説明

液晶材料の製造方法

【課題】再結晶操作による高い比抵抗値を有する液晶化合物の、安全で簡便な製造方法を提供することであり、この製造方法により得られた液晶化合物を使用した液晶組成物および液晶表示素子を提供することであり、高い比抵抗値を有する液晶化合物を得る安全で簡便な結晶のろ過方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)


で表される化合物、具体的には例えば下式で表される化合物、


を有機溶媒に溶解し、必要に応じカラムクロマトグラフィーにより精製した後、溶液から結晶を析出させ、それをろ取し、その後、再結晶に使用した溶媒を留去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い比抵抗値を有する液晶材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は液晶テレビ、携帯電話やパソコンなどをはじめとする民生用途から産業用途まで広く使用されるようになった。これらは製品寿命が数年から十数年と比較的長く、この間正常に動作するために、これに使用する液晶材料には高い安定性が求められる。液晶材料の代表的な安定性の指標として比抵抗値がある。液晶表示素子が正常に動作するためには、それに使用する液晶材料の比抵抗値が十分高くなければならず、また経時劣化も抑えなければならない。
【0003】
液晶材料の安定性を向上させるために、これまで多くの研究がなされてきた。例えば、液晶材料中の水分や金属イオンを除去する方法として、液晶材料をシリカゲルと接触させる方法(特許文献1参照)、活性アルミナと接触させる方法(特許文献2参照)、イオン交換樹脂で処理する方法(特許文献3参照)、ゼオライトと接触させる方法(特許文献4参照)が開示されている。更に、対向する一対の電極間に液晶化合物を入れ、電界をかけることにより、電界による移動度の比較的大きなNa、K等の金属イオンや、SO2−、NO、Cl等のイオン性不純物を除去する方法等(特許文献5〜7参照)が開示されている。これら精製法は既に液晶材料に含まれる不純物を除去するための方法である。
【0004】
一方、液晶材料に対する要求は高速応答化や高コントラスト化など多岐に渡る。これら物性は単独の化合物では達成することができず、複数の液晶化合物を混合し、液晶組成物として要求に対応している。その際、各液晶化合物を正確に秤量し、その混合比を目標値に正しく合わせることが重要である。混合比に誤差が生じると物性が変化してしまい、要求を満たす液晶組成物を調製できないからである。
【0005】
ここで、液晶化合物の多くは室温では固体である。このため溶媒に溶けた溶液状態の液晶化合物から溶媒をほぼ留去すると一気に結晶化が進行し、全体が一体の固体となってしまう。液晶化合物は完全に溶媒を留去せずに使用すると、安定性が低下する等の不具合を生じるため望ましくない。このため、減圧下で液晶化合物の結晶中に取り込まれた溶媒を除去する必要がある。しかし、その得られた固体の塊が大きいと内部に取り込まれた溶媒が揮発せず除去することができない。また、液晶組成物の調製時の秤量を塊を砕きながら行わなければならないため、極めて作業が困難となり、秤量の正確性も確保できない。これに対し、液晶化合物を粉体として調製すると、溶媒の留去も秤量時の微調整も容易となる。しかし先に示した精製法は液晶材料を液晶状態あるいは溶液状態で処理するものであり、処理後に得られる液晶化合物は粉体とならない。加えて、これらの方法は実施に際して特殊な装置や煩雑な操作を必要とするため、生産性の点において不利である。
【0006】
液晶化合物を簡便に粉体として得るためには再結晶が有効であり、実際に液晶化合物を再結晶で精製する例は数多くある(特許文献8)。再結晶は、化合物を溶媒に溶かし、温度差や溶媒の蒸発、溶媒の混合比の変化等による溶解度の差などを利用して結晶を析出させ、それをろ取することにより行う。この際結晶の析出速度等を調整することにより、均一で細かな結晶を得ることができる。このように得られた粉体の液晶化合物は粒子が細かいため溶媒の留去を容易に行うことができ、また容易に掬うことができるため、秤量が容易であり、添加量の細かな調節もできる。しかし再結晶工程においてしばしば問題となるのが静電気の発生である。
【0007】
高い比抵抗値を有する液晶材料を得るためには、それを構成する各液晶化合物も高い比抵抗値を有している必要があり、秤量前の最終工程として再結晶を行う場合、品質上の要求から、その再結晶後の液晶化合物は高い比抵抗値を有していなければならない。高い比抵抗値を有する液晶化合物を再結晶により得るためには、特にヘキサン、ヘプタンやトルエン等の導電率の低い溶媒から再結晶を行うと良いことが知られている。しかし、これら導電率の低い溶媒を使用すると、結晶析出、撹拌及びろ過等の際に発生した静電気が帯電し、着火性の放電により火災等の重大災害を発生する恐れがある。これら安全性を高めるためには、導電率の高い溶媒を使用し、静電気の帯電を抑えることが有用である。しかし、導電率の高い溶媒は一般的にイオン成分等を溶解しやすいため、これら成分の影響により再結晶後の液晶化合物の比抵抗値が実用レベルに達しないとの問題がある。このように再結晶により高い比抵抗値を有する液晶化合物を得る安全で実用的な方法が切望されているものの、具体的な解決手段はこれまでに報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−210420号公報
【特許文献2】特開昭58−1774号公報
【特許文献3】特開昭52−59081号公報
【特許文献4】特開昭63−261224号公報
【特許文献5】特開昭50−108186号公報
【特許文献6】特開昭51−11069号公報
【特許文献7】特開平4−86812号公報
【特許文献8】特開2007−176818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
再結晶操作による高い比抵抗値を有する液晶化合物の、安全で簡便な製造方法を提供することであり、この製造方法により得られた液晶化合物を使用した液晶組成物を提供することであり、高い比抵抗値を有する液晶化合物を得る安全で簡便な結晶のろ過方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは本願発明の対象化合物に関し鋭意検討した結果、特定の製造方法により前述の課題を解決できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0011】
本願発明は、1.一般式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数2〜6のアルケニルオキシ基を表し、
aは1、2又は3を表し、
及びAはそれぞれ独立に(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい)及び
(c) 1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、並びにクロマン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表すが、上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる水素原子はそれぞれフッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていても良く、Aが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていても良く、
は単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表すが、Zが複数存在する場合、複数存在するZは同一であっても異なっていても良く、
は水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数2〜6のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物を、有機溶媒に溶解した後に、得られた溶液から結晶を析出させるか、又は得られた溶液をカラムクロマトグラフィーにより精製した後に結晶を析出させ、いずれかの方法により析出させた結晶を溶液からろ取し、その後、ろ取した結晶に含まれる再結晶に使用した溶媒を留去することによる、結晶状態の一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、
一般式(1)で表される化合物の比抵抗値を、式(A−1)及び(A−2)で表される化合物
【0014】
【化2】

【0015】
を各50質量%ずつ含み、比抵抗値が1.0×1013Ω・m以上である液晶組成物(M−1)80質量%に、一般式(1)で表される化合物を20質量%添加した液晶組成物の比抵抗値と定義し、該比抵抗値が8.0×1011Ω・m未満を示す一般式(1)で表される化合物を原料として用い、
結晶状態として得られる一般式(1)で表される化合物の該比抵抗値の定義による比抵抗値が8.0×1011Ω・m以上であり、
析出させた結晶をろ過する際に結晶とともに存在する溶液中の溶媒が、非極性溶媒と極性溶媒の混合溶媒を含有する溶媒であり、
カラムクロマトグラフィーによる精製を行わずに得られた溶液から結晶を析出させる方法を経た場合には、製造において使用される非極性溶媒が以下の(i)の条件を満たし、極性溶媒が以下の(ii)の条件を満たし、
カラムクロマトグラフィーによる精製の後に結晶を析出させる方法を経た場合には、カラムクロマトグラフィーにより溶出された溶液中の溶媒を留去するかしないかに関わらず、カラムクロマトグラフィーによる精製の後に非極性溶媒を添加するときは、該非極性溶媒が以下の(i)の条件を満たし、極性溶媒を添加するときは、極性溶媒が以下の(ii)の条件を満たし、
(i)該非極性溶媒が、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.05ppb以下である炭化水素系溶媒から選択される単一又は混合溶媒であり、
(ii)該極性溶媒がリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.0ppb以下であるアルコール類溶媒、ケトン類溶媒、エステル類溶媒、エーテル類溶媒若しくはニトリル類溶媒から選択される単一又は混合溶媒である、
結晶状態の一般式(1)で表される化合物の製造方法、2.その際に行う再結晶方法、3.本願製造方法により得られた液晶化合物、4.本願製造方法により得られた液晶化合物を含有する液晶組成物、5.本願製造方法により得られた液晶化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の製造方法により、高い比抵抗値を有する液晶化合物を安全で簡便な再結晶操作により得ることができるようになる。よって、本願発明により長期間使用可能な液晶表示素子を作成するための液晶組成物を得ることが可能となった点において有用である。更に、再結晶操作中、特に結晶をろ取する際の静電気による火災等の災害危険性が減少する点において有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般式(1)において、A又はAのうち少なくとも一つは群(A)
【0018】
【化3】

【0019】
又は群(B)
【0020】
【化4】

【0021】
から選ぶのが好ましい。さらに群(B)の中では、
【0022】
【化5】

【0023】
がより好ましい。
【0024】
又はAのうち少なくとも一つを群(A)から選んだ場合、他方をトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基又は群(A)から選ぶことが好ましい。
【0025】
又はAのうち少なくとも一つを群(A)から選んだ場合、Yはフッ素原子が好ましく、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ビニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、3−ブテニルオキシ基及び4−ペンテニルオキシ基が好ましく、が好ましく、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、3−ブテニル基又はペンチル基が更に好ましく、Zは単結合、−CHCH−、−CFO−又は−OCF−が好ましい。
【0026】
又はAのうち少なくとも一つを群(B)から選んだ場合、R及びYはそれぞれ独立的にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ビニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、3−ブテニルオキシ基及び4−ペンテニルオキシ基が好ましく、Zは単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−又はOCF−が好ましい。
【0027】
比抵抗値が1.0×1013Ω・m以上である液晶組成物(M−1)に、一般式(1)で表される化合物を20質量%添加した液晶組成物の比抵抗値が8.0×1011Ω・m未満である場合、一般式(1)で表される化合物を含む液晶組成物を使用した液晶表示素子は表示不良を起こすことがあるのに対し、(M−1)に一般式(1)で表される化合物を20質量%添加した液晶組成物の比抵抗値が8.0×1011Ω・m以上である場合にはそのようなことは起きず、長期間の使用でも問題なく動作する。より高い信頼性を得るためには比抵抗値を高くすることが望ましいが、比抵抗値を上げるため、精製工程を繰り返すと収率の低下を招き、安価に製造することが出来なくなる。このため、実用的には、比抵抗値が1.0×1013Ω・m以上である液晶組成物(M−1)に、精製後の一般式(1)で表される化合物を20質量%添加した液晶組成物の比抵抗値は8.0×1011Ω・mが好ましく、1.0×1012Ω・mが好ましく、5.0×1012Ω・mが好ましく、1.0×1013Ω・mが好ましい。この比抵抗値は高いほど好ましいが、液晶化合物は有機物であり、限界がある。また、比抵抗値が低い化合物である場合、ろ過時にろ液中に極性溶媒が無くても帯電した静電気の緩和が生じるため本製造法を行う必要はない。
【0028】
本願発明に使用する精製前の一般式(1)で表される化合物は比抵抗値が十分高い場合本願精製を行う必要がない。また、あまりに低いと本願発明を数回繰り返す必要が出てくる。このため、下限値として9.9×1011Ω・mが好ましく、8.0×1011Ω・mが好ましく、5.0×1011Ω・mが好ましく、1.0×1011Ω・mが好ましく、1.0×1010Ω・mが好ましく、1.0×10Ω・mが好ましく、1.0×10Ω・mが好ましく、上限値として9.9×1011Ω・mが好ましく、8.0×1011Ω・mが好ましく、5.0×1011Ω・mが好ましく、1.0×1011Ω・mが好ましく、1.0×1010Ω・mが好ましく、1.0×10Ω・mが好ましく、1.0×10Ω・mが好ましい。
【0029】
本願精製を行う前に、使用に耐えるほどの純度を有していれば他の精製方法や再結晶を行う必要はないが、十分な純度の液晶化合物を得るためには、事前に他の精製方法や再結晶を行っておくことが好ましい。また、本願発明に使用する精製前の一般式(1)で表される化合物の化学的な純度は特に規定はないが、本願発明の精製後に他の精製をせず使用するため、高い方が望ましく、ガスクロマトグラフィー(カラム:DB−1、キャリアーガス:ヘリウム)の面積比で95%以上のものを使用することが好ましく、97%以上が望ましく、99%以上が望ましく、99.5%以上が望ましく、99.8%以上が更に望ましい。この際、比抵抗値を低下させる恐れのない化合物や、既に特性が確認されておりその影響が確認され許容できる濃度が規定されているような化合物は化学純度決定においては一般式(1)で表される化合物に含めてもよい。
【0030】
本願精製に使用する非極性溶媒の種類としては、へキサン若しくはその構造異性体、ヘプタン若しくはその構造異性体、オクタン若しくはその構造異性体、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、又はクメンが好ましく、ヘキサン若しくはその構造異性体、ヘプタン若しくはその構造異性体、又はトルエンがより好ましい。また、本願精製に使用する極性溶媒の種類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル又はプロピオニトリルから選択される単一又は混合溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、アセトン又は2−ブタノンから選択される単一又は混合溶媒がより好ましい。
【0031】
また、再結晶を行う前にカラムクロマトグラフィーを行い、比抵抗値の低下の原因となるイオン性不純物を除くことが好ましい。カラムクロマトグラフィーに使用する精製剤としてはシリカゲル、アルミナ又はそれらの両方を使用するのが好ましい。両方を使用する場合には、それらを混合して充填しても良いし、層状に充填しても良い。精製剤は事前に純水や有機溶媒等により洗浄してから使用してもよい。また、アルミナは酸性、塩基性又は中性のものを使用することができる。展開溶媒としてはヘキサン並びにその構造異性体、ヘプタン並びにその構造異性体、及びトルエンから選択される単一又は混合溶媒が好ましい。カラムクロマトグラフィーによりイオン性不純物が除去されるため、展開溶媒に含まれるイオン濃度に制約はなく、市販の一級グレード品を使用しても良い。カラムクロマトグラフィーの後に得られた溶液は比抵抗低下の原因となるイオン性不純物が除去されているため、使用した溶媒が再結晶時に含まれていても比抵抗値に影響を及ぼさない。そのためカラムクロマトグラフィー後の溶液から溶媒を一部若しくは全部留去してもよいし、留去をしなくてもよい。
【0032】
再結晶にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.05ppb以下である炭化水素系溶媒から選択される単一又は混合溶媒を使用すればよいが、その調製方法は問わない。使用しようとする溶媒の上記イオン濃度の総和が0.05ppbを超える場合には、例えばイオン交換樹脂、シリカゲル、アルミナ等の精製剤を単一又は組み合わせて処理することにより、0.05ppb以下とすることができる。また、再結晶の前にカラムクロマトグラフィーによる精製を行った場合において、その精製の後に溶液から溶媒を一部留去して、又は留去せずに得られた溶液が再結晶に適している場合には、改めて再結晶溶媒を加えなくてもよい。
【0033】
再結晶の結晶の析出時の溶媒の使用量は全体として、1gの一般式(1)であらわされる化合物に対して0.5mL〜100mLを使用することができる。しかし、溶媒の使用量が少ないと一般式(1)であらわされる化合物が溶解せずとけ残ってしまう量が多くなり比抵抗の改善効果が低くなってしまう。一方溶媒の使用量が多いと析出してくる結晶の量が少なくなり、回収率の低下が起こる。このため、溶媒の使用量下限値は1gの一般式(1)であらわされる化合物に対して0.8mLが好ましく、1mLが好ましく、2mLが好ましく、3mLが好ましく、4mLが好ましく、上限値としては同様に50mLが好ましく、30mLが好ましく、20mLが好ましく、10mLが好ましく、8mLが好ましく、5mLが好ましい。
【0034】
再結晶は一般式(1)で表される化合物を溶媒に溶解させた後、溶解させた際の温度より低い温度に冷却して行うことができる。化合物は完全に溶解させることが好ましいが、比抵抗の改善効果が低下せず、その後の晶析、ろ過の作業に支障がない範囲においては未溶解の部分が残っても良い。溶解せず残っている化合物は全量の10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましく、3質量%以下が好ましく、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下が好ましい。
【0035】
結晶の析出時には冷却しても良く、急冷してもよいし徐冷してもよい。冷却後は温度を一定に保っても良いし、徐々に冷却しながら結晶を析出させていっても良い。また、結晶を析出させる際は攪拌を行っても良いし、静置してもよい。結晶の大きさをそろえ、結晶サイズをあまり大きくしない場合には攪拌したほうが好ましい。また、別の再結晶の方法として、一般式(1)で表される化合物を溶解性の高い溶媒に溶解させた後、溶解性の低い溶媒を加えて晶析させて行うこともできる。この際に冷却しても良いが、特に冷却をしなくてもよい。
【0036】
また、結晶を析出させた後に溶媒を添加する場合、添加量が多いと析出した結晶が再度溶解してしまい好ましくなく、添加する溶媒の温度が高いと析出した結晶が再度溶解してしまい好ましくない。このため、添加後の溶媒量は析出工程時の溶媒量の1.5倍までに抑えるのが好ましく、1.2倍までに抑えるのが好ましく、1.1までに抑えるのが好ましい。添加する溶媒の温度は30℃以下が好ましく、20℃以下が好ましく、10℃以下が好ましく、添加する溶液の温度の±5℃が更に好ましい。
【0037】
等が−COO−等を表す場合には、この化合物自体が極性溶媒のような帯電した静電気を緩和させる性質を持つ。このため、この化合物が十分量溶解している溶媒であれば静電気は緩和する。しかし、結晶を溶媒で洗滌する工程で使用する溶媒に関しては、この化合物の溶解量が低いため、本願発明の方法を実施する必要がある。
【0038】
また、析出した結晶を取り出すために結晶をろ取するが、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過又は遠心ろ過の方法をとることが出来る。またろ過を行う際には空気中の酸素による酸化の影響や結晶中に水分が取り込まれることを防ぐため、希ガス又は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、ろ剤としては紙を含むセルロース、ガラス繊維、メンブランフィルター、セライト等通常ろ過工程で使用されるものは使用可能である。また、ろ過時は室温で行っても、冷却しても又は加熱しても良い。
【0039】
本願精製では再結晶後、結晶をろ取する際に極性溶媒が存在することによりろ過工程で発生する静電気を速やかに緩和させ、安全性を向上させている。
【0040】
本願発明は、
(あ) 一般式(1)で表される化合物を有機溶媒に溶解する工程
(い) (あ)で得られた溶液をカラムクロマトグラフィーに注ぎ一般式(1)で表される化合物を精製剤に担持する工程
(う) カラムクロマトグラフィーに展開溶媒を流し一般式(1)で表される化合物を溶出させる工程
(え) (あ)で得られた溶液から結晶を析出させる工程
(お) (う)で得られた溶液から結晶を析出させる工程
(か) (う)で得られた溶液から溶媒を完全に留去した後、新たに有機溶媒に溶解し結晶を析出させる工程
(き) (う)で得られた溶液から溶媒を一部留去した後、結晶を析出させる工程
(く) (う)で得られた溶液から溶媒を一部留去した後、又は溶媒を留去せずに有機溶媒を添加し溶媒量を調整した後に結晶を析出させる工程
(け) (え)〜(く)のいずれかにより析出させた結晶をろ過する工程
(こ) (け)によって得られた結晶から再結晶に使用した溶媒を留去する工程
を組み合わせた一般式(1)で表される化合物の製造方法である。ただし、(い)及び(う)の工程は省略することが可能である。
【0041】
なお、請求項中で直前と記載しているのは、上記工程間同士の間であり、その間には他の工程が入らないことを意味する。
【0042】
結晶をろ取する際にろ液中に極性溶媒が含まれていればよいが、極性溶媒を加える態様としては、以下の(a)〜(f)のいずれか一つ以上を満足すればよい。
(a)(あ)で使用する有機溶媒の成分として極性溶媒を使用する。
(b)(い)の操作時に極性溶媒を使用する。
(c)(う)の展開溶媒に極性溶媒を添加する。
(d)(え)〜(く)の工程前、工程中又は工程の直後に極性溶媒を添加する。
(e)(け)の工程の直前又は工程中に極性溶媒を添加する。
(f)精製前の一般式(1)で表される化合物に不純物として極性溶媒が含まれている。
【0043】
なお、上記の何れかにより極性溶媒が加わっても、結晶をろ取する工程までに溶媒を留去する工程が入り、かつその工程によって極性溶媒が完全に留去されてしまうと静電気を緩和させる効果が発現しない。そのような場合には、溶媒を留去した後、結晶をろ取する前までに改めて極性溶媒を加える必要がある。
【0044】
本願発明を実施する態様のうち代表的なものを以下に示すが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
・(あ)→(い)→(う)→極性溶媒添加→(お)→(け)→(こ)
・(あ)→(い)→(う)→(お)→極性溶媒添加→(け)→(こ)
・(あ)→(い)→(う)→極性溶媒添加→(き)→(け)→(こ)
・(あ)→(い)→(う)→(き)→極性溶媒添加→(け)→(こ)
・(あ)→(い)→(う)→(か)の工程中、結晶析出前に極性溶媒添加→(け)→(こ)
・(あ)→(い)→(う)→(か)→極性溶媒添加→(け)→(こ)
・(あ)→(い)→(う)→(く)の工程中、結晶析出前に極性溶媒添加→(け)→(こ)
・(あ)→(い)→(う)→(く)→極性溶媒添加→(け)→(こ)
・(あ)→極性溶媒添加→(え)→(け)→(こ)
・(あ)→(え)→極性溶媒添加→(け)→(こ)
・(あ)で得られた溶液に極性溶媒添加→(い)→(う)→(お)→(け)→(こ)
・(あ)→(い)→(う)の展開溶液に極性溶媒添加→(お)→(け)→(こ)
極性溶媒にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.0ppb以下であるアルコール類溶媒、ケトン類溶媒、エステル類溶媒、エーテル類溶媒若しくはニトリル類溶媒から選択される単一又は混合溶媒を使用すればよいが、その調製方法は問わない。使用しようとする溶媒の上記イオン濃度の総和が1.0ppbを超える場合には、例えばイオン交換樹脂、シリカゲル、アルミナ等の精製剤を単一又は組み合わせて処理することにより、1.0ppb以下とすることができる。
【0045】
本願発明において、上記の(い)及び(う)の工程でカラムクロマトグラフィーによる精製を行っている。この工程を行うとこれに使用した有機溶媒中のイオン性不純物が除去される。このためカラムクロマトグラフィーを通過する極性溶媒及び非極性溶媒には上記イオン濃度の総和の制約はなく、市販の一級グレード品を使用しても良い。
【0046】
結晶をろ取する直前までに使用する溶媒のうち、炭化水素系溶媒の割合は50体積%以上が好ましく、60体積%以上が好ましく、70体積%以上が好ましく、80体積%以上が好ましく、90体積%以上が好ましい。
【0047】
再結晶工程において結晶をろ取した後の再結晶に使用した溶媒の留去は、減圧下に室温で又は加熱しながら行うことができる。この際に、加熱手段に特に制限はなく、設定温度から数度の範囲で制御できる方法であれば如何なる方法をとることもできる。実施の容易性から温調を備え溶液を満たした容器に液晶化合物を入れた容器を浸す方法や該容器をマントルヒーター等で加熱する方法、更に液晶化合物を乗せた棚に加熱した液体を流す流路を設けこれにより加熱する方法が挙げられる。また、溶媒を留去する際には気化熱により液晶化合物が冷却されるので温度低下を低減することを目的として加熱していない溶液により前記手段を行うこともできる。また、これら方法を用いず、温度制御しないで溶媒を留去することも可能である。作業時間の短縮のために、下限温度を20℃とすることが好ましく、30℃とすることが好ましく、35℃とすることが好ましく、40℃とすることが更に好ましい。上限温度としては、温度を上げると溶媒の留去速度は上がるため高い方が好ましいが、あまり高温とすると液晶化合物の分解や酸化等が起こり好ましくない。また、融点以上に加熱してしまうと乾燥後に室温まで冷却するとすべてが一体の固体となり、粉体として得られないため好ましくない。このため、融点未満が好ましく、60℃が好ましく、55℃が好ましく、50℃が好ましく、45℃が好ましく、40℃が好ましい。溶媒留去時は液晶化合物を入れた容器や棚を静止させていても良いし、動かしていても良い。しかし、効率の点から回転や振動させることが好ましい。
【0048】
本願発明の製造方法により得られた結晶及び本願発明の結晶は、その後更に他の精製を行わずに他の液晶化合物と混合し、液晶組成物を調製する。液晶組成物とした後は必要に応じろ過や吸着剤による処理を行っても良い。
【0049】
液晶化合物には再結晶に使用した溶媒が含まれないことが好ましいが、液晶組成物とした際に悪影響を及ぼさない濃度以下であれば良い。その濃度は200ppm以下が好ましく、100ppm以下が好ましく、50ppm以下が好ましく、20ppm以下が更に好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。溶媒中のイオン濃度の分析にはイオンクロマトグラフ(カラム:IC NI−424、展開溶媒:8mM 4−ヒドロキシ安息香酸+2.8mMビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン+2mMフェニルボロン酸+5μMトランス−1,2−シクロヘキサンジアミン−N,N,N’,N’−4酢酸)を使用し、絶対検量線法によりリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度を算出した。液晶組成物の比抵抗値は、測定用セルに液晶組成物を入れ、電圧(DC)1V印加時の抵抗値を25℃にて測定して得た。純度はガスクロマトグラフィー(カラム:DB−1、キャリアーガス:ヘリウム)の面積比により算出した。
【0051】
また、使用した溶媒のうちイオン濃度の記載がないものは、市販の一級グレード品である。
(実施例1) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(1)
式(A−1)及び(A−2)
【0052】
【化6】

【0053】
を各50%ずつ含む、比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に、式(1−1)
【0054】
【化7】

【0055】
で表される化合物(純度99.90%)を20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.0×1011Ω・mであった。
この式(1−1)で表される化合物25gをヘキサン100mLに溶解し、10gのシリカゲル及び10gのアルミナを二層に充填したカラムクロマトグラフィー(直径3cm)に注ぎ、溶液表面が充填剤層と一致するまで流した。更に展開溶媒としてヘキサン100mLを加え、充填剤に吸着している化合物を溶出させた。得られた溶液約220mLにリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.20ppbであるエタノール4mLを加え、5℃で10分間撹拌して晶析させた後−18℃の冷凍庫内で16時間静置した。結晶分をろ取するため、フィルター付きのヌッチェに注いだ。フィルター上に得られた結晶の帯電電位を測定したところ、0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。得られた結晶をナスフラスコに移し、真空ポンプにより減圧し(266Pa)、ナスフラスコを回転させながら溶媒を留去した。この際、45℃の湯浴にフラスコを浸し、温度制御を行った。20時間後、式(1−1)で表される化合物22.5gを粉末状の結晶として得た。結晶中の残留溶媒量は60ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は2.0×1012Ω・mであった。
【0056】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(比較例1)式(1−1)で表される化合物の再結晶(2)
実施例1において、カラムクロマトグラフィーの後に得られた溶液約220mLにエタノールを加えることなく結晶の晶析操作を行い、フィルター付きのヌッチェに注いだ。ろ取した結晶の帯電電位の絶対値は22.0kV以上であった。この帯電した結晶が導体との間にブラシ放電を発生した場合、ヘキサンの最小着火エネルギー(0.24mJ)と同等以上の放電エネルギーになると推定される。そのため、条件が重なると溶媒のヘキサンに引火する危険がある。また、ろ過の際に金属製の器具を使用した場合、接地の不備があると、静電誘導、電荷分離等により金属製の器具に不安定な電荷が発生し、着火性の火花放電を起こす可能性が考えられ、非常に危険である。
(実施例2) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(3)
実施例1において、エタノールの代わりにリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.13ppbであるアセトン4mLを使用し、同様に操作を行った。フィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は22.4gであった。結晶中の残留溶媒量は58ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は2.4×1012Ω・mであった。
【0057】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例3) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(4)
実施例1において、カラムクロマトグラフィーの後に得られた溶液約220mLから溶媒を減圧下に留去して約150mLとした後にリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.20ppbであるエタノール4mLを加え、同様に操作を行った。フィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は23.4gであり、収率の向上が見られた。結晶中の残留溶媒量は58ppmであり、純度は99.97%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.8×1012Ω・mであった。
【0058】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例4) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(5)
実施例1において、カラムクロマトグラフィーの後に得られた溶液約220mLにエタノールを加えることなく晶析操作を行い、結晶をろ取する直前にリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.20ppbであるエタノール4mLを加え、1分程度撹拌した後にフィルター付きのヌッチェに注ぎ、その後は同様の乾燥操作を行った。フィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は22.4gであった。結晶中の残留溶媒量は62ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は2.0×1012Ω・mであった。
【0059】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例5) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(6)
実施例1において、カラムクロマトグラフィーの後に得られた溶液約220mLから溶媒を減圧下に留去し、得られた固体24.9gをリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.03ppbであるヘキサン50mLに加温溶解し、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.20ppbであるエタノール1mLを加え、晶析操作以降を同様に行った。フィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は24.0gであり、収率の向上が見られた。結晶中の残留溶媒量は50ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は2.2×1012Ω・mであった。
【0060】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例6) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(7)
実施例5において、カラムクロマトグラフィーの際の式(1−1)で表される化合物の溶解にヘキサン/トルエン混合溶媒(体積比4/1)50mLを用い、展開溶媒にヘキサン/トルエン混合溶媒(体積比4/1)75mLを用いて以後同様の操作を行った。フィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は23.8gであった。結晶中の残留溶媒量は65ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.8×1012Ω・mであった。
【0061】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(比較例2) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(8)
市販の一級グレード品のヘキサンのイオン濃度を分析したところ、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和は0.20ppbであった。実施例5において、カラムクロマトグラフィー後に得られた溶液から溶媒を減圧下に留去し得られた固体24.9gをこのヘキサン50mLに加温溶解し、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.20ppbであるエタノール1mLを加え、晶析操作以降を同様に行った。得られた式(1−1)で表される化合物を液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は5.6×1011Ω・mであった。精製工程前と比較し比抵抗値の向上が十分ではなく、液晶表示素子用の液晶組成物材料としては使用することができなかった。
(比較例3) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(9)
市販の一級グレード品のアセトンのイオン濃度を分析したところ、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.35ppbであった。実施例5において、カラムクロマトグラフィー後に得られた溶液から溶媒を減圧下に留去し得られた固体24.9gをリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.03ppbであるヘキサン50mLに加温溶解し、一級グレード品のアセトン1mLを加え、晶析操作以降を同様に行った。得られた式(1−1)で表される化合物を液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は3.2×1011Ω・mであった。精製工程前と比較し比抵抗値の向上が十分ではなく、液晶表示素子用の液晶組成物材料としては使用することができなかった。
(実施例7) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(10)
実施例1において、カラムクロマトグラフィーの後に得られた溶液約220mLから溶媒を減圧下に留去し、得られた固体24.9gをリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.03ppbであるヘキサン50mLに加温溶解し、同様の晶析操作を行った。結晶をろ取する直前にリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.20ppbであるエタノール1mLを加え、1分程度撹拌した後にフィルター付きのヌッチェに注ぎ、その後は同様の乾燥操作を行った。フィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は23.9gであった。結晶中の残留溶媒量は60ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は2.0×1012Ω・mであった。
【0062】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例8) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(11)
式(A−1)及び(A−2)
を各50%ずつ含む、比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に、式(1−1)
で表される化合物(純度99.90%)を20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.0×1011Ω・mであった。
この式(1−1)で表される化合物25gをリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.03ppbであるヘキサン50mLに加温溶解し、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.20ppbであるエタノール1mLを加え、5℃で10分間撹拌して晶析させた後−18℃の冷凍庫内で16時間静置した。結晶分をろ取するため、フィルター付きのヌッチェに注いだ。フィルター上に得られた結晶の帯電電位を測定したところ、0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。得られた結晶をナスフラスコに移し、真空ポンプにより減圧し(266Pa)、ナスフラスコを回転させながら溶媒を留去した。この際、45℃の湯浴にフラスコを浸し、温度制御を行った。20時間後、式(1−1)で表される化合物23.8gを粉末状の結晶として得た。結晶中の残留溶媒量は60ppmであり、純度は99.97%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.6×1012Ω・mであった。
【0063】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例9) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(12)
実施例8において、式(1−1)で表される化合物25gをリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.03ppbであるヘキサン50mLに加温溶解し、エタノールを加えることなく同様の晶析操作を行った。結晶をろ取する直前にリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.20ppbであるエタノール1mLを加え、1分程度撹拌した後にフィルター付きのヌッチェに注ぎ、その後は同様の乾燥操作を行った。フィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は24.0gであった。結晶中の残留溶媒量は65ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.8×1012Ω・mであった。
【0064】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例10) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(13)
実施例1において、カラムクロマトグラフィーの際の式(1−1)で表される化合物の溶解にヘキサン/エタノール混合溶媒(体積比50/1)100mLを用い、展開溶媒にヘキサン/エタノール混合溶媒(体積比50/1)100mLを用い、得られた溶液にエタノールを添加することなく晶析以降の操作を同様に行った。フィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は22.3gであった。結晶中の残留溶媒量は58ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.4×1012Ω・mであった。
【0065】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例11)式(1−1)で表される化合物の再結晶(14)
実施例1において、結晶のろ取工程にPTFE製のろ布を取り付けた遠心ろ過器を使用し、他は同様の操作を行った。ろ布上に得られた結晶の帯電電位の絶対値は0.2kVであり、静電気の帯電はほとんど見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は22.5gであった。結晶中の残留溶媒量は55ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.4×1012Ω・mであった。
【0066】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例12)イオン交換樹脂による再結晶溶媒の処理
市販の一級グレード品のエタノールのイオン濃度を分析したところ、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.84ppbであった。ガラス製クロマトグラフ管に陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の混合物5gを充填し、一級グレード品のエタノール50mLを通液してイオン交換樹脂を洗浄した。その後、一級グレード品のエタノール100mLを通液して清浄なガラスフラスコに採取した。得られたエタノールを分析したところ、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和は0.15ppbであった。この得られたエタノールを使用し、実施例1記載の方法と同様の操作を行ったところ、フィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は22.5gであった。結晶中の残留溶媒量は56ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は2.4×1012Ω・mであった。
【0067】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例13)シリカゲル及びアルミナによる溶媒の処理
市販の一級グレード品のヘキサンのイオン濃度を分析したところ、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和は0.20ppbであった。ガラス製クロマトグラフ管にシリカゲル及びアルミナをそれぞれ5g充填し、一級グレード品のヘキサン50mLを通液して洗浄した。その後、一級グレード品のヘキサン150mLを通液して清浄なガラスフラスコに採取した。得られたヘキサンを分析したところ、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和は0.03ppbであった。この得られたヘキサンを使用し、実施例1記載の方法と同様の操作を行ったところ、フィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。乾燥後に得られた式(1−1)で表される化合物は22.4gであった。結晶中の残留溶媒量は60ppmであり、純度は99.98%であった。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は2.2×1012Ω・mであった。
【0068】
また、式(1−1)で表される化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。
(実施例14)
実施例1において、式(1−1)で表される化合物の代わりに下表に示す化合物を用い、同様の操作を行った。何れの化合物も、ろ過操作時のフィルター上に得られた結晶の帯電電位は0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。なお表中の比抵抗値は、それぞれの化合物を液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物のものである。
【0069】
【表1】

【0070】
また、操作後のそれぞれの化合物を含有する液晶組成物を使用した液晶表示素子を作製したところ、表示不良を起こさず良好な特性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数2〜6のアルケニルオキシ基を表し、
aは1、2又は3を表し、
及びAはそれぞれ独立に(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい)及び
(c) 1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、並びにクロマン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表すが、上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる水素原子はそれぞれフッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていても良く、Aが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていても良く、
は単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表すが、Zが複数存在する場合、複数存在するZは同一であっても異なっていても良く、
は水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数2〜6のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物を、有機溶媒に溶解した後に、得られた溶液から結晶を析出させるか、又は得られた溶液をカラムクロマトグラフィーにより精製した後に結晶を析出させ、いずれかの方法により析出させた結晶を溶液からろ取し、その後、ろ取した結晶に含まれる再結晶に使用した溶媒を留去することによる、結晶状態の一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、
一般式(1)で表される化合物の比抵抗値を、式(A−1)及び(A−2)で表される化合物
【化2】

を各50質量%ずつ含み、比抵抗値が1.0×1013Ω・m以上である液晶組成物(M−1)80質量%に、一般式(1)で表される化合物を20質量%添加した液晶組成物の比抵抗値と定義し、該比抵抗値が8.0×1011Ω・m未満を示す一般式(1)で表される化合物を原料として用い、
結晶状態として得られる一般式(1)で表される化合物の該比抵抗値の定義による比抵抗値が8.0×1011Ω・m以上であり、
析出させた結晶をろ過する際に結晶とともに存在する溶液中の溶媒が、非極性溶媒と極性溶媒の混合溶媒を含有する溶媒であり、
カラムクロマトグラフィーによる精製を行わずに得られた溶液から結晶を析出させる方法を経た場合には、製造において使用される非極性溶媒が以下の(i)の条件を満たし、極性溶媒が以下の(ii)の条件を満たし、
カラムクロマトグラフィーによる精製の後に結晶を析出させる方法を経た場合には、カラムクロマトグラフィーにより溶出された溶液中の溶媒を留去するかしないかに関わらず、カラムクロマトグラフィーによる精製の後に非極性溶媒を添加するときは、該非極性溶媒が以下の(i)の条件を満たし、極性溶媒を添加するときは、極性溶媒が以下の(ii)の条件を満たし、
(i)該非極性溶媒が、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.05ppb以下である炭化水素系溶媒から選択される単一又は混合溶媒であり、
(ii)該極性溶媒がリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.0ppb以下であるアルコール類溶媒、ケトン類溶媒、エステル類溶媒、エーテル類溶媒若しくはニトリル類溶媒から選択される単一又は混合溶媒である、
結晶状態の一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
一般式(1)において、A及びAのうち少なくとも1つが
【化3】

を表す請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)において、Yがフッ素原子を表す請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
一般式(1)において、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基であり、Zが単結合、−CHCH−、−CFO−又は−OCF−を表す請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(1)において、A及びAのうち少なくとも1つが
【化4】

を表す請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
一般式(1)においてR及びYがそれぞれ独立的にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ビニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、3−ブテニルオキシ基又は4−ペンテニルオキシ基を表し、Zが単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−又は−OCF−を表す請求項1又は5記載の製造方法。
【請求項7】
一般式(1)においてA及びAのうち少なくとも1つが
【化5】

を表す請求項1又は6記載の製造方法。
【請求項8】
再結晶の結晶の析出時の溶媒の使用量を、1gの一般式(1)であらわされる化合物に対して0.5mL〜100mLとなるよう、
リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.05ppb以下である炭化水素系溶媒から選択される単一又は混合溶媒、
及び/又はリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.0ppb以下であるアルコール類溶媒、ケトン類溶媒、エステル類溶媒、エーテル類溶媒若しくはニトリル類溶媒から選択される単一又は混合溶媒、
を加える請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の極性溶媒を結晶の析出後であって、ろ取前に添加する請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の極性溶媒をカラムクロマトグラフィーによる精製の後であって、結晶析出の前に添加する請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の極性溶媒をカラムクロマトグラフィーによる精製の際に使用する展開溶媒に添加する請求項1〜10のずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
アルコール類溶媒、ケトン類溶媒、エステル類溶媒、エーテル類溶媒若しくはニトリル類溶媒から選択される単一又は混合溶媒をカラムクロマトグラフィーによる精製の前に添加する請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
カラムクロマトグラフィーによる精製後に得られた溶液をそのまま結晶の析出工程で使用する請求項1〜7、9〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
カラムクロマトグラフィーによる精製後に得られた溶液から溶媒の一部を留去した後に結晶の析出工程を行う請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
カラムクロマトグラフィーによる精製後に得られた溶液から溶媒を留去した後に、
リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.05ppb以下である炭化水素系溶媒から選択される単一又は混合溶媒、
及びリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.0ppb以下であるアルコール類溶媒、ケトン類溶媒、エステル類溶媒、エーテル類溶媒若しくはニトリル類溶媒から選択される単一又は混合溶媒
を加え、溶解した後に結晶の析出工程を行う請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
結晶の析出工程の直前において、(1)リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.05ppb以下である炭化水素系溶媒から選択される単一又は混合溶媒を添加して、溶液量を調節する請求項1〜15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
精製に使用する溶媒のうち少なくとも一種類がイオン交換樹脂で処理した溶媒である請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
精製に使用する溶媒のうち少なくとも一種類がカラムクロマトグラフィーで処理した溶媒である請求項1〜17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
使用する炭化水素系溶媒がへキサン並びにその構造異性体、ヘプタン並びにその構造異性体、オクタン並びにその構造異性体、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びクメンから選択される単一又は混合溶媒である請求項1〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
使用する炭化水素系溶媒がヘキサン並びにその構造異性体、ヘプタン並びにその構造異性体、及びトルエンから選択される単一又は混合溶媒である請求項1〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項21】
使用する極性溶媒がメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル又はプロピオニトリルから選択される単一又は混合溶媒である請求項1〜20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
使用する極性溶媒がメタノール、エタノール、アセトン又は2−ブタノンから選択される単一又は混合溶媒である請求項1〜20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項23】
カラムクロマトグラフィーによる精製時に充填剤としてシリカゲル、アルミナ又はそれらの混合物を使用する請求項1〜22のいずれかに記載の製造方法。
【請求項24】
結晶をろ取する直前までに使用する溶媒のうち、炭化水素系溶媒の割合が50体積%以上である請求項1〜23のいずれかに記載の製造方法。
【請求項25】
結晶をろ取する直前までに使用する溶媒のうち、炭化水素系溶媒の割合が90体積%以上である請求項1〜23のいずれかに記載の製造方法。
【請求項26】
結晶状態として得られる一般式(1)で表される化合物の該比抵抗値が1.0×1012Ω・m以上を示す請求項1〜25のいずれかに記載の製造方法。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれかに記載の方法により製造された一般式(1)で表される化合物。
【請求項28】
請求項27記載の化合物を含有する液晶組成物。
【請求項29】
請求項28記載の液晶組成物を使用した液晶表示素子。
【請求項30】
請求項1〜26のいずれかに記載の製造方法を実施する際に行う結晶のろ過方法。

【公開番号】特開2011−168530(P2011−168530A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33448(P2010−33448)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】