説明

液化ガスの気化装置

【課題】伝熱管と基板との接合部の耐久性に優れた気化装置を提供する。
【解決手段】温水を満たすためのバス2と、液化ガスを流している間にバス内の温水と液化ガスとの間で熱交換させる伝熱管3と、伝熱管内に液化ガスを供給する供給管10と、伝熱管の入口側端部を固定するとともにバス内外を仕切る基板7と、伝熱管の入口側端部に伝熱管内で基板を貫通するように固定された内管31を備える装置1において、前記伝熱管の入口側端部における液化ガスの流路の周囲に、供給される液化ガスの一部を滞留させるために、伝熱管の内周面と内管の外周面とに挟まれ一端が供給管に通じ他端が閉塞された環状間隙32を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液化天然ガス(LNG)や液体窒素などの液化ガスを気化させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン(LNGの主成分)及び液体窒素は、その沸点がそれぞれ−196℃、−162℃と非常に低い。一般に液化ガスは気化装置を用いて飽和温度(LNGの場合−140℃)まで昇温させて気化し、更に常温まで昇温させて使用される。気化装置としては、温水などの媒体を収容するバスと、バス内外を仕切る基板に固定されて液化ガスを通す伝熱管とを備えたものが汎用されており、液化ガスを伝熱管に通し、管壁を介して媒体と熱交換させることにより気化している(非特許文献1)。
【0003】
具体的には、従来の気化装置は多管式とコイル式とがあり、多管式は図2に鉛直方向断面図で示すように、側面に媒体入口2a、媒体出口2bが設けられた薄肉円筒状のバス2と、バス2内に立てられた多数の伝熱管3、3・・・3と、バス2の下方に固定されLNG入口4aを有する漏斗状の分配器4と、バス2の上方に固定され気化した天然ガス(NG)の出口5aを有する逆漏斗状の集束器5とを備える。バス2の上下端は、厚肉の基板6、7にて閉じられており、これらの基板6、7に伝熱管3の出口側端部及び入口側端部が溶接等にて固定されている。バス2の内周面には媒体の流れを径方向に誘導するためのじゃま板9、9・・・が左右から交互に取付られている。伝熱管3はじゃま板9を貫通している。分配器4は、入口4aにおいて供給管10に接続されており、入口4aから供給されたLNGは、分配器4にて各伝熱管3に分配され、伝熱管3内を通過中に媒体と熱交換して気化し、集束器5にて集束されて送出される。
【0004】
コイル式は図4に鉛直方向断面図で示すように、下端に媒体入口12a、上端に媒体出口12bが設けられ、媒体出口12bを除いて上端が閉じられた薄肉円筒状のバス12と、バス12内に配置された伝熱管8と、バス12の下端を閉じる基板17とを備える。伝熱管8は、分配管8a、分配側環状管8b、複数の分岐管8c、8c・・・、集束側環状管8d、及び集束管8eからなる。分配管8aは、供給管10に接続され、基板17を貫通し、それに溶接等にて固定されている。分配側環状管8bは、分配管8aに接続されてバス12内で水平に配置されている。分岐管8c、8c・・・は、入口側端部でそれぞれ環状管8bの適所に接続されて鉛直方向に螺旋状に巻かれている。集束側環状管8dは、全ての分岐管8cの出口側端部に接続されて水平に配置されている。集束管8eは、環状管8dに接続されて分岐管8cの螺旋軸上に立てられ、基板17を貫通し、それに固定されている。供給管10から供給されたLNGは、分配管8a及び環状管8bにて各分岐管8cに分配され、分岐管8c内を通過中に媒体と熱交換して気化し、環状管8dにて集束されて集束管8eより送出される。
【非特許文献1】http://www.kobelco.co.jp/eng/lng/j/lng03.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の気化装置では管壁の内外で200℃以上もの温度差を有することから、伝熱管と基板との接合部、即ち図2における伝熱管3と基板7との接合部P、又は図4における分配管8aと基板17との接合部Qに熱応力が発生し、伝熱管が破損するおそれがあった。
それ故、この発明の課題は、伝熱管と基板との接合部の耐久性に優れた気化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その課題を解決するために、この発明の気化装置は、
温水を満たすためのバスと、液化ガスを流している間にバス内の温水と液化ガスとの間で熱交換させる伝熱管と、伝熱管内に液化ガスを供給する供給管と、伝熱管の入口側端部を固定するとともにバス内外を仕切る基板とを備える装置において、
前記伝熱管の入口側端部における液化ガスの流路の周囲に、供給される液化ガスの一部を滞留させるガス溜めを設けたことを特徴とする。
【0007】
この発明の気化装置によれば、供給管から供給される液化ガスの一部がガス溜めに流入し、残部が本来の流路を通って伝熱管の出口側端部に送られる。ガス溜めに流入した液化ガスは、そこで滞留し、伝熱管の入口側端部周辺の温水と熱交換して気化する。気化ガスは液化ガスに比べて熱伝導率が低い。このため、ガス溜めに滞留した気化ガスが、その後に供給される液化ガスと温水との断熱層となり、伝熱管と基板との熱応力が軽減される。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、伝熱管と基板との熱応力が軽減されることから、両者の接合部の耐久性に優れ、気化装置としての信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
−実施形態1−
この発明の気化装置の第一の実施形態を図面とともに説明する。図1は第一の実施形態に係る気化装置を示し、(a)はその要部断面図、(b)は(a)のB部拡大図、(c)は伝熱管の軸方向断面図である。
気化装置1は、多管式であって、薄肉円筒状のバス2と、バス2内に立てられた多数の伝熱管3、3・・・3と、バス2の下方に固定されLNG入口4aを有する漏斗状の分配器4と、バス2の上方に固定され気化した天然ガス(NG)の出口(図示省略)を有する逆漏斗状の集束器5(図示省略)とを備える。バス2の上下端は、厚肉の基板6(図示省略)、7にて閉じられており、これらの基板に伝熱管3の出口側端部及び入口側端部が溶接されている。バス2の内周面には入口2aから供給される温水の流れを径方向に誘導するためのじゃま板9、9・・・が左右から交互に取付られている。じゃま板9は、平面視円形の一方の端が切り落とされた欠円をなしており、その切り落とし部分のみ媒体の軸方向の移動を許容する。伝熱管3はじゃま板9を貫通している。分配器4は、入口4aにおいて供給管10に接続されている。
【0010】
各伝熱管3の入口側端部には伝熱管3内で基板7を貫通するように内管31が挿入されている。内管31は伝熱管3と同軸上に配置され、内管31の外径は伝熱管3の内径よりも小さい。従って、伝熱管3の内周面と内管31の外周面とで環状の間隙32が形成されている。環状間隙32は後述のガス溜めとして機能する。内管31の上端には径方向外方に突き出た鍔33が形成されており、鍔33が伝熱管3に接合されることにより、内管31が固定されるとともに、環状間隙32の下流端が閉じられている。内管31、31・・・は、基板7の中心に近いものほど高い。即ち、基板7の中心に近いものほどその出口側端部が基板7から遠ざかっている。
【0011】
装置1は、更に分配器4内にもう一つの分配器41を備えている。分配器41は、下方に向かって細くなるテーパ部41aと、その下に連なる筒状部41bとからなる漏斗状をなす。そして、テーパ部41aの上面は内管31が貫通していることを除くほかは気密に閉じられている。筒状部41bは下端が開放されており入口4a内に挿入されている。筒状部41bの外径は入口4aの内径よりも小さい。内管31、31・・・は、テーパ部41aの上面に溶接されることにより固定されており、その後にそれぞれ伝熱管3、3・・内に挿入される。従って、前記の通り、中心に近いものほど高くすることにより、挿入し易くなっている。
【0012】
装置1によれば、供給管10から供給される液化ガスの一部が入口4aの内周面と筒状部41bの外周面との間隙を通り抜けて分配器4に入り、各環状間隙32に分配される。そして、環状間隙32内の液化ガスは伝熱管3周囲の温水と熱交換して気化する。一方、液化ガスの残部は、筒状部41bより分配器41に入り、各内管31内に流れ続け、伝熱管3内を通過中に温水と熱交換して気化し、集束器5(図示省略)にて集束されて送出される。各伝熱管3内には螺旋状に軸方向に延びる伝熱促進体34が取り付けられており、気化したガスは螺旋軌道を描きながら通過する。
【0013】
装置1においては、環状間隙32内で気化したガスが、そこに滞留し、伝熱管3周囲の温水と内管31内を流れ続ける液化ガスとの間で断熱層として機能する。このため、伝熱管3における基板7との接合部近傍の外周面と内周面とではあまり温度差がなく、接合部に大きな熱応力がかからない。また、液化ガスが螺旋軌道を描きながら伝熱管3内を通過するので、伝熱管3が短くてもガスの昇温に必要な熱伝達が確保される。従って、バス2の全高を従来よりも低く、小型化可能である。
【0014】
−実施形態2−
この発明の気化装置の第二の実施形態を図面とともに説明する。図3は第二の実施形態に係る気化装置を示し、(a)はその要部断面図、(b)は(a)のB部拡大図である。
気化装置11は、下端に媒体入口12a、上端に媒体出口12b(図示省略)が設けられ、媒体出口12bを除いて上端が閉じられた薄肉円筒状のバス12と、バス12内に配置された伝熱管8と、バス12の下端を閉じる基板17とを備える。伝熱管8は、分配管8a、分配側環状管8b、複数の分岐管8c、8c・・・(図示省略)、集束側環状管8d(図示省略)、及び集束管8eからなる。
【0015】
分配管8aは、供給管10に接続され、基板17を貫通し、それに溶接されている。分配側環状管8bは、分配管8aに接続されてバス12内で水平に配置されている。分岐管8c、8c・・・は、入口側端部でそれぞれ環状管8bの適所に接続されて鉛直方向に螺旋状に巻かれている。集束側環状管8dは、全ての分岐管8cの出口側端部に接続されて水平に配置されている。集束管8eは、環状管8dに接続されて分岐管8cの螺旋軸上に立てられ、基板17を貫通し、それに固定されている。
【0016】
分配管8aには分配管8a内で基板17を貫通するように内管81が挿入されている。内管81は分配管8aと同軸上に配置され、内管81の外径は分配管8aの内径よりも小さい。従って、分配管8aの内周面と内管81の外周面とで環状の間隙82が形成されている。内管81の上端には径方向外方に突き出た鍔83が形成されており、鍔83が分配管8aに接合されることにより、内管81が固定されるとともに、環状間隙82の下流端が閉じられている。
【0017】
装置11によれば、供給管10から供給される液化ガスの一部が環状間隙82に入る。そして、環状間隙82内の液化ガスは分配管8a周囲の温水と熱交換して気化する。一方、液化ガスの残部は、内管81内に流れ続け、分岐管8c内を通過中に温水と熱交換して気化し、集束管8eにて集束されて送出される。
装置11においては、環状間隙82内で気化したガスが、そこに滞留し、分配管8a周囲の温水と内管81内を流れ続ける液化ガスとの間で断熱層として機能する。このため、分配管8aにおける基板17との接合部近傍の外周面と内周面とではあまり温度差がなく、接合部に大きな熱応力がかからない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一の実施形態に係る気化装置を示し、(a)はその鉛直方向要部断面図、(b)は(a)のB部拡大図、(c)は伝熱管の軸方向断面図である。
【図2】従来の多管式気化装置を示す一部破断正面図である。
【図3】第二の実施形態に係る気化装置を示し、(a)はその鉛直方向要部断面図、(b)は(a)のB部拡大図である。
【図4】従来のコイル式気化装置を示す鉛直方向断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1、11 気化装置
2、12 バス
3、8 伝熱管
4 分配器
5 集束器
6、7、17 基板
8a 分配管
8b、8d 環状管
8c 分岐管
8e 集束管
31、81 内管
32、82 環状間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を満たすためのバスと、液化ガスを流している間にバス内の温水と液化ガスとの間で熱交換させる伝熱管と、伝熱管内に液化ガスを供給する供給管と、伝熱管の入口側端部を固定するとともにバス内外を仕切る基板とを備える装置において、
前記伝熱管の入口側端部における液化ガスの流路の周囲に、供給される液化ガスの一部を滞留させるガス溜めを設けたことを特徴とする液化ガスの気化装置。
【請求項2】
更に伝熱管の入口側端部に伝熱管内で基板を貫通するように固定された内管を備え、前記ガス溜めが、伝熱管の内周面と内管の外周面とに挟まれ一端が供給管に通じ他端が閉塞された環状間隙である請求項1に記載の気化装置。
【請求項3】
前記装置は、二以上の伝熱管が鉛直方向に立てられた多管式であって、前記供給管から供給される液化ガスの一部を前記二以上の伝熱管内の各環状間隙に分配する第一の分配器と、前記供給管から供給される液化ガスの残部を前記二以上の伝熱管内の各内管に分配する第二の分配器とを更に備える請求項2に記載の気化装置。
【請求項4】
前記二以上の伝熱管の内管は、基板の中心に向かうほどその出口側端部が基板から遠ざかっている請求項3に記載の気化装置。
【請求項5】
前記装置は、二以上の分岐管がバス内でコイル状に巻かれ、入口側端部と出口側端部とで一本に集約されたコイル式である請求項2に記載の気化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−299858(P2009−299858A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157317(P2008−157317)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(592055831)ミクニキカイ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】