説明

液圧装置および液圧装置の制御方法

【課題】液圧ポンプの応答性を高めつつ位置決め精度を高めることができる液圧装置および液圧装置の制御方法を提供することである。
【解決手段】モータ400により駆動され両方向に回転可能なポンプ450と、ポンプ450によりピストンロッド220が駆動する油圧シリンダ200と、ヘッド側ポートまたはロッド側ポートの管路に介挿された電磁弁と、直線変位計250とを備える。その結果、液圧ポンプの応答性を高めつつ位置決め精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータにより駆動される液圧ポンプからの圧液により液圧シリンダを駆動する液圧装置および液圧装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サーボモータにより直接駆動する駆動装置が用いられている。しかし、大きな駆動力を必要とする際には、モータにより駆動される液圧ポンプからの圧液を液圧シリンダに供給して、液圧シリンダにより大きな駆動力を得る液圧装置が用いられる。液圧装置では、電動モータ、液圧ポンプ、液圧タンク、制御弁等の油圧機器を必要とするため、機器の大きさが大型化する問題があり、小型化するための研究および開発が実施されている。
【0003】
特許文献1には、液圧ポンプを用いても、無負荷状態、または有負荷状態いずれにおいても、液圧シリンダのピストンロッドの位置決め精度を高めることができる液圧駆動装置の制御装置及び制御方法について開示されている。
【0004】
特許文献1記載の液圧駆動装置の制御装置では、サーボモータによって駆動される液圧ポンプ及び液圧ポンプからの圧液によってピストンロッドを移動させる液圧シリンダを有する液圧駆動装置を制御するために、ピストンロッドの位置を検出する位置センサと、サーボモータを制御する少なくとも位置制御ループを備えたモータ駆動装置と、モータ駆動装置の基準入力として、モータ駆動装置にピストンロッドを所定の目標位置に移動させるための位置指令を与える位置指令発生器とを具備し、サーボモータを駆動制御して液圧シリンダのピストンロッドを所定の位置に移動させる液圧駆動装置の制御装置であって、位置指令発生器とモータ駆動装置との間に位置指令補正器を備え、位置指令補正器は、液圧シリンダのピストンロッドが予め定めた初期目標位置に達するまでは位置指令発生器の出力をモータ駆動装置の基準入力として出力し、ピストンロッドが初期目標位置に達してから実質的に停止するのに必要な所定の位置補正待機時間が経過した後に、位置指令と位置センサの出力との偏差を位置指令に加算し、その加算結果を基準入力として出力するように構成され、位置指令補正器は、初期目標位置に到達するまでの時間及び位置補正待機時間が経過した後、予め定めた位置補正継続時間が経過するまでの間、所定のサンプリング周期で位置センサの出力と位置指令との偏差を位置指令に加算する演算動作を繰り返し、基準入力値を変更するものである。
【0005】
また、特許文献2には、回転数制御可能な電動モータにより回転する液圧ポンプを、低圧大流量の制御と高圧小流量の制御とを可能にする単一の液圧ポンプで構成し、装置全体のコンパクト化を図り得る液圧駆動装置について開示されている。
【0006】
特許文献2記載の液圧駆動装置では、回転数を制御可能な電動モータと、この電動モータにより回転され圧液を吐出する液圧ポンプと、この液圧ポンプから吐出する圧液によって駆動される液圧アクチュエータと、この液圧アクチュエータ側からフィードバックされる実際値を目標値に一致するよう電動モータの回転数を制御する制御部とを備え、液圧ポンプは、押しのけ容積を最も大きくした最大容積と、押しのけ容積を最大容積より小さくかつ零より大きくした最小容積とに切換可能に設け、液圧アクチュエータに吐出する圧液の圧力が設定圧力未満で押しのけ容積を最大容積に切換えると共に、液圧アクチュエータに吐出する圧液の圧力が設定圧力以上で押しのけ容積を最小容積に切換えるものである。
【0007】
また、特許文献3には、回転数制御可能な電動モータにより回転する液圧ポンプを単一で構成し、装置全体のコンパクト化を図り得る液圧駆動装置について開示されている。
【0008】
特許文献3記載の液圧駆動装置では、回転数を制御可能な電動モータと、この電動モータにより回転され圧液を吐出する液圧ポンプと、この液圧ポンプから吐出する圧液によって駆動される液圧アクチュエータと、この液圧アクチュエータ側からフィードバックされる実際値を目標値に一致するよう電動モータの回転数を制御する制御部とを備え、液圧ポンプは、吐出する圧液の吐出圧力と吐出量との関係を、吐出圧力の上昇に応じて吐出量が減少して馬力を略一定に制御する定馬力制御を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許4206194号公報
【特許文献2】特開2005−140175号公報
【特許文献3】特開2005−308047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1記載の液圧駆動装置の制御装置及び制御方法においては、液圧シリンダのピストンロッドの位置決め精度を高めることができると記載されているが、ループ制御を多用しており、制御系の遅延が生じるという問題がある。また、特に位置制御系および速度制御系をフィードバック回路(特許文献1の図1参照)としているため、制御系の遅延が生じる。
【0011】
また、同様に、特許文献2および3に記載の液圧駆動装置においても、サーボモータ系フィードバック(特許文献2および3の図1の符号16)を用いてモータ制御を行っているため、制御遅延が発生するという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、制御遅延を防止することができる液圧装置および液圧装置の制御方法を提供することである。
本発明の他の目的は、制御遅延を防止し、液圧ポンプの応答性を高めつつ位置決め精度を高めることができる液圧装置および液圧装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)
本発明に係る液圧装置は、モータにより駆動され両方向に回転可能な液圧ポンプと、液圧ポンプによりピストンロッドが駆動する液圧アクチュエータと、モータの駆動を制御する制御装置と、液圧アクチュエータのピストンロッド変位を検出する変位検出器と、を含み、制御装置は、モータの回転変動の微分成分および、変位検出器の比例成分および積分成分に基づいてフィードバック回路を用いず、モータの駆動を制御するものである。
【0014】
この場合、液圧アクチュエータのピストンロッド変位を検出する変位検出器からの情報を用いて比例成分および積分成分に基づいて制御を行うので、精度のよい制御を行うことができる。すなわち、直接制御対象となるピストンロッドの変位検出を行うことにより位置決め精度を高めることができる。また、サーボモータ系のフィードバック回路を用いないので、制御系の遅延を防止することができる。その結果、液圧ポンプの応答性を高めつつ位置決め精度を高めることができる。
【0015】
(2)
液圧装置において、制御装置は、コントローラとサーボドライバとからなり、サーボドライバは、増幅機能のみを有し、フィードバック系ループを有しないものである。
【0016】
この場合、サーボドライバは、増幅機能のみを有し、フィードバック系ループを用いないので、制御系の遅延を防止することができる。その結果、液圧ポンプの応答性を高めつつ位置決め精度を高めることができる。
【0017】
(3)
液圧装置において、ピストンロッドの荷重データを検出する荷重データ検出器を、さらに備え、制御装置は、荷重データ検出器の荷重データをさらに含めてモータの駆動を制御してもよい。
【0018】
この場合、荷重データとして、ロードセル、バネ変位、変位センサ等を用いて微小な変位を検出することができる。その結果、液圧装置においては、微小な変位であっても、大きな圧力変化を生じさせて、液圧装置の位置決め精度を高めることができる。
【0019】
(4)
液圧装置において、モータ、液圧ポンプおよび液圧アクチュエータは、モータポンプ一体型シリンダであってもよい。
【0020】
この場合、モータ、液圧ポンプおよび液圧アクチュエータは、モータポンプ一体型シリンダであるので、液圧装置の小型化を実現することができる。
【0021】
(5)
第2の発明に係る液圧装置の制御方法は、液圧装置を制御する制御方法であって、液圧ポンプを駆動するモータの回転変動の微分成分を抽出する第1工程と、液圧ポンプにより駆動される液圧アクチュエータのピストンロッド変位を検出する変位検出器の比例成分を抽出する第2工程と、変位検出器の積分成分を抽出する第3工程と、に基づいてモータの駆動を制御するものである。
【0022】
この場合、液圧アクチュエータのピストンロッド変位を検出する変位検出器からの情報を用いて比例成分および積分成分に基づいて制御を行うので、精度のよい制御を行うことができる。すなわち、直接制御対象となるピストンロッドの変位検出を行うことにより位置決め精度を高めることができる。また、サーボモータ系のフィードバック回路を用いないので、制御系の遅延を防止することができる。その結果、液圧ポンプの応答性を高めつつ位置決め精度を高めることができる。
【0023】
(6)
液圧装置の制御方法において、液圧装置の制御方法は、第1工程、第2工程および第3工程の全成分に基づいてモータの駆動を制御する第1制御工程と、第1制御部からの制御信号を増幅のみする第2制御工程と、を有するものである。
【0024】
この場合、第2制御工程においては、増幅機能のみを有し、フィードバック系ループを用いないので、制御系の遅延を防止することができる。その結果、液圧ポンプの応答性を高めつつ位置決め精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態にかかる液圧装置の一例を示す模式図である。
【図2】電磁弁を制御するコントローラの処理を説明するフローチャートである。
【図3】従来の液圧装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、配管をマニホールド化することにより、ポンプ、モータ、油圧シリンダを一体化したモータポンプ一体型シリンダについて説明を行う。
【0027】
(一実施の形態)
まず、図1は本実施の形態にかかる液圧装置100の一例を示す模式図である。
【0028】
(液圧装置の概略)
図1に示す液圧装置100は、主に、油圧シリンダ200、直線変位計250、電磁弁300、モータ400、エンコーダ420、圧力計430、ポンプ450、コントローラ500およびタンク600を含む。
【0029】
図1のコントローラ500は、アンプ510、B軸入力回路520、A軸入力回路540、演算回路550、出力回路560および増幅器570を含む。演算回路550は、例えば、CPU(中央制御装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムメモリ)等からなる。
なお、図1に示したアンプ510、増幅器570は、コントローラ500と一体化せず、別途配設させてもよい。
【0030】
油圧シリンダ200は、複動シリンダからなり、ピストン210およびピストンロッド220を備える。ピストン210およびピストンロッド220の少なくとも一方には、直線変位計250が取り付けられている。ここで、直線変位計250は、磁歪式センサからなる。直線変位計250は、油圧シリンダ200のピストンロッド220の出方向および戻方向の変位を直接検出できるよう配設されている。
【0031】
図1に示すように、圧力計430の圧力データがアンプ510により増幅され、アンプ510は、増幅した圧力データをB軸入力回路520に与え、B軸入力回路は、所定の処理を施し、演算回路(PID制御)550に圧力データを与える。なお、当該所定の処理は、荷重制御系に関する処理である。
【0032】
一方、エンコーダ420は、モータ400の駆動変位を検出し、検出データをA軸入力回路540に与え、A軸入力回路540は、駆動変位の検出データの微分成分を微分データ(D)として演算回路(PID制御)550に与える。
直線変位計250は、油圧シリンダ200の出方向および戻方向の変位を検出し、検出データをA軸入力回路540に与え、A軸入力回路540は、当該検出データの比例成分を比例データ(P)として、当該検出データの積分成分を積分データ(I)として演算回路(PID制御)550に与える。なお、当該処理は、位置制御系に関する処理である。
【0033】
演算回路(PID制御)550は、圧力データ、位置の比例データ、位置の積分データ、駆動変位の微分データを演算し、演算結果データを出力回路560に与える。出力回路560は、演算結果データをモータ制御信号(トルク信号)に変換し、増幅器570に与える。増幅器570は、モータ制御信号(トルク信号)を増幅させ、モータ400に与える。モータ400は、モータ制御信号に基づいて駆動する。また、演算回路(PID制御)550は、電磁弁300のソレノイドに電磁弁開閉信号を出力する。電磁弁300は、電磁弁開閉信号に基づいて、弁の開閉を行う。
【0034】
なお、図1には、記載していないが、エンコーダ420の出力を増幅器570に与えて、モータ400の励磁制御に用いてもよい。
【0035】
(油圧シリンダの動作)
以下、油圧シリンダ200の動作について簡略に説明を行う。まず、コントローラ500からのモータ制御信号OFに応じてモータ400が回転し、当該モータ400の回転に応じてポンプ450が駆動する。なお、本実施の形態においては、少なくともポンプ450は、正逆回転が可能である。また、さらにモータ400も正逆回転が可能であってもよい。すなわち、ポンプ450およびモータ400のうち少なくとも一方、または両方が正逆回転可能であってもよい。また、モータ400およびポンプ450を複数設けてもよい。
【0036】
油圧シリンダ200は、ロッド側ポートRPおよびヘッド側ポートHPを備え、ポンプ450から電磁弁300を介してヘッド側ポートHPに圧油が送り込まれた場合、ピストンロッド220が伸び、ロッド側ポートRPからポンプ450に戻される。図1および図2に示すように、この状態を油圧シリンダ200のピストンロッド220が出方向である、という。
【0037】
一方、ポンプ450から電磁弁300を介してロッド側ポートRPに圧油が送り込まれた場合、ピストンロッド220が縮み、ヘッド側ポートHPから圧油がポンプ450およびタンク600に戻される。図1および図2に示すように、この状態を油圧シリンダ200のピストンロッド220が戻方向である、という。
以上のように、油圧シリンダ200のピストンロッド220は、出方向または戻方向に複動する。また、油圧シリンダ200のピストンロッド220には、重量物(図示省略)が連結されており、当該重量物を移動させるために、油圧シリンダ200のピストンロッド220が出方向または戻方向に複動する。なお、本実施の形態において、ピストンロッド220の体積分の差分が生じるので、タンク600から油量の供給または排出を制御することで、当該差分を吸収し制御する。
【0038】
(電磁弁制御処理)
以下、図1に示した電磁弁300の制御例について説明する。図2は、電磁弁300を制御するコントローラ500の処理を説明するフローチャートである。
【0039】
図2に示すように、まず、エンコーダ420を用いて、モータ400の回転方向を検出する(ステップS1)。ここで、モータ400の回転方向が戻り方向である場合、油圧シリンダ200のピストンロッド220の進行方向を直線変位計250により検出する(ステップS2)。
【0040】
ここで、直線変位計250からの検出結果が、油圧シリンダ200のピストンロッド220の進行方向が出方向であると判定された場合、油圧シリンダ200に外乱が発生しているとして、コントローラ500は、電磁弁300を閉制御する(ステップS3)。すなわち、戻り方向に電磁弁300を制御しているにも関わらず、油圧シリンダ200のピストンロッド220が逆方向に移動しているため、電磁弁300を閉塞し、油圧シリンダ200のピストンロッド220の動きを抑制する。
【0041】
一方、油圧シリンダ200のピストンロッド220の進行方向が戻方向であると判定された場合、油圧シリンダ200のピストンロッド220の速度が所定値SAより大きいか否かを判定する(ステップS4)。油圧シリンダ200のピストンロッド220の速度が所定値SAより大きい場合、電磁弁300のヘッド側の電磁弁300を開制御する(ステップS5)。
それにより、ヘッド側の電磁弁300を介して、油量の一部がヘッド側からタンク600側に戻される。したがって、ヘッド側からポンプ450へ戻される油量が減るので、ポンプ450からロッド側へ送る油量を減らすことができる。
【0042】
一方、油圧シリンダ200のピストンロッド220の速度が所定値SAより小さい場合、電磁弁300のロッド側およびヘッド側の電磁弁300を閉制御する(ステップS3)。それにより、油量の全てがヘッド側ポートHPからポンプ450へ流れ、ポンプ450から送出された油量がロッド側ポートRPに流れ、油圧シリンダ200の速度を高めることができる。
【0043】
一方、ステップS1の処理において、エンコーダ420によりモータ400の回転方向が出方向であると判定された場合、油圧シリンダ200のピストンロッド220の進行方向を直線変位計250により検出する(ステップS12)。
【0044】
ここで、直線変位計250からの検出結果が、油圧シリンダ200のピストンロッド220の進行方向が戻方向であると判定された場合、油圧シリンダ200に外乱が発生しているとして、コントローラ500は、電磁弁300を閉制御する(ステップS3)。
【0045】
一方、油圧シリンダ200のピストンロッド220の進行方向が出方向であると判定された場合、油圧シリンダ200のピストンロッド220の速度が所定値SB以下か否かを判定する(ステップS14)。油圧シリンダ200のピストンロッド220の速度が所定値SB以下の場合、ロッド側の配管に関する電磁弁300を開制御する(ステップS15)。それにより、タンク600から電磁弁300を介してポンプ450から油量をヘッド側に供給できるので、油圧シリンダ200のピストンロッド220の速度を所定値SBに合わせることができる。
一方、油圧シリンダ200のピストンロッド220の速度が所定値SBより大きい場合、電磁弁300のロッド側およびヘッド側の電磁弁300を閉制御する(ステップS3)。
【0046】
以上のように、液圧装置100においては、油圧シリンダ200のピストンロッド220の微小な変位で急激に圧力が変化するため、高速応答できる制御系が必要となる。さらに、ハンチングまたは不感帯の問題からピストンロッド220の動きが非線形であることから、直線変位計250を用いることにより、確実に検出を行うことができる。
【0047】
次いで、図3は、サーボモータ系フィードバック回路を有する従来の液圧装置の一例を示す模式図である。
【0048】
図3に示すように、従来の液圧装置900は、重量物900Wを移動させるものであり、液圧装置900は、液圧ポンプ901および複動シリンダ903を駆動させるために、サーボモータ系フィードバック回路を有する。
【0049】
サーボモータ系フィードバック回路は、液圧ポンプ901、サーボモータ902、複動シリンダ903、回転数検出センサ914、サーボモータドライバ916、圧力検出センサ917、コントローラ919、位置検出センサ920を含む。
【0050】
図3に示すサーボモータ系フィードバック回路では、ロータリエンコーダ等の回転数検出センサ914がサーボモータ902の回転数を検出し、検出したサーボモータ902の実際の回転数をフィードバック配線でサーボモータドライバ916にフィードバックする。
【0051】
圧力検出センサ917は第1流路905に配設され、複動シリンダ903のヘッド側ポートに供給する圧液の圧力を検出して、検出した圧力の実際値をフィードバック配線でコントローラ919にフィードバックする。
【0052】
位置検出センサ920は複動シリンダ903のピストンロッドの位置を検出し、ここでは位置の変位に応じたパルスを出力するリニアスケールを用い、検出した位置の実際値をフィードバック配線でコントローラ919にフィードバックする。
【0053】
コントローラ919はフィードバック配線よりフィードバックされる位置の実際値を動作指令として入力する位置の目標値に一致するようサーボモータドライバ916に位置指令(回転数を指令する)を出力すると共に、フィードバック配線よりフィードバックされる圧力の実際値を動作指令として入力する圧力の目標値に一致するようサーボモータドライバ916に圧力指令(回転数を指令する)を出力する。
【0054】
サーボモータドライバ916は、フィードバック配線よりフィードバックされるサーボモータ902の回転数がコントローラ919より入力される位置指令または圧力指令に一致するようサーボモータ902の回転数を制御する。そして、サーボモータドライバ916とコントローラ919とで制御部を構成する。
【0055】
以上の図3に示したように、サーボモータドライバの位置成分のループ回路を有する液圧装置900、または、サーボモータ系フィードバック回路のループ回路を有する液圧装置等においては、制御系の遅延が生じる。すなわち、サーボモータ系フィードバック回路による時間的遅れが発生する。
なお、当該時間遅れを最小限にしようと制御しても、サーボモータが追従しない状態が生じる。
【0056】
しかしながら、本実施の形態にかかる液圧装置100においては、コントローラ500において、増幅器570がモータ制御信号(トルク信号)のみを増幅する機能を有するので、従来使用されているサーボモータ系フィードバック回路(位置および速度信号)が形成されず、制御系の遅延を防止することができる。
【0057】
また、液圧装置100においては、油圧シリンダ200のピストンロッド220の微小な変位で急激に圧力が変化するため、高速応答できる制御系が必要となる。さらに、ハンチングまたは不感帯の問題からピストンロッド220の動きが非線形であっても、直線変位計250による直接的な位置の検出精度を向上させることができる。
【0058】
以上の本実施の形態においては、油圧シリンダ200のシリンダ変位を検出する直線変位計250から得られる比例成分および積分成分を用いるので、精度のよい制御を行うことができる。すなわち、直接制御対象となるピストンロッド220の変位検出を行うことにより位置決め精度を格段に高めることができる。さらに、圧力計430からの微分成分を用いて制御を行うので、急激な変動にも対応させることができる。
【0059】
また、上述したように、サーボモータ系のフィードバック回路を用いないため、制御系の遅延を防止することができる。その結果、液圧装置100において、油圧シリンダ200の応答性を高めつつ位置決め精度を高めることができる。
【0060】
本発明においては、モータ400がモータに相当し、ポンプ450が液圧ポンプに相当し、油圧シリンダ200が液圧アクチュエータおよびモータポンプ一体型シリンダに相当し、コントローラ500が制御装置、第1制御工程に相当し、少なくとも演算回路550がコントローラに相当し、増幅器570がサーボドライバ、第2制御工程に相当し、液圧装置100が液圧装置に相当し、電磁弁300が電磁弁に相当し、直線変位計250が変位検出器、変位センサ、および磁歪式センサに相当し、微分データ(D)が第1工程に相当し、比例データ(P)が第2工程に相当し、積分データ(I)が第3工程に相当する。
【0061】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0062】
100 液圧装置
200 油圧シリンダ
250 直線変位計
300 電磁弁
400 モータ
450 ポンプ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動される液圧ポンプと、
前記液圧ポンプによりピストンロッドが駆動する液圧アクチュエータと、
前記モータの駆動を制御する制御装置と、
前記液圧アクチュエータのピストンロッド変位を検出する変位検出器と、を含み、
前記制御装置は、
前記モータの回転変動の微分成分および、前記変位検出器の比例成分および積分成分に基づいて前記モータの駆動を制御することを特徴とする液圧装置。
【請求項2】
前記制御装置は、コントローラとサーボドライバとからなり、
前記サーボドライバは、増幅機能のみを有し、フィードバック系ループを有しないことを特徴とする請求項1記載の液圧装置。
【請求項3】
前記ピストンロッドの荷重データを検出する荷重データ検出器を、さらに備え、
前記制御装置は、前記荷重データ検出器の荷重データをさらに含めて前記モータの駆動を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の液圧装置。
【請求項4】
前記モータ、前記液圧ポンプおよび前記液圧アクチュエータは、モータポンプ一体型シリンダであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の液圧装置。
【請求項5】
液圧装置を制御する制御方法であって、
液圧ポンプを駆動する前記モータの回転変動の微分成分を抽出する第1工程と、
前記液圧ポンプにより駆動される液圧アクチュエータのピストンロッド変位を検出する変位検出器の比例成分を抽出する第2工程と、
前記変位検出器の積分成分を抽出する第3工程と、に基づいて前記モータの駆動を制御する液圧装置の制御方法。
【請求項6】
前記液圧装置の制御方法は、
前記第1工程、第2工程および第3工程の全成分に基づいて前記モータの駆動を制御する第1制御工程と、
前記第1制御部からの制御信号を増幅のみする第2制御工程と、を有する請求項5に記載の液圧装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−19426(P2013−19426A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150552(P2011−150552)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(394007849)株式会社堀内機械 (7)
【Fターム(参考)】