説明

液体洗浄剤組成物

【課題】衣料等の洗濯において、優れた洗浄力を有し、起泡性と濯ぎ性の両方に優れた洗濯用の液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、(B)アルキルベンゼンスルホン酸塩、(C)脂肪酸及び/又はその塩、(D)pKaが8.0以上の化合物、並びに水を含有し、(A)/(B)の質量比が85/15〜30/70であり、〔(A)+(B)〕/(C)の質量比が85/15〜30/70であり、〔(A)+(B)〕/(D)の質量比が85/15〜40/60であり、非イオン界面活性剤の含有量が2質量%以下であり、JIS K3362:1998記載の25℃で測定するpHが9.0〜10.5である、液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物、詳しくは手洗い洗濯用として好適な液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料等の洗濯方法としては、大きく分けて手洗い洗濯と洗濯機洗濯の2種類がある。近年では、洗濯機の普及により洗濯機による洗濯が増加する傾向にあるが、汚れの落ち具合をしっかり確認できることや経済性の観点などから、世界的にみれば依然、手洗い洗濯が広く行われている。特に、水資源の少ない地域では出来るだけ少ない水で洗濯できるように手洗い洗濯を採用する場合が多い。
【0003】
手洗い洗濯は、洗濯機による洗濯と比較した場合、汚れの落ち具合、被洗浄物の種類など、状況に応じたきめ細かい洗浄が可能となる一方、洗濯をする者にとって、肉体的、精神的疲労感を伴う。特に、被洗浄物同士をこすり合わせる「もみ洗い」は、被洗浄部位に機械力をかけやすく、最も自然な手洗い方法の1つである。
【0004】
衣料等の洗濯時に発生する泡の量は、洗濯を行う消費者にとっては、洗濯が充分にされているという充実感、安心感を生じさせる要因となるものであり、経済性及び泡立ち(速泡性)等の観点から、陰イオン界面活性剤、例えばアルキルベンゼンスルホネートが主体の洗剤が多く製造・販売されている。
【0005】
一方、洗濯用の洗浄剤組成物としては、主として、粒状(固体状)のものと液状のものが知られている。液状の洗浄剤組成物は、使用時に微粉の発生がない、洗濯水に速やかに溶解、分散するといった利点がある。
【0006】
特許文献1には、特定の陰イオン界面活性剤及び特定の非イオン界面活性剤混合物を包含する界面活性剤系と、洗浄性ビルダーと、補助洗剤成分とを含有する、手洗い操作で使用するための、液体の形態をとり得る洗濯洗剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及びカチオン界面活性剤を特定条件で含む、液体の形態をとり得る手洗い洗濯洗剤組成物が開示されている。また、特許文献3には、特定の界面活性剤、高級脂肪酸塩、ベンゼン又は低級アルキルベンゼンのスルホン酸塩、無機質ビルダー、及び多価カルボン酸アルカリ塩を含有する水性液体洗剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平10−504049号公報
【特許文献2】特表平10−504056号公報
【特許文献3】特開昭52−82909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
洗濯用の洗浄剤組成物においては、優れた洗浄力を有することに加え、洗浄時に適度な泡立ちを示す起泡性と、濯ぎ時には泡が速やかに消える等の濯ぎ性に優れることが望まれる。特許文献1、2は起泡性が良く低刺激性であるとされているが、濯ぎ時の速やかな泡消えを未だ十分に達成できていない。特許文献3は、洗浄性と安定性に優れるとされているが、手洗い洗濯における適度な泡立ちと速やかな泡消えの両立を達成できない。
【0009】
本発明の課題は、衣料等の洗濯において、優れた洗浄力を有し、起泡性と濯ぎ性の両方に優れた洗濯用の液体洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(A)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔以下、(A)成分という〕、(B)アルキルベンゼンスルホン酸塩〔以下、(B)成分という〕、(C)脂肪酸及び/又はその塩〔以下、(C)成分という〕、(D)pKaが8.0以上、好ましくは9.0〜10.6の化合物〔以下、(D)成分という〕、並びに水を含有し、(A)/(B)の質量比が85/15〜30/70であり、〔(A)+(B)〕/(C)の質量比が85/15〜30/70であり、〔(A)+(B)〕/(D)の質量比が85/15〜40/60であり、非イオン界面活性剤の含有量が2質量%以下であり、JIS K3362:1998記載の25℃で測定するpHが9.0〜10.5である、液体洗浄剤組成物に関する。なお、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の量は、それぞれ、全てナトリウム塩換算の量で質量%や質量比を算出するものとする。
【0011】
本発明は、(A)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、(B)アルキルベンゼンスルホン酸塩、(C)脂肪酸及び/又はその塩〔以下、(C)成分という〕、(D)pKaが9.0〜10.6の化合物並びに水を含有し、(A)/(B)の質量比が85/15〜30/70であり、〔(A)+(B)〕/(C)の質量比が85/15〜30/70であり、〔(A)+(B)〕/(D)の質量比が85/15〜40/60であり、非イオン界面活性剤の含有量が2質量%以下であり、JIS K3362:1998記載の25℃で測定するpHが9.0〜10.5である、液体洗浄剤組成物を包含する。
【0012】
また、本発明は、上記本発明の液体洗浄剤組成物を含む洗浄水を接触させた被洗浄物を手洗いする手洗い洗濯方法であって、被洗浄物の質量に対する洗浄水の質量が2〜100倍である、手洗い洗濯方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、衣料等の洗濯において、優れた洗浄力を有し、起泡性と濯ぎ性の両方に優れた液体洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<(A)成分>
(A)成分のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数10〜20、好ましくは12〜14のアルキル基、好ましくは直鎖1級アルコール若しくは直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、アルキレンオキシ基の平均付加モル数が0〜5、好ましくは0.5〜4、更に好ましくは1〜3のものが挙げられる。(A)成分は、アルキレンオキシ基としてエチレンオキシ基を含むことが好ましく、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でプロピレンオキシ基を含んでいてもよい。塩はアルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム塩及び/又はカリウム塩が好ましく、特にナトリウム塩好ましい。
【0015】
<(B)成分>
(B)成分のアルキルベンゼンスルホン酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば炭素数8〜20、好ましくは10〜15の、好ましくは直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0016】
アルキルベンゼンスルホン酸塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、又はマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、洗浄性や組成物の保存安定性の観点から、アルカリ金属塩、又はアルカノールアミン塩であることが好ましい。本発明の組成物を調製する場合、アルキルベンゼンスルホン酸(酸型)を組成物中に添加し、系内でアルカリと中和反応させアルキルベンゼンスルホン酸塩としてもよいし、予め中和した後、組成物中に添加してもよい。アルキルベンゼンスルホン酸の中和には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウムなどの強塩基や後述する(D)成分を用いることができる。
【0017】
<(C)成分>
(C)成分の脂肪酸及び/又はその塩としては、特に限定されるものではないが、例えば炭素数7〜43、好ましくは9〜23、より好ましくは11〜17の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するもの、より好ましくは直鎖又はメチル分岐鎖を有する炭素数12〜14の脂肪酸及び/又はその塩が挙げられる。(C)成分は、不飽和結合を有しても構わないが、その数は2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0であることが濯ぎ性の観点からより望ましい。(C)成分としては、具体的には、ラウリン酸及び/又はその塩、ミリスチン酸及び/又はその塩、ラウリン酸、ミリスチン酸を多く含むココヤシ由来の脂肪酸の混合物及び/又はその塩などが挙げられ、特に洗浄力、起泡性、濯ぎ性の観点から、ラウリン酸及び/又はその塩、又はミリスチン酸及び/又はその塩を含むことが好ましく、更にミリスチン酸及び/又はその塩を含むことがより好ましい。
【0018】
(C)成分の脂肪酸塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、又はアルカノールアミン塩であることが、濯ぎ性の観点から好ましい。本発明の組成物を調製する場合、脂肪酸(酸型)を組成物中に添加し、系内でアルカリと中和反応させてもよいし、予め中和した後、組成物中に添加してもよい。脂肪酸の中和には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウムなどの強塩基や後述する(D)成分を用いることができる。
【0019】
<(D)成分>
(D)成分はpKaが8.0以上、好ましくは8.0〜10.6、より好ましくは9.0〜10.6、更に好ましくは9.3〜10.6の化合物であれば、特に限定されるものではないが、例えば炭酸カリウムや炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカノールアミン、中でも炭素数2〜4のアルカノール基を1つから3つ有するアルカノールアミンを挙げることができる。このうちアルカノール基はヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子であるが、炭素数1〜5のアルキル基、特にはメチル基であっても(D)成分として使用することができる。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではアルカノールアミンが好ましく、モノエタノールアミン又はトリエタノールアミンがより好ましく、洗浄性の観点からモノエタノールアミンが最も好ましい。
【0020】
更に、これらのアルカノールアミンを炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩と併用することがより保存安定性を向上できる点で好ましい。
【0021】
(D)成分は前述した(B)成分や(C)成分の中和にも用いても良い。洗浄性、及び手肌への低刺激性の観点から、本発明の液体洗浄剤組成物のpH緩衝能がpH9.0〜10.5の範囲で良好に発現することが好ましく、そのためには(C)成分のような弱酸と、(D)成分であるpKaを9.0〜10.6の範囲に持つ化合物とを組み合わせることが望ましい。
【0022】
<液体洗浄剤組成物>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(A)/(B)の質量比が85/15〜30/70であり、好ましくは80/20〜40/60であり、更に75/25〜50/50、更に70/30〜55/45である。この質量比において(A)成分の比率がこの範囲内であれば、特に85/15以下であればより濯ぎ性が向上する一方、30/70以上であればより洗浄性が向上し、且つ、洗っているときの泡立ち性に優れる。
【0023】
本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄時の適度な泡立ち性、濯ぎ時の速やかな泡消え性及び洗浄性の観点から、〔(A)+(B)〕/(C)の質量比が85/15〜30/70であり、好ましくは80/20〜45/55、より好ましくは75/25〜55/45、より好ましくは70/30〜60/40である。
【0024】
本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄時の適度な泡立ち性、洗浄性及び手肌への低刺激性の観点から、特に泡立ち性の観点から、〔(A)+(B)〕/(D)の質量比が85/15〜40/60であり、好ましくは82/18〜50/50、より好ましくは79/21〜55/45、より好ましくは76/24〜60/40、より好ましくは73/27〜65/35である。
【0025】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(B)成分を0.5〜20質量%、更に1.2〜12質量%、より更に2〜8質量%、より更に2.2〜7.5質量%、より更に3〜5質量%含有することが好ましい。また、(C)成分をナトリウム塩換算の量で算出したもので1〜50質量%、更に1.5〜30質量%、更に2〜20質量%、より更に4〜10質量%含有することが好ましい。また、(D)成分を2〜10質量%、更に2.5〜8質量%、より更に3.5〜6質量%、より更に3.8〜5.5質量%含有することが好ましい。各成分の含有量は、前記質量比を満たす範囲で選択される。
【0026】
本発明の液体洗浄剤組成物は、適度な泡立ち性と濯ぎ時の速やかな泡消え性の観点から、(A)成分と(B)成分とを合計で5〜30質量%、更に6〜20質量%、より更に7〜15質量%、より更に8〜12質量%含有することが好ましい。この含有量が5質量%以上であればより良好な洗浄性及び泡立ち性を有する組成物が得られる一方、30質量%以下であれば良好な粘度を有し、洗濯液に速やかに溶解、分散でき、又は透明な液感を有する組成物が得られる。
【0027】
本発明の液体洗浄剤組成物において、水の含有量は、組成物中、30〜90質量%、更に40〜85質量%、より更に50〜80質量%が好ましい。
【0028】
本発明の液体洗浄剤組成物は、すすぎ時の速やかな泡消え性の観点から、非イオン界面活性剤の含有量が2質量%以下であり、1.5質量%以下、更に1質量%以下、より更に0.5質量%以下、更には全く配合しないこと、すなわち、本発明の液体洗浄剤組成物が非イオン界面活性剤を含有しないことが最も好ましい。ここで言う非イオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられ、例えば炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキサイドを平均で4〜15、好ましくは4〜10モル、プロピレンオキサイドを平均で0〜5モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられ、その含有量を前記範囲内に留めることが好ましい。一般にこうした非イオン界面活性剤は、気液界面への配向性が高く、またc.m.c.(臨界ミセル濃度)が小さいことから、低濃度であってもしつこく泡が残り、すすぎ時の速やかな泡消え性を阻害する。ただし、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの中でも、アルキレンオキサイドの付加モル数が大きいもの、例えば炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキサイドを平均15モル超、好ましくは平均20モル以上、プロピレンオキサイドを平均で0〜5モル付加したものは、少量(望ましくは2質量%以下)であれば本発明の液体洗浄剤組成物に使用してもよい。
【0029】
本発明の液体洗浄剤組成物は、非イオン界面活性剤として、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキサイドを平均で4〜60モル、好ましくは4〜30、より好ましくは4〜15、より好ましくは4〜10モル、プロピレンオキサイドを平均で0〜5モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有することもできる。
【0030】
ここで、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキサイドを平均で4〜15モル、好ましくは4〜10モル、プロピレンオキサイドを平均で0〜5モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いる場合は、すすぎ時の速やかな泡消え性の観点から、本発明の液体洗浄剤組成物中の当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量が2質量%以下であることが好ましく、更に1.5質量%以下、更に1質量%以下、更に0.5質量%以下、より更には全く配合しないこと、すなわち、本発明の液体洗浄剤組成物が当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有しないことが最も望ましい。従って、本発明において、組成物中の含有量が2質量%以下に制限される非イオン界面活性剤は、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキサイドを平均で4〜15モル、好ましくは4〜10モル、プロピレンオキサイドを平均で0〜5モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルであってもよい。
【0031】
一方、本発明の液体洗浄剤組成物は、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキサイドを平均で15超〜60モル、プロピレンオキサイドを平均で0〜5モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルを、本発明の効果を阻害しない範囲、望ましくは2質量%以下の範囲で含有することができる。本発明の液体洗浄剤組成物は、(E)成分として、下記一般式(e1)で表される非イオン界面活性剤を含有することができる。
1eO−[(C24O)m/(C36O)n]H (e1)
〔式中、R1eは炭素数10〜18の炭化水素基である。m、nは平均付加モル数であって、mは15超〜60の数であり、nは0〜5の数である。“/”はC24O基及びC36O基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
【0032】
(E)成分の一般式(e1)中、R1eは炭素数10〜18の炭化水素基であり、炭素数10〜16、更に10〜14の炭化水素基が好ましい。また、R1eは鎖式炭化水素基、更に直鎖の炭化水素基が好ましい。また、R1eの炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R1eは、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。本発明では酸素原子に結合するR1eの炭素原子が第一炭素原子であってもよい。このようなアルキル基は天然油脂由来の脂肪族アルコールを原料として用いることができる。一般式(e1)中のR1e−O−の酸素原子に結合するR1eの炭素原子が第1炭素原子であるものは、第2炭素原子による化合物よりも洗浄力に優れる。特にR1eは第1炭素原子を有する直鎖アルキル基が好ましい。
【0033】
一般式(e1)の化合物を得る方法は、特に限定されるものではないが、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキシドを付加反応すること、あるいはエチレンオキシドとプロピレンオキシドを付加反応することによって得ることができる。
【0034】
一般式(e1)中のmはエチレンオキシ基の平均付加モル数であって、mの下限値は、すすぎ性、洗浄性能の点から、好ましくは18以上、より好ましくは20以上、より好ましくは22以上、より好ましくは26以上、より好ましくは30以上であり、上限値は、製造し易さの点から、好ましくは45以下、より好ましくは35以下である。従って、(E)成分として、一般式(e1)中のmが18〜60、好ましくは26〜60の数の非イオン界面活性剤を用いることができる。nはプロピレンオキシ基の平均付加モル数であり、洗浄性能の点から下限値は0以上、好ましくは1以上であり、上限値は5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0035】
一般式(e1)中のプロピレンオキシ基は、プロピレンオキシドの付加反応による場合はメチル分岐した構造を有する。
【0036】
ところで、R1eO−の近い位置にC36Oが存在する構造の場合、C36Oは疎水性基であることから、R1eである鎖式炭化水素基が延長された構造に類似する構造になり、疎水性が高まる傾向を示す。本発明の(E)成分は、一般式(e1)において、R1e−O−C24O−である化合物の割合が、(E)成分を構成している化合物中の75モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%以下)であることが好ましい。このような化合物は未反応アルコールを除去することによっても得られるが、本発明では特に、R1eOHの1モルに対して、エチレンオキシドを6モル以上、特には8モル以上付加させることで、この要件を達成することができる。この規定は、後述する一般式(e1−2)、(e1−4)及び(e1−5)においても適用してもよい。
【0037】
更には(E)成分は、一般式(e1)において、前記の、R1e−O−C24O−の条件を満たした上で、末端が−C24O−Hの割合も高いものが、末端が疎水性基のプロピレンオキシ基の−C36O−Hである場合よりも、繊維の吸着性が低いことから好ましい。特には末端が−C24O−Hの構造を有する化合物が70モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%以下)であることがより好ましい。このような化合物は、一般式(e1)を製造する上で、最初にエチレンオキシドを前記条件で付加反応させるか、エチレンオキシドの付加後、未反応アルコールを除去させた後、次いでプロピレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドの付加反応工程を行い、最後にエチレンオキシドだけを6モル以上、特には8モル以上付加させることで得ることができる。この規定は後述する一般式(e1−5)においても適用してもよい。なおR1e−O−C24O−や−C24O−Hの割合はC13−NMRを用いた定量測定で求めることができる。
【0038】
本発明の一般式(e1)で示される化合物としては下記一般式(e1−1)〜(e1−5)の化合物であってもよい。一般式(e1−1)〜(e1−5)で示される化合物は、R1eOHに対するアルキレンオキシドの反応割合及び反応順序を考慮することで調製することができる。
1eO−(PO)n−(EO)mH (e1−1)
1eO−(EO)m−(PO)nH (e1−2)
1eO−[(EO)m1・(PO)n]−(EO)m2H (e1−3)
1eO−(EO)m1−[(PO)n・(EO)m2]H (e1−4)
1eO−(EO)m1−(PO)n−(EO)m2H (e1−5)
〔式中、EO、POは夫々エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基であり、R1e、m、nは前記の意味であり、m1、m2は平均付加モル数であって、m=m1+m2である。“・”はランダム結合であることを示す。〕
【0039】
本発明では一般式(e1−2)、(e1−4)又は(e1−5)の化合物が、特に一般式(e1−2)又は(e1−5)の化合物が、すすぎ性の点からより好ましい。
【0040】
本発明の(E)成分は、R1e−OHで表される化合物(R1eは炭素数10〜18の炭化水素基、好ましくは、前記一般式(e1)におけるR1eと同じ)1モル当りに、エチレンオキシドをm1モル付加させた後、プロピレンオキシドをnモル付加させた後、更にエチレンオキシドをm2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であって、m1が3〜30の数、好ましくは5〜25、より好ましくは8〜20の数であり、nが1〜5の数、好ましくは1〜3の数であり、m1とm2は合計でm1+m2=18〜60、好ましくは22〜45、より好ましくは26〜35の数である非イオン界面活性剤が好ましい。m2は前記m1とm1+m2より求めることができるが、本発明で、m2が好ましくは3〜30の数、より好ましくは7〜25の数、好ましくは8〜20の数である。本発明では特にPOが末端、及びR1eに結合していないことが好ましく、m1とm2は、m1/(m1+m2)=0.2〜0.8、更に0.3〜0.7が好ましい。この場合、R1e、m1、m2及びnは前記一般式(e1−5)と同じ意味である。
【0041】
(E)成分の製造に関して、R1e−OHのアルコキシル化に用いられる触媒は塩基触媒、酸触媒が挙げられる。このうち特に、コストの面から塩基触媒を使用することが好ましく、塩基として水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムがより好ましく、水酸化カリウムを使用することが最も好ましい。
【0042】
水酸化カリウムを触媒として使用する場合の製造条件の一例を以下に示す。まず原料となる炭素数10〜18の高級アルコール(R1e−OHで表される化合物)に水酸化カリウムを仕込んだ後、窒素置換し、100〜110℃、1〜7kPaで30分〜1時間脱水を行う。次いで100〜170℃、0.3〜0.6MPaでエチレンオキシドの付加を行い、次に100〜150℃、0.3〜0.7MPaの条件でプロピレンオキシドの付加を行い、再度100〜170℃、0.3〜0.7MPaの条件でエチレンオキシドを付加した後、添加した水酸化カリウムと当モル量の酸剤(酢酸、乳酸、グリコール酸等)で中和することによって得られる。なお各エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの使用量は、組成物中のm、nの平均値の条件を満たすように、原料アルコールのモル数に応じて選定される。
【0043】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、(F)成分として、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び上記非イオン界面活性剤以外の界面活性剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。本発明では、(F)成分の割合が、全界面活性剤中の20質量%以下、更に10質量%以下、より更には5質量%以下であることが好ましい。
【0044】
(F)成分としては、特に限定されるものでないが、脂肪族アルコール、アルカノールアミド、アミンオキシド、ベタインなどが挙げられる。これらは、例えば、「泡のエンジニアリング」(株式会社テクノシステム発行、2005年)に記載されているように、泡ブースターとしての機能を持つため、本発明の洗浄剤組成物の起泡力を高めることができる。(F)成分のうち、脂肪族アルコール、アルカノールアミド、アミンオキシド、及びベタインから選ばれる泡ブースターは、すすぎ性を損なわないために、全界面活性剤中の5質量%以下、更には3質量%以下、より更には1.5質量%以下が好ましい。
【0045】
脂肪族アルコールとしては、炭素数8〜18、好ましくは10〜16、より好ましくは12〜14の脂肪族アルコールが挙げられる。中でも、ドデシルアルコールが好ましい。アルカノールアミドとしては、モノエタノールアミド、ジエタノールアミドやN−メチルエタノールアミドなどが好ましいが、イソプロパノールアミドタイプやアルキレンオキシドを付加したものなどを用いることができる。アミンオキシドとしては、炭素数8〜18、好ましくは12〜14の長鎖長のアルキル基と炭素数1〜3のアルキル基、好ましくはメチル基とを有する、モノ長鎖アルキルアミンオキシドなどを挙げることができる。ベタインとしては、アルキルアミドプロピルベタインを挙げることができる。中でも、炭素数が12のラウラミドプロピルベタインやヤシ油組成のココアミドプロピルベタインが一般的である。
【0046】
特に、起泡力、すすぎ性の観点から、(F)成分として、(F1)下記一般式(f1)で表される化合物及び(F2)下記一般式(f2)で表される化合物から選ばれる界面活性剤を用いるのが好ましい。これらは、2種以上を用いることができる。
【0047】
【化1】

【0048】
〔式中、R1fは炭素数9〜23の炭化水素基であり、R2fは炭素数1〜6のアルキレン基である。Xはエステル基、アミド基、及びエーテル基から選ばれる基であり、pは0又は1の数である。R3f及びR4fはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、R5fはヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基である。Y-は陰イオン性基である。〕
6f−(OR7fq−OH (f2)
〔式中、R6fは炭素数6〜18の炭化水素基、R7fはプロピレン基又はグリセリンから2つのヒドロキシ基を除いた残基、qは1〜5の数である。〕
【0049】
(F1)成分は上記一般式(f1)で表される化合物である。一般式(f1)において、R1fは炭素数9〜23の炭化水素基であり、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数10〜15、更に11〜13のアルキル基がより好ましい。また、R2fは炭素数2又は3のアルキレン基が好ましく、炭素数3のアルキレン基がより好ましい。また、Xはエステル基、アミド基、及びエーテル基から選ばれる基であり、具体的には−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−O−から選ばれる基が挙げられる。Xは、アミド基、更に−CONH−で表される基が好ましい。pは0又は1が好ましい。R3f及びR4fはそれぞれメチル基又はヒドロキシエチル基が好ましいが、メチル基がより好ましい。Y-は陰イオン性基であり、−SO3-、−OSO3-、−COO-から選ばれる基が挙げられる。Y-は−SO3-又は−COO-が好ましく、Y-が−SO3-の場合には、R5fは−CH2CH(OH)CH2−が好ましく、Y−が−COO-の場合には、R5fはメチレン基(−CH2−)が好ましい。
【0050】
(F2)成分は上記一般式(f2)で表される化合物である。一般式(f2)の化合物は起泡力を高めるために好適であるが、同時にすすぎ性も良好であることが望まれる。これらを両立させるには一般式(f2)で表される化合物の親水基構造と疎水性構造の両方が以下のように限定された構造であることが好ましい。必ずしも定かではないが、以下の構造にすることで、衣類や汚れへ配向性よりも気液界面への配向性が高まるものと思われる。一般式(f2)において、R6fは炭素数6〜18、更に6〜14、より更に6〜10のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。R7fがプロピレン基の場合、起泡性とすすぎ性の観点から、qは2〜4が好ましい。また、同様の観点から、R7fが、グリセリンから2つのヒドロキシ基を除いた残基の場合、qは1〜3の数が、更に1の数が好ましい。R7fは、グリセリンから2つのヒドロキシ基を除いた残基が好ましい。
【0051】
(F2)成分としては、一般式(f2)中のR6fが炭素数6〜10のアルキル基又はアルケニル基、R7fがグリセリンから2つのヒドロキシ基を除いた残基、qが1のグリセリルエーテルが好ましい。例えば、2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル、イソノニルモノグリセリルエーテル、イソデシルモノグリセリルエーテルなどが挙げられる。特に、起泡性とすすぎ性を両立するには2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルが好ましい。
【0052】
本発明の液体洗浄剤組成物は、起泡性とすすぎ性の観点から、(F1)成分を0.1〜10質量%、更に0.2〜5質量%、より更に0.4〜2.7質量%含有することが好ましい。
【0053】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、起泡性とすすぎ性の観点から、(F2)成分を0.1〜10質量%、更に0.2〜5質量%、より更に0.4〜2.7質量%含有することが好ましい。
【0054】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、起泡性の観点から、(F1)成分と(F2)成分の両方を含むことができる。このとき、(F1)/(F2)の質量比が80/20〜20/80、更に70/30〜30/70、より更に60/40〜40/60であることが好ましい。
【0055】
本発明の液体洗浄剤組成物は、洗浄性と手肌への低刺激性の観点から、JIS K3362:1998記載の25℃で測定するpHが9.0〜10.5、好ましくは9.3〜10.2、より好ましくは9.5〜10である。pHは、組成物中に配合される成分の種類や配合量、なかでも、(B)成分、(C)成分、(D)成分の種類や配合量により調整でき、必要に応じて塩酸(例えば6N−HCl)等の酸剤を用いて調整してもよい。
【0056】
本発明の液体洗浄剤組成物は、前述した各成分の質量比及び非イオン界面活性剤の含有量を特定することにより、衣料等の洗濯において、優れた洗浄力を有し、起泡性と濯ぎ性の両方に優れた性能を発現するものである。
【0057】
本発明の液体洗浄剤組成物に配合できるその他の成分として、例えば、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩などのキレート剤、好ましくは分子量が1,000以下のキレート剤を配合できる。キレート剤の含有量は、組成物中、0.001〜10質量%、0.01〜3質量%、0.03〜1質量%であることが好ましい。
【0058】
その他、洗浄剤組成物の溶液安定性や透明性の向上を目的に水混和性有機溶剤〔以下、(G)成分という〕を含有することが好ましい。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。(G)成分の含有量は、溶液安定性と透明性の向上の観点から、組成物中、0.5〜40質量%、更に1〜20質量%、更に1.5〜10質量%、より更に2〜5質量%が好ましい。
【0059】
(G)成分としては、(G1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、(G2)プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類、(G3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのグリコール類、(G4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチルグリセリンエーテル、2−メチルグリセリンエーテル、1,3−ジメチルグリセリンエーテル、1−エチルグリセリンエーテル、1,3−ジエチルグリセリンエーテル、トリエチルグリセリンエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブトキシジグリコールとも呼ばれる)などのアルキルエーテル類、(G5)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の芳香族エーテル類、が挙げられる。
【0060】
水混和性有機溶剤は同時に、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(G1)アルカノール類、(G2)グリコール類、(G4)アルキルエーテル類、(G5)芳香族エーテル類から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、より好ましくは(G2)グリコール類、(G4)アルキルエーテル類、(G5)芳香族エーテル類から選ばれるものであり、特に好ましくは(G4)である。特に、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。(G)成分は粘度調整やゲル化抑制に効果的である。
【0061】
本発明の液体洗浄剤組成物に配合できるその他の成分として、次の(i)〜(xiii)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
【0062】
(i)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5,000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤 0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%
(ii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iii)過酸化水素、過炭酸ナトリウム又は過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(iv)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6−316700号の一般式(I−2)〜(I−7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(v)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(vi)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(vii)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(viii)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(ix)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(x)平均分子量約200〜約400のポリエチレングリコール、平均分子量約1,000〜約2,000のポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体
(xi)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤。
(xii)ゼオライトや結晶性層状シリケートなどの金属イオン交換剤
(xiii)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0063】
本発明の液体洗浄剤組成物は、例えば、所定温度(80℃程度)に加温したイオン交換水に、所定量の(A)成分、及び(D)成分、及び必要に応じて(G)成分を加えて溶解させる。必要であればこの段階で水酸化ナトリウムなどの強塩基を加えておく。次いで酸型の(B)成分、及び酸型の(C)成分を加え、透明になるまで混合した後、その他の成分を適宜加え、室温まで冷却後、香料や色素などを加えることにより製造することができる。
【0064】
本発明の液体洗浄剤組成物は、家庭での洗濯用、更には手洗い洗濯用として好適であり、衣料、布帛、寝具、タオル等の繊維製品の手洗い洗濯に好適に用いられる。
【0065】
本発明は、本発明の液体洗浄剤組成物を含む洗浄水を接触させた被洗浄物を手洗いする手洗い洗濯方法に関する。本発明の液体洗浄剤組成物を用いた手洗い洗濯方法としては、布帛のような被洗浄物に、本発明の液体洗浄剤組成物を含む洗浄水を接触、浸漬させて手洗いする方法が挙げられる。接触時間及び/又は浸漬時間が長いと洗浄効果が高く、5〜15分接触及び/又は浸漬するとより良好な効果が得られる。特に汚れた部分に直接組成物を塗布して5〜15分放置すると更に高い効果が得られる。洗浄水は、本発明の組成物又は組成物の水希釈物(例えば水溶液)が用いられる。布帛のような被洗浄物の質量に対する洗浄水の質量は、好ましくは2〜100倍、より好ましくは3〜50倍、特に好ましくは5〜25倍である。本発明に係る洗浄水を接触させた布帛等の被洗浄物を十分に手でこすり洗いすると高い洗浄力が得られるばかりか豊かな泡立ちがあるため、視覚的に好ましい。こすり洗い後は洗浄水から布帛を取り出し、絞って水を切るか脱水機を用いて水を切り、新しい水〔以下すすぎ水という〕に再度浸漬させる。すすぎ水は、洗面器などにためた水でも流水でもどちらでも良い。布帛に対するすすぎ水の質量は、すすぎに用いたすすぎ水の全量基準で、好ましくは2〜1,000倍、より好ましくは5〜500倍、特に好ましくは10〜100倍である。すすぎ水を浸漬させた段階で布帛に残存している界面活性剤などが、すすぎ水に再溶解するため、泡立ちが見られる。この操作を数回繰り返すと泡立ちがなくなりすすぎ終了となる。手洗いによる一般的な洗濯では、例えば通常の洗浄剤を用いた場合には一般的に5回以上必要となるが、本発明では3回以下ですすぎを終了でき、非常に少ないすすぎ水ですすぎを終了させることができる。
【0066】
洗浄水の調製に用いる水の硬度、及び/又はすすぎ水の硬度は、洗浄力とすすぎ性の観点から1°DH〜50°DHが好ましく、より好ましくは2°DH〜40°DH、より好ましくは3°DH〜30°DH、より好ましくは5°DH〜25°DH、より好ましくは10°DH〜20°DHである。
【実施例】
【0067】
表1、2に示す配合成分を用いて液体洗浄剤組成物を調製し、以下の評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0068】
(1)泡立ち性評価
円形洗面器(底面の直径25cm、上面の直径30cm、高さ12cm、新輝合成株式会社、洗桶33型)に、水温20℃、炭酸カルシウム換算で179mg/Lの硬水〔塩化カルシウムCaCl21.19gと硫酸マグネシウムMgSO4・7H2O1.76gにイオン交換水を加えて10Lとしたもの、Ca/Mg=7/3(モル比)、本硬水はドイツ硬度で10°DHに相当する〕3Lを注入する。そこに液体洗浄剤組成物を20g添加し、手で攪拌しながら均一に溶解させる。次いでそこに下記に示す調整油を、1枚当り0.5gになるよう均一に滴下した肌着(グンゼ社製(YG1614丸首Lサイズ、木綿製)を3枚投じ、洗浄液に完全に浸る状態で15分間放置する。15分間放置後、肌着1枚に付き50回もみ洗い(布と布を擦り合わせながら1往復(約1秒)で1回と換算)する。その後、肌着を取り出し、肌着の含水量が肌着に対して40〜60%程度になるように洗面器の上で絞り、3枚絞った直後の洗濯液面の状態を確認する。評価基準は、洗濯液面全体を泡が覆っている場合は、その泡高さを、ものさしを差し込んで計測しセンチメートルで表記した。洗濯液面全体を覆っていない場合は、泡が覆っている面積比で表記した(例えば、液面半分を泡が覆っている場合は、1/2と表記する)。
【0069】
*調整油
ラウリン酸1質量%、ミリスチン酸7.1質量%、ペンタデカン酸5.3質量%、パルチミチン酸14.2質量%、ヘプタデカン酸1質量%、ステアリン酸3.6質量%、オレイン酸17.8質量%、トリオレイン30質量%、パルミチン酸n−ヘキサデシル5質量%、スクアレン15質量%を約60℃に加温し、均一に溶解混合したものを調整油とした。
【0070】
(2)すすぎ性評価
円形洗面器(底面の直径25cm、上面の直径30cm、高さ12cm、新輝合成株式会社、洗桶33型)に、水温20℃、炭酸カルシウム換算で179mg/Lの硬水(前記泡立ち性評価で用いたものと同様に調製したもの)5Lを注入し、上記泡立ち性評価で絞った肌着3枚を投入する。肌着をすすぎ水中でほぐした後、ほぐした肌着を1枚ずつ浴中から上に持ち上げ(浴中から衣類全体が抜け切るまで)、その後再び浴中へ戻す。このような上下運動によるすすぎを1枚の肌着につき10回繰り返した後、肌着の含水量が肌着に対して40〜60%程度になるように手で絞る。3枚の肌着のすすぎ、脱水が終わった直後のすすぎ水の液面状態を観察し、下記の基準でポイントをつける。脱水した肌着に新しいすすぎ水を投入し、この評価をあと2回繰り返す(上記泡立ち性評価から含めて1つの液体洗浄剤組成物について用いる肌着は3枚)行い、ポイントの総和ですすぎ性を評価した。
ポイント
6:液面全体を泡高さ1cm以上の泡が残っている
5:液面全体に泡が残っている(1cm未満)
4:液面の1/2程度に泡が残っている
3:液面の1/4程度に泡が残っている
2:液面に細かい泡が残っている
1:液面に泡が残っていない
【0071】
(3)洗浄力評価
<人工汚染布の作製>
使用した人工汚染布は、6cm×6cmの木綿/ポリエステル混紡ブロード染着布(木綿/ポリエステル比=65/35 谷頭商店より購入)に、下記組成から成る人工汚垢を1枚当り100mgになるようグラビア塗工したものである。
【0072】
*人工汚垢
下記A、B、C、D、Eを含有する組成物を人工汚垢とした。それぞれの質量%は、最終組成の人工汚垢中の割合であり、合計が100質量%となるようにBの量を調節した。
A:前記泡立ち性評価で用いた調整油(人工汚垢中の質量%が、ラウリン酸0.44質量%、ミリスチン酸3.15質量%、ペンタデカン酸2.35質量%、パルチミチン酸6.31質量%、ヘプタデカン酸0.44質量%、ステアリン酸1.6質量%、オレイン酸7.91質量%、トリオレイン13.33質量%、パルミチン酸n−ヘキサデシル2.22質量%、スクアレン6.66質量%となる量で用いる)
B:塩化カルシウム(2水塩)105mgを秤量し、蒸留水に溶かして1,000mlとして得た硬水
C:卵白レシチン液晶物1.98質量%(蒸留水80mlにアルギニン塩酸塩11.37g、ヒスチジン4.20g、セリン2.44gを溶解し、濃塩酸でpHを5.0に調整した後、この溶液と卵白レシチンをミキサーで十分混ぜ合わせて得た卵白レシチン液晶物)
D:鹿沼赤土8.11質量%
E:カーボンブラック0.025質量%
【0073】
<洗浄条件>
液体洗浄剤組成物3gを、炭酸カルシウム換算で179mg/Lの硬水(前記泡立ち性評価で用いたものと同様に調製したもの)1Lに溶解し、そこに上記人工汚染布4枚入れてターゴトメーターにて以下の条件で洗浄した。
洗浄時間10分
水温20℃
洗浄力は、汚染前の原布、及び洗浄前後の550nmにおける反射率を測色色差計(日本電色株式会社製 Z−300A)にて測定し、次式によって洗浄率(%)を求めた(表中の値は4枚の洗浄率の平均値)。
洗浄率(%)=100×[(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)/(原布の反射率−洗浄前の反射率)]
【0074】
(4)手肌への刺激性試験
健常な女性パネラー3名が、素手で前記(1)の泡立ち性評価、及び(2)のすすぎ性評価を連続して実施した後、手肌の感触を下記の基準で評価した。3人の評価点の平均値を表1、2に示した。
(評価点)
0:特に手肌に違和感を感じなかった
1:洗濯後、つっぱり感を覚えた
2:手肌が荒れた
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
表中の成分は以下のものである。また、pHの調整には、必要に応じて6N−HClも用いた。
・AES−Na:ポリオキシエチレン(平均付加モル数2)ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム(エマール270J 花王株式会社製)
・LAS−Na:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム〔アルキルベンゼン(新日本石油株式会社製 商品名:アルケンL)にSO3ガスを接触させ、SO3/アルキルベンゼンの反応モル比=1.030の条件でスルホン化したアルキルベンゼンスルホン酸を原料として配合し、組成物の製造過程で水酸化ナトリウムで中和した。ここで、アルキル基の炭素数は10〜13である。〕
・ミリスチン酸:表1にはナトリウム塩換算の量で算出した質量%と質量比を示した。
・非イオン界面活性剤(1):ポリオキシエチレン(平均付加モル数8)アルキル(炭素数10〜14)エーテル
・非イオン界面活性剤(2):ポリオキシエチレン(平均付加モル数21)アルキル(炭素数12)エーテル
・F1−1:下記式で表されるスルホベタイン、アンヒトール20HD(花王(株)製)
【0078】
【化2】

【0079】
・F1−1:下記式で表されるベタイン、アンヒトール20AB(花王(株)製)
【0080】
【化3】

【0081】
・F2−1:2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル
【0082】
表1に示すように、実施例1〜9及び実施例10〜14は、何れの評価においても優れた結果が得られている。一方、比較例1、6、8はすすぎ性の点で、比較例2、3、7、9は泡立ち性と洗浄性の点で、比較例4、5は泡立ち性と刺激性の点で、実施例よりも劣ることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、(B)アルキルベンゼンスルホン酸塩、(C)脂肪酸及び/又はその塩、(D)pKaが8.0以上の化合物、並びに水を含有し、(A)/(B)の質量比が85/15〜30/70であり、〔(A)+(B)〕/(C)の質量比が85/15〜30/70であり、〔(A)+(B)〕/(D)の質量比が85/15〜40/60であり、非イオン界面活性剤の含有量が2質量%以下であり、JIS K3362:1998記載の25℃で測定するpHが9.0〜10.5である、液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)が、炭素数10〜20のアルキル基を有し、アルキレンオキシ基の平均付加モル数が0〜5のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩である、請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(B)を2〜8質量%含有する、請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(D)が、pKaが9.0〜10.6の化合物である、請求項1〜3いずれか記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
(D)が、pKaが9.0〜10.6のアルカリ金属炭酸塩又はアルカノールアミンである、請求項1〜4いずれか記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
(A)と(B)とを合計で5〜30質量%含有する、請求項1〜5いずれか記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項7】
(C)を1〜50質量%含有する、請求項1〜6いずれか記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項8】
(D)を2〜10質量%含有する、請求項1〜7いずれか記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項9】
非イオン界面活性剤が、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキシドを平均で4〜15モル、プロピレンオキシドを平均で0〜5モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルである請求項1〜8いずれか記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか記載の液体洗浄剤組成物を含む洗浄水を接触させた被洗浄物を手洗いする手洗い洗濯方法であって、被洗浄物の質量に対する洗浄水の質量が2〜100倍である、手洗い洗濯方法。

【公開番号】特開2011−213992(P2011−213992A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35556(P2011−35556)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】