも勿論適用することができる。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0103】
1 インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 メインキャリッジ、 11 キャリッジ本体、 12 キャリッジカバー、 20 サブキャリッジ、 23 溝部、 24 切り欠き部、 30 記録ヘッド、 31 ノズル、 33 ノズル形成面、 34 スペーサー、 36 ノズル列、 40 ヘッドユニット、 70 角度調整機構、 71 回動軸、 72 偏心カム、 100 治具、 102 円柱部、 103 凸部、 106 撮像手段、 110 アライメントマスク、 113 溝部、 114 切り欠き部、 120 二焦点顕微鏡、 M 第1基準マーク、 N 第2基準マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が噴射される被噴射媒体に対して相対移動するメインキャリッジと、
液体を吐出するノズルを有する液体噴射ヘッドが複数搭載されたサブキャリッジとを備え、
前記サブキャリッジは、前記メインキャリッジに設定された第1基準部に、当該サブキャリッジに設定された第2基準部が位置決めされて、当該メインキャリッジに取り付けられ、
前記メインキャリッジには、前記ノズルが設けられた液体噴射面に垂直な方向を回動軸として、前記サブキャリッジを回動させることで前記メインキャリッジに対する前記サブキャリッジの角度を調整する角度調整機構が設けられている液体噴射装置の製造方法であって、
第3基準部、及び前記液体噴射ヘッドに設けられた第1基準マークが位置決めされる第2基準マークを有するアライメント部材と、前記第2基準部及び前記第3基準部が位置決めされる位置決め部を有する治具とを用い、
前記第3基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記アライメント部材の前記第2基準マークに、前記液体噴射ヘッドの前記第1基準マークを位置決めし、
当該液体噴射ヘッドを、前記第2基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記サブキャリッジに固定し、
前記液体噴射ヘッドが固定された前記サブキャリッジの前記第2基準部を前記メインキャリッジの前記第1基準部に位置決めして前記サブキャリッジを前記メインキャリッジに取り付ける
ことを特徴とする液体噴射装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射装置の製造方法において、
前記第3基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記アライメント部材の前記第2基準マークの位置を記憶し、
記憶した前記第2基準マークの位置に前記液体噴射ヘッドの前記第1基準マークを位置決めし、当該液体噴射ヘッドを、前記第2基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記サブキャリッジに固定する
ことを特徴とする液体噴射装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載する液体噴射装置の製造方法において、
前記アライメント部材は、第2基準マークが設けられたガラス基板であり、
前記第3基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記アライメント部材の前記第2基準マークと、前記第2基準部が前記位置決め部に位置決めされた前記サブキャリッジに配置された前記液体噴射ヘッドの第1基準マークとを、前記アライメント部材側から二焦点顕微鏡で撮像し、
これらの前記第1基準マーク及び前記第2基準マークを一致させて前記液体噴射ヘッドを前記サブキャリッジに固定する
ことを特徴とする液体噴射装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−1016(P2013−1016A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135715(P2011−135715)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】