説明

液晶形成用乳化剤およびこれを含有する液晶形成乳化組成物並びに化粧料

【課題】
角質細胞間脂質に類似の液晶構造を形成し、皮膚に塗布されている間も液晶構造を安定に保持し、高いスキンケア効果を発揮するとともに製剤化が容易な、新規液晶形成用乳化剤、液晶形成乳化組成物および化粧料を提供することを課題とした。
【解決手段】
ステロール、ポリオキシエチレンステロール類およびレシチンを必須成分で含有する新規液晶形成用乳化剤を含有した液晶形成組成物および化粧料は、角質細胞間脂質と類似の液晶構造を形成し、本組成物を皮膚に塗布した時に水分の蒸散を液晶が抑えることにより優れたスキンケア効果や皮膚状態改善効果を示すことを見出し、課題を解決することが出来た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶形成用乳化剤およびそれを含有する液晶形成乳化組成物並びに化粧料に関し、さらには、安定でスキンケア効果に優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
肌を過乾燥などの過酷な外部環境から保護し、かつ、荒れ肌や乾燥肌などを予防あるいは改善し、さらには、加齢による皮膚の老化を防止する目的で、各種の油性原料を界面活性剤により乳化し、加えてグルセリン、ヒアルロン酸あるいはアミノ酸などの保湿剤や、ビタミンEなどの皮膚栄養剤を配合した化粧料が広く使用されてきた。
【0003】
これらの化粧料は、油および水を含む乳化層が皮膚上に塗布されることで、外部の刺激から皮膚を保護し、皮膚内部からの水分の蒸散を防ぐとともに、肌に一定量の水分を与えることで、荒れ肌や乾燥肌の改善に寄与している。
【0004】
ただし、これら従来技術による化粧料は、以下の点で不十分である。
(1)従来の化粧料は、主に、油が界面活性剤により乳化ミセルを形成し、連続相である水相に分散した水中油型(以下O/W型)構造であるので、これらを皮膚に塗布した場合、連続相である水は、短時間で蒸発飛散してしまい、十分な保湿効果を肌に及ぼすことができない。
(2)水分の蒸発飛散にともない乳化物が破壊されるため、含有する保湿剤や皮膚栄養剤を十分に皮膚内部へ浸透させることができず、望むべき効果を発揮させることができない。
(3)O/W型の従来の化粧料に使用される乳化剤は、親水性が高く、得られる乳化物は、水に溶解しやすい(耐水性が悪い)。したがって、これら高親水性の乳化剤で調製された化粧料を皮膚に塗布した場合、汗などで流れやすく、効果の持続性に乏しい。
(4)一方、化粧料には、連続相である油相に水が分散した油中水型(以下W/O型)構造も見られるが、これは、肌に塗布した感触がオイリーであり、使用感に問題がある。
【0005】
近年これらの問題を解決する目的で、皮膚に対して親和性が大きく保湿効果や荒れ肌改善効果に優れた、角質細胞間脂質と類似の液晶構造をもつ液晶型の化粧料が提案されている。具体的には、天然あるいは合成のセラミドに高級脂肪酸、高級アルコール、糖脂質、コレステロールなどの両親媒性物質を組み合わせて、角質細胞間脂質に近い液晶構造を形成させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
この技術は、セラミドが層状の液晶構造(ラメラ液晶構造)を形成し、内部に水分を結合水として保持することで、角質細胞の接着や水分保持に寄与する特性を利用している(非特許文献1、2参照)。
【0007】
ただし、この技術には、以下に示す問題点があり、満足すべき結果が得られていない。
(1)セラミドは、天然品および合成品も含めて結晶化しやすく、かつ、一般に化粧料に使用されている油性原料や溶剤に溶けにくい。したがって、製剤化が困難であり、しかも、経時的に製剤中で結晶化し、品質を損なうなどの問題を生じる。
(2)セラミド自体には乳化力がなく、また、乳化物中で結晶として析出することが懸念され、これを解決するために、種々の親水性界面活性剤を使用する必要があり、それらの皮膚刺激性が懸念される。
(3)さらに、非常に高価である。
【0008】
その他に液晶組成物を化粧料に配合する特許として、親水性界面活性剤、ステロールおよびα−グリセリルアルキルエーテルが形成する発色性液晶組成物の技術が開示されている(特許文献2〜5参照)。しかしこれらは、発色することが特長であり、スキンケア効果については疑問である。
【0009】
また、一般に液晶構造を利用してスキンケア効果を高める技術においては、製剤が皮膚に塗布・適用されている間、その液晶構造を安定に保持していることが必要である。皮膚上で液晶構造が消失すると、結晶水による継続的な保湿効果の発現などの液晶化粧料に期待される機能が失われる。
【0010】
従来の技術は、皮膚に塗布すると、皮膚の温度や適用している間の水分蒸散などで液晶構造が消失する。適用中に皮膚上で液晶構造を安定に保つ技術は見出されていない。したがって、セラミドなどの高価でかつ製剤化のしにくい成分を使用することなく、肌を過乾燥などの過酷な外部環境から保護し、かつ、荒れ肌や乾燥肌などを予防あるいは改善しうる化粧料(皮膚状態改善型の化粧料)が望まれている。
【非特許文献1】The journal of investigative dermatology,vol.96(6),845−851(1991)
【非特許文献2】International journal of cosmetic science,19,143−156(1997)
【特許文献1】特開平06−345633号
【特許文献2】特許2929318号
【特許文献3】特許3133399号
【特許文献4】特許2949451号
【特許文献5】特許2964272号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は角質細胞間脂質に類似の液晶構造を形成し、皮膚に塗布されている間も液晶構造を安定に保持し、高いスキンケア効果を発揮するとともに製剤化が容易な、新規液晶形成用乳化剤、それを含有する液晶形成乳化組成物および化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本課題に対し、新規な化粧料を見出すために鋭意研究を行った結果、ステロール、ポリオキシエチレンステロール類およびレシチンを必須成分として含有する乳化剤を含有した組成物および化粧料は、角質細胞間脂質と類似の液晶構造を形成し、上記課題を解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶形成用乳化剤を含有する液晶形成乳化組成物または化粧料を皮膚に塗布した時に水分の蒸散を液晶が抑えることにより優れたスキンケア効果や皮膚状態改善効果を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に使用される(A)成分のステロールは、コレステロール、コレスタノール、ラノステロール、デヒドロコレステロールなどの動物性ステロール、βシトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、エルゴステロールなどの植物性ステロール、ミコステロール、チモステロールなどの微生物由来のステロール類などが挙げられる。これらは、そのままでも、安定化のために水素添加などの化学処理を施されていてもよい。また、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で特に好ましいのは、コレステロール、コレスタノール、植物ステロール、植物スタノールである。
【0015】
本発明に使用される(B)成分としては、上記のステロールにエチレンオキサイドを付加し、ポリオキシエチレンステロールエーテルとしたもので、具体的には、植物性ステロールおよびその水素添加物(植物性スタノール)、動物性コレステロールおよびその水素添加物(動物性スタノール)などが挙げられる。ステロール類に対するエチレンオキサイドの付加モル数は、n=3〜100、好ましくはn=5〜50、さらに好ましくはn=10〜30である。
【0016】
本発明に使用される(C)成分としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチンなどのレシチン類、これらのレシチン類を酵素処理によりモノアシル体としたリゾレシチンおよびまたは水素添加リゾレシチン、ヒドロキシル化したヒドロキシレシチンなどを挙げることができる。また、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリンなどのレシチン中のリン脂質分画物もそれぞれ単品およびまたは混合して使用できる。
【0017】
本発明において、(A)〜(C)成分の比率(質量比)は、(A)/(B)=10/90〜90/10が好ましく、より好ましくは、(A)/(B)=20/80〜80/20、さらに好ましくは、(A)/(B)=20/80〜40/60である。
【0018】
また、(A)成分と(B)成分の合計と(C)成分の比率(質量比)は、[(A)+(B)]/(C)=98/2〜70/30が好ましく、より好ましくは、[(A)+(B)]/(C)=95/5〜70/30、さらに好ましくは、[(A)+(B)]/(C)=90/10〜75/25である。この範囲において、液晶形成乳化組成物および化粧料がより安定に調製できる。
【0019】
本発明の液晶形成乳化剤は、(A)〜(C)成分のみで構成されても良く、あるいは油性原料を併用することもできる。(A)〜(C)成分の含有量は液晶形成乳化組成物全量または化粧料全量に対し、0.1〜30質量%を含有することが好ましい。より好ましくは、0.3〜20質量%、さらに好ましくは、0.5〜10質量%である。この範囲であれば液晶形成用乳化剤/スクワラン/水の系において、好ましいラメラ液晶やヘキサゴナル液晶が形成される。
【0020】
本発明の液晶形成用乳化剤が(A)〜(C)成分と油性原料とを併用する場合、両者の好ましい混合比率(質量比)は、油性原料/[(A)〜(C)成分の合計量]=10/0.1〜0.1/10、より好ましくは、10/0.5〜0.5/10、さらに好ましくは、10/1〜1/10である。
【0021】
油性原料は、一般に化粧品に使用される油性原料なら何れも好適に使用できる。具体的には、スクワラン、流動パラフィンなどの炭化水素類、オリーブ油、マカデミアンナッツ油、ホホバ油などの植物油、牛脂などの動物油、トリイソオクタン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、パルミチン酸イソオクチルなどのエステル類、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、シクロメチコンなどのシリコーン類などが挙げられる。
【0022】
本発明の液晶形成用乳化剤を含有する液晶形成乳化組成物および化粧料における液晶構造の有無は、液晶組成物を偏光顕微鏡で観察することで確認することができる。液晶組成物は、偏光顕微鏡での観察で、ラメラ液晶に独特の形状であるマルターゼクロス像が確認できる。また、樹脂泡埋超薄切法や凍結切片法による透過型電子顕微鏡(TEM)で液晶構造を確認することができる。
【0023】
本発明の液晶形成用乳化剤を含有する液晶形成乳化組成物および化粧料は、その構造中に多量の結合水を保持していることが特徴であるが、その結合水量は、熱分析(DSC分析)により測定することができる。具体的には、試料中の含水量を変え、おのおの凍結した状態からのDSC分析で得た融解熱総量(吸熱エンタルピーΔH)を縦軸にプロットし、それぞれ水分の実配合量(カールフィッシャー法などで実測する)を横軸にプロットしたときの縦軸と横軸の交点を求め、その値を結合水量とする。
【0024】
本発明の液晶形成乳化組成物および化粧料には、一般に化粧品に使用される界面活性剤、高級アルコール、脂肪酸、活性成分、保湿成分、抗菌成分、粘度調整剤、色素、香料などを併用することができる。
【0025】
これらを例示すると、界面活性剤としては、POEソルビタンモノオレート、POEソルビタンモノステアレートなどのPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレートなどのPOEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレートなどのPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレート、POEモノイソステアレートなどのPOE脂肪酸エステル類、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEステアリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類、POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類などのノニオン界面活性剤、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウムなどの脂肪酸セッケン類、ラウリル硫酸ナトリウム、POEラウリル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル類、ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイル−N−メチルタウリンナトリウム、ラウリルグルタミン酸ナトリウムなどのアシル化アミノ酸塩類、モノラウリルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩などのアニオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩などのカチオン界面活性剤など。
【0026】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコールなど。
【0027】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸など。
【0028】
活性成分としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、エラグ酸、ルシノールなどの美白剤、アミノ酸などのNMF成分、水溶性コラーゲン、エラスチン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、セラミドなどの肌荒れ防止剤、レチノール、ビタミンA酸などの抗老化剤や各種ビタミン類やその誘導体など。
【0029】
保湿成分としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0030】
本発明の液晶形成乳化組成物および化粧料を調製する際は、パドルミキサー、ホモミキサーなどの通常の乳化装置が使用できる。調製法は、予め、油性原料と(A)〜(C)成分を、50〜120℃で融解混合しておき、ホモミキサーなどで攪拌下、50〜80℃の温水を投入する方法、または、予め、油性原料と(A)〜(C)成分を、50〜120℃で融解混合しておいたものを、ホモミキサーなどで攪拌下、50〜80℃の温水中に投入する方法などが挙げられる。
【0031】
本発明の液晶形成乳化組成物および化粧料は、保湿クリーム、エモリエントクリーム、マッサージクリーム、保湿美容液、保湿ローション、エモリエント乳液などのスキンケア化粧料、または、軟膏などの皮膚治療薬などに好適に使用できる。
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
(1)液晶形成用乳化剤の調製
下記表1に示す液晶形成用乳化剤を調製した。すなわち、ヒーターおよび温度調節器の付いたステンレス製混合容器中で、表1に記載の成分を70〜75℃で攪拌しながら混合、溶解後、常温まで冷却し液晶形成用乳化剤を得た。
【0034】
(2)液晶形成乳化組成物の調製
下記表1に示す液晶形成用乳化剤を用いて、下記表2に示す液晶形成乳化組成物を調製した。すなわち、減圧装置とヒーターおよび温度調節器の付いた10リッターかき取り攪拌付きステンレス製ホモミキサー中で、水以外の成分を85〜90℃で混合、溶解し、減圧下(30mmHg以下)、攪拌しながら(攪拌速度5000rpm)、これに同温度の水を徐々に添加した。さらに、同条件で30分間攪拌し、室温まで冷却し液晶形成乳化組成物を得た。液晶形成乳化組成物の調製スケールは、5Kgとした。
【0035】
(3)液晶構造の確認
液晶形成乳化組成物をスライドガラス上に薄く延ばした試料を、ホットステージ付き偏光顕微鏡を用いて、25℃と皮膚温度付近の32℃で観察を行った(倍率200倍)。試料のマルターゼクロス像を観察し、マルターゼクロス像を確認できるものを○、できないものを×とした。
【0036】
(4)皮膚上での液晶構造の確認
液晶形成乳化組成物を、40歳男性の前腕部内側に塗布して(20μg/cm)、室温で6時間放置した後、スライドガラス上に転写し試料とした。それを(3)の方法により偏光顕微鏡観察を行い(25℃)、液晶構造の有無を確認した。
【表1】

【表2】

【0037】
その結果、表2に示すように、本発明の液晶形成乳化組成物は、32℃の皮膚温度付近で光学異方性をもつ液晶構造を有していた。かつ、本発明の液晶形成乳化組成物は、皮膚に塗布して6時間後も液晶構造を安定に保っていた。
【実施例2】
【0038】
表3に示す液晶形成乳化組成物を調製し、結合水量を測定した。液晶形成乳化組成物の調製は、実施例1の(2)液晶形成乳化組成物の調製の方法に準じた。結合水量の測定は、表3に示すように、組成中の水分量を変えた試料(水分量20、30、40、50および60%)の融解時の吸熱エンタルピーを示差熱分析計(DSC)により測定し、その値と試料中に含有する水の全量(カールフィシャー法で測定)との回帰直線から求めたy−切片の値から推算した。
【0039】
その結果、表3に示すように、本発明の液晶形成乳化組成物は、比較例の約2倍量の結合水を含有していた。
【表3】

【実施例3】
【0040】
表2に示す本発明品12の液晶形成乳化組成物と比較品(乳化組成物)8を用いて、保湿試験を行った。方法は、22℃ 相対湿度45%に調整した恒温・恒湿室で15分間待機したボランティア男女6名(25−45歳)の前腕部内側に、本発明品と比較品をそれぞれ2.5mg/cm塗布した。塗布後、同条件で15、30、45、60分経過後の塗布部位の皮膚コンダクタンスを、SKICON 200により測定することで保湿効果を評価した。
【0041】
その結果、図1に示すように、試料塗布1時間後の皮膚コンダクタンスは、本発明品12で100.0μS±9.6であり、一方、比較例8では61.2μS±8.2であった。本発明品は、比較品に対して有意に皮膚コンダクタンスを上昇させることがわかった。したがって、本発明品の保湿効果が確認された。

【実施例4】
【0042】
表2に示す本発明品12の液晶形成乳化組成物と比較品(乳化組成物)8を用いて、角質水分蒸散量(TEWL)の測定試験を行った。男性ボランティア(28―55歳)12名を用いて、本発明品12および比較品8の長期連用(21日間)によるTEWL低下効果を評価した。試料の塗布部位は大腿部内側とし、塗布回数は2回/日とした。塗布開始前および塗布開始1、2、3週間経過後の塗布部位のTEWLをキュートメーターにより測定した。なお、測定は、22℃、相対湿度45%に調整した恒温・恒湿室で行った。
【0043】
その結果、図2に示すように、2週間および3週間の連用において、本発明品12を塗布した部位のTEWLが、比較品に対し有意に減少している結果が得られ、本発明品の皮膚改善効果が確認された。

【実施例5】
【0044】
モイストクリーム
A 大豆ステロール 1.0質量%
POE(20)大豆ステロール 2.0
水素添加大豆レシチン 1.0
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 5.0
スクワラン 4.0
トリエチルヘキサノイン 3.0
セチルアルコール 6.0
シクロペンタシロキサン 4.0
ジメチコン(6mm/s) 2.0
B カーボポール980(2%水溶液) 10.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
グリセリン 3.0
L−ヒドロキシプロリン 0.1
EDTA−2Na 0.05
防腐剤 適量
精製水 残部
C アルギニン 0.2
精製水 3.0
D ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) 2.0
精製水 2.0
(調製方法)
A、Bをそれぞれ80℃まで加温し、均一にする。80℃でBをホモミキサーで撹拌しながらAを徐々に添加して乳化する。その後、パドルで撹拌しながら冷却し、50℃でC、Dを添加し、35℃で調製を終了する。
【実施例6】
【0045】
モイストエッセンス
A 大豆ステロール 0.5質量%
POE(20)大豆ステロール 0.7
POE(10)大豆ステロール 0.3
水素添加大豆レシチン 0.5
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 2.0
スクワラン 1.0
トリエチルヘキサノイン 0.5
エチルヘキサン酸セチル 0.5
セチルアルコール 2.0
シクロペンタシロキサン 1.0
ジメチコン(6mm/s) 0.5
B カーボポール981(2%水溶液) 10.0
クインスシード 0.1
1,3−ブチレングリコール 3.0
ペンチレングリコール 1.5
グリセリン 1.0
EDTA−2Na 0.05
防腐剤 適量
精製水 残部
C アルギニン 0.2
精製水 3.0
D ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) 2.0
精製水 2.0
(調製方法)
A、Bをそれぞれ80℃まで加温し、均一にする。80℃でBをホモミキサーで撹拌しながらAを徐々に添加して乳化する。その後、パドルで撹拌しながら冷却し、50℃でC、Dを添加し、35℃で調製を終了する。
【実施例7】
【0046】
モイスチャー美白クリーム
A 大豆ステロール 1.0質量%
POE(20)大豆ステロール 2.0
水素添加大豆レシチン 0.5
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 3.0
スクワラン 3.0
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル 3.0
トリエチルヘキサノイン 1.0
エチルヘキサン酸セチル 1.0
セチルアルコール 3.0
ベヘニルアルコール 3.5
マイクロクリスタリンワックス 0.3
シクロペンタシロキサン 3.0
ジメチコン(6mm/s) 1.0
B カーボポール980(2%水溶液) 12.0
キサンタンガム(2%水溶液) 3.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
グリセリン 1.0
PEG−30 0.3
EDTA−2Na 0.05
防腐剤 適量
精製水 残部
C アルギニン 0.2
精製水 3.0
D ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) 2.0
精製水 2.0
(調製方法)
A、Bをそれぞれ80℃まで加温し、均一にする。80℃でBをホモミキサーで撹拌しながらAを徐々に添加して乳化する。その後、パドルで撹拌しながら冷却し、50℃でC、D添加し、35℃で調製を終了する。
【実施例8】
【0047】
アンチエイジングクリーム(ライトタイプ)
A 本発明品2の液晶形成用乳化剤 5.0質量%
セテアリルアルコール 2.5
マイクロクリスタリンワックス 0.3
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 5.0
メドウフォーム油 3.0
スクワラン 3.0
トリエチルヘキサノイン 2.0
マカデミアナッツ油 1.0
水添レチノールとトリ(カプリル酸/カプリン酸)
グリセリル)の混合物 1.0
シクロペンタシロキサン 3.0
ジメチコン(6mm/s) 2.0
B カーボポール980(2%水溶液) 12.0
キサンタンガム(2%水溶液) 3.0
グリセリン 4.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
ペンチレングリコール 2.0
EDTA−2Na 0.05
防腐剤 適量
精製水 残部
C アルギニン 0.2
精製水 3.0
D ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) 2.0
精製水 2.0
(調製方法)
A、Bをそれぞれ80℃まで加温し、均一にする。80℃でBをホモミキサーで撹拌しながらAを徐々に添加して乳化する。その後、パドルで撹拌しながら冷却し、50℃でC、Dを添加し、35℃で調製を終了する。
【0048】
実施例5〜8の化粧料は実施例1の液晶の確認方法を用いて測定したところ液晶を形成していることが確認され、また実施例4の試験を行うことによってスキンケア効果を有することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のステロール、ポリオキシエチレンステロール類およびレシチンを必須成分とする液晶形成用乳化剤を利用することで、角質細胞間脂質と類似の液晶構造を形成し、組成物を皮膚に塗布した時の水分の蒸散を液晶が抑えることにより優れたスキンケア効果や皮膚改善効果を示す液晶形成乳化組成物および化粧料を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)〜(C)を必須成分として含有する液晶形成用乳化剤。
(A)ステロール
(B)ポリオキシエチレンステロール
(C)レシチン
【請求項2】
上記(A)〜(C)成分の比率(質量比)が、
(A)/(B)=10/90〜90/10
かつ
[(A)+(B)]/(C)=98/2〜70/30
である請求項1に記載の液晶形成用乳化剤。
【請求項3】
上記液晶形成乳化剤を含有する液晶形成乳化組成物であって、上記(A)〜(C)成分の合計量を0.1〜30質量%含有する液晶形成乳化組成物。
【請求項4】
上記(A)〜(C)成分の比率(質量比)が、
(A)/(B)=10/90〜90/10
かつ
[(A)+(B)]/(C)=98/2〜70/30
である請求項3に記載の液晶形成乳化組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の液晶形成用乳化剤を含有する化粧料。

【公開番号】特開2008−115162(P2008−115162A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237481(P2007−237481)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000226437)日光ケミカルズ株式会社 (60)
【出願人】(000228729)日本サーファクタント工業株式会社 (44)
【出願人】(301068114)株式会社コスモステクニカルセンター (57)
【Fターム(参考)】