説明

液晶表示装置及びその製造方法

【課題】高い透過率を有する液晶表示装置及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】第一の基板と、第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に封入された液晶層と、を有し、一方が画素電極である第一の電極及び第二の電極を有する画素が複数設けられた液晶表示装置であって、画素のそれぞれは信号線によって囲まれる領域内に設けられ、隣り合う前記画素の間には前記信号線の一部が形成されており、平面視において前記信号線の一部を挟むように前記信号線の一部に沿って延伸し、前記第一の基板及び前記第二の基板の一方の基板から他方の基板に向かって形成される、二つの高分子構造物のそれぞれが、いずれかの前記領域に重なるように備えられており、隣り合う前記高分子構造物の間には液晶層が備えられる液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、一対の基板の間に液晶層を設けた液晶表示パネルを有する表示装置であり、例えば、液晶テレビ、パーソナルコンピュータ向けの液晶ディスプレイ、携帯電話端末の液晶ディスプレイ等として広く用いられている。
【0003】
この種の液晶表示装置は、液晶表示パネルの表示領域が複数の画素の集合でなり、当該複数の画素(ドット)により文字、数字、図、絵等の画像や映像を表示する表示装置である。このような表示方法は、一般に、ドットマトリクス方式と呼ばれている。
【0004】
ドットマトリクス方式は、画素の駆動方式により、単純マトリクス型(パッシブマトリクス型と呼ぶこともある)と、アクティブマトリクス型と、に分類される。単純マトリクス型は、各基板に形成した画素形成用の電極に選択的に電圧を印加して所定の画素を駆動する型式である。一方、アクティブマトリクス型は、一方の基板に画素選択用のアクティブ素子(スイッチング素子と呼ぶこともある)を形成し、このアクティブ素子のオン/オフにより所定の画素を駆動する型式である。特に、後者のアクティブマトリクス型は、コントラスト性能や高速表示性能等の優れた性能を備えることから、液晶表示装置における画素の駆動方式の主流になっている。
【0005】
また、この種の液晶表示装置における液晶層の動作モードとしては、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、およびFFS(Fringe Field Switching)モード等がある。
【0006】
特に、液晶テレビ等の大型の液晶表示装置では、高コントラスト、高視野角性が求められており、これに向けて、IPSモード及びFFSモード等が開発されてきている。これらのニーズは携帯電話等の小型の液晶表示装置でも要求されており、IPSモード及びFFSモードの製品展開が加速されている。
【0007】
また、近年の携帯電話端末やカーナビゲーションシステムには、例えば、テレビ放送の視聴や動画を再生する機能が搭載されたものも多く、これらの携帯型電子機器に用いられる小型の液晶表示装置でも、長時間使用のために省電力化が新たなニーズとして求められている。
【0008】
なお、特許文献1には、複数の画素スイッチング素子及び複数の画素電極を備える第一の基板と、対向電極が形成された第二の基板と、を有し、当該第一の基板と当該第二の基板との間には、隣接し合う画素の境界部分にポリマーネットワークが形成されている液晶装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−209036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、IPSモード及びFFSモードの液晶表示装置において省電力化を達成するためには画素の透過率向上が必要となる。画素の透過率向上のためには、例えば、画素電極それ自身のサイズを大きくすることが効果的である。しかしながら、画素電極のサイズを大きくすると、隣接する画素のうち一方の画素の液晶の配向が他方の画素の液晶の配向にも影響を及ぼすため、当該画素電極のサイズを大きくするには限界があった。
【0011】
また、画素の透過率向上のためのもう一つの方法として、ディスクリネーション抑制がある。しかしながら、ディスクリネーションを十分に回避する方法はないのが実情であった。
【0012】
本発明の目的は、高い透過率を有する液晶表示装置及びその製造方法を提供することにある。本発明の新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明における液晶表示装置は、第一の基板と、第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に封入された液晶層と、を有し、一方が画素電極である第一の電極及び第二の電極を有する画素が複数設けられた液晶表示装置であって、画素のそれぞれは信号線によって囲まれる領域内に設けられ、隣り合う前記画素の間には前記信号線の一部が形成されており、前記液晶層内に二つの高分子構造物が形成され、前記二つの高分子構造物の間には液晶層が備えられ、平面視において、前記二つの高分子構造物は、前記信号線の一部を挟み、平面視において、前記二つの高分子構造物のそれぞれは、前記信号線の一部に沿って延伸し、前記二つの高分子構造物のそれぞれは、前記第一の基板及び前記第二の基板の一方の基板から他方の基板に向かって形成され、前記二つの高分子構造物のそれぞれは、いずれかの前記領域に重なるように備えられていることを特徴とする液晶表示装置である。
【0014】
また、本発明における液晶表示装置は、前記第一の基板及び前記第二の基板のうち、一方の基板に前記第一の電極及び第二の電極が形成されていることとしてもよい。また、前記第一の基板及び第二の基板のうち、一方の基板にカラーフィルターが形成されていることとしてもよい。また、前記第一の基板及び第二の基板のうち、一方の基板にブラックマトリクスが形成されていることとしてもよい。また、前記高分子構造物は、平面視においてブラックマトリクスと重なる領域に形成されていることとしてもよい。また、前記高分子構造物は、平面視において走査信号線及び映像信号線の一方又は両方とブラックマトリクスが重なる領域以外に形成されていることとしてもよい。また、前記高分子構造物の短辺を横断する断面において、前記高分子構造物の幅WPと、前記ブラックマトリクスの幅WBと、前記映像信号線の幅WSまたは前記走査信号線の幅WGとが、下記式(1)の条件を満たすこととしてもよい。
【0015】
【数1】

【0016】
また、前記高分子構造物は、平面視において前記画素電極の端部を含む領域に、さらに形成されていることとしてもよい。また、前記液晶層は、前記高分子構造物の密度より、低密度の高分子をさらに含むこととしてもよい。また、前記領域は、平面視において矩形状を有し、前記高分子構造物は、前記領域の境界を表す四辺と重ねて形成されていることとしてもよい。また、前記領域は、平面視において矩形状を有し、前記高分子構造物は、前記領域の境界を表す四辺のうちの互いに対向する二つの辺と重ねて形成されていることとしてもよい。また、前記高分子構造物は、前記液晶層において重合性モノマーを重合して形成されたこととしてもよい。また、前記高分子構造物は、前記液晶層において光重合開始剤の存在下で前記重合性モノマーを重合して形成されたこととしてもよい。
【0017】
また、本発明にかかる液晶表示装置の製造方法は、第一の基板と第二の基板との間に封入された液晶層を有し、一方が画素電極である第一の電極及び第二の電極を有する複数の画素が設けられ、前記第一の電極及び前記第二の電極が前記第一の基板及び前記第二の基板の相対する面上のいずれか一方の面上に設けられ、隣り合う前記画素電極の間に信号線が形成された液晶表示装置の製造方法であって、前記液晶層に用いる母体液晶及び重合性モノマーを含有する液晶組成物を前記第一の基板と前記第二の基板との間に封入する工程と、前記重合性モノマーを重合させて、前記信号線と前記画素電極との間で、かつ前記液晶層中に高分子構造物を形成する高分子構造物形成工程とを含むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法である。
【0018】
また、前記高分子構造物形成工程は、前記第一の基板及び前記第二の基板のいずれか一方の前記信号線が形成された基板の、前記液晶層と接しない一方の面側から光を照射することによって前記重合性モノマーを重合させることとしてもよい。また、前記液晶組成物は、前記重合開始剤を含むこととしてもよい。また、前記重合開始剤は、光重合開始剤であることとしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い透過率を有する液晶表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る液晶表示パネルの平面視における主な構成の一例を示す説明図である。
【図2】図1のII−II線の位置における液晶表示パネルの断面の一例を示す説明である。
【図3】本発明に係るTFT基板の平面視における主な構成の一例について、その配置を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明に係るカラーフィルター基板の平面視における主な構成の一例について、その配置を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明に係るカラーフィルター基板の平面視における主な構成のその他の例について、その配置を模式的に示す説明図である。
【図6】図3及び図4のVI−VI線の位置における液晶表示パネルの断面と高分子構造物の配置の一例を示す説明図である。
【図7】図3及び図4のVI−VI線の位置における液晶表示パネルの断面と高分子構造物の配置の他の例を示す説明図である。
【図8】ブラックマトリクス領域に形成された高分子構造物の配置の一例を平面視にて示す説明図である。
【図9】ブラックマトリクス領域に形成された高分子構造物の配置のその他の例を平面視にて示す説明図である。
【図10】ブラックマトリクス領域に形成された高分子構造物の配置のその他の例を平面視にて示す説明図である。
【図11A】図3の破線XIで囲まれた画素電極の端部領域における高分子構造物の配置の一例を拡大して示す説明図である。
【図11B】図11Aに示す画素電極の端部領域で切断した液晶表示パネルの断面と高分子構造物の配置の一例を示す説明図である。
【図12】本発明に係るTFT基板の平面視における主な構成の配置及び画素電極の端部領域の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、図面を参照しながら実施の形態とともに詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全ての図面において、同一機能を有するものは、同一符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
図1から図12は、本発明に係る液晶表示装置の主要部の概略構成を説明するための模式図である。
【0023】
図1は、本発明に係る液晶表示パネルの平面構成の一例を示す模式平面図である。図2は、図1のII−II線の位置における断面構成の一例を示す模式断面図である。図3は、TFT基板の平面構成の一例を示す模式平面図である。図4および図5は、カラーフィルター基板の平面構成の例を示す模式平面図である。図6から図10は、図3のVI−VI線及び図4または図5のVI−VI線の位置における断面構成と高分子構造物の配置方法の一例を示す断面図又は平面図である。図11A及び図11Bは、電極端部における高分子構造物の配置方法の一例を示す平面図及び断面図である。図12は、電極端部における高分子構造物の配置方法の一例を示す平面図である。
【0024】
本明細書では、本発明に係る液晶表示装置の一例として、携帯電話端末等に用いられる小型の液晶表示装置を挙げる。また、本発明は、液晶表示装置のうち、特に、液晶表示パネルの構成に関わるものである。そのため、本明細書では、本発明に係る液晶表示装置のうち、液晶表示パネルの構成及びその製造方法を説明する。
【0025】
なお、本発明に係る液晶表示パネルの基本的な構成は、従来のものと同様でよい。そのため、本明細書では、本発明に係る液晶表示パネルの特徴部分の構成及びその製造方法を中心に説明し、従来のものと同様の構成及び製造方法でよい点に関する具体的な説明は省略する。また、液晶表示パネルは、アクティブマトリクス型であるとする。
【0026】
本発明に係る液晶表示パネルは、例えば、図1及び図2に示すように、TFT基板1(第一の基板)、カラーフィルター基板2(第二の基板)、液晶層3、シール材4a,4b、第一の偏光板5、第二の偏光板6及び高分子構造物7を有する。また、この液晶表示パネルには、一方が画素電極である第一の電極及び第二の電極を有する画素が複数設けられている。すなわち、複数の画素の各々は、液晶層3に電界を印加するための第一の電極及び第二の電極を有し、当該第一の電極及び第二の電極のうち、一方は画素電極である。
【0027】
TFT基板1は、第一の絶縁基板101、第一の薄膜積層体102及び第一の配向膜103を有する。第一の絶縁基板101は、例えば、ガラス基板等の透明な絶縁基板である。第一の薄膜積層体102は、例えば、走査信号線10、映像信号線11、TFT素子12、画素電極8及び複数の絶縁層を含む。第一の配向膜103は、例えば、その表面(液晶層3との界面)にラビング処理等の配向処理が施されたポリイミド膜からなる。なお、第一の配向膜103は、光配向処理が施されたものとすることもできる。
【0028】
カラーフィルター基板2は、第二の絶縁基板201、第二の薄膜積層体202及び第二の配向膜203を有する。第二の絶縁基板201は、例えば、ガラス基板などの透明な絶縁基板である。第二の薄膜積層体202は、例えば、ブラックマトリクス13、カラーフィルター及び平坦化層を含む。第二の配向膜203は、例えば、その表面(液晶層3との界面)にラビング処理等の配向処理が施されたポリイミド膜からなる。なお、第二の配向膜203は、光配向処理が施されたものとすることもできる。
【0029】
液晶表示パネルにおいては、図1及び図2に示すように、TFT基板1とカラーフィルター基板2との間に液晶層3が設けられている。TFT基板1とカラーフィルター基板2とは、表示領域DAを囲む環状のシール材4aで貼り合わされている。シール材4aは、液晶層3として用いる液晶組成物を注入する注入口を有し、当該注入口はシール材4bで封止されている。すなわち、液晶層3は、シール材4a,4bにより、TFT基板1とカラーフィルター基板2との間に封入されている。また、図示は省略するが、TFT基板1とカラーフィルター基板2との間には、例えば、各画素における液晶層3の厚さを均一化するためのスペーサーが設けられている。
【0030】
また、本発明に係る液晶表示パネルでは、TFT基板1とカラーフィルター基板2との間に、液晶層3やスペーサーの他に、高分子構造物7が設けられている。この高分子構造物7は、隣り合う画素間での配向の影響を防ぐためのものである。すなわち、高分子構造物7は、隣り合う画素のうち一方の画素の液晶の配向による、他方の画素の液晶の配向への影響を低減し又は回避するために設けられている。
【0031】
そして、この高分子構造物7は、信号線(映像信号線および走査信号線)と画素電極8の間で、液晶層中に形成されている。図2に示す例において、高分子構造物7は、カラーフィルター基板2のブラックマトリクス13に対応する領域(ブラックマトリクス13の下方の領域)に設けられている。すなわち、高分子構造物7は、ブラックマトリクスと重なる領域に形成されている。高分子構造物7は、例えば、表示領域DAに含まれる全ての画素境界部に設けられる。なお、図2における寸法Pxは、1つの画素のx軸方向の寸法を示す。
【0032】
以下、各画素の構造や高分子構造物7の形状及び大きさについて、図5から図12を参照しながら、具体的に説明する。
【0033】
本発明に係る液晶表示パネルにおける画素の構成の一例として、IPSモードの一つであるFFSモードの場合の画素の構成を挙げる。FFSモードの液晶表示パネルは、IPSモードと同様に、第一の電極及び第二の電極が第一の基板及び第二の基板のうち一方に設けられている。すなわち、図1及び図2に示す例では、画素電極8及び共通電極9が共にTFT基板1(より具体的には、第一の薄膜積層体102)に設けられている。
【0034】
なお、図3に示すように、液晶表示パネルは、走査信号線10と、映像信号線11と、を有している。この走査信号線10および映像信号線11の幅はそれぞれWG、WSである。それぞれ隣接する2本の映像信号線11の距離Pxは、1つの画素が設けられる領域のx軸方向の寸法である。隣接する2本の走査信号線10の距離Pyは、1つの画素が設けられる領域のy軸方向の寸法である。なお、図3は、1つの画素PC及びその近傍の平面視における構成を模式的に示しており、x軸方向の寸法とy軸方向の寸法との関係は、実際の液晶表示装置における関係と必ずしも一致しない。
【0035】
また、液晶表示パネルにおける各画素は、例えば、1本の走査信号線10と接続しているゲート電極、1本の映像信号線11と接続している第一のソース・ドレイン電極、及び画素電極8と接続している第二のソース・ドレイン電極を含むTFT(薄膜トランジスタ)素子12を有する。
【0036】
図3に示されるように、各画素において、液晶が駆動する領域は画素電極8及び共通電極9の大きさに依存する。したがって、液晶表示装置における透過率を向上させるためには、これら電極群のサイズを大きくすることが効果的であることが理解される。ただし、すでに述べたように、隣り合う画素の一方の液晶の配向が他方の液晶の配向に与える影響を抑制する工夫が必要である。
【0037】
図3に示す例において、画素電極8は、複数の櫛歯部8aを有する櫛歯形状に形成されている。具体的に、画素電極8の複数の櫛歯部8aは、図3に示すように、映像信号線11の延びるy軸方向を長手方向とする帯状であり、且つ、これらの櫛歯部8aが走査信号線10の延びるx軸方向に並んでいる。
【0038】
この場合、画素電極8と共通電極9との間に電位差を与えることにより液晶層3に印加される電界方向17aは、主として、図11Aに示すように、x軸方向になる。そのため、このような画素を有する液晶表示パネルでは、たとえば、電界無印加時の液晶層3の配向方向18が、電界方向17a(x軸方向)から角度θだけ傾いた方向になるようにする。なお、この電界無印加時の液晶層3の配向方向18と電界方向17aとのなす角θは、例えば、70度から85度程度である。
【0039】
しかしながら、図11Aに示すように、画素電極8の端部を含む領域(端部領域)16では、電界方向17bがy軸方向になる。したがって、この画素電極8の端部領域16では、いわゆるディスクリネーションが発生し、これが透過率を下げる要因ともなっている。
【0040】
そこで、本発明に係る液晶表示装置においては、高分子構造物7は、さらに、この画素電極8の端部領域16に形成することとしてもよい。すなわち、図11Aに示す例では、画素電極8の複数の櫛歯部8aの先端部分に跨る領域に高分子構造物7を形成する。
【0041】
図11Bは、図11Aに示す端部領域16の断面図である。図11A及び図11Bに示すように、高分子構造物7は、端部領域16において、画素電極8の複数の櫛歯部8aの先端部分に跨るように形成されている。
【0042】
なお、図4および図5には、図3に示すTFT基板1に対向するカラーフィルター基板2の主な構成を平面視で示す。図4および図5に示すように、カラーフィルター基板2においては、図3に示す走査信号線10及び映像信号線11に対応する位置にブラックマトリクス13が形成される。すなわち、中央の画素PCの着色層14と、他の隣り合う画素PL、PR、PU、PDの着色層14L、14R、14U、14Dと、は格子状のブラックマトリクス13により仕切られている。このブラックマトリクス13の幅はWBである。
【0043】
図6から図7は、図3のVI−VI線の位置における断面図である。これら図6から図7は、図4または図5のVI−VI線の位置における断面図でもある。
【0044】
図6に示されているように高分子構造物7の位置は、映像信号線11と画素電極8の間であれば特に限られない。高分子構造物7の幅WPは、ブラックマトリクス13の幅WBから信号線の幅(映像信号線11の幅WSもしくは走査信号線10の幅WG)の差の範囲内であればよい。すなわち、図6で示されるような高分子構造物7の短辺を横断する断面において、高分子構造物7の幅WPと、ブラックマトリクス13の幅WBと、信号線の幅(映像信号線11の幅WSもしくは走査信号線10の幅WG)とが、下記式(1)の条件を満たすこととなる。
【0045】
【数2】

【0046】
図6では映像信号線11の左右の高分子構造物7の幅WPがほぼ同じ場合を示している。高分子構造物7の位置は隣り合う画素電極8の間に収まる範囲であれば特に限られない。したがって、高分子構造物7は、縦のブラックマトリクス13とずれて重なる位置に形成されてもよい。
【0047】
また、図7に示したように、高分子構造物7は映像信号線11と画素電極8の間に形成されるが、この図7では映像信号線11の左右の高分子構造物7の幅WPが非対称な場合を示している。この場合も、高分子構造物7は、縦のブラックマトリクス13とずれて重なる位置に形成されてもよい。
【0048】
すなわち図6、7いずれにおいても、高分子構造物7は平面視において映像信号線11の一部を挟むように映像信号線11の一部の縁に沿って延伸し、TFT基板1及びカラーフィルター基板2の一方の基板から他方の基板に向かって形成される、二つの高分子構造物7が、信号線によって囲まれるいずれかの領域(画素のx方向:Px)の内側に重なるように備えられている。そして隣り合う二つの高分子構造物7の間には液晶層3が備えられることとなる。
【0049】
具体的に、図8には、中央の画素PCと画素PCの画素電極の両側(図8におけるx方向)で隣り合う画素PLおよびPRとを仕切るブラックマトリクス13の下の映像信号線11(図示なし)と、画素電極8(図示なし)と、の間にそれぞれ形成された、互いに平行な2本の直線状の高分子構造物7が示されている。高分子構造物7の幅WPがほぼ同じ場合を示している。この場合も、高分子構造物7は、縦(図8におけるy方向)のブラックマトリクス13とずれて重なる位置に形成されてもよい。
【0050】
すなわち、高分子構造物7は平面視において映像信号線11の一部を挟むように映像信号線11の縁に沿って延伸し、TFT基板1及びカラーフィルター基板2の一方の基板から他方の基板に向かって形成される、二つの高分子構造物7が、信号線によって囲まれるいずれかの領域(画素のx方向:Px)の内側に重なるように備えられている。そして隣り合う二つの高分子構造物7の間には液晶層3が備えられることとなる。
【0051】
そして、図8に示されるように、信号線(映像信号線および走査信号線)によって囲まれる領域は矩形状を有している。そして、高分子構造物7は、矩形状の領域の境界を表す四辺のうちの互いに対向する二つの辺と重ねて形成されることとなる。
【0052】
また、図9には、中央の画素PCと画素PCの画素電極の両側(図9におけるx方向)で隣り合う画素PLおよびPRとを仕切るブラックマトリクス13の下の映像信号線11(図示なし)と、画素電極8(図示なし)と、の間にそれぞれ形成された、互いに平行な2本の直線状の高分子構造物7が示されている。さらに、中央の画素PCと画素PCの画素電極の上下(図9におけるy方向)で隣り合う画素PUおよびPDとを仕切るブラックマトリクス13の下の走査信号線10(図示なし)と、画素電極8(図示なし)と、の間にそれぞれ形成された、互いに平行な2本の直線状の高分子構造物7が示されている。高分子構造物7の幅WPがほぼ同じ場合を示している。この場合も、高分子構造物7は、縦(図9におけるy方向)のブラックマトリクス13とずれて重なる位置に形成されてもよい。
【0053】
すなわち、高分子構造物7は平面視において映像信号線11および走査信号線10の一部を挟むように映像信号線11および走査信号線10の縁に沿って延伸し、TFT基板1及びカラーフィルター基板2の一方の基板から他方の基板に向かって形成される、少なくとも二つの高分子構造物7が、信号線によって囲まれるいずれかの領域(画素のx方向:Px、および画素のy方向:Py)の内側に重なるように備えられている。そして隣り合う二つの高分子構造物7の間には液晶層3が備えられることとなる。
【0054】
そして、図9に示されるように、信号線(映像信号線および走査信号線)によって囲まれる領域は矩形状を有している。そして、高分子構造物7は、信号線(映像信号線および走査信号線)によって囲まれる領域の境界を表す四辺と重ねて矩形状に形成されることとなる。
【0055】
図10には、中央の画素PCと画素PCの画素電極の両側(図10におけるx方向)で隣り合う画素PLおよびPRとを仕切るブラックマトリクス13の下の映像信号線11(図示なし)と、画素電極8(図示なし)と、の間にそれぞれ形成された、互いに平行な2本の直線状の高分子構造物7が示されている。ただし、図8とは異なり、高分子構造物7の幅WPが非対称な場合を示している。この場合も、高分子構造物7は、縦(図9におけるy方向)のブラックマトリクス13とずれて重なる位置に形成されてもよい。
【0056】
すなわち、高分子構造物7は平面視において映像信号線11の一部を挟むように映像信号線11の縁に沿って延伸し、TFT基板1及びカラーフィルター基板2の一方の基板から他方の基板に向かって形成される、二つの高分子構造物7が、信号線によって囲まれるいずれかの領域(画素のx方向:Px)に重なるように備えられている。そして隣り合う二つの高分子構造物7の間には液晶層が備えられることとなる。
【0057】
この場合においては、信号線(映像信号線および走査信号線)によって囲まれる領域は矩形状を有している。そして、高分子構造物7は、矩形状の領域の境界を表す四辺のうちの互いに対向する二つの辺と重ねて形成されることとなる。
【0058】
図12は、櫛歯状に形成された画素電極8の複数の櫛歯部8aが、走査信号線10に平行な場合の液晶表示装置における高分子構造物7の形成位置を示している。図12に示す例においても、高分子構造物7は、画素電極8の複数の櫛歯部8aの先端部分に跨る端部領域16に形成することができる。画素内の高分子構造物7の形成位置は、画素電極8の端部領域16を含んでいれば、特に制限されるものではない。
【0059】
また、液晶層3は、いわゆる高分子安定化の目的で高分子を含有することもできる。すなわち、この場合、液晶層3は、高分子構造物7以外の高分子を含み、当該高分子構造物7の密度は、当該液晶層3に含まれる当該高分子の密度より高いこととなる。液晶層が高分子構造物7の密度より、低分子の高分子をさらに含むことによって、液晶層3中には、高分子安定化のための比較的密度の低い高分子ネットワークが形成されるとともに、一方の基板の特定領域において、上述したような画素間の配向の影響を防止する比較的密度の高い高分子構造物7が形成されることとなる。
【0060】
本発明において高分子構造物7を形成する方法として、液晶組成物に含有する重合性モノマーを重合させて高分子構造物7を形成する方法が好ましく用いられる。すなわち、この場合、本発明に係る液晶表示装置の製造方法は、第一の基板(TFT基板1)と第二の基板(カラーフィルター基板2)との間に液晶層3を封入する工程を含み、当該工程において、当該液晶層3に用いる母体液晶に重合性モノマーを含有させてなる液晶組成物を当該第一の基板と第二の基板との間に封入するとともに、次いで、当該重合性モノマーを重合させて、隣り合う当該画素電極8の間に高分子構造物7を形成する。
【0061】
液晶層3は、液晶材料と数種類の添加物からなる液晶組成物である。この液晶組成物において、高分子構造物7の形成に用いる重合性モノマーの含有量(液晶層3を構成する液晶組成物の総重量に占める重合性モノマーの割合)は、例えば、2.0重量%以下とすることができ、好ましくは1.5重量%以下とすることができる。
【0062】
またこのとき、重合性モノマーの含有量は、より好ましくは1.0重量%以下とすることができる。ただし、本発明の効果を得るには0.5重量%以上必要である。そして、液晶表示装置において最終的に形成される高分子構造物7の液晶層3における含有量も同様に、0.5重量%から2.0重量%の範囲となる。
【0063】
この場合、液晶層3における液晶材料の含有量(液晶層3を構成する液晶組成物の総重量に占める液晶材料の割合)は、例えば、98.0〜99.5重量%とすることができる。なお、液晶組成物に含有される液晶材料としては、ネマチック液晶材料を好ましく用いることができる。
【0064】
液晶層3に含有する重合性モノマーを重合させて高分子構造物7を形成する場合は、当該重合性モノマーを含有する液晶組成物をTFT基板1とカラーフィルター基板2との間に封入し、次いで、当該封入された液晶組成物中で当該重合性モノマーを重合することにより、当該高分子構造物7を形成する。
【0065】
ここで、重合性モノマーとしては、例えば、光を照射することで重合する光重合性モノマーを好ましく用いることができる。すなわち、例えば、二つ以上の官能基を有する光重合性モノマーを好ましく用いることができる。具体的には、芳香環を含む主骨格構造の両末端に官能基としてアクリル基又はメタクリル基の一方又は両方を有する誘導体を好ましく用いることができる。
【0066】
また、高分子構造物7の形成には、例えば、液晶性の重合性モノマーを用いることもできる。この場合、液晶材料は、母体液晶と、液晶性の重合性モノマーと、を含むこととなる。液晶性を示す重合性モノマーを用いることにより、液晶材料を高分子構造物7により安定化する効果を高めることができる。重合性モノマーとしては、これらのうち1種を単独で用いることができ、また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0067】
光重合性モノマーを用いる場合、高分子構造物7は、TFT基板1とカラーフィルター基板2との間に封入された液晶組成物に、所定の条件を満たす光を照射し、当該液晶組成物に含有する光重合性モノマーを重合させることにより形成される。
【0068】
すなわち、まず、TFT基板1およびカラーフィルター基板2と、液晶材料及び光重合性モノマーを含有する液晶組成物とを準備する。次いで、TFT基板1とカラーフィルター基板2とを貼り合わせるとともに、当該TFT基板1とカラーフィルター基板2との間に液晶組成物を封入する。
【0069】
また、光重合性モノマーを重合させる場合は、光重合開始剤を用いることが好ましい。この光重合開始剤としては、液晶組成物に対する光照射に伴って光重合性モノマーの重合を効果的に進行させるものであれば特に限られず、任意の種類のものを適宜選択して用いることができる。すなわち、例えば、紫外線の照射によってフリーラジカルを発生させて、光重合性モノマーのラジカル重合を効果的に促進する光重合開始剤を好ましく用いることができる。
【0070】
光重合開始剤としては、例えば、9−フルオレノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ジベンゾスベロン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ベンゾイン、2−ベンゾイル安息香酸、4-ベンゾイル安息香酸、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシフェニル-アセトフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、カンファーキノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−クロロベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイル安息香酸エステル、p−アニシルを用いることができる。
【0071】
貼り合わされた一対の基板1,2間の信号線と画像電極との間に高分子構造物7を形成するには、例えば、紫外線照射装置を用いて、予め定められた形状を有するフォトマスクを介してTFT基板側から紫外線を露光する手段を用いればよい。フォトマスクの形状が、図4や図5に示されているブラックマトリクス13の部分だけが光透過するものである場合、本発明の高分子構造物7の形状が得られる。
【0072】
さらに詳しく述べれば、映像信号線11および走査信号線10はCr(クロム)やAl(アルミニウム)等の光を透過しない有色金属によって形成されているため、上記のように図4に示されているブラックマトリクス13の部分だけが光透過するようなフォトマスクを用いれば、映像信号線11および走査信号線10がフォトマスクの役割を果たすため、図9に示されている高分子構造物7が得られる。一方、上記のように図5に示されているブラックマトリクス13の部分だけが光透過する形状のフォトマスクを用いれば、映像信号線11がフォトマスクの役割を果たすため、図8または図10に示されている高分子構造物7が得られることになる。
【0073】
このように、本発明に係る液晶表示装置の製造方法においては、フォトマスクを使用して紫外線照射することによりTFT基板1又はカラーフィルター基板2の信号線と画像電極との間に高分子構造物7を形成することができる。特に高い解像度を必要とするフォトマスクを使用しなくても良いともいえる。したがって、本発明によれば、高い透過率を有し、かつ、生産性効率の高い液晶表示装置及びその製造方法を提供することもできる。
【0074】
また、液晶組成物には、高分子構造物7の形成に加えて、いわゆる高分子安定化の目的で重合性モノマーを添加することもできる。この場合、液晶層3は、高分子構造物7以外に高分子を含み、当該高分子構造物7の密度は、当該液晶層3に含まれる当該高分子の密度より高いこととなる。
【0075】
すなわち、液晶層3中には、高分子安定化のための比較的密度の低い高分子ネットワークが形成されるとともに、一方の基板の特定領域には、上述したような高分子構造物7が形成されることとなる。
【0076】
次に、本発明に係る液晶表示パネルの具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0077】
実施例1では、IPSモードの一つであるFFSモードの液晶表示パネルに高分子構造物7を設けるときの具体的な形成方法及び作用効果について説明する。
【0078】
なお、実施例1では、平面寸法が100mm(長片側)×100mm(短片側)で、対角寸法が約6インチの液晶表示パネルを作製した。この液晶表示パネルのガラス基板の厚みは1.1mmであった。また、1つ画素の大きさ(Py×Px)は600μm×200μmとした。この液晶表示パネルにおける第一の絶縁基板101および第二の絶縁基板201には、それぞれ、表面が研磨された透明なガラス基板を用いた。
【0079】
そして、一方のガラス基板である第一の絶縁基板101上には、図6に示したような走査信号線、映像信号線、TFT素子、画素電極、共通電極及び絶縁層を有する第一の薄膜積層体102と第一の配向膜103とを形成しTFT基板1とした。走査信号線の幅WGと映像信号線の幅WSは同じく20μmとした。共通電極の短辺の幅を160μm、画素電極の数を4本、そのラインとスペースを20μmとし、画素電極全体の幅は140μmとした。
【0080】
他方のガラス基板である第二の絶縁基板201上には、ブラックマトリクス、着色層及び平坦化層を有する第二の薄膜積層体202と、第二の配向膜203とを形成し、カラーフィルター基板2とした。ブラックマトリクス13の幅WBを40μmとした。
【0081】
このとき、第一の配向膜103及び第二の配向膜203を構成する材料としては、ポリイミドを採用した。すなわち、まず、ポリイミド樹脂前駆体を印刷機で塗布して焼成し、膜厚が0.07〜0.1μmのポリイミド膜を形成した。
【0082】
その後、当該ポリイミド膜の表面に、液晶層3に含まれる液晶材料を配向させるための配向処理を施して、第一の配向膜103及び第二の配向膜203を形成した。配向処理は、ラビングロールとしてレーヨン製バフ布を備えたラビング機を用いて行なった。ラビング角度は、画素電極の櫛歯方向に対して15度とし、一対の基板1,2の間で平行になるようにした。
【0083】
TFT基板1とカラーフィルター基板2との接着は、図1に示した環状のシール材4aを介して行った。すなわち、エポキシ樹脂からなるシール剤の中にポリマビーズを適量混入して複合シール剤を調製し、シールマスクを用いて当該複合シール剤を一方の基板上に印刷することによりシール材4aを形成した。その後、シール材4aを構成する複合シール剤の仮硬化を行い、TFT基板1とカラーフィルター基板2とを組み合わせた。そして、プレスを用いて当該一対の基板を加圧しつつ、シール材4aを完全硬化させた。
【0084】
このとき、TFT基板1、カラーフィルター基板2、及びシール材4aで囲まれた空間(パネル部)には、スペーサーとして球形のポリマビーズを挟持し、液晶組成物を封入した状態でのギャップ(厚さd)が4.5μmとなるように調整した。また、このとき、パネル部に液晶組成物を注入するためにシール材4aに設けた液晶注入口の幅は、10mmとした。
【0085】
一方、液晶層3および高分子構造物7の形成に用いる液晶組成物として、重合性モノマー、重合開始剤、及び液晶材料から構成される液晶組成物Aを調製した。重合性モノマーとしては、2官能性アクリルモノマーを用いた。重合開始剤としては、液晶に溶解する2,2−ジエトキシフェニル-アセトフェノン(イルガキュア651、長瀬産業株式会社)を使用した。液晶材料としては、フッ素系ネマチック液晶組成物を使用した。なお、この液晶組成物Aにおける重合性モノマー、重合開始剤、及び液晶材料の重量比率は、それぞれ、0.5重量%、0.05重量%、及び99.45重量%であった。
【0086】
次に、TFT基板1、カラーフィルター基板2、及びシール材4aで囲まれた空間に液晶組成物Aを注入した。すなわち、図示しない密閉可能な容器の中に液晶表示パネルを、その液晶注入口を下方に向けて配置した。また、容器の外部に設けられた上下駆動装置に接続されている液晶皿に液晶組成物Aを入れた。なお、液晶組成物Aは液晶皿中で若干盛り上がった状態で保持された。
【0087】
容器の外部には真空ポンプとピラニ真空計に接続され配管とが設けられた。そして、真空ポンプを作動させ、調整バルブでピラニ真空計をモニタしながら排気量を調整し、真空度が120分で5Paになるまで排気して容器内を減圧した。
【0088】
次いで、上下駆動装置を作動させて液晶注入口を液晶組成物Aに浸漬した。その後、調整バルブを閉じ、リーク配管の調整バルブを開けて、容器内に窒素又は空気を導入して、TFT基板1、カラーフィルター基板2、及びシール材4aで囲まれた空間に液晶組成物Aを注入した。注入が終了した後、液晶注入口を紫外線硬化剤(アクリル性樹脂)でなるシール材4bで封止した。
【0089】
その後、図4に示されるブラックマトリクス13の部分だけが光透過する形状のフォトマスクを使用してTFT基板1側から紫外線を照射することにより、液晶組成物中において重合性モノマーを重合させる高分子構造物形成工程を実施した。図4に示されるブラックマトリクス13の部分だけが紫外線透過する形状のフォトマスクに透過させる紫外線照射光量は365nmにおいて合計15Jであり、数回に分けて重合操作を実施した。こうして、液晶組成物Aを用いて形成された液晶層3と高分子構造物7を有する液晶表示パネルを製造した。
【0090】
なお、比較パネルを三つ準備した。比較パネルAにおいては、電極構成のみ変更し、その他の構成は変えなかった。この比較パネルAの電極構成は次のようにした。すなわち、共通電極の短辺の幅を120μm、画素電極の数を3本、そのラインとスペースを20μmとし、画素電極全体の幅は100μmとした。
【0091】
比較パネルBについては、紫外線照射条件とラビング角度のみ変更し、その他の構成は変えなかった。比較パネルBでは、紫外線を照射せず、またラビング角度は画素電極の櫛歯方向に対して60度とし、一対の基板1,2の間で平行になるようにした。
【0092】
比較パネルCについては、紫外線照射条件のみ変更し、その他の構成は変えなかった。比較パネルCでは、紫外線を照射する工程を実施しなかった。
【0093】
そして、このようにして製造された液晶表示パネル及び比較パネルにおける透過率を評価した。透過率は、入射光と出射光との比率により評価した。本実施例では、比較パネルBにおいて最大の透過率を与える液晶配向が実現されていたため、当該比較パネルBを100%として、本実施例の液晶表示パネル及び比較パネルの透過率を算出した。
【0094】
その結果、液晶表示パネルの透過率は65%、比較パネルAの透過率は55%であった。したがって、本実施例の液晶表示パネルの透過率は比較パネルよりも10%向上した。また、本実施例においては、液晶表示パネルの青色画素のみ駆動させたが、赤色や緑色の画素の色漏れはなく、隣り合う画素間での液晶配向の影響は見られなかった。これに対し、比較パネルCにおいて青色画素のみ駆動したところ、赤色や緑色の画素の色漏れが観察された。したがって、比較パネルCでは隣り合う画素間で液晶配向の影響が生じていることが確認された。
【0095】
次に、液晶表示パネルを分解した後、当該液晶表示パネル中の液晶組成物Aをベンゼンで洗い流した。その後、液晶表示パネル中にベンゼンを入れた状態で0℃に冷却してフリーズドライ法によりベンゼンを除去した。そして、このベンゼンを除去した後の液晶表示パネルの断面を電子顕微鏡で観測した。
【0096】
その結果、図6に示したように、カラーフィルター基板2の映像信号線11と画素電極8との間であって、ブラックマトリクス13の下において、当該ブラックマトリクス13と重なる位置に高分子構造物7が観察された。また、パネル表面においては図9に示したような形状の高分子構造物7を観察することができた。したがって、この高分子構造物7の存在により、液晶表示パネルの駆動時における、隣り合う画素間の液晶配向の影響が消失したと考えられた。
【0097】
また、図6に示されるように、各画素同士が高分子構造物7、液晶層3、高分子構造物7という組成の異なる3つの層によって仕切られることによって、例えば隣り合う画素からの光は、層間の界面によって反射されることとなる。これによって各画素における、隣り合う画素からの光の影響が抑制されることとなり、隣り合う画素間での色漏れは低減することとなる。
【0098】
なお、本実施例では、IPSモードの一つであるFFSモードの液晶表示パネルにおいて、その効果を明らかにしたが、液晶表示装置における液晶層の動作モードとしては、TNモード、STNモード、VAモード、OCBモード、IPSモードにおいても同様の効果が得られることも明らかである。
【0099】
また、本実施例では、ブラックマトリクスの付与されたカラーフィルター基板を使用しているが、ブラックマトリクスがないカラーフィルター基板を用いても同様の効果が得られることも明らかである。
【0100】
また、画素電極8と共通電極9とは液晶の構成においてそれぞれ逆の配置となってもよい。この場合、共通電極9と信号線との間に高分子構造物7が備えられることとなる。
【実施例2】
【0101】
実施例2では、紫外線照射工程においてフォトマスクを変更した以外、実施例1と同様の方法で液晶パネルを製造した。本実施例では、図5に示されるブラックマトリクス13の部分だけが光透過する形状のフォトマスクを使用した。すなわち、映像信号線11と画素電極8の間に高分子構造物7を形成するようなフォトマスクを使用している。本実施例2では、このフォトマスク以外は、実施例1と同様の方法を用いたため、液晶表示パネルの製造手順に関する説明を省略する。
【0102】
このようにして製造された液晶表示パネル及び比較パネルにおける透過率を評価した。その結果、液晶表示パネルの透過率は、比較パネルよりも10%以上向上した。また、液晶表示パネルの青色画素のみ駆動したが、赤色や緑色の画素の色漏れもなく、隣り合う画素間の液晶配向の影響は見られなかった。
【0103】
次に、液晶表示パネルを分解した後、当該液晶表示パネル中の液晶組成物Aをベンゼンで洗い流した。その後、液晶表示パネル中にベンゼンを入れた状態で0℃に冷却してフリーズドライ法によりベンゼンを除去した。そして、このベンゼンを除去した後の液晶表示パネルの断面を電子顕微鏡で観測した。
【0104】
その結果、図6に示したように、カラーフィルター基板2の映像信号線11と画素電極8との間であって、ブラックマトリクス13の下において、当該ブラックマトリクス13と重なる位置に高分子構造物7が観察された。また、パネル表面においては図8に示したような形状の高分子構造物7を観察することができた。したがって、この高分子構造物7の存在により、液晶表示パネルの駆動時における、隣り合う画素間の液晶配向の影響が消失したと考えられた。
【実施例3】
【0105】
実施例3では、実施例1おける液晶組成物Aの構成と紫外線照射条件を変更した以外、実施例1と同様の方法で液晶パネルを製造した。
【0106】
本実施例の液晶組成物Aにおける重合性モノマー、重合開始剤、及び液晶材料の重量比率は、それぞれ、1.2重量%、0.1重量%、及び98.7重量%であった。
【0107】
本実施例では、図4に示されるブラックマトリクス13の部分だけが光透過する形状のフォトマスクを使用してTFT基板1側から紫外線を照射し、液晶組成物中において重合性モノマーを重合させる高分子構造物形成工程を実施したあとに、フォトマスクを使用せずにTFT基板1側から紫外線を全面照射する高分子安定化工程を実施し、画素中に高分子構造物と比較して低密度の高分子を形成させている。実施例1と同様のフォトマスクを使用し、このフォトマスク使用時の紫外線照射光量は365nmにおいて合計15Jであり、数回に分けて重合操作を実施した。この後、フォトマスクなしで紫外線を全面照射する際の紫外線照射光量は365nmにおいて合計3Jであり、1回照射だけで全面照射操作を実施した。こうして、液晶組成物Aを用いて形成された液晶層3と高分子構造物7を有する液晶表示パネルを製造した。
【0108】
本実施例3では、これらの液晶組成物Aの構成と紫外線照射条件の変更以外は、実施例1と同様の方法を使用したため、液晶表示パネルの製造手順に関する説明を省略する。
【0109】
このようにして製造された液晶表示パネル及び比較パネルにおける透過率を評価した。その結果、液晶表示パネルの透過率は、比較パネルよりも10%以上向上した。また、液晶表示パネルの青色画素のみ駆動したが、赤色や緑色の画素の色漏れもなく、隣り合う画素間における液晶配向の影響は見られなかった。また、応答時間は比較パネルCと比較して10%以上、短縮された。
【0110】
次に、液晶表示パネルを分解した後、当該液晶表示パネル中の液晶組成物Aをベンゼンで洗い流した。その後、液晶表示パネル中にベンゼンを入れた状態で0℃に冷却してフリーズドライ法によりベンゼンを除去した。そして、このベンゼンを除去した後の液晶表示パネルの断面を電子顕微鏡で観測した。
【0111】
その結果、図6に示したように、カラーフィルター基板2の映像信号線11と画素電極8との間であって、ブラックマトリクス13の下において、当該ブラックマトリクス13と重なる位置に高分子構造物7が観察された。また、平面視においては図9に示したような、信号線によって囲まれる領域の境界を表す四辺と重ねて形成される矩形状の高分子構造物7を観察することができた。したがって、この高分子構造物7の存在により、液晶表示パネルの駆動時における、隣り合う画素間の液晶配向の影響が消失したと考えられた。さらに、画素中にも低密度の高分子が観測された。ただし、映像信号線11と画素電極8との間に観測される高分子構造物7のように密な構造のものではなく、かなり分散して観察された。このとき密度によっては、基板面に厚膜状のものとして観察された。したがって、この画素部分の低密度の高分子の存在により、液晶表示パネルの駆動時における応答時間が短縮したと考えられた。
【0112】
以上、本発明を、上述の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはもちろんである。
【0113】
また、真空封入ではなく、ODF(滴下封入)によって液晶組成物を封入することにより液晶層3を形成した場合であっても、同様に、透過率に優れ、かつ、信頼性にも優れた液晶表示パネル(液晶表示装置)を提供することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 TFT基板、101 第一の絶縁基板、102 第一の薄膜積層体、103 第一の配向膜、2 カラーフィルター基板、201 第二の絶縁基板、202 第二の薄膜積層体、203 第二の配向膜、3 液晶層、4a,4b シール材、5 第一の偏光板、6 第二の偏光板、7 高分子構造物、8、8U、8D 画素電極、8a 櫛歯部、9 共通電極、10 走査信号線、11 映像信号線、12 TFT素子、13 ブラックマトリクス、14、14L、14R、14U、14D 着色層、16 端部領域、17a,17b 電界方向、18 プレチルト方向、PC、PL、PR、PU、PD 画素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板と、第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に封入された液晶層と、を有し、一方が画素電極である第一の電極及び第二の電極を有する画素が複数設けられた液晶表示装置であって、
画素のそれぞれは信号線によって囲まれる領域内に設けられ、隣り合う前記画素の間には前記信号線の一部が形成されており、
前記液晶層内に二つの高分子構造物が形成され、
前記二つの高分子構造物の間には液晶層が備えられ、
平面視において、前記二つの高分子構造物は、前記信号線の一部を挟み、
平面視において、前記二つの高分子構造物のそれぞれは、前記信号線の一部に沿って延伸し、
前記二つの高分子構造物のそれぞれは、前記第一の基板及び前記第二の基板の一方の基板から他方の基板に向かって形成され、
前記二つの高分子構造物のそれぞれは、いずれかの前記領域に重なるように備えられており、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第一の基板及び前記第二の基板のうち、一方の基板に前記第一の電極及び第二の電極が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第一の基板及び第二の基板のうち、一方の基板にカラーフィルターが形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2いずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第一の基板及び第二の基板のうち、一方の基板にブラックマトリクスが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記高分子構造物は、平面視においてブラックマトリクスと重なる領域に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記高分子構造物は、平面視において走査信号線及び映像信号線の一方又は両方とブラックマトリクスが重なる領域以外に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記高分子構造物の短辺を横断する断面において、前記高分子構造物の幅WPと、前記ブラックマトリクスの幅WBと、前記映像信号線の幅WSまたは前記走査信号線の幅WGとが、下記式(1)の条件を満たすことを特徴とする請求項6の液晶表示装置。
【数1】

【請求項8】
前記高分子構造物は、平面視において前記画素電極の端部を含む領域に、さらに形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶層は、前記高分子構造物の密度より、低密度の高分子をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記領域は、平面視において矩形状を有し、
前記高分子構造物は、前記領域の境界を表す四辺と重ねて形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記領域は、平面視において矩形状を有し、
前記高分子構造物は、前記領域の境界を表す四辺のうちの互いに対向する二つの辺と重ねて形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記高分子構造物は、前記液晶層において重合性モノマーを重合して形成されたことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記高分子構造物は、前記液晶層において光重合開始剤の存在下で前記重合性モノマーを重合して形成されたことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
第一の基板と第二の基板との間に封入された液晶層を有し、一方が画素電極である第一の電極及び第二の電極を有する複数の画素が設けられ、前記第一の電極及び前記第二の電極が前記第一の基板及び前記第二の基板の相対する面上のいずれか一方の面上に設けられ、隣り合う前記画素電極の間に信号線が形成された液晶表示装置の製造方法であって、
前記液晶層に用いる母体液晶及び重合性モノマーを含有する液晶組成物を前記第一の基板と前記第二の基板との間に封入する工程と、
前記重合性モノマーを重合させて、前記信号線と前記画素電極との間で、かつ前記液晶層中に高分子構造物を形成する高分子構造物形成工程と、
を含むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記高分子構造物形成工程は、前記第一の基板及び前記第二の基板のいずれか一方の前記信号線が形成された基板の、前記液晶層と接しない一方の面側から光を照射することによって前記重合性モノマーを重合させる、
ことを特徴とする請求項14に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記液晶組成物は、前記重合開始剤を含むことを特徴とする請求項14または15いずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記重合開始剤は、光重合開始剤であることを特徴とする請求項16に記載の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−73421(P2012−73421A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218225(P2010−218225)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】