説明

液体噴射記録ヘッドの製造法、該方法で製造された液体噴射記録ヘッドおよび該液体噴射記録ヘッドを装着した液体噴射記録装置

【課題】 TaXN(X=Si,B)薄膜をヒーターとして使用した液体噴射記録ヘッドの製造法において、ヒーターの抵抗変化を抑える為の、最適なエージング方法を提供するものである。
【解決手段】 TaXN(X=Si,B)薄膜をヒーターとして使用した液体噴射記録ヘッドの製造の際に施される、ヒーターのエージング工程において、エージングに使用される電気信号は、TaXN薄膜内のTaーN結合が安定化するものであることを特徴とする。具体的には、X線回折法によりTaーN結合の変化を観察しながら、最適なエージング条件を決める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射記録ヘッドの製造方法および該方法により製造された液体噴射記録ヘッドおよび該液体噴射記録ヘッドを装着した液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射記録方法は、インク等の記録液により飛翔的液滴を形成し、これを紙等の被記録材に付着させて記録が行なわれるもので、かかる記録方法を採用した液体噴射記録装置は、低騒音で高速印字、高密度記録ができ、しかも普通紙に対して、現像,定着などの処理が不要であることから、装置自体を小型化することが可能であり、かつ、大量生産時の生産性が良く、製造費用も廉価にできるものとして特に注目されている。
【0003】
特にオンデマンド型液体噴射記録装置は、コンティニアス型液体噴射記録装置で必要とされる高電圧発生装置および不要インクの回収装置を必要とせず、装置を小型化できることからその応用が有望視されている。その中でも、特公昭61−59914号公報に記載のものは、液体が充填された液路中の一部を熱して前記液体に急激に発泡による体積増加に伴う圧力変位を与えることにより、前記液路中に連通する吐出口から液体を吐出させて飛翔用液滴を形成し、このような液滴を被記録材に付着させて記録する液体噴射記録ヘッドを使用することで液体噴射記録装置として特に注目されている。しかも、上述の液体噴射記録ヘッドは、ノズルを高密度化、マルチ化し易い特徴を持つので、ヘッドを長尺化することにより印字速度を向上させ、かつ、高品位の画像を得ることができるという特色がある。
【0004】
この飛翔的液滴を形成するために熱エネルギーを利用する液体噴射記録ヘッドにおいて、記録液を加熱する手段は、電気信号を印加することにより発熱して記録液を加熱することのできる発熱抵抗体(以後、ヒーターと称する。)と、かかる発熱抵抗体に電気信号を印加するための一対の電極とを有する電気熱変換体を具えている。また、ここで使用される記録液は、一般に顔料や染料などの記録成分と、これを溶解または分散させるための水、あるいは水と水溶性有機溶剤とからなる溶媒成分とによって形成されている。
【0005】
ところで、このような水系記録液において急激な気化を行なうための加熱限界温度、すなわち、ヒーターの面と液体との間で極めて薄く、かつ、安定した蒸気膜を介して、その熱伝導で伝えられる熱量により蒸気が生ずる温度は250℃〜350℃である。したがって、この様な温度特性の記録液を用いて、ヒーターに電気信号を与えることにより記録液を発泡させ、飛翔的液滴を形成させて被記録材に記録するためには、ヒーターは電気信号が与えられる毎に、雰囲気温度から300℃〜800℃までの温度で繰り返して加熱されることになる。
【0006】
なおヒーターおよび電極等は半導体プロセスによって形成されるもので、例えば、基板上(例えば、Si,硝子,セラミックス等)に設けられた発熱抵抗体(例えば、HfB2 ,ZrB2 ,TaN2,TaSi等の耐熱抵抗材)上に、中間層(例えば、Ti,Cr等)を介して、電気良導体である金属からなる配線部(電極、例えば、Al,Au,Ag,Cu等)を上記中間層が露出するように積層して形成され、その露出した部分がヒーターとなる。また、記録液からの電食,酸化を防ぐための、耐熱性,記録液遮断性に優れた保護膜等が必要に応じてヒーターおよび電極上に形成される。
【0007】
また、発熱抵抗体として上に挙げた耐熱抵抗体以外に、チッ化タンタルに第三の成分としてSiもしくはBを添加したサーメット薄膜(TaXN薄膜:X=Si, B)が挙げられる。TaXN薄膜は、高抵抗が達成でき、他の高抵抗薄膜と比較して抵抗温度係数(TCR)小さく使用する環境の温度が変化しても発熱量が安定していることから、該液体噴射記録装置に使用する発熱抵抗体として最も優れた材料である。
【0008】
以上の様に、ヒーターを記録信号に応じた電気信号により繰り返し高温に発熱させて記録液を加熱し、液滴吐出を行なう構成の記録ヘッド、およびかかる記録ヘッドを装着した記録装置においては、記録時の記録特性(特に記録液の特性、例えば粘度,表面張力,密度等)を改善する目的で、従来、液体噴射記録ヘッドを記録装置に装着した状態で、例えば米国特許(USP)第4712172号に示される予備吐出処理、あるいはUSP第4463359号,USP第4296421号,USP第4719472号、およびUSP第4712172号に示される予備加熱処理が含まれる記録モードによって行なわれていた。
【0009】
ところが、このような処理を行なうと、記録時における記録液の方の特性は改善されるが、初期の段階から最良の記録状態が得られるようにするには十分なものとは言えず、前述の予備吐出処理や予備加熱処理を含む記録モードでのヒーターの度重なる高温発熱により、ヒーター材の相変化,応力変化,酸化,および組成変化を引き起こすことにより、ヒーター材の抵抗値変化を生じる。また、ヒーター材と配線部(電極)との境界領域での界面抵抗、さらにその両者間における拡散現象等によるヒーター材の抵抗配分変化を生じる。
【0010】
そこで、これらの問題点を改善するために、従来から例えば特開平2−78554に示される液体噴射記録ヘッドの製造方法、つまりヒーターを発熱させて、その発熱による加熱作用で、ヒーター材の抵抗値が安定するのに十分なだけ電気信号を電極から印加し、ヒーター材を加熱処理するエージング過程を含んだ製造方法が行われてきた。そして、このような製造方法を採用することで、ヒーター抵抗値変化による記録画像の品位の劣化やヒーター材の耐久劣化が生じないようにすることができるようになり、長時間に渡る記録においても常に良好で安定した液滴吐出状態が得られる液体噴射記録ヘッドが提供されるようになった。
【特許文献1】特公昭61−59914号公報
【特許文献2】米国特許第4712172号公報
【特許文献3】米国特許第4463359号公報
【特許文献4】米国特許第4296421号公報
【特許文献5】米国特許第4719472号公報
【特許文献6】特開平2−78554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、該エージング処理は、該発熱抵抗体の抵抗値を安定させる一方で、前記発熱抵抗体の発熱による発熱抵抗体、発熱抵抗体膜と基板の界面、発熱抵抗体膜とその保護層の界面および発熱抵抗体の保護層の劣化促進し、発熱抵抗体の断線、発熱抵抗体の膜剥がれおよび保護膜の膜剥がれを引き起こし易くし、前記記録ヘッドの寿命を短くする。したがって、該エージング処理は、該発熱抵抗体の抵抗値が安定するのに十分な電気信号を印加し、且つその電気信号は最小であることが望ましい。
【0012】
ところが、TaXSiで表されるサーメット薄膜を該発熱抵抗体として使用した場合、該エージング処理を目的とした発熱抵抗体の抵抗値が安定するのに十分且つ最小な電気信号は、該サーメット薄膜の組成に依存しており、且つ該エージング処理に最適な電気信号は経験的に決める以外の方法が無かった為、前記記録ヘッドの開発を著しく遅らせていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電気信号を印加することで、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生するために用いられるものであって、発熱抵抗体と該発熱抵抗体に電気信号を印加するための一対の電極とを含む電気熱エネルギー変換体を有し、且つ窒素(N)とタンタル(Ta)に第三の成分としてSiもしくはBを添加したサーメット薄膜(TaXN薄膜:N=Si, B)を発熱抵抗体として使用した液体噴射記録ヘッドの製造方法は、電気信号を前記電極から印加する該発熱抵抗体の加熱処理よるエージング過程において、該電気信号は該発熱抵抗体内部のTa-Nの結合が安定化するものであることを特徴とする。
【0014】
我々は、TaとNおよびX(X=SiまたはB)を構成元素とするサーメット薄膜を該発熱抵抗体として使用した液体噴射記録ヘッドにおいて、前述のヒーター抵抗の変化は、Ta-Nの結合状態が変化することが原因であることを、詳細な検討により見出した。該エージング処理を該液体ヘッドに施す場合、Ta-N結合を安定させるのに十分となるような該電気信号であれば、前述の発熱抵抗体の抵抗変化を抑制するのに必要十分である。また、エージング処理を行う場合の該電気信号は、Ta−Nの結合を安定化させるのに必要最小であることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、記録の初期の段階から常に良好な液滴吐出状態を得るために好適な範囲内にヒーターの抵抗変化が抑えられ、特に長時間に渡る記録においても、常に良好で安定した液滴吐出状態が得られる液体噴射記録ヘッドの製造方法を提供することができる。
【0016】
また、記録装置のヒーターにおける長期に渡る繰り返し発熱に対して高耐久寿命の液体噴射記録ヘッドが得られる液体噴射記録ヘッドの製造方法を提供することができる。
【0017】
さらにまた、常に良好な液滴吐出状態を得るために好適な範囲内にヒーター抵抗変化が抑えられ、特に長時間に渡る記録においても、常に良好で安定した液滴吐出状態が得られる液体噴射記録ヘッドを提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の方法により製造された液体噴射記録ヘッドを搭載する液体噴射記録装置の一例を、また図2は図1に示す液体噴射記録ヘッドの主要部の構成の一例を示す。
【0020】
図1において、1は液体噴射記録ヘッド、2は記録ヘッド1およびサブインクタンク3を搭載し、案内軸4に沿って往復移動するキャリッジ、5は記録ヘッド1の対向位置に被記録材(記録シート)6を保持するプラテンである。なお、サブタンク3には記録液貯蔵用のメインタンク7から供給チューブ8によって記録液が供給され、更にここから供給管ユニット9を介して記録ヘッド1の液室10(図2参照)に導かれる。なお、上述構成は、前記記録ヘッド1,前記サブインクタンク3,前記メインタンク7,前記供給チューブ8,前記供給管ユニット9を1つにまとめてユニット化したもの、または、上述の機能をすべてもつ記録ヘッドにしたものであってもかまわない。11はフレキシブルプリント配線基板(以下でFPCという)であり、このFPC11により記録装置の吐出信号発生手段12,予備吐出処理制御手段13および予備加熱処理制御手段14等からの吐出信号を始めとする各種制御信号が記録ヘッド1に供給される。15は供給管ユニット9やFPC11の端部、更に記録ヘッド1等をベースプレート16との間に保持する押え部材である。
【0021】
一方、記録を行う記録ヘッド1に対し、その記録領域外のホームポジション近傍で記録ヘッド1に当接して吐出回復動作およびキャッピング処理を行うために回復ポンプ17,キャップ部材18およびその間を連絡する吸引チューブ19が設けられていて、回復処理制御手段20によって制御される。かくして、予備吐出処理制御手段13,予備加熱処理制御手段14による記録ヘッド1側の制御と相俟って、高品位の記録を得るために、互いに独立または一連のモードによって対応した動作が行われる。
【0022】
ついで、図2に従って記録ヘッド1の構成について説明しておく。ここで、1Aはヘッド基板であり、ヘッド基板1A上には共通液室10と、これに連通する液路21,記録液(以下でインクという)を吐出させる吐出口22,各液路21に設けられるヒーター23がそれぞれ設けられ、更にその上部に天板24を重ね合わせた形で記録ヘッド1が構成される。
【0023】
このように構成した記録装置を用いて記録を行なうには、まずメインタンク7から、供給チューブ8および供給管ユニット9を介して、サブタンク2,液室10および液路21内にインクを充填する。次に、FPC11により記録ヘッド1のヒーター23に電気信号、即ち吐出信号発生手段12からの電気信号を印加する。これによってヒーター23を発熱させることにより、熱エネルギーがヒーター23近傍の液路21内に存在するインクに付与される。かくしてインクに対してヒーター23から熱エネルギーが付与されることでその部分において瞬間的にインクの体積増大を伴う気泡が発生し、ヒーター23より下流側(吐出口22側)に存在するインクが吐出口22から吐出されて、飛翔的インク滴が形成される。そこでこのインク滴を、対向位置の紙等の被記録材に付着させ所望の画像記録が行なわれる。なお、その記録時には、記録ヘッド1からのインクの吐出を適正化させ、高品位の画像を形成する目的で、予備吐出処理,予備加熱処理,記録ヘッドの回復処理が行なわれる。これらの処理は、予備吐出処理制御手段13,予備加熱処理手段14等によって制御される。
【0024】
なお前記予備吐出処理や予備加熱処理は、主としてインクの粘度等を調整するものである。また回復処理は、記録ヘッド1をキャップ部材18と当接させた状態で記録ヘッド1内のインクを加圧もしくは吸引することで吐出口22の目詰まりなどを回復させるものである。
【0025】
本発明液体噴射記録ヘッドの製造方法は、上記のような構成の装置に装着される液体噴射記録ヘッドを製造する際のいずれかの段階行われる発熱抵抗体に電気信号を印加するエージング工程において、該電気信号は該発熱抵抗体内部のTa-N結合が安定化するものであることを特徴とする。
【0026】
以下に図面を用いて本発明の実施例を詳細かつ具体的に説明する。
【0027】
図2に示したような構成ヘッドの構成の記録ヘッドを多数製作し、液体噴射記録装置に装着する前に、前述のパルス印加によるエージング処理をおこない、ヒーターのエージング処理の効果と、Ta-Nの結合の変化を調べた。
【0028】
記録ヘッドの構成
基板 Si(SiO2の熱酸化膜付) 1mm
発熱抵抗体 窒化タンタル(スパッタ膜) 0.1μm
電極 Al 0.5μm
保護層 SiO2 2μm
ヒーター加熱処理用電気信号印加条件
パルス幅: 7μs 、周波数:2kHz
電圧: 20〜26V
膜内のTa-N結合の変化は、X線回折法にて評価した。
【0029】
図3および図4は、エージングを行う前と、上記のパルスを108回印加してエージングを行った後の、発熱抵抗体のX線回折パターンである。矢印2Aで示したピークはSiの基板によるものである。エージング処理を行う前は、2θ=37°の近傍になだらかな信号が確認できるが、その構造はアモルファス状態であるといってよい。それに対し、図4では、急峻なピークが確認される。これらのピークは、Ta2Nの結晶構造から生ずるものと一致する。図5は、パルスの数を変えてエージングを行ったときの、図4で示されたX線回折ピークの大きさである。図3から図5までの結果から、TaとNおよびSiを構成元素とするスパッタ膜にエージング処理を施すことにより、膜の内部のTa−N結合状態が変化することが分かる。また、図4に示されたX線回折のピーク値とヒーター抵抗値変化率の関係を調べたところ図6に示した結果が得られた。図6から、X線回折のカウント数が25000を超えてTa−N結合が安定した後は、ヒーターの抵抗変化率ΔR/Rが小さく、該記録ヘッドを液体噴射記録装置に装着して使用したとき、長時間に渡る記録においても常に良好で安定した液滴吐出状態が得られる。
【0030】
なお、ΔR/Rは、108文字使用後のヒーターの抵抗Rの変化率の平均である。
【0031】
また、以上に述べたTa−N結合を安定化させる処理は、必ずしも前述の実施例に述べられたTa2Nの結晶を促すものである必要はない。図7は、Nの組成比を変えて成膜した該発熱抵抗体に対して、上で述べた同様の検討を行った場合の、X線回折の結果である。図7で確認されるピーク位置は、Si基板およびTaNのそれと一致する。この場合も上述の検討結果と同様に、Ta−N結合が安定した後は、ヒーターの抵抗率変化が小さく、該記録ヘッドを液体噴射記録装置に装着して使用したとき、長時間に渡る記録においても常に良好で安定した液滴吐出状態が得られる。
【0032】
更にまた、以上に述べたTa−N結合の状態を評価する方法は、実施例1で述べた、X線回折法である必要性は無い。たとえば、赤外線分光法、または電子磁気共鳴法(EMR)核磁気共鳴法(NMR)、またはメスバウワー分光法でもよい。
【0033】
なお、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法における上記ヒーターのTa−N結合の安定化処理は、従来の液体噴射記録ヘッドおよびそれを搭載した液体噴射記録装置の製造方法と同じであり、その詳細の説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る液体噴射記録装置の構成図である。
【図2】図1の装置に装着される本発明に係る液体噴射記録ヘッドの構成の一例を示す斜視図である。
【図3】発熱抵抗体薄膜を成膜直後にX線回折法で測定した結果である。
【図4】エージング処理を行った後に、発熱抵抗体薄膜をX線回折法で測定した結果である。
【図5】エージング処理時間と、図5におけるX線回折信号のピーク値の関係を表した特性曲線図である。
【図6】図5におけるX線回折信号のピーク値と、ヘッドにパルスを印加して耐久試験を行ったときの抵抗の変化率ΔR/Rの変化の関係を表す特性曲線図である。
【図7】図4とNの組成比が異なるTaSiN膜に対し、エージング処理を行った後に発熱抵抗体薄膜をX線回折法で測定した結果である。
【符号の説明】
【0035】
1 記録ヘッド
1A 基板
2 キャリッジ
3 サブタンク
11 フレキシブルプリント配線基板
12 吐出信号発生手段
13 予備吐出処理制御手段
14 予備加熱処理制御手段
21 液路
22 吐出口
23 ヒーター
23A,23B 電極
2A Si基板によるX線回線の信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を印加することで、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生するために用いられるものであって、発熱抵抗体と該発熱抵抗体に電気信号を印加するための一対の電極とを含む電気熱エネルギー変換体を有し、且つ窒素(N)とタンタル(Ta)に第三の成分としてSiもしくはBを添加したサーメット薄膜(TaXN薄膜:N=Si, B)を発熱抵抗体として使用した液体噴射記録ヘッドの製造方法における、電気信号を前記電極から印加する該発熱抵抗体の加熱処理よるエージング過程において、該電気信号は該発熱抵抗体内部のTa-Nの結合が安定化するものであることを特徴とする液体噴射記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
電気信号を印加することで、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生するために用いられるものであって、発熱抵抗体と該発熱抵抗体に電気信号を印加するための一対の電極とを含む電気熱エネルギー変換体を有し、且つ窒素(N)とタンタル(Ta)に第三の成分としてSiもしくはBを添加したサーメット薄膜(TaXN薄膜:N=Si, B)を発熱抵抗体として使用した液体噴射記録ヘッドにおいて、該発熱抵抗体内部のTa-Nの結合が安定化するのに十分な電気信号を前記電極から印加する該発熱抵抗体の加熱処理よるエージング過程を含んで製造されたことを特徴とする液体噴射記録ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−221711(P2008−221711A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65284(P2007−65284)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】