説明

液体容器および液体噴射装置

【課題】 不透明な液体容器内における液体の残量を正確に検知して、液体容器内の液体を最後まで使い切ることができる液体容器及び液体噴射装置を提供することにある。
【解決手段】 インク1が収容袋12の中で取り得る最上面1bとインク1が使用されて減少した液面1aとの液面の差を、液体残量検出部41の長軸延長方向で検出することによって、インク1の変化量を精度良く検出するとともに、インク1の残量を精度良く検出することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を液体容器に収容し、その液体容器の中にある液体の量を検知し報知する、液体容器および液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体をターゲットに対して噴射させる液体噴射装置として、インクジェットプリンタが広く用いられている。詳しくは、このインクジェットプリンタは、キャリッジと、同キャリッジに搭載された記録ヘッドと、液体としてのインクを貯留するインク容器とを備えている。キャリッジを記録媒体に対して相対移動させながら、インク容器から記録ヘッドへとインクを供給し、記録ヘッドに形成されたノズルからインクを吐出することによって、記録媒体に対して印刷が行われるようになっている。
【0003】
しかし、昨今においては印刷の多様化に伴い、光が当るとその特性が劣化するインクがあり、インクを収容するインク容器は不透明な材質にして光がインクに当らないようにしている。このため、インクジェットプリンタを使用しているユーザが、インク容器を見てもインクの残量が分からないという問題が発生していた。
【0004】
また、カラー化に伴って複数の色を持ったインクがそれぞれ収容されている複数のインク容器からインクが供給されて、記録ヘッドのノズルから吐出されて記録媒体に対して印刷が行われる。この印刷するための印刷データでの各色のインクがどの位含まれているかを分析して、それぞれのインクはこの分析に基づいて使用されたものと見なして計算していた(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−71533号公報(第5頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インク容器に収容されるインクの量は、製造時の容器の内容積のバラツキによって異なり、使用されたであろう量は特許文献1によっても近似される所があるが、インク容器に収容されるインクの量のバラツキは考慮されていないため、インク容器内のインクを使い切ることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、不透明な液体容器内における液体の残量を正確に検知して、液体容器内の液体を最後まで使い切ることができる液体容器及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、液体を封入する収容袋を備えた液体容器であって、前記収容袋の中の前記液体の液面に浮遊する磁性を備えた浮き部と、前記浮き部が有する磁力を検出する複数のコイル部で成る浮き検出部とを備えたことを要旨とする。
【0009】
この発明によれば、液体を封入する収容袋を備えた液体容器において、収容袋の中の液体の液面に浮遊する磁性を備えた浮き部から発する磁力を、浮き検出部が有する複数のコイル部で検出することができる。したがって、収容袋内の液体の残量を正確に検知して液体容器内の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0010】
また、本発明の液体容器では、前記収容袋と連通して成る、前記収容袋の中に残存する前記液体の量を検出する液体残量検出部と、前記液体残量検出部は、前記液体の液面に浮遊する磁性を備えた浮き部と、前記浮き部が有する磁力を検出する複数のコイル部で成る浮き検出部とを備えたことを要旨とする。
【0011】
これによれば、収容袋と液体残量検出部とは連通しているため、収容袋の中にある液体の液面と液体残量検出部の中にある液体の液面とは同レベルとなる。したがって、液体残量検出部の中にある液体の液面の位置を検知することによって収容袋の中にある液体の液面を知ることができる。本発明は、この液体残量検出部に、液体残量検出部の中にある液体の液面に浮遊する磁性を備えた浮き部と、浮き部が有する磁力を検出する複数のコイル部で成る浮き検出部とを備えたことにより、液体残量検出部の中にある液体の液面を検出することができる。したがって、収容袋内の液体の残量を正確に検知して液体容器内の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0012】
また、本発明の液体容器では、前記収容袋と前記液体残量検出部とが連通して成る箇所の近傍に、前記浮き検出部を少なくともひとつ備えたことを要旨とする。
【0013】
これによれば、収容袋と液体残量検出部とが連通している箇所の近傍に浮き検出部を少なくともひとつ備えることにより、収容袋の中にある液体の残量が連通している箇所に達したことを検出することができるため、収容袋内の液体の残量を正確に検知して液体容器内の所定の量の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0014】
また、本発明は、液体を封入する収容袋を備えた液体容器であって、前記収容袋と連通して成る、前記収容袋の中に残存する前記液体の量を検出する液体残量検出部と、前記液体残量検出部の前記液体の液面に浮遊して光を反射する反射面を備えた浮き部と、前記液体残量検出部の端部に配設された受発光装置とを備え、前記受発光装置から発光した光が、前記浮き部が備えている反射面に当って反射し、反射した光が前記受発光装置によって受光されて前記浮き部までの距離を計測して、前記収容袋に封入されている前記液体の量を検出することを要旨とする。
【0015】
これによれば、液体残量検出部の液体の液面に浮遊して光を反射する反射面を備えた浮き部に対して、液体残量検出部の端部に配設された受発光装置から光が発光され、浮き部が備えている反射面で該光が反射して再び受発光装置が受光することによって浮き部までの距離を計測するため、常に、あるいは所望の時に浮き部との距離を計測することができ、収容袋内の液体の残量を正確に検知して液体容器内の所定の量の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0016】
また、本発明の液体容器では、前記液体残量検出部の少なくともひとつの端部は、前記液体が前記収容袋の中で取り得る最上面よりも高く、前記液体残量検出部によって前記収容袋の中にある前記液体の量を前記液体残量検出部の長軸延長方向で検出することを要旨とする。
【0017】
これによれば、液体残量検出部の少なくともひとつの端部は、液体が収容袋の中で取り得る最上面よりも高く配設されている。したがって、収容袋に液体が封入されて充満された場合の液体の液面よりも液体残量検出部の少なくともひとつの端部の方が高いため、いかなる場合でも収容袋に封入されている液体の液面を液体残量検出部の中に確保することができる。しかも、液体残量検出部によって収容袋の中にある液体の量を液体残量検出部の長軸延長方向で検出することによって、収容袋の略鉛直方向(高さ方向)での液体の量の検出を収容袋の略水平方向で検出することができるため、収容袋内の液体の残量を正確に検知して液体容器内の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0018】
また、本発明の液体容器では、前記液体残量検出部は、前記収容袋の周囲に巻かれていることを要旨とする。
【0019】
これによれば、液体残量検出部は、長軸延長方向に長ければ長いほど収容袋内の液体の残量を正確に検知することができる。そこで、本発明では、液体残量検出部を収容袋の周囲に巻きつくように配設して、液体残量検出部の長さをより長く確保したため、収容袋内の液体の残量を正確に検知して液体容器内の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0020】
また、本発明の液体容器では、前記収容袋および前記液体残量検出部は、不透明な材質から成ることを要旨とする。
【0021】
これによれば、収容袋および液体残量検出部に封入される液体が耐光性を持ち合わせていない場合は、外光が収容袋および液体残量検出部に侵入しないように、その材質を不透明な材質にする必要がある。本発明では、収容袋および液体残量検出部が不透明な材質から成っていても、液体の液面に浮遊する磁性を備えた浮き部の磁力が収容袋および液体残量検出部を貫通して、複数のコイル部で成る浮き検出部で検出することができるため、収容袋内の液体の残量を正確に検知して液体容器内の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0022】
また、本発明の液体容器では、前記収容袋と前記液体残量検出部とが連通している高さは、前記液体が前記収容袋の中で取り得る最上面よりも低いことを要旨とする。
【0023】
これによれば、収容袋と液体残量検出部とが連通している高さは、液体が収容袋の中で取り得る最上面よりも低くすることで、収容袋の中に液体を残す量を任意に設定することができる。これにより、液体の中に粉体が混入されている場合に、収容袋の最も下部にある液体には、混入された粉体が沈澱して使用しない方がよい場合があるため、収容袋と液体残量検出部とが連通している高さは収容袋の最下部より上方に設けることにより、この粉体の吐出を防いで、例えば、液体噴射装置等から吐出する際のインクジェットヘッドでのインクの詰りを防ぐことができる。したがって、収容袋内の液体の残量を正確に検知して液体容器内の有効な範囲の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0024】
また、本発明は、液体噴射装置であって、前記発明の液体容器と、前記浮き部の磁性によって前記液体残量検出部の複数の前記コイル部の内のひとつに発生する起電流を検知する電流検知手段と、前記電流検知手段によって検知された起電流に基づいて、前記収容袋の中に残存する前記液体の量を算出する液体残存量演算部とを備えたことを要旨とする。
【0025】
これによれば、本発明の液体噴射装置は、本発明の液体容器を使用して、浮き部の磁性によって液体残量検出部の複数のコイル部の内のひとつに発生する起電流を検知する電流検知手段と、電流検知手段によって検知された起電流に基づいて、収容袋の中に残存する液体の量を算出する液体残存量演算部とを備えることにより、液体噴射装置として、液体容器の中にある液体の残量を正確に検知して、液体容器内の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0026】
また、本発明は、液体噴射装置であって、前記発明の液体容器と、前記受発光装置で計測された距離に基づいて、前記収容袋の中に残存する前記液体の量を算出する液体残存量演算部とを備えたことを要旨とする。
【0027】
これによれば、本発明の液体噴射装置は、本発明の液体容器を使用して、受発光装置で計測された距離に基づいて、液体残存量演算部が収容袋の中に残存する液体の量を算出することができるため、液体噴射装置として、液体容器の中にある液体の残量を正確に検知して、液体容器内の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0028】
また、本発明の液体噴射装置では、前記液体残存量演算部によって演算された前記収容袋の中に残存する前記液体の量を報知する表示部とを備えたことを要旨とする。
【0029】
これによれば、本発明の液体噴射装置は、本発明の液体容器の中の液体が現在どの位残存しているかが液体残存量演算部によって演算され、その演算された結果を液体が残存する量として表示部に表示して報知することにより、液体噴射装置を使用しているユーザに液体容器の中の液体が現在どの位残存しているかを報知することができる。したがって、ユーザは液体容器内の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0030】
また、本発明の液体噴射装置では、前記液体残存量演算部によって演算された前記収容袋の中に残存する前記液体の量を音で報知するスピーカとを備えたことを要旨とする。
【0031】
これによれば、本発明の液体噴射装置は、本発明の液体容器の中の液体が現在どの位残存しているかが液体残存量演算部によって演算され、その演算された結果を液体が残存する量を音で報知するスピーカを備えることにより、液体噴射装置から離れた場所で液体噴射装置を使用しているユーザに、液体容器の中の液体が現在どの位残存しているかを報知することができる。したがって、ユーザは液体噴射装置から離れていても、液体容器内の液体の残量を知ることができるので、液体容器内の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0032】
また、本発明の液体噴射装置では、前記液体容器の中にある前記液体の量が所定値に達した場合に、前記液体容器の交換を前記表示部または前記スピーカの少なくともどちらか一方によって報知することを要旨とする。
【0033】
これによれば、液体残存量演算部によって演算された結果が、液体の最後の近傍の場合は、液体が終了する旨の予告を表示部またはスピーカの少なくともどちらか一方によって報知することにより、予め新しい液体容器を準備しておくことができるとともに液体容器内の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した第一の実施形態を、図1〜図2に基づいて説明する。
【0035】
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態のインクパックユニットを装着した液体噴射装置を示す斜視図である。
【0036】
図1では、液体噴射装置としてのプリンタ20は、本体20aの前部右側に格納部22aを備える場合と、上部右側に格納部22bを備える場合とを図示している。説明は、格納部22a,22bを同時に備えている場合について説明する。格納部22aには、液体容器としての横型のインクパック10aが収容可能となっており、格納部22bには、液体容器としての縦型のインクパック10bが収容可能になっている。格納部22a,22bには1つずつの供給針26a,26b(図示せず)が対向配置されており、各供給針26a,26bはチューブ27を通じて記録ヘッド21に接続されていて、インクパック10a,10bの中に封入されている液体としてのインクがそれぞれのチューブ27を経て記録ヘッド21に供給されるようになっている。
【0037】
インクパック10a,10bが格納部22a,22bにそれぞれ挿着されると、供給針26a,26bがインクパック10a,10bの液体供給部11a,11bを貫通してインクパック10a,10b内に挿入される。記録ヘッド21は主走査方向(同図における矢印方向)に往復移動可能となっており、記録用紙Pは副走査方向(主走査方向と直交する方向)に搬送されるようになっている。記録ヘッド21の主走査方向への移動動作と記録用紙Pの副走査方向への搬送動作が交互に行われることによって、記録用紙Pには記録ヘッド21から吐出されるインクにより印刷データに基づく画像が印刷される。この印刷動作に伴い、インクパック10a,10b内のインクが供給針26a,26b及びチューブ27を通じて記録ヘッド21に供給されて、記録用紙P上に印刷が施される。インクパック10a,10bは、インクの色別に複数セットすることができる。
【0038】
また、本体20aの上部には、表示画面80が配設され、インクパック10a,10bの中のインクの残量を表示したり、インクの残量がエンド(インクが所定の残量になること)に近くなった場合に、インクが終わりそうだというメッセージを表示したりすることができる。表示画面80は、この他に印刷データの画像表示、印刷枚数等の印刷状況を示す表示、プリンタ20のトラブル状況の表示等と組み合せて使用してもよい。本実施形態では、表示画面80が液晶等を使用した表示装置として説明したが、単に複数のランプの点灯する組合せまたは色によって報知してもよい。
【0039】
また、本体20aの右側側面には、スピーカ81が配設され、インクパック10a,10bの中のインクの残量を音声を含む音で報知したり、インクの残量がエンド(インクが所定の残量になること)に近くなった場合に、インクが終わりそうだという音声を含む音で報知したりすることができる。さらに、スピーカ81を前述の表示画面80と組み合せて報知してもよい。したがって、印刷枚数等の印刷状況、プリンタ20のトラブル状況等について音声等で報知してもよい。本実施形態では、音で報知するようにしたが、ネットワーク上で使用している場合は、インクが終わりそうだというメッセージをネットワークを通じてクライアントに報知してもよい。
【0040】
図2(a)は、横型のインクパック10aのインク残量の検出を示す模式図であり、図2(b)は、浮き部42と複数のコイル部43の部分拡大図である。
インクパック10aは、液体としてのインク1と、インク1を封入している収容袋12と、プリンタ20にインク1を供給する液体供給部11aと、その収容袋12と連通して成る箇所としての連通部41aで連通している液体残量検出部41とを備えている。
【0041】
収容袋12は、複数枚のインクパックフィルム(以下、単にフィルムという)12aがその周縁部で接合されてソフトケース状に形成されている。フィルム12aは、例えばガスバリア性を有するポリエチレンフィルムにアルミニウムを蒸着したラミネートフィルムまたはアルミ箔を中間層として外側をナイロンフィルム、内側をポリエチレンフィルムにより挟み込んだ構成のアルミラミネートフィルム等からなる。
【0042】
液体残量検出部41には、収容袋12の液面1aと同じ高さのインク1の液面1aに浮遊する磁性を備えた浮き部42と、浮き部42が有する磁力を検出する複数(本実施形態では7個)のコイル部43a〜43gで成る浮き検出部44とを備えている。液体残量検出部41の少なくともひとつの端部41bは、インク1が収容袋12の中で取り得る最上面1bよりも高く配設されている。液体残量検出部41は、複数であってもよい。
【0043】
同図で、横型のインクパック10aのインク1の残量を正確に検知する方法について説明する。
例えば、収容袋12にインク1が充満された場合に、インク1の最上面1bは、液体としてのインク1が収容袋12の中で取り得る最上面である。プリンタ20で印刷が実行され液体供給部11aよりインク1が供給され、インク1は液面1aまで減少してきたものとする。この場合に、インク1が収容袋12の中で取り得る最上面1bとインク1が使用されて減少した液面1aとの鉛直方向の差は、高さLである。横型のインクパック10aは扁平状の形状を成しているため、インク1が減少した量を高さLの鉛直方向で検出しようとした場合、その変化量が極僅かのために検出精度が確保できなかった。
【0044】
そこで、本実施形態では、インク1が収容袋12の中で取り得る最上面1bとインク1が使用されて減少した液面1aとの液面の差を、液体残量検出部41の長軸延長方向で検出することによって、インク1の変化量を精度良く検出するとともに、インク1の残量を精度良く検出することができるようにした。
【0045】
液体残量検出部41は、その少なくともひとつの端部41bは収容袋12の中で液体としてのインク1が取り得る最上面1bより高いため、収容袋12と連通部41aで連通している液体残量検出部41の中には、必ずインク1が取り得る最上面1bを含むこととなる。液体残量検出部41の中のインク1の液面1aには、液面に浮遊する磁性を備えた浮き部42が備えられ、インク1が取り得る最上面1bの時、即ちインクパック10aが新品のときは、浮き部42bで示す位置のインク1の液面に浮遊している。
【0046】
収容袋12の中で液体としてのインク1が取り得る最上面1bを含む近傍の液体残量検出部41に、浮き部42が有する磁力を検出するコイル部43aが配設されている。浮き部42が有する磁性物(磁石等)が発する磁力線がコイル部43aを通過するため、コイル部43aには電流が生ずる。この電流が発生した回路から電流をプリンタ20に送ることによって、収容袋12の中のインク1の液面が最上面1bであることを認識することができる。また、浮き部42からの磁性によって発生する電流は微弱なため、プリンタ20側に増幅回路を備え確実に電流を捕らえるようになっている。
【0047】
また、インク1がプリンタ20によって使用され最上面1bから液面1aになった場合、コイル部43dにインク1の液面1aに浮遊している浮き部42の磁力線が通過して電流が発生する。本実施形態では、浮き部42を使ってコイル部43aからコイル部43dの間で複数のコイル部43b,43cを使用して、液体残量検出部41の長軸延長方向(寸法Jの方向)で検出するため、高さLの鉛直方向での検出よりも検出する精度が向上する。また、液体残量検出部41をインクパック10aの周囲に曲げて配設すれば、液体容器として小型化することができる。
【0048】
同図(b)では、主に浮き部42の詳しい説明をする。
収容袋12と連通している液体残量検出部41の中では、収容袋12の中のインク1の液面1aと同じ高さの液面1aが得られる。この液面1aに浮き部42が浮遊している。浮き部42は、浮き部本体42aの中に磁石45と気体46とで構成されている。気体46は、プラスチックの射出成形時に形成する方法と後で注入する方法とがある。磁性を有する磁石の比重は、インク1の比重よりも大きいため、気体46を浮き部本体42aの中に付設して浮き部42全体の比重を小さくしてインク1の液面1aに浮遊している。なお、気体は空気、ヘリウム、窒素等の安定した物性の気体が好ましい。
【0049】
プリンタ20が使用され、液面1aが下降してきて磁石45の磁力線によりコイル部43a〜43gのいずれかひとつに電流が発生する。この場合、発生する電流は徐々に大きくなり、その後、徐々に小さくなるように推移する。最も大きくなったときを選別して選択すれば、位置精度がさらに向上する。
【0050】
プリンタ20でインク1が使用され、連通部41aで浮き部42が検出されると、インクエンドを知らせる信号が出て、ユーザインタフェイス(以降、ユーザI/Fという)を介して、その情報に基づく信号を表示部およびスピーカに送り、画像表示、文字表示、音、音声等およびそれらをそれぞれ組み合せて、インクエンドであることをユーザに報知する。
【0051】
以下、第一の実施形態の効果を記載する。
(1)収容袋としてのインクパック10aに連通している液体残量検出部41の中にインク1の液面1aに磁性を備えた浮き部42を浮遊させ、浮き検出部44が有する複数のコイル部43a〜43gに発生する電流を検知することによって、液体残量検出部41の長軸延長方向で検出することができ、収容袋としてのインクパック10a内の液体としてのインク1の残量を正確に検知して液体容器内の所定の量の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0052】
以下、本発明を具体化した第二の実施形態を、図3に基づいて説明する。第一の実施形態と異なる点について説明する。
【0053】
(第二の実施形態)
図3は、縦型のインクパック10bの構成を示す断面図である。
プリンタ20の本体20aには、インクパック10bの液体供給部11bには、プリンタ20からインクパック10bにインク1が逆流しないように逆止弁(図示せず)が備えられ、インクケース50に挿着されている。プリンタ20の本体20aにはインクパック10bに対向して供給針26b(インクパック10aの場合は26aが対向して配設されている)が配設されている。
【0054】
インクケース50に挿着されたインクパック10bを上方からプリンタ20に挿着すると、供給針26bが液体供給部11bに挿入され、インクパック10bの中のインク1がチューブ27を介してプリンタ20の記録ヘッド21(図1参照)に供給され、記録用紙Pに印刷される。
【0055】
本実施形態は、液体供給部11bに液体残量検出部51が係合され、係合されている液体残量検出部51の下部には、インクパック10bと液体残量検出部51とが連通する連通部52が付設され、インクパック10bと液体残量検出部51でのインク1の液面1aは同じ高さとなっている。
【0056】
液体残量検出部51の内側には、浮き部53がインク1の液面1aに浮遊している。また、液体残量検出部51の外側には、複数のコイル部54が固着されている。液体残量検出部51の外側は、回路基板になっていて複数のコイル部54がこの回路パターンにハンダ付けされている。さらに、その上から樹脂によってオーバーコートされていて、インク1との化学的な反応を防止している。
【0057】
液体残量検出部51の上部には、液体残量検出部51の回路とプリンタ20の回路を連結させるためのプリンタ連結部51aが付設され、プリンタ側コネクタ55と電気的に接続して、浮き部53が有する磁性によってコイル部54に発生した起電流をプリンタ20へ送っている。
【0058】
また、液体残量検出部51はインクパック10bの中央に配設されていて、インク1が使用されるとフィルム12aが内側に変形して小さくなってくる。中央に何も無い場合は、フィルム12a同士が張り付き合って壁を作り、上方にあるインク1が下方に移動できないようになってしまう。本実施形態では、液体残量検出部51を中央に配設することによって、フィルム12a同士が張り付き合うことを防止することができる。
【0059】
浮き部53が、最も下方のコイル54aに至ると、前記実施形態と同様に表示部およびスピーカによって、ユーザにインクエンドを報知する。また、栓56を外すことによって、容易にインク1を補充することができ、インクパック10bの部材を廃棄することなく有効に繰り返し使用することができる。
【0060】
以下、第二の実施形態の効果を記載する。
(2)液体残量検出部51を中央に配設することによって、フィルム12a同士が張り付き合うことを防止することができ、液体容器内の所定の量の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0061】
以下、本発明を具体化した第三の実施形態を、図4に基づいて説明する。第一の実施形態と異なる点について説明する。
【0062】
(第三の実施形態)
図4(a)は、横型のインクパック10aの構成を示す断面図であり、図4(b)は、浮き部60の部分拡大断面図である。
本実施形態は、インク1の液面1aに光を反射する反射面60aを有する浮き部60に、液体残量検出部61の端部61bに密着させた受発光装置62からの光63を当て、発光した時間T1と受光した時間T2の差で距離を計測して、インク1の残存量を報知するものである。
【0063】
図4(a)で、インクパック10aと連通部61aで連通している液体残量検出部61の内部には、反射面60aを有する浮き部60がインク1の液面1aに浮遊している。液体残量検出部61の端部61bは、インク1がインクパック10aで取り得る最も高い面としての最上面1bよりも高くなっている。その端部61bには、受発光装置62が密着して取り付けられている。この受発光装置62はプリンタ20側に付設され、インクパック10aを交換する際は、受発光装置62を液体残量検出部61の端部61bから取り外して交換する。
【0064】
図4(b)で、受発光装置62から発せられた発光63aは、液体残量検出部61内のインク1の液面1aに浮遊している浮き部60の反射面60aによって反射する。反射した反射光63bは、受発光装置62に戻り受光される。発光した時間T1と受光した時間T2との差とこの光の持つ波長によって、浮き部60の反射面60aまでの距離が計測できる。
【0065】
浮き部60は、浮き部本体60bと、浮力を得る気体46(図2参照)を封じ込めた部屋と、反射面60aを常に受発光装置62に向けておくための錘64とを備えている。浮き部60は、インク1に対して蓋の役目も果たしていて、受発光装置62からの光63は、反射面60aで反射するために、インクに対する影響を最小限に抑えることができる。
【0066】
また、液体残量検出部61が屈曲していても、受発光装置62からの光63は、液体残量検出部61の内壁面で反射しながら前進し、浮き部60の反射面60aで反射して再び受発光装置62に戻ってその距離を計測することができる。
【0067】
このため、液体残量検出部61の材質は不透明な物質で反射率が高い物質ほどよい。例えば、アルミニュウムまたはニッケル等を内壁面に蒸着、メッキ、塗装、張り合わせたプラスチックチューブがよい。プラスチックの材質は、フイルム12aと同系列な程好ましい。
【0068】
以下、第三の実施形態の効果を記載する。
(3)受発光装置62を液体残量検出部61の端部61bに付設することにより、連続して浮き部60の位置を計測することができ、いつでも収容袋内の液体の残量を正確に検知して液体容器内の所定の量の液体を最後まで有効に使い切ることができる。
【0069】
図5は、本発明の第一の実施形態〜第三の実施形態におけるのプリンタ20の電気ブロック図である。
プリンタ20は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)100と、ROM(Read Only Memory)101と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)102及びRAM(Random Access Memory)103とを備えている。また、ユーザインタフェイス(以降、ユーザI/Fという)104と、処理部110と、ASIC(Application Specific IC)107とを有し、これらはデータバス109を介してそれぞれ互いに電気的に接続されている。
【0070】
CPU100がROM101及びEEPROM102に記憶された制御プログラムや各種アプリケーションプログラムに基づいて各種動作を実行する。EEPROM102は、制御プログラムや各種データを電気的に内容を書き換えることができるROMである。RAM103は、処理中のデータやプログラムを格納しており、プリンタ20の電源を切ると、RAM103にあるメモリの内容は自動的に消去される。
【0071】
CPU100がアプリケーションプログラムを実行することにより実現されるソフトウェア部分と、ASIC107、ドライバ47a〜47c、紙送りモータM1、キャリッジモータM2及び圧電素子PZなどからなる印刷処理を実現するハードウェア部分とから構成される。CPU100は、ドライバ47a,47bを介して紙送りモータM1、キャリッジモータM2を駆動制御する。ASIC107は、データに画像処理を施して印刷データを生成したり、CPU100からの指令信号と印刷データに基づいてドライバ47cを介して複数の圧電素子PZを駆動制御する。
【0072】
液体残量検出部41,51,61で検出された電流または受発光装置62で計測された発光した時間T1と受光した時間T2の差のデータは、ユーザI/F104を介して処理部110に送られる。処理部110には、電流検知部111と受発光制御部112と液体残存量演算部113が備えられている。また、ユーザI/F104は、CPU100の命令に従って表示処理部114と音処理部115とに表示データおよび音データを送る。送られた表示データおよび音データに基づいて表示処理部114および音処理部115は、それぞれ、表示画面80およびスピーカ81にデータを処理してアウトプットする。
【0073】
電流検知部111は、液体残量検出部41,51,61で検出された電流を解析して、どの位置のコイル部43からのものかを判断する。受発光制御部112は、受発光装置62での発光した時間T1と受光した時間T2の差のデータに基づき、液体容器の中のインク1の現在位置がどこかを判断する。液体残存量演算部113は、液体容器の中のインク1の残存量または使用量を演算する。演算されたデータは、ユーザI/Fを介してアウトプットされる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第一実施形態のインクパックユニットを装着した液体噴射装置を示す斜視図。
【図2】(a)は、横型のインクパック10aのインク残量の検出を示す模式図であり、図2(b)は、浮き部42と複数のコイル部43の部分拡大図。
【図3】縦型のインクパック10bの構成を示す断面図。
【図4】(a)は、横型のインクパック10aの構成を示す断面図であり、図4(b)は、浮き部60の部分拡大断面図。
【図5】本発明の第一の実施形態〜第三の実施形態におけるのプリンタ20の電気ブロック図。
【符号の説明】
【0075】
M1…紙送りモータ、M2…キャリッジモータ、P…記録用紙、PZ…複数の圧電素子、T1…時間、T2…時間、1…インク、1a…液面、1b…最上面、10a,10b…インクパック、10a…インクパック、10b…インクパック、11a,11b…液体供給部、11a…液体供給部、12…収容袋、12a…フィルム、20…プリンタ、20a…本体、21…記録ヘッド、22a,22b…格納部、26a,26b…供給針、27…チューブ、41,51,61…液体残量検出部、41…液体残量検出部、41a…連通部、41b…端部、42…浮き部、42a…浮き部、42b…浮き部本体、43a〜43g…コイル部、44…浮き検出部、45…磁石、46…気体、47a〜47c…ドライバ、50…インクケース、51…液体残量検出部、51a…プリンタ連結部、52…連通部、53…浮き部、54…コイル部、54a…コイル、55…プリンタ側コネクタ、56…栓、60…浮き部、60a…反射面、60b…浮き部本体、61a…連通部、61b…端部、62…受発光装置、63…光、63a…発光、63b…反射光、64…錘、80…表示画面、81…スピーカ、100…CPU、101…ROM、102…EEPROM、103…RAM、104…ユーザI/F、107…ASIC、109…データバス、110…処理部、111…電流検知手段としての電流検知部、112…受発光制御部、113…液体残存量演算部、114…表示処理部、115…音処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を封入する収容袋を備えた液体容器であって、
前記収容袋の中の前記液体の液面に浮遊する磁性を備えた浮き部と、
前記浮き部が有する磁力を検出する複数のコイル部で成る浮き検出部と
を備えたことを特徴とする液体容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体容器において、
前記収容袋と連通して成る、前記収容袋の中に残存する前記液体の量を検出する液体残量検出部と、
前記液体残量検出部は、前記液体の液面に浮遊する磁性を備えた浮き部と、前記浮き部が有する磁力を検出する複数のコイル部で成る浮き検出部とを備えたことを特徴とする液体容器。
【請求項3】
請求項2に記載の液体容器において、
前記収容袋と前記液体残量検出部とが連通して成る箇所の近傍に、前記浮き検出部を少なくともひとつ備えたことを特徴とする液体容器。
【請求項4】
液体を封入する収容袋を備えた液体容器であって、
前記収容袋と連通して成る、前記収容袋の中に残存する前記液体の量を検出する液体残量検出部と、
前記液体残量検出部の前記液体の液面に浮遊して光を反射する反射面を備えた浮き部と、
前記液体残量検出部の端部に配設された受発光装置とを備え、
前記受発光装置から発光した光が、前記浮き部が備えている反射面に当って反射し、反射した光が前記受発光装置によって受光されて前記浮き部までの距離を計測して、前記収容袋に封入されている前記液体の量を検出する
ことを特徴とする液体容器。
【請求項5】
請求項2〜4に記載の液体容器において、
前記液体残量検出部の少なくともひとつの端部は、前記液体が前記収容袋の中で取り得る最上面よりも高く、前記液体残量検出部によって前記収容袋の中にある前記液体の量を長軸延長方向で検出する
ことを特徴とする液体容器。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の液体容器において、
前記液体残量検出部は、前記収容袋の周囲に巻かれていることを特徴とする液体容器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体容器において、
前記収容袋および前記液体残量検出部は、不透明な材質から成る液体容器。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか一項に記載の液体容器において、
前記収容袋と前記液体残量検出部とが連通している高さは、前記液体が前記収容袋の中で取り得る最上面よりも低いことを特徴とする液体容器。
【請求項9】
請求項1〜3,5〜8のいずれか一項に記載の液体容器と、
前記浮き部の磁性によって前記液体残量検出部の複数の前記コイル部の内のひとつに発生する起電流を検知する電流検知手段と、
前記電流検知手段によって検知された起電流に基づいて、前記収容袋の中に残存する前記液体の量を算出する液体残存量演算部と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項10】
請求項4に記載の液体容器と、
前記受発光装置で計測された距離に基づいて、前記収容袋の中に残存する前記液体の量を算出する液体残存量演算部と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の液体噴射装置において、
前記液体残存量演算部によって演算された前記収容袋の中に残存する前記液体の量を報知する表示部と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記液体残存量演算部によって演算された前記収容袋の中に残存する前記液体の量を音で報知するスピーカと
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記液体容器の中にある前記液体の量が所定値に達した場合に、前記液体容器の交換を前記表示部または前記スピーカによって報知することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−27101(P2006−27101A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209944(P2004−209944)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】