説明

液体噴射装置及び重ね合わせ方法

【課題】位置制御にてPFモータが駆動している場合であっても、重ね合わせ処理を行うことにより印刷時間全体の時間を短縮し、処理の高速化を図る液体噴射装置及び重ね合わせ方法を提供する。
【解決手段】記憶媒体の搬送のために、目標位置から所定の距離より手前までを速度制御で駆動し、続いて目標位置までを位置制御に切り替えて駆動するPFモータ10と、キャリッジを駆動するCRモータ9と、キャリッジの起動開始タイミングが、PFモータ10の速度制御中か位置制御中かを判定し、判定結果によって、異なる時間算出方法を用いて前記キャリッジの起動開始タイミングを算出し、算出された起動開始タイミングとなったとき、CRモータ9を駆動してキャリッジの起動を開始し、記憶媒体の搬送動作とキャリッジ動作とを重ね合わせるCPU21と、を備える液体噴射装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置及び重ね合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタなどの印刷装置では印刷時の処理時間短縮のため、紙送り動作とキャリッジ動作とを重ね合わせる、重ね合わせ処理が行われていた。重ね合わせ処理は、まず、1パス分の印字処理が終了すると紙送りモータ(PFモータ)を起動させて紙送りを行う。その後、PFモータの駆動が終了する前に、所定のタイミングでキャリッジモータ(CRモータ)を起動させてキャリッジを移動させる。これにより、紙送り終了と同時に印字処理を行うことができる。従って、紙送りの終了後にCRモータを起動させてキャリッジの移動を行う場合と比較して、印刷時の処理時間の短縮を図ることができる。
【0003】
このような重ね合わせ処理に関し、特許文献1に記載された技術では、キャリッジの駆動開始から印刷開始までの見積時間を算出している。キャリッジが起動を開始して、この見積時間後にPFモータが停止すれば、紙送り終了とほぼ同時に印刷を開始可能になる。よって、キャリッジの起動開始タイミングとして見積時間を算出している。そして、見積時間に対応するPFモータのモータ駆動数を算出し、PFモータの残りモータ駆動数が算出したモータ駆動数となったときにCRモータを起動している。このとき、減速するときの目標値となる速度テーブルを用いた速度制御にてPFモータを駆動しているため、時間とモータ駆動数の関係が確保されている。なお、速度テーブルは、PFモータの駆動位置とそのときの目標周期との関係を示すテーブルである。
【特許文献1】特開2006−212923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、目標位置の近傍より手前では速度制御で駆動し、目標位置近傍で位置制御に切り替えてPFモータを駆動する方法が考案されている。速度制御では、位置毎に定められた目標速度と現在速度の差を偏差としてフィードバック制御(PID制御)している。一方、位置制御では、目標位置と現在位置と現在速度とを基に得られる偏差に従いPID制御している。よって、位置制御では時間からモータ駆動数を算出することができない。このため、PFモータが位置制御に切り替わってから一定時間経過後にCRモータを起動しているため、重ね合わせ処理を行うことができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、位置制御にてPFモータが駆動している場合であっても、重ね合わせ処理を行うことにより印刷時間全体の時間を短縮し、処理の高速化を図る液体噴射装置及び重ね合わせ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、記憶媒体の搬送のために、目標位置から所定の距離より手前までを速度偏差により制御を行う速度制御で駆動し、続いて目標位置までを、位置偏差により制御を行う位置制御に切り替えて駆動する搬送駆動手段と、キャリッジを駆動するキャリッジ駆動手段と、前記キャリッジの起動開始タイミングが、前記搬送駆動手段の速度制御中か位置制御中かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果によって、異なる時間算出方法を用いて前記キャリッジの起動開始タイミングを算出する算出手段と、前記算出手段により算出された前記起動開始タイミングとなったとき、前記キャリッジ駆動手段を駆動して前記キャリッジの起動を開始し、前記記憶媒体の搬送動作とキャリッジ動作とを重ね合わせる制御手段と、を備えることを特徴とする液体噴射装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、記憶媒体の搬送のために、目標位置から所定の距離より手前までを速度偏差により制御を行う速度制御で駆動し、続いて目標位置までを、位置偏差により制御を行う位置制御に切り替えて駆動する搬送駆動手段と、キャリッジを駆動するキャリッジ駆動手段と、を備える液体噴射装置における重ね合わせ方法において、前記キャリッジの起動開始タイミングが、前記搬送駆動手段の速度制御中か位置制御中かを判定するステップと、判定結果によって、異なる時間算出方法を用いて前記キャリッジの起動開始タイミングを算出するステップと、算出された前記起動開始タイミングとなったとき、前記キャリッジ駆動手段を駆動して前記キャリッジの起動を開始し、前記記憶媒体の搬送動作とキャリッジ動作とを重ね合わせるステップと、を有することを特徴とする重ね合わせ方法である。
【0008】
この発明によれば、キャリッジの起動開始タイミングが搬送駆動手段(PFモータ)の速度制御中か位置制御中かで、キャリッジの起動開始タイミングの時間算出方法が異なるため、それぞれの制御に最適な時間算出方法にてキャリッジ起動開始タイミングを算出することができる。このため、PFモータが位置制御にて駆動している場合であっても、重ね合わせ処理を行うことにより印刷時間全体の時間を短縮し、処理の高速化を図ることができる。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の液体噴射装置において、前記判定手段は、停止状態の前記キャリッジが前記キャリッジ駆動手段によって起動を開始し印刷開始位置に到達して印刷を始めるまでに要する見積時間が、前記搬送駆動手段の制御が位置制御に切り替わった時点から搬送を終えて停止するまでに要する所定の設定時間より小さい場合に、前記キャリッジの起動開始タイミングが前記搬送駆動手段の位置制御中であると判定し、前記算出手段は、前記キャリッジの起動開始タイミングが前記搬送駆動手段の位置制御中であれば、前記設定時間と前記見積時間の減算値に基づいて割込み回数を生成し、前記制御手段は、前記キャリッジの起動開始タイミングが前記搬送駆動手段の位置制御中であれば、前記搬送駆動手段が位置制御に切り替わってから行われた割込み処理の回数が前記割込み回数を超えると、前記起動開始タイミングとなったと判定することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、キャリッジの起動開始タイミングが搬送駆動手段(PFモータ)の位置制御中であれば、割込み回数によりキャリッジの起動開始タイミングを算出する。そして、搬送駆動手段が位置制御に切り替わってから行われた割込み処理の回数が算出した割込み回数を超えると、キャリッジの起動を開始する。また、キャリッジの起動開始タイミングは、設定時間と見積時間の減算値であるため、紙送り終了と同時に印字処理を行うことができる。このため、PFモータが位置制御にて駆動している場合であっても、重ね合わせ処理を行うことにより印刷時間全体の時間を短縮し、処理の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による印刷装置1(液体噴射装置)の構成を示す斜視図である。
この図に示すように、印刷装置1はキャリッジ2を備える。キャリッジ2は、着脱可能に設けられたインクカートリッジ7とインクカートリッジ7からのインクが供給される記録ヘッド6とから構成される。記録ヘッド6には複数のノズルを備え、このノズルから記録媒体の一例である印刷用紙8にインクが吐出され、印刷が行われる。
【0012】
また、印刷装置1には、駆動プーリ3と従動プーリ4、これらのプーリ3、4により張設されたタイミングベルト5、及びキャリッジ駆動手段としてのキャリッジモータ(CRモータ)9を備える。キャリッジ2はタイミングベルト5に取り付けられ、CRモータ9の回転駆動により駆動プーリ3が回転してタイミングベルト5にその駆動力が伝達されることによって、キャリッジ2が主走査方向に移動する。
【0013】
更に、印刷装置1にはキャリッジ2の移動速度、移動方向、位置等を検出するためのリニアエンコーダ13が配設される。リニアエンコーダ13は、印刷装置1内面の側壁に架
設された被検出用テープ14とキャリッジ2の背面に固着されたキャリッジ検出センサ15とから構成される。被検出用テープ14には無数のスリット14aが一定間隔で形成され、キャリッジ検出センサ15がこのスリット14aを検出することでリニアエンコーダ13はキャリッジ2の移動速度、位置等を検出する。
【0014】
また、印刷装置1の下部側端には搬送駆動手段としての紙送りモータ(PFモータ)10と、ロータリーエンコーダ16とを備える。PFモータ10は、各ローラを回転させることで印刷用紙8を印刷装置1内に供給させ、副走査方向に紙送りを行う。ロータリーエンコーダ16は、印刷用紙8の紙送り速度、移動方向、位置等を検出するためのもので、回転盤に被検出テープが設けられている以外はリニアエンコーダ13と同様である。
【0015】
図2は、本実施形態における印刷装置1の電気的な構成を示したブロック図である。印刷装置1はCPU21、ASIC22、DCユニット23、PROM24、RAM25、EEPROM26、インターフェース(IF)27、及び各ドライバ29、30、31を備える。また、印刷装置1はホストコンピュータ28と接続される。
【0016】
判定手段、算出手段、制御手段としてのCPU21は、RAM25に記憶されたプログラムを実行することで、プリンタ1の装置全体を制御する。CPU21は、ホストコンピュータ28からIF27及びASIC22を介して取り込んだ印刷データに基づき、記録ヘッド6の印刷スケジュールを設定する。この印刷スケジュールに従い、CPU21はヘッドドライバ29を介して記録ヘッド6を駆動制御する。
【0017】
また、CPU21は印刷データに基づいて、CRモータ9及びPFモータ10の起動や走行スケジュールを設定する。設定された走行スケジュール等は指令信号としてCPU21からDCユニット23に出力される。
【0018】
DCユニット23は、この指令信号に基づきCRモータドライバ30を介してCRモータ9を駆動制御する機能と、PFモータドライバ31を介してPFモータ10を駆動制御する機能とを有する。なお、DCユニット23はキャリッジ2が駆動される際にリニアエンコーダ13のキャリッジ検出センサ15によって検出されたパルス信号が入力され、キャリッジ2の移動速度等を算出する。また、DCユニット23は印刷用紙8の紙送りの際にロータリーエンコーダ16からパルス信号が入力され、PFモータ10の駆動速度や、印刷用紙8の紙送り速度等を算出する。DCユニット23は算出されたこれらの値に基づいて各モータ9、10が所定の回転速度等に至るよう各モータ9、10を制御する。
【0019】
次に、重ね合わせ処理の詳細について説明する。
図3は、本実施形態におけるCRモータ9及びPFモータ10の駆動速度を示す波形図である。横軸は時間で、縦軸は駆動速度を示す。まず、CRモータ9の通電開始から印字位置までにかかる見積時間Aについて説明する。
【0020】
この図に示すように、ある時刻xの時点でDCユニット23によってCRモータ9の駆動が開始される。そして、駆動開始から所定の見積時間A後に記録ヘッド6からインクが吐出され、印字が行われる。この所定の見積時間Aは、そのパスで印刷すべき印刷データの幅によって異なる。ただし印刷可能な最大の範囲を印刷する場合には、印刷装置1の構造上の仕様により予め決められた時間となる。
【0021】
次に、PFモータ10の駆動時間Bについて説明する。駆動時間Bは、PFモータ10が駆動を開始してから駆動を終了するまでの時間である。PFモータ10にはPF駆動終了判定時間C(設定時間)があるため、この図に示すように駆動時間Bは示される。PF駆動終了判定時間C(例えば、100ミリ秒)は、予め設定されたマージンである。ここで、時刻αはPFモータ10が位置制御に切り替わる時刻を示す。PFモータ10は、時刻αまでは速度制御で駆動され、時刻αから位置制御に切り替えて駆動される。速度制御は、位置毎に定められた目標速度と現在速度の差を偏差とするPID制御である。ここで、目標速度は速度テーブルから取得される。速度テーブルは、PFモータ10の駆動位置(エンコーダは物理的には回転しているだけであるが、エンコーダから出力されるパルス数を目盛りとして備える直線状の座標軸を考えてみると、当該座標軸は被搬送対象の搬送位置に対応する指標として機能する。そこでロータリーエンコーダは被搬送対象の搬送位置管理に用いることができる。「PFモータ10の駆動位置」とは、この仮想的な座標軸上の位置のことを示しており、具体的には基準位置を示すエンコーダパルス(=パルス数ゼロ)からの累積のパルスカウント数である。)とそのときの目標周期との関係を示すテーブルである。目標周期とは、ロータリーエンコーダ16のパルス周期と対応したものである。(「パルス周期」とは、具体的には隣接するエンコーダパルス間の時間を示すものであるが、エンコーダパルス間の距離は一定なので、隣接するエンコーダパルスの区間における速度を示すものと捉えることができる。)
つまり、DCユニット23は速度テーブルの目標周期を目標としてPFモータ10の駆動速度等をPID制御している。一方、位置制御では、目標位置と現在位置と現在速度とを基に得られる偏差に従いPID制御をしている。
【0022】
次に、PFモータ10の停止時刻について説明する。PFモータ10には以下に示す2つの停止パターンがある。まず、1つ目のパターンは、目標位置に到達すると停止するパターンである。その際、この図に示す時刻βが停止時刻である。一方、2つ目のパターンは、目標位置に到達していないが、PF駆動終了判定時間Cが経過したので停止するパターンである。その際、この図に示す時刻γが停止時刻である。従来では、時刻γの時点からCRモータ9を起動させていたが、本実施形態では、時刻γより見積時間A前にCRモータ9を起動させて、PFモータ10の停止とほぼ同時に印字を開始する。
【0023】
図4は、本実施形態のCPU21における重ね合わせ処理の流れの一例を表すフローチャートである。この図に示す処理は、PFモータ10起動後に、CRモータ9の起動開始のタイミングを算出する際に行われる。また、この図に示す処理は、CRモータ9の起動開始タイミングがPFモータ10の減速中にある場合に、スタートする。なお、PFモータ10の定速中または加速中の起動開始タイミングの算出方法は従来技術(例えば、特開2003−63085号公報参照)を適用することが可能なので、説明を省略する。
【0024】
処理がスタートすると、ステップS101では、CPU21は、CRモータ9の起動開始タイミングがPFモータ10の速度制御中か否かを判定する。具体的には、CPU21は、CRモータ9の起動開始から印刷開始までの見積時間AがPF駆動終了判定時間Cより大きい場合に、起動開始タイミングが速度制御中であると判定する。起動開始タイミングが速度制御中であれば、ステップS104へ進む。一方、起動開始タイミングが位置制御中であれば、ステップS102へ進む。
【0025】
次のステップS102では、CPU21は、PF駆動終了判定時間Cから見積時間Aを減算する。次のステップS103では、CPU21は、減算した時間t1(C−A)を割込み回数Iに変換する。具体的には、CPU21は、減算した時間t1を所定の割込み時間で除算する。割込み時間とは、例えば、ハードウェアタイマが定期的に例外処理(割込み処理)をする時間間隔のことである。この割込み回数IがCRモータ9の起動開始タイミングとなる。
【0026】
一方、ステップS104では、CPU21は、見積時間AからPF駆動終了判定時間Cを減算する。次のステップS105では、CPU21は、速度テーブルを用いて、減算した時間t2をPFモータ10のモータ駆動数K(=エンコーダパルスのカウント数)に変換する。具体的には、CPU21は、時間t2から速度テーブルの目標周期を、速度テーブルの停止側から順に減算した残り時間Δtを算出する。そして、CPU21は、残り時間Δtがマイナスになるまで減算処理を繰り返していく。CPU21は、残り時間Δtがマイナスに転じたとき、その一つ前までの減算回数をカウントし、そのカウント値からモータ駆動数K(=エンコーダパルスのカウント数)を求める。このモータ駆動数K(=エンコーダパルスのカウント数)がCRモータ9の起動開始タイミングとなる。
【0027】
このように、本実施形態では、CPU21は、CRモータ9の起動開始タイミングが、速度制御中か、位置制御中かを判定する。そして、CPU21は、起動開始タイミングが位置制御中であれば時間を割込み回数Iに変換し、速度制御中であれば時間をモータ駆動数Kに変換する。
【0028】
図5は、本実施形態のCPU21における割込み処理の流れの一例を表すフローチャートである。この図に示す処理は、PFモータ10の位置制御中に行われる割込み処理毎に行われる。また、この図に示す処理は、CRモータ9の起動開始タイミングが位置制御中である場合にのみ行われる。各変数の初期値は、CR起動許可フラグ=FALSE、CR起動許可済みフラグ=未許可、割込み回数=0である。
【0029】
処理がスタートすると、ステップS201では、CPU21は、CR起動許可フラグがTRUEであるか否かを判定する。CR起動許可フラグがTRUEであれば、ステップS202へ進む。一方、CR起動許可フラグがFALSEであれば、ステップS204へ移行する。次のステップS202では、CPU21は、CRモータ9の起動を許可する。CPU21から起動が許可されると、DCユニット23がCRモータ9を起動させる。次のステップS203では、CPU21は、CR起動許可済みフラグを許可にする。
【0030】
続いて、ステップS204では、CPU21は、CR起動許可済みフラグが許可であるか否かを判定する。許可である場合には、処理を終了する。一方、許可でない場合にはステップS205へ進む。次のステップS205では、CPU21は、割込み回数が閾値に到達したか否かを判定する。ここで、閾値は、図4の処理で算出した割込み回数Iである。閾値に到達している場合には、ステップS206へ進む。一方、閾値に到達していない場合には、ステップS207へ進む。ステップS206では、CPU21は、CR起動許可フラグをTRUEにして処理を終了する。一方、ステップS207では、割込み回数に1加算して処理を終了する。
【0031】
このように、本実施形態では、CPU21は、CRモータ9の起動開始タイミングがPFモータ10の位置制御中である場合には、PFモータ10が位置制御に切り替わってから行われた割込み処理の回数が割込み回数Iを超えると、CRモータ9の起動を許可する。なお、CRモータ9の起動開始タイミングがPFモータ10の速度制御中である場合には、CPU21は、PFモータ10の残りモータ駆動数が算出したモータ駆動数K(=エンコーダパルスのカウント数)となるとCRモータ9の起動を許可する。
【0032】
図6は、本実施形態におけるCRモータ9の起動開始タイミングを示す波形図である。横軸は時間で、縦軸はPFモータ10の駆動速度を示す。この図に示す時刻αはPFモータ10を速度制御から位置制御に切り替えるタイミングを示す。時刻aは、PFモータ10が速度制御中にCRモータ9を起動する場合の起動開始タイミングである。一方、時刻bは、PFモータ10が位置制御中にCRモータ9を起動する場合の起動開始タイミングである。なお、時刻cは、従来のCRモータ9の起動開始タイミングである。この図に示す通り、本実施形態では、従来に比して起動開始タイミングが早くなり、重ね合わせ処理を行うことができる。
【0033】
このように、本実施形態によれば、CPU21は、CRモータ9の起動開始タイミングが速度制御中か、位置制御中かを判定する。そして、CPU21は、起動開始タイミングが速度制御中であれば、見積時間Aをモータ駆動数Kに変換する。一方、CPU21は、起動開始タイミングが位置制御中であれば見積時間Aを割込み回数Iに変換する。続いて、CPU21は、PFモータ10が位置制御中に割込み処理が割込み回数I行われると、CRモータ9を起動する。これにより、印刷装置1は紙送り終了とほぼ同時に印刷を開始可能になる。つまり、位置制御中であったとしても重ね合わせ処理を行うことができ、印刷時のスループットを向上させることができる。
【0034】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、PFモータ10を速度制御のみで駆動する場合でも、CRモータ9の起動開始タイミングを割込み回数で算出してもよい。この場合、PFモータ10停止時の所定のマージンである停止待ち時間(例えば、10ミリ秒)が、見積時間Aより大きい場合に有効である。これにより、充分なPFモータ10の停止待ち時間を確保してPFモータ10の停止精度を向上させるとともに、CRモータ9の起動開始を早くして印刷スループットの向上を図ることができる。
【0035】
なお、上述した例では、印刷装置1としていわゆるプリンタを用いて説明したが、これ以外にも、印刷装置1はファクシミリ装置、複写機やこれらの機能を有する複合機などでもよい。
【0036】
また、上述した例では、記録媒体として印刷用紙8を例にして説明したが、記録ヘッド6から吐出されたインクを記録できるものであれば何でもよく、例えば、OHPや厚紙、はがき等であってもよい。
【0037】
また、上述した例は、CRモータ9とPFモータ10とをDCモータとして説明したが、それ以外にもステッピングモータなどの各種モータであってもよい。いずれの場合であっても、本発明では上述した例と同様の作用効果を奏する。
【0038】
また、上述した例は、CRモータ9とPFモータ10の駆動制御を、CPU21がプログラムを実行することによりソフトウェアにより実現したが、ソフトウェアによる方法に限定されない。例えば紙送り処理を制御回路(カスタムICなど)によりハードウェアで実現してもよく、さらに紙送り処理をハードウェアとソフトウェアとの組合せ(協働)により実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態による印刷装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態における印刷装置の電気的な構成を示したブロック図である。
【図3】本実施形態におけるCRモータ及びPFモータの駆動速度を示す波形図である。
【図4】本実施形態における重ね合わせ処理の流れの一例を表すフローチャートである。
【図5】本実施形態における割込み処理の流れの一例を表すフローチャートである。
【図6】本実施形態におけるCRモータの起動開始タイミングを示す波形図である。
【符号の説明】
【0040】
1…印刷装置(液体噴射装置) 2…キャリッジ 3…駆動プーリ 4…従動プーリ 5…タイミングベルト 6…記録ヘッド 7…インクカートリッジ 8…印刷用紙 9…CRモータ 10…PFモータ 13…リニアエンコーダ 14…被検出用テープ 14a…スリット 15…キャリッジ検出センサ 16…ロータリーエンコーダ 21…CPU 22…ASIC 23…DCユニット 24…PROM 25…RAM 26…EEPROM 27…インターフェース 28…ホストコンピュータ 29…ヘッドドライバ 30…CRモータドライバ 31…PFモータドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体の搬送のために、目標位置から所定の距離より手前までを速度偏差により制御を行う速度制御で駆動し、続いて目標位置までを位置偏差により制御を行う位置制御に切り替えて駆動する搬送駆動手段と、
キャリッジを駆動するキャリッジ駆動手段と、
前記キャリッジの起動開始タイミングが、前記搬送駆動手段の速度制御中か位置制御中かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果によって、異なる時間算出方法を用いて前記キャリッジの起動開始タイミングを算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記起動開始タイミングとなったとき、前記キャリッジ駆動手段を駆動して前記キャリッジの起動を開始し、前記記憶媒体の搬送動作とキャリッジ動作とを重ね合わせる制御手段と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記判定手段は、停止状態の前記キャリッジが前記キャリッジ駆動手段によって起動を開始し印刷開始位置に到達して印刷を始めるまでに要する見積時間が、前記搬送駆動手段の制御が位置制御に切り替わった時点から搬送を終えて停止するまでに要する所定の設定時間より小さい場合に、前記キャリッジの起動開始タイミングが前記搬送駆動手段の位置制御中であると判定し、
前記算出手段は、前記キャリッジの起動開始タイミングが前記搬送駆動手段の位置制御中であれば、前記設定時間と前記見積時間の減算値に基づいて割込み回数を生成し、
前記制御手段は、前記キャリッジの起動開始タイミングが前記搬送駆動手段の位置制御中であれば、前記搬送駆動手段が位置制御に切り替わってから行われた割込み処理の回数が前記割込み回数を超えると、前記起動開始タイミングとなったと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
記憶媒体の搬送のために、目標位置から所定の距離より手前までを速度偏差により制御を行う速度制御で駆動し、続いて目標位置までを位置偏差により制御を行う位置制御に切り替えて駆動する搬送駆動手段と、キャリッジを駆動するキャリッジ駆動手段と、を備える液体噴射装置における重ね合わせ方法において、
前記キャリッジの起動開始タイミングが、前記搬送駆動手段の速度制御中か位置制御中かを判定するステップと、
判定結果によって、異なる時間算出方法を用いて前記キャリッジの起動開始タイミングを算出するステップと、
算出された前記起動開始タイミングとなったとき、前記キャリッジ駆動手段を駆動して前記キャリッジの起動を開始し、前記記憶媒体の搬送動作とキャリッジ動作とを重ね合わせるステップと、
を有することを特徴とする重ね合わせ方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−248359(P2009−248359A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95845(P2008−95845)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】