説明

液体補充容器

【課題】液体噴射装置に液体を供給する液体容器に液体を補充する液体補充容器において、安定した姿勢で液体容器に液体を補充することを目的とする。
【解決手段】液体噴射装置に液体を供給する液体容器に液体を補充する液体補充容器であって、内部に補充用の液体を収容する収容部と、前記液体容器の注入口に対して挿入され収容部に収容された液体を前記液体容器に補充する補充口と、前記液体容器への液体補充時における、前記補充口と前記液体容器との前記液体容器への挿入方向に対する相対位置を位置決めする位置決め部材とを有することを特徴とする液体補充容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体補充容器、特にインクジェットプリンターの液体容器にインク等の液体を補充する液体補充容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例であるインクジェット式プリンターは、記録ヘッドからインクを記録対象物(例えば、印刷用紙)に吐出し、印刷を実行する。記録ヘッドへインクを供給する技術として、プリンターの外部に配置されたインクタンクからチューブを介して記録ヘッドへインクを供給する技術が知られている(例えば、特許文献1)。インクタンクはインク注入口を備え、利用者は容易にインク注入口からインクを補充できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−219483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補充用のインクが収容されたインクボトルから上記のインクタンクの注入口にインクボトルの補充口を挿入してインクを補充する場合、インクボトルを利用者が把持し続けているため、インクボトルの補充口の位置が安定しないという課題があった。
【0005】
また、インクボトルの補充口が想定よりインクタンクの深い位置まで挿入されることでインクの補充が適切に行うことができないおそれがあった。
【0006】
また、インクボトルの補充口を含む先端部分がインクタンク内のインクで汚れてしまうおそれがあった。
【0007】
また、上記のようなインクボトルには、インクタンクへの補充に際して必要な情報が記載されたラベルが貼着される場合があるが、漏出したインクなどが当該ラベルに付着し、補充に必要な情報を利用者が読み取ることができないおそれがあった。
【0008】
上記のような問題はインクタンクにインクを補充するインクボトルに限らず、液体噴射装置に液体を供給する液体容器に液体を補充する液体補充容器に共通の問題であった。
【0009】
従って、本発明は、液体噴射装置に液体を供給する液体容器に液体を補充する液体補充容器において、液体容器への液体補充の利便性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することができる。
【0011】
[適用例1]液体噴射装置に液体を供給する液体容器に、前記液体を補充する液体補充容器であって、
内部に補充用の前記液体を収容する収容部と、
前記液体容器の注入口に対して挿入され、前記収容部に収容された前記液体を前記液体容器に補充する補充口と、
前記液体容器への液体補充時における、前記補充口と前記液体容器との前記液体容器への挿入方向に対する相対位置を位置決めする位置決め部と、を有することを特徴とする液体補充容器。
【0012】
本適用例に記載の液体補充容器によれば、液体容器への液体補充時において、液体補充容器の補充口と前記液体容器との補充口挿入方向に対する相対位置が位置決めされることから、補充口の液体容器に対する位置が安定する。
【0013】
[適用例2]上記適用例に記載の液体補充容器であって、
前記液体容器に収容が許容される液体量の上限まで前記液体が補充された場合に、前記補充口が前記液体容器内の前記液体と接触しない位置が前記相対位置となるように、前記位置決め部が設けられている液体補充容器。
【0014】
本適用例に記載の液体補充容器によれば、液体容器に収容される液体量の上限まで液体が補充されたときでも補充口が液体と接触しないので、適正な量のインクを補充できるとともに、液体補充容器の補充口周辺が液体で汚れるのを防ぐことができる。
【0015】
[適用例3]上記適用例に記載の液体補充容器であって、
前記液体容器への液体補充時に前記収容部の前記液体を前記補充口に案内し、前記収容部の断面よりも小さい断面を有する液体案内部を有し、
前記位置決め部は、前記液体案内部の外壁から外部へ突出しており、液体補充時に前記液体容器の前記注入口の管壁と当接して位置決めする突起である液体補充容器。
【0016】
本適用例に記載の液体補充容器によれば、収容部から補充口に液体を案内する液体案内部の外壁に設けられた突起により、液体補充時に液体容器に対して補充口を位置決めすることができる。
【0017】
[適用例4]上記適用例に記載の液体補充容器であって、
複数の前記突起が前記液体案内部の周方向に等しい間隔で設けられていることを特徴とする液体補充容器。
【0018】
本適用例に記載の液体補充容器によれば、液体案内部の周方向に設けられた複数の突起により液体補充時に補充口を位置決めすることができ、より安定した補充口の位置決めができる。
【0019】
[適用例5]上記適用例に記載の液体補充容器であって、
請求項1乃至4に記載の液体補充容器であって、
栓部材を有し、
前記栓部材がせん断力を受けて開栓されることで前記補充口が形成され、
前記栓部材は開栓後に前記補充口をキャップする凹部を備えることを特徴とする液体補充容器。
【0020】
本適用例に記載の液体補充容器によれば、栓部材の開栓によって形成された補充口を栓部材が備える凹部によってキャップすることができる。
【0021】
[適用例6]液体噴射装置に液体を供給する液体容器に前記液体を補充する液体補充容器であって、
内部に補充用の前記液体を収容する収容部と、
前記液体容器の注入口に対して挿入され、収容部に収容された前記液体を前記液体容器に補充する補充口と、を有し、
前記液体容器への前記液体の補充の処理に用いられるID情報が記載されたラベルが貼着されており、
前記ラベルの表面が撥液性を有することを特徴とする液体補充容器。
【0022】
本適用例に記載の液体補充容器によれば、液体の補充の処理に用いられるID情報が記載されたラベル表面に、漏出したインクが付着し続けることを低減できる。
【0023】
[適用例7]液体噴射装置に液体を供給する液体容器に前記液体を補充する液体補充容器であって、
底部と、
内部に補充用の前記液体を収容する収容部と、
前記液体容器の注入口に対して挿入され収容部に収容された前記液体を前記液体容器に補充する補充口と、を有し、
第1のラベルと、前記液体容器への前記液体の補充の処理に用いられるID情報が記載され前記第1のラベルとは異なる第2のラベルとが貼着され、
前記底部が水平面に載置された状態において、前記第2のラベルの鉛直方向上端が前記第1のラベルの鉛直方向下端と重なるように貼着されていることを特徴とする液体補充容器。
【0024】
本適用例に記載の液体補充容器によれば、当該液体補充容器の外壁と第1のラベルとの間を移動してくる漏出したインクが第2のラベルの表面に付着するのを防止することができる。
【0025】
なお、本発明は種々の形態で実現することが可能であり、上述した液体補充容器のほか、上述した液体補充容器を用いた液体補充方法等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(A)(B)は液体噴射装置と液体噴射装置に液体を供給する液体容器であるインクタンクを説明するための図である。
【図2】インクタンクからサブタンクへの液体供給を説明するための図である。
【図3】インクタンクの外観斜視図である。
【図4】インクタンクの外観斜視図である。
【図5】インクタンクの外観斜視図である。
【図6】液体補充容器であるインクボトルを水平面に設置した正面図である。
【図7】インクボトルの本体部に連結された蓋部の外観斜視図である。
【図8】インクボトルの本体部に連結された蓋部の断面図である。
【図9】(A)(B)はインクボトルからインクタンクへのインク補充を説明するための図である。
【図10】インクボトルに貼着されるラベルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の順序で本発明の実施形態について説明する。
A.第1実施例
B.変形例
【0028】
A.第1実施例
A−1.液体噴射システムの構成
図1は、後述するインクボトル70と密接に関連する液体噴射装置12とインクタンク30からなる液体噴射システム1を説明するための図である。図1(A)は、液体噴射システム1の第1の外観斜視図である。図1(B)は、液体噴射システム1の第2の外観斜視図であり、インクタンク30を示した図である。なお、図1には方向を特定するために互いに直交するXYZ軸が図示されている。なお、これ以降の図に関しても必要に応じて互いに直交するXYZ軸が図示されている。
【0029】
図1(A)に示すように、液体噴射システム1は、液体噴射装置としてのインクジェットプリンター12(単に「プリンター12」ともいう。)と、タンクユニット50とを備える。プリンター12は、用紙給紙部13と、用紙排出部14と、キャリッジ(サブタンク装着部)16と、4つのサブタンク20と、を備える。4つのサブタンク20は色の異なるインクを収容している。具体的には、4つのサブタンク20は、ブラックインクを収容するサブタンク20Bkと、シアンインクを収容するサブタンク20Cnと、マゼンタインクを収容するサブタンク20Maと、イエローインクを収容するサブタンク20Ywである。4つのサブタンク20は、キャリッジ16に搭載されている。
【0030】
用紙給紙部13にセットされた印刷用紙は、プリンター12内部に搬送され、印刷後の印刷用紙が用紙排出部14から排出される。
【0031】
キャリッジ16は、主走査方向(紙巾方向、X軸方向)に移動可能である。この移動はステッピングモーター(図示せず)の駆動によりタイミングベルト(図示せず)を介して行われる。キャリッジ16の下面には、記録ヘッド(図示せず)が備え付けられている。この記録ヘッドの複数のノズルからインクが印刷用紙上に噴射され印刷が行われる。なお、タイミングベルトやキャリッジ16などのプリンターを構成する各種部品はケース10内部に収容され保護されている。
【0032】
タンクユニット50は、上面のケース54と、第1のケース56と、第2の側面ケース58と底面ケース(図示せず)を備える。ケース54、56、58及び底面ケースは、ポリプロピレン(PP)やポリスチレン(PS)等の合成樹脂により成形することができる。本実施例では、ケース54、56、58及び底面ケースはポリスチレンを用いて成形されている。さらに、図1(B)に示すように、タンクユニット50は、ケース(蓋部材)54、56、58及び底面ケース(蓋部材)により囲まれた4つの液体収容容器としてのインクタンク30を備える。ケース54、56、58及び底面ケースによってタンクユニット50がより安定して所定の場所(例えば、机や棚などの水平面)に設置される。なお、図1(A)に示すように、上面のケース54は、一辺54Aを支点として矢印Yp方向に開閉できる。
【0033】
4つのインクタンク30は、4つのサブタンク20が収容する色に対応したインクを収容している。すなわち、4つのインクタンク30は、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクをそれぞれ収容する。なお、インクタンク30は、サブタンク20よりも多くの量のインクを収容できる。
【0034】
各色のインクを収容したインクタンク30は、対応した色のインクを収容するためサブタンク20にホース(チューブ)24によって接続されている。ホース24は合成ゴム等の可撓性を有する部材で形成されている。記録ヘッドからインクが噴射されサブタンク20のインクが消費されると、ホース24を介してインクタンク30のインクがサブタンク20に供給される。これにより、液体噴射システム1は、長時間にわたって中断動作なしに連続して印刷を続けることできる。なお、サブタンク20を設けずに、ホース24を介して直接インクタンク30から記録ヘッドにインクを供給してもよい。
【0035】
図2を用いてインクタンク30からサブタンク20にインクが供給される原理、及び、インクタンク30とサブタンク20の概略構成について説明する。図2は、インクタンクからサブタンクへの液体供給を説明するための概略断面図である。
【0036】
液体噴射システム1は、水平面である所定の設置面sf上に設置されている。インクタンク30は、液体導出部306と、液体収容室340と、空気収容室330と、液体注入口304と、インクタンク栓部材302と、大気導入口317と、大気開放口318とを備える。
【0037】
インクタンク30がサブタンク20にインクを供給する際のインクタンク30の使用姿勢では、Z軸正方向が鉛直上方向となり、Z軸負方向が鉛直下方向となる。また、インクタンク30内部にインクを注入する際の注入姿勢では、X軸正方向が鉛直上方向となり、X軸負方向が鉛直下方向となる。なお、2つ以上のインクタンク30を配置(積層)したタンクユニット50の、1つのインクタンク30にインクを注入する場合、タンクユニット50一体で姿勢を変化させるため、全てのインクタンク30が注入姿勢となる。また、インクタンク30にインクを注入する際には、利用者によって上面のケース54(図1(A))が開かれる。
【0038】
液体収容室340はインクを収容する。液体収容室340は、第1の壁部370c1の内面から液体収容室340内に向かって所定長さ延びる区画壁部342を有する。区画壁部342は、液体収容室340内部にY軸方向(幅方向)全域にわたって形成されている。すなわち、区画壁部342は、第1の壁部370c1を2つの領域に仕切っている。2つの領域に仕切られた領域のうち、液体導出部306と連通している領域を液体保持部345という。また、液体収容室340は、空間部341を有する。空間部341は、液体収容室340を形成する壁部により形成された凹状形状であって、インクタンク30の注入姿勢において、液体注入口304の鉛直下方向(X軸負方向)に開口している。また、空間部341は、インクタンク30の注入姿勢において、液体注入口304の下端部304mよりも上方(X軸正方向)に位置する。なお、理解容易のために、液体収容室340のうち、空間部341とそれ以外の領域の境界を破線で示している。
【0039】
液体注入口304は、円形状の流路を内部に有し、液体収容室340と連通している。詳細には、液体注入口304の一端部である上端部304pは外部に向かって開口し、他端部である下端部304mは液体収容室340内で開口している。液体注入口304には、インクタンク栓部材302が脱着可能に取り付けられ、インクが液体注入口304から外部に漏れ出すことを防止している。インクタンク30の使用姿勢では、液体注入口304は鉛直方向(Z軸方向)と直交する方向(水平方向、図2ではX軸正方向)に向かって開口している。
【0040】
液体導出部306の一端部である液体出口部349は液体収容室340に接続されている。言い換えれば、液体出口部349は液体収容室340内で開口している。液体出口部349は、インクタンク30の注入姿勢において、空間部341よりも下方(X軸負方向側)に位置する。インクタンク30の液体導出部306と、サブタンク20の液体受入部202はホース24によって接続されている。これにより、液体収容室340のインクは、液体導出部306からホース24を介してサブタンク20に流通する。
【0041】
大気導入口317と大気開放口318は、外部からインクタンク30内部に大気を導入するための蛇行流路の両端部である。大気開放口318は、空気収容室330と連通している。空気収容室330は、狭小流路である連通部350によって液体収容室340と連通している。連通部350は、メニスカスを形成可能な程度に流路面積が小さい流路となっている。プリンター12にインクを供給する際の状態であるインクタンク30の使用状態においては、連通部350にメニスカスが形成される。
【0042】
空気収容室330は所定容量の容積を有し、液体収容室340内の空気が温度変化等により膨張し、インクが連通部350を介して逆流した場合に、所定量のインクを貯留する。すなわち、インクタンク30は空気収容室330を備えることで、インクが逆流した場合でもインクが大気導入口から外部に漏れ出すおそれを低減できる。
【0043】
注入姿勢で液体注入口304からインクを液体収容室340に注入した後に、液体注入口304をインクタンク栓部材302で密封し使用姿勢にした場合、液体収容室340内の空気が膨張し、液体収容室340は負圧に維持される。また、空気収容室330は大気開放口318と連通することで大気圧に維持されている。
【0044】
サブタンク20は、ポリスチレンやポリエチレンなどの合成樹脂により成形されている。サブタンク20は、インク貯留室204と、インク流動路208と、フィルター206とを備える。インク流動路208には、キャリッジ16のインク供給針16aが挿入されている。フィルター206は、インクに異物などの不純物が混入していた場合に、その不純物を捕捉することで記録ヘッド17への不純物の流入を防止する。インク貯留室204のインクは、記録ヘッド17からの吸引によって、インク流動路208、インク供給針16aを流れて、記録ヘッド17に供給される。記録ヘッド17に供給されたインクは、ノズルを介して外部(印刷用紙)へ向かって噴射される。
【0045】
使用姿勢において、メニスカスを形成する連通部350は、記録ヘッド17よりも低い位置になるように配置される。これにより、水頭差d1が発生する。なお、使用姿勢において、連通部350にメニスカスが形成された状態での水頭差d1を「定常時水頭差d1」とも呼ぶ。
【0046】
インク貯留室204のインクが記録ヘッド17によって吸引されることで、インク貯留室204は所定の負圧以上となる。インク貯留室204が所定の負圧以上になると、液体収容室340のインクがホース24を介してインク貯留室204に供給される。すなわち、インク貯留室204には、記録ヘッド17に流出した量のインクが液体収容室340から自動的に補充されることになる。言い換えれば、インクタンク30内の空気収容室330と接するインク液面と記録ヘッド(詳細にはノズル)との鉛直方向の高さの差によって発生する水頭圧d1よりも、プリンター12側から吸引力(負圧)がある程度大きくなることでインクが液体収容室340からインク貯留室204へ供給される。
【0047】
液体収容室340のインクが消費されると、空気収容室330の空気G(「気泡G」ともいう。)が連通部350を介して液体収容室340に導入される。これにより、液体収容室340の液面は低下する。
【0048】
A−2.インクタンクの構成
次に図3〜図5を用いてインクタンク30の構成を説明する。図3は、インクタンク30の第1の外観斜視図である。図4は、インクタンク30の第2の外観斜視図である。図5は、インクタンク30の第3の外観斜視図である。なお、図3〜図5には、インクタンク栓部材302(図2)の図示は省略している。
【0049】
図3〜図5に示すように、インクタンク30は略柱体形状(詳細には略角柱形状)をしている。図3に示すようにインクタンク30は、タンク本体32と、第1のフィルム34と、第2のフィルム322とを備える。
タンク本体32は、ポリプロピレンなどの合成樹脂により成形されている。また、タンク本体は半透明である。これにより、利用者は外部から内部のインクの量を確認できる。タンク本体32の形状は、一側面が開口した凹状形状である。タンク本体32の凹部には様々な形状のリブ(壁部)362が形成されている。ここで、開口している一側面(開口を形成するタンク本体32の外枠を含む一側面)を開口側面370(開口壁部370)ともいう。
【0050】
第1のフィルム34は、ポリプロピレンなどの合成樹脂により成形されており、透明状である。第1のフィルム34は熱溶着によって開口側面370の開口を覆うようにタンク本体32に貼り付けられる。具体的には、第1のフィルムは、リブ362の端面、および、タンク本体32の外枠の端面に隙間が生じないように緻密に貼り付けられている。これにより複数の部屋が形成されている。
具体的には、主に、空気収容室330と液体収容室340と連通部350とが形成される。すなわち、タンク本体32と第1のフィルム34によって空気収容室330、液体収容室340、連通部350が形成されている。なお、第1のフィルム34のタンク本体32への貼り付けは、熱溶着に限られず、例えば粘着剤を用いて貼り付けても良い。
【0051】
液体収容室340は、複数の壁部により形成されている。具体的には、主に、第1のフィルム34により形成された開口壁部370と、内部空間(例えば液体収容室340)を挟んで開口壁部370と対向する対向壁部370b(図4)と、開口壁部370と対向壁部370bに接続された複数の接続壁部370c(図3、図5)とを備える。図3及び図4に示すように、開口壁部370の外形と対向壁部370bの外形は同一形状(凸形状)である。
【0052】
図5に示すように、複数の接続壁部370cは第1の壁部370c1と第2の壁部370c2とを含む。タンクユニット50としてインクタンク30が組み立てられた場合(図1(A))、第1の壁部370c1は外部から視認できる。なお、液体収容室340を形成する複数の壁部のうち、複数のインクタンク30の配置方向(積層方向、Y軸方向)に垂直な平面を有する開口壁部370(図3)及び対向壁部370b(図4)はタンクユニット50としてインクタンク30が組み付けられた場合、外部から視認できない。
【0053】
第1の壁部370c1は、インクタンク30の使用姿勢において、インクタンク30が設置された設置面(水平面)に対して立設状態となる壁部である。すなわち、第1の壁部370c1は、インクタンク30の使用姿勢において、下方から上方に向かって延びる壁部である。本実施例の場合、第1の壁部370c1は、インクタンク30の使用姿勢において構成する。なお、第1の壁部370c1は、インクタンク30の注入姿勢において、インクタンク30の底面を構成する。
【0054】
第2の壁部370c2は、インクタンク30の注入姿勢において、インクタンク30が設置された設置面(水平面)に対して立設状態となる壁部である。すなわち、第2の壁部370c2は、インクタンク30の注入姿勢において、下方から上方に向かって延びる壁部である。本実施例の場合、第2の壁部370c2は、インクタンク30の注入姿勢において、設置面(水平面)に対して略垂直な角度を有するようにインクタンク30の壁部を構成する。
【0055】
図5に示すように、第1の壁部370c1には、下限部としての下限線LM1が設けられている。第2の壁部370c2には、上限部としての上限線LM2が設けられている。下限線LM1及び上限線LM2は、直線状である。下限線LM1は、使用姿勢において水平(鉛直方向に垂直)な線である。上限線LM2は、注入姿勢において水平(鉛直方向に垂直)な線である。また、下限線LM1及び上限線LM2は、設けられた第1の壁部370c1、第2の370c2の外面から突出した突起状であり、タンク本体32と一体成形されている。
【0056】
下限線LM1は、インクタンク30の使用姿勢において、液体収容室340のインクが消費され、液体噴射システム1において適切な敵対噴射を保証するためのインク量の下限である第1の閾値となったことを利用者に示すために設けられている。上限線LM2は、インクタンク30の注入姿勢において、液体注入口304から後述のインク補充容器であるインクボトル70によって液体収容室340にインクが注入され、液体収容室340のインクがインクタンク30に収容されるインクの上限である第2の閾値なったことを利用者に示すために設けられている。すなわち、下限線LM1及び上限線LM2は、液体収容室340の液体(インク)の量が第1又は第2の閾値になったことを外部から識別するために用いられる。
【0057】
A−3.インクボトルの構成
図6は、本発明に係る液体補充容器の一例であるインクボトル70を示したものである。このインクボトル70を用いて、液体噴射システム1のインクタンク30にインクが補充される。インクボトル70は内部にインクタンク30へ補充されるインクを収容する本体部72と、インクタンク30へ補充されるインクの流出口となる補充口としてのインク補充口74bが形成され、本体部72と連結されている蓋部74と、未使用時において蓋部74のインク補充口74bの部分で蓋部74と連結されているインクボトル栓部76とから構成されている。なお、インクボトル70はポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレンなどの合成樹脂を成形することにより得ることができる。
【0058】
本体部72は略円筒形状となっており、保管時等には底部72eが机や棚の平面に載置される。本体部72の外壁には第1のラベル72aが貼着され、第1のラベル72aよりも本体部72の底部72eに近い位置に第2のラベル72bが貼着されている。第1のラベル72aには、液体噴射システム1のインクタンク30へのインクの補充容器であるインクボトル70としての商品の名称や商品のイメージを示す図柄などが記載されている。
【0059】
一方、第2のラベル72bには、液体噴射システム1のインクタンク30へのインクの補充を行うために必要な情報であるID情報や内部に収容されているインクの消費期限の情報などが記載されている(図10参照)。第2のラベル72bにはコート紙や表面が撥液性を有するラベルを使用するのが好ましい。このような性質を有するラベルとしては、日東電工(株)製のデュラタック(登録商標)10PNなどがあげられる。表面が撥液性を有していれば、漏出したインク等が第2のラベル72bの表面に付着した状態が維持されるおそれを低減できる。
【0060】
図6に示すとおり、底部72eを水平面である所定の設置面sfに載置した状態において、第1のラベル72aの下端部の上に第2のラベル72bの上端部が重なるように貼着されている。このような態様により、インク補充口74bから漏れ、本体部外壁と第1のラベル72aの貼着面との隙間を流れ落ちてくるインクが第2のラベル72bの表面に付着することを防止できる。従って、第2のラベル72bの表面に記載されたID情報や消費期限の情報を利用者が読み取ることができなくなることを防止することができる。
【0061】
図7は、インクボトル70の本体部72に連結された蓋部74および蓋部74に連結されたインクボトル栓部76の外観斜視図である。図8は、本体部72に連結された蓋部74の断面図である。図8に示すように本体部72と蓋部74は、螺旋状に形成された凹凸である本体部72の連結部72dと、蓋部74の連結部74dが互いに嵌合することによって連結されている。なお、本体部72に対して蓋部74を相対的に回転させることで、本体部72と蓋部74の連結は解除される。
【0062】
本体部72の底部72eと反対側の開口は、使用前はアルミ蒸着フィルム等のフィルム72fで封止されている。インクタンク30へインクを補充する場合は、利用者が、本体部72から蓋部74を取り外したうえでフィルム72fを剥がしてから使用することとなる。
【0063】
図8に示されているように、蓋部74とインクボトル栓部76は開栓前(使用前)において、合成樹脂で一体的に成形されることにより連結されている。利用者が、蓋部74からインクボトル栓部76を引きちぎるなどによって、インク補充口74bが形成され、インクボトル70が開栓される。すなわち、インクボトル70の開栓時に、蓋部74のインク補充口74bとなる部分にせん断力が作用することにより、蓋部74とインクボトル栓部76とが分離してインク補充口74bが形成されることとなる。これによって、インク補充口74bからインクタンク30へのインクの補充が可能となる。
【0064】
蓋部74は、インクタンク30へのインク補充時に本体部72内部に収容されたインクをインク補充口74bに案内するインク案内部74e(液体案内部)を有する。なお、インク案内部74eの断面は本体部72の断面より小さくなっている。
【0065】
図7及び図8に示されているように、インク補充口74bから所定の距離(D2)離れて、蓋部74(インク案内部74e)の外壁に外側に向かって突出する凸部(補充口位置決め部)74aが2つ設けられている。この2つの凸部74aは、平面視において互いになす角が180°となるように設けられている。言い換えると、インク案内部74eの周方向に等しい間隔で設けられるともいえる。
【0066】
インクボトル栓部76は、蓋部74との連結部分の反対側に凹部76aが設けられ、蓋部74開栓後のインク補充口74bを保護するためのキャップとして用いることができる。また、インクボトル栓部76には取手部76bが設けられている。この取手部76bは、凹部76aによってインク補充口74bをキャップしているインクボトル栓部76を取り外す場合に、利用者等が取手部76bに指を引っ掛けて取り外しやすくするために設けられている。
【0067】
A−4.インクタンクへのインクの補充方法
インクタンク30へのインクの補充に際して、ID情報を、プリンター12のユーザーインターフェイス(図示せず)や、プリンター12と接続されたホストパーソナルコンピューター(図示せず)のディスプレイに表示されたプリンタードライバー画面(図示せず)を介して入力するように利用者に促す。
インクボトル70からインクタンク30へのインクの補充に際して、このようなID情報の入力を利用者に求めるのは、プリンター12にとって適切な種類(インク色、顔料インクまたは染料インク)のインクが補充されることを保証するためである。また、インクタンク30内のインク量を適切に管理するためでもある。適切なID情報が入力されると、インクタンク30へのインクの補充を行うことができる。
【0068】
インクタンク30を使用姿勢(図1(B)参照)から倒して、第1の壁部370c1が机や壁部などの載置面と対向するように姿勢(注入姿勢)を変更する。そして、液体注入口304を閉塞しているインクタンク栓部材302を外し、液体注入口304を開放する。次に、インクボトル70のインク補充口74bをインクタンク30の液体注入口304に挿入してインクの補充を行う。
【0069】
図9(A)はインクボトル70を用いてインクを補充している途中の様子を示している。また、図9(B)はインクボトル70を用いてインクを補充し、液体収容室340のインクの水位が上限線LM2まで達したときの様子を示している。
【0070】
図9(A)に示されているとおり、インクボトル70からインクタンク30へインクが補充されるときには、液体注入口304の上端304pとインクボトル70の凸部(補充口位置決め部)74aの一辺(一面)と当接している。これにより、インクボトル70のインク補充口74bがインクタンク30に対して相対的に位置決めされている。
【0071】
本実施例においては、この2つの凸部74aが、平面視において互いになす角が180°となるように設けられており、インク案内部74eの周方向に等しい間隔で設けられている。これにより、インクボトル70の凸部74aが液体注入口304の上端304pと当接することにより受ける抗力のバランスが安定し、インク補充時のインクボトル70の姿勢が安定する。
【0072】
図9(B)に示されている通り、インクボトル70からのインクの補充の結果、液体収容室340のインクの液面が上限線LM2まで達しても、インク補充口74bは液面に接触していない。インク補充時に、インク補充口74bが液体収容室340のインクの液面に接触、あるいは、インク補充口74bが液体収容室340のインクに浸ってしまうとインクボトル70内の空気が液体収容室340内のインク中に吹き込まれ、気泡の発生を引き起こす。発生した気泡が壊れると、気泡を形成していたインクの一部が飛び散り、インクタンク30やインクボトル70を汚してしまうおそれがある。本実施例によれば、このような状況を未然に防止することができる。また、液体収容室340のインクの液面が上限線LM2まで達しても、インク補充口74b周辺がインクで汚れてしまうのを抑制できる。
【0073】
B.変形例
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0074】
B−1.変形例1
上記実施例においては、2つの凸部74aは平面視において互いになす角が180°となるように設けられているが、インク案内部74eの周方向に等しい間隔で設けられておればよく、隣接する2つの凸部74aのなす角のそれぞれが等しくなっていればよい。例えば、3つの凸部74aを設ける場合には、隣接する2つの凸部74aのなす角のそれぞれは120°となる。
【0075】
B−2.変形例2
上記実施例においては、インクボトル70の本体部72の外壁に第1のラベル72aと第2のラベル72bが貼着されていることとしたが、これに加え透明フィルムを第1のラベル72aと第2のラベル72bを覆うように貼着してもよい。これにより、第1のラベル72aと第2のラベル72bを保護することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…液体噴射システム、12…インクジェットプリンター(プリンター)、30…液体収容容器としてのインクタンク、70…液体補充容器としてのインクボトル、72…本体部、72a…第1のラベル、72b…第2のラベル、72e…底部、74…蓋部、74a…凸部(補充口位置決め部)、76…インクボトル栓部、302…インクタンク栓部材、304…液体注入口、340…液体収容室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置に液体を供給する液体容器に、前記液体を補充する液体補充容器であって、
内部に補充用の前記液体を収容する収容部と、
前記液体容器の注入口に対して挿入され、前記収容部に収容された前記液体を前記液体容器に補充する補充口と、
前記液体容器への液体補充時における、前記補充口と前記液体容器との前記液体容器への挿入方向に対する相対位置を位置決めする位置決め部材と、を有することを特徴とする液体補充容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体補充容器であって、
前記液体容器に収容が許容される液体量の上限まで前記液体が補充された場合に、前記補充口が前記液体容器内の前記液体と接触しない位置が前記相対位置となるように、前記位置決め部材が設けられている液体補充容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体補充容器であって、
前記液体容器への液体補充時に前記収容部の前記液体を前記補充口に案内し、前記収容部の断面よりも小さい断面を有する液体案内部を有し、
前記位置決め部は、前記液体案内部の外壁から外部へ突出しており、液体補充時に前記液体容器の前記注入口の管壁と当接して位置決めする突起である液体補充容器。
【請求項4】
請求項3に記載の液体補充容器であって、
複数の前記突起は前記液体案内部の周方向に等しい間隔で設けられていることを特徴とする液体補充容器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体補充容器であって、
栓部材を有し、
前記栓部材がせん断力を受けて開栓されることで前記補充口が形成され、
前記栓部材は開栓後に前記補充口をキャップする凹部を備えることを特徴とする液体補充容器。
【請求項6】
液体噴射装置に液体を供給する液体容器に前記液体を補充する液体補充容器であって、
内部に補充用の前記液体を収容する収容部と、
前記液体容器の注入口に対して挿入され、収容部に収容された前記液体を前記液体容器に補充する補充口と、を有し、
前記液体容器への前記液体の補充の処理に用いられるID情報が記載されたラベルが貼着されており、
前記ラベルの表面が撥液性を有することを特徴とする液体補充容器。
【請求項7】
液体噴射装置に液体を供給する液体容器に前記液体を補充する液体補充容器であって、
底部と、
内部に補充用の前記液体を収容する収容部と、
前記液体容器の注入口に対して挿入され収容部に収容された前記液体を前記液体容器に補充する補充口と、を有し、
第1のラベルと、前記液体容器への前記液体の補充の処理に用いられるID情報が記載され前記第1のラベルとは異なる第2のラベルとが貼着され、
前記底部が水平面に載置された状態において、前記第2のラベルの鉛直方向上端が前記第1のラベルの鉛直方向下端と重なるように貼着されていることを特徴とする液体補充容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−106363(P2012−106363A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255580(P2010−255580)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】