説明

液体噴射装置

【課題】ノズル形成面に対して所期の払拭力で払拭動作を行うことが可能な液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】搬送媒体に対して液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、回転可能に設けられ、回転しつつ前記ノズル形成面に当接されることで前記ノズル形成面を払拭する払拭部と、前記払拭部が前記ノズル形成面に当接された状態において前記払拭部が前記ノズル形成面から離れる方向に変形するのを抑制する変形抑制部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射装置として、例えば記録媒体に文字や画像等を記録するインクジェット式記録装置などが知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体を搬送しつつ、噴射ヘッドのノズル形成面に設けられたノズルから当該記録媒体にインクを噴射することで、記録媒体に記録を行う構成となっている。
【0003】
この液体噴射装置では、良好な噴射状態を維持又は回復させるため、当該記録ヘッドのメンテナンス処理を定期的に行っている。その具体的なメンテナンス処理としては、ノズル形成面に付着したインクや異物などを払拭させることで、ノズル形成面を清浄な状態に維持する払拭動作などが挙げられる。払拭動作においては、例えば特許文献1に示すように、円筒型に形成された払拭部材を用いる構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−50590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の払拭部材においては、自重によって長手方向の中央部が撓んでしまい、当該中央部によるノズル形成面に対する圧力が弱くなってしまい、払拭能力が低下してしまうという問題がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、ノズル形成面に対して所期の払拭力で払拭動作を行うことが可能な液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体噴射装置は、搬送される媒体に対して液体を噴射するノズルと、前記ノズルが形成され前記媒体の幅より大きい幅のノズル形成面とを有する液体噴射ヘッドと、回転可能に設けられ、回転しつつ前記ノズル形成面に当接されることで前記ノズル形成面を払拭し、前記ノズル形成面の幅より大きい幅を有する円筒状の払拭部と、を備える液体噴射装置であって、前記払拭部が前記ノズル形成面に自重によって変形して不均一に当接するのを抑制することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、搬送される媒体に対して液体を噴射するノズルと、ノズルが形成され媒体の幅より大きい幅のノズル形成面とを有する液体噴射ヘッドと、回転可能に設けられ、回転しつつノズル形成面に当接されることでノズル形成面を払拭し、ノズル形成面の幅より大きい幅を有する円筒状の払拭部と、を備え、払拭部がノズル形成面に自重によって変形して不均一に当接するのを抑制するので、変形抑制部により払拭部の変形を抑制することができる。これにより、払拭部でのノズル形成面に対する当接力が弱くなるのを防ぐことができるので、ノズル形成面に対して所期の払拭力で払拭動作を行うことができる。
【0009】
上記の液体噴射装置において、前記払拭部は、回転の軸線方向における端部から中央部へ向けて径が大きくなるように形成された拡径部を有することが好ましい。
本発明によれば、払拭部が回転の軸線方向における端部から中央部へ向けて径が大きくなるように形成された拡径部を有することとしたので、払拭部のうち回転の軸線方向の中央部が自重によって撓んだ場合であっても、払拭部のうちノズル形成面との当接部がノズル形成面から離れるのを防ぐことができる。これにより、払拭部でのノズル形成面に対する当接力が弱くなるのを防ぐことができるので、ノズル形成面に対して所期の払拭力で払拭動作を行うことができる。
【0010】
上記の液体噴射装置において、前記払拭部は、前記軸線方向に平行に設けられた回転軸部材と、当該回転軸部材の周面に設けられ、前記ノズル形成面に当接され、前記液体を吸収する吸収層とを有することが好ましい。
本発明によれば、払拭部が、軸線方向に平行に設けられた回転軸部材と、当該回転軸部材の周面に設けられノズル形成面に当接され液体を吸収する吸収層とを有するので、液体を吸収する吸収層をノズル形成面に当接させた状態で回転させることができる。これにより、吸収層をノズル形成面に当接させたときに、吸収層とノズル形成面との間に回転による摩擦力を発生させることができる。この摩擦力により、ノズル形成面に付着した液体や異物などが除去されることになる。また、除去された液体を吸収部において吸収することができる。これにより、液体が周囲に飛散されるのを防ぐことができるため、周囲の環境を清浄に維持しつつ払拭動作を行うことができる。
【0011】
上記の液体噴射装置において、前記拡径部は、前記吸収層の一部に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、拡径部が吸収層の一部に設けられているので、吸収層の一部が厚く形成されることになる。このため、液体の吸収容量を大きくすることができる。
【0012】
上記の液体噴射装置において、前記回転軸部材は、前記軸線方向に等しい形状及び寸法となるように形成されていることが好ましい。
本発明によれば、回転軸部材が軸線方向に等しい形状及び寸法となるように形成されているため、回転軸部材の回転動作が軸線方向において均一となる。これにより、ノズル形成面を一様な払拭力で払拭することができる。
【0013】
上記の液体噴射装置において、前記拡径部は、前記回転軸部材の一部に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、拡径部が回転軸部材の一部に設けられているため、回転軸部材が撓むのを防ぐことができ、払拭部の回転を安定させることができる。
【0014】
上記の液体噴射装置において、前記吸収層は、前記軸線方向に等しい厚さとなるように形成されていることが好ましい。
本発明によれば、吸収層が軸線方向に等しい厚さとなるように形成されているので、液体の吸収容量を軸線方向において等しくすることができる。
【0015】
上記の液体噴射装置において、前記拡径部は、段部を有することが好ましい。
本発明によれば、拡径部が回転の軸線方向の中央部へ向けて段状に径が大きくなっていくので、回転軸部材が撓むのを防ぐことができ、払拭部の回転を安定させることができる。
【0016】
上記の液体噴射装置において、前記回転軸部材は、前記軸線方向に垂直な平面における切断面が十字形状をなすように形成されていることが好ましい。
本発明によれば、軸線方向に垂直な平面における切断面が十字形状をなすように回転軸部材が形成されているので、回転軸部材が撓むのを防ぐことができる。
【0017】
上記の液体噴射装置において、前記払拭部を前記ノズル形成面側へ押圧する押圧部を更に備えることが好ましい。
本発明によれば、払拭部をノズル形成面側へ押圧する押圧部を更に備えるので、払拭部が撓むのを直接的に防ぐことができる。
【0018】
上記の液体噴射装置において、前記押圧部は、前記払拭部のうち前記軸線方向の中央部を押圧するように配置されていることが好ましい。
本発明によれば、押圧部が払拭部のうち軸線方向の中央部を押圧するように配置されているので、払拭部のうち軸線方向の中央部が撓むのを直接的に防ぐことができる。
【0019】
上記の液体噴射装置は、前記搬送媒体を所定方向に搬送する搬送部と、前記払拭部を前記所定方向に移動させる移動部とを更に備えることが好ましい。
本発明によれば、搬送媒体を所定方向に搬送する搬送部と、払拭部を所定方向に移動させる移動部とを更に備えるので、ノズル形成面を所定方向に走査することができる。これにより、ノズル形成面をより確実に払拭することができる。
【0020】
上記の液体噴射装置は、前記搬送媒体を支持する支持面を有する搬送媒体支持部と、前記払拭部が前記支持面上に出没可能となるように前記払拭部を昇降させる昇降部とを更に備えることが好ましい。
本発明によれば、搬送媒体を支持する支持面を有する搬送媒体支持部と、払拭部が支持面上に出没可能となるように払拭部を昇降させる昇降部とを更に備えるので、搬送媒体支持部と払拭部とを配置させるためのスペースを節約することができる。これにより、液体噴射装置を小型化することができる。
【0021】
上記の液体噴射装置において、前記変形抑制部は、前記払拭部のうち前記回転の軸線方向の中央部へ向けて前記払拭部の他の部分よりも剛性が高くなるように形成された高剛性部を有することが好ましい。
本発明によれば、変形抑制部が、払拭部のうち回転の軸線方向の中央部へ向けて払拭部の他の部分よりも剛性が高くなるように形成された高剛性部を有するので、払拭部のうち回転の軸線方向の中央部を撓みにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンターの全体構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る記録ヘッドの構成を示す図。
【図3】本実施形態に係るメンテナンス部の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係るワイピング部の構成を示す図。
【図5】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンターの動作の一形態を示す図。
【図6】本発明に係るワイピング部の他の構成を示す図。
【図7】本発明に係るワイピング部の他の構成を示す図。
【図8】本発明に係るワイピング部の他の構成を示す図。
【図9】本発明に係るワイピング部の他の構成を示す図。
【図10】本発明に係るワイピング部の他の構成を示す図。
【図11】本発明に係るワイピング部の他の構成を示す図。
【図12】本発明に係るワイピング部の他の構成を示す図。
【図13】本発明に係るワイピング部の他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る液体噴射装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る液体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、インクジェットプリンターと称する)を例示する。
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンターPRTの概略構成図である。以下、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する場合がある。この場合においては、記録媒体Mの搬送方向をX方向と、該搬送方向と直交する搬送面幅方向をY方向と、X方向及びY方向と直交する高さ方向(鉛直方向)をZ方向と称する。
【0025】
インクジェットプリンターPRTは、インク滴(液体)を噴射することで記録媒体(媒体)Mに所定の情報や画像を印字する記録処理を行う構成となっている。記録媒体Mとしては、例えば記録用紙やプラスチック、ガラス基板等が用いられる。インクジェットプリンターPRTは、図1に示すように、インクを噴射する記録ヘッド(液体噴射ヘッド)11を備えるインク噴射機構IJ、記録媒体Mを搬送する搬送機構CR、記録ヘッド11をメンテナンスするメンテナンス機構MN、及び上記各構成部の動作を統括的に制御するコンピュータシステムを有する制御部CONTを有する。
【0026】
インク噴射機構IJは、記録媒体Mにインク滴(液体)を噴射する記録ヘッド11と、記録ヘッド11にインクを供給するインク供給部12とを有する構成となっている。本実施形態で用いるインクは、染料や顔料、これを溶解または分散する溶媒を基本的成分とし、必要に応じて各種添加剤が添加された液状体を用いる。
【0027】
本実施形態の記録ヘッド11は、イエロー(Ye)、マゼンタ(Ma)、シアン(Cy)、ブラック(Bk)の各色調に対応した共通インク室14(14Y、14M、14C、14B)を有し、それらと対応して連通するノズル13から各色に応じたインクを噴射する構成となっている。
【0028】
インク供給部12は、上記4色のインクを貯蔵するインク供給部12(12Y、12M、12C、12K)を有する。また、インク供給部12は、不図示のインク供給ポンプを有し、各共通インク室14にその色調に応じたインクをインク供給部12から供給する構成となっている。
【0029】
搬送機構CRは、紙送りローラー35、排出ローラー36等を有している。紙送りローラー35、排出ローラー36は、不図示のモーター機構によって回転駆動されるようになっている。搬送機構CRは、インク噴射機構IJによるインク滴の噴射動作に連動させて記録媒体Mを搬送面MRに沿って搬送する構成となっている。
【0030】
図2は記録ヘッド11をノズル形成面11a側から視た図である。
図2に示すように、記録ヘッド11は、インクジェットプリンターPRTが対象とする最大サイズの記録媒体Mの幅W(媒体の搬送方向およびノズル形成面11aに対して垂直方向の大きさ)よりも大きい幅に亘って設けられたノズル形成領域15を有するライン型の記録ヘッドである。ノズル形成領域15は、上記各色のインクに対応したノズル形成領域15Y、15M、15C、15Kを有する。ノズル13は、各ノズル形成領域15に対応してY方向に複数配列されてノズル列Lを構成する。このノズル13が複数形成されたノズル形成面11aは、−Z方向側に向けて配置される。
【0031】
図3は、メンテナンス機構MNの構成を示す図である。
図3に示すように、メンテナンス機構MNは、記録媒体Mを支持する媒体支持部41、記録ヘッドHのノズル形成面11aを封止するキャップ部42、ノズル形成面11aを払拭するワイピング部(払拭部)43、キャップ部42内のインクを吸引する吸引ポンプSC、及び、吸引されたインクを貯留する廃インク供給部46を有している。
【0032】
媒体支持部41は、記録ヘッド11と対向する位置で記録媒体Mを支持する媒体支持部である。媒体支持部41は、記録媒体Mを支持する支持面41aを有している。支持面41aは、プラテン38a及びプラテン38bと共に搬送面MRの一部を構成する(図3参照)。媒体支持部41は、支持面41aが記録ヘッド11のノズル形成領域15に対応した領域をカバーするように形成されている。
【0033】
キャップ部42は、記録ヘッド11のノズル形成面11aをキャッピングするトレイ形状の部材である。キャップ部42の開口縁部は、ゴム部材等の弾性部材を用いて形成されており、複数のノズル13を囲うようにノズル形成面11aと当接可能な構成となっている。なお、キャップ部42は、ノズル13内で粘度が高くなったインクを噴射するフラッシング動作を行う際、噴射されたインクを受ける部分でもある。キャップ部42は、トレイ内部にインク吸収材42bを有している。
【0034】
キャップ部42は、不図示の移動機構を用いて移動可能に設けられている。移動機構により、キャップ部42がノズル形成面11aとの対向位置と、媒体支持部41から離れた位置である待機位置との間を移動可能となっている。このように、キャップ部42と媒体支持部41とを離れた位置に配置させることにより、キャップ部42からインクが溢れるような場合であっても、インクが媒体支持部41に到達しにくい構成となっている。
【0035】
吸引ポンプSCは、キャップ部42のインク吸収材42bを介して吸引動作を行う構成となっている。廃インク供給部46は、吸引動作により流れ込むインクを貯溜する構成となっている。なお、廃インク供給部46は、装置本体に対して着脱自在であり、定期的に内部に貯溜したインクを廃棄する構成となっている。
【0036】
ワイピング部43は、回転軸部材43a及び吸収層43bを有している。また、ワイピング部43を支持するワイピング支持部として、軸受部材43c及び基台43dが設けられている。ワイピング支持部は、基台43dの端部に軸受部材43cが1対設けられた構成となっている。ワイピング部43は、吸収層43bを有する回転軸部材43aが一対の軸受部材43cに支持された構成になっている。基台43dには、ワイピング部43をX方向、Y方向及びZ方向に平行移動させる移動部44が接続されている。
【0037】
回転軸部材43aは、円柱状に形成されており、軸線方向(Y方向)において径が等しくなるように形成されている。回転軸部材43aは、軸線方向が記録ヘッド11のノズル列Lに平行となる方向(Y方向)に配置されている。回転軸部材43aは、例えばモーターなどの回転駆動部45に接続されている。
【0038】
回転軸部材43aは、当該回転駆動部45によってY軸周りに回転可能に設けられている。回転軸部材43aがY方向に等しい形状及び寸法となるように形成されているため、回転軸部材43aのY軸周りの回転動作が軸線方向において均一となる。回転軸部材43aは、金属などの剛性の高い材料を用いて形成されている。回転軸部材43aは、Y方向の両端部が軸受部材43cによって回転可能に支持されている。
【0039】
吸収層43bは、当該回転軸部材43aの外周面43eを覆うように設けられている。吸収層43bは、例えばスポンジなどの多孔質材料を用いて形成されている。吸収層43bは、記録ヘッド11のノズル13から排出されるインクを吸収する。吸収層43bは、回転軸部材43aのY方向の両端部から中央部へ向けて徐々に厚くなるように形成されている。つまり、ワイピング部43は、Y方向の中央部において当該Y方向の両端部に比べて径方向の外側に湾曲した状態(膨らんだ状態)となっている。したがって、ワイピング部43は、Y方向の中央部(拡径部)43hにおいて径が最も大きくなるように形成されている。なお、拡径部43hが吸収層43bの一部に設けられており、吸収層43bの一部が厚く形成されているので、拡径部43hを設けない場合に比べて、インクの吸収容量が大きくなっている。
【0040】
ワイピング部43は、例えばA3幅やA4幅の記録媒体MRよりも大きい。そして両端が軸受部材43cで支持されている。このため、ワイピング部43が自重により−Z側に変形する。この変形は、両端部よりも中央部のほうが大きい。しかし、ワイピング部43は、端部側の吸収層43bの径より中央部43hの径のほうが大きい。このため、自重により変形したときに吸収層43bの記録ヘッド11側の表面43fは、記録ヘッド11のノズル形成面11aと平行になる。つまり、端部側の吸収層43bの径と中央部43hの径の差は、自重によるワイピング部43の端部側と中央部の撓み差に等しい。この状態でワイピング部43を記録ヘッド11に当接させると、図5に示すように、ワイピング部の表面43fは一部が強く当たることなく、均一に当たった状態で払拭動作を行う。このように、ワイピング部43の拡径部43hは、ノズル形成面11aとワイピング部の表面43fが不均一に当接するような変形を抑制する変形抑制部FTを構成している。
【0041】
上記構成のインクジェットプリンターPRTは、記録ヘッド11の良好な噴射状態を維持又は回復させるため、メンテナンス機構MNを駆動させ、当該記録ヘッド11のメンテナンス処理を定期的に行う。このメンテナンス処理には、記録ヘッド11のノズル形成面11aを払拭する払拭動作などが挙げられる。
【0042】
払拭動作を行わせる場合、制御部CONTは、移動部44を用いて、ワイピング部43を記録ヘッド11のノズル形成面11aに対向させるように+Z方向に移動させる。その後、制御部CONTは、ワイピング部43に設けられた吸収層43bの表面43fをノズル形成面11aに接触させ、吸収層43bをノズル形成面11aに押圧する。
【0043】
この状態で、制御部CONTは、回転駆動部45を用いて回転軸部材43aをY軸周りに回転させると共に、移動部44を用いて基台43dをX方向に移動させる。吸収層43bがY軸周りに回転すると、吸収層43bの表面43fとノズル形成面11aとの間に摩擦力が生じる。この摩擦力により、ノズル形成面11aに付着したインクや異物が除去されることになる。
【0044】
このとき、吸収層43bによってインクなどの液体成分が吸収される。また、吸収層43bが回転しつつX方向に移動するため、ノズル形成面11aがX方向に走査されることになる。このため、ノズル形成面11aの全面が吸収層43bによって払拭されることになる。この払拭動作において、吸収層43bが常にノズル形成面11aに当接されているため、ノズル形成面11aを確実に払拭することができる。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、記録媒体Mに対してインクを噴射するノズル13が形成されたノズル形成面11aを有する記録ヘッド11と、回転可能に設けられ回転しつつノズル形成面11aに当接されることでノズル形成面11aを払拭するワイピング部43と、ワイピング部43がノズル形成面11aに不均一に当接するように変形するのを抑制する変形抑制部FTとを備える。これにより、ワイピング部43でのノズル形成面11aに対して部分的に当接力が弱くなるのを防ぐことができるので、ノズル形成面11aに対して均一の払拭力で払拭動作を行うことができる。
【0046】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、回転軸部材43aがY方向に同形で同一寸法となるように形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図6に示すように、回転軸部材43aがY方向の中央部へ向けて徐々に径が大きくなるように形成された構成であっても構わない。このように、拡径部43hが回転軸部材43aに設けられているため、回転軸部材43aが撓むのを防ぐことができ、ワイピング部43の回転を安定させることができる。
【0047】
また、回転軸部材43aに拡径部43hが設けられる場合においては、図6に示すように、回転軸部材43aの外周面43eに設けられる吸収層43bの厚さはY方向において均一となっている。このため、インクの吸収容量がY方向において均一となる。また、図6に示す構成において、吸収層43bの厚さをY方向に均一にする構成の他、例えばY方向の中央部へ向けて吸収層43bの厚さを徐々に大きくする構成であっても構わないし、逆に、Y方向の中央部へ向けて吸収層43bの厚さを徐々に小さくする構成であっても構わない。更には、回転軸部材43aの径がY方向の中央部へ向けて徐々に小さくする構成であっても構わない。吸収層43bの厚さによっては、回転軸部材43aをより撓ませた方が良い場合もある。この構成においては、ワイピング部43の撓みを積極的に利用することにより、結果として吸収層43bのY方向の両端部において当該吸収層43bの+Z側端部が−Z側に凹むのを防ぐことができる。この場合、拡径部43hは、回転軸部材43aのY方向の両端部に設けられることになる。
【0048】
また、図7に示すように、回転軸43aに設けられた拡径部43hが複数の段部43i及び43jを有する構成であっても構わない。図7に示す構成によれば、拡径部43hが回転の軸線方向の中央部へ向けて階段状に径が大きくなっていくので、拡径部43hのY方向中央部が撓みにくくなる。これにより、回転軸部材43aを撓みにくい構成とすることができる。また、回転軸43aにおいて拡径部43hのY方向中央部が撓みにくくなっているため、吸収層43bについては、外形を円筒状に形成する構成、すなわち、吸収層43bの表面43fがY方向に平行になる構成とすることができる。
【0049】
また、例えば図8に示すように、吸収層43bの表面43fがY方向に平行になる構成を有すると共に、拡径部43hがY方向の中央部へ向けて突出するように湾曲された構成であっても構わない。この構成によれば、拡径部43hが回転の軸線方向の中央部へ向けて徐々に径が大きくなっていくので、拡径部43hのY方向中央部が撓みにくくなる。これにより、回転軸部材43aを撓みにくい構成とすることができる。
【0050】
また、上記実施形態においては、回転軸部材43aが円筒状に形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図9に示すように、回転軸部材43aがY方向視で十字形に形成された構成であっても構わない。このように、回転軸部材43aの回転方向において凹凸を形成することにより、回転軸部材43aを撓みにくい構成とすることができる。
【0051】
また、上記説明においては、変形抑制部FTとして、回転軸部材43a及び吸収層43bのうち少なくとも一方に拡径部43hを設けた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、変形抑制部FTが、回転軸部材43a及び吸収層43bに外部から力を加えることで直接的に撓みを抑制する構成であっても構わない。
【0052】
例えば、図10に示すように、回転軸部材43a及び吸収層43bがそれぞれ円筒状に形成されており、Y方向に径が等しくなるように形成されている。この場合、変形抑制部FTとして、吸収層43bの−Z側には、当該吸収層43bを+Z側に押圧する押圧部48が設けられている。押圧部48は、吸収層43bのうちY方向の中央部を押圧するように配置されている。このように押圧部48により、撓みを抑制することができる。
【0053】
また、図11に示すように、押圧部48が吸収層43bのうち複数個所を押圧する構成であっても構わない。この場合、押圧部48が吸収層43bのうちY方向中央部を当該Y方向に挟む位置に1つずつ、合計で2つ配置されている。この構成によれば、押圧部48が1箇所に配置された場合に比べて、吸収層43bの押圧箇所が多くなるため、安定して吸収層43bを支持することができる。なお、押圧部48としては、図10及び図11に示すような圧縮バネを用いても構わないし、板バネなど他の弾性部材を用いても構わない。また、押圧部48に代えて、吸収層43bを押圧するのではなく、単に吸収層43bを支持する支持部が設けられた構成であっても構わない。
【0054】
また、上記実施形態においては、回転駆動部45によって回転軸部材43aが外部とは独立してY軸周りに回転可能な構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、記録媒体Mの搬送動作と連動させて回転軸部材43aを回転させることができる。
【0055】
このような構成として、例えば、図12に示すように、回転軸部材43aを軸受部材43cの−Y側に突出させておくと共に、当該回転軸部材43aの−Y側端部と紙送りローラー35の回転軸35aとの間にベルト37を掛け渡した構成とすることができる。この場合、紙送りローラー35を回転させることにより、記録媒体がX方向に搬送されると共に、紙送りローラー35に掛けられたベルト37を介して回転軸部材43aが連れ回りすることになる。なお、紙送りローラー35のみならず、排出ローラー36に対して回転軸部材43aがつれ回りする構成としても構わない。このように、回転軸部材43aを搬送機構CRのローラーに連動させて回転させることができる。
【0056】
また、例えば、変形抑制部FTの他の構成として、図13に示すように、ワイピング部43のうちY方向の中央部へ向けて他の部分よりも剛性が高くなるように形成された高剛性部43gが設けられた構成であっても構わない。この構成によれば、ワイピング部43のうちY方向の中央部を撓みにくくすることができる。
【0057】
上記説明した各構成については、適宜組み合わせて用いることができる。例えば、図13において、吸収層43bの高剛性部43gを支持する支持部や、高剛性部43gを+Z側に押圧する押圧部などが設けられた構成であっても構わない。また、高剛性部43gが設けられている場合において、更に拡径部43hが設けられた構成であっても構わない。なお、これらは組み合わせの一例に過ぎず、他の構成同士を組み合わせても構わない。
【0058】
上記実施例は、インクジェット式のプリンタが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射ヘッドが噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。他の液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
PRT…インクジェットプリンター M…記録媒体 CR…搬送機構 MN…メンテナンス機構 MR…搬送面 L…ノズル列 H…記録ヘッド SC…吸引ポンプ FT…変形抑制部 CONT…制御部 11…記録ヘッド 11a…ノズル形成面 35…紙送りローラー 35a…回転軸 36…排出ローラー 37…ベルト 38a…プラテン 38b…プラテン 41…媒体支持部 41a…支持面 43…ワイピング部 43a…回転軸部材 43b…吸収層 43c…軸受部材 43d…基台 43e…外周面 43h…拡径部 43f…表面 43i…段部 43g…高剛性部 44…移動部 45…回転駆動部 48…押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される媒体に対して液体を噴射するノズルと、前記ノズルが形成され前記媒体の幅より大きい幅のノズル形成面とを有する液体噴射ヘッドと、
回転可能に設けられ、回転しつつ前記ノズル形成面に当接されることで前記ノズル形成面を払拭し、前記ノズル形成面の幅より大きい幅を有する円筒状の払拭部と、を備える液体噴射装置であって、
前記払拭部が前記ノズル形成面に自重によって変形して不均一に当接するのを抑制することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記払拭部は、回転の軸線方向における端部から中央部へ向けて径が大きくなるように形成された拡径部を有する
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記払拭部は、
前記軸線方向に平行に設けられた回転軸部材と、
当該回転軸部材の周面に設けられ、前記ノズル形成面に当接され、前記液体を吸収する吸収層と
を有する
請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記拡径部は、前記吸収層の一部に設けられている
請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記回転軸部材は、前記軸線方向に等しい形状及び寸法となるように形成されている
請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記拡径部は、前記回転軸部材の一部に設けられている
請求項4又は請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記吸収層は、前記軸線方向に等しい厚さとなるように形成されている
請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記拡径部は、段部を有する
請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記回転軸部材は、前記軸線方向に垂直な平面における切断面が十字形状をなすように形成されている
請求項3から請求項8のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記払拭部を前記ノズル形成面側へ押圧する押圧部を更に備える
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記押圧部は、前記払拭部のうち前記軸線方向の中央部を押圧するように配置されている
請求項10に記載の液体噴射装置。
【請求項12】
前記搬送媒体を所定方向に搬送する搬送部と、
前記払拭部を前記所定方向に移動させる移動部と
を更に備える
請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項13】
前記搬送媒体を支持する支持面を有する搬送媒体支持部と、
前記払拭部が前記支持面上に出没可能となるように前記払拭部を昇降させる昇降部と
を更に備える
請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項14】
前記変形抑制部は、前記払拭部のうち前記回転の軸線方向の中央部へ向けて前記払拭部の他の部分よりも剛性が高くなるように形成された高剛性部を有する
請求項1から請求項13のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−91244(P2013−91244A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234708(P2011−234708)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】