説明

液化ガス供給装置

【課題】液化ガスが収容された容器内の圧力が外気温度に見合った圧力となるように容器内の圧力を制御すること。
【解決手段】液化ガスが収容される容器3、この容器内の液化ガスを加熱する液化ガス加熱手段13、容器内の気相部の圧力を検出する圧力検出手段11、容器の周囲の外気温度を検出する外気温度検出手段21、圧力検出手段で検出した圧力の値と外気温度検出手段で検出した外気温度の値に基づいて液化ガス加熱手段の加熱量を制御する制御部23を備える。制御部23は、圧力検出手段で検出した圧力と、外気温度検出手段で検出した外気温度に対応させて予め設定された設定圧力線との偏差に応じて、液化ガス加熱手段の加熱量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスを収容した容器内の液化ガスの加熱を行う液化ガス供給装置に係り、特に容器内の圧力を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガスを供給する設備としては、液化ガスを収容する容器とこの容器内の気相部に連通するガス管路とを備えた自然気化を利用する設備が知られている。屋外又は屋内に設置された容器に収容された液相の液化ガスは、容器周囲の外気からの熱によって気化される。容器内の気相の液化ガスは、気相部に連通するガス管路を介して気相の液化ガスを使用する機器や装置類へ供給される。このような液化ガスを供給する設備では、容器周囲の外気からの熱によって気化量や容器内の圧力が変動するため、所定の圧力以上の圧力を維持して気相の液化ガスを供給することは難しい。
【0003】
そこで、液化ガスが収容される容器に、この容器内に収容した液化ガスを加熱する加熱器を設け、容器内又は容器からの気相の液化ガスが通流するガス管路内の圧力及び容器周囲の外気温度に応じて、加熱器による容器内の液化ガスの加熱を制御する液化ガス供給装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような液化ガス供給装置では、液化ガスを利用する機器類や設備が要求する圧力で気相の液化ガスの供給ができなくなるのを防ぐため、容器内の圧力を検出するための圧力スイッチを備え、容器内の圧力が圧力スイッチに設定した圧力以下になると、加熱器が容器内の液化ガスを加熱し、容器内の温度を上昇させて液相の液化ガスの気化量を増大させ、容器内の圧力を上昇させるようにしている。また、外気温度検出手段で検知した外気温度が所定の温度以上になると、加熱器による液化ガスの加熱を停止させている。この外気温度は液化ガスを加熱するか否かを決めるために検出され、加熱する場合は、圧力スイッチで容器内の圧力が設定範囲に収まるように加熱が制御される。
【0005】
ところが、特許文献1の液化ガス供給装置では、圧力スイッチに1点又は複数点の固定された圧力値が予め設定されており、この設定された圧力値によって加熱器による加熱の開始や停止が行われる。そのため、例えば、外気温度の高い夏場などでは、外気温度が高くても容器内の圧力が設定値よりも一時的に低ければ加熱が開始され、これにより不要なエネルギーが消費されるという問題がある。
【0006】
これに対し、内部の圧力差によって動く隔壁(ダイヤフラム)を挟んで隔てられた第1及び第2の圧力室を有し、液化ガス供給装置の容器内に収容される液化ガスを封入した感温部を第1の圧力室と連通し、液化ガス供給装置の容器内の気相部を第2の圧力室と連通し、隔壁の動きに応じて信号を出力する圧力スイッチを備えた液化ガス供給装置が開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
これによれば、感温部で検出した容器の周囲の外気温度に対応する液化ガスの飽和蒸気圧と、容器内の温度に対応する容器内の液化ガスの飽和蒸気圧との差圧に応じて隔壁が動くことにより、圧力スイッチがオン・オフし、液化ガス供給装置の加熱器の加熱及び停止が制御される。ここで、圧力スイッチがオン・オフして加熱器による容器の加熱及び停止を制御する信号を出力する設定圧力値は、外気温度の上下に対応して上下する。これにより、容器内の温度と容器の周囲の温度との温度差を少なくすることができ、容器から外気への放熱を低減できることから省エネルギー性を向上させることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2003−185094号公報
【特許文献2】特開2005−233231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2のような圧力スイッチを用いた場合、以下のような問題が生じるおそれがある。すなわち、ダイヤフラムは通常ゴム製のため、経時劣化に伴う定期的な交換が必要であると共に、ゴムはガスを多少透過するため、感温部に封入したガスが消失してしまうおそれがある。また、液化ガスの飽和蒸気圧を第1及び第2の圧力室までそれぞれ導いているため、例えば、第1及び第2の圧力室の温度が低下すると、これらの圧力室で気相の液化ガスが再液化してダイヤフラムのゴムを劣化させ、検出圧力が不安定になるおそれがある。
【0010】
また、特許文献2によれば、加熱器による容器の加熱及び停止を制御する信号を出力する圧力スイッチの設定圧力値は、外気温度の上下に対応して上下するため、例えば、外気温度が高い夏場は不必要な加熱を抑えるために設定圧力値を低くすることができず、反対に、外気温度が低い冬場は液化ガスの供給圧力を保持するために設定圧力値を高く設定することができないという問題がある。
【0011】
本発明は、液化ガスが収容された容器内の圧力が外気温度に見合った圧力となるように容器内の圧力を制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の液化ガス供給装置は、上記課題を解決するため、液化ガスが収容される容器と、この容器内の液化ガスを加熱する液化ガス加熱手段と、容器内の気相部の圧力を検出する圧力検出手段と、容器の周囲の外気温度を検出する外気温度検出手段と、圧力検出手段で検出した圧力の値と外気温度検出手段で検出した外気温度の値に基づいて液化ガス加熱手段の加熱量を制御する制御部とを備え、制御部は、圧力検出手段で検出した圧力と、外気温度検出手段で検出した外気温度に対応させて予め設定された設定圧力線との偏差に応じて、液化ガス加熱手段の加熱量を制御してなることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、外気温度に応じて予め設定された設定圧力線に基づいて、容器内の圧力を制御できるため、例えば、外気温度の複数の温度領域ごとに設定圧力線を設定することにより、季節に見合った圧力制御が可能になる。ここで、制御部は、圧力検出手段で検出した圧力が外気温度における設定圧力線上の圧力値に近づくように、液化ガス加熱手段の加熱量を適宜制御する。
【0014】
この場合において、外気温度検出手段で検出した外気温度が第1の室外温度以上のとき、設定圧力線は、液化ガスの外気温度における飽和蒸気圧よりも小さな圧力に設定するものとする。これによれば、例えば設定圧力線を液化ガスの飽和蒸気圧曲線に沿って設定する場合、容器内の温度が外気温度と同じ温度になるまで液化ガスが加熱されるのに対し、室外温度が第1の室外温度以上の夏場などにおいては、容器内の温度が高温の外気温度に達する前に液化ガスの加熱が停止されるため、無駄な加熱エネルギーの消費を抑えることができ、省エネ運転を実現することができる。
【0015】
また、外気温度検出手段で検出した外気温度が第1の室外温度よりも小さい第2の室外温度以下のとき、設定圧力線は、液化ガスの外気温度における飽和蒸気圧よりも大きな圧力に設定するものとする。これによれば、室外温度が第2の室外温度以下の冬場などにおいては、容器内の圧力が低温の外気温度における飽和蒸気圧よりも高い圧力になるまで液化ガスが加熱されるため、常に液化ガスを供給するために必要な圧力を確保することができる。
【0016】
より具体的には、液化ガス加熱手段は、容器の外壁に設けられた流路と、該流路内に熱媒を循環させると共に熱媒を加熱する熱媒加熱手段とを備え、制御部は、圧力検出手段で検出した圧力の値と外気温度検出手段で検出した外気温度の値に基づいて熱媒加熱手段の動作を制御するものであり、圧力検出手段で検出した圧力が、外気温度検出手段で検出した外気温度に対応させて予め設定された第1の設定圧力線を超えると、熱媒加熱手段の運転を停止させ、第1の設定圧力よりも小さい第2の設定圧力線未満になると、熱媒加熱手段の運転を開始させてなるものとする。
【0017】
ところで、寒冷地などにおいては、冬季の朝方にガス消費量のピークがくるため、そのような場合においても所定の供給圧力を保持して安定供給を持続させることが求められている。そこで、本発明では、制御部に第1の設定圧力線と第2の設定圧力線を変更可能とする外部信号が入力されると、第1の設定圧力線と第2の設定圧力線を設定された圧力線まで変更させるようにしている。
【0018】
これによれば、液化ガス供給装置が設置される現場において、必要に応じて所定の操作を行うことにより、例えば予めプログラムされた圧力量だけ第1の設定圧力線と第2の設定圧力線を高圧側にシフトさせることができるため、ガス供給量が増加しても所定の供給圧力を保持することができる。ここで、設定圧力線を変更可能とする外部信号を出力する手段は、特に限定されるものではないが、例えば、液化ガス供給装置に設けた機器類により現場で簡単に操作できるものが好ましい。また、設定圧力線の変更量は、予め固定されていてもよいし、必要に応じて調整できるようにしてもよい。
【0019】
また、制御部からの異常信号を受けて報知する報知手段を備え、制御部は、圧力検出手段で検出した圧力が、第2の設定圧力線よりも小さい第3の設定圧力線以下になると、異常信号を制御部に出力するように構成してもよい。これによれば、異常を検出するための設定圧力値を、固定された1点又は複数点ではなく、外気温度に応じて設定することができるため、異常な圧力低下が生じた場合、より早く異常を検出することができる。そのため、故障を修理する時間をそれだけ長く稼ぐことができ、圧力低下に伴う液化ガスの供給停止を未然に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、液化ガスが収容された容器内の圧力が外気温度に見合った圧力となるように容器内の圧力を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明を適用してなる液化ガス供給装置の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる液化ガス供給装置の概略構成と動作を説明する図である。図2は、本発明を適用してなる液化ガス供給装置の圧力制御において、外気温度と容器内の設定圧力線との関係を説明する図である。なお、本実施形態では、液化ガスを収容する容器内から気相の液化ガスを所定の機器や装置類へ供給する場合の構成について説明するが、供給先の機器や装置類は特に限定されるものではない。
【0022】
本実施形態の液化ガス供給装置1は、図1に示すように、液化ガス、例えば液化石油ガス(LPG)などを収容して貯蔵するための容器3、容器3内の気相部5に連通するガス管路7、ガスの供給圧力を調整する2つの調整弁9a,9b、容器3内の圧力を検知する圧力センサ11、容器3内の底部に設置されて液化ガス加熱手段となる加熱器13、加熱器13の加熱温度を検知する温度スイッチ15、熱媒加熱手段となる熱源機17、加熱器13と熱源機17との間で熱媒、例えば水を循環させるための熱媒管路19a,19b、容器3の周囲の外気温度を検知する外気温度センサ21、そして液化ガス供給装置1の動作を制御する制御部23などで構成されている。
【0023】
容器3は、略円筒状の容器を横向きにした状態で図示しない脚部上に支持されている。このような容器3は、例えば屋外に設置されており、容器3の内部に収容された液相部25となる液相の液化ガスは、容器3が外気から受けた熱により気化する。このため、容器3の上部の気相部5には、気相の液化ガスが溜まった状態になっている。なお、図1において、容器3は断面で示している。ガス管路7は一端が容器3の上部に連通し、他端は気相の液化ガスの供給先と連通されている。
【0024】
圧力センサ11は、容器3内の気相部5の圧力を常時検出するようになっている。この圧力センサ11で検出された結果は、圧力センサ11と電気的に接続される制御部23に、電気信号として常時入力されるようになっている。この圧力センサ11としては、例えば金属ダイヤフラムと感圧素子を使用して電圧を出力する周知の半導体センサなどを使用することができる。外気温度センサ21は、容器2の周囲の外気温度を常時検出するようになっている。この外気温度センサ21で検出された結果は、外気温度センサ21と電気的に接続される制御部23に、電気信号として常時入力されるようになっている。この外気温度センサ21としては、例えばサーミスタなどの温度に応じて抵抗値が変化する素子を使用したセンサなどを使用することができる。
【0025】
加熱器13は、例えば上面が開放された金属製のケースの中に蛇腹状に屈曲させた銅などの熱伝導性の高い材料で形成した熱交換管路を配設し、この熱交換管路とケースとの間の空間に水などの熱媒やシリコンなどの熱伝達可能な充填物を充填したものである。このような加熱器13のケースの上面の縁部を容器3の底面に密着させて取り付けている。温度スイッチ15は、加熱器13のケース内の充填物の温度、つまり容器3に伝達される熱の温度を検知するように配置されている。温度スイッチ15は、例えば予め設定された2つの温度で各々に対応する信号を出力するものであり、その出力結果を電気信号として制御部23に出力するようになっている。
【0026】
熱源機17は、図示していない熱媒が通流する流路、この流路に設けられた熱媒タンク、ポンプ、流路内の熱媒を加熱するバーナ、そしてポンプやバーナの動作を制御する制御部などを一体的に筐体内に収めたものであり、市販の家庭用の給湯器や温水暖房器を利用したものである。本実施形態の熱源機17は、例えば100Vの家庭用電源に接続されており、熱源機17の制御部は、制御部23と連携して作動するものであり、制御部23と電気的に接続されている。
【0027】
熱媒管路19aは、一端が熱源機17の図示していない熱媒が通流する流路に、他端が加熱器13の図示していない蛇腹状に形成した管路に連結されており、熱媒管路19aには、熱源機17で加熱された熱媒が通流する。熱媒管路19bは、一端が加熱器13の図示していない蛇腹状に形成した管路に、他端が熱源機17の図示していない熱媒が通流する流路に連結されており、熱媒管路19bには、加熱器13で熱を放出した熱媒が通流する。
【0028】
制御部23は、圧力センサ11が検出した圧力の値と外気温度センサ21が検出した外気温度の値の入力結果に応じて熱源機17の駆動及び停止つまり熱源機17の図示していないポンプ及びバーナの発停を行い、加熱器13による容器3の加熱及び停止を行う回路、温度スイッチ15からの信号に応じて熱源機17の駆動及び停止を行う回路などを含んでいる。制御部23は、圧力センサ11からの圧力値の検出信号と外気温度センサ21からの外気温度の検出信号の入力結果に応じて熱源機17の駆動及び停止を制御することにより、加熱器13による容器3内の加熱及び停止を制御し、温度スイッチ15からの検出信号に応じて、例えば法令などに規定された温度である40℃より高い温度で加熱器13が容器3内を加熱しないように熱源機17の駆動及び停止を制御する。なお、熱媒管路19a,19bの少なくとも一方に図示しない弁を配置して、制御部23からの指令に応じて弁開度を制御することにより、熱媒循環量を制御することもできる。
【0029】
次に、このようにして構成される液化ガス供給装置の動作について説明する。
【0030】
本実施形態では、圧力センサ11からの圧力値の検出信号と外気温度センサ21からの外気温度の検出信号が制御部23に入力されると、制御部23では、図2に示すように、予め設定された2つの設定圧力線A,Bに基づいて、外気温度に応じた2つの設定圧力値を決定する。そして、容器3内の圧力が2つの設定圧力値の範囲に収まるように、熱源機17の駆動及び停止、つまり加熱器13に昇温させた熱媒を循環させる信号の発停を行う。
【0031】
図2に示すように、例えば外気温度センサ21の検出値が20℃であり、容器3からガスが供給されていない状態では、圧力センサ11の圧力検出値は、液化ガスの蒸気圧曲線C(設定圧力線Aと一致)に対応する0.63MPaを示す。その後、容器3からガス管路7を介して液化ガスの供給が開始されると、圧力検出値が下がり始め、設定圧力線B上の0.59MPaを下回ると、制御部23は熱源機17の駆動を開始する信号を熱源機17に発信する。熱源機17は、制御部23からの駆動開始の信号が入力されると、ポンプを駆動させて熱媒を循環させると共にバーナの燃焼を開始させる。これにより熱媒管路19bを通じて加熱された熱媒が加熱器13に供給される。
【0032】
加熱器13によって液化ガスの液相部25が加熱されると、容器3内では液化ガスの気化量が増加して、容器3内の圧力が昇圧される。このようにして圧力検出値が上がり始め、0.63MPaを超えたところで、制御部23は熱源機17の駆動を停止する信号を熱源機17に発信する。
【0033】
このように制御部23は、圧力センサ11で検出した検出圧力が設定圧力線Aの外気温度に応じた設定圧力値を超えると、熱源機17の駆動を停止させる信号を発信し、検出圧力が設定圧力線Bの外気温度に応じた設定圧力値未満になると、熱源機17の駆動を開始させる信号を発信するように制御する。ここで、図2に示すように、外気温度が例えば5℃以上27℃以下の範囲では、設定圧力線Aが液化ガスの蒸気圧曲線C上に乗っているため、この温度範囲(以下、中温期という。)においては、液化ガスが外気温度以上に加熱されることがないため、容器3内から容器外への放熱が抑制され、省エネルギーを実現できる。
【0034】
ところで、外気温度が高くなると容器3内の圧力は液化ガスの蒸気圧曲線Cに倣って上昇するが、容器3内の気相の液化ガスを供給先に供給するための供給圧力は、例えば0.8MPa程度あれば十分とされている。そのため、図2に示すように、外気温度が例えば27℃を超えるとき(以下、高温期という。)には、例えば容器3内の圧力が液化ガスの27℃の飽和蒸気圧を超えないように、設定圧力線Aを27℃の飽和蒸気圧の値に設定する。つまり、高温期の設定圧力線Aは、液化ガスの蒸気圧曲線Cよりも常に低い圧力となっている。また、設定圧力線Bは中温期の設定圧力線A,Bの差圧と同じ差圧になるように設定する。
【0035】
このようにすれば、液化ガスの27℃における飽和蒸気圧が0.8MPaよりもやや低い値であるため、この圧力値を設定圧力線A、つまり上限圧力とすることにより、容器3内の液化ガスを27℃以上に加熱しないように制御することが可能となる。したがって、高温期においては、液化ガスが必要以上に加熱されることがないため、省エネルギーを実現できる。
【0036】
一方、外気温度が低くなると容器3内の圧力は液化ガスの蒸気圧曲線Cに倣って降下するが、この圧力が下がりすぎると、供給圧が不足して安定供給に支障を生じるおそれがあるため、容器内の圧力は、例えば0.4MPa以上に保持する必要がある。そのため、外気温度が例えば5℃を下回るとき(以下、低温期という。)には、図2に示すように、容器3内の圧力が液化ガスの5℃の飽和蒸気圧を目安に、設定圧力線Aを5℃の飽和蒸気圧の値に設定する。つまり、低温期の設定圧力線Aは、液化ガスの蒸気圧曲線Cよりも常に高い圧力となっている。また、設定圧力線Bは中温期の設定圧力線A,Bの差圧と同じ差圧になるように設定する。
【0037】
このようにすれば、液化ガスの5℃における飽和蒸気圧が約0.4MPaであるため、この圧力値を設定圧力線Aとすることにより、容器内の圧力を0.4MPaを目安として、液化ガスを加熱する制御を行うことができる。したがって、低温期においては、容器3内の圧力が蒸気圧曲線Cに倣って下降することがなく、最もガスの使用量が多い冬季などにおいても安定したガスの供給が可能となる。
【0038】
本実施形態の液化ガス供給装置では、外気温度を低温期、中温期、高温期の3つの温度領域に区分けし、それぞれの温度領域において使用状況や省エネを考慮した設定圧力線A,Bを設定している。そして、圧力センサ11で検出した検出圧力と、外気温度センサ21の検出温度に対応する設定圧力線A,B上の設定圧力値との偏差に応じて、制御部23より熱源機17の駆動及び停止を制御する信号を出力している。したがって、低温期では、液化ガスの飽和蒸気圧よりも高い圧力を目安にして容器内を圧力制御できるため、冬季におけるガスの供給安定性を向上させることができ、中温期では、液化ガスの飽和蒸気圧を目安にして容器内を圧力制御できるため、容器内からの放熱を抑制して省エネルギー性を向上させることができ、高温期では、液化ガスの飽和蒸気圧よりも低い圧力を目安にして容器内を圧力制御できるため、夏季における液化ガスの不要な加熱を抑制し、省エネルギー性を向上させることができる。なお、設定圧力線Aと設定圧力線Bとの圧力差(デファレンシャル)は、所望の値に設定することができるが、例えば0.05MPa〜0.1MPaとすることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態では、外気温度を3つの温度領域に区分けして、それぞれの温度領域で異なる圧力制御を行っているが、これは、夏季において省エネルギー性を向上させるとともに、冬季においてガス供給圧力を安定化させるという目的からみると、3つの温度領域ごとに設定圧力線を定めることが最も効率がよく、制御が簡単になるからである。したがって、圧力制御などの目的によっては、温度領域の区分の仕方が異なってくる。因みに、高温期の設定圧力線が低すぎると、容器3の表面に結露が発生して見た目が悪くなり、さらに容器3や配管などを錆やすくなるため、本実施形態では、このような点を考慮して、高温期の設定圧力線を定めている。また、低温期では、容器内の圧力をある程度の高さに保っておけば、停電などの異常が発生した場合でも自然気化によりガスの供給時間が長くなり、ガス供給の停止を抑制できるため、本実施形態では、このような点を考慮して、低温期の設定圧力値を定めている。
【0040】
ところで、従来から使用されている機械的な構造、つまり、液化ガス供給装置の容器内に収容される液化ガスを封入した感温部と連通する圧力室と、液化ガス供給装置の容器内と連通する圧力室とを、それぞれダイヤフラムで隔離し、ダイヤフラムの動きに応じて信号を出力する構造の圧力スイッチを用いた液化ガス供給装置においては、機械的な構造に由来するメンテナンスの負担が問題となる。また、このような圧力スイッチを利用した容器内の圧力制御では、容器内の圧力が液化ガスの蒸気圧曲線に沿って変化するように制御されるため、夏季や冬季などの季節に見合った圧力制御を行うことができない。
【0041】
これに対し、本実施形態の液化ガス供給装置では、容器内の圧力を、夏季には液化ガスの蒸気圧よりも低い圧力となるように制御して省エネを行い、冬季には液化ガスの蒸気圧よりも高い圧力となるように制御して供給圧力を確保することができるため、夏季や冬季などの季節に見合った圧力制御を行うことができる。
【0042】
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用してなる液化ガス供給装置の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図3は、本発明を適用してなる液化ガス供給装置の制御部における制御盤と制御盤の蓋を開けた状態を表す斜視図である。図4は、発明を適用してなる液化ガス供給装置の圧力制御において、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bを変化させた状態を示す図である。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一のもの及び動作については同じ符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と相違する構成及び特徴部などについてのみ説明する。
【0043】
本実施形態の液化ガス化装置が第1の実施形態と相違する点は、制御部23において、予め設定された第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bのボリュームを変更する手段を備えていることにある。すなわち、本実施形態の液化ガス供給装置は、図3(a)に示すように、制御部23を収納する制御ボックスの表面に、運転ランプ31、運転スイッチ33に加えて、制御変更ボリューム35を備えている。運転ランプ31は、運転中に点灯して運転状態を表示するものであり、運転スイッチ33は、液化ガス化装置の運転を開始させるためのスイッチであり、これらは、第1の実施形態と共通するものである。これに対し、制御変更ボリューム35は、本実施形態に特有のものであり、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bの増加量を変更するためのものである。利用者は制御変更ボリューム35を矢印の方向に回転させることにより、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bを同時に所望の圧力線の高さまで変更することができる。
【0044】
このような制御ボックス37の表面を開くと、その内部には、図3(b)に示すように、圧力センサ11、温度スイッチ15、外気温度センサ21、熱源機17などにそれぞれ対応する専用の端子台39が制御部23と電気的に接続された状態で設けられ、さらに制御変更ボリューム35を機能させる専用の端子台41が制御部23と電気的に接続された状態で設けられている。図3(b)では、端子台41の接点間が配線で短絡された状態を示している。このように、端子台41を配線43で短絡させることにより、利用者は、制御変更ボリューム35を用いて、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bを所定の範囲で変更することが可能となる。
【0045】
本実施形態では、端子台41を短絡させ、制御変更ボリューム35を調整することにより、ボリュームの抵抗値の変化に応じた外部信号が制御部23へ発信される。一方、制御部23では、この外部信号に含まれる情報、つまりボリュームの抵抗値に比例して第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bの変更量が設定されるようにプログラムされているため、利用者は、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bの変更量を自在に調整することができる。このように、本実施形態では、制御変更ボリューム35を用いて第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bの上げ下げの量を可変としているが、制御変更ボリューム35を設けない構成とし、端子台41を短絡させるだけで、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bを予め設定された位置まで変更させるように構成することもできる。
【0046】
図4は、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bをすべての温度領域に対して、それぞれ0.1MPa上昇させた状態を示している。すなわち、この圧力上昇分である0.1MPaは、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bとの圧力差と同じであるため、第1の設定圧力線Aの変更後は第3の設定圧力線Dとなり、第2の圧力線Bの変更後は第1の圧力線Aとなる。これにより、所定の外気温度において、圧力センサ11の圧力検出値がその外気温度における第3の設定圧力線D上の設定圧力値となったとき、制御部23は熱源機17の駆動を停止させる信号を発信し、その後、圧力検出値が下がり始め、その外気温度における第1の設定圧力線B上の設定圧力値となったとき、制御部23は熱源機17の駆動を開始する信号を発信する。
【0047】
本実施形態によれば、液化ガス供給装置が設置される現場にて端子台41を短絡させることにより、利用者が簡単に第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bを高圧側に移動させることができる。これにより、例えば、寒冷地などの冬季の朝方などにガス使用量のピークが発生する場合、予め容器3内の圧力を上昇させておくことにより、液化ガス供給装置のガスの供給圧力を必要量確保することができ、ガスの安定供給性を向上させることができる。また、ガス使用量のピーク時をこえた後は、再び端子台41を開き、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bのボリュームを元の状態まで降下させることにより、液化ガスの余分な加熱をなくし、省エネルギー性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、例えば、液化ガスを使用する機器や装置類などが変更された場合でも、それらの機器や装置類に適した制御圧力に調整することにより、適切な供給圧力を保つことができ、液化ガス供給装置の汎用性を向上させることができる。また、本実施形態において、端子台41の接点間に例えば市販のウィークリータイマーなどを接続すれば、必要な時間だけ容器3内の制御圧力を自動的に変更することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bを同時に同じ圧力量だけ変化させるようにしているが、例えば、各々の設定圧力線に対応する制御変更ボリューム35などを設けることにより、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bを独立して調整することも可能である。また、本実施形態では、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bを変更するために、制御変更ボリューム35を使用しているが、これに代えて、例えば、予め設定された複数の設定圧力線に対応する端子台をそれぞれ制御ボックス37内に設けておき、利用者が所望の設定圧力線に対応する端子台を短絡させることにより、第1の設定圧力線Aと第2の設定圧力線Bを変更するように構成してもよい。
【0050】
(第3の実施形態)
以下、本発明を適用してなる液化ガス供給装置の第3の実施形態について図面を参照して説明する。図5は、本発明を適用してなる液化ガス供給装置の圧力制御において、外気温度と容器内の設定圧力線との関係を説明する図である。なお、本実施形態では、他の実施形態と同一のもの及び動作については同じ符号を付して説明を省略し、他の実施形態と相違する構成及び特徴部などについてのみ説明する。
【0051】
本実施形態の液化ガス供給装置が他の実施形態と相違する点は、圧力センサ11が検出した容器3内の検出圧力が外気温度に応じて設定された異常圧力値以下になると、異常が発生したことを報知する手段を備えていることにある。すなわち、本実施形態の液化ガス供給装置では、圧力センサ11の検出圧力が制御部23に入力され、制御部23において予め設定された異常圧力値以下であることを検知すると、制御部23は、制御部23と電気的に接続された所定の報知手段にブザーを鳴らせる信号を発信する。
【0052】
本実施形態では、図5に示すように、容器3内の圧力が低下して、設定圧力線E以下になると、制御部23がこれを検知して報知手段に報知信号を発信する。ここで、設定圧力線Eは、すべての温度領域に対して設定圧力線Bよりも所定の圧力だけ小さくなるように設定されている。
【0053】
ところで、従来の液化ガス供給装置において、容器3内の異常な圧力降下を検知するためには、本実施形態の圧力センサ11に加えて、別途異常検出用の圧力スイッチを設ける必要がある。しかし、このような異常検出用の圧力スイッチによって異常な圧力降下を検出する場合、異常を検出するための設定圧力値は、固定された1点しか設定できない。このため、例えば、外気温度が低い冬季に合わせて、異常検出用の設定圧力値を0.2MPaとした場合、夏季などの検出圧力が高い場合でも、0.2MPaまで容器内の圧力が下がらないとシステムの異常を検知することができないため、異常に対する処置が遅れるおそれがある。すなわち、液化ガス供給装置のシステムが正常に作動していれば、一旦下がった容器内の圧力は再び上昇するが、例えば、制御部23の故障により熱源機17を駆動させる信号が発信されなかったり、熱源機17の故障により熱媒が加熱されなかったり、或いは通常よりも多くのガスが供給先へ供給された場合、容器3内の圧力が下がり続け、この状態が放置されると、いずれは容器3内の圧力がなくなり、ガスの供給が停止する。
【0054】
これに対して、本実施形態では、外気温度に応じて設定された設定圧力線Eまで容器3内の圧力が降下したときに、圧力異常を検知して報知する。ここで、設定圧力線Eは、外気温度が例えば27℃を超える高温期には高めに設定され、外気温度が例えば5℃を下回る低温期には低めに設定され、高温期と低温期の中間となる中間期には、高温期と低温期の中間の圧力に設定されている。したがって、前述のように従来の液化ガス供給装置に比べて、いずれの外気温度においても、通常運転時の制御圧力と異常検出用の設定圧力との差圧が小さいため、その分、圧力異常を早期に検知することができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、異常発生がブザーなどにより報知されるため、利用者はシステムの異常の原因を調査し、容器内の圧力がなくなる前に対処することができる。異常を検知してからガスの供給が停止するまでの時間は、ガスの供給量や外気温度などの使用条件によって異なるが、システムの異常を早期に検知することにより、修理など対処する時間に余裕が生まれるため、ガスの供給停止を未然に防ぐことができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、従来の液化ガス供給装置のように、別途異常検出用圧力スイッチを増設する必要がないため、設備費用を低減することができる。なお、容器3内の圧力は、少なくとも約0.1MPaあれば、通常のガスの消費機器は運転を継続できるが、供給圧力が低下すると、ガス配管などが氷結して安定したガスの供給ができなくなり、或いは、ガス配管が腐食しやすくなるため、設定圧力線Eは、これらの問題を考慮した上で定める必要がある。また、本実施形態では、報知手段としてブザーを用いる例を説明したが、利用者に異常を知らせることができるものであれば、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明を適用してなる液化ガス供給装置の第1の実施形態の概略構成と動作を説明する図である。
【図2】制御部における外気温度と容器内の設定圧力線との関係を説明する図である。
【図3】本発明を適用してなる液化ガス供給装置の第2の実施形態の制御部における制御盤と制御盤の蓋を開けた状態を表す斜視図である。
【図4】本発明を適用してなる液化ガス供給装置の第2の実施形態の制御部における外気温度と容器内の設定圧力線との関係を説明する図である。
【図5】本発明を適用してなる液化ガス供給装置の第3の実施形態の制御部における外気温度と容器内の設定圧力線との関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
1 液化ガス供給装置
3 容器
5 気相部
11 圧力センサ
13 加熱器
15 温度スイッチ
17 熱源機
21 外気温度センサ
23 制御部
35 制御変更ボリューム
41 端子台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスが収容される容器と、該容器内の液化ガスを加熱する液化ガス加熱手段と、前記容器内の気相部の圧力を検出する圧力検出手段と、前記容器の周囲の外気温度を検出する外気温度検出手段と、前記圧力検出手段で検出した圧力の値と前記外気温度検出手段で検出した外気温度の値に基づいて前記液化ガス加熱手段の加熱量を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記圧力検出手段で検出した圧力と、前記外気温度検出手段で検出した外気温度に対応させて予め設定された設定圧力線との偏差に応じて、前記液化ガス加熱手段の前記加熱量を制御してなる液化ガス供給装置。
【請求項2】
前記外気温度検出手段で検出した外気温度が第1の室外温度以上のとき、前記設定圧力線は、前記液化ガスの前記外気温度における飽和蒸気圧よりも小さな圧力に設定されてなる請求項1に記載の液化ガス供給装置。
【請求項3】
前記外気温度検出手段で検出した外気温度が前記第1の室外温度よりも小さい第2の室外温度以下のとき、前記設定圧力線は、前記液化ガスの前記外気温度における飽和蒸気圧よりも大きな圧力に設定されてなる請求項1に記載の液化ガス供給装置。
【請求項4】
前記液化ガス加熱手段は、前記容器の外壁に設けられた流路と、該流路内に熱媒を循環させると共に該熱媒を加熱する熱媒加熱手段とを備え、
前記制御部は、前記圧力検出手段で検出した圧力の値と前記外気温度検出手段で検出した外気温度の値に基づいて前記熱媒加熱手段の動作を制御するものであり、
前記制御部は、前記圧力検出手段で検出した圧力が、前記外気温度検出手段で検出した外気温度に対応させて予め設定された第1の設定圧力線を超えると、前記熱媒加熱手段の運転を停止させ、前記第1の設定圧力よりも小さい第2の設定圧力線未満になると、前記熱媒加熱手段の運転を開始させてなる請求項1乃至3のいずれかに記載の液化ガス供給装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の設定圧力線と前記第2の設定圧力線を変更可能とする外部信号が入力されると、前記第1の設定圧力線と前記第2の設定圧力線を設定された圧力線まで変更させてなる請求項4に記載の液化ガス供給装置。
【請求項6】
前記制御部からの異常信号を受けて報知する報知手段を備え、
前記制御部は、前記圧力検出手段で検出した圧力が、前記第2の設定圧力線よりも小さい第3の設定圧力線以下になると、前記異常信号を前記制御部に出力してなる請求項4又は5に記載の液化ガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−96275(P2010−96275A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267641(P2008−267641)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】