説明

液体洗浄剤組成物

【課題】 キレート剤を高濃度で含有した場合でも、保存安定性や低温安定性に優れた液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 (a)キレート剤、(b)界面活性剤、(c)芳香族系ハイドロトロープ剤を、それぞれ特定比率で含有し、20℃のpHが3以上7未満、ナトリウムイオン(Na+)とカリウムイオン(K+)のモル比が、[Na+]/[K+]=1〜20である液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物に関し、特に、食器用や台所廻り用などの洗浄剤として適した硬質表面用の液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗い用の洗浄剤組成物は、主な洗浄対象である食器類を洗浄する以外に、ステンレス製や樹脂製のシンク廻りの洗浄にも用いられることがある。このため、食器洗い用の洗浄剤組成物が、シンク廻りの汚れ、例えば水垢汚れに対する洗浄力に優れるのは望ましいことである。
【0003】
食器洗い用の洗浄剤組成物にキッチンのシンク廻りに付着した水垢などを洗浄する機能を付与するには、クエン酸などのキレート剤を高濃度で配合することが考えられる。例えば、特許文献1には、食器洗い用の洗浄剤組成物にクエン酸などの多価カルボン酸を用いることが記載されている。更に、クエン酸などの多価カルボン酸を含有する食器洗い洗浄剤組成物に関しては特許文献2〜6を参考にすることができる。
【特許文献1】特開2003−27099号公報
【特許文献2】特開平9−78091号公報
【特許文献3】特開2001−172697号公報
【特許文献4】特開平11−80784号公報
【特許文献5】特表2002−517549号公報
【特許文献6】特表平10−508060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、今日では、食器用等の液体洗浄剤組成物は有効分濃度を高めた、いわゆる濃縮型の組成物となる傾向にあり、そのような系にクエン酸などの多価カルボン酸を高濃度で配合すると、組成物がゲル化して、容器の目詰まりを起こすことがある。特に、低温で保存された組成物では、こうした問題が顕著となる傾向がある。一般に、家庭用の食器洗浄用の液体洗浄剤組成物は、直径1〜5mm程度の吐出口を有する容器に充填され、スポンジ等に少量吐出して使用されるが、キレート剤を高濃度で配合した組成物を充填した場合、低温で吐出操作を繰り返すと、吐出口の目詰まりは顕著となる。
【0005】
本発明の課題は、硬質表面の汚れ、更にはシンク廻りの汚れに対しても優れた洗浄力を付与するためにクエン酸等のキレート剤を多量に配合しても、低温安定性に優れ、吐出口の目詰まりを低減した、硬質表面用、更に食器用として好適な液体洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)キレート剤〔以下、(a)成分という〕2.5〜8質量%、(b)界面活性剤〔以下、(b)成分という〕20〜50質量%、(c)芳香族系ハイドロトロープ剤〔以下、(c)成分という〕2.5〜8質量%を含有し、25℃のpHが3以上7未満、ナトリウムイオン(Na+)とカリウムイオン(K+)のモル比が、[Na+]/[K+]=1〜20である液体洗浄剤組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、口径が1〜5mmの吐出口を有する容器に、上記本発明の液体洗浄剤組成物を充填してなる液体洗浄剤製品に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温安定性に優れ、吐出口の目詰まりを低減した、硬質表面用、更に食器用として好適な液体洗浄剤組成物が提供される。本発明の組成物は、クエン酸等のキレート剤を多量に含有してもこのような効果が得られるため、硬質表面の汚れはもとより、シンク廻りの汚れに対しても優れた洗浄力を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<(a)成分>
(a)成分としては、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤及び/又はアミノポリカルボン酸系キレート剤が好ましい。具体的には、クエン酸、リンゴ酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、酒石酸、グルコン酸、アミノ酸化合物の窒素原子にカルボキシメチル基が1つ以上結合したアミノポリカルボン酸〔例えば、MGDA(メチルグリシン二酢酸)〕及びこれらの塩から選ばれるものが挙げられ2種以上を組み合わせることもできる。これらの中でもクエン酸及びその塩が好ましい。
【0010】
クエン酸の塩としては、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸二水素アンモニウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸亜鉛などを挙げることができる。
【0011】
リンゴ酸の塩としては、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸二ナトリウム、リンゴ酸水素ナトリウム、リンゴ酸ジメチル、リンゴ酸ジエチルなどを挙げることができる。
【0012】
EDTAの塩としては、EDTA四ナトリウム、EDTA三ナトリウム、EDTA二ナトリウム、EDTA二水素二ナトリウム、EDTA三カリウム、EDTA二カリウム、EDTA亜鉛二ナトリウム、EDTAカルシウム二ナトリウム、EDTA二アンモニウム、EDTAマグネシウム二ナトリウムなどを挙げることができる。
【0013】
酒石酸の塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、酒石酸アンモニウム、酒石酸エチレンジアミン、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸ジエチル、酒石酸ジメチル、酒石酸水素アンモニウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0014】
グルコン酸の塩としては、グルコン酸亜鉛、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウムなどを挙げることができる。
【0015】
MGDAの塩としては、MGDAナトリウム、MGDA二ナトリウム、MGDA三カリウム、MGDA二カリウム、MGDAアンモニウムなどを挙げることができる。
<(b)成分>
本発明の(b)成分としては、(b1)分子中に炭素数10〜18の炭化水素基と、1つ以上のスルホン酸塩基又は硫酸エステル塩基を有する陰イオン界面活性剤〔以下、(b1)成分という〕及び(b2)炭素数10〜18の炭化水素基と、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を有するアミンオキシド型界面活性剤〔以下、(b2)成分という〕から選ばれる界面活性剤が好ましい。
【0016】
(b1)成分としては、下記一般式(2)の化合物が好ましい。
12−O−(C24O)a−SO3・(1/m)M (2)
〔式中の各記号の意味は下記のとおり。
12は炭素数10〜18のアルキル基である。
aは0〜15の数を示し、一般式(2)の化合物がa=0〜15の化合物の混合物であるとき、混合物中のa=1〜15の化合物の合計含有量は40〜90質量%、a=0の化合物の含有量は60〜15質量%である。
aの平均値は1〜5である。
Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属である。mはMの価数を示す。〕
【0017】
(b1)成分の好ましい例としては、炭素数10〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、炭素数10〜16のモノアルキル硫酸エステル塩、炭素数10〜16のアルキル基を有し、炭素数2又は3のオキシアルキレン基が平均(aの平均値)1.0〜4.0モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8〜16のα−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸(炭素数8〜16)低級アルキル(炭素数1〜3)エステル塩を挙げることができる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルカノールアミン塩を挙げることができ、特に粘度の点からナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましい。
【0018】
本発明では、特に炭素数10〜14のアルキル基を有し、炭素数2又は3のオキシアルキレン基、好ましくはオキシエチレン基が平均(aの平均値)1.0〜3.0モル、特に好ましくは1.5〜3.0モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、又はマグネシウム塩を用いることが洗浄効果の点から好ましく、また、高濃度の陰イオン界面活性剤を含有する洗浄剤の低温あるいは高温における貯蔵安定性を改善できるため好ましい。
【0019】
aは0〜15の数を示し、一般式(2)の化合物がa=0〜15の化合物の混合物であるとき、混合物中のa=1〜15の化合物の合計含有量は40〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜90質量%、さらに好ましくは60〜85質量%であり、a=0の化合物の含有量は、前記数値範囲の残部量(合計を100質量%とする量)が好ましい。
【0020】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を用いる場合、直鎖1−アルケンをヒドロホルミル化して得られたアルコールを原料にして製造された分岐鎖1級アルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好適である。ここで、ヒドロホルミル化とは、鉄、コバルトあるいはニッケルなどのカルボニル錯体を触媒として用い、直鎖1−アルケンに一酸化炭素を付加させてアルコールを得る方法であり、直鎖アルキル基とメチル分岐アルキル基を含有するアルコールが得られる。
【0021】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、このようなアルコールにさらにアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシド(以下、POと表記する)あるいはエチレンオキシド(以下、EOと表記する)、より好ましくはEOを付加させ、さらに三酸化イオウあるいはクロルスルホン酸でスルホン化し、アルカリ剤で中和して得ることができる。平均付加モル数は、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.5〜3.0、特に好ましくは1.5〜2.5が洗浄効果の点から好ましい。
【0022】
中和に用いるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムが好ましく、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムである。
【0023】
このようにして得られたポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、分岐鎖アルキル基を含むものであり、全ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩に対するポリオキシアルキレン分岐鎖アルキルエーテル硫酸エステル塩の質量比は5〜80質量%、更に10〜70質量%が優れた洗浄効果を達成するために好ましい。
【0024】
特にポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を、組成物中10質量%を超えて配合する場合、特には15〜40質量%の濃度で配合する場合は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩のアルキル基は前記分岐率の条件を満たすことが好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩自体は他の界面活性剤よりもぬるつき感の少ない性質を示すが、アミンオキサイド型界面活性剤との併用によるぬるつき感の上昇とともに、高濃度化による増粘やゲル化によって被洗浄表面に残留しやすくなることからのぬるつき感が懸念される。この問題は、前記分岐鎖を有する化合物を選択することにより低減される。
【0025】
また、(b2)成分としては、下記一般式(3)の化合物が好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
〔式中、R13は炭素数10〜18のアルキル基又は炭素数10〜18のアルケニル基であり、R14は炭素数1〜6のアルキレン基であり、Aは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−から選ばれる基である。bは0又は1の数であり、R15、R16は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。〕
【0028】
一般式(3)において、R13は、好ましくは10〜14のアルキル基又は炭素数10〜18のアルケニル基であり、特に好ましくはラウリル基(又はラウリン酸残基)及び/又はミリスチル基(又はミリスチン酸残基)である。Aは、好ましくは−COO−又は−CONH−であり、最も好ましくは−CONH−である。R14の炭素数は、好ましくは2又は3であり、R15、R16は、好ましくはメチル基である。
【0029】
本発明ではR13は単独のアルキル(又はアルケニル)鎖長でもよく、異なるアルキル(又はアルケニル)鎖長を有する混合アルキル基(又はアルケニル基)であってもよい。後者の場合には、ヤシ油、パーム核油から選ばれる植物油から誘導される混合アルキル(又はアルケニル)鎖長を有するものが好適である。具体的にはラウリル基(又はラウリン酸残基)/ミリスチル基(又はミリスチン酸残基)のモル比が95/5〜20/80、好ましくは90/10〜30/70であることが、洗浄効果、及び泡立ち性の点から好ましい。
【0030】
(b)成分として、その他の界面活性剤を使用することもできる。例えば、(b1)成分以外の陰イオン界面活性剤として、アルケニルコハク酸塩等が挙げられる。また、特に、両性界面活性剤及び(b2)成分以外の非イオン界面活性剤から選ばれる化合物は好適である。
【0031】
両性界面活性剤としては下記一般式(4)の化合物〔以下、(b3)成分という〕が好ましい。
【0032】
【化2】

【0033】
〔式中、R21は炭素数9〜23のアルキル基又はアルケニル基であり、R22は炭素数1〜6のアルキレン基である。Bは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−、−O−から選ばれる基であり、cは0又は1の数である。R23、R24は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R25はヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基である。Dは−SO3-、−OSO3-、−COO-から選ばれる基である。〕
【0034】
一般式(4)において、R21は、好ましくは炭素数9〜15、特に9〜13のアルキル基であり、R22は、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基である。Bは−CONH−が好ましく、cは0又は1が好適である。R23、R24はメチル基、又はヒドロキシエチル基が好ましい。Dは−SO3-、又は−COO-が好ましく、Dが−SO3-の場合にはR25は−CH2CH(OH)CH2−が好ましく、Dが−COO-の場合にはR25はメチレン基が好ましい。
【0035】
非イオン界面活性剤〔以下、(b4)成分という〕としては下記一般式(5)の化合物及び一般式(6)の化合物から選ばれる化合物が好適である。
【0036】
31−E−〔(R32O)d−H〕e (5)
〔式中、R31は、炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R32は炭素数2又は3のアルキレン基である。dは2〜100の数を示す。Eは−O−、−CON−又は−N−であり、Eが−O−の場合、eは1であり、Eが−CON−又は−N−の場合、eは2である。〕
41−(OR42fh (6)
〔式中、R41は直鎖の炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14のアルキル基、R42は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、特にエチレン基であり、Gは還元糖に由来する残基、fは平均値0〜6、好ましくは0〜3、特に好ましくは0の数であり、hは平均値1〜10、好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜2の数を示す。〕
【0037】
一般式(5)の化合物の具体例として以下の化合物を挙げることができる。
31−O−(C24O)i−H (5−1)
〔式中、R31は前記の意味を示す。iは2〜100の数である。〕
31−O−(C24O)j(C36O)k−H (5−2)
〔式中、R31は前記の意味を示す。j及びkはそれぞれ独立に2〜70の数であり、エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダムあるいはブロック付加体であってもよい。〕
【0038】
【化3】

【0039】
〔式中、R31は前記の意味を示す。n及びmの合計は3〜70の数である。〕
【0040】
一般式(5−3)においてGは還元糖に由来する残基であり、原料の還元糖としては、アルドースとケトースの何れであっても良く、また、炭素数が3〜6個のトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースを挙げることができる。アルドースとして具体的にはアピオース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロースを挙げることができ、ケトースとしてはフラクトースを挙げることができる。本発明ではこれらの中でも特に炭素数5又は6のアルドペントースあるいはアルドヘキソースが好ましく、中でもグルコースが最も好ましい。
【0041】
一般式(6)の化合物は上記還元糖とR41−(OR42f−OHとを酸触媒を用いてアセタール化反応又はケタール化反応することで容易に合成することができる。また、アセタール化反応の場合、ヘミアセタール構造であっても良く、通常のアセタール構造であっても良い。
【0042】
上記のうち、特に一般式(4)の化合物、及び一般式(6)の化合物から選ばれる1種以上が泡立ちを改善し、しかも洗浄効果を強化できるために好ましい。
【0043】
<(c)成分>
(c)成分としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、安息香酸及びこれらの塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩が良好であり、特にp−トルエンスルホン酸又はその塩が良好である。また、マグネシウム塩も使用可能である。
【0044】
<その他の成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(d)下記一般式(1)で表される化合物〔以下、(d)成分という〕を0.1〜10質量%含有することが好ましい。
11−O−X (1)
〔式中、R11は2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシルから選ばれる基であり、XはCH2CH(OH)CH2OHである。〕
【0045】
一般式(1)中のR11は洗浄力の観点から、2−エチルヘキシルが好ましい。
【0046】
(d)成分である一般式(1)の化合物は、例えば、R11が2−エチルヘキシルのとき、2−エチルヘキサノールとエピハロヒドリンやグリシドールなどのエポキシ化合物をBF3などの酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法が一般的であり、特開2001−49291号公報に記載されているように複数の生成物を含む混合物である。
【0047】
具体的には、2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルとして、エポキシ化合物の1位に2−エチルヘキサノールが付加した化合物(3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、以下(d1)という)やエポキシ化合物の2位に付加した化合物(2−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,3−プロパンジオール、以下(d2)という)を挙げることができる。また、副生成物として、(d1)又は(d2)にさらにエポキシ化合物が付加した多付加化合物(以下(d3)という)を挙げることができる。
【0048】
本発明では(d3)成分の含有量が(d)成分中に30質量%以下、好ましくは10質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルを用いることが好適である。
【0049】
本発明では貯蔵安定性の改善を目的に、及び粘度調節剤として(d)成分以外の溶剤〔以下、(e)成分という〕を含有することができる。溶剤の具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルから選ばれる水溶性有機溶媒が好ましい。
【0050】
本発明の洗浄剤には、ゲル化防止のための重合体、例えば特表平11−513067号公報に記載されているゲル化防止重合体〔以下、(f)成分という〕、とりわけポリアルキレングリコールを配合することが粘度調節及び貯蔵安定性の点から好ましい。ゲル化防止としてのポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチングリコールを標準としたときのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められた重量平均分子量が200〜3000のポリプロピレングリコール、及びポリエチレングリコールを挙げることができる。
【0051】
<液体洗浄剤組成物>
本発明の液体洗浄剤組成物では、ナトリウムイオン[Na+]とカリウムイオン[K+]のモル比が、[Na+]/[K+]=1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜11である。当該モル比がこの範囲にあることで、高濃度に(a)成分及び(b)成分を配合した濃縮型の組成物においても、優れた保存安定性、低温安定性、容器からの吐出性を得ることができる。組成物中のNa+、K+の濃度は、原子吸光度分析により測定することができ、この測定値から[Na+]/[K+]のモル比を算出することができる。このようなモル比となるように、(a)〜(c)成分及び任意成分の種類、配合量を調整することが好ましく、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などのアルカリ剤、特に水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のナトリウムを含むアルカリ剤と水酸化カリウム、炭酸カリウム等のカリウムを含むアルカリ剤により前記モル比を調整することが好ましい。
【0052】
本発明の液体洗浄剤組成物における(a)成分の含有割合は、水垢汚れに対する洗浄性と貯蔵安定性の観点から、2.5〜8質量%、好ましくは2.5〜7質量%、より好ましくは3〜6質量%である。
【0053】
また、(b)成分の含有割合は、油汚れに対する洗浄性と貯蔵安定性の観点から、組成物中、20〜50質量%、好ましくは25〜50質量%、より好ましくは25〜45質量%である。また、(b)成分の全量中、(b1)成分と(b2)成分の占める割合は、15〜40質量%、更に15〜37質量%、特に17〜35質量%が好ましい。また、(b1)成分と(b2)成分の質量比は、(b1)/(b2)=2〜12、更に2.5〜12、特に4.5〜10が好ましい。
【0054】
本発明では(b3)成分、(b4)成分は洗浄効果の増強、及び貯蔵安定性を改善する目的から含有することが好ましく、特に一般式(4)の化合物、及び一般式(6)の化合物は泡立ち性を改善することができる。しかしながら、多量配合は食器洗浄時のぬるつきを助長する傾向にある。このために洗浄剤中の(b3)成分及び(b4)成分の合計の比率は、0.1〜20質量%、更に0.5〜15質量%、特に1〜15質量%が好適である。
【0055】
(c)成分の含有割合は、貯蔵安定性の観点から、組成物中、2.5〜8質量%、好ましくは3〜7質量%、より好ましくは3.5〜7質量%である。
【0056】
(d)成分の含有割合は、油汚れに対する洗浄性と経済的観点から、組成物中、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜6質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%である。
【0057】
なお、(d)成分を用いる場合、キレート剤である(a)成分との質量比は、油汚れ(食器洗浄時)と水垢汚れ(キッチンシンク洗浄時)の両方に対する洗浄性能を高める観点から、(d)/(a)質量比で0.01〜3が好ましく、より好ましくは0.05〜2.5、さらに好ましくは0.1〜2である。
【0058】
(d)/(a)質量比が、上限値以下であると、油汚れに対する洗浄力の増大が認められるだけでなく、起泡性に於いても優れた性能を発現する。下限値以上であると水垢汚れ除去能が向上し、ガラスの透明感や金属表面の光沢等を回復させることができる。
【0059】
水は、(a)〜(c)成分、及び必要に応じて含有する他の成分を含めて、合計で100質量%とする調整量である。
【0060】
本発明の(e)成分及び(f)成分は、貯蔵安定性の向上の点で好ましく、また粘度調節剤として有効であり、(e)成分の含有量は組成物中に1〜20質量%、更に5〜20質量%、特に5〜15質量%、(f)成分の含有量は組成物中に0.05〜10質量%、更に0.05〜5質量%、特に0.1〜3質量%が好適である。
【0061】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記成分を水に溶解又は分散させた液状の形態であり、水の含有量は貯蔵安定性の点から好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは30〜60質量%、より好ましくは40〜60質量%、特に好ましくは45〜55質量%である。
【0062】
本発明の液体洗浄剤組成物のpH(25℃)は、油汚れなど(食器洗浄時)と水垢汚れなど(キッチンシンク洗浄時)の両方に対する洗浄性能を高める観点から、3以上7未満であり、好ましくは4以上6未満であり、より好ましくは4.5以上6未満である。
【0063】
pH調整剤としては、塩酸や硫酸など無機酸、有機酸などの酸剤や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミンやジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン塩など、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ剤を、単独もしくは複合して用いることが好ましく、特に塩酸、硫酸から選ばれる酸と水酸化ナトリウムや水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤を用いることが好ましい。いずれの化合物も、粘度特性に対し大きな影響のない範囲で配合される。なお、(a)成分によりpHを調整することもできる。
【0064】
尚、一般的に洗浄力増強剤として用いられるMgについては、(a)成分、特にクエン酸を高配合している本発明の洗浄剤組成物においては、クエン酸と併用すると水垢汚れに対する洗浄力が減じる恐れがあるため配合量に注意を要する。Mgの配合量は5〜0.0001質量%が好ましく、1〜0.0001質量%がより好ましく、0.4〜0.0001質量%がさらに好ましく、0.1〜0.0001質量%が特に好ましい。尚、この際配合に用いるMg含有化合物としては、水に溶解しやすいものが良く、具体的には、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウムが挙げられる。また、溶解に時間はかかるが水酸化マグネシウムやリン酸マグネシウムも使用可能である。
【0065】
本発明の洗浄剤組成物の20℃における粘度は、使い勝手の点から、好ましくは10〜1000mPa・s、より好ましくは30〜700mPa・s、特に好ましくは30〜500mPa・sである。このような粘度には、例えば上記(e)成分、(f)成分などを用いて調整する。
【0066】
本発明でいう粘度は以下のようにして測定する。まずTOKIMEC.INC製B型粘度計モデルBMに、ローター番号No.2のローターを備え付けたものを準備する。試料をトールビーカーに充填し20℃の恒温槽内にて20℃に調整する。恒温に調整された試料を粘度計にセットする。ローターの回転数を60r/mに設定し、回転を始めてから60秒後の粘度を本発明の粘度とする。
【0067】
その他の成分としては、粘度特性に影響のない限り、通常液体洗浄剤に配合されている成分を配合することができる。例えば、香料成分、除菌成分、防腐剤、濁り剤、着色剤を挙げることができる。
【0068】
本発明の液体洗浄剤組成物は、スポンジなどの可撓性材料(好ましくは水を含む)に染み込ませ、直接食器、調理用器具、キッチンシンク、浴槽などに接触させて洗浄を行う方法を適用できる。
【0069】
本発明の液体洗浄剤組成物は、油汚れと水垢汚れなどに対する洗浄性能が優れているため、油汚れと水垢汚れを含む洗浄対象用の洗浄剤として適用できる。具体的には、食器洗い用洗浄剤、台所廻り用洗浄剤として適しており、その他、洗面台用洗浄剤、浴室用洗浄剤、トイレ用洗浄剤などの水廻り用の洗浄剤としても適用できる。
【0070】
本発明の液体洗浄剤組成物を、口径が1〜5mmの吐出口を有する容器に充填することで液体洗浄剤製品を得ることができる。容器の材質としては一般的に普及しているプラステック系の材質が使用出来る。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポロプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル、ABS樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。吐出口を含むキャップの形状についても一般的に普及しているものなら何でも良く、例えばスクイズ型、ヒンジ型、トリガースプレー型、ポンプ型等が挙げられる。容器の容量については、100〜1000ml程度の液体洗浄剤を入れることが出来るものが使い勝手の観点から好ましい。
【0071】
キャップ部の吐出口の形状については、特に拘らないが、一般の円形状の孔のみならず、プルプッシュ型やポンプアップ型のチューブ形状のいずれも利用できる。
【実施例】
【0072】
表1に示す成分を用いて液体洗浄剤組成物を調製した。それら組成物の低温安定性(低温での貯蔵安定性)及び吐出性を下記の方法で評価した。結果を表1に併記する。なお、組成物のpHは以下の方法で測定したものである。
【0073】
<pHの測定方法>
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーター F−23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を投入した。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を使用した。
【0074】
次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mlビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬した。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行った。
【0075】
試料を100mlビーカーに充填し、25℃の恒温槽内にて25℃に調整した。恒温に調整された試料にpH測定用電極を3分間浸し、pHを測定した。
【0076】
<低温安定性>
表1の液体洗浄剤組成物を食器用洗剤専用のPET製ボトルに250ml入れ、−5℃で20日の保存を行い、液の外観の変化を調製直後と比較して下記の基準で評価した。
外観に変化がみられない……○
ゲル化、分離、沈殿形成などの外観の変化がみられる……×
【0077】
<吐出性>
表1の液体洗浄剤組成物を食器用洗剤専用のPET製ボトルに250ml入れ、5℃の保存環境下で2週間、朝夕の吐出試験を同温度で行い、吐出径を測定しキャップの詰まり状況を観察した。キャップの詰まり状況から、吐出性を(保存後の穴径)/(試験開始前の穴径)×100で定義した。この定義より、数値が100に近いほど、吐出性は良好で、数値がゼロとは穴が詰まって洗剤が出ないことを意味する。
【0078】
【表1】

【0079】
表中の成分は以下のものである。
・ES:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム〔原料アルコールは、1−デセン及び1−ドデセン50/50(質量比)を原料にヒドロホルミル化して得られたアルコールである。このアルコールにEOを平均2モル付加させた後、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)。全ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム中の全ポリオキシエチレン分岐鎖アルキルエーテル硫酸の割合は42質量%であった。〕
・APAO:ラウリン酸アミドプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシド
・AO:N−ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキシド
・スルホベタイン:ラウリルジメチルスルホベタイン
・アルケニルコハク酸カリウム:アルケニル基の炭素数12
・ノニオン:アルキル基の組成がC12/C14=60/40(質量比)の混合アルキルでグルコシド平均縮合度1.5のアルキルグルコシド
・GE−2EH:2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル(モノグリセリルエーテル98質量%)
・ポリプロピレングリコール:平均分子量1000のもの
・防腐剤:プロキセルBDN(アビシア株式会社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)キレート剤2.5〜8質量%、(b)界面活性剤20〜50質量%、(c)芳香族系ハイドロトロープ剤2.5〜8質量%を含有し、25℃のpHが3以上7未満、ナトリウムイオン(Na+)とカリウムイオン(K+)のモル比が、[Na+]/[K+]=1〜20である液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(a)キレート剤が、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤及び/又はアミノポリカルボン酸系キレート剤である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)キレート剤が、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、エチレンジアミン4酢酸、及びこれらの塩から選ばれる請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(b)界面活性剤が、(b1)分子中に炭素数10〜18の炭化水素基と、1つ以上のスルホン酸塩基又は硫酸エステル塩基を有する陰イオン界面活性剤及び(b2)炭素数10〜18の炭化水素基と、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を有するアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる請求項1〜3の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
(c)芳香族系ハイドロトロープ剤が、トルエンスルホン酸及び安息香酸/又はその塩である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
(d)下記一般式(1)で表される化合物を0.1〜10質量%含有する請求項1〜5の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。
11−O−X (1)
〔式中、R11は2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシルから選ばれる基であり、XはCH2CH(OH)CH2OHである。〕
【請求項7】
口径が1〜5mmの吐出口を有する容器に、請求項1〜3の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物を充填してなる液体洗浄剤製品。

【公開番号】特開2007−23210(P2007−23210A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209765(P2005−209765)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】