説明

液体漂白洗浄剤組成物

【課題】 漂白効果及び洗浄効果が満足できるレベルのpHジャンプ効果を有し、過酸化水素及び漂白活性化剤の貯蔵安定性を飛躍的に向上させ、さらに貯蔵後の組成物の臭いを抑制した液体漂白洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】 (a)非イオン性界面活性剤、(b)漂白活性化剤、(c)過酸化水素等、(d)式(1)で表される4級アンモニウム塩、(e)ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸塩、及び(f)隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物を含有し、組成物中の(d)成分の含有量が0.1〜10質量%、(f)成分/(e)成分のモル比が1.5〜2.7、20℃におけるpHが4.0〜7.0である液体漂白洗浄剤組成物。
【化1】


[式中、R11〜R14のうち1又は2がフェニル基を1個有する炭化水素基又はC8-36の脂肪族炭化水素基、残りが炭素数1〜5のアルキル基で、R11〜R14の総炭素数は19以上、X-はハロゲンイオン若しくはC1-3のアルキル硫酸イオンである。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体漂白洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗浄剤は、粉末洗浄剤に比べ水への溶け残りがなく、汚れ部分に直接塗布できるといった簡便性の点で優れており広く使用されている。一方、過酸化水素は弱アルカリ性以上のpHにおいて漂白効果を示すことから酸素系漂白剤等に使用されている。しかしながら、アルカリ性である液体洗浄剤中に過酸化水素を含有させることは貯蔵安定性の点から困難である。
【0003】
また、漂白活性化剤は、過酸化水素と弱アルカリ性以上のpH領域で反応し、漂白効果や除菌・除臭効果を発揮することができるが、弱アルカリ性では漂白活性化剤の安定性が著しく低下するため、一般に高pH領域に調整されている液体洗浄剤組成物に漂白活性化剤を配合することは貯蔵安定性上困難である。一方、食べこぼしのシミ汚れ等は漂白活性化剤による漂白効果が非常に高いことが知られており、液体洗浄剤に漂白効果を付与することが強く求められる。
【0004】
漂白活性化剤の安定性と漂白効果を両立させる目的から、液体洗浄剤組成物の製品のpHを弱酸性にし、水に希釈することでpHが上昇する技術(pHジャンプ技術)が知られている。これらはホウ素化合物及び糖等の多価アルコールを併用することで達成され、特許文献1〜6に開示されている。また、特許文献4には食べこぼしによるシミ汚れに効果を発揮する漂白活性化剤の前駆体を含有する組成物も開示されており、デカノイルオキシ安息香酸が例示されている。さらに、特許文献7には分岐構造を有する有機過酸前駆体を含有する液体漂白剤組成物が開示されており、優れた安定性を有することが記載されている。
【特許文献1】特開平6−100888号公報
【特許文献2】特開平7−53994号公報
【特許文献3】特開平7−70593号公報
【特許文献4】特開平10−72595号公報
【特許文献5】特開平10−72596号公報
【特許文献6】特開2000−144187号公報
【特許文献7】特開平10−251689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜6に記載されている技術の多くは組成物のpHを4.5以下に調整しており、pHジャンプ効果を示すが、到達するpHは8未満であり、期待される漂白効果が充分発揮されず、洗浄効果も満足できるものではない。
【0006】
希釈した場合に満足できる漂白効果及び洗浄効果を得るためには、例えばpH8以上のpHに上昇させる必要があり、その達成手段としては組成物のpHを予め4.6以上に調整する必要がある。しかしながらこの場合、漂白活性化剤の安定性に問題が生じる。また、特許文献4、5の実施例記載の組成物においては、組成物単独で使用した際の洗浄効果が低く、満足できるレベルまでに至っていない。更に特許文献7において、液体漂白剤組成物を貯蔵した場合、漂白活性化剤の加水分解により生成する脂肪酸塩によって臭いの劣化が生じるという問題がある。
【0007】
従って本発明の課題は、漂白効果及び洗浄効果が満足できるレベルのpHジャンプ効果を有し、過酸化水素及び漂白活性化剤の貯蔵安定性を飛躍的に向上させ、さらに貯蔵後の組成物の臭いを抑制した液体漂白洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、特定の4級アンモニウム塩を特定割合で含有する液体漂白洗浄剤組成物が、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(f)成分を含有し、組成物中の(d)成分の含有量が0.1〜10質量%であり、(f)成分/(e)成分のモル比が1.5〜2.7であり、20℃におけるpHが4.0〜7.0である液体漂白洗浄剤組成物を提供する。
(a)非イオン性界面活性剤
(b)漂白活性化剤
(c)過酸化水素又は水中で過酸化水素を生成する化合物
(d)一般式(1)で表される4級アンモニウム塩
【0010】
【化2】

【0011】
[式中、R11、R12、R13、R14のうち1つ又は2つがフェニル基を1個有する炭化水素基又は炭素数8〜36の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、残りが炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。但し、R11、R12、R13及びR14の総炭素数は19以上である。X-は、ハロゲンイオン若しくは炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンである。]
(e)ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物
(f)隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、漂白効果及び漂白基剤の安定性に優れ、貯蔵後の組成物の臭いを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[(a)成分]
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、(a)成分として、非イオン性界面活性剤を含有する。
【0014】
非イオン性界面活性剤としては、過酸化水素及び漂白活性化剤の貯蔵安定性の観点から、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤が好ましく、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤が更に好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤は、ランダム共重合体、又はブロック共重合体のいずれの形態で配列されていてもよく、その中でもブロック共重合体が好ましい。ブロック共重合体の形態としては、下記一般式(2)で表される化合物が特に好ましい。
【0015】
21-O-(C24O)p-(C36O)q-(C24O)rH (2)
〔式中、R21は炭素数8〜18の炭化水素基であり、p、q及びrはそれぞれ独立にオキシアルキレン基の数平均付加モル数を示す1〜10の数である。〕
一般式(2)において、R21は炭素数8〜18、好ましくは10〜14の炭化水素基であり、より好ましくはアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくはアルキル基である。p、q及びrはそれぞれ独立にオキシアルキレン基の数平均付加モル数を示す1〜10の数であり、2〜8の数が好ましい。
【0016】
また、(a)成分として、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤及びグリセリル基を有するポリグリセリルアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種((a1)成分という)と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤((a2)成分という)との混合物を用いることも好ましく、(a1)成分と(a2)成分の質量比は、過酸化水素及び漂白活性化剤の貯蔵安定性の観点から、(a1)/(a2)=1/10〜10/1が好ましい。
【0017】
グリセリル基を有するポリグリセリルアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤としては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0018】
22−O−(C362)s−H (3)
〔式中、R22は炭素数8〜18の炭化水素基であり、C362で示される基は直鎖又は分岐鎖であり、sは数平均付加モル数を示す1〜10である。〕
一般式(3)において、R22は炭素数8〜18、好ましくは10〜14の炭化水素基であり、より好ましくはアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくはアルキル基である。sは数平均付加モル数を示す1〜10の数であり、2〜6の数が好ましい。
【0019】
[(b)成分]
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、(b)成分として漂白活性化剤を含有する。漂白活性化剤とは、無機過酸化物と反応することで有機過酸を生成する化合物を意味する。
【0020】
漂白活性化剤としては、アルカノイル基の炭素数が6〜14、好ましくは8〜13のアルカノイルオキシ基を有する化合物、特にアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸又はアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸あるいはそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、良好な貯蔵安定性を得る観点から、炭素数6〜14の分岐アルカノイルオキシ基を有する化合物、特にアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸又はアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸あるいはそれらの塩が好ましく、アルカノイルオキシ基のエステル結合を形成する炭素原子のα位又はβ位に側鎖を有する炭素数6〜14のアルカノイル基を有する化合物、特にアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸又はアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸あるいはそれらの塩が更に好ましい。
【0021】
エステル結合を形成する炭素原子のα位又はβ位に側鎖を有するアルカノイルオキシ基としては、2−エチルヘキサノイル基、2−プロピルヘプタノイル基、3,5,5−トリメチルヘキサノイル基等が挙げられ、これら分岐アルカノイルオキシ基を有するベンゼンスルホン酸又はベンゼンカルボン酸(安息香酸)あるいはその塩が特に好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が溶解性の点から好ましい。
【0022】
(b)成分の具体例としては、下記式(b−1)〜(b−4)で表される化合物が挙げられ、式(b−1)〜(b−2)で表される化合物が好ましい。
【0023】
【化3】

【0024】
[(c)成分]
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、(c)成分として過酸化水素又は水中で過酸化水素を生成する化合物を含有する。水中で過酸化水素を生成する化合物としては、過炭酸塩及び過ホウ酸塩等が挙げられる。
【0025】
[(d)成分]
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、(d)成分として、前記一般式(1)で表される4級アンモニウム塩を含有する。
【0026】
一般式(1)において、R11、R12、R13、R14は、それらのうち1つ又は2つがフェニル基を1個有する炭化水素基又は炭素数8〜36の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、残りが炭素数1〜5直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。フェニル基を1個有する炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0027】
これらの中では、R11、R12、R13、R14のうち1つ又は2つが炭素数8〜36のアルキル基、フェニル基又はベンジル基、特に炭素数16〜22のアルキル基で、残りが炭素数1〜3のアルキル基、特にメチル基、エチル基であるものが好ましい。R11、R12、R13及びR14の総炭素数は19以上であるが、19〜40が好ましく、19〜32が更に好ましい。
【0028】
-は、ハロゲンイオン若しくは炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンであるが、塩素イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンが好ましい。
【0029】
(d)成分の具体例としては、セチルトリメチルアンモニウム塩;トリメチルステアリルアンモニウム塩;ベンジルセチルジメチルアンモニウム塩;ベンジルジメチルステアリルアンモニウム塩などが挙げられる。過酸化水素の安定性に優れるという効果に加え、高い漂白効果が得られるという観点から、ベンジルセチルジメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0030】
[(e)成分及び(f)成分]
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、pHジャンプ効果を賦与するため、即ち、保存時の組成物のpHを低く維持し、使用場面での希釈時にはpH値を高めるために、(e)成分として、ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物、並びに(f)成分として隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物を、(f)成分/(e)成分のモル比が1.5〜2.7となる割合で含有する。
【0031】
(e)成分のホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、4ホウ酸ナトリウム、4ホウ酸カリウム、4ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
【0032】
(f)成分の具体例としては下記(1)〜(4)の化合物が挙げられる。
【0033】
(1)グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、アルキル基の炭素数1〜10のアルキルグリセリルエーテル、アルキルジグリセリルエーテル、アルキルトリグリセリルエーテル;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールから選ばれるグリセロール類又はグリコール類
(2)ソルビトール、マンニトール、マルチトース、イノシトール、フィチン酸から選ばれる糖アルコール類
(3)グルコース、アピオース、アラビノース、ガラクトース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロース、フルクトースから選ばれる還元糖類
(4)デンプン、デキストラン、キサンタンガム、グアガム、カードラン、プルラン、アミロース、セルロースから選ばれる多糖類。
【0034】
本発明では、特に上記(2)の糖アルコール類が好適であり、特にソルビトールが安定性及び漂白/洗浄効果の点から好適である。なお、(3)の還元糖類については、過酸化水素の安定性に影響を及ぼす還元性のアルデヒド基が分子中に存在するために使用する場合には注意を要する。
【0035】
本発明においては、保存時の液体漂白洗浄剤組成物の20℃におけるpHを4.0〜7.0にする一方、使用時に水に希釈することでpHを上昇させることが好ましく、液体漂白洗浄剤組成物に対して1000容積倍の水により希釈した場合の希釈液の20℃におけるpHが、8.5以上10.5未満、更に9以上9.5未満になることが良好な漂白/洗浄効果を得る観点から好ましい。このようなpHジャンプ効果を得るために、本発明の組成物中に(e)成分と(f)成分を上記の割合で配合することが好ましい。
【0036】
ここで、(e)成分と(f)成分との間には下記のような平衡反応が存在する。
【0037】
【化4】

【0038】
本発明においてはジ体がpHジャンプ系の主要成分であることが希釈溶液のpHを8.5以上10.5未満にするために好適であり、液体漂白洗浄剤組成物中において、(e)成分の70〜100モル%がジ体となっていることが好ましい。また十分なpHジャンプ効果、及び漂白/洗浄効果を得る観点から、モノ体となっている(e)成分の割合は0〜5モル%が好ましく、(e)成分中、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸塩として単独で存在する割合は0〜25モル%が好適である。
【0039】
また、(f)成分が過剰に存在すると過酸化水素の安定性を損なうおそれがあるため、(e)成分と(f)成分の比率には注意が必要である。従って本発明では(f)成分/(e)成分のモル比(ただし、ホウ砂及び4ホウ酸ナトリウムの場合はホウ素原子を4個含むため、4当量と考える)が、1.5〜2.7、好ましくは2.0〜2.7、より好ましくは2.2〜2.7の割合で混合することで、本発明の優れたpHジャンプ効果及び過酸化水素の安定性の両方を得ることができる。
【0040】
なお、本発明では(e)成分及び(f)成分を液体漂白洗浄剤組成物に配合する場合には、液体漂白洗浄剤組成物中では上記モノ体及びジ体の化合物に変換されているため、本発明でいう(e)成分及び(f)成分の含有量とは、単独で存在する(e)成分及び(f)成分の含有量に、上記モノ体、ジ体の含有量から(e)成分及び(f)成分の量を換算した量を加えた量の合計を意味する。
【0041】
なお、変換されたモノ体、ジ体の含有量は、ホウ素(11B)のNMR分光法とICP発光分析法との組合せを用いることで算出することができる。
【0042】
[液体漂白洗浄剤組成物]
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、必須成分として、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(f)成分を含有する。
【0043】
本発明の組成物中の(a)成分の含有量は、過酸化水素及び漂白活性化剤の貯蔵安定性の観点から、1〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましく、20〜35質量%が更に好ましい。
【0044】
本発明の組成物中の(b)成分の含有量は、優れた漂白効果を発現させる観点から、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましく、0.3〜3質量%が更に好ましい。
【0045】
本発明の組成物中の(c)成分の含有量は、優れた漂白効果を得る観点から、過酸化水素として、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、1〜4.5質量%が更に好ましい。
【0046】
本発明の組成物中の(d)成分の含有量は、優れた過酸化水素及び漂白活性化剤の貯蔵安定性並びに臭い抑制の観点から、0.1〜10質量%であり、0.2〜5質量%が好ましく、0.3〜3質量%がより好ましい。
【0047】
本発明の組成物中の(e)成分の含有量は、優れたpHジャンプ効果を得る観点から、ホウ素原子として、0.05〜2質量%が好ましく、0.10〜1質量%がより好ましく、0.15〜0.5質量%が更に好ましく、0.2〜0.4質量%が特に好ましい。
【0048】
本発明の組成物中の(f)成分の含有量は、優れたpHジャンプ効果を得る観点から、3〜35質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜20質量%が更に好ましい。
【0049】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、更に(g)成分として、ホスホン酸基又はその塩基を有する金属イオン封鎖剤を含有することが好ましい。ホスホン酸基又はその塩基を有する金属イオン封鎖剤としては、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸から選ばれるホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸から選ばれるホスホノカルボン酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩を挙げることができ、好ましくはホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩であり、特にエタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩が好ましい。
【0050】
本発明の組成物中の(g)成分の含有量は、より好ましいpHジャンプ効果を得る観点及び過酸化水素の安定性を得る観点から、0.05質量%以上0.3質量%未満が好ましく、0.1〜0.25質量%がより好ましく、0.15〜0.2質量%が更に好ましい。
【0051】
また、本発明の組成物は、過酸化水素の安定性の点から、(h)成分として陰イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。陰イオン性界面活性剤としては、炭素数12〜36、好ましくは12〜28のアルキル基又はアルケニル基を有し、そして−SO3M基及び/又は−OSO3M基〔M:対イオン〕を有する陰イオン性界面活性剤が好ましい。
【0052】
陰イオン性界面活性剤の具体例としては、上記炭素数のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル、オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル又はこれらの塩が好ましい。これらの中でも特に炭素数12〜28のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、炭素数12〜28のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、炭素数12〜28のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキサイドの数平均付加モル数が1〜6、好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3であるポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を配合することが好ましい。本発明の特に好ましい陰イオン性界面活性剤は、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、又はポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル(オキシエチレン基の数平均付加モル数3)である。
【0053】
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、及びマグネシウム塩が貯蔵安定性の点から良好である。
【0054】
本発明の組成物中の(h)成分の含有量は、貯蔵安定性の観点から、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0055】
また、本発明の組成物は、過酸化水素の安定性の点から、(i)成分として過酸化水素安定化剤(ラジカルトラップ剤)を含有することが好ましい。ラジカルトラップ剤としては、一般的にフェノール誘導体が知られており、特開平11−181492号公報等に開示されている。本発明では、フェノール誘導体としてフェノール性水酸基を有する化合物又はフェノール性水酸基のエステル誘導体、エーテル誘導体を好ましく用いることができる。このような化合物としては、具体的にクレゾール、チモール、クロロフェノール、ブロモフェノール、メトキシフェノール、ニトロフェノール、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、4−フェノールスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,6−ジ第3ブチル−p−クレゾール、ナフトール、ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノキシエタノール等が挙げられる。この中で好ましい化合物は、G.E.Penketh,J.Appl.Chem.,Vol 7, 512〜521頁(1957)に記載されている酸化還元電位(O.P.)0(25℃)が0.3〜1.25Vの化合物であり、より好ましくは0.6〜0.75Vの化合物である。更に、配合のしやすさの点から、溶解度の高いラジカルトラップ剤がより効果的であり、溶解性を示す疎水性パラメーターlogP値で3以下のものが好ましい。上述した酸化還元電位及び溶解性の点から、4−メトキシフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸、4−フェノールスルホン酸、ヒドロキノン、カテコールが好ましい。これらフェノール系ラジカルトラップ剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。本発明の組成物中の(i)成分の配合量は0.01〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0056】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物の20℃におけるpHは4.0〜7.0、好ましくは4.2〜6.5、より好ましくは4.5〜5.5である。このようなpHに調整するためのpH調整剤としては、塩酸や硫酸から選ばれる無機酸、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムから選ばれる無機塩基を用いることが好ましい。
【0057】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、水に希釈して漂白/洗浄を行う方法に供され、希釈する水は液体漂白洗浄剤組成物に対して600〜2000質量倍、好ましくは700〜1500質量倍である。また、このような倍率で希釈された溶液の20℃におけるpHが8.5以上10.5未満、特に8.5以上9.5未満になることが好ましい。このような洗浄液を用いることにより優れた漂白/洗浄効果を得ることができる。
【実施例】
【0058】
実施例1
下記成分を用い、表1及び表2に示す組成の液体漂白洗浄剤組成物を調製した。得られた液体漂白洗浄剤組成物を用いて、漂白活性化剤の貯蔵安定性、過酸化水素の貯蔵安定性、漂白性能及び貯蔵前後の臭いを以下の方法により評価した。その結果を表1及び表2に示した。
【0059】
<配合成分>
(a)成分
(a)−1;CH3(CH2)11-O-(C24O)p-H(数平均付加モル数p=8)
(a)−2;CH3(CH2)11-O-(C24O)p-(C36O)q-(C24O)r-H(数平均付加モル数p=7、q=2及びr=3)
(b)成分
(b)−1;前記式(b−2)で表される化合物
(b)−2;前記式(b−1)で表される化合物
(c)成分
(c)−1;過酸化水素
(d)成分
(d)−1;セチルトリメチルアンモニウムクロリド
(d)−2;トリメチルステアリルアンモニウムクロリド
(d)−3;ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド
(d)−4;ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド
(e)成分
(e)−1;ホウ酸
(f)成分
(f)−1;ソルビトール
(g)成分
(g)−1;エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸
(h)成分
(h)−1;ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム
(h)−2;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム塩(オキシエチレン基の数平均付加モル数3)
(i)成分
(i)−1;4−フェノールスルホン酸ナトリウム
<漂白活性化剤の貯蔵安定性の評価法>
液体漂白洗浄剤組成物を100mLガラス製サンプルビンに80g入れ、30℃で1週間貯蔵した。貯蔵前後の液体漂白洗浄剤組成物中の漂白活性化剤含有量を高速液体クロマトグラフィーで測定し、下式により漂白活性化剤残存率を求めた。
【0060】
【数1】

【0061】
<過酸化水素の貯蔵安定性の評価法>
液体漂白洗浄剤組成物を100mLガラス製サンプルビンに80g入れ、30℃1週間貯蔵した。貯蔵前後の液体漂白洗浄剤組成物を1/10N過マンガン酸標準液で滴定し、有効酸素量を求め下式により過酸化水素残存率を測定した。
【0062】
【数2】

【0063】
<漂白性能の評価法>
4°DHを液体漂白洗浄剤組成物1mLと混合し1000mLに調製した後、ターゴトメータを用いて20℃、80rpmでミートソース汚染布(4枚)の洗浄試験を行った。乾燥前後の布表面の反射率を測定し、下式により漂白率を求めた。
・ミートソース汚染布の調製
カゴメ(株)製ミートソース(完熟トマトのミートソース(2007年5月27日賞味期限、ロット番号:LOT.D5527JF)/内容量259gの缶詰)の固形分をメッシュ(目の開き;500μm)で除去した後、得られた液を煮沸するまで加熱した。この液に木綿金布#2003を浸し、15分間煮沸した。そのまま火からおろし2時間程度放置し30℃まで放置した後、布を取りだし、余分に付着している液をへらで除去し、自然乾燥させた。その後プレスし、10×10cmの試験布として実験に供した。
【0064】
【数3】

【0065】
<貯蔵前後の臭いの評価法>
液体漂白洗浄剤組成物を100mLガラス製サンプルビンに80g入れ、30℃で1週間貯蔵した。貯蔵前後の液体漂白洗浄剤組成物の臭いを7段階(0:無臭、1:ごくわずかに臭う、2:弱く臭う、3:はっきり臭う、4:強く臭う、5:かなり強く臭う、6:非常に強く臭う)にレベル分けし、官能評価を行った。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(f)成分を含有し、組成物中の(d)成分の含有量が0.1〜10質量%であり、(f)成分/(e)成分のモル比が1.5〜2.7であり、20℃におけるpHが4.0〜7.0である液体漂白洗浄剤組成物。
(a)非イオン性界面活性剤
(b)漂白活性化剤
(c)過酸化水素又は水中で過酸化水素を生成する化合物
(d)一般式(1)で表される4級アンモニウム塩
【化1】

[式中、R11、R12、R13、R14のうち1つ又は2つがフェニル基を1個有する炭化水素基又は炭素数8〜36の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、残りが炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。但し、R11、R12、R13及びR14の総炭素数は19以上である。X-は、ハロゲンイオン若しくは炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンである。]
(e)ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物
(f)隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物
【請求項2】
更に、(g)成分としてホスホン酸基又はその塩基を有する金属イオン封鎖剤を含有する請求項1記載の液体漂白洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に、(h)成分として陰イオン性界面活性剤を含有する請求項1又は2記載の液体漂白洗浄剤組成物。
【請求項4】
(a)成分がオキシエチレン基及びオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤である請求項1〜3何れか記載の液体漂白洗浄剤組成物。
【請求項5】
(b)成分が、アルカノイルオキシ基のエステル結合を形成する炭素原子のα位又はβ位に側鎖を有する炭素数6〜14のアルカノイル基を有する化合物である請求項1〜4何れか記載の液体漂白洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−106903(P2007−106903A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299642(P2005−299642)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】