説明

液体封入式防振装置

【課題】液体封入式防振装置において、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを抑制する。
【解決手段】副流体室6に気体巻き込み抑制部材10を配設する。この気体巻き込み抑制部材10は、オリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cの上側に対向配置されて副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lを受ける受け面11a,12aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒軸を横向きにして配置される内筒体と、この内筒体の周囲を囲む外筒体と、これら内筒体と外筒体との間に介在して両者を互いに連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体で区画されて、相対的に下側に形成される主流体室及び相対的に上側に形成される副流体室と、上記ゴム弾性体の周壁に形成されてこれら主流体室と副流体室とに連通するオリフィスと、を備え、この副流体室には気体が封入された液体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体とともに空気を封入し、その空気の圧縮膨張を利用することでダイヤフラムを省略したエアダイヤフラム式の液体封入式防振装置が知られている(特許文献1及び2を参照)。この液体封入式防振装置は、筒軸を横向きにして配置される内筒体と、この内筒体の周囲を囲む外筒体と、これら内筒体と外筒体との間に介在して両者を互いに連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体で区画されて、相対的に下側に形成される主流体室及び相対的に上側に形成される副流体室と、ゴム弾性体の周壁に形成されてこれら主流体室と副流体室とに連通するオリフィスと、を備えている。各流体室には非圧縮性の流体としての液体と、圧縮性の気体としての空気とが封入されるが、使用時には、適正な防振性能が発揮できるように、主流体室は液体で満たし、副流体室は液体と空気とで満たした状態となるように構成されている。そして、液体が両流体室間をオリフィスを介して流動する際に発生する液柱共振等により、振動発生源の振動が減衰されるようになっている。
【特許文献1】特許第3902812号公報
【特許文献2】特許第3631348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の液体封入式防振装置では、液体が両流体室間をオリフィスを介して行き来する際に、液体がオリフィスの副流体室側開口から副流体室に噴出されることによって、副流体室の気体がその噴出された液体に巻き込まれて混入し、その結果として、気体が主流体室に溜まり、損失係数tanδが低下したり、そのばらつきが大きくなったりした。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筒軸を横向きにして配置される内筒体と、この内筒体の周囲を囲む外筒体と、これら内筒体と外筒体との間に介在して両者を互いに連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体で区画されて、相対的に下側に形成される主流体室及び相対的に上側に形成される副流体室と、上記ゴム弾性体の周壁に形成されてこれら主流体室と副流体室とに連通するオリフィスと、を備え、この副流体室には気体が封入された液体封入式防振装置において、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、筒軸を横向きにして配置される内筒体と、この内筒体の周囲を囲む外筒体と、これら内筒体と外筒体との間に介在して両者を互いに連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体で区画されて、相対的に下側に形成される主流体室及び相対的に上側に形成される副流体室と、上記ゴム弾性体の周壁に形成されてこれら主流体室と副流体室とに連通するオリフィスと、を備え、この副流体室には気体が封入された液体封入式防振装置であって、上記副流体室に配設されているとともに、上記オリフィスの副流体室側開口の上側に対向配置されて上記副流体室側開口から噴出された液体を受ける受け面を有する気体巻き込み抑制部材をさらに備えたことを特徴とするものである。
【0006】
これにより、副流体室に、オリフィスの副流体室側開口の上側に対向配置されてその副流体室側開口から噴出された液体を受ける受け面を有する気体巻き込み抑制部材を配設しているので、液体がオリフィスの副流体室側開口から噴出されると、その噴出された液体がその受け面に当たって撥ね返され、その噴出された液体が副流体室の気体側に行くことが妨げられる。このため、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを抑制することができる。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記受け面は、筒軸方向及び上下方向と直交する所定方向の外側から内側に行くに従って下側に傾斜するように又は所定方向に沿うように上記副流体室側開口の上側から所定方向内側に延びることを特徴とするものである。
【0008】
これにより、気体巻き込み抑制部材の受け面を、所定方向の外側から内側に行くに従って下側に傾斜するようにオリフィスの副流体室側開口の上側から所定方向内側に延ばす又は所定方向に沿うようにオリフィスの副流体室側開口の上側から所定方向内側に延ばしているので、オリフィスの副流体室側開口から噴出された液体をその受け面で確実に受けることができる。このため、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを確実に抑制することができる。
【0009】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記受け面は、被支持体の静荷重を支持した状態では、その全面が上記副流体室に封入された液体の液面よりも下側に位置することを特徴とするものである。
【0010】
これにより、気体巻き込み抑制部材の受け面を、被支持体の静荷重を支持した状態では、その全面を副流体室に封入された液体の液面よりも下側に位置させているので、気体巻き込み抑制部材の受け面の少なくとも一部が副流体室に封入された液体の液面よりも上側に位置する場合と比較して、オリフィスの副流体室側開口から噴出された液体をその受け面で確実に受けることができる。このため、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを確実に抑制することができる。
【0011】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか1つの発明において、上記受け面の筒軸方向長さが、上記副流体室側開口の筒軸方向長さと同じ又はこれよりも長いことを特徴とするものである。
【0012】
これにより、気体巻き込み抑制部材の受け面の筒軸方向長さをオリフィスの副流体室側開口の筒軸方向長さと同じ又はこれよりも長くしているので、気体巻き込み抑制部材の受け面の筒軸方向長さがオリフィスの副流体室側開口の筒軸方向長さよりも短い場合と比較して、オリフィスの副流体室側開口から噴出された液体をその受け面で確実に受けることができる。このため、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを確実に抑制することができる。
【0013】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか1つの発明において、上記気体巻き込み抑制部材は、上記ゴム弾性体と一体に成形されたゴム製のものであることを特徴とするものである。
【0014】
これにより、気体巻き込み抑制部材を、ゴム弾性体と一体に成形されたゴム製のものにしているので、部材点数を削減することができる。
【0015】
第6の発明は、上記第1〜4のいずれか1つの発明において、上記気体巻き込み抑制部材は、上記副流体室に取り付けられた別体のものであることを特徴とするものである。
【0016】
これにより、気体巻き込み抑制部材を、副流体室に取り付けられた別体のものにしているので、気体巻き込み抑制部材の材料や形状等を任意に設定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、副流体室に、オリフィスの副流体室側開口の上側に対向配置されてその副流体室側開口から噴出された液体を受ける受け面を有する気体巻き込み抑制部材を配設しているので、液体がオリフィスの副流体室側開口から噴出されると、その噴出された液体がその受け面に当たって撥ね返され、その噴出された液体が副流体室の気体側に行くことが妨げられ、このため、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1〜図4に示すように、本発明の実施形態1に係る液体封入式防振装置(以下、防振装置という)は、細筒形状をした金属製の内筒体1や、この内筒体1の周囲を囲む円筒形状をした金属製の外筒体2、これら内筒体1と外筒体2との間に介在して両者を互いに連結する略円筒形をしたゴム弾性体3、このゴム弾性体3の内部に一体化される中間筒体4、外筒体2内に形成され、液体Lが封入される主流体室5及び副流体室6、これら主流体室5及び副流体室6に連通するオリフィス7及び排気通路8、プラスチック製の蓋体9などを備えている。
【0020】
この防振装置は、主流体室5が下側に位置するように筒軸Xを横向き(水平向き)にした状態で、内筒体1をエンジンの変速機側に取り付け、外筒体2を車体側に取り付けて使用される。尚、以下、上下等の方向はこの使用時の方向に従うものとし、例えば筒軸X方向は前後方向とし、この前後方向及び上下方向と直交する方向は左右方向(所定方向)とする。
【0021】
図1に示すように、この防振装置は、例えば、ゴム弾性体3と蓋体9とを組み合わせて外筒体2に途中まで圧入し、気体Aとしての空気の封入量を考慮して主流体室5及び副流体室6に所定量の液体Lを注入した後、最後まで圧入して外筒体2の筒軸方向の両端部をかしめることによって製造される。
【0022】
図2に示すように、ゴム弾性体3は、その上部に一対の弧状壁3c,3cと、上壁3bとを有するとともに、図1に示すように、その下部の周壁3dにおいて上向きに凹んだ凹部3eを有している。
【0023】
また、ゴム弾性体3は、その内部に、加硫成型により一体化された内筒体1及び中間筒体4を有しており、無負荷の状態では、図3の(a)に示すように、内筒体1は、その筒軸が外筒体2の筒軸Xよりも上方に変位した部位に当該筒軸Xと平行に前後に延びるように設けられ、中間筒体4は、ゴム弾性体3の外周寄りでその周囲を囲むように設けられている。また、ゴム弾性体3には、内筒体1の左右両側において、前後方向に延びるように一対の空隙部3a,3aが形成されている。
【0024】
副流体室6は、このゴム弾性体3を外筒体2に嵌め込むことによって、先の上壁3b及び弧状壁3c,3cと外筒体2の内壁(内周面)とで周囲を囲まれて形成され、主流体室5は、先の凹部3eの下側の開口に蓋体9を嵌め込むことによって形成される。
【0025】
この主流体室5の床面となる蓋体9の上壁の略中央部には、上方に突出するストッパ9aが設けられている。そして、ゴム弾性体3が大きく変形してこのストッパ9aに衝突したとしても、その衝撃を緩和するように主流体室5の天井面となる凹部3eの内壁上部30には、ストッパ9aに対向して下方に突出する緩衝部30aが設けられている。
【0026】
このような形状をしたゴム弾性体3は、特に、垂直方向の剛性が高められていて、上下方向に硬くなるようなバネバランスでもって、内筒体1と外筒体2とが互いに弾性連結している。
【0027】
すなわち、ゴム弾性体3では、内筒体1の左右両側の部分からそれぞれ弾性変形可能な主バネ部3f,3fが外筒体2に向かい対称状に斜め下方に延びていて、主として内筒体1と外筒体2との間に加わる荷重を受け止めて弾性変形するように構成されている。
【0028】
そして、被支持体であるエンジンの静荷重を支持した使用状態においては、図3の(b)に示すように、内筒体1と上壁3bとの間が分離してゴム弾性体3が変形するとともに内筒体1が下方に変位する。
【0029】
特に本実施形態では、これら主バネ部3f,3fは、いずれも左右より上下方向に延びて立つように構成されているため、下向きの負荷が大きくても、これはしっかりと受け止められることとなる。これら主バネ部3f,3fの形状は、後述するように排気通路8が設けられているので、主流体室5に溜まる気体Aを気にせずに自由に設計できる。
【0030】
オリフィス7は、図1や図3に示すように、ゴム弾性体3の周壁3dの前後方向の略中央部を切り欠いて形成された帯状の溝部7aを含んでおり、ゴム弾性体3が外筒体2に嵌め込まれた状態で、右方の主バネ部3fの下端から周方向に延びて副流体室6に連通する帯状の通路として構成されている。このように、オリフィス7の通路長は比較的長くなっているため、低周波域で優れた防振効果が発揮される。
【0031】
一方、主流体室5内の気体Aを自動的に副流体室6に導いて排除することができる排気通路8が、このオリフィス7とは別に形成されている。
【0032】
すなわち、この排気通路8は、横排気通路8aと周排気通路8b(本発明で言うところのオリフィス)とで構成されていて、その横排気通路8aは、左方の主バネ部3fの上端(主流体室5を構成している凹部3eの上端)に開口するとともに、そこから外周に向かって横向きに延びている。
【0033】
そして、本実施形態の横排気通路8aは、図1、図5に示すように、ゴム弾性体3の左方の主バネ部3fを前後方向の略中央で二分して、下方に開放された溝状に形成されている。このように横排気通路8aを溝状に形成することは、成型時の型抜きを容易にして製造コストや量産性の面で有利となり、主流体室5に溜まった気体Aが横排気通路8a内に入り易くなって、気体Aを主流体室5から誘い出す誘い溝としても機能する。
【0034】
さらに、主流体室5の天井面である凹部3eの内壁上部30に形成された緩衝部30aの周りには、横排気通路8aとの接続部位が最も高く位置するように傾斜している周溝30bが全周に亘って形成されている。つまり、周溝30bの最も高い部位に横排気通路8aが開口しているので、主流体室5の上部に溜まる気体Aはこの周溝30bを伝って自動的に横排気通路8aの開口に導かれ、主流体室5から排除され易くなる。
【0035】
一方、周排気通路8bは、図5に示すように、ゴム弾性体3の周壁3dの外周面が、オリフィス7よりも十分小さく切り欠かれていて、ゴム弾性体3が外筒体2に嵌め込まれた状態では、ゴム弾性体3の外周部位で横排気通路8aに接続され、そこから周方向を上向きに延びて副流体室6に連通する細管状の通路となるように構成されている。このように、周排気通路8bの通路長は比較的短く、通路断面積は比較的小さくなっているため、周排気通路8bは、高周波域で優れた防振効果が発揮されるオリフィスとしても機能する。
【0036】
そして、本実施形態では、図3の(b)に示すように、所定の静荷重が加わる使用時には、主バネ部3fが変形して横排気通路8aの上面が傾斜し、その周排気通路8bとの接続部位が最も高くなるように設定されているため、主流体室5に溜まる気体Aが自動的に副流体室6に導かれ、確実性をもって排除できる。尚、横排気通路8aも無負荷の状態、つまり成型段階から上記のように傾斜させておけば、変形に頼らず確実に上記作用効果を得ることができる。
【0037】
これら以外にも、右方の主バネ部3fの下端に設けられた、主流体室5に通じるオリフィス7の連通口7bは、主流体室5に流入する液体Lがその内壁に沿って流れるように、略上向きに開口するように設けておくとよい。そうすれば、防振装置の使用時に、オリフィス7を介して主流体室5に液体Lが流入すると、主流体室5内には、オリフィス7が設けられたその下端部から内壁に沿って横排気通路8aに向かう液体Lの流れが形成されるため、主流体室5内に気体Aが溜まるのをより確実に防ぐことができる。
【0038】
副流体室6には、図2〜図4に示すように、副流体室6の上部に封入された気体Aがオリフィス7や周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから副流体室6に噴出された液体Lに巻き込まれることを抑制するためのゴム製の気体巻き込み抑制部材10が配設されている。この気体巻き込み抑制部材10は、ゴム弾性体3と一体に成形されたものである。気体巻き込み抑制部材10は、第1及び第2気体巻き込み抑制部11,12を備えている。
【0039】
第1気体巻き込み抑制部11は、副流体室6の気体Aがオリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lに巻き込まれることを抑制するためのものである。第1気体巻き込み抑制部11は、オリフィス7の副流体室側開口7cの左斜め上側に対向配置されるように副流体室6の右側に配設されている。つまり、第1気体巻き込み抑制部11は、前後方向に関して、オリフィス7の副流体室側開口7cと略同じ位置に配置されている。第1気体巻き込み抑制部11の前後方向長さは、オリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長く、副流体室6の前後方向長さよりも短い。
【0040】
第1気体巻き込み抑制部11の下面は、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことを妨げるための受け面11aを構成している。この受け面11aは、第1気体巻き込み抑制部11がオリフィス7の副流体室側開口7cの左斜め上側に対向配置されることによって、オリフィス7の副流体室側開口7cの左斜め上側に対向配置されていて、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lを受けるようになっている。受け面11aは、右側(左右方向外側)から左側(左右方向内側)に行くに従って下側に傾斜するようにオリフィス7の副流体室側開口7cの左斜め上側近傍から左側(左右方向内側)に延びている。受け面11aの前後方向長さは、第1気体巻き込み抑制部11の前後方向長さがオリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長いことによって、オリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長くなっている。受け面11aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0041】
第1気体巻き込み抑制部11の右端面は、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている一方、下端面は、ゴム弾性体3の上壁3bの右端部と一体に連結されている。
【0042】
第2気体巻き込み抑制部12は、副流体室6の気体Aが周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lに巻き込まれることを抑制するためのものである。第2気体巻き込み抑制部12は、周排気通路8bの副流体室側開口8cの右斜め上側に対向配置されるように副流体室6の左側に配設されている。つまり、第2気体巻き込み抑制部12は、前後方向に関して、周排気通路8bの副流体室側開口8cと略同じ位置に配置されている。第2気体巻き込み抑制部12の前後方向長さは、周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長く、副流体室6の前後方向長さよりも短い。
【0043】
第2気体巻き込み抑制部12の下面は、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことを妨げるための受け面12aを構成している。この受け面12aは、第2気体巻き込み抑制部12が周排気通路8bの副流体室側開口8cの右斜め上側に対向配置されることによって、周排気通路8bの副流体室側開口8cの右斜め上側に対向配置されていて、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lを受けるようになっている。受け面12aは、右側(左右方向外側)から左側(左右方向内側)に行くに従って下側に傾斜するように周排気通路8bの副流体室側開口8cの右斜め上側近傍から右側(左右方向内側)に延びている。受け面12aの前後方向長さは、第2気体巻き込み抑制部12の前後方向長さが周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長いことによって、周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長くなっている。受け面12aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0044】
第2気体巻き込み抑制部12の左端面は、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている一方、下端面は、ゴム弾性体3の上壁3bの左端部と一体に連結されている。
【0045】
−防振装置の動作−
以下、本実施形態に係る防振装置の動作について説明する。
【0046】
エンジンの振動が内筒体1に伝達されると、内筒体1が外筒体2に対して上下方向に相対的に変位することによって、主流体室5及び副流体室6の容積が交互に拡大・縮小する。これにより、液体Lはオリフィス7及び周排気通路8bを介して流動して、この流動に伴ってオリフィス7及び周排気通路8bにおいて発生する液柱共振等によってエンジン振動が減衰される。この際、副流体室6に封入された気体Aが圧縮・膨脹されることによって、液体Lの主流体室5及び副流体室6の間における移動に伴う体積変動が吸収されるため、オリフィス7及び周排気通路8bを介する液体Lの流動量が確保される。
【0047】
また、オリフィス7及び周排気通路8bにおいて発生する液柱共振によって、液体Lはオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから外筒体2の内壁に沿って副流体室6に噴出される。このように、液体Lがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出されると、その噴出された液体Lが、気体巻き込み抑制部材10の第1及び第2気体巻き込み抑制部11,12の受け面11a,12aに当たって撥ね返され(図3(b)の矢印を参照)、その噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことが妨げられる。このため、副流体室6の気体Aがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lに巻き込まれることが抑制される。
【0048】
図6は、防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係を示す図である。同図の実線が、本実施形態に係る防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係を示すものであり、破線が、従来の防振装置、つまり、気体巻き込み抑制部材10を有しない防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係を示すものである。図6に示すように、本実施形態に係る防振装置は、従来の防振装置よりも損失係数tanδが増大している。また、本実施形態に係る防振装置は、従来の防振装置よりも損失係数tanδのばらつきが小さくなっている。
【0049】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、副流体室6に、オリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cの上側に対向配置されてその副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lを受ける受け面11a,12aを有する気体巻き込み抑制部材10を配設しているので、液体Lがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出されると、その噴出された液体Lがその受け面11a,12aに当たって撥ね返され、その噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことが妨げられる。このため、副流体室6の気体Aがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lに巻き込まれることを抑制することができる。
【0050】
また、気体巻き込み抑制部材10の受け面11a,12aを、左右方向の外側から内側に行くに従って下側に傾斜するようにオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cの上側から左右方向内側に延ばしているので、オリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lをその受け面11a,12aで確実に受けることができる。このため、副流体室6の気体Aがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lに巻き込まれることを確実に抑制することができる。
【0051】
さらに、気体巻き込み抑制部材10の受け面11a,12aを、エンジンの静荷重を支持した状態では、その全面を副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置させているので、気体巻き込み抑制部材10の受け面11a,12aの少なくとも一部が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも上側に位置する場合と比較して、オリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lをその受け面11a,12aで確実に受けることができる。このため、副流体室6の気体Aがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lに巻き込まれることを確実に抑制することができる。
【0052】
さらにまた、気体巻き込み抑制部材10の受け面11a,12aの前後方向長さをオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cの前後方向長さよりも長くしているので、気体巻き込み抑制部材10の受け面11a,12aの前後方向長さがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cの前後方向長さよりも短い場合と比較して、オリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lをその受け面11a,12aで確実に受けることができる。このため、副流体室6の気体Aがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lに巻き込まれることを確実に抑制することができる。
【0053】
また、気体巻き込み抑制部材10を、ゴム弾性体3と一体に成形されたゴム製のものにしているので、部材点数を削減することができる。
【0054】
(実施形態2)
本実施形態は、気体巻き込み抑制部材10の構成が実施形態1と相違するものである。以下、その相違点について主に説明する。本実施形態に係る気体巻き込み抑制部材10は、図7〜図9に示すように、ゴム弾性体3の両弧状壁3c,3cの間に挟み込むことによって副流体室6に取り付けられた、外筒体2やゴム弾性体3とは別体の樹脂製のものである。気体巻き込み抑制部材10は、第1及び第2気体巻き込み抑制部13,14、連結部15、並びに第1〜第3突起部16〜18を備えている。
【0055】
第1気体巻き込み抑制部13は、オリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されるように副流体室6の右側に配設されている。つまり、第1気体巻き込み抑制部13は、前後方向に関して、オリフィス7の副流体室側開口7cと略同じ位置に配置されている。第1気体巻き込み抑制部13の前後方向長さは、オリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長く、副流体室6の前後方向長さよりも短い。
【0056】
第1気体巻き込み抑制部13の下面は、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことを妨げるための受け面13aを構成している。この受け面13aは、第1気体巻き込み抑制部13がオリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されることによって、オリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されていて、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lを受けるようになっている。受け面13aは、左右方向に沿うようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びている。受け面13aは、第1気体巻き込み抑制部13の前後方向長さがオリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長いことによって、その前後方向長さがオリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長くなっている。受け面13aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。第1気体巻き込み抑制部13の右端面は、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。
【0057】
第2気体巻き込み抑制部14は、周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されるように副流体室6の左側に配設されている。つまり、第2気体巻き込み抑制部14は、前後方向に関して、周排気通路8bの副流体室側開口8cと略同じ位置に配置されている。第2気体巻き込み抑制部14の前後方向長さは、周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長く、副流体室6の前後方向長さよりも短い。
【0058】
第2気体巻き込み抑制部14の下面は、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことを妨げるための受け面14aを構成している。この受け面14aは、第2気体巻き込み抑制部14が周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されることによって、周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されていて、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lを受けるようになっている。受け面14aは、左右方向に沿うように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側に延びている。受け面14aの前後方向長さは、第2気体巻き込み抑制部14の前後方向長さが周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長いことによって、周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長くなっている。受け面14aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。第2気体巻き込み抑制部14の左端面は、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。
【0059】
連結部15は、副流体室6の前後方向の中央部に配設されていて、第1及び第2気体巻き込み抑制部13,14の間に左右方向に延びるように設けられて両者を互いに連結しているとともに、矩形板状に形成されている。第1突起部16は、連結部15の中央部から上側に延びていて、断面が矩形状に形成されている。第1突起部16の上端面は、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。第2突起部17は、連結部15の中央部から前側に延びていて、断面が矩形状に形成されている。第2突起部17の前端面は、ゴム弾性体3の弧状壁3cに接触している。第3突起部18は、連結部15の中央部から後側に延びていて、断面が矩形状に形成されている。第3突起部18の後端面は、ゴム弾性体3の弧状壁3cに接触している。以上のように、第1〜第3突起部16〜18を配置することによって、気体巻き込み抑制部材10が副流体室6に対して位置決めされる。このように、気体巻き込み抑制部材10を位置決めすることによって、気体巻き込み抑制部材10の支持安定性が向上する。
【0060】
尚、本実施形態に係る防振装置の動作や防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係については、実施形態1とほぼ同様である。
【0061】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、気体巻き込み抑制部材10の受け面13a,14aを、左右方向に沿うようにオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cの上側から左右方向内側に延ばしているので、オリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lをその受け面13a,14aで確実に受けることができる。このため、副流体室6の気体Aがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lに巻き込まれることを確実に抑制することができる。
【0062】
また、気体巻き込み抑制部材10を、副流体室6に取り付けられた別体のものにしているので、気体巻き込み抑制部材10の材料や形状等を任意に設定することができる。
【0063】
その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様の効果が得られる。
【0064】
尚、本実施形態では、気体巻き込み抑制部材10を樹脂製のものにしているが、これに限らず、例えばゴム製のものにしてもよい。但し、製造時の作りやすさの観点からは、樹脂製のものにするのが望ましい。
【0065】
(実施形態3)
本実施形態は、気体巻き込み抑制部材10の構成が実施形態1と相違するものである。以下、その相違点について主に説明する。本実施形態に係る気体巻き込み抑制部材10は、図10〜図12に示すように、ゴム弾性体3の両弧状壁3c,3cの間に挟み込むことによって副流体室6に取り付けられた、外筒体2やゴム弾性体3とは別体の樹脂製のものである。気体巻き込み抑制部材10は、第1及び第2気体巻き込み抑制部19,20、連結部21、並びに第1〜第3突起部22〜24を備えている。
【0066】
第1気体巻き込み抑制部19は、オリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されるように副流体室6の右側に配設されている。つまり、第1気体巻き込み抑制部19は、前後方向に関して、オリフィス7の副流体室側開口7cと略同じ位置に配置されている。第1気体巻き込み抑制部19の前後方向長さは、オリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長く、副流体室6の前後方向長さよりも短い。
【0067】
第1気体巻き込み抑制部19の下面は、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことを妨げるための受け面19aを構成している。この受け面19aは、第1気体巻き込み抑制部19がオリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されることによって、オリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されていて、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lを受けるようになっている。受け面19aは、左右方向に沿うようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びている。受け面19aは、第1気体巻き込み抑制部19の前後方向長さがオリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長いことによって、その前後方向長さがオリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長くなっている。受け面19aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。第1気体巻き込み抑制部19の右端面は、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。
【0068】
第2気体巻き込み抑制部20は、周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されるように副流体室6の左側に配設されている。つまり、第2気体巻き込み抑制部20は、前後方向に関して、周排気通路8bの副流体室側開口8cと略同じ位置に配置されている。第2気体巻き込み抑制部20の前後方向長さは、周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長く、副流体室6の前後方向長さよりも短い。
【0069】
第2気体巻き込み抑制部20の下面は、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことを妨げるための受け面20aを構成している。この受け面20aは、第2気体巻き込み抑制部20が周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されることによって、周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されていて、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lを受けるようになっている。受け面20aは、左右方向に沿うように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側に延びている。受け面20aの前後方向長さは、第2気体巻き込み抑制部20の前後方向長さが周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長いことによって、周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長くなっている。受け面20aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。第2気体巻き込み抑制部20の左端面は、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。
【0070】
連結部21は、副流体室6の前後方向の中央部に配設されていて、第1及び第2気体巻き込み抑制部13,14の間に設けられて両者を互いに連結しているとともに、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。第1突起部22は、連結部21の中央部から下側に延びていて、断面が矩形状に形成されている。第1突起部22の下端面は、ゴム弾性体3の上壁3bの中央部に沿うように断面が弧状に形成されている。第2突起部23は、連結部21の中央部から前側に延びていて、断面が矩形状に形成されている。第2突起部23の前端面は、ゴム弾性体3の弧状壁3cに接触している。第3突起部24は、連結部21の中央部から後側に延びていて、断面が矩形状に形成されている。第3突起部24の後端面は、ゴム弾性体3の弧状壁3cに接触している。以上のように、第1〜第3突起部22〜24を配置することによって、気体巻き込み抑制部材10が副流体室6に対して位置決めされる。このように、気体巻き込み抑制部材10を位置決めすることによって、気体巻き込み抑制部材10の支持安定性が向上する。
【0071】
尚、本実施形態に係る防振装置の動作や防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係については、実施形態1とほぼ同様である。
【0072】
以上により、本実施形態によれば、実施形態2とほぼ同様の効果が得られる。
【0073】
尚、本実施形態では、気体巻き込み抑制部材10を樹脂製のものにしているが、これに限らず、例えばゴム製のものにしてもよい。但し、製造時の作りやすさの観点からは、樹脂製のものにするのが望ましい。
【0074】
(実施形態4)
本実施形態は、気体巻き込み抑制部材10の構成が実施形態1と相違するものである。以下、その相違点について主に説明する。本実施形態に係る気体巻き込み抑制部材10は、図13、図14に示すように、ゴム弾性体3の両弧状壁3c,3cの間に挟み込むことによって副流体室6に取り付けられた、外筒体2やゴム弾性体3とは別体の樹脂製のものである。気体巻き込み抑制部材10は、第1及び第2気体巻き込み抑制部25,26を備えている。
【0075】
第1気体巻き込み抑制部25は、オリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されるように副流体室6の右側に配設されている。つまり、第1気体巻き込み抑制部25は、前後方向に関して、オリフィス7の副流体室側開口7cと略同じ位置に配置されている。第1気体巻き込み抑制部25は、断面がハット状に形成されている。
【0076】
第1気体巻き込み抑制部25の内壁上部は、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことを妨げるための受け面25aを構成している。この受け面25aは、第1気体巻き込み抑制部25がオリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されることによって、オリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されていて、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lを受けるようになっている。受け面25aは、左右方向に沿うようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びている。受け面25aは、前後方向長さがオリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長い。受け面25aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0077】
第1気体巻き込み抑制部25の右端面は、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。第1気体巻き込み抑制部25の下面は、ゴム弾性体3の上壁3bの右端部に接触支持されている。
【0078】
第2気体巻き込み抑制部26は、第1気体巻き込み抑制部25とは別体のものである。第2気体巻き込み抑制部26は、周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されるように副流体室6の左側に配設されている。つまり、第2気体巻き込み抑制部26は、前後方向に関して、周排気通路8bの副流体室側開口8cと略同じ位置に配置されている。第2気体巻き込み抑制部26は、断面がハット状に形成されている。
【0079】
第2気体巻き込み抑制部26の内壁上部は、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことを妨げるための受け面26aを構成している。この受け面26aは、第2気体巻き込み抑制部26が周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されることによって、周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されていて、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lを受けるようになっている。受け面26aは、左右方向に沿うようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から右側に延びている。受け面26aは、前後方向長さが周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長い。受け面26aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0080】
第2気体巻き込み抑制部26の左端面は、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。第2気体巻き込み抑制部26の下面は、ゴム弾性体3の上壁3bの左端部に接触支持されている。
【0081】
尚、本実施形態に係る防振装置の動作や防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係については、実施形態1とほぼ同様である。
【0082】
以上により、本実施形態によれば、実施形態2とほぼ同様の効果が得られる。
【0083】
尚、本実施形態では、気体巻き込み抑制部材10を樹脂製のものにしているが、これに限らず、例えば金属製のものにしてもよい。
【0084】
(実施形態5)
本実施形態は、気体巻き込み抑制部材10の構成が実施形態1と相違するものである。以下、その相違点について主に説明する。本実施形態に係る気体巻き込み抑制部材10は、図15、図16に示すように、外筒体2の内壁とゴム弾性体3の周壁3dとの間に差し込むことによって副流体室6に取り付けられた、外筒体2やゴム弾性体3とは別体の金属製のものである。気体巻き込み抑制部材10は、第1及び第2気体巻き込み抑制部27,28を備えている。
【0085】
第1気体巻き込み抑制部27は、受け部27a及び差し込み部27bを備えている。第1気体巻き込み抑制部27は、受け部27aがオリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されるように副流体室6の右側に配設されている。つまり、第1気体巻き込み抑制部27は、前後方向に関して、オリフィス7の副流体室側開口7cと略同じ位置に配置されている。
【0086】
受け部27aは、左右方向に沿うようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びていて、矩形板状に形成されている。受け部27aの前後方向長さは、オリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長い。受け部27aの下面は、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことを妨げるための受け面27cを構成している。この受け面27cは、受け部27aがオリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されることによって、オリフィス7の副流体室側開口7cの上側に対向配置されていて、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lを受けるようになっている。受け面27cは、受け部27aが左右方向に沿うようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びることによって、左右方向に沿うようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びている。受け面27cは、受け部27aの前後方向長さがオリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長いことによって、その前後方向長さがオリフィス7の副流体室側開口7cの前後方向長さよりも長くなっている。受け面27cは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0087】
差し込み部27bは、受け部27aの右端から下側に延びていて、二股状に分岐しているとともに、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。差し込み部27bは、二股部がゴム弾性体3の周壁3dにおけるオリフィス7の前後方向両側に形成された不図示の凹部に嵌め込まれることによって、外筒体2の内壁とゴム弾性体3の周壁3dとの間に差し込まれている。
【0088】
第2気体巻き込み抑制部28は、受け部28a及び差し込み部28bを備えている。第2気体巻き込み抑制部28は、受け部28aが周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されるように副流体室6の左側に配設されている。つまり、第2気体巻き込み抑制部28は、前後方向に関して、周排気通路8bの副流体室側開口8cと略同じ位置に配置されている。
【0089】
受け部28aは、左右方向に沿うように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側に延びていて、矩形板状に形成されている。受け部28aの前後方向長さは、周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長い。受け部28aの下面は、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lが副流体室6の気体A側に行くことを妨げるための受け面28cを構成している。この受け面28cは、受け部28aが周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されることによって、周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側に対向配置されていて、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lを受けるようになっている。受け面28cは、受け部28aが左右方向に沿うように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側に延びることによって、左右方向に沿うように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側に延びている。受け面28cは、受け部28aの前後方向長さが周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長いことによって、その前後方向長さが周排気通路8bの副流体室側開口8cの前後方向長さよりも長くなっている。受け面28cは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0090】
差し込み部28bは、受け部28aの左端から下側に延びていて、二股状に分岐しているとともに、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。差し込み部28bは、二股部がゴム弾性体3の周壁3dにおける周排気通路8bの前後方向両側に形成された不図示の凹部に嵌め込まれることによって、外筒体2の内壁とゴム弾性体3の周壁3dとの間に差し込まれている。
【0091】
尚、本実施形態に係る防振装置の動作や防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係については、実施形態1とほぼ同様である。
【0092】
以上により、本実施形態によれば、実施形態2とほぼ同様の効果が得られる。
【0093】
(その他の実施形態)
尚、本発明にかかる防振装置は、前記の各実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0094】
すなわち、上記各実施形態では、オリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cにそれぞれ対応するように受け面を設けているが、いずれか一方にのみ対応するように受け面を設けてもよい。但し、副流体室6の気体Aが液体Lに巻き込まれることを抑制する観点からは、両方に対応するように受け面を設けることが望ましい。
【0095】
上記各実施形態では、気体巻き込み抑制部材10の受け面の前後方向長さをオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cの前後方向長さよりも長くしているが、これと同じにしてもよい。これにより、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
【0096】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0097】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上説明したように、本発明にかかる液体封入式防振装置は、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを抑制する用途等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施形態1に係る液体封入式防振装置の分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係るゴム弾性体を上方から見た図である。
【図3】実施形態1に係る液体封入式防振装置の筒軸方向から見た側方断面図であり、(a)は無負荷の状態を、(b)は負荷が加わった状態を示している。
【図4】実施形態1に係るゴム弾性体を右方から見た図である。
【図5】実施形態1に係るゴム弾性体の要部を示す斜視図である。
【図6】実施形態1に係る液体封入式防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係を示す図である。
【図7】実施形態2に係るゴム弾性体の図2相当図である。
【図8】実施形態2に係る液体封入式防振装置の図3相当図である。
【図9】実施形態2に係るゴム弾性体の図4相当図である。
【図10】実施形態3に係るゴム弾性体の図2相当図である。
【図11】実施形態3に係る液体封入式防振装置の図3相当図である。
【図12】実施形態3に係るゴム弾性体の図4相当図である。
【図13】実施形態4に係る液体封入式防振装置の図3相当図である。
【図14】実施形態4に係るゴム弾性体の図4相当図である。
【図15】実施形態5に係る液体封入式防振装置の図3相当図である。
【図16】実施形態5に係るゴム弾性体の図4相当図である。
【符号の説明】
【0100】
1 内筒体
2 外筒体
3 ゴム弾性体
5 主流体室
6 副流体室
7 オリフィス
7c 副流体室側開口
8 排気通路
8b 周排気通路(オリフィス)
8c 副流体室側開口
10 気体巻き込み抑制部材
11a〜14a,19a,20a,25a,26a,27c,28c 受け面
A 気体
L 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒軸を横向きにして配置される内筒体と、この内筒体の周囲を囲む外筒体と、これら内筒体と外筒体との間に介在して両者を互いに連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体で区画されて、相対的に下側に形成される主流体室及び相対的に上側に形成される副流体室と、上記ゴム弾性体の周壁に形成されてこれら主流体室と副流体室とに連通するオリフィスと、を備え、この副流体室には気体が封入された液体封入式防振装置であって、
上記副流体室に配設されているとともに、上記オリフィスの副流体室側開口の上側に対向配置されて上記副流体室側開口から噴出された液体を受ける受け面を有する気体巻き込み抑制部材をさらに備えたことを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体封入式防振装置において、
上記受け面は、筒軸方向及び上下方向と直交する所定方向の外側から内側に行くに従って下側に傾斜するように又は所定方向に沿うように上記副流体室側開口の上側から所定方向内側に延びることを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液体封入式防振装置において、
上記受け面は、被支持体の静荷重を支持した状態では、その全面が上記副流体室に封入された液体の液面よりも下側に位置することを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の液体封入式防振装置において、
上記受け面の筒軸方向長さが、上記副流体室側開口の筒軸方向長さと同じ又はこれよりも長いことを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の液体封入式防振装置において、
上記気体巻き込み抑制部材は、上記ゴム弾性体と一体に成形されたゴム製のものであることを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の液体封入式防振装置において、
上記気体巻き込み抑制部材は、上記副流体室に取り付けられた別体のものであることを特徴とする液体封入式防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−133453(P2010−133453A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307887(P2008−307887)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】