説明

液化ガスの送液方法

【課題】液化ガスを間欠的に送液する際の装置コストの低減が図れるとともに、送液量を高精度に制御することができる液化ガスの送液方法を提供する。
【解決手段】使用先への液化ガスの送液を間欠的に行う液化ガスの送液方法において、使用先への送液を停止しているときに液化ガス容器11からの液化ガスを液化ガスポンプ12により昇圧して送液用容器13に供給し、使用先への送液を行うときには前記送液用容器13内に貯留した液化ガスを使用先へ送液するとともに、前記液化ガス容器11から送液用容器13への液化ガスの供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスの送液方法に関し、特に、あらかじめ設定された量の液化ガスをあらかじめ設定された圧力で、一定時間間隔で使用先に送液する液化ガスの送液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液化ガス貯槽内に貯留された液化ガスを送液する方法としては、液化ガスポンプを使用したり、自己加圧用蒸発器で貯槽内を加圧したりする方法が広く行われている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【特許文献1】実用新案登録第3065131号公報
【特許文献2】特開平7−289880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の送液方法は、大量の液化ガスを連続的に供給するのには問題はないが、一定量の液化ガスを間欠的に供給する用途、特に、送液時間に比べて停止時間が長いときには適していなかった。例えば、液化ガスポンプを使用する場合、送液時の送液量に見合った能力の液化ガスポンプを必要とし、全体的な送液量から見ると過剰な能力を有する高価で大型の液化ガスポンプを使用しなければならなかった。また、自己加圧用蒸発器を使用する場合、安定して液化ガスを送液するためには多くの熱量を必要とするだけでなく、圧力のオーバーシュートが発生しやすく、精密な制御が困難であり、さらに、貯槽内の圧力が高くなると送液する液化ガスの温度が上昇するため、送液途中でガス化しやすくなるという問題もある。
【0004】
また、液化ガスの送液量を流量計で制御する方式では、一定量の液化ガスを送液する場合、液化ガスの流量と送液時間との積を演算して制御しなければならず、液化ガスの送液量を直接測定するものではないため、送液量を高精度に制御することは困難であった。
【0005】
そこで本発明は、液化ガスを間欠的に送液する際の装置コストの低減が図れるとともに、送液量を高精度に制御することができる液化ガスの送液方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の液化ガスの送液方法は、使用先への液化ガスの送液を間欠的に行う液化ガスの送液方法において、使用先への送液を停止しているときに液化ガス源からの液化ガスを液化ガスポンプにより昇圧して送液用容器に供給し、使用先への送液を行うときには前記送液用容器内に貯留した液化ガスを使用先へ送液するとともに、前記液化ガス源から送液用容器への液化ガスの供給を停止することを特徴とするもので、特に、前記液化ガス源からの液化ガスを液化ガスポンプにより昇圧して送液用容器に供給する時間が、液化ガス源から送液用容器への液化ガスの供給を停止する時間よりも長いことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の液化ガスの送液方法は、前記送液用容器の重量を測定して使用先への液化ガスの送液量を制御することを特徴としている。また、前記液化ガスポンプにより昇圧した液化ガスの一部を気化させ、気化したガスをあらかじめ設定した圧力に保持するとともに、使用先に液化ガスを送液するときに前記気化したガスを前記送液用容器内に導入することを特徴とし、この場合、前記気化させる液化ガスを前記液化ガスポンプと前記送液用容器との間から分岐するとともに、該分岐位置より下流側に液化ガスポンプ側の圧力があらかじめ設定された圧力以上のときに開弁する背圧弁を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液化ガスの送液方法によれば、送液停止時に液化ポンプで送液用容器に供給して貯留し、送液時には送液用容器内に貯留した液化ガスを送液するようにしているので、特に停止時間に比べて送液時間が極めて短く、短時間に大量の液化ガスを送液する場合、停止時間中に所定量の液化ガスを送液用容器に貯留すればよいことから、送液時の時間当たり送液量に比べて小さな能力の液化ガスポンプを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の液化ガスの送液方法を実施するための液化ガス送液装置の一例を示す系統図である。この液化ガス送液装置は、液化ガス源となる液化ガス容器11と、該液化ガス容器11内の液化ガスを抜き出して送出する液化ガスポンプ12と、液化ガスポンプ12から供給された液化ガスを一時的に貯留する送液用容器13と、送液用容器13から液化ガスを送液する際に送液用容器13内に導入する加圧ガスを得るための液化ガス蒸発器14と、これらを接続する経路及び各経路の所定位置に設けられた各種弁とを主要構成要素とするものであって、前記送液用容器13には、重量を測定する重量計(ロードセル)15と、容器内温度を測定して一定に保持するための温度調節器16とが設けられている。
【0010】
また、液化ガスポンプ12の部分には、液化ガスポンプ12から吐出された液化ガスを液化ガスポンプ12の吸引側に循環させる循環経路17と、液化ガスポンプ12に吸引される液化ガスを冷却するとともに、液化ガスポンプの性能を維持するため、蒸発ガスを再冷却するための冷凍機18とが設けられ、液化ガス蒸発器14の部分には、液化ガスを加熱気化させるための加熱器19と、気化したガスを貯留するためのバッファータンク20とが設けられている。
【0011】
以下、液化ガスを間欠的に送液する手順を説明する。まず、液化ガス容器11の容器弁11a、11bを液化ガス供給経路21及び加圧経路22とに接続し、容器弁11a、11b及び各手動弁23,24,25,26を開いた状態とし、各背圧弁27,28及び各減圧弁29、30をあらかじめ設定された動作圧力に調節する。また、加圧調整弁31を開閉制御する圧力指示調節計32の設定圧力もあらかじめ設定された動作圧力に調節した後、液化ガスポンプ12のモータ12aを作動させて系内の予冷操作を行う。
【0012】
予冷操作終了後、送液弁33及び循環弁34を閉じた状態で液化ガス供給弁35を開き、送液用容器13への液化ガスの供給を開始する。供給開始に際し、圧力指示調節計32の設定圧力によって減圧調整弁39が開き、送液用容器13内から気化したガスを放出して容器内の圧力を下げることにより、液化ガスが供給されやすい状態とする。液化ガス容器11から液化ガス供給経路21に抜き出され、液化ガスポンプ12で昇圧された液化ガスの圧力が供給側背圧弁27の設定圧力以上になると供給側背圧弁27が開き、この供給側背圧弁27及び液化ガス供給弁35を通って送液用容器13に液化ガスが供給される。
【0013】
送液用容器13への液化ガス供給量は、ロードセル15で送液用容器13の重量を測定することによって制御され、測定した重量があらかじめ設定された重量に達したときに液化ガス供給弁35を閉じて送液用容器13への液化ガスの供給を停止する。これにより、送液用容器13内に所定量の液化ガスが貯留された待機状態となり、前記温度調節器16が作動して送液用容器13内の温度が一定に保たれた状態になる。このときの送液用容器13内の圧力は、液化ガスポンプ12の吐出圧力と同等になる。その後、加圧調節弁31を開き、送液用容器13内の圧力を送液側減圧弁29の設定圧力まで昇圧する。
【0014】
また、待機状態では、液化ガス供給弁35を閉じると同時に循環経路17の循環弁34を開く。循環経路17に設けた循環側背圧弁28の設定圧力は、前記供給側背圧弁27の設定圧力よりも若干高く設定されており、通常、送液用容器13に液化ガスを供給している間は閉弁状態となっているが、液化ガス供給弁35が閉じられて循環側背圧弁28の一次側圧力が設定圧力以上になると開弁し、液化ガスポンプ12から吐出された液化ガスは、開弁状態となった循環側背圧弁28及び循環弁34を経て循環経路17を流れ、冷凍機18を介して液化ガスポンプ12の吸入側に循環する。これにより、液化ガスポンプ12の吐出圧力が循環側背圧弁28の設定圧力に保持されるとともに、液化ガスポンプ12が低温状態に保持される。
【0015】
一方、液化ガスポンプ12から吐出された液化ガスの一部は、液化ガスポンプ12と供給側背圧弁27との間の液化ガス供給経路21から加圧源供給経路36に分岐し、手動弁24,25を経て液化ガス蒸発器14に導入され、加熱器19が作動して液化ガスを気化させる。気化したガスは、手動弁26を通って前記加圧経路22と送液用加圧経路37とに分岐し、送液用加圧経路37に分岐したガスは前記バッファータンク20に貯留される。このとき、両減圧弁29,30の一次側及びバッファータンク20は、液化ガス蒸発器14を介して液化ガスポンプ12の吐出側にある供給側背圧弁27の設定圧力に保持される。
【0016】
また、加圧経路22の加圧側減圧弁30は、その二次側の圧力に応じて開閉することから、加圧経路22を介して液化ガス容器11内が加圧側減圧弁30の設定圧力に保持される。送液用加圧経路37では、送液用容器13内の圧力が圧力指示調節計32の設定圧力より高いときには加圧調整弁31が閉じ状態となることから、加圧調整弁31と送液側減圧弁29との間は、送液側減圧弁29の設定圧力に保持される。
【0017】
前記待機状態で送液弁33を開くことにより、送液用容器13内に貯留されている液化ガスが送液経路38を通って使用先に送液される。液化ガスは、送液用容器13内の圧力によって送液され、液化ガスの送液中は加圧調整弁31が開き、送液用加圧経路37から送液用容器13内に送液用の加圧ガスが導入され、送液圧力を一定に保持する。
【0018】
また、液化ガスの送液量は、ロードセル15で送液用容器13の重量を測定することにより制御され、送液開始前の測定重量と送液中の測定重量との差があらかじめ設定された液化ガス送液量に達したときに送液弁33を閉じて液化ガスの送液を停止する。このように、送液量をロードセル15で液化ガスの重量を直接測定するため、流量計を用いた場合に比べて送液量を高精度に制御することができる。さらに、温度調節器16によって送液用容器13内の温度が一定に保たれ、使用先へ送液する液化ガスの温度を制御することができる。
【0019】
そして、送液弁33を閉じて使用先への液化ガスの送液を停止したときには、循環経路17の循環弁34を閉じるとともに液化ガス供給弁35を開き、液化ガスポンプ12で昇圧した液化ガスを送液用容器13に供給する状態とし、前述のように、送液用容器13の測定重量が設定された重量になるまで液化ガスを送液用容器13内に供給した後、前記同様の待機状態とする。
【0020】
また、使用先への液化ガスの送液中及び送液停止中において、加圧源供給経路36側の圧力が低下して供給側背圧弁27の設定圧力以下になると、供給側背圧弁27が閉じて液化ガスポンプ12で昇圧した液化ガスを加圧源供給経路36に導入する状態となるので、液化ガス容器11及び送液用容器13を加圧するためのガスの圧力を供給側背圧弁27の設定圧力以上に確実に保持することができる。
【0021】
このように、最初の準備段階で送液用容器13に所定量の液化ガスを供給して貯留状態とした後、送液用容器13から使用先に液化ガスを送液する際に送液用容器13への液化ガスの供給を停止することにより、送液用容器13の重量から液化ガスの供給量を正確に制御することができる。さらに、送液用容器13内のガスの圧力を調節することにより、短時間で大量の液化ガスを送液することが可能となる。
【0022】
そして、使用先への液化ガスの送液が間欠的に行われ、かつ、送液時間に比べて送液停止時間が長い状態の場合には、送液停止中に所定量の液化ガスを送液用容器13に供給すればよいことから、液化ガスポンプ12として小さな能力のポンプを使用することができる。例えば、送液時間が10秒、送液停止時間が50秒の60秒サイクルで1kgの液化ガスを使用先に送液する場合、液化ガスポンプ12で使用先に直接液化ガスを送液する場合には、10秒間で1kgを送液しなければならないことから、毎分6kgの能力を有する液化ガスポンプを使用する必要がある。
【0023】
これに対し、送液停止時間の50秒間で送液用容器13に1kgの液化ガスを供給する場合には、50秒間で1kgであるから、毎分1.2kgの能力を有する液化ガスポンプを使用することが可能となり、十分な余裕をとっても毎分2kgの能力を有する液化ガスポンプを使用すればよいことになる。
【0024】
これにより、液化ガスポンプに要するコストの大幅な削減が可能になるとともに、ポンプ周囲の配管を小径化することも可能となるので、装置全体のコストを大幅に削減することが可能となる。さらに、小型化や小径化に伴って熱侵入量の低減も図れるので液化ガスの蒸発ロスも少なくすることができる。
【0025】
なお、送液用容器13、液化ガス蒸発器14、温度調節器16、冷凍機18をはじめとする各機器には、従来からこの種の液化ガス供給用に用いられているものを、送液量や液化ガスの種類などの条件に応じて任意に選択使用することができる。また、液化ガス送液量の制御は、液面高さを測定して行うことも可能である。
【0026】
さらに、液化ガス容器11内や送液用容器13内を所定圧力に保つための加圧ガスとしては、系外の適宜なガスを用いることが可能であり、液化ガス容器11が自己加圧用蒸発器を備えている場合や、液化ガス源が液化ガス配管である場合なども加圧用ガスを用意する必要はなく、この場合は供給側背圧弁27も不要となる。また、送液時間が短く、液化ガスポンプ12を停止させることが可能な場合は、循環経路17を省略することも可能である。
【0027】
また、使用先への液化ガスの送液が間欠的に行われ、かつ、使用先への送液時間に比べて送液停止時間が短い状態の場合でも、送液用容器13を2系統とし、1系統が使用先に送液中に,他の1系統の送液容器に液化ガスを供給することにより、交互に使用先に送液ができるため、液化ガスポンプ12の能力を小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の液化ガスの送液方法を実施するための液化ガス送液装置の一例を示す系統図である。
【符号の説明】
【0029】
11…液化ガス容器、11a、11b…容器弁、12…液化ガスポンプ、12a…モータ、13…送液用容器、14…液化ガス蒸発器、15…重量計(ロードセル)、16…温度調節器、17…循環経路、18…冷凍機、19…加熱器、20…バッファータンク、21…液化ガス供給経路、22…加圧経路、23,24,25,26…手動弁、27…供給側背圧弁、28…循環側背圧弁、29…送液側減圧弁、30…加圧側減圧弁、31…加圧調整弁、32…圧力指示調節計、33…送液弁、34…循環弁、35…液化ガス供給弁、36…加圧源供給経路、37…送液用加圧経路、38…送液経路、39…減圧調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用先への液化ガスの送液を間欠的に行う液化ガスの送液方法において、使用先への送液を停止しているときに液化ガス源からの液化ガスを液化ガスポンプにより昇圧して送液用容器に供給し、使用先への送液を行うときには前記送液用容器内に貯留した液化ガスを使用先へ送液するとともに、前記液化ガス源から送液用容器への液化ガスの供給を停止することを特徴とする液化ガスの送液方法。
【請求項2】
前記液化ガス源からの液化ガスを液化ガスポンプにより昇圧して送液用容器に供給する時間が、液化ガス源から送液用容器への液化ガスの供給を停止する時間よりも長いことを特徴とする請求項1記載の液化ガスの送液方法。
【請求項3】
前記送液用容器の重量を測定して使用先への液化ガスの送液量を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の液化ガスの送液方法。
【請求項4】
前記液化ガスポンプにより昇圧した液化ガスの一部を気化させ、気化したガスをあらかじめ設定した圧力に保持するとともに、使用先に液化ガスを送液するときに前記気化したガスを前記送液用容器内に導入することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の液化ガスの送液方法。
【請求項5】
前記気化させる液化ガスを前記液化ガスポンプと前記送液用容器との間から分岐するとともに、該分岐位置より下流側に液化ガスポンプ側の圧力があらかじめ設定された圧力以上のときに開弁する背圧弁を設けたことを特徴とする請求項4記載の液化ガスの送液方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−52711(P2009−52711A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222092(P2007−222092)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】