説明

液体状態検知センサ

【課題】発熱抵抗体への通電時の温度変化に基づき得られる濃度対応値に対し補正を行い、濃度対応値の示す濃度分布傾向を平滑化して、液体に含まれる特定成分の濃度をより正確に検出することができる液体状態検知センサを提供する。
【解決手段】発熱抵抗体への通電開始後に取得した発熱抵抗体の抵抗値に対応する電圧値に基づき尿素水溶液の温度を求める(S1〜S5)。その700msec後に再度、発熱抵抗体の抵抗値に対応した電圧値を取得し(S8)、先に取得した電圧値との差分値ΔVを求め、さらに尿素水溶液の温度に基づくキャリブレーションを行って尿素濃度を求める(S11,S19)。得られた尿素濃度に対し、さらに、尿素水溶液の温度に基づく二次的な補正を行って濃度分布傾向を平滑化することで、より正確な尿素濃度を求める(S20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器内に収容される液体の温度および当該液体に含まれる特定成分の濃度を検知する液体状態検知センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばディーゼル自動車から排出される窒素酸化物(NOx)を無害なガスに還元する排ガス浄化装置にNOx選択還元触媒(SCR)を用いる場合があるが、その還元剤として尿素水溶液が用いられる。この還元反応を効率よく行うには、尿素濃度が32.5wt%の尿素水溶液を用いるとよいことが知られている。しかし、自動車に搭載される尿素水タンクに収容される尿素水溶液は過酷な環境条件下で保管され、また経時変化などにより、その尿素濃度に変化を生ずる場合がある。また、尿素水タンクに誤って異種水溶液(例えば軽油)あるいは水が混入される可能性もある。こうしたことから、尿素水溶液の尿素濃度を管理できるように、尿素濃度を検出するための濃度センサが尿素水タンクに取り付けられ、濃度検知が行われている。
【0003】
従来、こうした尿素濃度の検知は、尿素水溶液中の尿素濃度に応じて熱伝導率に差異が生ずることを利用して、尿素水溶液中に発熱抵抗体と温度検出素子とを浸漬し、発熱抵抗体に通電してその周囲の尿素水溶液を加熱したときの温度上昇傾向を温度検出素子で測定することにより行われる。
【0004】
ところで発熱抵抗体に通電したとき、発熱抵抗体は、自身の温度によってその抵抗値が変化する。通電前の発熱抵抗体は周囲の尿素水溶液の温度と略同一となっているので、通電開始直後の抵抗値を測定すれば、尿素水溶液の初期の温度を測定することが可能である。また、尿素水溶液中に浸漬される発熱抵抗体を加熱した際の昇温の度合い(つまり抵抗値変化)は、尿素水溶液の熱伝導率に影響を受けることとなる。そこで、発熱抵抗体に所定時間の通電を行い、通電直後と通電後にそれぞれ発熱抵抗体の抵抗値を測定し、測定した抵抗値に基づいて発熱抵抗体の温度変化を求め、予め求めておいた尿素濃度と発熱抵抗体の温度変化との相関関係に照らし合わせれば、温度検出素子を用いずに、尿素水溶液に含まれる尿素の濃度を検出することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−114181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが濃度センサの性能向上のため、さらなる検討を行ったところ、特許文献1のように尿素濃度と発熱抵抗体の温度変化との相関関係から求めた尿素濃度は、実際の尿素濃度に対して僅かながらズレを生ずることがわかった。検討結果によれば、尿素濃度を求める演算式において基準とした尿素水溶液の基準温度と、濃度検知対象の尿素水溶液の温度とのズレが大きくなるほど、求めた尿素濃度と実際の尿素濃度とのズレが大きくなる傾向(以下、「濃度分布傾向」という。)が見られた。例えば図5に示すように、尿素濃度を求める演算式の基準温度を常温(例えば25℃付近)とした場合、常温付近では上記相関関係から求まる尿素濃度と実際の尿素濃度との間において、ほぼズレが生ずることはないが、尿素水溶液の温度が低温側あるいは高温側に移行するほど、実際の尿素濃度よりも高い尿素濃度が算出されてしまう。このような濃度分布傾向は尿素水溶液の性質や熱伝導率により左右されるものと予想されるが、物性値を基礎にした上記の尿素濃度と発熱抵抗体の温度変化との相関関係からは、見出すことが難しい傾向である。尿素濃度の検出精度の向上を図るには、算出される尿素濃度に対し、さらなる補正を行う必要があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、発熱抵抗体への通電時の温度変化に基づき得られる濃度対応値に対し補正を行い、濃度対応値の示す濃度分布傾向を平滑化して、液体に含まれる特定成分の濃度をより正確に検出することができる液体状態検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の液体状態検知センサは、通電によって発熱する発熱抵抗体を有し、液体が収容された液体収容容器内に配置される液体性状検出素子と、前記発熱抵抗体に所定の検出時間、通電を行う通電手段と、前記検出時間内に前記発熱抵抗体の第1抵抗値に対応した第1対応値を取得する第1対応値取得手段と、前記第1対応値に基づいて前記液体の温度情報を求める温度情報取得手段と、前記検出時間内のうち前記第1対応値を取得した後、または、前記検出時間の経過後に、前記発熱抵抗体の第2抵抗値に対応した第2対応値を取得する第2対応値取得手段と、前記第2対応値と前記第1対応値との差分値を求める差分値算出手段と、前記差分値と前記温度情報とに基づいて前記液体に含まれる特定成分の濃度に対応した濃度対応値を求める濃度対応値取得手段とを備えた液体状態検知センサにおいて、前記濃度対応値に対し前記温度情報に基づく補正を行って、前記液体の温度に応じた前記濃度対応値の濃度分布傾向を平滑化した補正濃度対応値を求める補正濃度対応値取得手段を備えている。
【0008】
また、請求項2に係る発明の液体状態検知センサは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記液体性状検出素子は、絶縁性セラミック基体内に前記発熱抵抗体を埋設した構成をなし、且つ、前記絶縁セラミック基体の外表面が前記液体に接するように前記液体収容容器内に配置されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明の液体状態検知センサは、請求項1または2に記載の発明の構成に加え、前記液体は尿素水溶液であって、前記特定成分が尿素であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の液体状態検知センサでは、液体性状検出素子が発熱抵抗体を有するが、発熱抵抗体は、自身の温度上昇に伴って抵抗値が変化する性質を有する。ここで、発熱抵抗体への通電前において、発熱抵抗体自身の温度は周囲の液体の温度とほぼ同一である。すなわち、発熱抵抗体への通電開始後間もない発熱抵抗体の抵抗値は、自身の発熱による影響がまだ少なく、周囲の液体の温度と相関関係にある。そこで、本発明では、発熱抵抗体への通電開始後の第1抵抗値に対応した第1対応値に基づいて、周囲の液体の温度を検知している。
【0011】
また、液体に含まれる特定成分の濃度によって、液体の熱伝導率が異なることから、発熱抵抗体を所定の検出時間通電(加熱)した場合、特定成分の濃度の異なる液体毎に発熱抵抗体の温度上昇率が異なることになる。そこで、本発明では、発熱抵抗体に所定の検出時間通電を行い、発熱抵抗体の第1抵抗値に対応した第1対応値と、第2抵抗値に対応した第2対応値とを順に取得した上で両対応値の差分値を求め、この差分値に基づき発熱抵抗体の温度上昇の度合いを捉え、液体に含まれる特定成分の濃度に対応した濃度対応値を求めるようにしている。
【0012】
ところで、液体に含まれる特定成分の濃度が同一であっても、液体の温度が異なると、発熱抵抗体の温度上昇率(すなわち、上述した第2対応値と第1対応値との差分値の変化の度合い)が異なることになる。つまり、発熱抵抗体の温度上昇率は、液体の温度に対する依存性がある。そこで、本発明では、上記のように液体に含まれる特定成分の濃度を検知するにあたり、発熱抵抗体の第1抵抗値に対応した第1対応値をもとに求めた液体の温度情報と、第2対応値と第1対応値との差分値とを用いて、上記の濃度対応値を求めるようにしている。
【0013】
なお、液体の温度情報を用いて差分値を補正するにあたっては、例えば、所定の濃度の参照液体に関する温度に対する差分値の相関関係を予め確認しておき、この相関関係をもとに作成したテーブル(マップ)や演算式を濃度対応値取得手段に記憶させておくことで実行させることができる。
【0014】
さらに本発明者らの検討によると、上記テーブルや演算式を作成する際に基準とした尿素水溶液の基準温度と、濃度検知対象の尿素水溶液の温度とのズレが大きくなるほど、濃度対応値と、実際の尿素濃度とのズレが大きくなる濃度分布傾向があることがわかった。こうした濃度分布傾向は、上記のように物性値を基礎にした、所定の濃度の参照液体に関する温度に対する差分値の相関関係からは見出すことが難しい傾向である。そこで請求項1に係る発明では、温度情報に基づいて、濃度対応値に対してさらに補正を行って濃度分布傾向を平滑化することで、液体の温度に依存することなく、液体に含まれる特定成分の濃度をより正確に検出することができる。
【0015】
なお、濃度対応値に対する補正を行うにあたっては、上記同様、予め、所定温度の参照液体の濃度に応じた本来取得されるべき濃度対応値と、その参照液体から検出によって得られる濃度対応値とのズレを確認することによって得られる濃度分布傾向をもとにテーブル(マップ)の作成や演算式の導出を行っておき、補正濃度対応値取得手段に記憶させておくことで実行させることができる。
【0016】
さらに、本発明では、液体を発熱させる発熱体と感温体との機能を兼ねた発熱抵抗体を有する液体性状検出素子(所謂、直熱形の液体性状検出素子)を用いて、液体の温度検知と濃度検知とを行うようにしている。これにより、液体状態検知センサの小型化を図ることができ、また傍熱形の液体性状検出素子を有するセンサに比して構造や検知回路が複雑化するのを抑制することができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、発熱抵抗体を埋設してなる絶縁セラミック基体の外表面が液体に接するようにして、液体性状検出素子を液体収容容器内に配置しているため、液体の温度、液体に含まれる特定成分の濃度を検知する感度を高めることができる。さらに、発熱抵抗体を絶縁セラミック基体に埋設した構成を有することから、液体性状検出素子を導電性の液体に直接浸漬させることも可能である。
【0018】
また、請求項3に係る発明によれば、液体状態検知センサにより状態の検知を行う液体を尿素水溶液とし、特定成分を尿素とすることができるので、尿素水溶液の温度と、尿素水溶液に含まれる尿素の濃度を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した液体状態検知センサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、一例としての液体状態検知センサ100の構造について説明する。図1は、液体状態検知センサ100の一部切欠縦断面図である。なお、液体状態検知センサ100においてレベル検知部70(外筒電極10および内部電極20から構成されるコンデンサ)の長手方向を軸線O方向とし、液体性状検知部30が設けられる側を先端側、取付部40が設けられる側を後端側とする。
【0020】
本実施の形態の液体状態検知センサ100は、ディーゼル自動車の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の還元に使用される尿素水溶液の状態、つまりは尿素水溶液のレベル(液位)、温度、およびその溶液に含まれる特定成分としての尿素の濃度を検知するためのセンサである。図1に示すように、液体状態検知センサ100は、円筒形状を有する外筒電極10、およびその外筒電極10の内部にて外筒電極10の軸線O方向に沿って設けられた円筒状の内部電極20から構成されるレベル検知部70と、内部電極20の先端側に設けられた液体性状検知部30と、液体状態検知センサ100を尿素水タンク98(図2参照)に取り付けるための取付部40とを備えて構成される。
【0021】
外筒電極10は金属材料からなり、軸線O方向に延びる長細い円筒形状を有する。外筒電極10の外周上にて周方向に等間隔となる3本の母線上には、各母線に沿ってそれぞれ複数の細幅のスリット15が断続的に開口されている。また、外筒電極10の先端部11において、上記スリット15が形成された各母線上には、後述する内部電極20との間に介在されるゴムブッシュ80の抜け防止のための開口部16がそれぞれ設けられている。さらに、外筒電極10の後端側の基端部12に近い位置で、スリット15が形成された各母線とは異なる母線上には、1つの空気抜孔19が形成されている。また、外筒電極10の先端部11は、開口部16の位置よりさらに軸線O方向先端側に延長されており、後述する液体性状検知部30のセラミックヒータ110と、そのセラミックヒータ110の径方向周囲を覆いセラミックヒータ110を保護するプロテクタ130とを包囲している。そして、外筒電極10の最先端部(図中最下部)は開口されており、液体性状検知部30を構成するプロテクタ130が開口側から視認可能な状態となっている。なお、外筒電極10の最先端部は必ずしも開口している必要はなく、プロテクタ130が視認できないように、液体導入口を有する整流板を、外筒電極10の先端部11に設けるようにしてもよい。
【0022】
次に、外筒電極10は、基端部12が金属製の取付部40の電極支持部41の外周に係合した状態で、電極支持部41に溶接されている。取付部40は尿素水タンク98(図2参照)に液体状態検知センサ100を固定するための台座として機能し、取り付けボルトを挿通するための取り付け孔(図示外)が鍔部42に形成されている。また、取付部40の鍔部42を挟んで電極支持部41の反対側には、後述する尿素水溶液99(図2参照)のレベル、温度、尿素濃度などを検知するための回路や、図示外の外部回路(例えば自動車のエンジン制御装置(ECU))との電気的な接続を行うための入出力回路等が搭載された回路基板60などを収容する収容部43が形成されている。なお、この取付部40は、回路基板60に対し、そのグランド電位をなす配線部(図示しない)と同電位となるように接続されているため、外筒電極10は取付部40を介して接地されている。
【0023】
回路基板60は、収容部43の内壁面の四隅より突出する基板載置部(図示外)上に載置されている。収容部43はカバー45に覆われ保護されており、そのカバー45は、鍔部42に固定されている。また、カバー45の側面にはコネクタ62が固定されており、コネクタ62の接続端子(図示外)と回路基板60上のパターン(後述する入出力回路部290)とが配線ケーブル61によって接続されている。このコネクタ62を介し、回路基板60とECUとの接続が行われる。
【0024】
取付部40の電極支持部41には収容部43内に貫通する孔46が開口されており、この孔46内に、内部電極20の基端部22が挿通されている。本実施の形態の内部電極20は軸線O方向に延びる長細い円筒形状をした金属材料からなる。この内部電極20の外周面上には、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などからなる絶縁性被膜23が形成されている。絶縁性被膜23は、このような樹脂をディッピングもしくは静電粉体塗装により内部電極20の外表面上に塗布し、熱処理することにより、樹脂コーティング層の形態で形成される。この内部電極20と外筒電極10との間で、尿素水溶液99(図2参照)のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部70が構成されている。
【0025】
内部電極20の軸線O方向後端側の基端部22には、内部電極20を取付部40に固定するためのパイプガイド55とインナーケース50が係合されている。パイプガイド55は、内部電極20の基端部22の端縁寄りに接合された環状のガイド部材である。インナーケース50は内部電極20と外筒電極10とが確実に絶縁されるように内部電極20を位置決め支持する樹脂製部材であり、筒状をなし、後端側に、径方向外側へ向かって突出する鍔部51が形成され、先端側が取付部40の電極支持部41の孔46に係合する。インナーケース50が電極支持部41に係合される際には、電極支持部41の孔46に収容部43側から挿通され、鍔部51が収容部43内の底面に当接することで、インナーケース50が孔46内を通り抜けることが防止される。また、内部電極20は、収容部43側からインナーケース50の内側に挿通されるが、パイプガイド55が鍔部51に当接することで、インナーケース50からの脱落が防止される。
【0026】
さらに、インナーケース50の外周と内周とには、それぞれ、Oリング53とOリング54とが設けられている。Oリング53は、インナーケース50の外周と取付部40の孔46との間の隙間を密閉し、Oリング54は、インナーケース50の内周と内部電極20の基端部22の外周との間の隙間を密閉している。これにより、液体状態検知センサ100が尿素水タンク98(図2参照)に取り付けられた際に、尿素水タンク98の内部と外部とが収容部43を介して連通しないように、その水密性および気密性が保たれる。また、取付部40の鍔部42の先端側の面には図示外の板状のシール部材が装着され、液体状態検知センサ100を尿素水タンク98に取り付けた際に、鍔部42と尿素水タンクとの間においても水密性および気密性が保たれるようになっている。
【0027】
そして、内部電極20の取付部40への組み付けの際には、2枚の押さえ板56,57によって、パイプガイド55がインナーケース50の鍔部51に対して押圧される。絶縁性の押さえ板56は、パイプガイド55との間に押さえ板57を挟み、パイプガイド55を押圧した状態で、ネジ58によって収容部43内に固定される。これにより、パイプガイド55に接合された内部電極20が電極支持部41に固定されることとなる。押さえ板56,57には中央に孔59が開口されており、内部電極20の電極引出線52と、後述するセラミックヒータ110との電気的な接続を行う2本のリード線90(図1では一方のリード線90のみを表示している。)を内包する2芯のケーブル91とが挿通され、それぞれ回路基板60上のパターンと電気的に接続されている。回路基板60のグランド側の電極(図示外)は取付部40に接続されており、これにより、取付部40に溶接された外筒電極10がグランド側に電気的に接続される。
【0028】
次に、内部電極20の先端部21に設けられた液体性状検知部30は、本実施の形態では尿素水溶液99(図2参照)の温度および含有される尿素の濃度の検出を行う液体性状検出素子としてのセラミックヒータ110を有する。セラミックヒータ110は、2枚の板状の絶縁性セラミック層間にPtを主体に形成したヒータパターンを挟んで焼成したものである。ヒータパターンのうち発熱抵抗体114(図2参照)を構成するパターンの断面積を、リード線90に接続される出力取り出し用の一対のリード部のパターンの断面積よりも小さくするようにして、通電時、主に発熱抵抗体114において発熱が行われるようにしている。なお、セラミックヒータ110が、本発明における「液体性状検出素子」に相当し、2枚の絶縁性セラミック層を積層したものが、本発明における「絶縁性セラミック基体」に相当する。
【0029】
このセラミックヒータ110は、内部電極20の先端部21に装着される絶縁性樹脂製のホルダ120に支持されている。ホルダ120は、外径が段違い状2段に構成された円筒形状をなし、自身の内周側にセラミックヒータ110を挿通させ、小径となる先端側より、セラミックヒータ110の発熱抵抗体114(図2参照)が埋設された側を露出させている。その状態でセラミックヒータ110は、接着剤からなる固定部材125,126によってホルダ120の内周に固定されている。そしてホルダ120の大径側となる後端側は、内部電極20の先端部21に外嵌めで装着されており、さらに内部電極20の外周面とホルダ120の内周面との間にシールリング121が介在され、円筒状の内部電極20内部の水密性および気密性が確保されている。
【0030】
ところで、ホルダ120の装着前に、セラミックヒータ110の外表面に形成される各リード部と電気的に接続された出力取り出し部(出力取り出し部は、1枚の絶縁性セラミック層を貫通してなるビア導体を介してリード部と接続される。)に2つの中継端子119(図1では一方の中継端子119のみを表示している。)が接続され、その中継端子119に、ケーブル91の2本のリード線90の芯線が、それぞれ加締めまたは半田付けにより接合される。さらに、絶縁性の保護部材95により、中継端子119とリード線90とが接合部位ごと覆われ保護される。そして、2つのリード線90は内部電極20内を挿通され、上記回路基板60に接続されている。
【0031】
また、セラミックヒータ110のホルダ120から露出した部分は、有底円筒形状に形成された金属製のプロテクタ130によって覆われて保護されている。プロテクタ130は、開口側がホルダ120の小径部分の外周に嵌合されている。プロテクタ130の外周上には液体流通孔(図示外)が開口されており、液体流通孔を介し、プロテクタ130の内外での尿素水溶液99(図2参照)の交換が行われる。
【0032】
そして、このような構成の液体性状検知部30は、内部電極20の先端部21にホルダ120を介し装着され、さらにゴムブッシュ80によって、外筒電極10内で弾性的に支持される。ゴムブッシュ80は円筒形状をなし、その外周面上に形成された突起部87が、外筒電極10の開口部16に内周側から係合し、固定される。また、ゴムブッシュ80の外周面と内周面とのそれぞれには、軸線O方向に沿った複数の溝(図示外)が溝設されている。液体状態検知センサ100が尿素水タンク98(図2参照)に取り付けられた際に、この溝を介し、ゴムブッシュ80の先端側に流入する尿素水溶液99と、後端側に流入する尿素水溶液99との液交換や気泡抜きが行われる。
【0033】
次に、図2,図3を参照して、液体状態検知センサ100の電気的な構成について説明する。図2は、液体状態検知センサ100の電気的な構成を示すブロック図である。図3は、ROM230の記憶エリアの構成を示す図である。
【0034】
図2に示すように、液体状態検知センサ100は液体収容容器としての尿素水タンク98に取り付けられ、一対の電極(外筒電極10および内部電極20)を備えたレベル検知部70と、発熱抵抗体114が埋設されたセラミックヒータ110を備えた液体性状検知部30とが、尿素水タンク98に収容された状態検知対象の液体としての尿素水溶液99に浸漬される。液体状態検知センサ100は、回路基板60上にマイクロコンピュータ210を搭載し、マイクロコンピュータ210には、レベル検知部70の制御を行うレベル検知回路部280と、液体性状検知部30の制御を行う液体性状検知回路部250と、ECUとの通信を行う入出力回路部290とが接続されている。
【0035】
マイクロコンピュータ210は公知の構成からなるCPU220,ROM230およびRAM240を備える。CPU220は、液体状態検知センサ100の制御を司り、ROM230には、図3に示す、プログラム記憶エリア231、テーブル記憶エリア232、設定値等記憶エリア233などが設けられている。プログラム記憶エリア231には、後述する性状検知プログラム(図4参照)が記憶されており、液体状態検知センサ100の駆動時に読み出されて実行される。テーブル記憶エリア232には、性状検知プログラムの実行に伴い参照される濃度補正テーブルが記憶されている。このテーブルは、後述する(1)式により得られた尿素濃度Cに対し、尿素水溶液99の温度Tに応じた二次的な補正を行う際に参照されるテーブルであり、予め実験等により作成されるものである。より具体的には、特定の尿素水溶液99の温度T(あるいは温度範囲)ごとに尿素濃度の検知を行い、(1)式により得られた尿素濃度Cと実際の尿素濃度とのズレを求める。そして、尿素濃度Cを実際の尿素濃度に近づけるため、尿素濃度Cに掛け合わせる補正値Z(補正倍率)を求めたズレから算出し、尿素水溶液99の温度T(あるいは温度範囲)と対応付け、これを濃度補正テーブルとしてテーブル記憶エリア232に記憶させればよい。
【0036】
設定値等記憶エリア233には、性状検知プログラムに用いられる(1)〜(3)式(後述)、各種変数の初期値、閾値等が記憶されている。また、ROM230には図示しないその他の記憶エリアも設けられ、液体状態検知センサ100の駆動に伴い実行されるその他のプログラム(例えばレベル検知のためのプログラム)や設定値等も記憶されている。同様に、図2に示す、RAM240にも各種記憶エリアが設けられており、性状検知プログラム等の実行時には、プログラムの一部や、各種変数、タイマーカウント値などが一時的に、所定の記憶エリアに記憶される。
【0037】
入出力回路部290は、液体状態検知センサ100とECUとの間での信号の入出力を行うため、通信プロトコルの制御を行う。また、レベル検知回路部280は、マイクロコンピュータ210の指示に基づき、レベル検知部70の外筒電極10と内部電極20との間に交流電圧を印加し、レベル検知部70をなすコンデンサを流れた電流を電圧変換して、その電圧信号をマイクロコンピュータ210に出力する。なお、本実施の形態では、外筒電極10と内部電極20との間に尿素水溶液99を導入した際に、内部電極20の外周面上に形成された絶縁性被膜23を主な誘電体(不導体)とするコンデンサの静電容量が、導電性を有する尿素水溶液99の介在する部分と介在しない部分とにおいて大きく異なることを利用して、レベル検知が行われる。
【0038】
次に、液体性状検知回路部250は、マイクロコンピュータ210の指示に基づき、液体性状検知部30のセラミックヒータ110に定電流を流し、発熱抵抗体114の両端に発生する検出電圧をマイクロコンピュータ210に出力する回路部である。液体性状検知回路部250は、差動増幅回路部260、定電流出力部270およびスイッチ255により構成される。
【0039】
定電流出力部270は、発熱抵抗体114に流す定電流を出力する。スイッチ255は、発熱抵抗体114への通電経路上に設けられ、マイクロコンピュータ210の制御に従って発熱抵抗体114への通電のオン・オフを行う。差動増幅回路部260は、発熱抵抗体114の一端に現れる電位Pinと他端に現れる電位Poutとの差分を検出電圧としてマイクロコンピュータ210に出力する。
【0040】
次に、本実施の形態の液体状態検知センサ100のセラミックヒータ110を用い、尿素水溶液99の温度および尿素濃度を検知する原理について簡単に説明する。
【0041】
Ptを主体に形成された発熱抵抗体114は、自身の温度と自身の抵抗値との間に相関関係があることが知られている。また、発熱抵抗体114への通電開始後間もない時間内では、発熱抵抗体114の発熱がまだ大きくなされていないため、発熱抵抗体114自身の温度は、自身の周囲に存在する尿素水溶液99の温度とほぼ同一である。このことから、発熱抵抗体114への通電開始後(ただし、通電開始後に電流値が安定するまで約10msecを要する。)の抵抗値に対応した電圧値と、周囲に存在する尿素水溶液99の温度との相関関係を予め確認しておけば、尿素水溶液99の温度を測定することが可能である。
【0042】
次に、発熱抵抗体114への通電が継続された場合、発熱抵抗体114自身の温度は周囲に存在する尿素水溶液99に奪われるが、尿素水溶液99の熱伝導率によって発熱抵抗体114の奪われる熱量は異なる。つまり、周囲に存在する尿素水溶液99の熱伝導率に応じ、発熱抵抗体114の温度上昇率は異なってくる。また、尿素水溶液99の熱伝導率は、尿素水溶液99に含まれる尿素の濃度によって異なることが知られている。このことから、発熱抵抗体114を尿素水溶液99に浸漬させ、その発熱抵抗体114を一定時間加熱して当該発熱抵抗体114の抵抗値変化の度合いを求めれば周囲の尿素水溶液99の熱伝導率の違いを見出すことができ、尿素水溶液99に含まれる尿素の濃度を得ることができる。
【0043】
具体的に、基準温度(例えば常温(25℃)など)の尿素水溶液99に発熱抵抗体114を浸漬し700msec通電した場合、尿素水溶液99の尿素濃度が0wt%のときには発熱抵抗体114の抵抗値変化に対応した電圧値変化は1220mVとなり、16.25wt%,32.5wt%のときにはそれぞれ1262mV,1298mVとなる。すなわち、尿素水溶液99中の尿素濃度が高くなるに従って熱伝導率が低くなり、発熱抵抗体114は熱を奪われにくくなるので温度上昇率が大きくなる。その結果、発熱抵抗体114の抵抗値変化が大きくなって、その抵抗値変化に対応した電圧値変化が大きくなる。
【0044】
この尿素水溶液99の尿素濃度と発熱抵抗体114の抵抗値変化(電圧値変化)との間には、比例関係がある。具体的に、発熱抵抗体114の周囲の尿素水溶液99の尿素濃度と、発熱抵抗体114の抵抗値変化に対応した電圧値変化(差分値ΔV)との関係を、以下の式に示す。
ΔV=a・C+b・・・(1)
なお、ΔVは発熱抵抗体114の通電開始後の抵抗値に対応した電圧値と、通電後一定の検出時間(例えば700msec)経過した後の抵抗値に対応した電圧値との差分値[mV]を示す。また、Cは尿素水溶液99中の尿素濃度[wt%]を示す。aは、尿素水溶液99の温度T℃におけるΔV−C直線の傾きを示し、bは、尿素水溶液99の温度T℃におけるΔV−C直線の切片を示す。
【0045】
一方、尿素水溶液99に含まれる尿素の濃度が同一であっても、尿素水溶液99の温度が異なると、発熱抵抗体114の温度上昇率(すなわち、電圧値変化)が異なる。つまり、発熱抵抗体114の温度上昇率は、尿素水溶液99の温度に対する依存性がある。
【0046】
例えば、発熱抵抗体114に700msec通電し、尿素濃度が32.5wt%、温度が25℃の尿素水溶液99を加熱した場合、発熱抵抗体114の抵抗値変化に対応した電圧値変化(差分値ΔV)は1298mVとなる。これに対し、同濃度で温度が80℃の尿素水溶液99に浸漬した発熱抵抗体114に700msec通電した場合、電圧値変化は1440mVとなる。すなわち、尿素水溶液99の尿素濃度が一定である場合、尿素水溶液99の温度が低いほど発熱抵抗体114の抵抗値変化が小さくなって、抵抗値変化に対応した電圧値変化が小さくなる。
【0047】
このように、尿素水溶液99の尿素濃度と発熱抵抗体114の抵抗値変化(電圧値変化)との関係には、尿素水溶液99の温度に対する依存性がある。従って、(1)式に対し、尿素水溶液99の温度に応じた補正(キャリブレーション)を行うことで、正確な尿素濃度の算出を行うことができる。具体的に、尿素水溶液99の温度により補正を行うための式を以下に示す。
=a25+x(T−25)・・・(2)
=b25+y(T−25)・・・(3)
なお、a25は、尿素水溶液99の温度が25℃の場合におけるΔV−C直線の傾きを示し、xはその直線の傾きの温度補正係数である。同様に、b25は、尿素水溶液99の温度が25℃の場合におけるΔV−C直線の切片を示し、yはその直線の切片の温度補正係数である。上記(1)〜(3)式を用い、尿素水溶液99中の尿素濃度を求める上で、尿素水溶液99の温度に応じたキャリブレーションを行えば、正確な尿素濃度を求めることができる。
【0048】
ところで、尿素水溶液99の温度がキャリブレーションの基準温度(上記(2)、(3)式では25℃)から離れるほど、求めた尿素濃度と実際の尿素濃度との間のズレが大きくなる傾向(濃度分布傾向)が見られる。本実施の形態の液体状態検知センサ100ではこの濃度分布傾向を平滑化するため、(1)式により得られた尿素濃度Cに対し、さらに、尿素水溶液99の温度に応じた二次的な補正を行っている。具体的には、マイクロコンピュータ210のROM230に記憶された性状検知プログラムをCPU220が実行することにより、尿素水溶液99の温度や尿素濃度Cを検知すると共に、得られた尿素濃度Cに対し、上記の二次的な補正を適用する。以下、図2〜図4を参照し、性状検知プログラムについて説明する。図4は、性状検知プログラムのフローチャートである。なお、図4におけるフローチャートの各ステップを「S」と略記する。また、液体状態検知センサ100では他のプログラムの実行に従って尿素水溶液99のレベル検知も行われるが、ここでは、レベル検知についての説明は省略する。
【0049】
ECUからの指示に基づき尿素水溶液99の状態検知が行われる際には、図3に示す、ROM230のプログラム記憶エリア231に記憶された性状検知プログラムがRAM240の所定の記憶エリアに読みこまれ、実行される。
【0050】
図4に示すように、マイクロコンピュータ210(図2参照)からの制御信号に基づきスイッチ155が閉じられると、定電流出力部270から発熱抵抗体114への通電が開始される(S1)。そして、別途実行されているタイマープログラム(図示外)のカウント値が参照され、通電開始から10msecが経過するまで待機が行われる(S2:NO)。前述したように、本実施の形態では、発熱抵抗体114への通電開始後、電流値が安定するまでの時間として10msecが設定されており、この処理により、その10msec間にS4における電圧値の測定が行われることはない。
【0051】
そして10msecが経過すれば(S2:YES)、S4に進み、差動増幅回路部260により発熱抵抗体114の検出電圧が測定され、その検出電圧がマイクロコンピュータ210に入力される(S4)。なお、S4で差動増幅回路部260により測定された通電開始後の発熱抵抗体114の検出電圧値が、本発明における「第1対応値」に相当し、その電圧値を取得するCPU220が、本発明における「第1対応値取得手段」に相当する。
【0052】
続いて、マイクロコンピュータ210では、入力された発熱抵抗体114の電圧値に基づき予め設定された演算式を用いて、発熱抵抗体114の周囲の尿素水溶液99の温度Tが求められる。算出された温度Tは温度情報信号として、入出力回路部290からECUに対して送信される(S5)。なお、S5で尿素水溶液99の温度Tの算出を行うCPU220が、本発明における「温度情報取得手段」に相当する。
【0053】
次に、タイマープログラムのカウント値の参照により、発熱抵抗体114への通電が継続されたまま、700msecが経過するまで待機が行われる(S7:NO)。発熱抵抗体114への通電開始後700msecが経過すると(S7:YES)、S4と同様に、差動増幅回路部260により測定された発熱抵抗体114の検出電圧がマイクロコンピュータ210に入力される(S8)。この電圧測定が終了すれば、マイクロコンピュータ210からスイッチ255の制御信号が出力され、発熱抵抗体114への通電が停止される(S10)。なお、S8で、差動増幅回路部260により測定された、発熱抵抗体114への通電後700msecが経過した時点での発熱抵抗体114の検出電圧値が、本発明における「第2対応値」に相当し、その電圧値を取得するCPU220が、本発明における「第2対応値取得手段」に相当する。また、S1で定電流出力部270から発熱抵抗体114への通電を開始し、S7で本発明における「検出時間」に相当する700msec経過まで待機した後、S10で通電を停止するように、スイッチ255の制御信号を出力するCPU220が、本発明における「通電手段」に相当する。
【0054】
そして、S4で得られた発熱抵抗体114の電圧値を、S8で得られた700msecが経過した時点での発熱抵抗体114の電圧値から減算した差分値ΔVの計算が行われる(S11)。算出された差分値ΔVが、予め実験等により決定されROM230の設定値等記憶エリア233に記憶された、尿素水溶液99の尿素濃度の取りうる値に基づく電圧値変化の最大値(閾値Q)よりも小さければ(S13:YES)、差分値ΔVの値が正常な値の範囲内にあると判断してS19に進む。そして(1)〜(3)の式に基づく演算が行われ、尿素水溶液99に含まれる尿素濃度Cが求められる(S19)。なお、S11で差分値ΔVの算出を行うCPU220が、本発明における「差分値算出手段」に相当し、S19で、本発明における「濃度対応値」に相当する尿素水溶液99の尿素濃度Cの算出を行うCPU220が、本発明における「濃度対応値取得手段」に相当する。
【0055】
次に、テーブル記憶エリア232に記憶された濃度補正テーブルが参照され、S5で算出された温度T(RAM240に変数として一時記憶されている。)に対応した補正値Z(補正倍率)が決定される。そして、S19で得られた尿素濃度Cにこの補正値Zが掛け合わされて、補正尿素濃度Czが算出される(S20)。算出された補正尿素濃度Czは濃度情報信号として、入出力回路部290からECUに対して送信される(S22)。なお、S20で、濃度補正テーブルの参照によって温度Tに対応した補正値Zを決定し、尿素濃度Cと掛け合わせることで、本発明における「補正濃度対応値」に相当する補正尿素濃度Czの算出を行うCPU220が、本発明における「補正濃度対応値取得手段」に相当する。
【0056】
その後、タイマープログラムのカウント値の参照により、60secが経過するまで待機が行われる(S23:NO)。この待機時間は、700msec通電された発熱抵抗体114自身の温度が周囲の尿素水溶液99の温度と同一となるのに十分な時間として設定されている。60secの経過後にはS1に戻り(S23:YES)、あらためて、尿素水溶液99の温度および尿素濃度の検知が行われることとなる。
【0057】
一方、S13において、算出された差分値ΔVが上記閾値Q以上であった場合(S13:NO)、予め実験等により決定され設定値等記憶エリア233に記憶された、発熱抵抗体114の周囲が空気である場合に取りうる電圧値変化の最小値(閾値R)よりも大きければ(S14:YES)、空焚き状態であると判断される。この場合には、空焚きを報知する報知信号が入出力回路部290を介してECUに送信される(S17)。
【0058】
また、差分値ΔVが閾値R以下であっても(S14:NO)、閾値Q以上であることから発熱抵抗体114の周囲の液体が尿素水溶液ではない(例えば、軽油である。)と判断され、異種液体を報知する報知信号が入出力回路部290を介してECUに送信される(S16)。そしていずれの報知が行われた場合でもS23に進み、60secの待機後にS1に戻り(S23:YES)、あらためて、尿素水溶液99の温度および尿素濃度の検知が行われる。
【0059】
なお、本発明は各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、上記実施の形態の性状検知プログラムでは、S5において尿素水溶液99の温度Tを所定の演算式に基づいて算出したが、これに限定するものではなく、予め実験等によりテーブルを作成し、ROM230に記憶させ、S5の処理で参照することによって求めてもよい。また、S19における尿素水溶液99中の尿素濃度Cについても(1)〜(3)の演算式に基づいて算出したが、上記同様これに限らず、予め実験等により作成したテーブルを参照することによって求めてもよい。一方、S22において求めた尿素水溶液99の補正尿素濃度Czは、濃度補正テーブルの参照によって決定した補正値Zを尿素濃度Cに掛け合わせて求めたが、これに限らず、所定の演算式に尿素濃度Cを代入して算出してもよいし、温度毎に予め設定した複数の補正値を加減して算出してもよい。
【0060】
また、S2,S7,S23におけるそれぞれの待機時間は一例に過ぎず、実験等により最適な待機時間を求め設定してもよい。さらには、S5において検出された尿素水溶液99の温度Tにあわせ、S23の待機時間が設定されるようにしてもよい。
【0061】
また、回路基板60を、レベル検知部70および液体性状検知部30からの出力を中継する中継基板として設け、マイクロコンピュータ210等を搭載した外部回路と接続し、その外部回路の制御によって、レベル検知および温度・濃度検知が行われるようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態の液体状態検知センサ100では、外筒電極10および内部電極20を設け、尿素水溶液99の液面レベルも検知するようにしたが、外筒電極10および内部電極20を設けず、レベル検知については行わないものとしてもよい。さらに、上記実施の形態の液体状態検知センサ100では、「検出時間」に相当する700msecが経過するまで待機した後に、発熱抵抗体114の検出電圧値(「第2対応値」に相当)を検出するようにしたが、発熱抵抗体114への通電開始後であって、10msec経過後、且つ、700msecが経過する前のタイミング(例えば、680msec)で発熱抵抗体114の検出電圧値を検出し、700msecが経過した時点で発熱抵抗体114への通電を停止するようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態の液体状態検知センサ100では、液体性状検知回路部250に定電流出力部270を設け、発熱抵抗体114に定電流を流し、発熱抵抗体114の抵抗値に対応した電圧値を取得するようにした。しかし、例えば、液体性状検知回路部250に定電圧出力部を設け、発熱抵抗体114に定電圧をかけて、発熱抵抗体114に流れる電流に対応した電流値を出力して、尿素水溶液99の温度・濃度検知を行うようにしてもよい。
【0064】
また、本実施の形態の液体状態検知センサ100では、尿素水溶液99の温度や尿素濃度、レベルの検知を行うものを一例としたが、検知対象の液体は尿素水溶液に限定するものではない。例えば液体に含まれる特定成分としてアンモニアを用い、アンモニア水の性状(液位、温度、濃度等)を検知するセンサであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】液体状態検知センサ100の一部切欠縦断面図である。
【図2】液体状態検知センサ100の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】ROM230の記憶エリアの構成を示す図である。
【図4】性状検知プログラムのフローチャートである。
【図5】従来の液体状態検知センサによって算出される尿素水溶液中の尿素濃度と、実際の尿素濃度との、尿素水溶液の温度に対するズレの傾向(濃度分布傾向)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
98 尿素水タンク
99 尿素水溶液
100 液体状態検知センサ
110 セラミックヒータ
114 発熱抵抗体
210 マイクロコンピュータ
220 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によって発熱する発熱抵抗体を有し、液体が収容された液体収容容器内に配置される液体性状検出素子と、
前記発熱抵抗体に所定の検出時間、通電を行う通電手段と、
前記検出時間内に前記発熱抵抗体の第1抵抗値に対応した第1対応値を取得する第1対応値取得手段と、
前記第1対応値に基づいて前記液体の温度情報を求める温度情報取得手段と、
前記検出時間内のうち前記第1対応値を取得した後、または、前記検出時間の経過後に、前記発熱抵抗体の第2抵抗値に対応した第2対応値を取得する第2対応値取得手段と、
前記第2対応値と前記第1対応値との差分値を求める差分値算出手段と、
前記差分値と前記温度情報とに基づいて前記液体に含まれる特定成分の濃度に対応した濃度対応値を求める濃度対応値取得手段と
を備えた液体状態検知センサにおいて、
前記濃度対応値に対し前記温度情報に基づく補正を行って、前記液体の温度に応じた前記濃度対応値の濃度分布傾向を平滑化した補正濃度対応値を求める補正濃度対応値取得手段を備えたことを特徴とする液体状態検知センサ。
【請求項2】
前記液体性状検出素子は、絶縁性セラミック基体内に前記発熱抵抗体を埋設した構成をなし、且つ、前記絶縁セラミック基体の外表面が前記液体に接するように前記液体収容容器内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の液体状態検知センサ。
【請求項3】
前記液体は尿素水溶液であって、前記特定成分が尿素であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体状態検知センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−216405(P2009−216405A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57288(P2008−57288)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】