説明

液体漂白剤組成物

【課題】過酸化水素を0.1〜3質量%含有する系において漂白活性化剤による漂白効果を飛躍的に向上させ、また漂白活性化剤の分解時に生じる脂肪酸臭を抑制した液体漂白剤組成物の提供。
【解決手段】(a)過酸化水素、(b)特定の漂白活性化剤、(c)HLB(グリフィン法)が13〜17の特定の非イオン界面活性剤、(d)陰イオン界面活性剤、(e)アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを有する化合物を、それぞれ特定範囲で含有し、(e)成分を含むアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル濃度が200〜1200mMであり、20℃におけるpHが2.5〜7である液体漂白剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体漂白剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素、漂白活性化剤等の漂白成分を配合した液体漂白剤組成物は、漂白剤組成物の安定性と漂白効果を両立させる観点から、漂白剤組成物の保存時のpHを酸性(例えば、pH2〜3)にする必要がある。これは、漂白基剤はアルカリ溶液中で活性化し、高い性能を発現するものであるが、pH2.5以上の製品中では、漂白活性化剤の過酸化水素による分解が徐々に進行し、安定性が低下するためである。過酸化水素の安定性は一般的なラジカル捕捉剤により高めることが可能であるが、漂白活性化剤の安定化は非常に困難であり、その改善方法が求められている。
【0003】
特許文献1には、水への溶解度の小さいアミド又はイミド有機ペルオキシ酸/界面活性剤/pH調整系(ホウ酸塩/ポリオール)を含有する汚れ落とし組成物が開示されている。この特許文献1は、水不溶性の有機過酸を用いた固体分散系による水中での安定化技術を開示したものであり、過酸化水素を含有する系では無く、単にこの技術を用いただけでは、漂白活性化剤(過酸前駆体)の安定性は改善されない。
【0004】
特許文献2には、固体で水不溶性の有機ペルオキシ酸/界面活性剤/pHジャンプ系(ボレート/ポリオール)/寒天又は糖類を含有する汚れ落とし組成物が開示されている。しかしこの技術を用いただけでは、過酸化水素中での漂白活性化剤の安定化は実現できない。
【0005】
特許文献3には、フェノール誘導体により、高いpH領域(pH4〜7)で過酸化水素を安定化させた液体漂白剤組成物が開示されている。しかしこの技術では、過酸化水素の安定性は改善されるが、漂白活性化剤の安定化は達成できない。
【0006】
また、アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、アルカノイルオキシベンゼンカルボン酸及びそれらの塩などの漂白活性化剤は、製品中で分解して脂肪酸を生じ、脂肪酸臭を発する事が知られている。製品中の漂白活性化剤の安定性は過酸化水素濃度を低減する事により向上するが、漂白力は著しく低下してしまう。この時、漂白力の低下を補うために、漂白剤組成物中の漂白活性化剤の濃度を単純に高くするだけでは充分な漂白効果が得られないばかりか、多量の漂白活性化剤の分解により著しい脂肪酸臭を生ずる。
【特許文献1】特開平6−100888号公報
【特許文献2】特開平7−70593号公報
【特許文献3】特開平11−181492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、過酸化水素を0.1〜3質量%含有する系において漂白活性化剤による漂白効果を飛躍的に向上させ、また漂白活性化剤の分解時に生じる脂肪酸臭を抑制した液体漂白剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は鋭意研究の結果、過酸化水素を0.1〜3質量%含有し、特定の非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を併用した系において、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を特定量含有させ、電気伝導度を特定の範囲にすることで、漂白力を飛躍的に向上させると共に漂白活性化剤の分解時に生じる脂肪酸臭を効果的に抑制できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び(e)成分を含有し、組成物中の(a)成分の含有量が0.1〜3質量%、(b)成分の含有量が1〜10質量%、(c)成分の含有量が15〜50質量%、(d)成分の含有量が0.1〜15質量%であり、組成物中の(e)成分を含むアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル濃度が200〜1200mMであり、20℃におけるpHが2.5〜7である液体漂白剤組成物を提供する。
(a)成分:過酸化水素
(b)成分:アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、アルカノイルオキシベンゼンカルボン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の漂白活性化剤
(c)成分:グリフィン法で求めたHLBが13〜17の非イオン界面活性剤であって、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤、並びにオキシエチレン基及びオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の非イオン界面活性剤
(d)成分:陰イオン界面活性剤
(e)成分:アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを有する、(b)成分及び(d)成分以外の化合物
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体漂白剤組成物は、過酸化水素を0.1〜3質量%含有する領域において、漂白力が飛躍的に向上し、貯蔵後でも良好な匂いを保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[(a)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(a)成分として過酸化水素を含有する。
【0012】
[(b)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(b)成分としてアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、アルカノイルオキシベンゼンカルボン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の漂白活性化剤を含有する。本発明の(b)成分は、優れた漂白効果を発現させる観点から、アルカノイルオキシ基が、炭素数8〜14の直鎖または分岐鎖を有することが好ましい。
【0013】
分岐鎖を有する(b)成分としては、エステル結合を形成する炭素原子のα位又はβ位に側鎖を有するアルカノイルオキシ基としては、2-エチルヘキサノイル基、2-プロピルヘプタノイル基、3,5,5-トリメチルヘキサノイル基等が挙げられ、これら分岐アルカノイルオキシ基を有するベンゼンスルホン酸又はカルボン酸あるいはその塩が特に好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が溶解性の点から好ましい。
【0014】
(b)成分の具体例としては、下記式(1−1)〜(1−4)で表される化合物等が挙げられる。
【0015】
【化1】

【0016】
[(c)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(c)成分として、グリフィン法で求めたHLBが13〜17、好ましくは13〜16の非イオン界面活性剤であって、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤、並びにオキシエチレン基及びオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の非イオン界面活性剤を含有する。
ここで、グリフィン法で求めたHLBとは、以下の式で求めたHLBである。
【0017】
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
(c)成分としては下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0018】
2a-O(EO)m(PO)n-H (2)
[式中、R2aは炭素数8〜10、好ましくは10〜18、より好ましくは12〜14の炭化水素基、更に好ましくはアルキル基又はアルケニル基を示す。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、mはEOの平均付加モル数を示す1〜20の数、nはPOの平均付加モル数を示す0〜20の数であり、更にm及びnは、R2aとの関連においてグリフィン法で求めたHLBが13〜17になるように選択される数を示す。好ましくはmは6〜15、より好ましくは7〜12の数であり、nは好ましくは0〜10、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3の数である。]
なお、一般式(2)において、nが0でない時はEOとPOとはランダム付加形態またはブロック付加形態のいずれの形態で配列されていてもよいが、下記一般式(3)で表される化合物が特に好ましい。
【0019】
3a-O(C24O)p(C36O)q(C24O)r-H (3)
[式中、R3aは炭素数8〜18、好ましくは10〜14の炭化水素基、より好ましくはアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくはアルキル基である。p,q及びrはそれぞれ独立に1〜10、好ましくは2〜8の数であり、更にp,q及びrは、R3aとの関連においてグリフィン法で求めたHLBが13〜17になるように選択される。]
上記一般式(2)又は一般式(3)で表される非イオン界面活性剤としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0020】
C12H25-O(C2H4O)m1-H (m1=7〜20、HLB=13.3〜16.9)
C14H29-O(C2H4O)m2-H (m2=7〜24、HLB=13.1〜17.0)
C12H25-O(C24O)p1(C36O)2(C24O)r1-H
(p1+r1=5〜18、HLB=13.4〜17.0)
本発明において、(c)成分としては、一般式(2)において、mが8〜12、nが0〜3のポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤成分(HLB13.1〜17)を含有することが洗浄効果の点から最も好ましい。
【0021】
[(d)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(d)成分として、陰イオン界面活性剤を含有する。陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩等が挙げられ、特に、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α−スルホ脂肪酸塩、及びα−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩から選ばれる少なくとも1種の陰イオン界面活性剤が好ましい。
【0022】
(d)成分としては、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)ベンゼンスルホン酸塩、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル塩、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩(炭素数10〜18)、α−スルホ脂肪酸塩(炭素数10〜18)又はα−スルホ脂肪酸(炭素数10〜18)低級アルキル(炭素数1〜3)エステル塩等が挙げられ、特に、これらの炭素数を満たす、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩が好ましい。
【0023】
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、洗剤用界面活性剤市場に一般に流通しているものの中で、アルキル基の平均炭素数が10〜18のものであればいずれも用いることができ、例えば花王(株)製のネオペレックスF25、Shell社製のDobs102等を用いることができる。また、工業的には、洗剤用原料として広く流通しているアルキルベンゼンをクロルスルホン酸、亜硫酸ガス等の酸化剤を用いてスルホン化して得ることもできる。アルキル基の平均炭素数は10〜16が好ましい。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、平均炭素数10〜18の直鎖もしくは分岐鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコールに、エチレンオキシドを1分子当たり平均0.5〜5モル付加させ、これを例えば特開平9−137188号公報記載の方法を用いて硫酸化して得ることができる。アルキル基の平均炭素数は10〜16が好ましい。アルキル硫酸エステル塩としては炭素数10〜16、好ましくは10〜14の直鎖もしくは分岐鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコールをSO3又はクロルスルホン酸でスルホン化し、中和して得ることができる。α−オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数10〜18の1−アルケンをSO3でスルホン化し、水和及び中和を経て得ることができ、炭化水素基中にヒドロキシル基が存在する化合物と不飽和結合が存在する化合物の混合物である。また、α−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩としては脂肪酸残基の炭素数が10〜16のものが好ましく、メチルエステル又はエチルエステルが洗浄効果の点から好ましい。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩が好適であり、洗浄効果の点からナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましい。
【0024】
本発明では、漂白活性化剤安定性への影響が小さく、漂白洗浄効果が高い、アルキル基の炭素数が10〜14、エチレンオキシド平均付加モル数1〜3のポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、及びアルキル基の炭素数が11〜15のアルキルベンゼンスルホン酸塩が特に良好である。
【0025】
[(e)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は(e)成分として、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを有する、(b)成分及び(d)成分以外の化合物を含有する。
【0026】
本発明に用いられる(e)成分としては、組成物のイオン強度を上げ、且つ良好な液感を得る観点から、アルカリ金属イオンを有する化合物が好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム又はフランシウムのハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物、酢酸塩、燐酸塩、有機酸塩等の化合物が挙げられる。これらの中では、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム等の燐酸塩等が好ましい。
【0027】
本明細書において、単にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属と言及した場合は、組成物中に含有される全てのアルカリ金属及びアルカリ土類金属を意味する。即ち、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、該(e)成分以外に、例えば、(b)成分、(d)成分、pH調整剤など由来のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属も含み得る。
【0028】
[液体漂白剤組成物]
本発明の液体漂白剤組成物は、必須成分として、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び(e)成分を含有する。本発明の組成物中の(a)成分の含有量は、高い漂白活性化剤安定性と高い漂白性能を得る観点から、0.1〜3質量%であり、0.5〜2.5質量%が好ましく、1〜2質量%がより好ましい。(b)成分の含有量は、優れた漂白効果を発現させる観点と、製品の匂いを良好に保つ観点から、1〜10質量%であり、1〜6質量%が好ましく、1〜4質量%がより好ましい。(c)成分の含有量は、電気伝導度を一定範囲に保ち、高い漂白力を得る観点から、15〜50質量%であり、20〜50質量%が好ましく、25〜50質量%がより好ましい。(d)成分の含有量は、製品の匂いを良好に保つ観点から0.1〜15質量%であり、0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0029】
本発明の組成物中の(e)成分を含むアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル濃度は、組成物のイオン強度を上げ、且つ良好な液感を得る観点から200〜1200mMであり、300〜800mMが好ましく、300〜650mMがより好ましい。
【0030】
本発明において、液体漂白剤組成物中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル濃度は、日本ジャーレルアッシュ(株)製の原子吸光/炎光共用分光分析装置 AA-855により測定した。また、25℃における組成物の電気伝導度は、漂白活性化剤分解時の脂肪酸臭を抑制する観点から、0.6S/m以下が好ましく、0.5S/m以下がより好ましく、0.3S/m以下が更に好ましい。このように電気伝導度を所定値以下に設定することにより、pH2.5〜7における組成物の貯蔵安定性を向上させ、更には脂肪酸臭を抑制することができる。なお、電気伝導度を調整するため、電気透析法等により無機イオンを除去することができる。
【0031】
このような電気伝導度を所定の範囲内に調整するためには、上記(e)成分を含むアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル濃度を上記範囲になるように調整する。(e)成分を含むアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル濃度の調整には、電気伝導度の調整と同様に電気透析法を適用することができる。
【0032】
本発明の組成物の25℃における電気伝導度は、東亜電波工業(株)製のCONDUCTIVITY METER CM-60Sにより測定したものである。
【0033】
本発明では、(b)成分、(c)成分、(d)成分の含有量、及び(e)成分を含むアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル濃度を特定の範囲にすることで、(a)成分が比較的低い濃度の領域において優れた漂白効果が得られる。
【0034】
このような効果は、上記条件により(b)成分及び(e)成分が、(c)成分及び(d)成分のミセル中に存在するために得られたと考えられる。(e)成分はミセル中に存在するので運動性が落ち、液体漂白剤組成物中の電気伝導度が特定範囲まで下がる一方で、(e)成分はミセル中に高濃度で存在するため、ミセル外に遊離している過酸化水素イオンをミセル側に引き付け得る。その結果、この過酸化水素イオンがミセル中の(b)成分と近接して相互作用し得るので効率的に有機過酸を生成し得、液体漂白剤組成物の漂白力が著しく向上したのではないかと推測している。漂白効果は、(c)成分単独でも得られるが、本発明者は、(d)成分の併用により、極めて高い漂白性能を発現することを見出した。
【0035】
更に、本発明の液体漂白剤組成物は、漂白活性化剤の分解時に生じる脂肪酸臭を抑制し得る。本発明の液体漂白剤組成物は、(b)成分及び(e)成分が、高濃度で(c)成分及び(d)成分のミセル中に存在するために、生成した脂肪酸を(e)成分との塩に効率的に変換し得、脂肪酸臭を抑制し得たと推測している。陰イオン界面活性剤が無配合でも、脂肪酸臭の抑制効果は得られるが、陰イオン界面活性剤を併用することでその効果が顕著に向上し、特に脂肪酸臭の強度が高くなるpH領域(具体的にはpH2.5〜5)での抑制効果が著しく向上することを見出した。このメカニズムは定かではないが、イオン強度が高い系で非イオン界面活性剤/脂肪酸/陰イオン界面活性剤の混合ミセルの溶存状態がより強固になり易く、脂肪酸がバルクに移動しにくくなることで発現したものと考えている。
【0036】
[その他の任意成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、pHジャンプ効果を賦与するため、即ち、保存時の組成物のpHを低く維持し、使用場面での希釈時にはpH値を高めるために、(f)成分としてホウ素化合物を含有することが好ましい。組成物中の(f)成分の含有量は、ホウ素原子として、0.05〜2質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましく、0.15〜0.5質量%が更に好ましく、0.2〜0.4質量%が特に好ましい。
【0037】
ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、4ホウ酸ナトリウム、4ホウ酸カリウム、4ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。ホウ素化合物の中では、ジ体を主成分とすることが希釈溶液のpHを弱アルカリ性(pH8以上)にするために好適であり、本発明の組成物中においてホウ素化合物の70〜100モル%がジ体であることが好ましい。
【0038】
本発明の液体漂白剤組成物は、高希釈条件でのpHコントロール効果を維持するために、(g)成分として隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物を含有することが好ましい。組成物中の(g)成分の含有量は、3〜35質量%が好ましく、5〜30質量%より好ましく、7〜20質量%が特に好ましい。
【0039】
(g)成分の具体例としては下記(1)〜(4)の化合物が挙げられる。
【0040】
(1)グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、アルキル基の炭素数1〜10のアルキルグリセリルエーテル、アルキルジグリセリルエーテル、アルキルトリグリセリルエーテル;エチレングリコール、1,2-プロピレングリコールから選ばれるグリセロール類又はグリコール類
(2)ソルビトール、マンニトール、マルチトース、イノシトール、フィチン酸から選ばれる糖アルコール類
(3)グルコース、アピオース、アラビノース、ガラクトース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロース、フルクトースから選ばれる還元糖類
(4)デンプン、デキストラン、キサンタンガム、グアガム、カードラン、プルラン、アミロース、セルロースから選ばれる多糖類。
【0041】
本発明では、特に上記(2)の糖アルコール類が好適であり、特にソルビトールが安定性及び漂白/洗浄効果の点から好適である。
【0042】
また、(g)成分が過剰に存在すると過酸化水素の安定性を損なう恐れがあるため、優れたpHジャンプ効果及び過酸化水素の安定性の両方を満足させる観点から、(g)成分と(f)成分の割合は、〔(g)成分〕/〔(f)成分中のホウ素原子〕のモル比(例えば、ホウ砂及び四ホウ酸ナトリウムの場合はホウ素原子を4個含むため、4当量と考える)で、好ましくは1.5〜4.0、更に好ましくは2.0〜4.0、特に好ましくは2.2〜4.0である。
【0043】
本発明の組成物は、更に漂白効果を向上させる観点から金属イオン封鎖剤(以下(h)成分という)を含有することが好ましい。組成物中の(h)成分の含有量は0.05〜0.3質量%が好ましく、0.1〜0.25質量%がより好ましく、0.15〜0.2質量%が特に好ましい。
【0044】
本発明に用いられる(h)成分としては、ホスホン酸基又はホスホン酸塩基を有する化合物が好ましい。具体的なホスホン酸基又はホスホン酸塩基を有する化合物としては、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸から選ばれるホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸から選ばれるホスホノカルボン酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩を挙げることができ、好ましくはホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩であり、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩が最も好ましい。
【0045】
本発明の液体漂白剤組成物は、優れた洗浄性を得る観点から、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。
【0046】
陽イオン界面活性剤としてはエステル基、アミド基で分断されていてもよい炭素数10〜18の炭化水素基を1つ又は2つと、残りが炭素数1〜3のアルキル基あるいはヒドロキシアルキル基である4級アンモニウム塩、好ましくは炭素数1〜3のアルキル硫酸エステル塩が好適である。
【0047】
両性界面活性剤としては下記一般式(4)又は一般式(5)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することが洗浄効果の点から好ましい。
【0048】
【化2】

【0049】
[式中、R4aは炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14の直鎖アルキル基又はアルケニル基であり、R4c及びR4dはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基である。R4bは炭素数1〜5、好ましくは2又は3のアルキレン基である。Aは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−、−O−から選ばれる基であり、sは0又は1の数である。]
【0050】
【化3】

【0051】
[式中、R5aは炭素数9〜23、好ましくは9〜17、特に好ましくは9〜15のアルキル基又はアルケニル基であり、R5bは炭素数1〜6、好ましくは2又は3のアルキレン基である。Bは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−、−O−から選ばれる基であり、tは0又は1の数である。R5c及びR5dはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R5eはヒドロキシル基で置換していてもよい炭素数1〜5、好ましくは1〜3のアルキレン基である。Dは−COO、−SO、−OSOから選ばれる基である。]
【0052】
本発明の組成物は、20℃におけるpHが2.5〜7、好ましくは3.5〜6、更に好ましくは3.5〜5.5、より更に好ましくは3.5〜5.0、特に好ましくは3.5〜4.8である。このpH領域において、漂白活性化剤の安定化を実現した貯蔵後でも優れた漂白洗浄性能と、脂肪酸臭を改善した液体漂白剤組成物となり得るして。pHは、20℃のpHを、(株)堀場製作所製pHメータF52、pH電極6367-S004を用いて測定したものである。本発明の液体漂白剤組成物は、衣類等の繊維製品用として好適である。
【0053】
pH調整剤としては、塩酸、硫酸、燐酸などの無機酸を酸剤として用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等をアルカリ剤として用いることができる。
【実施例】
【0054】
実施例1〜5及び比較例1〜3
下記成分を用い、表1に示す組成の液体漂白剤組成物を調製した。この液体漂白剤組成物について、下記方法で、漂白性能、漂白活性化剤の貯蔵安定性及び貯蔵後の匂いを評価した。結果を表1に示す。
【0055】
<配合成分>
a−1;過酸化水素
b−1;上記式(1−1)で表される漂白活性化剤
b−2;上記式(1−3)で表される漂白活性化剤
c−1;ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数8、HLB13.1)
c−2;C1225O-(C24O)7-(C36O)2-(C24O)4-H(HLB15.8)
c−3;ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数12、HLB15.3)
d−1;アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(LAS、花王(株)製ネオペレックスG25)
d−2;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(オキシエチレン平均付加モル数3)
e−1;クエン酸ナトリウム
e−2;水酸化ナトリウム
e−3;炭酸カリウム
f−1;ホウ酸(表中の配合量が、例えば1.5質量%の場合、ホウ素原子としては0.26質量%の配合量となる)
g−1;D−ソルビトール
h−1;金属イオン封鎖剤、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(デイクエスト2010、ソルーシア社製)
【0056】
<漂白性能の評価法>
以下の方法で調製したミートソース汚染布(4枚)に対し、液体漂白剤組成物を各1mLずつ塗布し、5分経過後、ターゴトメータを用いて10分間洗浄処理を行った(回転数;80rpm、洗浄水;5°DH、20℃、1L)。水道水で十分に濯ぎ、乾燥した後、処理前後の布表面の反射率を測定することで、下式により漂白率を求めた。
【0057】
・ミートソース汚染布の調製
カゴメ(株)製ミートソース(完熟トマトのミートソース(2008年8月9日賞味期限、ロット番号:D6809JC)/内容量295gの缶詰)の固形分をメッシュ(目の開き;500μm)で除去した後、得られた液を煮沸するまで加熱した。この液に木綿金布#2003を浸し、15分間煮沸した。そのまま火からおろし2時間程度放置し30℃まで放置した後、布を取りだし、余分に付着している液をへらで除去し、自然乾燥させた。その後プレスし、10×10cmの試験布として実験に供した。
【0058】
【数1】

【0059】
<漂白活性化剤の貯蔵安定性評価法>
液体漂白剤組成物を100mLガラス製サンプルビンに80g入れ、30℃で1ヶ月貯蔵した。貯蔵前後の液体漂白剤組成物中の漂白活性化剤の含有量を高速液体クロマトグラフィーで測定し、下式により漂白活性化剤残存率を求めた。
【0060】
【数2】

【0061】
<貯蔵後の匂いの評価法>
液体漂白剤組成物を100mLガラス製サンプルビンに80g入れ、40℃で1ヶ月貯蔵した後のサンプルのニオイ強度を官能評価した。評価は熟練パネラー5人(20〜30歳代の女性5人)により、下記の基準で評価を行った。
1:無臭、もしくは微かに感じる程度のニオイ
2:容易に感じるニオイ
3:強いニオイ
4:耐えられないほど強いニオイ
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び(e)成分を含有し、組成物中の(a)成分の含有量が0.1〜3質量%、(b)成分の含有量が1〜10質量%、(c)成分の含有量が15〜50質量%、(d)成分の含有量が0.1〜15質量%であり、組成物中の(e)成分を含むアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル濃度が200〜1200mMであり、20℃におけるpHが2.5〜7である液体漂白剤組成物。
(a)成分:過酸化水素
(b)成分:アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、アルカノイルオキシベンゼンカルボン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の漂白活性化剤
(c)成分:グリフィン法で求めたHLBが13〜17の非イオン界面活性剤であって、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤、並びにオキシエチレン基及びオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の非イオン界面活性剤
(d)成分:陰イオン界面活性剤
(e)成分:アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを有する、(b)成分及び(d)成分以外の化合物
【請求項2】
25℃における電気伝導度が0.6S/m以下である請求項1記載の液体漂白剤組成物。
【請求項3】
(d)成分がアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α−スルホ脂肪酸塩、及びα−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩から選ばれる少なくとも1種の陰イオン界面活性剤である、請求項1又は2記載の液体漂白剤組成物。
【請求項4】
更に、(f)成分としてホウ素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、並びに(g)成分として隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物を含有する、請求項1〜3何れか記載の液体漂白剤組成物。

【公開番号】特開2008−189753(P2008−189753A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24219(P2007−24219)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】