説明

液剤組成物

【課題】 ヒトにおける脳の意識レベルをリラックス状態に導き、効果的な演算能力の向上をもたらす液剤組成物を提供する。
【解決手段】 カフェインとユリ科植物ナルコユリ由来の黄精抽出物を有効成分として含有することにより、かかる課題を解決できる経口用組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳の意識レベルをリラックス状態に導くことにより、ヒトの演算能力の向上効果をもたらす液剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カフェインは、茶葉中に含まれる中枢性興奮作用を有する成分として知られ、旧来より、覚醒効果を期待した各種飲料が発売されている。近年では、その中枢性作用に着目し、カルボニックアンヒドラーゼ活性化因子との併用や(特許文献1参照)、茶葉中に含まれる成分テアニンとの併用(特許文献2参照)によって、ヒトの認知能力や注意集中力を高める技術が開示されてきた。また、同様に茶葉中に含まれる成分エピカテキンとの組合わせでは、精神疲労に対する緩和効果をもたらす技術が開示されている(特許文献3参照)。そして、カフェインと茶葉成分を組合せた上で、さらに、特定のアミノ酸を併用することにより、精神疲労の緩和と集中力の維持増強がもたらされることが明らかにされている(特許文献4参照)。しかし、これらの技術は、疲労状態にある精神機能を緩和・軽減することで、認知能力や注意集中力の回復改善効果を示すに留まり、数学的演算行為など、健常人におけるより高度な思考活動に対する能力向上効果を示すまでには至っていない。
【0003】
【特許文献1】特表2005−526065
【特許文献2】特開2006−153898
【特許文献3】特開2002−80363
【特許文献4】特開2002−322063
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、数学的演算行為など、脳における高度な思考活動の能力向上を図ることを目的とした。すなわち、従来のカフェインと茶葉成分の組合わせによって導かれる疲労状態における精神疲労の回復改善効果だけでは不十分であると考えた。本発明は、健常人において、より積極的に脳意識レベルをリラックス状態に導き、単なる認知能力や注意集中力の回復改善に留まらない、演算能力の向上効果に優れた液剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、健常人において脳活動をリラックス状態に導き、より高度な思考活動の能力を向上せしめる液剤組成物の研究を鋭意進めてきた。その結果、カフェインにユリ科植物由来の黄精抽出物を加えることにより、演算能力を効果的に向上せしめる液剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、カフェインおよびユリ科植物ナルコユリ由来の黄精抽出物を合わせて含有することを特徴とする液剤組成物の提供に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液剤組成物において、カフェインにユリ科植物ナルコユリ由来の黄精抽出物を配合することにより、健常人の脳意識レベルをリラックス状態に導き、あわせて演算能力の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられる黄精抽出物の出発原料となる黄精は、ユリ科(Liliaceae)の植物ナルコユリ(Polygonatumalcatum)の根茎であり、おもに中国本土の長江流域以北の諸省または自治区(黒龍江、吉林、遼寧、河北、山東、江蘇、河南、山西、陝西、内蒙古)を産地とする。
【0009】
黄精は、乾燥粉砕したものをそのまま使用することができるが、溶媒等を用いて抽出した抽出物を用いることもできる。抽出の際は、生のまま用いてもよいが、抽出効率を考えると、細切、乾燥、粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが望ましい。抽出は、抽出溶媒に浸漬する方法や超臨界流体等を用いた抽出方法など一般的な方法で行うことができる。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが好ましい。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、1時間〜14日間程度とするのが好ましい。
【0010】
抽出溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノールのごとき低級アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、などの有機溶媒またはそれらの混合物を用いることができる。
【0011】
得られた抽出物は、そのままでも用いることができるが、濃縮、乾固したものを水や溶媒に再度溶解したり、あるいはこれらの作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィーによる分画処理を行った後に用いてもよい。また、保存のため、精製処理の後凍結乾燥し、使用時に溶媒に溶解して用いることもできる。
【0012】
本発明で用いる黄精抽出物の配合量は、液剤組成物全体の0.1w/w%以上であれば良いが、10w/w%を超える配合量では製剤時に気泡が発生するなどの弊害が生じやすくなる。よって、本発明で用いる黄精抽出物の配合量としてより好ましくは、0.1w/w%〜10w/w%が良い。
【0013】
本発明は、さらにその他生薬を配合することにより、さらなる効果を発揮することができる。
【0014】
本発明に用いることのできる生薬とは、好ましくは、菊花、高麗人参、茶、ガラナからなる群より選ばれる1種または2種以上である。
【0015】
次に、本発明において用いるカフェインとは、医薬品用原料として市販されているものの他、飲食品用途として市販されている茶葉(Thea sinensis)やガラナ(Paullinia cupana)など、カフェインを多く含むことが知られている植物の抽出物を任意に用いることができる。
【0016】
本発明の液剤組成物には、通常液剤に用いることが可能な成分、例えば、ビタミン類、アミノ酸類、有機酸類、生薬、甘味料、香料、保存剤などの他、栄養強化成分、滋養強壮成分などを適時選択して配合することができ、液剤製造の常法により製造することができる。
【0017】
以下に本発明の組成物のリラックス効果ならびに演算能力向上効果を、以下の調製例に示した飲料組成物ならびに実施例により確認した。なお、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない
【実施例】
【0018】
調製例:飲料組成物
被験飲料(各50mL)を表1に示す処方に従って調製した。各飲料はそれぞれ1試飲あたり、カフェイン150mg(比較例1)、黄精抽出物100mg(比較例2)、カフェイン150mgおよび黄精抽出物100mgを含有する(試験例1)。さらに、プラセボとして、カフェインと黄精抽出物のいずれをも含まないものを調製した(比較例3)。
【0019】
【表1】

【0020】
被験飲料ごとに、リラックス効果および演算能力向上効果についてテストした。
【0021】
実施例1:脳波の計測
大脳の働きにともなって発生する脳波は、周波数と振幅によって4つのタイプに分類され、各脳波の出現頻度をもって脳の意識状態を計り知ることができる。周波数8〜13ヘルツのα波はリラックスや瞑想の意識状態を、周波数14〜30ヘルツのβ波は緊張状態を、周波数0.5〜3ヘルツのγ波は熟睡などの無意識状態を、周波数4〜7ヘルツのθ波はまどろみの意識状態を示す指標とされている。
【0022】
テストは簡易脳波測定装置マインドナビ(日立超LSIシステムズ社製)を用いた。被験者の安静状態を保てる環境下にて、各飲料の飲用前後のα波出現頻度を記録し、その変化量をもって、飲用によるリラックス状態への誘導効果を評価した。結果を図1に示す。
【0023】
図1に示したように、プラセボ(比較例3)と黄精抽出物のみを含む被験飲料(比較例2)では、飲用によるα波の出現頻度に明らかな変化は認められず、黄精抽出物のみでは、α波の増加をもたらさないことを示した。一方、カフェインを含む被験飲料(試験例1、比較例1)では飲用後のα波の増加、すなわち、脳意識レベルのリラックス状態への誘導効果が見られたが、とりわけカフェインと黄精抽出物の双方を含む被験飲料(試験例1)では当該効果の発現が顕著であり、黄精抽出物がカフェインのα波増強効果をよりいっそう強化すること示した。
【0024】
実施例2:演算能力の評価
演算能力は、一定時間内における百マス計算によって評価した。百マス計算とは、図2に示したように、縦と横に0〜9の10個ずつの数字が並べられた方眼様シートを用いて、10列×10行の足し算演算を行い、その結果を所定のマスに記入するというものである。なお、数字の並びは各シートごとに無作為に変化させたものを用いた。
【0025】
被験者に被験飲料の飲用前後の各10分間に、可能な限りの百マス計算を行ってもらい、その回答数と正答率をもって、飲用による演算能力の向上効果を評価した。結果を図3と図4に示す。
【0026】
図3に示したように、プラセボ(比較例3)と黄精抽出物のみを含む被験飲料(比較例2)では、飲用による回答数の増加は認められず、黄精抽出物のみでは、回答数を増加させる作用がないことを示した。一方、カフェインを含む被験飲料(試験例1、比較例1)では、飲用による回答数の増加が認められた。とりわけカフェインと黄精抽出物の双方を含む被験飲料(試験例1)では、より顕著な回答数の増加が認められ、黄精抽出物がカフェインの飲用による回答数の増加作用をよりいっそう強化すること示した。
【0027】
図4は正答率を示したものであるが、いずれの被験飲料の飲用でも正答率の低下は認められていない。すなわち、前記カフェインを含む被験飲料の飲用による回答数の増加は、単なる公知のカフェインの中枢性興奮作用によって誘発された、粗雑な回答数の増加ではなく、計算精度を損ねることなく、回答数を増したものであることを明らかにした。
【0028】
以上、カフェインの飲用は、脳の意識レベルを高度な思考活動を行う上での理想的なリラックス状態へと誘導し、あわせて効果的な演算能力の向上効果をもたらすが、その作用は、黄精抽出物との併用によってより、いっそう増強されることを見い出した。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の経口用組成物を用いれば、優れた演算能力の向上効果を有する製剤を得ることができる。また、本発明の経口用組成物は、副作用等の心配がなく、日常的に連用可能な清涼飲料水やドリンク剤等として用いることができ、医薬品、医薬部外品、栄養補助食品、健康食品として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1に示した脳意識レベルのリラックス状態への誘導を示した図である。
【図2】実施例2で用いた百マス計算シート
【図3】実施例2で示した回答数の増加を示した図である。
【図4】実施例2で示した正答率への影響の有無を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフェインおよびユリ科植物ナルコユリ由来の黄精抽出物を含有してなる液剤組成物。
【請求項2】
カフェインおよびユリ科植物ナルコユリ由来の黄精抽出物を含有してなるα波増強剤。
【請求項3】
カフェインおよびユリ科植物ナルコユリ由来の黄精抽出物を含有してなる演算能力向上剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−63281(P2008−63281A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243468(P2006−243468)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(591074231)常盤薬品工業株式会社 (20)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】